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雑誌名 東京家政大学生活科学研究所研究報告

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Academic year: 2021

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(1)

熊本県産郷土酒「赤酒」の調理効果および食味特性 (温故知新プロジェクト)

著者 宮田 美里, 島村 綾, 峯木 眞知子

雑誌名 東京家政大学生活科学研究所研究報告

巻 39

ページ 45‑48

発行年 2016‑07

出版者 東京家政大学生活科学研究所

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00009986/

(2)

《温故知新プロジェクト》

熊本県産郷土酒「赤酒」の調理効果および食味特性

宮 田 美 里

*

1 島 村  綾

*

2 峯木眞知子

*

2

Cooking Effect and Sensory Characteristics of AKAZAKE

(Traditional Rice Wine at Kumamoto Prefecture)

Misato MIYATA, Aya SHIMAURA, and Machiko MINEKI

1. 赤酒の歴史

赤酒は、熊本県特産の郷土酒でうるち米から作られる赤褐 色の酒である1)。その製法は、蒸米、酒母添加、もろみの製 造までを清酒と同様の製造工程で行い、その後木灰を加えて アルカリ化させる。日本古来の灰持酒の製法である。アミノ カルボニル反応により、赤酒特有の赤色を呈し、酒の酸敗を 防いで、保存性が向上する。赤酒は、酒税法上の品目では雑 2)に分類される。熊本県では江戸時代より肥後細川藩の

「御国酒」として愛飲され、現在もお屠蘇酒など慶事の酒と して用いられている。また、料理酒として親しまれている1)

近年、アミノ酸を添加して、みりんと同様に使用できる料 理用赤酒を販売している。この酒は、熊本県以外でも外食 産業および中食産業において調味料として使用されている。

2. 研究の目的

和食を代表する甘味の調味料として、本みりんがある。

その調理特性には、可溶性成分の溶出抑制効果3)、甘み・

てりの付与4)、マスキング効果5)、煮崩れ防止効果6)、エ キス成分溶出防止7)、味の浸透性向上効果7)、テクスチャー 改良効果7)などが報告されている。本みりんにおける肉 の可溶性成分の溶出抑制効果は糖およびエタノールの相乗 効果により高まることを報告している3)。赤酒では、その 糖度およびアルコール含量は、本みりんと同等度であるの で、同様の調理効果が期待される。

赤酒に関する研究は、1980年代に若干みられる8)が、

調理効果や味覚に関する報告は少ない。特に調味料として の料理用赤酒についての報告はほとんどない。著者らは豚 肉に赤酒を用いた場合の可溶性成分の溶出抑制効果は、本 みりんと同程度であることを報告した9)。また、赤酒の特 徴である微アルカリ性の効果を調べる目的として、赤酒を 保存した場合の品質の変化を検討した10)。赤酒は常温保存 1ヶ月でpH 7.0を下回り、3ヶ月ではpH 6.8、6ヶ月では pH 6.4、12ヶ月ではpH 5.5となった。冷蔵保存では12

月でpH 6.7となり、常温保存と比較し、pHの変化は少な かった(図1)。色度でも常温保存で変化が大きく、時間 の経過とともに色が濃くなった(図2)。

味覚センサーおよび官能評価による料理用赤酒をそのま ま飲料とする場合の食味では、常温保存で苦味・渋みなど の食味に変化がみられた。赤酒を保存する場合は、冷蔵庫 で保存し、3ヶ月以内で使用することが望ましいと判断した。

しかし、調味料として使用する場合では、保存3ヶ月以 上でも使えると考えられる。

そこで、室温で6ヶ月保存した赤酒を用いた魚料理を調 製して、その物理的特性や食味などを検討し、料理用赤酒

*1 東京医療保健大学(Tokyo Healthcare University)

*2 東京家政大学(Tokyo Kasei University)

図1 赤酒および本みりんの保存によるpHの変化

図2 赤酒および本みりんの保存による色差の変化

(保存0ヶ月を対照とし、その色差を表示)

(3)

宮田美里 島村 綾 峯木眞知子 の保存期間を検討した。

また、前報では、料理用赤酒は「渋み」が特徴であると していたが、渋みの原因として考えられるカルシウム・マ グネシウム量の測定を行った。

3. 方   法 1) 試料

(1) 赤酒および本みりん試料

赤酒は、ペットボトル1000 mL(瑞鷹(株)、東肥赤酒 料理酒)を用いた。対照とした本みりんは、タカラ本みり ん醇良(宝酒造(株))ペットボトル1000 mLを用いた。

両者の成分分析値を表1に示した。

保 存 温 度 は、冷 蔵 保 存(冷 蔵:5±1℃、電 気 冷 蔵 庫 MR-39B、三菱電機(株))と常温保存(インキュベーター:

25±1℃、三洋電機(株)MIR-253)で、保存期間は、0 月、3ヶ月および6ヶ月とした。

(2) 魚試料

魚試料はサバおよびブリを用いた。サバは冷凍切り身

(骨取り・カナダ産・加工中国)を、ブリは冷凍切り身

(骨取り・日本産・日本加工)を用いた。

魚は冷蔵庫内で解凍後、一切れ45.0 g±1.0 gに揃えた。

重量を合わせた後、魚重量の20%の赤酒および本みりん とともにビニール袋に入れ、冷蔵庫内で90分浸漬した。

浸漬後、表面の水分を拭き取り、ガスオーブン(コンビ ネーションレンジSN-860LA-S、東京ガス)180℃で10 分間焼成したものを室温で放冷し、焼き魚試料とした。

2) 測定方法

(1) カルシウム・マグネシウム量の測定

0ヶ月および3ヶ月冷蔵保存した赤酒および本みりんの カルシウム、マグネシウム量を測定した。原子吸光分光光 度計((株)島津製作所 AA6200)による、原子吸光分析 法で測定を行った。

試料の希釈倍率は、カルシウム分析では、赤酒100倍、

本みりんを20倍とした。また、マグネシウム分析では、

赤酒、本みりんともに100倍とした。

(2) 焼き魚の重量・色度・光沢度・テクスチャー測定 焼き魚試料について、浸漬後の重量変化率、加熱後の重

量を測定し、重量変化率を算出した。重量変化率は、加熱 後重量(g)/加熱前重量(g)×100の式より求めた。

焼き魚の表面の色度および光沢度は、色差計((株)

KONICA MINOLTA、分 光 測 色 計CM-700d)を 用 い、

SCI方式によりL*値、a*値、b*値、8°グロス値を測定 し た。ま た、試 料 の 皮、血 合 い 等 を 取 り 除 き、1 cm×

3 cm角に筋繊維の方向をそろえて切り出し、破断応力を 測 定 し た。測 定 機 器 は レ オ ナ ー(山 電、RE2-3305B/

33005B)を用いた。測定条件は、ロードセル200 N、測

定速度1 mm/秒、プランジャーはくさび型を用いた。

(3) 焼き魚の官能評価

冷蔵3ヶ月保存、常温3ヶ月保存、常温6ヶ月保存の赤 酒および本みりんで調製した焼き魚を用いて、官能評価を 行った。評価は5段階評点法による官能評価を行った。ブ リ、サバは別々に評価を行った。

パネルは官能評価の訓練を受けた女子大学生および教員 の計18名で、分析型官能評価項目は、「魚臭の強さ」「硬 さ」「味の濃さ」「塩味の強さ」「甘味の強さ」「総合評価」

5項目とした。評点は、非常に弱い1点、どちらでもな

3点、非常に強い5点を用いた。また、同様の試料を用

い、嗜好型官能評価で「総合評価」を質問した。評点は、

非常に好ましくない1点、どちらでもない3点、非常に好 ましい5点とした。

(4) 統計処理

統計処理にはエクセル統計を用いて、有意差の検定には 二元配置分散分析を用いた。

4. 結   果

1) カルシウム・マグネシウム含有量

赤酒および本みりんの保存によるカルシウム量、マグネ シウム量の変化を図3に示した。

0ヶ月保存でのカルシウム量は、赤酒試料が334.9 mg/

L、本みりん試料が19.9 mg/Lであった。赤酒は本みりん に比べてカルシウム量が多かった。3ヶ月保存試料でのカ ルシウム量は、赤酒、本みりんともに変化が少なく、保存 温度による違いも見られなかった。

0ヶ月保存でのマグネシウム量は、赤酒試料が18.2 mg/

L、本みりん試料が15.7 mg/Lであった。

3ヶ月保存でのマグネシウム量は、冷蔵保存でやや減少 した。常温保存では0ヶ月の試料と違いはみられなかった。

2) 焼き魚の重量・色度・テクスチャー

(1) 焼き魚の重量変化率

サバ焼き魚の重量変化率を表2に示した。赤酒、本みり 表1 赤酒・本みりんの一般成分他(100 g中)

試料 エネルギー

(kcal)

水分

(g)

たんぱく質

(g)

脂質

(g)

炭水化物

(g)

アルコール分

(%) pH 赤酒 220 47.0 0 0 43.4 12.2 7.2 本みりん 241 47.0 0.3 0 43.2 14.0 5.8

(4)

んのいずれの保存条件においても、浸漬後重量変化率およ び加熱後重量変化率に差はみられなかった。

(2) 焼き魚の色度・光沢度

サバ焼き魚の身表面の色度および光沢度を表3に示した。

赤酒では、冷蔵3ヶ月のa*値がやや低い値を示した。

また、常温3ヶ月のb*値がやや低い値を示した。いずれ も有意な差はみられなかった。本みりんでは、冷蔵および 常温6ヶ月のL*値がやや低い値を示した。また、常温3 月および6ヶ月のb*値がやや低い値を示した。いずれも 有意な差はみられなかった。光沢度を示す8°グロス値に ついても、保存条件による差はみられず、赤酒と本みりん との間にも差はみられなかった。

(3) 焼き魚のテクスチャー

サバ焼き魚の破断応力を図4に示した。

赤酒および本みりんで、常温3ヶ月がやや高い値を示し たが、有意な差はみられなかった。

3) 焼き魚の官能評価

サバ焼き魚に赤酒を使用した試料と本みりんを使用した 試料の官能評価結果を図5に示した。

いずれの評価項目においても、赤酒、本みりん試料とも に、保存条件による評価の違いはみられなかった。

総合評価(下図)では、室温6ヶ月試料の評点が1.3

3ヶ月試料より高く、本みりんでは6ヶ月試料が0.4で3ヶ 月試料より低かったが、いずれも有意差はみられなかった。

また、保存条件の違う赤酒および本みりんを用いたブリ の焼き魚の官能評価を行ったが、保存温度や保存期間によ る評価には違いがみられなかった。

図3 保存による赤酒および本みりんのCa・Mg含有量

表2 サバ焼き魚の重量変化率

試 料 浸漬後

重量変化率(%)

加熱後 重量変化率(%)

調味料 保存温度 保存期間

赤 酒

冷蔵 3ヶ月 95.1±1.13 86.3±2.23

6ヶ月 93.8±2.05 86.7±1.46

常温 3ヶ月 94.3±0.85 86.0±2.62

6ヶ月 93.1±2.15 86.9±1.05

本みりん

冷蔵 3ヶ月 91.8±7.54 88.5±7.39

6ヶ月 94.2±1.23 85.1±1.58

常温 3ヶ月 91.8±2.02 84.0±2.14

6ヶ月 93.5±1.79 86.4±1.61

図4 焼きサバの破断特性 表3 サバ焼き魚の色度および光沢度

赤酒 L* a* b* 光沢度 冷蔵 3ヶ月 47.14±2.28 −0.25±0.61 9.26±2.29 15.32

6ヶ月 39.70±3.53 0.49±0.92 10.05±3.42 13.98

常温 3ヶ月 41.46±2.72 0.29±0.59 7.67±2.04 17.78 6ヶ月 43.13±3.93 0.35±0.74 11.89±3.00 12.09 本みりん L* a* b* 光沢度 冷蔵 3ヶ月 47.10±4.35 −0.54±0.96 10.56±3.32 18.91

6ヶ月 39.16±2.84 −0.39±0.59 10.19±2.85 16.48

常温 3ヶ月 47.85±2.58 −0.51±0.68 5.30±0.92 11.49 6ヶ月 40.82±5.12 −0.28±0.27 1.54±2.12 13.28 値は平均値±標準偏差

(5)

宮田美里 島村 綾 峯木眞知子

5. 考   察

赤酒および本みりんでは、常温で保存した場合、pH 低下、色度の変化、アミノ酸含有量の変化、食味の変化が みられ、特に赤酒では渋みが強くなるので、冷蔵保存し、

3ヶ月程度で使用することが望ましいと判断した。

本研究では、冷蔵3、6ヶ月、室温3、6ヶ月の条件で保 存した赤酒、本みりんを用いて、魚料理に調味料として使 用した場合の食味および物理的特性などを検討した。ま た、赤酒の食味が変化する理由として、カルシウムやマグ ネシウム含有量の変化があると考えたが、カルシウムやマ グネシウム含有量は常温3ヶ月で変化しなかった。

焼き魚の調理に用いた場合、保存条件による加熱後重量

変化率、色度、光沢度、破断強度、食味において差はみら れなかった。このことより、室温6ヶ月程度の保存条件で あれば、調理に用いた場合には、調理効果への影響は少な いと考えられた。また、本みりんとの間にも差はみられな かったので、室温保存6ヶ月保存した場合でも調味料とし て十分に使用できると考えた。

謝   辞

本研究は、東京家政大学温故知新プロジェクトおよび東 和食品研究振興会助成金を受けました。心より御礼申し上 げます。また、成分分析の測定は本学重村先生のご指導を 受けました。深く感謝いたします。赤酒を提供いただきま した瑞鷹株式会社東京支店長吉竹氏にも御礼申し上げます。

1)赤酒.com.株式会社瑞鷹HP,URL(http://www.akazake.

com/)

2)酒税法3条21号.昭和28年2月28日法律第6号.

3)高倉 裕,河辺達也,森田日出男:本みりんの調理特性に関 する研究(第1報)肉の可溶性成分の溶出抑制効果.日本調 理科学会誌,33(1), 37–43(2000).

4)高宮和彦,宇都宮信子:食品のつやに関する研究(第1報)

焼成卵黄薄膜のつやの測定.日本調理科学会誌,12(3), 168–175(1979).

5)津田淑江:みりん.日本調理科学会誌,42(1), 44–48(2009).

6)中村光良,光田佳代,松田秀喜:本みりんによる小豆蜜煮の 煮 崩 れ 防 止 効 果.日 本 調 理 科 学 会 誌,37(4), 375–382

(2004).

7)森田日出男:みりんの知識.幸書房(2003).

8)高宮義治,浜田康太郎:赤酒,地酒の成分分析調査.日本醸 造協会雑誌,77(9), 634–635(1982).

9)西念幸江,岩下 光,中村拓郎,石川清香,峯木真知子:熊 本県伝統酒の赤酒を用いた豚肉の品質特性.日本官能評価学 会誌,15(1), 21–26(2011).

10)宮田美里,重村泰毅,西念幸江,峯木眞知子:赤酒及び本み りんの保存温度の違いによる品質の変化.日本官能評価学会 誌,19(2), 91–98(2015).

11) Sato, K., Tsukamasa, Y., Imai, C., Ohtsuki, K., Shimizu, Y., & Kawabata, M.: Improved method for identification and determination of ε-(γ-glutamyl)-lysine cross-link in protein using proteolytic digestion and derivatization with phenyl isothiocyanate followed by high-performance liquid chromatography separation. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 40, 806–810 (1992).

12) Iwai, K., Hasegawa, T., Taguchi, Y., Morimatsu, F., Sato, K., Nakamura, Y., Higashi, A., Kido, Y., Nakabo, Y., &

Ohtsuki, K.: Identification of food-derived collagen pep- tides in human blood after oral ingestion of gelatin hydro- lysates. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 53, 6531–653 (2005). 33

図5 サバ焼き魚の官能評価

参照

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