論文内容要旨(甲)
論文題名 感染症を呈した慢性腎臓病患者における生命予後予測のスコ アリングモデルの作成と検証
掲載雑誌名 昭和学士会雑誌 第79巻 第 5号 2019年
専攻名 内科系内科学(腎臓内科学分野) 林 純一
内容要旨
慢性腎臓病 (chronic kidney disease:CKD) 患者では腎機能正常者と比 較して感染症罹患時における予後が不良である. 感染症を呈した CKD 患 者における生命予後を予測するモデルについてはこれまで検討されてい ない. 本研究では, 感染症に罹患したCKD患者における28日後の生命予 後を予測する新たなスコアリングモデルの作成とその検証を目的とした 後ろ向きコホート研究を行った. 対象は, 2015年1月から2年間に当院へ 入院した感染症合併 CKD 患者 (n=314)のうち, 除外基準に基づいて 32 例 を 除 外 し た 282 例 で あ る. 対 象 を ス コ ア リ ン グ モ デ ル 作 成 群 (derivation cohort : DC, n=186)と検証群 (validation cohort : VC, n=96) へ無作為に分割した. DC を用い, ロジスティック回帰分析により予測モ デ ル を 作 成 し, VC に て 既 存 の systemic inflammatory response syndrome (SIRS) 基 準, quick sequential organ failure assessment (qSOFA) スコアとの比較検討を行った. DC での患者背景は, 男性 80 名 (43%), 中央値 年齢 75 歳, 最も多い感染症は呼吸器感染 53 名 (28.5%), 次いで尿路感染症43例 (13.7%)で, 28日後死亡は28名 (15%)であった. 単変量解析において 28 日後死亡と有意に関連したのは収縮期血圧, 脈拍 (pulse rate: PR), 呼吸数, Glasgow come scale (GCS), CKD ステージ, SIRS基準, qSOFAスコア, 血小板数, APTT, 血清アルブミン, 総ビリル ビン (T-bilirubin: T-bil), CRP値であった. 年齢, 性別, 糖尿病の有無, 及 び多変量解析で有意であった PR, GCS, T-bil, CKD ステージを用いて新 スコアリングモデル (新モデル)を作成した. この新モデルについてVCを 用いて検証した結果, 新モデル, qSOFAスコアは28日後死亡と有意に関
連し, SIRS基準に比し有用であった (新モデルvs SIRS, AUC: 0.82 vs 0.61, qSOFA vs SIRS, AUC: 0.82 vs 0.61, p<0.05) . 新モデルとqSOFA スコアの予後予測能の差は有意でなかった (AUC: 0.82 vs 0.82, p 0.96).
新モデル, qSOFAスコアはともに感染症合併CKD 患者の28日後の生命
予後予測に有用であることが示されたが, 新モデルはその感度において
SIRS基準, qSOFAスコアより優れており, 早期診断に有用であると考え
られる.