マイクロ化学プロセス用 三方電磁弁の開発と応用
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(2) 目次 1章. 緒言. 1.1. 研究背景. 1.2. 研究の目的と構成. 2章 2.1. 2.2. 3章. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 1 6. 三方電磁弁の設計・製作 電磁アクチュエータの設計 2.1.1. 解析モデル. 2.1.2. 磁場解析. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 2.1.2.1. スプール式三方電磁弁設計のための磁場解析. 2.1.2.2. レバー式・スライド式三方電磁弁設計のための磁場解析. 機構設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.2.1. スプール式三方電磁弁. 2.2.2. レバー式三方電磁弁 2.2.2.1. 構造. 2.2.2.2. 構造解析. 2.2.3 2.3. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 8. 14. スライド式三方電磁弁. 三方電磁弁の駆動コントローラ. ・・・・・・・・・・・・・・・・・. 20. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 25. マイクロビーカ生成システム. 3.1. 実験概要. 3.2. 生成したスラグ流の評価. 3.3. スラグ流生成実験結果. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 26. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 26. 3.3.1 スプール式三方電磁弁 3.3.2 レバー式三方電磁弁 3.3.3 スライド式三方電磁弁 3.3.3.1 3.4. まとめ. スラグ流生成時の配管内圧力. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. i. 34.
(3) 4章 4.1. 4.2. アクティブ分離システム システム構成 4.1.1. 検出機構. 4.1.2. 分離アルゴリズム. 4.1.3. 動作試験. 分離実験. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 4.2.1. スプール式三方電磁弁を用いた分離実験. 4.2.2. レバー式三方電磁弁を用いた分離実験. 4.2.3. スライド式三方電磁弁を用いた分離実験. 4.2.3.1. 4.3. 5章 5.1. 35. 38. スライド式三方電磁弁を用いた分離装置の構造. 4.2.3.1.1. 光電センサの検出位置と検出箇所の関係. 4.2.3.1.2. 検出確認実験. 4.2.3.1.3. スラグ流の相長さと分離率の関係. 4.2.3.2. レバー式三方電磁弁とスライド式三方電磁弁分離装置の比較実験. 4.2.3.3. セトラ分離器とアクティブ分離システムの分離性能比較実験. まとめ. 4.2.3.3.1. セトラ分離器の構造と分離原理. 4.2.3.3.2. セトラ分離器とアクティブ分離システムの比較. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・. 56. 化学反応プロセスへの適用による有効性評価 銅イオン抽出プロセスへの適用. ・・・・・・・・・・・・・・・・・. 58. リチウムイオン抽出プロセスへの適用・・・・・・・・・・・・・・・. 63. 5.1.1. 銅イオン抽出実験システム. 5.1.2. 銅イオンの抽出実験結果. 5.1.3 5.2. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. まとめ. 5.2.1. リチウムイオンリサイクルの背景. 5.2.2. リチウムイオン抽出実験 5.2.2.1. 実験目的. 5.2.2.2. 実験構成. 5.2.2.3. リチウムイオン抽出実験. ii.
(4) 5.2.2.4 5.2.3 5.3. まとめ. マイクロビーカ生成システムを用いたナノ粒子の合成 5.3.1. PTO 研究背景,および適用する化学反応. 5.3.2. PTO 合成実験. ・・・・・・・・. 5.3.2.1. ビーカを用いた PTO 合成実験. 5.3.2.2. マイクロビーカ生成システムを用いた PTO 合成実験. 5.3.3. 6章. 抽出達成率の測定結果. 70. まとめ. 結言. 6.1. 本研究の成果. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 86. 6.2. 今後の展望. ・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 87. 謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 88. 参考文献. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89. 研究発表一覧. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 92. iii.
(5) 1章 1.1. 緒言. 研究背景. 2000 年頃から化学工学やμTAS (Micro Total Analysis Systems)と呼ばれる分析化学で 用 い ら れ る マ イ ク ロ 流 体 デ バ イ ス の 研 究 が 活 発 に 行 わ れ て き た (1) - (4) . 微 細 加 工 技 術 や MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて,大規模な化学プラントや化 学分析システムを小型化したマイクロリアクタシステムの実現が望まれている.マイクロ リアクタとは,数μm から数百μm の流路を持つ反応容器であり,このマイクロ空間内で の特異な現象を利用した化学反応・物質生産のためのデバイスである.一般的にマイクロ 空間内での現象は下記の特徴があげられる. (1) 拡散距離を小さくすることにより,分子拡散による混合では要する時間が大幅に減 少し,効率的な混合がおこなえる. (2) マイクロ空間の長さや流速を調整することにより使用するサンプル,試薬の量を減 らすことができる. (3) 単位積当たりの表面積が大きいため熱交換効率が高く,温度制御が容易である.ま た,電場,磁場の制御が容易に行える. (4) 気体‐液体,液体‐液体,固体‐液体反応のような界面反応での効率化が図れる. また,各相を利用した反応後の生成物の分離・精製に有効である. 一般的に,マイクロ空間内の流れは層流であり,混合は分子拡散に依存する.拡散によ る混合では,ある離れた場所まで広がってくる拡散時間 t は,拡散距離 l D の 2 乗に比例し, 式(1.1)となる.. t = l D 2/ D. (1.1). ここで, D は拡散係数である. 図 1.1(a)に示すような層流では流路の幅を狭くすることにより拡散距離を短くすること により,また,図 1.1(b),(c)に示すように主流を小さな流れに分割し,図 1.1(d)に示すよ うな流れを採用し,界面積を増やすことにより,層流でも混合効率の高いマイクロリアク タの開発が行われている (5) - (19) .. 1.
(6) (a) Two-phase flow. (b) Bubble flow. (c) Slug flow. (d)Three-phase flow Fig. 1.1 Multi phase flow. (3). マイクロリアクタは,流路形状を工夫することにより混合・反応を受動的に促 進・制御 するパッシブ型とアクチュエータなどを用いて流れを能動的に制御することにより混合・ 反応を促進・制御するアクティブ型に大別できる.それぞれの特徴を表 1.1 に示す.. Table 1.1 Classification of micro reactors and their characteristics パッシブ型. アクティブ型. ・機械的に操作するようなアクチュエータ. ・アクチュエータなどを用いた駆動機構が. などを用いた駆動機構がない.. ある.. ・駆動機構を用いていないので小型化が容. ・混合・反応の能動的な促進・制御が可能.. 易である.. ・流路形状が簡単であり,長い流路を必要. ・流路形状の工夫により混合・反応を受動. としない.. 的に促進する.. ・アクチュエータなどの駆動機構を用いる. ・混合・反応の能動的な制御が難しい.. ため装置の小型化が難しい.. ・複雑な流路形状と長い流路を必要とする. ・使用する流体の特性が流れに影響する.. 2.
(7) 図 1.2 にパッシブ型のマイクロリアクタの例を示す.図 1.2 に示すマイクロリアクタは, 混じり合わない溶液の二相間の溶媒抽出に適したマイクロリアクタとして開発されている. 大きさは縦 30×横 60×厚さ 16.5mm であり,流路は幅,深さともに 0.5mm である.この マイクロリアクタの特徴は,セトラ分離器と呼ばれる比重により相分離を行う分離装置を 備えていること,また,図 1.1(c)に示したスラグ流を形成することで反応を促進すること である. 図 1.3 に,このマイクロリアクタを用いて油相中から水相中に銅イオンを逆抽出する抽 出プロセスにスラグ流を適用した結果を示す.この結果よりスラグ流は,並行二相流より も反応速度が速くなることがわかっている.スラグ流を適用した反応は並行二相流を適用 した反応よりも反応速度が速くなることから,武藤らは,各相のスラグ流のセグメントで は図 1.4 に示す循環流が発生しつつ流路内を移動するのではないかと考えている.もし, このような循環流が生じているとすると,各界面近傍では界面更新の効果や向流接触の効 果など,界面反応速度の向上が起こると考えられる (9) - (11) . また,スラグ流の有効性については住友化学株式会社の岡本らの研究グループによって も提案されている (12)(13) .. Base. Junction plate. Quartz glass plate. Reaction plate. Quartz Separation glass plate plate. Reaction plate Oil phase solution. Water phase solution. Oil・Water phase solution. Ripples pattern Fig. 1.2. Structure of three dimensional micro reactor. 3. (10). Quartz glass plate.
(8) Extraction rate [%]. ■ Slug flow of short length ○ Slug flow of long length △ Two-phase flow. Reaction time [s] Fig. 1.3. Effect of flow condition on extract efficiency. (10). Parallel two-phase flow. Slug flow. Circulating flow. Effect of the countercurrent contact. Effect of the interfacial update Fig. 1.4. Effect of circulating flow inside slug flow segment. (10). パッシブ型に対して図 1.5 にアクティブ型のマイクロリアクタの例を示す.このマイク ロリアクタは,図 1.6 に示すロータとケーシングの隙間に図 1.7 に示すような二液による. 4.
(9) 螺旋状層流の形成を目的として開発されている (20) .この螺旋状層流は,二相間の接触界面 数と反応距離の増加により反応表面積が増加し,多層を形成することにより拡散距離を短 くし,拡散時間を短縮することによる反応効率の向上を目指している. このロータリーリアクタは混じり合わない液体を用いた抽出操作などには有効であるこ とを示されているが,混じり合う流体を用いた化学プロセスへの有効性は示されていない.. Fig. 1.5 Micro rotary reactors. (20). Fig. 1.6 The structure of micro rotary reactor. 5. (20).
(10) Rotor. Fig. 1.7. Liquid. Liquid B. A. Models of spiral laminar flow caused by micro rotary reactor. (20). 混合・反応を流体特性に影響されずに能動的に制御可能な新たな機構を有するマイクロ リアクタが実現できれば,従来のフラスコやマクロな反応器での混合の際の濃度や温度の 不均一を格段に小さくすることが可能となるはずである.マイクロリアクタを用いること により,従来のフラスコを用いた化学反応では発現できなかった化学現象や化学反応を容 易に実現できる可能性があり,さまざまな産業に大きな影響を与える. また,マイクロリアクタシステムでは,送液ポンプやバルブやマイクロリアクタなど 様々な機能の集積化が必要となり,これらのデバイスの小型化が要求される.マイクロリ アクタシステムが実現することで化学プラントの開発や設備製造のスピードアップおよび 設備投資や稼働コストの削減にもつながり,また, 省資源,省エネルギー,環境負荷の低 減などが期待されている.. 1.2. 研究の目的と構成. 過去に研究・開発されているマイクロリアクタでは,流動状態の制御が困難であり,連 続的な混合・反応が行えなかった. 本研究では,図 1.1(c)に示したスラグ流に着目し,その各相を任意の容積で生成する ことが可能な三方電磁弁の開発を目的とする.そのため通常の回分操作では不可能な化学 反応の制御も実現できる.また,連続的な混合・反応を可能とするために,生成したスラ グ流を分離するためのアクティブ分離装置の開発も目的とする. また,開発した三方電磁弁により生成したスラグ流の各相の容積を図 1.8 に示すマイク ロビーカと呼ぶ仮想的な微量容積と考え,この微量容積内の反応溶液を連続的に混合して 反応させるプロセスをマイクロビーカプロセスと呼ぶことにした.このとき, 通常サイズ のビーカ内での撹拌操作では及ばないレベルの均一な混合が起こり,その中で均一な温度 や濃度が保たれる.. 6.
(11) B. A. Three port valve Micro beaker A. Micro beaker B. Flow. Fig. 1.8 Conceptual model of micro beaker process. 一般的に数 mm 程度の大きさの駆動体に対しては高い発生力と高い応答性を生む電磁力 に着目し,電磁力アクチュエータを用いた駆動機構を有する三方電磁弁を開発した.開発 した三方電磁弁を適用することにより,スラグ流の各相の容積を制御することにより,混 合・反応の度合いを制御する新しい化学プロセスであるマイクロビーカプロセスを提案し た.また,フロー系で容易に反応・抽出に適用するためにスラグ流の二液を選択分離する 装置すなわちアクティブ分離システムを開発した.さらに実際の化学反応にマイクロビー カプロセスを適用し,その有効性を検証した. 本論文は,6章からなる. 1章は,研究背景および本研究の目的と構成について述べた. 2章は,本研究で開発したスプール式,レバー式,スライド式三方電磁弁の設計・製作 について説明する. 3章は,三方電磁弁を用いてスラグ流を生成するスラグ流生成実験を行い,マイクロビ ーカ生成システムの基礎特性を評価する. 4章は,スラグ流を能動的に分離するアクティブ分離システムを用いて分離実験を行い, 分離率の評価を行った. 5章は,マイクロビーカ生成システムを化学プロセスへ適用し,反応制御実験を行い, 有効性を検証した.適用した化学実験は,銅イオン抽出実験,リチウムイオン抽出実験と PTO(Phosphorus containing Tinoxide:リン酸化スズ)合成実験の三種類である. 6章の結言では,本研究に対するまとめと今後の展望について述べる.. 7.
(12) 2章. 三方電磁弁の設計・製作. 本章では,設計・製作をした三方電磁弁の詳細について述べる. 今日,電磁アクチュエータを用いて駆動する電磁弁は最も一般的である.電磁アクチュ エータは,制御が容易であり,信頼性が高い.従来の電磁弁は,鉄心,スプリング,コイ ルを必要とする構造から小型化に向いていない.また, 電磁弁のケーシング内に流体が残 るデッドボリュームと呼ぶスペースがあり,このデッドボリュームが大きいため微少流体 を扱うには向いていない. 本研究で考案した三方電磁弁は,電磁駆動を用いているが,従来の構造ではなく,コイ ルの芯部に円柱型の永久磁石を配置し,永久磁石を駆動させる構造である. 以下に,開発した三方電磁弁の設計について述べる.. 2.1. 電磁アクチュエータの設計. 本研究では,図 2.1 に示すような永久磁石が左右に動作する構造を対象に検討する.二 つのコイルにそれぞれ電流を流し,電流を流す向きを変えることで永久磁石の位置を切り 替える.電磁アクチュエータを使用し,適当なデバイスの寸法や通電する電流の大きさを 決めるため磁場解析を行い,発生する電磁力を求めた. 本研究では,二種類のデバイス寸 法を考案し,その発生する電磁力を有限要素法で解析し,設計を行 った.. Coil. Magnet Fig. 2.1 Conceptual model of three port valve. 2.1.1. 解析モデル. 磁場解析は二次元平面軸対称静的磁場解析モデルとして扱い,四角形四接点要素を用い 非線形解析を行った. 図 2.2 にスプール式三方電磁弁として設計した解析モデルの断面図を示す.表 2.1 に三. 8.
(13) 方電磁弁を構成する部位の寸法と特性を示す.このスプール式三方電磁弁は,マイクロリ アクタシステムに組み込むために小型化を 目指し,小さな永久磁石を使用して設計したモ デルである.. Infinity area Coil. 2.2. 1. Infinity area. Central axis. Coil. 2.2. 1.8. Vacuum area Magnet. 1. Infinity area. 2. x=1.95~2.25. 2. Fig. 2.2 Arrangement of coils and magnet. Table 2.1 Size and material characteristics of the valve parts Permanent magnet. Material Size Density Weight Coercivity. Solenoid Coil. enameled wire φ0.1 mm. Sectional area. 2.2×10 -6 m 2. Number of rolling. 220 tum. Current density. I ×10 8. :Neodymium :φ2 mm×2 mm :7.5 g/cm 3 :0.047 g :923000A/m. A/m 2 ( I :Current). ここで,図 2.2 に示す x は,コイルの片端面から永久磁石の端面までの距離とし ,永久 磁石の駆動ストロークを x =1.95mm から x =2.25mm の 0.3mm とした.また,永久磁石 を動作させるために図 2.2 に示す永久磁石が x =2.25mm と x =1.95mm にあるときに,最 も大きな吸引力を必要とする.この解析モデルでは対称な形状としているため,永久磁石 が x =2.25mm と x =1.95mm の位置で同じ吸引力となる. 図 2.3 にレバー式三方電磁弁とスライド式三方電磁弁として設計した解析モデルの断面. 9.
(14) 図を示す.また,表 2.2 に電動アクチュエータを構成する部位の寸法と特性を示す.これ らの三方電磁弁は,マイクロビーカ生成システムに適用するために三方弁内のデッドボリ ュームを小さくすることを目指し,流路を切り替えるための可動子の形状に工夫できる構 造としたモデルである.可動子の形状については,機構設計の節で述べる.. Infinity area. Infinity area. Vacuum area 10 Coil. 25. 10. Coil. Infinity area. Magnet 12. 2.5 Central axis. Y =4~6. 5. Soft magnetic material. 15. 3. Soft magnetic material. Fig. 2.3 Design of electromagnetic models. Table 2.2 Size and material characteristics of the valve parts Permanent magnet. Material :Neodymium Size :φ5 mm×5 mm Density :7.5 g/cm 3 Weight :2.9×10 -2 N Coercivity :923000A/m. Solenoid Coil. enameled wire φ0.2 mm. Sectional area. 1.2×10 -4 m 2. Number of rolling. 2200 tum. Current density. I ×2.5×10 7. magnetic body. Stainless steel. A/m 2 ( I :Current) (SUS430,JIS G 4303~4309 ). ここで,図 2.3 に示す y は,片方の磁性体端面から永久磁石の端面までの距離を示し,こ の永久磁石の可動子の駆動ストロークを 2mm としたので 4mm≦ y ≦6mm の範囲で変化す る.永久磁石を動作させるためには,図 2.3 に示す永久磁石が y =4mm と y =6mm にあ るときに,最も大きな電磁力を必要とする.. 10.
(15) 2.1.2. 磁場解析. 2.1.1 節で述べた二つのモデルについて有限要素法により解析を行った.解析ソフトには, CYBERNET 社製の ANSYS を使用した.解析では,電流部に与える電流密度を変化させ て,永久磁石に発生する力の大きさを求めた.有限要素法解析における吸引力の計算には, 仮想仕事の原理に基づいた計算とマクスウェル応力に基づいた計算の二種類あり,その両 方で解析を行った.解析が不適切な場合には,両方の解析値が一致しないことがあるので, 両方の方法で解析することにより,解析の信頼性が確認できる. 2.1.2.1. スプール式三方電磁弁設計のための磁場解析. 図 2.4 に図 2.2 の解析モデルを用いた磁場解析より求めた磁束線図を示す.この図は, 図 2.2 において永久磁石が x =1.95mm に位置した状態で,コイルの非通電時と通電時の磁 束線の様子を示している.図 2.4(a)は非通電時の状態で,永久磁石による磁束のみが現れ, 吸引力がどちらにも発生していないことがわかる.図 2.4(b)は永久磁石に吸引力が働き, 三方電磁弁として流路が切り替わる状態になるようコイルに通電した場合の磁束を示す. 左右のコイルでは,通電方向は逆方向としている.図 2.5 に電流密度を上げていった場合 の永久磁石に働く吸引力の計算値を示す.吸引力は,仮想現実仕事の原理に基づいたもの とマクスウェル応力に基づいたものの二種類の計算方法で解析した. ここで三方電磁弁の流路の切り替えを行うために,大電流を長時間コイルに流すと発熱 によりケーシング部品等の寸法に歪などの悪影響を及ぼしてしまう.そのため適当な電流 値を最大 1A 以内とした.電流値を 1A とすると電流密度は表 2.1 より 1×10 8 A/m 2 となる. このとき発生する吸引力は,図 2.5 より 0.16N である.. 11.
(16) Coil Magnet (Slider). (a) Flux of magnetic induction when non-energizing. (b) Flux of magnetic induction when energizing Fig. 2.4 Analytical results of magnetic field for spool type valve. magnetic force [ N ]. 0.2 0.15 0.1 0.05. 0 0. 2. 4. 6. 8. 10. current density [ ×107 A/m2] Fig. 2.5 Analytical results of magnetic force for spool type valve. 2.1.2.2. レバー式・スライド式三方電磁弁設計のための磁場解析. 図 2.6 に図 2.4 の解析モデルを用いた磁場解析より求めた磁束線図 を示す.この図は, 図 2.3 において永久磁石が y =4mm に位置した状態でコイルの非通電時と通電時の磁束の 様子を示している.図 2.6(a)は非通電時の状態で,永久磁石による磁束が現れ,吸引力は. 12.
(17) 永久磁石に近い右側の磁性体に永久磁石を引き付ける方向に働いている.図 2.6(b)は,永 久磁石を駆動させる状態になるようにコイルに通電した場合の磁束を示す.図 2.6(b)の場 合,左側に永久磁石を駆動させる方向に吸引力が働いている.左右のコイルでは,通電方 向は逆方向となっている. コイルに印加する電流密度を変化させた場合の永久磁石に働く吸引力の解析値を図 2.7 に示す.吸引力は,仮想仕事の原理に基づいた計算方法で解析した.横 軸には電流密度, 縦軸には吸引力を示す.吸引力の値は,図 2.6 に示した可動子を右側に駆動させる力の向 きを正とし,その逆向きに働く力を負とする.電流密度の値は,吸引力の値が正となるよ う電流をコイルに印加した場合を正とし,その逆向きを負とした.非通電時には,0.12N の吸引力が働いており,自己保持が可能であることを示している.また,解析結果の確認 のために表 2.2 に示す仕様の永久磁石と後に述べる試作したレバー式三方電磁弁のコイル を用い,永久磁石をコイルから引き離す力の測定をした.図 2.3 に示すような永久磁石の 両端にコイルを配置した場合,吸引力の測定が難しいため使用したコイルは 1 個のみとし た.永久磁石と磁性体の間隔を 4mm として測定した.測定結果と比較のために,コイル 1 個を配置した場合の永久磁石に働く吸引力の解析値を図 2.7 にあわせて示す. ここで三方電磁弁の流路の切り替えを行うためには,永久磁石とレバーの重さより大き な吸引力を発生させなければならない.永久磁石の重さは 2.9×10 -2 N であり,レバーの重 さは 1.4×10 -3 N であるので合計 0.03N 以上の吸引力を発生すればよい.. 13.
(18) Coil. Magnet. Coil Soft magnetic material. Soft magnetic material. Central axis (a) Flux of magnetic induction when non-energizing ( y = 4mm, I = 0A). (b) Flux of magnetic induction when energizing ( y = 4mm, I = 0.2A) Fig. 2.6 Analytical results of magnetic field for lever and slide type valve. Fig. 2.7 Analytical results of magnetic force for lever and slide type valve. 2.2. 機構設計. 2.2.1 スプール式三方電磁弁 前述の磁場解析結果に基づき機構設計・試作を行った.図 2.8 にスプール式三方電磁弁 の構造を示す.非磁性体であるオーステナイト系ステンレス鋼製の円筒形状のケーシング 内部に永久磁石を配置し,ケーシングの周囲にエナメル線でコイルを形成する. コイルは 表 2.1 に示した通りの仕様である.図 2.8 に示すようにケーシングの両端とその間に流体 の出入口ノズルとなる A,B,S ポートを配置する.図 2.8 のポジション 1 に示す位置に永. 14.
(19) 久磁石の可動子が配置されると B ポートの流路を閉塞し,A ポートと S ポートに流体が流 れる.また,ポジション 2 に示す位置に可動子が配置されると B ポートと S ポートに流体 が流れる.これらのノズルも非磁性体である オーステナイト系ステンレス鋼を用いた.図 2.9 の写真に示す試作したスプール式三方電磁弁は,外径をφ6mm であり,ノズルを含ま ない本体部の長さは 8.3mm である.. Flow. Port S Coil. Magnet. Port B. Port A. Nozzle Casing part. Position 1. Position 2. Fig. 2.8 Structure of spool type valve. Fig. 2.9 Parts and model of spool type valve. 本構造は,電磁力によりコイル内部の鉄芯を駆動させる従来の電磁アクチュエータ構造 ではないため,バネなどを配置する必要がなく小型化に都合が良い.また,通流中は永久 磁石に対して背圧がかかるためポジショニング保持のための電力消費は少なくても良く, 省エネルギーにつながる.. 2.2.2. レバー式三方電磁弁. 2.2.2.1 構造 図 2.10 にレバー式三方電磁弁の構造を示す.厚さ 0.5mm のステンレス板に流路となる. 15.
(20) T 字のスリットを加工する.このステンレス板をガラス板等の透明の材料で挟みこむこと により流路を形成する.T 字の合流部にレバーを設け,このレバーを駆動することにより 流路の切り替えを行う構造とした.レバーの駆動は,図 2.10 に示す位置に永久磁石を配置 し,外部に配置した電磁石により永久磁石を駆動させることで行う.電磁石のコイルは, 表 2.2 に示した通りの仕様である. このレバーを用いた構造は,三方電磁弁としてデッドボリュームが無く,切り替え時に 送液圧力の影響を受けにくい特徴がある.. Coil. Port B. Port A 47. 50. Port S. Coil Magnet φ3. 0.5 0.5. Port B. Port A Flow Position 1. Lever Port S. Flow. Flow Elements on larger scale Position 2. Fig. 2.10 Structure of lever type valve. 2.2.2.2. 構造解析. 図 2.10 に示すレバー式三方電磁弁の構造は,レバー先端部に繰り返し応力が働く.その ため疲労強度を評価する必要がある.レバー先端に働く応力を有限要素法により応力解析 により求めた.図 2.11 に解析モデルを示す.コイルに 0.2A 電流印加した場合に磁場解析 より求められた永久磁石への吸引力 0.59N を図 2.11 中の F の矢印の向きに加えた.そし てレバーの回転中心とレバー先端の流路壁面に接触する部分の二か所を拘束し ,応力解析. 16.
(21) を行った.解析結果を図 2.12 に示す.ここでレバーは,材質として SUS304(JIS G 4303 ~4309)を使用し,厚さは 0.5mm とした.この材料の縦弾性係数は 197GPa,ポアソン 比 は 0.3 で あ る . 一 般 的 に , こ の 材 質 の 両 振 引 張 圧 縮 荷 を か け た と き の 疲 労 限 度 は 166N/mm 2 である.解析結果から最大応力は 71.6N/mm 2 であり,2.3 程度の安全率が見込 める.. F Restriction. F. Fig. 2.11 Stress analysis model of the lever. Fig. 2.12 Stress analysis result of the lever. 17.
(22) 2.2.3. スライド式三方電磁弁. 図 2.13 にスライド式三方電磁弁の構造を示す.流路を切り替えるための可動子には,幅 8mm,高さ 9mm,厚さ 1mm の PPS 樹脂(Poly Phenylene Sulfide Resin)を使用した. この可動子には,図 2.13 に示すように幅 0.8mm,長さ 1.5mm の長穴を二か所設けてあり, この長穴部が流路となる.また,可動子を駆動させるための永久磁石を配置するために幅 5mm,高さ 5mm の角穴を開けており,この角穴にφ5mm×5mm のネオジム磁石を配置 する.スプール式三方電磁弁とは異なり, 永久磁石が液に接しない構造とした.ケーシン グ A には 2mm 間隔で,φ0.5mm の穴を二か所設け,ケーシング B にはφ0.5mm の穴を 一か所設け,流路とした.それぞれのケーシング A,B の間を可動子がストローク 1mm で 駆動することにより流路の切り替えを行う.また,ケーシングの間に可動子が駆動するス ペースを設けるために可動子と同じ厚みのス ペーサを配置している.永久磁石を駆動させ るためのコイルを二箇所の配置する.このコイルは,表 2.2 に示した通りの仕様である. 図 2.14 に製作したスライド式三方電磁弁の写真を示す.この様に電磁力を用いることによ り,外部から非接触でアクチュエータを駆動 させることが可能となる.そのためアクチュ エータの駆動の妨げとなるような複雑なシール機構を必要としない密閉性に優れた構造と なっている.そして流体の流れ方向に対して垂直方向に駆動する可動子を配置し,流れや 圧力の影響を受け難くした.また,マイクロビーカの生成に影響を及ぼすデッドボリュー ムのない構造にもなっている.接液部は各ポート,ケーシングと可動子であり,これらの 材質について耐薬品性を考慮して選定すれば良い構造とした.. 18.
(23) Port A. Port B Attachment A Gasket Elongated holes. Coil. O ring. Casing A O ring. Casing B Port S. Spacer. Coil. Slider Magnet Attachment B. Fig. 2.13 Fundamental model of slide type valve. Fig. 2.14 Model of slide type valve. 切り替えの原理を図 2.15 に示す.可動子がポジション 1 の状態にある場合,可動子に 設けてある長穴によりポート B とポート S がつながる.そのときポート A は閉塞されて いる.コイルに流す電流の向きを変えることにより,ポジション 2 の位置に可動子を駆動 させ,ポート A とポート S がつながり,ポート B が閉塞された状態とすることにより流 路の切り替えを行う.. 19.
(24) Elongated hole. N. A. N. Coil Slider. Coil Slider. SN. A. A. S. SN. S. A. Space. Magnet Port A. Port B Flow. Slider. Flow Inlet Outlet. Port S Position 1. A-A section. Position 2. Fig. 2.15 Photograph of slide type valve. レバー式三方電磁弁とスライド式三方電磁弁の電磁駆動アクチュエータは,図 2.3 に示 した形状,サイズ,配置を用いており,2×10 5 A/m 2 の電流密度をコイルに与えた場合,永 久磁石には 0.59N の吸引力が働く.コイルへの印加電圧は 6V P-P とした.電圧とコイルの 抵抗値 47.1Ωより消費電力を求めた.消費電力は 6V P-P 駆動時に 0.8W である.また,高 粘度の液体を用いた場合に三方電磁弁が駆動しなくなることを想定し,印加電圧を 24V P-P と設定可能なコントローラを準備した.印加電圧を 24V P-P とした場合消費電力は 12.2W となる.. 2.3. 三方電磁弁の駆動コントローラ. 本研究では,実用化へ向けた取り組みとして ,三方電磁弁を周期的に切り替えることが 可能なコントローラを製作した.図 2.16 に駆動コントローラの外観および内部構造を示す.. 20.
(25) Fig. 2.16 Designed controller for the micro valve. 本コントローラを使用し,三方電磁弁の駆動周波数とレートを制御する.制御用 IC に は,Microchip Technology 社製 PIC(Peripheral Interface Controller)マイコン 16F876 を用いた. 駆動周波数とは,三方電磁弁の流路を切り替える周期のことである.また,レートとは 一周期あたりの各方向への通電時間の割合のことで,0~100%の範囲で可変できる.例え ば,周波数 1Hz でレートが 50%のとき,各ポートの閉塞時間は共に 0.5s である.レート を 30%に変更すると,ポートの閉塞時間はそれぞれ 0.3s と 0.7s となる. 制御量および操作内容は,液晶ディスプレイ上で確認できる.液晶ディスプレイには, SUNLIKE 社製 SC2004CS-B を用いた. 図 2.17 にコントローラの回路図を示す.主に,入力部,出力制御部,液晶ディスプレイ 部で構成している.. 21.
(26) 三方電磁弁の駆動制御には,H ブリッジ回路を用いた.H ブリッジ回路は,モータドラ イバ回路として使用されており,通電方向を制御する回路として適している.. Fig. 2.17 Electrical schematic of the valve controller. このコントローラは,負荷の程度に応じて出力電力を調整することができる.図 2.18 に示す瞬時電圧印加時間 t0 ,保持電圧印加時間 t1 ,t2 ,瞬時電圧デューティ比 duty1 ,保 持電圧デューティ比 duty2 が,それぞれ設定可能である.. 22.
(27) t0 Fig. 2.18 Output waveform of PWM from valve-controller. 電磁駆動は消費エネルギーが大きいという短所がある.それを解消するため,駆動方式 にパルス幅変調(Pulse Width Modulation,PWM)を採用した. 可動子を駆動する時に印加する電圧波形と非駆動時に印加する電圧波形を PWM でデュ ーティ比を調整することで消費エネルギーを小さくする. 図 2.19 にコントローラの出力波形の測定結果を示す.駆動周波数を任意に可変し測定を 行った. Rate = 50[%], t0 =10[ms], duty1 =100[%], duty2 =30[%]とした.PWM 周波 数は 4.88kHz である.. 8.0 7.0 6.0 Voltage[V]. 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 -1.0 -2.0 0.0. 1.0. 2.0. 3.0 Time[s]. 4.0. 5.0. 6.0. Fig. 2.19 Output waveform by PWM from valve-controller : Drive frequency is 1Hz. ここで,図 2.20 に駆動周波数 1Hz において,立ち上がり時の電圧波形を観測した結果 を示す.図 2.20 より, duty1 が 100%,duty2 が 30%の波形が正常に形成できていること を確認した.. 23.
(28) 8.0 7.0 6.0. Voltage[V]. 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 -1.0. Output 41s' moving average. -2.0 -3.0 0.010. 0.015. 0.020 Time[s]. 0.025. Fig. 2.20 Enlarged view of Fig. 2.19. 24. 0.030.
(29) 3章. マイクロビーカ生成システム. 本章では,三方電磁弁で流路を切り替えることにより,マイクロビーカと呼ぶ仮想的な 微小容積の容器を生成するために行った実験について述べる.マイクロビーカ生成実験で は,仮想のマイクロビーカの生成状態を確認しやすくするために混じり合わない水と油溶 液を使用してスラグ流を生成し,その液相の容積を測定することにより評価した. 従来,スラグ流生成には,Y 字や T 字の流路を用い,流量などの調整によりパッシブに 発生させる方法が取られてきた.しかし,このようなパッシブ型のリアクタでは,液相幅 や流量や圧力といった条件を自由に制御することは難しい.そこで,三方電磁弁 を使用し, 流路を切り替えることにより,流量や粘性に依存せずに 吐出量をアクティブに制御するこ とを目的とした.. 3.1. 実験概要. 実験に使用する液体は,水道水と動粘度 1mm 2 /s のジメチルポリシロキサン溶液とした. 実験では,流動状態の確認を容易にするため,水道水を食用色素により赤色または緑色に 着色した.図 3.1 にマイクロビーカ生成システムの基本構成を示す.マイクロビーカ生成 システムによるスラグ流の生成は,定量送液が可能である 2 台のシリンジポンプにより三 方電磁弁に送液し,この三方電磁弁で高速に流路を切り替えることにより行う.スラグ流 すなわちマイクロビーカをテフロンチューブ内に生成した.スライド式三方電磁弁につい ては,水道水と 1mm 2 /s,50mm 2 /s,100mm 2 /s の三種類の異なる動粘度のジメチルポリシ ロキサン溶液を用いて実験を行った. DC. power supply. Three port valve Pressure sensor. Syringe pump. Teflon tube. Fig. 3.1 System configuration of microbeaker generation system. 25.
(30) 3.2. 生成したスラグ流の評価. 生成したスラグ流の評価は,テフロンチューブ内に流れるスラグ流の各相の長さを測定 し,各相の容積を算出し,三方電磁弁の流路駆動周波数と算出した容積との関係を求める ことで行う. 各相の容積 V [μL]は,スラグ流の各液相の長さ L [mm]を測定し,流路内径 d [mm]と の関係から式(3.1)より算出した.. V = L ×π d 2 /4. (3.1). スラグ流の各液相の長さは,生成したスラグ流を写真に撮り,画像解析ソフト WinROOF を用いて測定した.着色水とオイルをそれぞれ 10 個の液相の長さを測定し,その平均を 出した.. 3.3. スラグ流生成実験結果. 3.3.1 スプール式三方電磁弁 スプール式三方電磁弁を使用して,駆動周波数を 1Hz から 10Hz まで 1Hz 刻みで変え, スラグ流を生成した.この時のシリンジポンプの設定流量は,それぞれ 30mL/h とした. 図 3.2(a)に駆動周波数を 1Hz とした場合と図 3.2(b)に駆動周波数を 8Hz とした場合にテフ ロンチューブ内で生成されたスラグ流の写真 を示す.また,図 3.3 に駆動周波数と計測し たスラグ流の各液相の容積の関係を示す.内径 1mm のテフロンチューブ内にスラグ流を 生成した場合,三方電磁弁の駆動周波数を変えることにより,0.4~6.3μL の容積のマイ クロビーカを生成できることを示した.. (a) Drive frequency : 1Hz. (b) Drive frequency : 8Hz. Fig. 3.2 Slug flow generated using the spool type valve; each of two liquids is supplied at 30 ml/h. 26.
(31) Fig. 3.3 Relationship between drive frequency of valve and volume of one phase of slug flow; each of two liquids is supplied at 30 ml/h. 3.3.2 レバー式三方電磁弁 レバー式三方電磁弁を使用して,駆動周波数を 1Hz から 5Hz まで 2Hz 刻みで変え,ス ラグ流を生成した.この時のシリンジポンプの設定流量は,それぞれ 3mL/h とした.図 3.4 に駆動周波数を 1Hz,3Hz,5Hz に設定したときにレバー式三方弁内の流路に生成さ れたスラグ流の様子を示す.それぞれの駆動周波数に対して半周期ごとに撮影したスラグ 流の様子を示す. 図 3.4 の各図のステンレス製の流路壁面において水が付着している様子が確認できる. 三方電磁弁の駆動周波数が上げるにつれてさらに顕著に現れる.そのため,駆動周波数を 上げても相長さの短いスラグ流が安定して生成されなかった.これは流路が親水性の高い ステンレスで構成されていることや流路断面が四角であることが影響していると考えられ る.水道水とジメチルポリシロキサン溶液を使用したスラグ流の生成には,試作したレバ ー式三方電磁弁は不向きである.しかし,流路の壁面に疎水処理を施し,または壁面の表 面性状を変えることにより安定な界面のスラグ流が生成可能であると考える.. 27.
(32) Water. Oil. (a) 0sec. (d) 0sec. (g) 0sec. (b) 0.5sec. (e) 0.17sec. (h) 0.1sec. (c)1sec. (f)0.33sec. (i)0.2sec. Fig. 3.4 Slug flow generated using the lever type valve; each of two liquids is supplied at 3ml/h, and drive frequencies of valve are (a)-(c)1Hz, (d)-(f)3Hz, (g)-(i)5Hz. 3.3.3 スライド式三方電磁弁 スライド式三方電磁弁を使用して,駆動周波数を 1Hz から 10Hz まで 1Hz 刻みで変え,. 28.
(33) スラグ流を生成した.この時のシリンジポンプの設定流量は,それぞれ 3mL/h とした. また,使用した液体は水道水とジメチルポリシロキサン溶液 である.異なる粘度の流体を 使 用 し た 場 合 で ス ラ グ 流 の 生 成 に 違 い が あ る か を 確 認 す る た め に 1mm 2 /s, 50mm 2 /s, 100mm 2 /s の三種類の異なる動粘度のジメチルポリシロキサン溶液を使用した.図 3.5 に 水道水と動粘度 1mm 2 /s のジメチルポリシロキサン溶液を使用して生成したスラグ流の様 子示す.図 3.6 にその時の駆動周波数と計測したスラグ流の各相の容積の関係を示す.ま た,図 3.7 に動粘度 50mm 2 /s と図 3.8 に動粘度 100mm 2 /s のジメチルポリシロキサン溶液 を使用した場合の駆動周波数と計測したスラグ流の各相の容積の関係を示す.. (a) Drive frequency: 1Hz. (b) Drive frequency: 2Hz. (c) Drive frequency: 3Hz. (d) Drive frequency: 4Hz. (e) Drive frequency: 5Hz. (f) Drive frequency: 6Hz. (g) Drive frequency : 7Hz. (h) Drive frequency : 8Hz. (i) Drive frequency: 9Hz. (j) Drive frequency: 10Hz. Fig. 3.5 Slug flow generated using slide type valve; dimethylpolysiloxane solution's kinematic viscosity is 1mm 2 /s; each of two liquids is supplied at 3ml/h. 29.
(34) Fig. 3.6 Slug flow generated by the slide type valve; Oil's kinematic viscosity is 1mm 2 /s; each of oil and water is supplied at 3mL/h.. Fig. 3.7 Slug flow generated by the slide type valve; Oil's kinematic viscosity is 50mm 2 /s; each of oil and water is supplied at 3mL/h. 30.
(35) Fig. 3.8 Slug flow generated by the developed valve; Oil's kinematic viscosity is 100mm 2 /s; each of oil and water is supplied at 3mL/h.. こ の こ と より ス ラ イ ド 式 三 方 電 磁弁 の 駆 動 周 波 数 を 変 える こ と に よ り , 動 粘 度が 1~ 100mm 2 /s である流体であれば,粘度を変えても同じように 0.1~0.8μL の容積のスラグ 流を生成できることを示した. どの動粘度のジメチルポリシロキサン溶液を用いた場合も水道水のスラグ流の一相の 容積がジメチルポリシロキサン溶液の相の容積に比べて大きく表れている.これは水道水 の界面張力がジメチルポリシロキサン溶液の界面張力より大きいため,界面が図 3.9 に示 す形状になっているためである.. Water. Oil. Teflon tube. Fig. 3.9 Interfacial geometry of slug flow. 31.
(36) 3.3.3.1. スラグ流生成時の配管内圧力. 本節では,定量ポンプを用いているためスラグ流の生成状態により,供給側の配管内圧 力がどのように変化するかを確認した.スラグ流を生成する液体粘度を変えて供給配管内 圧力を図 3.1 に示した圧力センサにより測定した.圧力センサは長野計器製の KH15 圧力 トランスミッタを用いた.圧力レンジは-100~500kPa であり,このレンジを 4~20mA の 電流値で出力するものを用いた.出力される電流値を検出するために図 3.10 に示すように 250Ωの抵抗を用い 1~5V の電圧に変換し,電圧値をオシロスコープにより測定した.. +. Pressure sensor Load resistance 250 Ω. -. Power supply. Oscilloscope. Fig. 3.10 Experimental setup for pressure measurement. 3.3.3 節の液体粘度の違いによる影響について実験した時の供給配管内圧力変化を確認 した.供給圧力は 10 秒間測定した圧力の平均値を示す.図 3.11 に駆動周波数と各供給圧 力の関係を示す. 動粘度 50mm 2 /s と 100mm 2 /s のオイルを用いた場合において駆動周波数を高くし,スラ グ流の各相長さが短くなりチューブ内のスラグ流の相数が多くなるにつれてチューブの圧 力が大きくなる傾向を示した.チューブ配管内圧力が変化しても安定したスラグ流を形成 することが可能であること示した.. 32.
(37) (a) Dimethylpolysiloxane solution at 1mm 2 /s and Water. (b) Dimethylpolysiloxane solution at 50mm 2 /s and Water. (c) Dimethylpolysiloxane solution at 100mm 2 /s and Water Fig. 3.11 Relationship between drive frequency and supply pressure; Each of oil and water is supplied at 3mL/h.. 33.
(38) 3.4. まとめ. 本章では,開発した各三方電磁弁の流量切り替え特性を確認することにより,マイクロ ビーカと呼ぶ仮想的な微量容積の容器の生成確認実験を行った. 動粘度 1mm 2 /s のジメチルポリシロキサン溶液と水道水を用いてスラグ流を生成した場 合,スプール式三方電磁弁で内径 0.5mm のチューブを用いた場合は,相容積が最小で 0.4 μL のスラグ流が生成可能であり,スライド式三方電磁弁では送容積が最小で 0.1μL のス ラグ流が生成可能であることを示した. このことから本研究で開発した三方電磁弁は,仮想的な微小容積を生成するマイクロビ ーカ生成システムに適用可能であることを示した. また,3.3.3.1 節のスラグ流生成時配管内圧力測定実験の結果より,送液配管内に生成す る界面を多くするほど配管の送液抵抗が大きくなることがわかった.この ことは負荷によ って流量が大きく変動する非容積型ポンプは,スラグ流の吐出量を制御しながら生成する には不向きであることがわかった.スラグ流を化学プロセスに適用するにはシリンジポン プのように無脈動で連続送液が可能である定容量型ポンプが必要であると考える.. 34.
(39) 4章. アクティブ分離システム. 本章では,3 章で述べたマイクロビーカ生成システムに混じり合わない二液を適用した 場合に生成できるスラグ流を分離することを目的としたアクティブ分離システムの開発に ついて述べる.実際の化学反応プロセスでは,混合・合成・反応だけではなく,その後分 離・分液操作を必要とする.例えば抽出が挙げられる.抽出とは,固体や液体を液体溶媒 (両者は相互にほとんど不溶解)と接触させ,一種以上の成分を溶媒中に移行させる手法 である (21) .一般的な抽出は,目的試料を含んだ相と抽出相を分液漏斗に入れて機械的に攪 拌し,目的試料を抽出相に移し,その後,分液操作を行う. 従来,分液操作には,分液漏斗やセトラ分離器などパッシブな手法が行われてきた.静 置後,溶液の比重差から二相に分離する操 作である.通常,抽出による回収率を高めるた め,これらの操作を数回繰り返す.このため,ある程度の抽出溶媒量が必要となるととも に,操作に時間を要する. スラグ流を抽出操作に用いることが有効と考えられる.また,抽出操作にスラグ流を用 いた場合,連続プロセスで実施可能であると考えられる.しかし,分離操作が従来手法で あると,効率よくプロセスを行うことができない.そこで,本章では,分離操作も連続的 に行うことで,従来の問題を解決する手法を提案する.. 4.1. システム構成. 本研究で提案するスラグ流の生成と分離システムの基本構成を図 4.1 に示す.スラグ流 の生成は,定量送液が可能である二台のシリンジポンプにより三方電磁弁に送液し,流路 を高速に切り替えることにより行う.切り替えるタイミングを制御することにより,反応・ 抽出に適した任意の容積にする.生成したスラグ流により必要時間反応・抽出した後,分 離装置に送液する.本研究では,2 章で述べたスプール式三方電磁弁とレバー式三方電磁 弁とスライド式三方電磁弁の三種の電磁弁を改良し分離装置に適用した.このシステム構 成は,生成に用いた三方電磁弁と分離装置の切り替えのタイミングを同期することにより 分離可能である.しかし現実には同期のタイミングをとることは難しく流速の変化に対応 できないので得策ではない.そこで三方電磁弁の近くに設けた分離用光電センサ等の検出. 35.
(40) 器でスラグ流の各相の差異を検出し,検出部と分離部の距離,および流速を基に分離装置 の切り替えるタイミングの制御を行う.こ の構成により流速変化や不均一なスラグ流に対 しても安定した分離が可能である.. Fig. 4.1 System configuration of slug flow process controlled by valves. 4.1.1. 検出機構. スラグ流に用いる各溶液の差異を検出する方法には,導電率,pH,光または音波の透過 率などが考えられる.しかし,導電率や pH を検出するためには溶液に検出部を接触させ る必要があり,化学反応場において接触式の検出部を用いることは化学反応に対して影響 を及ぼす恐れがあるため得策ではない.そこで本研究では光の透過率 の差により二液の切 替りを検出する方法を採用した.この方法は,二液の色の差異を 検出することにより非接 触での検出が可能である.しかし,染料等を用いて意図的に色の差を生じさせる場合は化 学反応への影響を考慮する必要がある.. 4.1.2. 分離アルゴリズム. 分離装置の制御は,光センサで二液の光透過率の切替りを検出し, A/D 変換器を通して パソコンに入力する.しきい値は光センサにより任意に設定 する. 検出部と流路切り替え部とに距離 L [mm]の間隔があると溶液の差異を検出してから分 離用三方電磁弁を駆動させる信号出力までに時間の遅延をとる必要がある.図 4.2 に遅延 調整アルゴリズム適用時の光センサからの出力波形と分離用三方電磁弁への出力波形のタ. 36.
(41) イミングチャートを示す.横軸には時間,縦軸にはそれぞれの出力 電圧を示す.また遅延 時間 t [ms]は式(4.1)より求める.. t = 900πL d 2/Q + α. (4.1). ここで,Q [mL/h] は流量,d [mm] はチューブ内径,L [mm] は検出器と分離装置間の距離,α[ms]は 時間補正定数とする.. t. Fig. 4.2 Timing chart of delay time control algorism. 4.1.3. 動作試験. 遅延調整アルゴリズムの動作検証の実験を行った.実験の構成は,光センサからの信号 を PC カードで A/D 変換し,時間遅延を行った後,分離装置に駆動信号を出力する.光セ ンサ出力光の入光/遮光を任意で行い,出力波形を確認した.図 4.3 に結果を示す.入力波 形は,光センサの出力信号,出力波形は,分離装置駆動のための出力波形である.光セン サ出力電圧は 4.2V,分離装置駆動の出力電圧は 1.2V とした.. 37.
(42) 5.0 4.0 Input Output. Voltage[V]. 3.0 2.0 1.0 0.0 -1.0 -2.0 0. 1. 2. 3. 4. 5. Time[s]. Fig. 4.3 Result of experiment of separation system using delay -time control algorithm. Input represents the signal from optical sensor with 4.2V and output represents valve control signal from personal computer card with ±1.2V.. 4.2. 分離実験. アクティブ分離システムの分離性能を評価するため,混じり合わない液体を 送液し,分 離実験を行った.水道水と動粘度 1mm 2 /s のジメチルポリシロキサン溶液を用いた.光セ ンサに赤色 LED 光源を使用したため,水道水を緑色に食用色素で着色した.ジメチルポ リシロキサン溶液は無色透明である.この光源の透過率の差を検出することにより分離用 三方電磁弁の流路を切り替え,分離操作を行った. また,分離性能評価には分離率を用いた.ここで分離後の各収集容器に占める各液体容 積の割合を分離率として定義した.分離率 R は,式(4.2),式(4.3)より求める.水相の分離 率を Rw[%],油相の分離率を Ro [%]とした.. Rw = (Wo – Wx) / (Wo – Wx +Ox ). (4.2). Ro = (Oo – Ox) / (Oo – Ox + Wx ). (4.3). ここで,Wo は水相の供給量[mL],Oo は油相の供給量[mL],Wx は油相中の水の容積[mL],. Ox は水相中の油の容積[mL]である.. 38.
(43) 4.2.1 スプール式三方電磁弁を用いた分離実験 図 4.1 に示したシステム構成でスプール式三方電磁弁を用いてスラグ流の分離実験を行 った.分離部の構成を図 4.4 に示す.光センサにはオムロン社製デジタルファイバ光電ス イ ッ チ E3X-DA11-N 2M を 用 い た . 光 電 セ ン サ と ス プ ー ル 式 三 方 電 磁 弁 ま で の 距 離 は 10mm とした.スラグ流を送液しているチューブの内径は 0.5mm,水道水の流量は 12mL/h, ジメチルポリシロキサン溶液の流量は 12mL/h とした. 遅延時間は式(4.1)より 295ms と なる.スラグ流の測定した液相の長さと式(4.2),式(4.3)により算出した分離率の関係 を図 4.5 に示す.スラグ流の液相長さ 17.4mm のとき水道水は 95.6%,ジメチルポリシロ キサン溶液は 91.0%の分離に成功した.. 10mm. Optical sensor. Fig. 4.4 Separation by micro three port valve. Fig. 4.5 Experimental results of separation rates using spool type valve. 39.
(44) 4.2.2 レバー式三方電磁弁を用いた分離実験 レバー式三方電磁弁を使用してスプール式三方電磁弁と同様にスラグ流の分離実験を行 った.液相の切替り検出部と分離部との間隔の無い位置に光センサの光路を配置したレバ ー式三方電磁弁のレバー先端と光センサからの光路の関係を図 4.6 に示す.使用した光セ ンサの光径は 0.5mm であり,光センサ中心からレバー先端までの距離は 0.45mm となっ ている. シリンジポンプで各液の流量を 6mL/h に設定し,スラグ流を生成するための三方電磁弁 の駆動周波数を 0.5Hz,1Hz,1.5Hz,2Hz と変えることでスラグ流の液相長さを変化さ せ,その時のスラグ流を分離した場合の分離率を測定した.図 4.7 に分離実験の結果を示 す.分離率はスラグ流の液相長さ 13.3mm のときに最大であり,水道水 94.9%,ジメチル ポリシロキサン溶液 93.4%の分離に成功した. Magnet. Lever. Optical sensor. Fig. 4.6 Relations between tip of lever and optical sensor. Fig. 4.7 Experimental results of separation rates using lever type valve. 40.
(45) 4.2.3. スライド式三方電磁弁を用いた分離実験. 4.2.2 節で述べたレバー式三方電磁弁の分離装置の内部流路は,三枚の板を組み合わせて 形成され,その断面は正方形であった.四角流路は,角の壁面の付近と辺の壁面の付近で 速度勾配に違いがあり,スラグ流を形成した状態で流すことが難しい.また,流路壁面の 水に対する親和性に依存しやすいため,スラグ流が形成されないといった課題がある.そ のため,スライド式三方電磁弁を使用して分離部と検出部の距離が短い構造の分離装置の 開発を行った.スライド式三方電磁弁の構造は,三方電磁弁内部にデットボリュームがな く,四角の流路を有していない.そのため,安定的にスラグ流の分離ができると考えられ る. 4.2.3.1. スライド式三方電磁弁を用いた分離装置の構造. 図 4.8 にスライド式三方電磁弁を改造した分離装置の基本構造を示す.この三方電磁弁 は,ケーシング A,B,永久磁石,スライダ,O リング,外径 3mm の光ファイバ,アンプ で構成する.スプール式およびレバー式三方電磁弁を使用した分離装置との違いは,光電 センサのファイバユニットを透過形から反射形としたことである .. Optical sensor (φ3) Casing A Casing B. Magnet Slider. O ring. Fig. 4.8 Fundamental model of the separation device using slide type valve. 41.
(46) 分離装置に使用したスライド式三方電磁弁は,ケーシング A にスライダを配置すること が可能な構造とし,スライダを駆動させるギャップを作り出すためのスペーサを必要 とし ない構造とした.そのため三方電磁弁の組み立てが容易であり,合わせ面の隙間から外部 へ液体が流出する箇所を少なくした.また,ケーシング A,B の隙間から外部への液漏れ を防ぐために O リングを用いて密閉性を高めた.図 4.9 に外観を示す. また,ケーシングには光が透過するようにアクリル樹脂を採用した.アクリル樹脂は, 透明性(光透過率 92~93%),強度,剛性の強さに優れている.. Fig. 4.9 Model of the separation device using slide type valve. 4.2.3.1.1. 光電センサの検出位置と検出箇所の関係. スライド式三方電磁弁を用いた分離装置に搭載する光電センサは,反射型である.その ため,光ファイバの投受光部から検出箇所までの距離を決定する必要がある.使用した光 電センサは,オムロン社製 E32 シリーズ E32-C42Sφ3mm 極細反射形ファイバユニットと オムロン社製 E3X-DA41RM-S アンプユニットを使用した.ファイバユニットは,レンズ 一体型で振動によるレンズが落ちる恐れがないといった特徴があり,レンズから スポット 径(検出箇所)までの距離は 5mm である. スライド式三方電磁弁を用いた分離装置のケーシング部材はアクリル樹脂とした.アク リル樹脂の屈折率は約 1.49 である.アクリル樹脂の屈折率を考慮し,光ファイバの投受光 部と検出箇所までの距離を 7.5mm とした.また,検出箇所に,厚さ 0.1mm のステンレス 反射板を図 4.10 に示すように配置した. 二種の液体を検出する箇所とスライダによる切り取り箇所の距離は,0.5mm とした.図 4.11 に光電センサの検出位置と検出箇所の関係を示す.. 42.
(47) Optical sensor insertion point Reflection plate. Fig. 4.10 Reflection plate mounting position. Fig. 4.11 Relation of a detection position and a detection part. 4.2.3.1.2. 検出確認実験. 実際にスラグ流の二液を検出するかを検証するため動作実験を行った.実験システムを 図 4.12 に示す.緑に着色した水道水とジメチルポリシロキサン溶液をシリンジポンプを使 用して定流量で送液し,スライド式三方電磁弁で流路を切り替えることによりスラグ流を 生成する.シリンジポンプの設定流量をそれぞれ 4mL/h とし,スライド式三方電磁弁の駆 動周波数を 1Hz とした. 緑に着色した水道水が検出位置を流れた際の光電センサの値は 140~150 であり,ジメ チルポリシロキサン溶液が流れた際の値が 190~210 であった.この時,しきい値を 175 とした.実験から,遮光物つまり着色された水を検出したとき,光電センサが ON 状態と. 43.
(48) なるようにアンプの設定をした. Syringe pumps. Separation valve. Optical sensor Controller Fig. 4.12 Experimental system for sensor checking of operations. 4.2.3.1.3. スラグ流の相長さと分離率の関係. スライド式三方電磁弁を用いた分離装置を使用して分離した場合の, スラグ流の相長さ と分離率の関係を調べた.シリンジポンプの送液流量をそれぞれ 10mL/h に設定した.ス ラグ流は Y 字流路,およびスライド式三方電磁弁の駆動周波数を 3Hz,6Hz,12Hz,18Hz と設定し,それぞれスラグ流を生成した.5 章の化学プロセスで使用する液体を使用して 実験を行った.水相を 0.01mol/L の LiClaq(緑着色),油相を 2.0mol/L の D2EHPA シク ロヘキサン溶液を使用してスラグ流を生成し,その分離率を調べた.図 4.13 に生成された スラグ流の相長さと分離率の関係を示す. Y 字流路を用いて生成したスラグ流の相長さが 13mm のとき,最も分離率が高かった.そ の条件において水相の分離率 94.3%,油相の分離率 95.8%を実現した.スラグ流の相長さ が長い場合,分離バルブの切り替える回数が少ないため分離率が高くなったと考えられる . また,スラグ流の相長さ 0.8mm の場合でも,水相の分離率 87.1%,油相の分離率 86.0% の高い分離率で分離できることを確認した.. 44.
(49) Fig. 4.13 Relationship between length of slug flow and separation rate. 4.2.3.2 レバー式三方電磁弁とスライド式三方電磁弁を用いた分離装置の比較実験 本節では,レバー式三方電磁弁とスライド式三方電磁弁を用いた分離装置でスラグ流を 分離し,分離率の比較を行い,性能比較を行った.3mL/h に設定した定量ポンプで各液体 を送液し,スライド式三方電磁弁の駆動周波数を 1Hz に設定してスラグ流を生成した.水 相側を緑に着色した水道水,油相側に動粘度 1 mm 2 /s,10 mm 2 /s,50 mm 2 /s,100 mm 2 /s のジメチルポリシロキサン溶液を使用してそれぞれの分離率を調べた.スライド式三方電 磁弁と分離装置間の流路には,内径 0.5mm のテフロンチューブを使用した.このとき, テフロンチューブ内に流れるスラグ流の相長さは,約 4mm である.図 4.14 にレバー式三 方電磁弁を用いた分離装置で分離実験を行った実験結果を示し,図 4.15 にスライド式三方 電磁弁を用いた分離装置を使用してスラグ流の分離実験を行った結果を示す.. 45.
(50) Fig. 4.14 Relationship between kinematic viscosity and the separation rate experiment of the separation using the lever type valve. Fig. 4.15 Relationship between kinematic viscosity and the separation rate experiment of the separation using the slide type valve. 続いて,レバー式三方電磁弁を用いた分離装置とスライド式三方電磁弁を用いた分離装 置の分離成功率を求め,比較を行った.分離成功率 R S は式(4.4)により求める.各パラメ ータは分離率のときと同様である.図 4.16 に式(4.4)で求めた結果を示す.. Rs = (( Wo‐Wx )+( Oo‐Ox ))/( Wo +Oo ) = (( Wo‐Oo ) ( Wx‐Ox))/( Wo + Oo ). 46. (4.4).
(51) Fig. 4.16 The separation rate of the two liquid succeeded. レバー式三方電磁弁を用いた分離装置では,動粘度が高くなるにつれ,分離成功率が低 くなっている.対して,スライド式三方電磁弁を用いた分離装置では動粘度が高くなるに つれ,分離成功率が高くなっている.これは,レバー式三方電磁弁を用いた分離装置とス ライド式三方電磁弁を用いた分離装置の流路を切り替え方式の違いに起因している.レバ ー式三方電磁弁を用いた分離装置の切り替え弁の様子を図 4.17 に示す.レバー式三方電磁 弁を用いた分離装置は,レバーが左右に動くことで流路を切り替える.レバーが左右に動 作する際に,一度,全ての流路が繋がる.そのため,流路に流れる流体の速度勾配の影響 を受けやすいと考えられる.流体の速度勾配は,粘度に比例する.そのため,動粘度を高 くするに伴い,分離成功率が低くなったと考えられる. 一方,スライド式三方電磁弁を用いた分離装置は,図 4.18 に示すようなスライダに設け た流路を左右に切り替えることで流路を切り替える.スライド式三方電磁弁を用いた分離 装置は,スライダを左右に動かすためにスライダとケーシング A,B の間に 10μm の隙間 を設けている.ジメチルポリシロキサン溶液の動粘度が低い場合は,その隙間にジメチル ポリシロキサン溶液が浸み込み易く,動粘度が高い場合は,浸み込み難くなる.そのため, ジメチルポリシロキサン溶液の動粘度が高くなるにつれ,スライド式三方電磁弁を用いた 分離装置の分離成功率が高くなったと考えられる. この結果から,スライド式三方電磁弁を用いた分離装置の分離成功率は 90%以上と高く, レバー式三方電磁弁を用いた分離装置よりも分離性能が高いことを確認した.. 47.
(52) Lever. Port B. Port A. Port S Fig. 4.17 Movement of the fluid when the lever of the lever type valve is moved. Port A. Port B. Casing A Slider. Casing B Port S Fig. 4.18 Movement when the slide of the slide type valve is moved. 4.2.3.3. セトラ分離器と アクティブ分離システム の分離性能比較実験. 従来,マイクロリアクタを適用したスラグ流の分離には,パッシブな分離装置であるセ トラ分離器による分離操作が行われている (11) .本節では,アクティブ分離システムとパッ シブな分離装置のセトラ分離器との分離性能を比較した.アクティブ分離システムに用い る分離装置には,スライド式三方電磁弁を用いた. 始めに,実験で使用するセトラ分離器の構造と分離原理について述べ,スラグ流分離実 験の結果を述べる.性能を比較するために,六種類の比重・動粘度の違うシリコーンオイ ルを使用した. 4.2.3.3.1. セトラ分離器の構造と分離原理. セトラ分離器の構造を図 4.19 に示す.全体のサイズは,40×40×25mm である.分離 板に設けられた溝の形は,一辺 15mm,角度 60°の正三角形である.セトラ分離器は,テ. 48.
(53) フロン製の分離板をテフロン製のベースとアクリル製の押さえプレートで挟む 構造となっ ている.分離板の三角形の切欠きが液溜まりとなる.実験で使用するセトラ分離器の全体 写真を図 4.20 に示し,構成部材を図 4.21 に示す.セトラ分離器は,流路に対し垂直方向 に液溜まりを作り,その上下に二か所の吐出口を設けることにより比重の異なる二液をフ ロー系で分離する装置である.. Fig. 4.19 Structure of settler. Fig. 4.20 Photograph of settler. Fig. 4.21 Photograph of the material which constitutes settler. 49.
(54) 4.2.3.3.2. セトラ分離器 とアクティブ分離システム の比較. 図 4.22 にセトラ分離器を使用したアクティブ分離システムを示す.スラグ流の生成には, スライド式三方電磁弁を使用した.本実験では,各流量を 10mL/h にシリンジポンプを設 定し,スライド式三方電磁弁の駆動周波数を 3Hz に設定した.スライド式三方電磁弁とセ トラ分離器間に内径 0.5mm,長さ 150mm のテフロンチューブを接続した.このときテフ ロンチューブに流れるスラグ流の長さは 4.7mm であった.また,セトラ分離器の上下二 か所の吐出口は内径 1.0mm,長さ 120mm のテフロンチューブを接続し,そのチューブ排 出口は大気開放とした. セトラ分離器は駆動源を用いないで二種の液体を分離するため,液体の粘度,流速,内 部の圧力等に依存し易い.実際にセトラ分離器を用いる場合,流速の安定,セトラ分離器 内の溶液状況,セトラ分離器からの排出口の高さを調整し圧力均衡を保つといった操作が 必要である. アクティブ分離システムとの比較を行うため,ポンプからの送液を始めてから 10 分後 に分離された液体を回収し,その分離率を算出した.. Fig. 4.22. Separation experiment system of the slug flow using settler. 50.
(55) 分離性能を比較するために,六種類の比重・動粘度の違うシリコーンオイルを使用した. 実験で使用したシリコーンオイルの特性を表 4.1 に示す.また,実験で使用する水相は, 食用色素により赤に着色した.. Table 4.1 Properties of matter of the silicone oil Maker. AS one. Shinetsu Silicone. Model number. Ingredient. Kinematic viscosity (mm 2 /s). Specific gravity (25℃). SN-1. Dimethylpolysiloxane. 1. 0.818. SN-2. Dimethylpolysiloxane. 50. 0.96. SN-3. Dimethylpolysiloxane. 100. 0.965. KF-99. Methylhydrogen silicone fluid. 20. 1. HIVAC F-4. Methylphenyl silicone fluid. 37. 1.065. HIVAC F-5. Methylphenyl silicone fluid. 160. 1.097. 図 4.23 にセトラ分離器を用いてスラグ流分離実験を行った様子を 示し,図 4.24 に実験 結果を示す.. 51.
(56) (a) SN-1; Specific gravity is 0.818, Kinematic viscosity is 1 mm 2 /s. (b) SN-2; Specific gravity is 0.96 , Kinematic viscosity is 50 mm 2 /s. (c) SN-3; Specific gravity is 0.965 , Kinematic viscosity is 100 mm 2 /s. (d) KF-99; Specific gravity is 1 , Kinematic viscosity is 20 mm 2 /s. (e) HIVAC F-4; Specific gravity is 1.065, (f) HIVAC F-4; Specific gravity is 1.097, Kinematic viscosity is 37mm 2 /s Kinematic viscosity is 160 mm 2 /s Fig. 4.23 Photograph in settler of the separation using settler. 52.
(57) (b) SN-2; Specific gravity is 0.96 , Kinematic viscosity is 50 mm 2 /s. (a) SN-1; Specific gravity is 0.818, Kinematic viscosity is 1 mm 2 /s. (c) SN-3; Specific gravity is 0.965 , Kinematic viscosity is 100 mm 2 /s. (d) KF-99; Specific gravity is 1 , Kinematic viscosity is 20 mm 2 /s. (e) HIVAC F-4; Specific gravity is 1.065, (f) HIVAC F-4; Specific gravity is 1.097, Kinematic viscosity is 37mm 2 /s Kinematic viscosity is 160 mm 2 /s Fig. 4.24 Photograph of the separation using settler. 次に,図 4.22 の実験システムのセトラ分離器をアクティブ分離システム(スライド式三 方電磁弁を用いた分離装置)に置き換え実験を行った.図 4.25 に実験結果を示す.実験で. 53.
(58) 使用する水相は,緑に着色した.. (a) SN-1; Specific gravity is 0.818, Kinematic viscosity is 1 mm 2 /s. (b) SN-2; Specific gravity is 0.96 , Kinematic viscosity is 50 mm 2 /s. (c) SN-3; Specific gravity is 0.965 , Kinematic viscosity is 100 mm 2 /s. (d) KF-99; Specific gravity is 1 , Kinematic viscosity is 20 mm 2 /s. (e) HIVAC F-4; Specific gravity is 1.065, (f) HIVAC F-4; Specific gravity is 1.097, Kinematic viscosity is 37mm 2 /s Kinematic viscosity is 160 mm 2 /s Fig. 4.25 Photograph of the separation using active separation device. 54.
(59) 表 4.2 にセトラ分離器およびスライド式三方電磁弁を用いた分離装置の分離実験の結果 から,式(4.2),(4.3)より求めた分離率を示す. セトラ分離器を用いたスラグ流の分離結果から,使用するシリコーンオイルの種類が分 離率に影響することを確認した.最も高い分離率を収めた条件は,SN-1 (比重 < 1,動粘 度 1 mm 2 /s)を使用した場合であり,水相 93.7%油相 89.9%であった. スライド式三方電磁弁を用いた分離装置を使用したスラグ流の分離結果は,全ての実験 条件において約 90%前後であり,使用するシリコーンオイルの特性に依存しないことが確 認できた.最も高い分離率を収めた条件は,SN-2 (比重 < 1,動粘度 50 mm 2 /s)を使用し た場合であり,水相の分離率 94.2%,油相の分離率 98.4%であった.. Table 4.2 Separation rate of settler and active separation device Silicone. oil. Separation rate using settler [%]. Separation rate using active separation device valve [%]. Model number. Specific gravity (25℃). Kinematic viscosity (mm2/s). Water. Oil. Water. Oil. SN-1. 0.818. 1. 93.7. 89.9. 93.8. 93.8. SN-2. 0.960. 50. 75.4. 90.9. 94.2. 98.4. SN-3. 0.965. 100. 81.9. 88.0. 88.2. 90.6. KF-99. 1.000. 20. 70.3. 75.9. 93.5. 88.6. HIVAC F-4. 1.065. 37. 67.3. 100. 94.2. 98.1. HIVAC F-5. 1.097. 160. 64.7. 65.6. 85.9. 91.8. 分離率の結果より分離性能を比較し,表 4.3 にまとめた.表中の『◎』は分離率が 95% 以上, 『○』は分離率 90~95%, 『△』は分離率 85~90%『×』は分離率 85%以下を示す. 色が付いた表は,式(4.4)から分離成功率を求めた 90%以上を収めた条件である.セトラ分. 55.
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