資料番号 192 – 2 平成18年度 熱処理業における安全性向上に関する調査研究 成果概要表 社団法人 日本工業炉協会
調査研究の目的 調査研究の主な実施内容・成果
熱処理技術で、主流である雰囲気熱処理の加熱方式は電気加熱方式と 燃焼間接加熱方式の二種類があり、本調査研究は燃焼間接加熱方式の ラジアントチューブ加熱設備を対象としたものであり、実機規模での燃焼試 験やシミュレーション解析を行い、要求される条件での設備的問題点の摘 出や、設備トラブルの原因究明と対策など熱処理業における安全性向上 に関する調査研究を行う。
実施成果の概要
今回の調査研究は熱処理業における安全性向上に関する調査研究であ り、その意味で、例えば、実機規模の試験では被加熱物を想定した冷却箱 を作成し熱負荷の試験を行った、また、チューブの周方向温度分布やチュ ーブ内温度など今まで行われていないデータも多く取得し貴重なデータが 得られた。加えて、安全上重要な要素となる異常燃焼時の検討を加えたこ とは、今までにない成果といえる。これを元に設備安全のガイドラインを全 てではないが、重要なものについて、まとめることができたことは、大きな 成果である。今後に繋がる調査研究であったといえる。
当分野における本テーマの位置付け・ポイント
熱処理業は燃焼方法や設備が多様であり、今回のテーマは熱処理業の 中で重要な装置であるラジアントチューブ式間接加熱設備のラジアントチ ューブに着目して取り組んだものである。現在はこの技術の熱処理業の安 全に関する分野において、統一的な指針がなく、今後、この結果を踏まえ 基準化に繋げたい。
1.実機規模燃焼試験及び解析
1)燃焼試験:リジェネバーナ、従来バーナ、シングルエンド式バーナと、被加熱物を想定した装置を 備えた実機規模試験を用いて実機の条件でテストを行った。その結果、各種バーナ、チューブの特性 が分かり、また、シミュレーション解析のためのデータが得られた。(図 1~13,写真 1~5)
2)理論解析:実機に近い条件の試験データを FEM でチューブの温度分布、応力分布を解析し、燃焼 時のチューブの強度上の問題点を明らかにした。その結果、通常の操業状態ではチューブの破損に 繋がる応力は発生しないことや、チューブの寿命について数値的裏づけを行った。(図 14~25)
3)異常燃焼の検討: 着火不良等の異常燃焼(爆轟、爆燃)について、今回検討し、異常燃焼時のチ ューブ内圧力変化が特定出来た。(計算式:表 1,表 2)
2.熱処理業の安全ガイドラインの検討
上記 1)、2)、3) 図 26 から地ラジアントチューブの設備安全ガイドラインを作成した。以下に今回の ガイドライン案を作成した。(図 27~32)
1) RT 温度分布+自重による長期負荷に対する設計応力は、RT 材料の RT 使用温度における 0.0001%/Hr クリープ応力以下が基準となりうる。
2) 異常燃焼による RT 内圧力が発生した場合の設計応力は、RT 材料の760℃における 0.2%耐力 に対し十分な安全率(5倍以上)となることが重要である。
3) 燃焼安全のため下記の設備を有することが望まれる。
(1) バーナの適切な保炎機構(2) 長火炎形のバーナ(3) 火炎検知器と燃料遮断装置(4) 自 動着火装置 (5) 排ガス中の酸素、可燃ガスまたは一酸化ガスの異常を検知して燃料を遮断す る装置
4) 100%燃焼時 RT が最高温度となる部分の直上に過熱検出熱電対の設置を少なくとも1ケ所を燃 焼制御帯に 1 つ設けることを推奨する。
最近の内外動向 今後の課題及び展開
熱処理業において、省エネと製品の高品質化のニーズは益々高くなり、そ の両方の改善にリジェネ式ラジアントチューブ加熱方式が多く利用される 傾向が強くなった。これに伴い、設備の機能、制御性、安全性に対する要 求も厳しくなっている。一方、海外では、従来の技術をベースとした国際的 な基準作りが進んでおり、日本の優れた固有技術を世界に広めるために、
日本は固有の技術に配慮した基準を作り、国際標準化につなげることが 重要である。
今回、安全性の向上を目的にラジアントチューブ加熱設備に関する調査研究を行い貴重なデータ及 び解析結果を取得でき、その結果からこの設備に関する安全のガイドラインを作成した。今後は、燃 焼式の設備に関し、更に細部にわたる調査と対策を検討し、その上で標準化につなげる。
<今後の重要な課題>
①電気加熱方式の熱処理炉の安全基準の検討
②雰囲気炉設備に関する安全検討他
熱処理設備には手付かずのものも多くあり、順次検討をする必要があり、危険源の特定とその対策を
写真 1φ194RT(リジェネ式バーナ装着)試験炉写真 図 1 φ194RT 試験炉図面
2806
ガス接 続口 3/8 空気接続口 3/8
2000 1501700150 400900400 1000 100800100
150
250
1000
100 800 100
上 部 に R T が 取 り付 か な い 場 合 、 本 蓋 を 取 付の こ と 150
106
24 2313(FIPL)
50
2502.5(CAPL)
2343.5(BA3)
(700)
65 264.5 454 423.5
2400 2806
15st15st
189.5st R Tフ ラ ン ジ 頭
両 面 親 ロー プ
RT受台
RT組立後セラミックファイバーで埋め込みの事 T.C予備
熱電対(素線)取出し後現合にて穴開けのこと RT用吊ピース
n=1ヶ所
空気接続口 3/8 ガス接続口 3/8
ホットAIR出口
冷却空気入口 冷却板
写真 2 冷却箱写真 図 2 冷却箱の構造と取り付け位置
235
1580(RT)
2082.5 402.5
φ
I D=500
写真 3 水平ストレートチューブ・シングルエンドバーナ試験炉写真 図 3 水平ストレートチューブ・シングルエンドバーナ試験炉構造図
図 1 W形チューブ熱電対配置
冷却箱
B1 50
円周4点 A4 熱電対 : Kタイプ
A1 A2 A3
16A5
15
A6 No 1~ 16 : φ3.2素線、溶接
14
A7 No : 追加分、φ3.2
1 2 3
No B1 : 可動式、φ6.4
C1
4シース形
No C1 : 可動式、3.2φ
6 5
シース形
7
(RT内温度)
放射温度計
900
8 9熱電対 No 1~13に対し、計測
10
可能な覗穴から温度計測.
13 12 11
サーモビュア(可能であれば)
熱電対 No1~3 に対し、計測 可能な覗穴から温度分布計測、
特に昇温、負荷時.
287 426.5
冷却箱用熱電対 φ3.2シース
RT:φ194/177, SCH22,13 冷却空気入出口 各1点
冷却箱表面 2点
A1~A7500 500 500
200 300 200
200
図 4 W 型 RT 外観と熱電対の配置図
200×6=1,200 200
282.5 97.5
1,580
熱電対 K形
No1~8 :素線φ1.6又は シースφ3.2 A1~A3 :φ3.2シース B1 :φ6.4シース
C1 :φ3.2シース(RT内 温度)
放射温度計
熱電対 No 1~8 に対し、計測 可能な覗穴から温度計測.
サーモビュア(可能であれば)
熱電対 No2~7 に対し、計測 可能な覗穴から温度分布計測、
特に昇温、負荷時.
熱電対位置
1 2 3 4 5 7 8
6 B1
A1,A2,A3 C1
写真 4 シングルエンド RT のチューブ外観と熱電対取付け写真 図 5 シングルエンド RT のチューブの寸法図と熱電対配置図
写真 5 φ194RT(レキュ式ラジアントチューブバーナ装着)試験炉写真 図 6 レキュ式ラジアントチューブバーナ構造図
図 7 蓄熱式ラジアントチューブバーナ全体図 図 8 蓄熱式ラジアントチューブバーナ構造図
図. 9 シングルエンドバーナとチューブ図 図 10 シングルエンドバーナ構造図
図 11 TEST NO.01-1 リジェネ RT の温度分布図 図 12 TEST NO.10-1 レキュ RT の温度分布 RT温度分布
760.0 780.0 800.0 820.0 840.0 860.0 880.0 900.0 920.0 940.0 960.0 980.0 1000.0
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 長さ(mm)
温度(℃)
RT温度分布
760.0 780.0 800.0 820.0 840.0 860.0 880.0 900.0 920.0 940.0 960.0 980.0 1000.0
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 長さ(mm)
温度(℃)
A 燃焼 B 燃焼
炉内温度: 899℃
バーナタイプ: レキュ式
メインバーナガス流量: 8.5m3N/h パイロットバーナガス流量: 0.32m3N/h
空気比: 1.18
冷却空気流量: 22.6m3N/h
炉内温度: 900℃
バーナタイプ: レジェネ式 メインバーナガス流量: 8.5m3N/h パイロットバーナガス流量: 0.25m3N/h
空気比: 1.22
冷却空気流量: 70.2m3N/h
図 13 TESTNO.19 セラミック RT のチューブ表面温度
温度分布
700 800 900 1,000 1,100 1,200 1,300 1,400
0 500 1000 1500 2000
長さ(mm)
温 度 (℃ )
RT表面温度 RT内温度
図 14 汎用 FEM 解析 メッシュ分割図
650 700 750 800 850 900 950 1000
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000
長さ方向位置(mm)
温 度 (℃ )
270度 180度 90度 0度 0度の測温値 90度の測温値 180度の測温値
図 16 縦弾性係数
図 15 ラジアントチューブの長手方向温度分布
図 17 RT累積使用時間とクリープ強度の関係
KHR35H steel
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
0 200 400 600 800 1000
Temperature(℃)
縦弾性係数,GPa
解析に使用 測定値
累積使用時間とクリープ破断強度の関係
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
700 800 900 1000 1100 1200
使用温度
クリープ破断強度(MPa)
100時間 1,000時間 10,000時間 100,000時間
実炉の使用範囲 16.4MPa
(リジェネ式バーナ,炉温 900℃) (リジェネ式バーナ,炉温 900℃)
図 18 炉壁側の温度分布 図 19 被加熱物側の温度分布
(リジェネバーナ,炉温 900℃) (リジェネバーナ,炉温 900℃)
図 20 炉壁側のミーゼス応力分布図(チューブ内:大気圧) 図 21 被加熱物側のミーゼス応力分布図(チューブ内:大気圧)
(リジェネバーナ,炉温 900℃) (リジェネバーナ,炉温 900℃)
図 20 炉壁側のミーゼス応力分布図(内圧+0.6MPa) 図 21 被加熱物側のミーゼス応力分布図(内圧+0.6MPa)
(従来型レキュバーナ,炉温 900℃) (従来型レキュバーナ,炉温 900℃)
図 22 炉壁側の温度分布図 図 23 被加熱物側の温度分布図
(従来型レキュバーナ,炉温 900℃) (従来型レキュバーナ,炉温 900℃)
図 24 炉壁側のミーゼス応力分布図(内圧+0.6MPa) 図 25 被加熱物側のミーゼス応力分布図(内圧+0.6MPa)
15.999
19 表 1 爆燃及び爆轟発生時の最高到達圧力の計算式
表.2 爆轟によるチューブ移動距離の計算式 計算方法
1) 爆燃の場合
① 断熱火炎温度 Tad(K)
・多成分系化学平衡計算プログラム(専用)を使用。
② 最高火炎温度 Tmax(K)
・火炎からの輻射損失係数を 0.25 と仮定すると、最高火炎温度 Tmax は(1)式で表される。
Tmax=(1-O.2:5)Tad=0.75Tad (1)
③ 燃焼前後のモル数比 N/N0
・ メタンの場合
CH4+2O2+(2×O.79/0.21)N2→CO2+2H20+(2×0.79/0.21)N2 N/N0=(1+2+2×0,79/0.21)/(1+2+2×0,79/0.21)=1
・ プロパンの場合
C3H8+5O2+(5×0.79/0.21)N2→3CO2+4H20+(5×0.79/0.21)N2
N/N0=(3+4+5×0.79/0.21)/(1+5+5×0.79/0.21)=25.81/24.81=1.04
④ 最高圧力 Pmax(MPa)
・初期圧 P0、燃焼前後の温度比 Tmax/T0及びモル数比 N/No を考慮すると、最高圧力 Pmax は(2)式で表される。
Pmax1=P0・(N/No)・(Tmax/T0〉 (2) 2) 爆轟の場合
① 最高火炎温度、最高圧力、爆轟波伝播速度 管内一次元爆轟計算プログラム(専用)を使用
計算方法
定常爆轟波(速度 V1(m/s)、断面積 A (m2)、密度ρ1(kg/m3))が、ラジアントチューブの仮想壁(質量 M(kg)、加速度α(m/s2)、作用時間 T(s)、チューブの軸方向変位Δ L(m))に衝突して静止すると仮定すると、次式が成り立つ。
・定常爆轟波の高圧部に関して(力積が運動量変化に等しいと仮定):
F・t=m・(V1-V2)=(ρ1・A・V1)・(V1-V2) (1) (1)式に t=1(s)、V2=0(m/s)を代入すると、
F=ρ1・A・V12 (2)
・ラジアントチューブの仮想壁に関して(運動方程式及び変位の式が成り立つと仮定):
F=M・α (3)
ΔL=αT2/2
(4) (2)、(3)よりαを求め、(4)に代入すると、チューブの軸方向変位ΔL(m)は次式が得られる。
ΔL=ρ1・A・V12・T2/(2M)
(5)
ただし、ラジアントチューブの内径 d(m)、外形 d(m)、有効長さ Le(m)、密度ρ(kg/m3)とおくと、質量 M(kg)は、次式で表わされる。
注;図中の*印は本調査研究で初めて研究された項目
図 26 ガイドラインの構成図
RT実機規模試験 RT内異常燃焼の検討 1.RT長手方向温度計測 *1.RT内爆燃、爆轟の検討 *2.冷却箱による熱負荷試験 *2.爆轟によるRT移動の検討 *3.RT円周方向温度分布(有負荷) *3異常燃焼対策の検討 *4.リジェネバーナによるRT内
温度と外表面温度計測 *5.RT直上距離とその温度 6.正常燃焼時RT内圧
RT応力シュミレーション
*1.RT長手及び円周方向の温度分布 +RT自重 による 応力解析。
*2. 1項に異常燃焼時発生するRT内ガス圧力を加えた 応力解析。
本調査研究に基づくRT設備安全ガイドライン 1.RT温度分布+自重 による長期負荷に対する設計応力基準。
2. 1項に異常燃焼によるガス圧を考慮した短期設計応力基準。
3.燃焼安全のための設備要求事項。
4.RT過熱防止のための温度検出場所。
RT応力シミュレーション
図 28 爆轟時の RT 内最高圧力図
図 27 爆燃時の RT 内最高到達圧力図
図 29 RT 外径を変えた場合の爆轟による軸方法変位図
爆燃最高到達圧力
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
0 200 400 600 800 1000
初期温度(℃)
最高圧力(MPa)
爆燃最高圧力
爆轟最高圧力
0 0.5 1 1.5 2
0 200 400 600 800 1000
初期温度(℃)
最高圧力(MPa)
爆轟最高圧力
爆轟による軸方向変位
0 50 100 150 200 250
0 50 100 150 200 250
RT外形(mm)
軸方向変位(nm)
軸方向変位(nm)
図 30 高圧持続時間と RT 軸方向変位図 図 31 KHR35H の 0.0001%Hr クリープ応力図
爆轟による軸方向変位
1 10 100 1000 10000
0 20 40 60 80 100 120
持続時間(μS)
軸方向変位(nm)
軸方向変位(nm)
0.0001%/Hr クリープ応力
1 10 100
600 700 800 900 1000 1100 1200
温度(℃)
応力(MPa)
応力(MPa)
図 32 KHR35H の高温抗張力、0.2%耐力図
KHR35高温強度
1 10 100 1000
0 200 400 600 800 1000 1200
温度(℃)
強さ(MPa)
高温強度 0.2%耐力