• 検索結果がありません。

第 3 章

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "第 3 章"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

3

自動変速機用歯車の転動疲労強度に及ぼす 潤滑油添加剤の影響と効果

3.1 緒言

自動車用のギヤ油や自動変速機油(以下 ATF)は省燃費を目的に低粘度化が図られてい る.一般には低粘度化することにより,ギヤに対するピッチング寿命は低下する傾向にあ るため 1,ギヤの表面処理 2や使用する潤滑油に配合する添加剤の最適化によりピッチン グ寿命の低下を防止している 3,4).しかしながら,省資源の観点より,変速機の小型化や長 寿命化が求められ,さらなるピッチング寿命の向上が期待されている5.自動車用のギヤ油 や,ATF のピッチング寿命の評価には特定の試験方法が制定されておらず,転がり四球試 験や二円筒ピッチング試験の結果を総合して考察し,最終的には実機変速機を用いたピッ チング寿命試験を実施し,潤滑油の疲労寿命を評価している.

一方,工業用ギヤ油のピッチング寿命の評価には,公的な規格試験には至っていないが,

ドイツでは標準試験方法が設定されており6,実機の使用油の選定に使用されている.この ため,最近では自動車用ギヤ油やATFのピッチング寿命の評価にもFZGピッチング試験の 適用が有効であるとの報告がなされている7).また,ピッチング寿命に与える添加剤の影響 については白濱らによりリン系添加剤や硫黄系添加剤のピッチング寿命に及ぼす影響が四 円筒試験を用い報告されている8,9.さらに添加剤を複合した場合のピッチング寿命に対す る影響は試験方法や試験条件によって効果が異なる例が多いが,例えば,基油に自動車変 速機用極圧添加剤を配合するとベアリング疲労寿命が低下するとの報告や 10,歯面の接線 力を小さく抑える潤滑油がピッチング損傷防止に有利であるとの報告がなされている11. そこで本報では,実機変速機で異なった寿命を示した2種類のATFを用い,FZGピッチ ング試験機を用いて寿命差が出た原因を検討し,ピッチング寿命に対する潤滑油の影響を 検討した.ピッチング試験はFZG規格試験条件と歯当たりを変更し,歯すじ方向にオフセ ットした条件で実施し,規定時間毎に歯面の写真を撮影し,ピッチングの進展を観察した.

(2)

さらにはピッチング発生後の歯面の表面分析を行い,添加剤により歯面に形成された化学 反応被膜とピッチング寿命の関係を考察した.

3.2 実験方法

3.2.1 試験油の性状

実験に供した2種の試験油の性状をTable 3-1に示す.両油とも100℃における動粘度が

7.4mm2/sを示す ATFでATF-Aは耐摩耗剤として硫黄系添加剤とリン系添加剤が配合され,

硫黄量が多い仕様となっている.一方ATF-Bは耐摩耗剤として硫黄系添加剤とリン系添加 剤が配合され,硫黄量はATF-Aに比較し少ない配合となっている.

3.2.2 実機ピッチング試験

Table 3-1に示したATFを用い,実機(乗用車)変速機の最終減速歯車のピッチング寿命

を測定した.評価変速機には市場の 4 速自動変速機を用い,モータ駆動で所定のトルクを 付加しピッチング寿命を評価した.試験油温度を120±10℃に設定し,各油種3回ずつ評価 した.歯車の諸元をTable 3-2 に示した.

3.2.3 FZGピッチング試験

Table 3-1 に示したATFを用いFZGピッチング試験を2条件で実施した.その一つはFVA

(ドイツ自動車協会)で提案された6標準条件で,Type Cの歯車を用い油温90±3℃,9ス テージ(302Nm)で実施した.もう一方は過酷なオフセット条件で歯面を10μm斜めに削 り取り,2.25mm歯車をずらして組み合わせた.ピッチングの進展は規定時間毎に歯面の写 真を撮影し観察した.損傷を受けている歯面のピッチング面積が有効歯面の4%(約5mm2) を超えた時点をピッチング寿命とした.FZG ピッチング寿命評価の標準条件における歯車

諸元をTable 3-2 に示した.また標準条件とオフセット条件のギヤ設定摸式図をFig. 3-1 に

示した.

Table 3-1 Test Oil Table 3-1 試験油

Sample code ATF-A ATF-B

Kinematic viscosity

at 100℃, mm

2

/s 7.45 7.39

Viscosity index 200 198

Density, g/cm

3

0.868 0.865

P, mass% 0.03 0.03

S, mass% 0.12 0.06

(3)

3.2.4 FZGピッチング試験後の歯面観察

FZGピッチング試験後の歯面を光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡(SEM)とX線マイクロ アナライザ(EPMA),およびX 線光電子分光(XPS)を用いて表面および表面近傍の状態 を観察した.各 ATFでの標準条件およびオフセット条件でのピッチング試験後のギヤを分 析用に切り出し,表面分析用試験片とした.切り出された試験片はヘキサンによる洗浄を 行い付着した油分,ごみなどを洗い流し,素早く乾燥させたものを用いた.EPMA 組成分 析および元素分布強度の分析は15keV,5×10-8Aで測定し,XPS分析は10kV,10mA,Mg K α線で測定した.

Table 3-2 The specifications for the gear pitting test Table 3-2 ピッチング試験ギヤ諸元 Test name unit AT system

test FZG 9stage

Gear type Reduction

gear

Type-C, pitting gear P inion revolutions rpm 1322 2175

Input torque Nm 1500 302

Number of pinion teeth 21 16

Number of wheel teeth 76 24

Pinion module mm 2.5 4.5

Width of teeth mm 27 14

Pressure angle ° 20 20

Roughness of teeth rms μm 1.3 0.3 Hertizian stess at pitch point GPa 1.8 1.7

Helix angle ° 22 0

Material SCr420H

Chrome steel

16MnCr5E ZF6Standerd

2.25mm

Standard condition Offset condition

10µm

Fig. 3-1 Contact condition of FZG pitting test

Fig.3-1 FZGピッチング試験接触状態

(4)

3.3 疲労試験結果

3.3.1 実機ピッチング試験結果

実機ピッチング試験結果を3点ではあるがワイブル確率紙に記載し,Fig. 3-2に示した.

ATF-AのL50(50%累積損傷確率)の平均ピッチング寿命は約10回であり,ATF-Bの4×

106回に比較し2.5倍の寿命を示した.ピッチングの発生した歯面写真をFig. 3-3に示した.

ATF-Aでは10回で発生したピッチングを示し,ATF-Bでは3×106回で発生したピッチン

グを示した.どちらもギヤかみあい面端部にピッチングが発生していることがわかった.

3.3.2 FZGピッチング試験結果

Figure 3-4に標準条件で実施したピッチング試験結果を示した.Figure 3-4に示すように標

準条件ではATF-AがL50ピッチング寿命で91hを示すのに対し,ATF-Bは307hを示し,ATF-B の方が短い実機変速機での評価結果と同一の傾向にならないことがわかった.この時のピ ッチングの進展する過程を歯面の写真でFig. 3-5に示した. ATF-Aでは56hで,後にピッ チング損傷となるきずが中央部に目視でも見られるようになり,91hで大きな損傷となった.

Test oil ATF-A ATF-B

Optical photograph

Pitting life

(Cycle) 10×106 3×106

Fig. 3-3 Observation of pitting failure on tooth surfaces and pitting life

Fig.3-3 歯面ピッチング損傷の観察とピッチング寿命

100 1000 10000

Fatigue life, ×104cycle

Damage ,%

1 5 10 50 99.999

9590

ATF-B

ATF-A

Fig. 3-2 Pitting life of the ATFs Fig.3-2 ATFのピッチング寿命

(5)

一方ATF-Bでは42hで添加剤に起因する被膜(写真白濁部分)が歯面に観察され,343hで写 真中央から右側に損傷が発生し,357hで中央右側の大きな損傷に発展した.

オフセット条件でのピッチング寿命の結果を Fig. 3-6 に示した.オフセット条件では全 体にピッチングの発生が早くなり,ピッチング寿命は短くなった.ATF-AのL50ピッチング 寿命は標準条件で91h,オフセット条件で81hの寿命を示すが,ATF-Bは標準条件で307h を示したものが,オフセット条件では 45h となり大幅に寿命が短くなった.このように

ATF-Aは過酷なオフセット条件にしてもピッチング寿命の低下は軽微であったがATF-Bは

10 100 1000

Fatigue life, h Damage %

1 5 10 50 99.9

99 9590

ATF-B ATF-A

Fig. 3-4 Pitting life of FZG pitting test at standard condition

Fig.3-4 標準条件におけるFZGピッチング寿命

Test time,h ATF-A Test time,h ATF-B

56 42

77 343

84 350

91 357

Tip

Root

Fig. 3-5 Optical photographs on a tooth of the pinion tested with standard condition

Fig.3-5 標準条件におけるピッチング損傷の進展

(6)

大幅な低下となり,ATF のピッチング寿命の長短が,標準条件とオフセット条件で逆転す る結果となった.その結果,Fig. 3-2に示した実機評価によるATFのピッチング寿命はオフ セット条件におけるピッチング寿命の順列と合致することがわかった.各条件でのL50ピッ チング寿命と共に,各条件で歯面に観察された代表的なピッチング損傷の写真をFig. 3-7に 示した.

標準条件においては,ATF-A, ATF-Bともピッチラインの若干下にピッチングが発生して おり,ATF-A ではほぼ中央に,ATF-B では中央より右寄りにピッチングが発生している.

これに対し,オフセット条件ではギヤ端部にピッチングが発生している.ATF-A および

ATF-B とも同様の位置であり,発生したピッチングの大きさは異なるものの,最端部では

Test oil ATF-A ATF-B

Standard condition

L50Pitting life 91h 307h

Offset condition

L50Pitting life 81h 45h

Fig. 3-7 Example of optical photographs on a tooth of the pinion and L50 pitting life with ATFs

Fig.3-7 ピニオンギヤ歯面の損傷例とATFのL50ピッチング寿命

10 100

Fatigue life , h

Damage ,%

1 5 10 50 99.999

9590

ATF-A ATF-B

50

Fig. 3-6 Pitting life of FZG pitting test at offset condition

Fig.3-6 オフセット条件におけるFZGピッチング寿命

(7)

なく,かみあい領域の若干内側にピッチングが発生している.またFig. 3-3に示した実機に 発生したピッチング形態と比較すると,オフセット条件で発生したピッチングが実機で発 生したピッチングの形態と良く似ていることがわかった.さらにATF-Aの実機の歯先に見 られた表面きずが,オフセット条件における歯先にも発生している.

これらのことから,実機のピッチング評価で見られるような,歯端部で発生するピッチ ングをFZG試験で評価する場合は,歯すじを片当たりさせて歯すじ端部の接触圧力を大き くするような条件を設定する必要があることがわかった.

3.4 歯面分析

3.4.1 FZG試験歯車の歯面接触状態の解析

FZG 歯車を用い,標準条件とオフセット条件の歯面接触圧力分布を計算し,接触圧力の

分布をFig. 3-8に示した. Figure 3-7に示したピッチングの写真と比較すると,ピッチング

発生箇所は両条件とも歯面接触圧力の高い部分から発生していることが確認された.標準 条件ではピッチ点下部のほぼ中央部分でピッチングが発生しているのに対し,歯面のエッ ジ加工を行いオフセット条件で実施した試験では最大接触圧力が約 2 割高くなった歯面接 触端部でピッチングが発生している.

オフセット条件は,歯すじを変えオフセットしたのでエッジ端面がピニオン歯面に当た るようになるため,端部接触圧力がどのぐらい上昇しているかを計算した.端面エッジの 曲率を実測したところ,約 2mm であったので,オフセットを 2.25mm,エッジ曲率半径を 2mmに設定し,円筒が片当たりした条件で接触圧力の増加を計算しFig. 3-9に示した.歯中 央部の最大接触圧力は1.4GPa前後であり,図からわかるように端面の接触圧力は他の部分

の約2倍の2.8GPaとなった.小歯車の端部接触は右側だけでありこの部分にピッチングが

Test condition

Distribution of the maximum contact side pressure on tooth

Maximum contact pressure

Standard condition

Pitting position Center of tooth surface

Offset condition

Pitting position Side of tooth surface

x0.01GPa

Fig.3-8 Relation between contact pressure distribution and pitting part generated on a tooth

Fig.3-8 歯面接触圧力分布とピッチング発生部位

(8)

発生した.左側は大歯車に当たるため,接触回数も少なく,ピッチング損傷は認められな かった.このように,標準条件からオフセット条件に変更することで,ATF-A,ATF-B共ピ ッチング寿命は短くなる.しかしながらその低下度合いが異なり,ATF-A はピッチング寿 命の低下が少ないが,ATF-B はオフセット条件にすることで大幅に疲労寿命が低下し,

ATF-A よりも短い結果となった.この原因は配合されている添加剤のピッチング特性,特

に接触圧力に対する添加剤の影響の違いが大きな因子となっていると考え,疲労寿命が発 生した時点での歯面の表面分析を行った.

3.4.2 歯面表面分析結果と摩擦面生成膜

オフセット条件で実施したピッチング試験後の歯面の光学顕微鏡写真をFig. 3-10に示し た.ATF-Aの歯先には軽度のすりきず痕が見られた.一方ATF-Bの歯先では研削加工目が 残っており,ATF-BがATF-Aに比較し耐摩耗性に優れることがわかった.

一方歯元を観察するとATF-Aでは肌荒れ状態となっており,ATF-Bでは平滑化している Scope area ATF-A (96h) ATF-B (56h)

Tip side

Root side

Fig. 3-10 Optical photographs on tooth near to the tip and root obtained under the offset condition

Fig.3-10 オフセット条件で実施した試験後の歯先と歯元の写真

case2-2

0 50 100 150 200 250 300

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

接触幅 mm

最大接触面圧kgf/mm2

Edge curvature radius 2mm

Contact position, mm

3.0 2.5 2.0

1.0 1.5

0.5

Pmax , GPa

Fig. 3-9 Contact pressure on offset tooth side (Offset: 2.25mm)

Fig.3-9 オフセット歯面の接触圧力(オフセット2.25mm)

(9)

ことがわかった.この歯元部分のSEM写真およびEPMAによる元素分布をFig. 3-11に示し た. Figure 3-11 のSEM 写真で見ると,光学顕微鏡で肌荒れ状態が観察された部分は数十

m程度のはく離部分と平滑化された台地上の形状が観察された.これに対しATF-Bの表面 は平滑化されており脱落部分は無いことがわかった.表面の元素分布をみるとATF-Aでは 硫黄(S)が検出されたがATF-Bでは検出されなかった.リン(P)に関してはATF-Aでは 中~高濃度に,ATF-Bでは中濃度に検出された.酸素(O)の分布はATF-A,ATF-Bともリ ンの分布と一致していることから生成したものはリン酸化合物であることがわかった.一

方ATF-Aで検出された硫黄はSEM写真で示した強い摩擦を受け高温になったと思われる台

地上の所に検出され,硫化物と推定された.

XPS 分析では,試験ギヤ表面の組成分析とアルゴンガスエッチングを行いながら深さ方 向の分析を実施した.リンおよび硫黄に着目し,その分析結果をTable 3-3にまとめて示し た.

Scope area ATF-A ATF-B

SEM

micrographs

S

P

O

Fig. 3-11 SEM micrographs and element distribution by EPMA Fig.3-11 SEM写真とEPMAによる元素分布

(10)

各試験ギヤ歯面には添加剤元素から生成したと推定される40~125nm のリン被膜が見られ,

試験条件間の比較では標準条件がオフセット条件に比較し厚い被膜であることがわかった.

油種間の比較ではATF-B のほうが厚い傾向にあった.被膜の成分は検出されたリンの結合 エネルギーが132.6eVを示したことよりリン酸鉄と同定された.一方,硫黄に関しては標準 条件では検出されず,ATF-Aにおけるオフセット条件でのみ表層に検出された.Figure 3-11 の硫黄の分布と合わせると高摩擦面で生成した硫化物と考えられ,検出された硫黄の結合 エネルギーが161.6eVを示したことから硫化鉄と同定された.

3.5 考察

ピッチング寿命への添加剤の影響についてFZG歯面分析結果を用いて考察した.各歯面 に形成された添加剤被膜を模式化し,その時のピッチング寿命時間をFig. 3-12に示した.

Table 3-2 に示したように約 1.7GPa と計算される標準条件では歯表面に観察されたリン被

膜はATF-Bが約2倍の厚みをもっている.このことからリン被膜の形成性はATF-Bの方が

ATF-A より良好であり,ATF-B の厚いリン被膜が,ピッチング寿命低下の防止に繋がって

いると考えられる.オフセット条件にするとピッチングは端部に発生し,その時の端部接

触圧力は2.8GPaとなっている.このため形成される被膜は薄くなり,ピッチング寿命は大

幅に低下する.しかしながら,ATF-Aに配合されている硫黄系添加剤は,高接触圧力下(高 温)で摩擦面に作用してピッチング寿命の低下を緩和していると考えられる.このような ことからオフセット条件ではATF-Aのピッチング寿命がATF-Bを用いた場合より長くなり,

標準条件と比較しピッチング寿命の優劣が逆転したと推定される.

以上の考察より,実機におけるピッチング寿命をFZG試験で評価する場合,実機で発生 する疲労損傷形態に近づけるべくFZGの評価条件を変更していく必要がある.また潤滑油 のピッチング寿命は配合する添加剤の特性に大きく左右され,実機での使用条件に合致す る形で,添加剤の最適化を図る必要があることがわかった.

Table 3-3 Properties of tribofilm by XPS Table 3-3 XPSによる境界潤滑膜の特性 Test condition

Test oil ATF-A ATF-B ATF-A ATF-B

Thickness, nm 65 125 40 45

Maximum

concentration, mass% 15 19 7 3

Chemical species Iron phosphate Iron phosphate Iron phosphate Iron phosphate

Thickness, nm 15

Maximum

concentration, mass% No detection No detection 2 No detection

Chemical species Iron sulfide

S

Standard condition Offset condition Element

P

(11)

3.6 結論

FZG ピッチング試験機を用い実機変速機における歯車のピッチング寿命を評価する方法 を検討し,さらに自動変速機用潤滑油添加剤の影響について考察した.その結果以下のこ とがわかった.

(1) 潤滑油の実機ピッチング寿命の傾向を FZG ピッチング試験で再現するには,実機相当 の片当たり条件を設定する必要がある.

(2) FZGの標準条件および歯すじ形状を変えたオフセット条件において,ピッチング発生箇

所は歯面上の最も接触圧力の高い歯面端部から発生し,オフセット条件では実機の発生 箇所に近似し,ピッチング寿命の長短も実機と同等となった.

(3) FZG試験条件により,潤滑油のピッチング寿命の相対的長短が逆転するのは,摩擦面で

作用する添加剤が変わるためであり,ATF-Aは標準条件ではリン系添加剤が摩擦面に観 察されるのに対し,オフセット条件では硫黄系極圧剤が観察された.一方ATF-Bでは標 準条件,オフセット条件ともリン系添加剤が摩擦面に観察された.ATF-A がオフセット 条件でピッチング寿命の低下が少ないのは接触圧力が高い条件(高温)で硫黄系添加剤が 作用しているためと推定した.

(4) 上記結果から添加剤システムがピッチング寿命に与える影響は,低面圧条件(1.7GPa)

ではリン系添加剤の選定によりピッチング寿命を3倍程度変化させることができ,高面 圧条件(2.8GPa)では硫黄系添加剤を配合することでピッチング寿命を2倍とすること が可能である.

Condition ATF-A ATF-B

Standard (1.7GPa)

Offset (2.8GPa)

91h 307h

81h 45h

Fig. 3-12 Relation between tooth surface model and fatigue life

Fig.3-12 歯面の表面モデルと疲労寿命の関係

Sulfur Phosphorus

(12)

3章の参考文献

1) 滝 晨彦 : 歯車の耐ピッチング強度に及ぼす潤滑油の影響, 潤滑,28, 8 pp.603-607, (1983).

2) 陳 勇・山本明弘・大森克之 : 歯表面改質処理による浸炭歯車の接触疲れ寿命の改善, 日本機械学会機素潤滑設計部門 MPT2004 シンポジウム<伝動装置>講演論文集, pp.159-162, (2004).

3) Kurihara & O.Kurosawa: Design and Performance of Low-Viscosity ATF, SAE Tech Pap.

SAE-2007-01-3974 (2007).

4) H.Fujita, Y.Takakura & T.Ikeda: Study of Low Viscosity ATF with Extending Gear Fatigue Life, SAE Tech Pap Ser.SAE-2007-01-1976 (2007).

5) 藤 田 裕 : 省 燃 費 駆 動 系 潤 滑 油 の 潤 滑 性 向 上 技 術,ト ラ イ ボ ロ ジ ス ト, 53, 7 pp.456-461, (2008).

6) FZG Pitting test: FVA Research Project No.2/IV “Influence of Lubricants on the Pitting Capacity of Casecarburized Gears in Load-Spectra and Single-Stage-Investigations “(July 1997).

7) S. Li, M. T. Devlin, J. Milner, R.lyer & T. Jao : Investigation of Pitting Mechanism in the FZG Pitting Test, SAE international 2003.01-3233 (2003).

8) 白濱真一・ 宮島 誠・岡村敦夫:転がり疲れに及ぼすリン系添加剤の影響, トライボ ロジスト,46, 7, pp.564-570, (2001).

9) 白濱真一・中村純一:転がり疲れに及ぼす硫黄系添加剤の影響,トライボロジスト, 46, 7 pp.571-577, (2001).

10) H. P. Nixon : Effects of Extreme Pressure Additives in Lubricants on Bearing Fatigue life, Iron and Steel Engineer, pp.21-26, December (1998).

11) 山田寿夫・武居正彦・田本芳隆:歯面の摩耗およびピッチングに及ぼす潤滑油の影 響,トライボロジスト,43, 4 pp.317-324, (1998).

参照

関連したドキュメント

本製品はFCC規則パート15のBクラスデジタルデバイスに対する制限を遵守しているかを

(第3図:B)でも略ヒ同様の位置を示すが,ヒの

第四章では、APNP による OATP2B1 発現抑制における、高分子の関与を示す事を目 的とした。APNP による OATP2B1 発現抑制は OATP2B1 遺伝子の 3’UTR

昭33.6.14 )。.

締約国Aの原産品を材料として使用し、締約国Bで生産された産品は、締約国Bの

しかし私の理解と違うのは、寿岳章子が京都の「よろこび」を残さず読者に見せてくれる

操作は前章と同じです。但し中継子機の ACSH は、親機では無く中継器が送信する電波を受信します。本機を 前章①の操作で

 第1楽章は、春を迎えたボヘミアの人々の幸福感に満ちあふれています。木管で提示される第