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有馬地域の温泉,鉱泉の水素と酸素の同位体比 について

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岡山大学温泉研究所報告 第43号 (1974)15‑28頁

有馬地域の温泉,鉱泉の水素と酸素の同位体比 について

松 葉 谷 治, 酒 井 均

岡山大学温泉研究所 化学部門

鶴 巻 道

大阪市立大学理学部地学教室 (1974年1月4日安だ )

1. 序

温泉水の起源 につ いて古 くか ら潜存成分の濃度や組成 を手がか りとした考察がなされて きたが,化学成分だ け では十分にその 目的を果す ことがで きなか った.一九 CRAIG(1963)が水の水素 と酸素の同位休比を利用 して 温泉水の起源を明 らかにす ることを試みて以来 ,この方 法は温泉水,地熱地等の噴気,地層水,流体包有物など 多 くの ものに応用 され ,それ らの水がほ とん ど天水(me‑ teoricwater)起源であることが 明 らか にされて きた.

我 々は日本各地の温泉水,鉱泉水につ いて水素 と酸素 の同位体比,溶存硫酸のイオウと酸素の同位体比,およ び漆存主成分につ いての研究を行 ない,それ らが成 因お よび物質の起源か らみて次の4つの型に区分 され ると結 論 した (M ATSUBAYAelal.,1973;SAXAIandM ATStJ BAYA,1974).第1は 海岸温泉型で,海水 と天水の混合 系が熱 水化 した ものである.水の水素 と酸素の同位体比 は海水 と天水の中間の値で あり,一部では用田の岩石 と の問で酸素同位体交換が行なわれて いる.溶存成分は硫 酸 カル シウムの沈殿,周囲の岩石 と溶液の問の反応 など により海水 とはかなり違 った ものにな っている.第2は 有馬温泉型で,塩濃度が高 く,天水 に比べて重水素 およ び重酸素が濃縮 されている.特 に重酸素はいちぢ るしく 濃縮 されている. これは火成作用の さいに若 しょうか ら 放出された水か,あるいは高温で岩 しょうや岩石 と強 く 相互作用 した水,また変成作用の さいに岩石 と相互作用 した水 と考え られ る.これは成因的な区分であ り,その 根 元 的 な起 源 につ いては 問 題 と して いない.これは

W HITE (1957,a,b)の定義 による magmatic water とmetamorphic waterに対応す る.第3はグ リー ン タフ型で,グ リー ンタフ地層に浸透 した天水に熟 と溶存 成分が加わ った ものであ る.水素 と酸素 の同位体比はそ の地域の天水の値 とほぼ一致 している.また,潜存硫駿 はそのイオウ同位体比か ら見て大部分が海水起源 と考え られ るが,化学組成 は海岸温泉型 と同様 に岩石 との相互

作間などによ り海水 とは異 な って いる.第4は火 山性温 泉型で,第4紀の火 山活動 に関連 した ものであ る.水の 起源は天水であるが, しば しば CRAIG (1963)の指摘 しているよ うな同位体的変質が起 り重水素 と重酸素が濃 箱 されてい る.

先の2編の論文(M ATSUBAYAeial.,1973;SAXAIand

M ATSUBAYA,1974)で有馬温泉D 成 因についてはすで に論 じて きたが,本論文で

三他の高塩濃度の温泉 ,鉱泉 , 池田土山苗の地層永などと比較 しなが ら有馬温泉の成因お よご起源につ いて少 し詳 しく考察す る.

2.有馬温泉の概曙

有馬温泉は六 甲山地の北蝕 こ演出 しており,その泉質 から3つの型 に分 けられ る.第 1は泉温が中ないし低温 で景濃度が高 く炭酸濃度 も高 い もの,第 2は高温で塩濃 度 は高いが炭酸濃度が低 い もの,第3は低温で塩濃度が 低 く炭酸濃度の高 い ものである.高塩濃度の ものはいわ ゆ るN a‑Ca‑Cl型で ,陽 イオンはお もにナ トリウム と カル シウム,陰 イオ ンは塩素か らな り

,

濃度が海水の2 倍以上の もの もある (池乱 1955;鶴巻,1964).

六 甲山地の北側は白亜紀中ない し後期の流紋岩類 (有 馬層群)か らなり,南別にはほぼ同時期の六 甲花 田岩が 買入 して いる.六 甲山地の東側には厚 い第4紀の堆積層 (大阪層群)で被われた大阪盆地があ り,北側には第3 紀の堆積層 (神戸層群)で被われた三 田盆地がある.ま た西側の播摩盆地では神戸層群の上を第4紀の堆積物が 薄 く被 って いる.六 甲山地 こ三大阪盆地に向 って束 に延び る六 甲断層帯の西端 にあ り,東西万 札 北東一南西方向 に大小数 多 くの断層がある (藤 田 と笠間,1971).

射場 山北麓の流紋岩類 と六 甲花 間岩の境 に射場 山断層 が あ り,この断層 に沿 って上記第3型の炭酸泉が 自然湧 出 して いる.高塩濃度の ものに この断層の北側の流紋岩 を湧出母岩 とし,100‑300mの深 さか ら湧出 して いる.

これ らの高塩泉の起源 としてミま岩 しょう水が考え られて いるが (益富,1955;中村,1962).地下 に岩塩層の存在

(2)

を仮定 しているもの もある (松平,1955).

有馬の東 ,六 甲断層帯上の宝塚や生瀬に も上記第1型 と類似 した鉱泉が湧出 して いる.また大阪の南 ,河内長 野市石仏地域 にも同様な鉱泉がある.この鉱泉は炭酸ガ スを採集 している会社の井戸で,領家変成器の変成岩を 湧出母岩 としている.ここではこの変成岩の上 に第4紀 層 (大阪層群)が30‑50mの厚 さで堆積 して いる.

3. 実験および結果

試料採集は1965年 10月,1973年1月,1973年5月の3 回にわた って行なわれた.1965年10月の採集は岡山大学 の草地氏,1973年1月のは神戸市経済局の松木氏 によ っ て行 なわれた.1973年5月 には宝塚鉱泉 および石仏地域 の鉱泉 もあわせて採集 した.

水素 同位体比 については,試水を750oCに加熟 した金 属 ウランで還 元 し,得 られた水 素 ガスにつ いて重 水素 用質量分析計 (日 立 製)で測定 した (FRIEDMAN and W ool)COCl(,1957).測定の一部は東京 教育大学の松尾 禎士博士の研究室で行なわれた.酸素 同位体比につ いて は,試水 と同位休交換平衡に した炭酸ガスについて同位 体比用質量分析計 (日立製)で測定 した(EpsTEIN and MAYEDA,1953;松葉谷 ら,1971).溶 存 炭 酸 について は,現場で一定量の試水に塩化バ リウム溶液を加え密栓 し,実験室 に持 ち帰 り,炭酸バ リウムを遠沈法で洗浄, 分離 し,重量法で濃度を定量 した後通常の リン酸分解法 により炭 酸ガスに 変え (McCREA,1953),重炭 素濃度 を測定 した.

同位体比は次式に示す ように,ある標準試料 に対す る 千分率偏差 (%O)により表わされ る.

ここでSXは,重水素濃度(8D),重酸素濃度 (8180), または重炭素濃度 (813C),Rは同位体比 (D/H,180 /'60,または13C/12C)であり,Ⅹ ほ試料を, STは 標準試料を意味す る.標準試料は,水素 と酸素の場合は SMOW (標準平均海水)(CRAIG,1961),炭素の場合は PDB(矢 石類)(CRAIG,1957)である.

これ らの測定結果はすでにMATSUBAYAeial・(1973) で発表 してあるが,再び第1表に示す.化学分析は,19 65年10月の試料 (.T;I‑ 4)につ いては草地氏により行 なわれた ものであ り,1973年5月の試料 (ノ16:9‑30)に ついては塩素 と全炭酸だ けである.参考のために化学組 成 を挙げてお く(MATSUBAYAeiall,1973を参照).

Table1. IsotopICratiosofwater in Arima,Takarazuka,and inJanH 1973,and otIlerSin

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ll 1 2

13 14

70177 70175 70176 70178 73111

有馬地域

天 神

極 楽

有 明

妬 地 獄 谷 炭 酸 泉

≡;::: I: ;::

73112 岳 有 馬 井

73208 i 天 神 1

73209 … 有 呪 2 号 73211 ∃】御 所 73210 E 妬

≡;…11… l霊 泉 全 霊 15 】 73215

16 17 18 19 20

21

22 23 24 25 26 27 28

簡 易 保 険 月

蛇 谷,龍 泉

園閣

98 98 98 98

17 ll.d.

n..d n.d.

pppp・l1801bbb65432

73214

73220

73226 73224 73223 73227

…仏地域 塚 ! 20 天 見 Y ≡ 21 天 見, P F 17 1 1

73225 ! 天 見, R … 21 73221 : 天 見,

29 : 73228 石 仏 井

1

nU2nn

B水 .rLL.」

(3)

有馬地域の温泉,鉱泉の水素 と酸素の同位体比につ いて

andcarbonateandthemajorelementcompositionofthermaland mineralwaters lshibotokeareas. SampleNos.1‑4werecollectedinOct.,1965,sampleNos.5‑8 May,1973.

17

S D ,%

。18.80,%。

<

く く く 55.45nnnnnnnn6656555n adaddddd4444444d

6.0

<5.4

<5.4

く5.4

<5.4

‑27.8

‑35.5

‑35.6

‑38.4

‑50.4

+6.5 +4.2 +4.5 +1.9

‑8.3

‑48.3 】 ‑8.3

二∴ 二…̲

‑32.6

‑39.1

‑40.1

‑41.2

‑43.0

‑49.7

‑36.8

‑47.7

‑43.8

‑51.4

‑49.3

+5.7 +2.4 +0.6

‑0.9

‑0.8

‑7.6 +4.3

‑6.1

‑3.3

‑8.3

‑8.0

:4437:65 I I37.'37

0425一一

962844

‑49.2

‑47.8 く5.4 】 ‑52.5

406667 ddaaddnnnnnm n.d.

n.a.

‑4.I

‑5.6

‑6.2

‑4.2

‑5.4

‑6,8

‑5.7

‑3.5

‑2.9

‑7.7

‑8.1 ll.d.

‑3.2

0897mnnm108655 0604dada9984 134036034636 80810260914

350

417 198 125 101

‑7.3 26.4 i

‑48.2 ! ‑7.4 n d 15 i

‑52.0 ! ‑7.9 ; n.d. 0.6

aaddadddnnnnnnnn 4042202329601‑1‑ 38496ddd

8 nnn 58086465▲l1l1

45.4400000000

1C]l19999 0000 055645447777 2450000000000

79597CO8697 00000

085075一461277787 5

0

053

7 .4

8 49074725 0000 183422160000

063777887746 CO266 568388618801141

(4)

4. 考 察 4‑1 泉質の差 について

有馬温泉は古 くか ら知 られてお り,その研究 も数多 く なされて きた.三宅 ら(1955,a,b)は,高温型の泉源 数個についての詳 しい調査の結果, 1つの泉源で塩濃度 が2倍以上 も変動す ること,塩素 とカル シウム.鉄,ホ ウ素などの濃度の問に正の相関があること,塩素濃度 と 水温あるいは炭酸濃度の間に負の相関があることか ら, 高温,高塩濃度,低炭酸濃度の もの と低温 低塩濃度, 高炭酸濃度の もの との2水系があり,それ らの混合によ り種 々の泉源がで きていると結論 した.これ と類似 した 考えは他か らも提唱 されていたが,炭酸については地下 に炭酸ガスとしての供給源を考え,炭酸泉はそれが地下 水に溶け込んだ ものと考えた (益富,1955;松平,1955; 岡本,1955).

鶴巻 (1964)は有馬地域のほ とんどすべての泉源につ いての調査の結果,塩素 と臭素,ホウ素,カル シウム と マグネシウムの和,鉄などの濃度の問には正の相関があ るが,塩素濃度 と水温あるいは炭酸濃度 の間には相関関 係は認められないことを兄いだ した.例えば,蛇谷の鉱

6180,%

‑5

0

泉 は1964年,1965年の調査では,水 温 はそれぞれ28, 22oCであるが,塩素濃度は0.94,0.86eq/Jで高温型の 天神 (1.15eq/l)と大差な く,一方全炭酸は 71mmole/l

(1965年) と炭酸泉の2倍の値である (鶴巻,1964,19 65).鶴巻(1964)はこれ らの芙事に加え中 ・低温型高塩 泉が比較的広い範囲にあるのに対 して高温型高塩泉は狭 い範囲にかぎられ ることを考え合せ,(1に の地方の地下 には低温で高炭酸濃度の塩水が広 く存在 してお り,高温 型のものは局地的な熱源により二次的に加熱 され炭酸を 失 った ものである,(2)泉源による塩濃度,水温の差は地 下水による希釈の程度や加熱の程度の差による,(S鑑 の 散失 した炭酸ガスは地下浅所で地下水に潜解 し炭酸泉 と なった り,一部の低温型高塩泉に も溶解 していると結論 した.

今回の同位体比に関す る結果は鶴巻 (1964)のこのよ うなモデルにより矛盾な く説明され,このモデルが妥当 であることを示 している.第1図に示すように水のSD 値 と8180値は この地域の河川水の値か ら重水素 と重酸 素を濃縮す る方 向に勾配ほぼ1の直線上に並ぶ.また, 8180値 と塩素濃度の問に も第2図に示す ような良い直 線関係が見 られ る.図示は しないが,8D値 と塩素濃度

O

Ah .righbrh

● Arh ,b〟tDIT他用一m 叫 briB .Cu bcndewatm ,arKJrrKdecrjcvvatcn

O T

hkaraAh brb

LshixdDkebrim ardnvteork wabrs

Figl18Dvs.8180diagram forthermaland mineralwatersin Arima, Takarazuka,andlshibotokeareas.

(5)

有馬地域の温泉,鉱泉の水素 と酸素の同位休比について

○ / / ○

● ○

/

/

。/ ◎ 2 i

A&iid=i ;oTl蒜 b。鵬

㊥ Arima,thebrineofthemaLXirTWmSalinityrseethetext

J

◎ 丁 razukabrine

[コIshibtokebrinesandmeteoricwaters(Cl;0)

0.5

Cr,eq/l 1.0

Fig.2 Relationship between8180and chlorideconcentration in thermal and mineralwatersin Arima,Takarazuka,and Ishibotokeareas.

の問にも同様な直線関係がある.これ らの関係に見 られ るように,中 ・低温型高塩泉 と高温型高塩泉が同一の関 係を示す こと, および

8 D

値 と8180値の関係の一端 が地下水 と同 じ天水起源の河川水の値であることはこの 地域の温泉,鉱泉が地下にある唯一の塩水 と天水起源の 地下水 との混 合 系 であることを示 している.そ して, 中 ・高温型の ものの中にも過去において高温型 と同程度 の塩濃度を持つ ものがあった ことか ら考えると,鶴巻 ( 1964)の考えのように,この ミ地下の塩水ミは低温で高 炭酸濃度であり,高温型の ものはそれが二次的に加熟 さ れ炭 酸を 失 った ものと考えるのが 芸 当のように思われ る.炭敢泉の

∂ D

値 と880倍が河 川水のと同 じであ ることは,この散失 した炭酸ガスが地下浅所で地下水に 溶解 した ことを示 している.

中 ・低温型高塩泉 と高温型 高塩泉 との問で

∂ D

値 と

8 ユ 8 0

値の関係に差がないことは,この局所的 熱源によ る加熱が水 と周囲の岩石 との問で酸素同位体の交換を起 させ るほど激 しいものではないことを意味 している.こ のことは,高温型のものがあまり高温まで加熱 されなか ったか (恐 らく200

o

C 以下 と思われるが),あるいは加

19

熟 された状態が短時間であ った ことを意味 している.

第1図,第2図に示すように,宝塚 と石仏地域の鉱泉 の

8 D

,8 1 8 0

倍および塩素濃度の関係が有馬地域の もの とまった く同 じであることは,これ らの地域にも有 馬の ミ地下の塩水ミ と同 じようなものが存在 しているこ とをほのめか しており,注 目に値す る.

上記のような2水系の混合は炭酸の

8 1 3

C 値の結果を ある程度うま く説 明す ることが で きる,8

1 3

C 値を全炭 酸 と塩素の濃度比に対 して図示す ると第3図のようにな る.蛇谷や月光園では8

1 3

C は‑3一一4%Oであ り,全炭 酸 と塩素の濃度比は0.025であるのに対 し, この比が大 きいものは

8 1 3

C 値が‑6.8‑‑8.1%Oと低い値になる.

また高温型の ものは低温型よりやや低い値を示す.この

8

1

3C 値の差は定性的には 加熱による炭酸ガスの散矢の さいの同位体分別によって説明す ることがで きる.散失 す る炭酸ガスは溶存状態の ものに比べて

1 3 C/

12C比が小 さ く, したが ってそのような炭酸ガスが溶解 した ものは 低 い

8 1 3

C 値を持つ.一方,高温型では炭酸ガスの敵失 によりpHが上 り炭酸 カル シウムが沈殿 しは じめる.こ の炭酸カル シウムは8

1 3

C に富んでおり, したが って炭

(6)

ぎー6○

i(l0

‑8

0

o

● ●

□ ◎

0.1 1 10 100

(

C

q2+rq )/Cr

O

Ah ,hightenp ture 仙 S

● Arh ,lo肌ItOm曲 11teq kd LJrebdrNS

◎ Arirnacartxmatewaters

◎ 17h ukabdT

[仙 t

o k et

xh

F i g . 3

813Cvs.the ratioofto

t

alcarbonatetochlorideconcentrations .

酸ガスの 散矢 と炭 酸 カル シウムの沈 殿の効 果 が 相殺 さ れ,高温型では元の値 とあまり変 らない値になると考え

られ る.

4‑2 ミ地下の塩水ミの起源

有馬地域に存在を推定 した ミ地下の塩水ミの同位体組 成は 第1図,第2図の直 線 上 のどこかに あるは ずであ る.今までに測定されている最高の塩素濃度の塩水を一 応 この ミ地下の塩水ミ とみなす と,池田(1955)が天神 について 1.23eq/Jという値を報告 している.この値に 対応す る8180億は+8.2%oとなり,8I)値は第1図の 右端の2点をどう扱 うかによるが‑25‑‑30%Oの範囲 と なる. したが って, この ミ地下の塩水モは塩素濃度1.20

‑1.25eq/(,8180 倍 +8.0‑+8.5%0,8D値‑25一一 30%0,の値を持 っていると推定され る.

このような同位体比を持 った熱水は火山性熱水で,岩 石 といちぢるしく酸素同位体交換を起 した ものに見 られ るが ,そのようなものは一般に低塩濃度である (例えば, 秋田県後生掛の大湯沼は8D‑‑28.1%0,8'80‑+5.4

%O,で あ るが 塩 素 濃度は Hppmである.あるいは, CRAIG(1963,1966),W IHTE(1968)を参照).先の論 文では,この t地下の塩水ミの起源 として,有馬,宝塚

地域のはこの地域の花転岩質岩 しょう水の残 りであり, 石仏地域のは領家変成作用の時に存在 していた水である と推 定 した (M ATSUBAYAetalリ1973).しか し,カナ ダのアルバークーやアメ リカのイ リノイの油田地帯の地 層水が同位休的に も化学的に もこの ミ地下の塩水ミと類 似 しており,成因的に共通点があるのではないか と思わ れ る.そこで この2つの可能性について考察する.

4‑2‑1着 しょう水起源の場合

有馬温泉の起源が岩 しょう水であるということは古 く か ら考え られていたが,中村 (1962)は化学組成,溶存 ガス中に水素ガスが多いこと,試すいコア中に閃亜鉛鉱 などの硫化鉱物が含 まれることなどか ら,この塩水はこ の地域の花拭岩質岩 しょうか ら発散 した揮発性成分が凝 縮 した ものと考えた.

花尚岩質岩 しょうが固結するさいに,高塩濃度の水が 放出 され ることは 古 くか ら考え られれおり,鉱 床 に と もなう石英などの流体包有物の塩濃度が数 eq/Jになる ことな どもその結 果 と考 え られ ている. KILINCand

BURNHAM (1972)あるいは H oLLAND(1972)は花尚 岩質 ガラスと水 の問での塩 類の分配に関す る実 験 によ り,水のほうに塩類がいち じるしく濃縮することを実証

(7)

有馬地域の温泉,鉱泉の水素 と較素の同位体比について した.

中国地方の領家変成帯の北側に沿 って産出する広島花 尚岩休やそれに対比され る六 軌 茨木,苗木などの花尚 岩類の石英の 8180値は+9.5‑+ll.5%。の範囲に入 り, その国籍温度は酸素同位体温度計より550‑650oCであ ると推定されている(MATSUHISAetalり1973;MATSU

HISAetal.,1973;本間,1973).これ らの花靖岩類が団 結 した時にそれ と平衡にあ った水の 8180億は石英 と水 の間の分別係数を用いて計算することがで きる.一例 と して,+10.5%Oの石英 と平衡にある水の8180値の温度 変化を,CLAYTONelal.,(1972)の 分別 係数 を使 って 計算す ると第2表に示すようになり,500‑ 600oCでは +8.2・‑+9.2%oとなる.

Table2. Calculated 8180 valuesofwaterin equilibrium withquartzthatareexamples forgraniticrocksin Arimaarea(8180

+10.5%o) and for metamorphic rocksin lshibotokearea(+17.0%o).

Temp.oCi Arimaarea ; Ishibotokearea +9.2 r +15.7

000032

塩素濃度が1.20‑1.25eq/I,8180倍が+8.0‑+8.5

%。と推定 された有馬の モ地下の塩水ミほ上に述べたこと か ら考えると,この地域の花街署類が固結 したさいに放 出 した岩 しょう水であると考え られ る.一方,後で述べ るように岩 しょう水の

S D

値は固結 したさいの含水鉱物 と放出された水の量比,岩 しょう中の水の起源などによ り定め られ るもので,問題は複雑である.黒田 ら(1973) は北上山地の白亜紀花街岩類の黒雲母 と角閃石の

8 D

値 を測定 し.その値 か ら鈴 置 とEpsTEIN (1972)の 含水 鉱物 と水の間の分別係数を用い,これ らの鉱物 と平衡に ある水の

8 D

値は‑28%oであると推定 した.この値は有 馬の ミ地下の塩水ミの推定値,‑25‑‑30%Oと良 く一致 している.この北上 山地の花尚岩矧 ま有馬の花福岩類 と 同 じような成因によるもの と考え られており

,8 D

値の 一致は有馬の ミ地下の塩水ミが岩 しょう水であると考え

られ る 1つの根拠 といえる.

有馬の ミ地下の塩水ミを岩 しょう水 と考えると,上に 述べたような高温の状態がいかに して凍結されたか とい う点が問題になる.岩 しょうの固結のさいに放出された

21

水がその後岩体 と共存 していると,当然岩休 と同 じ温度 でゆっくり冷えてい くと考え られ る.その場合,300Qc 位 までは岩石 と水の問で同位 体交換が起 り,水の 8'80 値は 第2表 に示す ように かなり低い値 になるはずであ る. したが って,同位体的に国籍時の状態を凍結す るた めには,放出された水が別の所で急冷され るような何 ら かの過程が必要であるが,現在のところこの点について は未解決のままである.

宝塚鉱泉は六甲花田岩体の規模か ら考え有馬地域の も の と同一の もの と考え られ る.石仏地域の鉱泉は恐 らく 飯家 変成 作用の時 に存在 していた水 と推定 され る.山 口県柳井地域の 領家変成岩類の石英は+16‑ +18%Oの 8180倍を持 っている(MATSUmSAeial.,1973;本間, 1972).石仏地域の 変成岩類 が同様な8180倍を持 って いると仮定す ると,第2表に示すようにそれ と平衡にあ る水の8180値が+ 8%。位になるためには,300oC程度 で平衡にあ った ことになる.

岩 しょう中 の 水 そ の ものの 起 源 としては,処 衷 水 (juvenilewater),循環水(天水起源),遺留水(connate water,主 として海水起源) などが 考え られ る.岩 しょ

う中では ケイ酸 塩 鉱 物 と水 とは 同位体 交換平衡ににあ り,酸素についてはケイ酸塩鉱物のほうが圧倒的に多い ため,水の 8180倍はケイ酸塩鉱物の値によって定めら れ る.一万

,8

D 値は起源の水の値を一応保存 している と考え られ るが,花田岩質岩 しょうのように団結のさい に水を放出す る場合,固結 した含水鉱物 と放出された水 との問では同位体分別が起 り,また結晶分化作用の場合 は晶出 した含水鉱物 と残 った岩 しょうの問で も同位体分 別が起 ると考え られ る. したが って,含水鉱物や放出さ れた水の

8 D

値は多 くの場合岩 しょう中の

8

D 値その

ものを表わ していないと考え られ る.

今まで,含水鉱物,火 山ガラス,流体包有物,地熱地 帯 の塩水などについての

8

D 値の測定結果 もかなり報告 されており,天水 と同 じような‑50一一150%.の範囲に 入 るものが多い (例えば,FRIEDMAN and SMITH,19 58;KoKUBUetalり1961;GoDFREY,1962;SHIEtiand TAYLOR,1969;SHEPPARD and EpsTEIN,1970;Moo‑

RE,1970,ASHEPPARDCial.,1971,・黒田ら,1973,・RyE, 1966;OHMOTO and RyE,1970;CRAIG,1966).この 一部ではその測定値あるいは分別係数を用いて計算され たそれ と平衡にある水の値を岩 しょうの値であると推定 している(RYE,1966;SHEPPARD and EpsTEIN,1970;

黒田 ら,1973),しか し上に述べた点についての配慮が欠 けており,これ らの推定は十分なもの とはいえない.普 た,一部 にはその水 を単 なる天 水起 源の循 環水 と考え ているもの もある(CRAIG,1966;OHMOTO andRyE,

(8)

1970).

有馬の ミ地下の塩水ミ について推定された8D 値,

‑25‑‑30%Oと鈴匿 とEpsTEIN (1972)による分別係 数を用いると,有馬の花尚岩類中の含水鉱物の8D値は およそ‑60%Oと推定 される.この花尚岩類が固結す る前 に岩 しょう中に存在 していた水のSD値はこの2つの値 の問に くるはずである.花尚岩類の場合,含水鉱物 とし て含まれ る水の量は0.5%位であり,一方,岩 しょう中 に存在す る水の量は,有馬のように比較的浅い所で圧力 の低い状態で水に飽和 しているとす ると,1‑2%程度 と推定 され る. したが って,含水鉱物 として残 る水 と放 出される水の割合は1:1ない し1:3となるので,岩 し ょう中の水の

8

D 値は含水鉱物 と放出された水の値の中 間かそれよりも放出された水に近い値 となる. しか し, LUTH (1969)の指 摘す るように花尚岩質 岩 しょうが地 下深所ですでに水に飽和 しており,上昇による圧力の減 少に したがい連続 して水を放出 して きた とす ると,放出 され る水は鈴 匿 とEpsTEIN (1972)の分別 係数か ら見 て重水素に富んでいると考え られ, したが って岩 しょう 中に残 る水はだんだん とSD値の低いものとなってい く はずである.この場合,岩 しょう生成時の8D値は地下 浅所で国籍 した時の値に比べてプ ラス柳にずれているこ

とになる.

W mTEetalり(1973)は,カルフォルニアのコース トレ ンジの高塩泉について.その8D値(‑10‑‑30%o)が海 性堆積物中の含水鉱物(8D‑‑50‑‑80%O,SAVIN and EpsTEIN,1970)と間隙水 として とりこまれた海水が高 温で再平衡に達 し,海水のSD値が0%.よりマイナス側 にずれた ことによると説明している.MATSUHISAetal・ (1973)は茨木花田岩体の 起源 として海水の 影響を受 け た塩基性変成岩の可能性を指摘 しているが,そのような 岩石中の水が海性の含水鉱物や海水であるとす ると,花 尚岩質岩 しょう中の水の8D位が海水よりもある程度マ イナスの値を持つ ことを うま く説明す ることがで きる.

4‑2‑2堆積盆中の地層水起源の可能性

カナダのアルバ一夕‑,アメ リカのイ リノイ, ミシガ ン,メキシコ湾沿岸の池田地帯の堆積盆中の地層水は, 6D値 が 海 水 と天水の中 間で,880値が 天 水 に比べ ていちぢるしくプ ラスにずれた高 塩 濃 度の塩水である (CLAYTONetal.,1966,・GRAFeial.,1965;GRAFetal,,

1966;HITCIION and FRIEDMAN,1969).また,塩素濃 虎はO.2‑0.4eq/lと海水よりも希薄であるがSD値 と 8180倍が これ と類似 した温泉,鉱泉がある.日本では, 青森,秋 田の県境 の矢立,湯の沢,秋 田県の油田地帯の 森 岳,田屋,群 馬 県の磯 部,八 塩などで (SAI(AIand MATSUBAYA,1974),またか レフオルニアのコース トレ

ンジに も同様なものがある(W mTEeial.,1973). これ らの うち塩素濃度が海水より低 いものは,第4図 に示すように8D値 と塩素濃度の関係が海水 とその地域 の天水の値を結ぶ線上に並び,海水 と天水の混合物であ ることを示 している (SAEAIand MATSUBAYA,1974;

W HITEetal.,1973).

Cl‑,eq/l O.2 0.4

‑20

‑40

160

自 .,

ロ ロ ロロ

● ● ● ▲ ● ●

■ ■

I IYatate.Yunos粥

+Ydio,lsobe

Moritake.Taya

諾 恕 ia.S ,I,;)q es

Fig.4 Relationship between ∂D and chloride concentration in somesalillethermaland mineral waters of SD and 8180 values higherthan localmeteoricwatersand of chloride concentrationslessthan thatof seawater.

一方 ,アルバーター盆 とイ リノイ盆の地層水について 8D 値 と塩素濃度の関係を第5回に示す と,両者 ともほ ぼ平行な直線関係を示 し,塩 素 濃 度leq/Jの増加に対 して 8I)値は14%。高 くなる(GRAFeial.,1966)*1.こ れ らの地層水の成因としては,堆積物が圧縮 され水が し ぼ りだされ る過程で,限外波過 (ultrafiltration)とか 半透膜効果(semi‑permiablemenbraneeffect)など といわれている現象*2により,漆存塩類あるいは同位体 の分別が起 った と考え られている.また,8180億がプ ラスにずれ るのは炭酸塩鉱物 との間で低温での同位体交

*1 GRAFeial(1966)ではleq/lあた り7,8%oとな っているが,計算違いによると思われ る.

*2 DoNNANの膜平衡 の概念を拡大 して このような言 葉を用いた と考 え られ るが,実 際は イオン交 換,吸 着,拡散,分子噴散 (moleculareffusion)などの

現象が組合さった もの と考え られ る.これ らの現象につ いての各イオンや同位体の問に生 じる差が,全体 として は堆積物に対す る透過性の差 となり,イオンや同位体の 分別が起 ると考え られ る.

(9)

有馬地域の温泉,鉱泉の水素 と酸素の同位体比について 23

。./

JQAq

Fig・5 Relationship between∂D andchlorideconcentration oftheArimadeep brine,formationwatersinillinoisand Albartabasins,and fluid inclusions oftheMississIPPiValley Typelead‑zinicdepositsin illinoisbasin・

closed circlesand open trianglesare formation watersinillinoisand Albartabasins,respectivelybyGRAFeiall(1966);closed squaresformation watersin Alberta basinby HlTCHON and FRIEDMAN (1969);Open squares fluid inclusions in the Mississippi Valley Type depositsby HALL and FRIEDMAN (1963). The8D valuesofthosefluidinclusionswereConverted toSMOW scalebased onthe8D valueofLakeMichiganwaterof‑42%。

relativetoSMOW (FRIEDMANetal.,1964).

(10)

換が起 っているため と考え られている(CLAYTONeial., 1966;HITCI王ON andFRIEDMAN,1969).しか し,SD 値については, この透過性の差による分別の程度につ い て意見がかな らず Lも一致 して いない.HITCIION and FRIEDMAN(1969) W HITEeial.(1973)はaD位 はおもに海水 と天水の混合比によって決め られ,透過性 の差 による分 別 の 寄 与 は小 さいと考えて いる.一方, GRAFetal.(1965)はこれ らの地層水のSD値 と8180

倍を統計的に処理 し, これ らは天水起源の水が重水素を 濃縮す る方 向に変質 した もの と判断 し,定常的に浸透 し て くる天水が堆積物中を移動す るさいの透過性の差 によ り,同位体分別が起 った と推定 した.そ して,化学組成 より始めに存在 して いた海水の20‑30倍の量の天水が寄 与 して いると推定 した (GRAFetalリ1966).

copLEN andHANSHOW(1973)とHANSHOW and CopLEN(1973)は圧 指 された 粘土中を水が通過す るさ いに,重水素,重吸気 および溶存イオ ンが選択的に取 り残 されることを実験的に確かめ,同位俸分別係数 とし て ,重水素は2.5%。,重酸素は0.8%。という結果を報告 し て いる. しか し,塩類の分別につ いては実験が十分でな

く,重水素 と塩類の濃縮比は求め られていない.

この程度の分別係数では実際に起 っている20‑40%oも の重水素 の濃縮は とて も期待で きないが,恐 らくこの分 別係数は水の透過の距離に応 じて大 きくなると思われ る ので,20‑40%。もの分別が起 る可能性はかな らず Lも否 定で きない.アルバ一夕一会や イ リノイ盆 の 地 層水の

8

D 値 と塩 素 濃度が同 じ勾 配の関 係を示 して いること は,重水素の濃縮が同 じ過程で行なわれた ことをほのめ か しているように思われ る.

有馬の ミ地下の塩水ミの8D値 と塩素濃度の関係を第 5図に示す と,この関係はイ リノイ盆の地層水 のもの と 類似 してお り,有馬地域の天水の値(SD

‑50%o)とを 結ぶ とその勾配 はアルバ一夕ー盆やイ リノイ盆のものと ほぼ同 じになる.また,GRAFetal.(1966)は堆積物中 を水が透過す るさいにナ トリウムとか レシウムの分別が 起 り,塩濃度の増加に比例L Na/Caの値が減少す るこ とを兄 いだ して いる.有 馬の ミ地下の塩 水ミの Na/Ca 値 と塩濃度の関係はアルバークー盆やイ リノイ盆の地層 水 のものと良 く一致 している.これ らのことか ら考え, 有馬の ミ地下の塩水ミはアルバ一夕ー盆やイ リノイ盆の 地 層水 と同 じ成 寵の ものではないか と想像 され る.

もし有馬の ミ地下の塩水ミが このような堆積盆中の地 層水であると仮定す ると,六 甲断層宥により大阪盆地の 東端 とつなが っていると考 え られ る有馬,宝塚地域 と, 大阪盆地の南端 の石仏地域にほぼ同質の塩水が存在す る ことおよび三 田盆地には海性堆積物がほ とん ど無いこと

か ら考え,大阪盆地内にこのような地層水が広 く存在 し ていたのではないか と想像 され る.現在 のところ,大阪 盆地 の中にこのような地層水が存在 している証拠はない が,八塩鉱泉のように第3紀の海水起源の水が三波川変 成器 の結晶片岩の中に浸入 し,そのまま現在 まで保存 さ れている例 もあ り(SAXAIand MATSUBAYA,1974), 大阪盆地のある時期の地層水が六 甲断層帯の花尚岩類や 領家変成器の変成岩 の中だ けに残 った とも考え られ る.

このような高塩濃度の地層水がで きるまでにどの位 の 時間が必要なのかはまだ解 っていないが,大阪盆地の堆 積物が第3紀以後の ものであるのに対 して,アルバ一夕 一会やイ リノイ盆の ものは盲世代以来の ものであ り,午 代的には大 きく違 って いる. しか し,第5図に示す よう にイ リノイ盆のデボ ン紀ない し石炭紀の地層中に旺胎す る ミシシッピー ・バ レ‑型鉱床の流体包有物の8D値 と 塩素濃度の関係はイ リノイ盆の地層水の もの とま った く 一致 しており(HALLandFRIEI)MAN,1963),この鉱床 の生成時には同位体組成 も化学組成 も現在の もの と同 じ 地層水がすでに存 在 して いた と考 え られ る(W EITEet βJリ1973). したが って ,このような地層水がで きるまで にかな らず Lも長い時間を必要 としないと考え られ る.

臭素やホウ素の濃度は しば しば温泉水 の起源を考え る のに用 い られて きた.有′臥 宝塚 ,石仏地域につ いての 測定値を比較のために他の温泉,鉱泉の値 とともに第3 表に示す,先に述べたように有馬,宝塚,石仏地域では 臭素 とホウ素濃度は塩素濃度 と良い相関性を示すが,そ

Table3.Atomicratiosofbromineandboron tochlorine contentsofbrinesin Arima, Takarazukaandlshibotokeareascompar‑ edwithsomethermalandmineralwaters.

sa‑ple × 10

3

× 102

有 馬 0.7 1.1

宝 塚, 石 仏 1.1 2.1 矢 立, 湯 の 沢1) 0.7‑1.0 1.1‑1.3 八 塩, 磯 部2)1.3‑1.5 2.8‑5.5 カ リ フ ォ ル ニ ア

コ ー ス ト レ ン ジ3) 0・7‑1・6 0・7‑14・8 イ リ ノ イ 盆 の 地 層 水4) 0.8‑2.2

アルバータ‑盆の 地 層水4)1.1‑3.4

日 本 の 池 田 塩 水1) 0.9‑3.6 1.3‑4.9 日 本 の 火 山 性 温 泉1) 0.4〜1.8

海 水5) 1.5 0.08 1)太秦 ら(1960),2)高瀬 (1964).3)W 王ⅠITECi al.(1973),4)GRAFeial.(1966),5)TheOceans ed.by H.U.SvERDRUPetal.

(11)

有馬地域の温泉,鉱泉の水素と酸素の同位体比について の濃度比は有馬地域 と石仏地域ではやや差があ り,宝塚

のは石仏地 域のとほぼ 同 じである,Br/Cl値 は 池田塩 水の場合は海水の値よりも大 きいものが多 く,火 山性温 泉の場合は小さいものが多い (太秦 ら,1960). しか し, 先に述べた海水起源の熱水 と考え られ る矢立,湯の沢, あるいは政敵 八塩,あるいはカルフォルニアのコース トレンジの ものは海水の値に近いかむ しろ小 さいものが 多い.有馬 ,宝塚 ,石仏地域の も海水の値 よりほ小 さい.

アルバ一夕‑盆の地 層水 は海水の値 より大 きい値の も のが多 く太秦 ら(1960)の傾向と一致 しているが,イ リ ノイ盆のは海水の値 とほぼ同 じである.一方,有馬,宝 塚,石仏地域の B/Cl値は,第3紀の流紋 岩 類 と強 く 相互作用 した と考え られ る矢立,湯の沢の値 と似ている が,池田塩水の範閑とも重なっている.アルバ一夕‑盆 やイ リノイ盆の地 層水のB/Clの値がな いので 十分な 比較はで きないが,Br/C1値やB/C1値 については起 源によるは っきりした差が認め られず,有馬,宝塚,石 仏地域の塩水が岩 しょう水であるか海水起源の ものであ

るかをこれ らの値か ら判断す るのは無理である.

溶存炭酸の 8

1 3 C

値については,有馬,宝塚,石仏地 域の塩水の起源の値は‑3‑‑5%Oと推定 され,海性の 炭酸塩鉱物の一般的な値,‑3‑+4%Oと熱水鉱床やカ ーボナイ トなど地殻起源の ものの一般的な値,‑ 5‑‑

9%。との中間になり,これか らも岩 しょう起源か海水起 源かを判断す ることはで きない.

5. ま と め

有馬地域の温私 鉱泉の8D値 とBT80倍は この地 域の河川水の値 (SDニ ー5(搭0,8180‑ ‑8.2%o)か ら 最 も重い 同位体を濃宿 した 天神の値 (8D‑‑278%0,

880‑ +6.5%o)まで広範囲に分散す る. しか し,その 8D 倍 と8180倍の問および8180値 と塩素濃度の問に は泉温,泉質に関係な くきれいな直線関係がある.この ことは,この地域の地下に唯一の塩水が存在 しており, それが地下水 と種 々の割合で混合 しているという鶴巻 ( 1964)の考えと矛盾な く一致 している.今までに報告さ れている最高の塩素濃度の塩水をこの ミ地下の塩水ミと みなす と,その塩素濃度は1.20‑1.25eq/

I ,

6'80 倍は +8.0‑‑+8.5%0,8D値は‑25・一一30%oであると推定 さ れ る.また,この ミ地下の塩水ミほ高炭酸濃度であり, その炭酸の813C値は‑3‑‑ 5%。と推定 され る.

有馬地域の温泉,鉱泉が 白亜紀後期の流紋岩類を湧出 母岩 とし, ヒ地下の塩水ミについて推定 された8180値 が この地域の花崩岩類 と500‑600oCで平衡にある水の 値 とほぼ一致 していること,および花LILj告質岩 しょうの 団結のさいに高塩濃度の水が放出され ると考え られてい

25

ることか ら,この モ地下の塩水ミは この白亜紀後期の花 筒岩類が固絵のさいに放出 した岩 しょう水であると考え られ る.宝塚および石仏地域の鉱泉の8D値,8180値 , および塩素濃度の関係は有馬地域のものと良 く一致 して いる.このことか ら,宝塚鉱泉は有馬地域のものと同 じ 起源であると考え られ,また,石仏地域の鉱泉は領家変 成作用時に存在 していた水が地下水で薄め られた ものと 推定され る.

花尚岩質岩 しょうが水を放出す る場合,放出された水 と含水鉱物の間には水素同位体の分別が起 っていると考 え られ る.このことを考慮す ると,岩 しょう中に存在 し ていた水の∂D値は放出された水の値 と含水鉱物の値の 問に くるはずである.この値は,放出された水 と含水鉱 物中の水の量比,あるいは岩 しょうが団結す る以前か ら 水に飽 和 し連 続 して水 を 放出 していた かどうかによる が,有馬地域の場合,放出された水について推定 された 値 (‑25一一30%o)と同 じではないとして も,恐 らくそ れほど違 っていなか った と思われ る.

一方,イ リノイ堆積盆中の地層水は同位体的にも化学 的に も有馬の モ地下の塩水ミと類似 している.特に8D 値 と塩素濃度の関係はほぼ一致 している.このような高 塩濃度の地層水は堆積物中における各イオンや同位体の 透過性の差により塩類や重水素が濃縮 されたと考え られ て いる (CRAFelal.,1966).した が って,8D値 と塩 素濃度の関係が一致 していることか ら有馬の ミ地下の塩 水ミが成因的にこのような地層水 と同 じであったのでは ないか と想像され る.もし,大阪盆地にこのような高塩 濃度の地層水があ ったと仮定す ると,石仏地域に有馬地 域 と同質な鉱泉があることを うま く説明す ることがで き る.

ここに挙げた 2つの可能性にはどちらに も若干の問題 点があり,どちらがより確か らしいかについては結論を だす ことがで きない.岩 しょう起源の場合,500‑600oC という高温状態がいかに凍結されたか という点が問題で ある.水の8180値が+8%。以上の高い値を持つ ことは 炭酸塩鉱物 ,堆積岩 ,あるいは変成岩のような高い8 180 値を持つ ものと低温で同位体交換平衡にあるためとも考 え られ,かならず Lも火成岩 との高温での平衡を考えな くて も良い.一方,地層水起源の場合,現在のところ大 阪盆地内にこのような高塩濃度の地下水が存在 していた 証拠はな く,また堆積物中を水が移動す るさいに塩類 と 重水素が同時に分別を起す という考えはまだ確定的なも のではない.

この結論をだすためにはさらに今後の研究を得たねば ならない.他の高塩泉についての調査を進めてい くのも 1つの方法 と思われるし,また白亜紀花満岩類の流体包

(12)

有物についての研究 も意味あるものと思われ る.

謝 辞

温泉水をいただ き,また分析値などを使わせていただ いた岡山大学教育学部の草地功氏,試料採集でいろいろ 街助力いただいた神戸市経済局の松本氏,天見炭殴ガス の迂三条芳雄氏に感謝す る.重水素濃度の一部を測定 して いただいた東京教育大学理学部の佐竹洋氏に感謝す る.

岡山大学退去T77‑究所の茄

末吉

憲運転手,真長里実,上付 多鶴恵,山埼美津江嬢に,試料採集,実験,ならびに論 文作成においていろいろ手伝 っていただいた.

引 用 文 献

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HYDROGEN AND OXYGEN ISOTOPIC RATIOS OF THERMAL AND MINERAL SPRINGS IN ARIMA AREA

by OSAMU MATSUBAYA and HITOSHI SAKAI, Division of Chemistry, Institute for Thermal Spring Research, Okayama University, and MICHIJI TSURUMAKI, Department of Geosciences, Faculty of Science, Osaka City University.

(Received January 4, 1974)

Abstract. Saline waters of thermal and mineral springs in Arima area, at Takarazuka, and in Ishibotoke area of Kawachinagano City indicate wide ranges of

oD

and 0'80 values (Table 1).

Excellent linearity exists between the

oD

and

0

'80 values (Fig. 1) and between the 0'80 value and the chloride concentration (Fig. 2). These facts as well as the chemical evidence of the previous investigators strongly support the view that Arima springs are admixtures of a single deep brine and local ground water (TSURUMAKI, 1964).

The deep brine may have the 0'80 value of +8.0 - +8.5

%0,

the

aD

value of -25 - -30

%0.

and the chloride concentration of 1.20 - 1.25 eq/l, which were estimated from the water of the

maximum salinity so far reported. Because the thermal and mineral springs in Arima area closely associate with the upper Cretaceous granitic rocks, and the estimated

0

'80 value of the deep brine is similar to a value of water in isotopic equili- brium with those granitic rocks at 500 - 600°C, the deep brine of Arima might have been the magmatic water of those granitic rocks. The mineral springs at Takarazuka and in Ishibotoke area also show the similar linearity among Cl-, 0'80 and

oD

to those in Arima area. Therefore it is assumed that the mineral springs at Takara- zuka may be of the same origin as that in Arima area, and the mineral springs in Ishibotoke area might have been the fluid associated with Ryoke metamorphic rocks.

Alternatively, the deep brine in Arima area may be isotopically and chemically similar to the saline formation waters in Illinois basin (GRAF et al., 1966). The high

aD

values and salinities of those formation waters were attributed to the isotopic and chemical fractionation during the passage of water through sediments. The deep brine in Arima area may be genetically similar to those saline formation waters. If such a saline water could have formed in Osaka basin, it IS

not surprising to find out the similar brines at Arima and Ishibotoke which are the northwestern and southeastern rims of the basin, respectively.

At the present, it cannot be answered which of these two models is more probable. Further studies on other saline springs fluid inclusions of Cretaceous granitic rocks may be useful in order to solve this problem.

参照

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