九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
画像相関法による河川フロント上の速度場の推定
阿部, 稜
九州大学総合理工学府大気海洋環境システム学専攻
http://hdl.handle.net/2324/4372174
出版情報:Kyushu University, 2020, 修士, 修士 バージョン:
権利関係:
令和2年度
九州大学大学院総合理工学府
大気海洋環境システム学専攻修士論文
画像相関法による河川フロント上の 速度場の推定
氏 名 阿部 稜
指導教員名 磯辺 篤彦 教授
木田 新一郎 准教
ii
Abstract ... iii
第
1章 はじめに ... 1
1.1.研究背景 ... 1
1.2
先行研究 ... 3
1.3.研究目的 ... 4
1.4.論文の構成 ... 4
第
2章 ドローンによる観測と画像相関法... 5
2.1.ドローンによる観測 ... 5
2.1.1.使用したドローン ... 5
2.1.2.観測手法 ... 7
2.1.3.北海道の厚岸での観測 ... 9
2.2.画像相関法 ... 12
2.3.画像の色空間と平滑化 ... 14
第
3章 河川フロント上の速度の算出 ... 15
3.1.観測で得たデータ ... 15
3.2.フロント上の速度の算出結果 ... 17
3.3.結果の妥当性... 20
3.4.ホバリングの誤差 ... 22
3.5.まとめ ... 25
第
4章 フロント上の擾乱とフロント全体の流れ ... 26
4.1.フロント上の擾乱の様子 ... 26
4.2.フロント全体の流れの算出 ... 32
4.3.まとめ ... 34
第
5章 まとめ ... 35
謝辞 ... 37
参考文献 ... 38
iii
Abstract
本研究の目的は、現在あまり観測データがない沿岸域の流速データを得るために、1km 以下のスケールを数㎝程の超高解像度で観測をすることができるドローンを用いて沿岸域 の観測を行い、流速を求めることである。可視カメラ搭載のドローンを利用して、河川水 と海水の色の違いや、河川フロントに集積した泡や浮遊物を捉えることで河川水の流出速 度を求めることができる。そこで、別寒辺牛川から厚岸湖に注ぎ込んだ河川水が流出して いる、北海道道東の厚岸湾で観測を行った。特に、別寒辺牛川は湿原河川のため海水と色 が違っているため、本研究で使用する可視カメラでも海水と河川水が判別でき、河川フロ ントの時間変化を捉えることができると考えられる。
観測で得た空撮データを用いて、画像相関法を用いることによりフロント上の速度場の 算出を行った。衛星赤外観測データにも用いられる画像相関法は、同じ場所で連続したデ ータを比較し、相関を取ることにより時間変化を捉えて速度場を算出する手法である。フ ロント上の渦の大きさと同等のスケールを基準として相関を取ることにより、フロント近 傍の速度場を求めることに成功した。また、前年度の係留測定データとの比較や、ドロー ンのホバリングの精度の検証を行うことで、求めた速度場の精度検証をした。
フロント上の渦と同等の大きさのスケールで相関を取ると、渦の回転を捉えることがで きなかった。一方で、相関を取るスケールを渦よりも小さくすれば、空間変化が大きすぎ て線形近似ができず、正しい相関を取ることができなかった。そこで、相関を取るスケー ルを大きくすることによりフロント全体の流れを捉えた。スケールを渦よりも大きくした ことにより、フロント全体の時間変化の小さな現象を捉えることに成功した。このことか ら、相関を取る基準のスケールを変えることにより捉えられる現象が変わること、そして 現象ごとにスケールや、使用するデータを的確に選択することが必要であると考えられ る。
以上のことから、現象に対する適切なスケールや観測データの選択方法を確立すること
により、現在データが少ない沿岸域の観測データを得る手段として、可視光カメラを搭載
したドローンによる空撮データにより速度場を算出することを実用化できると考えられ
る。
1
第 1 章 はじめに
1.1.研究背景
地球上の水の総量である約1.4×109㎞3のうち、96.5%が海水であり、1.7%が氷河や積雪が占め ている。その他に地下水、永久凍土、湖などがあるが、河川水の総量はそれよりもはるかに少ない
割合で約0.0001%である(沖,2007)。このように水の総量に占める割合は微量である河川水である
が、速やかな地球の循環を維持する役割を担うことで、地球上の物質循環や生態系の保全にとって 重要である。
陸域における水循環の速さは河川から海への流出量に依存している。沖(2007)によれば、陸地 における降水量から蒸発散量を差し引いた河川から海洋への流出量は、降水量の約 40%と見積も ることができる。このことから水循環に占める河川流出量は多量であり、水の総量に対して占める 割合が微量にもかかわらず、地球の水循環に非常に重要な役割であることが分かる(宇野木ら 2008)。
また、河川水は生態系の維持にも重要である。地球白書(Brown, 1996)によれば、生活を支え る直接的食糧と動物性たんぱく質に転換される家畜飼料となる穀物生産のため、河川、湖、地下水 から取り出される水量のうち約 65%が農業用水として使用されているという。残りの 35%は産業 用水や都市用水である。しかし、人口増加や都市部への人口集中により、過剰な水利用に伴う水の 枯渇が問題となっている。そのような水の枯渇は、前述したとおり水循環に大きな役割を担うはず の河川水が海に流れなくなるという事態を招き、海洋環境に重大な影響を与えている。
河川水の流出は水循環に大きな役割を担うと述べたが、河川水の海洋流出には様々なパターンや 条件がある。まず、流れも風もない静止した直線状海岸を持つ海に河川水が流出した場合を考えて みる。このときの流出形態は図1.1のような四つのタイプに分けられる(杉本,1982)。パターンの 違いは河川流量の違いと河川水の流出する速度、河川の規模によるコリオリ力の働き方などによる 違いである。しかし、これらは流れや風がない場合であり、実際には上記の河川の条件に加えて、
海象・気象や、河口地形や海岸地形に応じて複雑多様に変化していく。
また、河川水の流出には、上記の諸条件以外にも、季節的な条件変化も大きく影響している。そ の季節変化の主要因は、河川流量や、海面における大気―海洋間の熱交換量である。例えば、河川 流量は温暖期に多く寒冷期には少ない。このように、多くの要因で河川水の流出パターンは変化し ていく。
様々なパターン流出する河川水は、周辺海水との境界に図1.2のような河川フロントを形成する。
水平方向で見ると(a)のように河口から河川水が流出する際に、河川水の縁辺部に河川フロントが できる。鉛直方向で見ると、(b)のように海水に流入した河川水は塩分の違い(密度の違い)により、
軽い河川水が海水の上に覆いかぶさるように成層する。この時の河川水の先端部分が河川フロント となる。この河川フロントの物理過程、移動速度を求めることにより河川水の流出速度が分かり、
また、本研究で展開するような微細規模の観測によって、従前の観測では捉えることのできなかっ た海水との混合過程の理解につながることが期待できる。
2
図1.1河川水流出パターンの模式図
図1.2 河川フロントの形成
3
1.2
先行研究
これまで沿岸域の観測に用いられた手法は、船舶による定線観測や、定点係留観測が主流であっ た。1980年代以降は、これらに衛星観測が加わることで、高解像度で時間分解能の高い観測も可能 となった。しかし、衛星観測では 1km 以下のスケールの小さな領域の観測はまだ頻度が限られて おり、雲域の存在により観測が不可能になったりと、沿岸の海洋観測には力不足である点も多く存 在する(岡ら,2013)。
そこでより沿岸域の観測に適したリモートセンシング技術として、航空機や船舶曳航式のバルー ンが利用されてきた。航空機での観測は高度数百 m 程度からの可視観測が実施されてきたが、持 続的、継続的な観測を行うにはコスト面で欠点があった。一方で、船舶曳航式のバルーン観測は1 度ヘリウムを入れてしまえば長時間飛行することができる。また、バルーンに傾斜センサーを搭載 し、GPS 搭載のブイなどの海面の基準点を不要とするスタンドアローン化にも成功した(山本
2017)。しかし、バルーン観測は観測領域が船による曳航速度に制限されてしまうため、機動性に
欠け、観測範囲も限定されてしまい、空撮画像に船跡が写ってしまうことも多い。そのため、観測 時間が大幅にかかり効率が非常に悪く、観測手法として最適とは言えない。
このことから、災害地域での撮影や、人が立ち入れないような場所での調査、物流業界における 運送など、近年様々な場面で活用されているドローンを沿岸域の観測に導入する試みがなされてき た。これまで熱赤外カメラを搭載したドローンでは、広範囲の熱赤外リモートセンシング手法の確 立を目指し、約 400 ㎡の面積をカバーできる海面水温の観測に成功している(森永,2018)。また、
可視カメラを搭載したドローンでは、1㎢の範囲かつ5㎝程度の超高解像度での観測も成功されて いる。そのデータから海色を抽出することにより、クロロフィル濃度の判定もできる可能性も示唆 されている(石元,2019)。しかし、これまでドローンによる河川フロントの速度場が求められたこ とはない。
4
1.3.研究目的
本研究の目的は、河川水と海水が出会う領域に形成される河川フロントの物理過程を、時空間的 に高解像度で精査する手法の開発である。現在、リモートセンシングでは観測が困難な沿岸域の海 流計測には、流速計を用いた直接観測が行われてきた。しかし、流速計のような直接観測は定点で しか測定ができず、時間やコストあるいは漁業や海運での海域利用の制約のため、流速データが必 要な水域の全てを観測することはできず、結果として沿岸域の測流データ数は少ない。そこで、低 コストで一度に広い範囲の観測が可能とするため、ドローンでの沿岸域の流れの観測を可能にする。
ドローン観測で得たデータから速度場を求める方法として、衛星観測による沿岸域の観測に用い られてきた画像相関法を用いることにした(Taniguchi et al. 2019)。画像相関法は2枚の連続した画 像から速度場を算出する方法である。衛星観測データとドローン観測データでは空間分解能、時間 分解能が大きく違うためドローン観測に適切な手法を開発する。
このように、沿岸域のドローンによる観測方法とそのデータを用いた速度場の算出方法を求め、
衛星観測では不十分なより詳細な沿岸域の研究を進めるための一助とする。
1.4.論文の構成
本論文は全5章で構成されている。
ここまでの、第1章では、沿岸域に河川水が及ぼす影響について説明した。そしてこれまでの海 洋の観測で用いられていた衛星観測の利点と欠点、そのデータに画像相関法を用いることで速度場 を算出する方法を提示した。そして、衛星観測では捉えることのできないスケールの現象を捉え、
河川フロントの速度場を算出することが本研究の目的であることを示した。これ以降の各章の内容 は以下のとおりである。
第2章では、本研究で使用したドローンによる沿岸域の観測手法と画像相関法による速度場の算 出方法を説明する。
第3章では、第2章の方法で取得したデータや手法を用いて、実際に河川フロント近傍の速度を 算出し、結果とその正確性について述べる。
第4章では、第3章で用いた手法から比較スケールを変えることにより捉えることのできる現象 に違いが出る事実を確認し、その結果について述べる。
第5章では、以上の結果を総括し、本論文の結論とする。
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第 2 章 ドローンによる観測と画像相関法
2.1.ドローンによる観測
2.1.1.使用したドローン
本研究ではDJI社製のPhantom4 Proというドローンを用いた(図2.1)。DJI社のPhantom4 Pro のサイト(https://www.dji.com/jp/phantom-4-pro/info#specs)を参照しつつスペックを以下に述 べる。体格寸法が35㎝で、積載は不可である。飛行可能時間は約30分で、飛行可能距離は約6000m である。コントローラとドローンの間の最大転送距離は、障害物や電波干渉がない場合では4kmで あるが、そもそもわが国の航空法において目視外飛行は禁止とされているため、操縦者の目視可能 な範囲での飛行となる。Phantom4 Proは5方向にある障害物を認識し、GPS受信がなくても障害 物を回避しながら安定した飛行が可能な小型ドローンであるため、操作性もよく、広く利用されて いる。
また、本研究ではホバリングさせた状態で連続して撮影を行うことで時間変化を捉えるが、
Phantom4 Proのホバリング精度は、ビジョンポジショニング使用時に、垂直方向が±0.1mで水平
方向が±0.3m であり、GPS ポジショニング使用時には、垂直方向が±0.5m で水平方向が±1.5m である。下方のビジョンポジショニングシステムとは、地表面を検知して機体の水平を維持する機 能なので、波浪で水平面を維持されない海の上では機体が傾く恐れがある。そこでビジョンポジシ ョニング状態のまま実施した本研究では、機体のぶれによるホバリングの誤差の検証を行った。
本研究で使用したカメラはPhantom4 Proに付属するカメラである。より高解像度で撮影を行う ことができるよう空撮用に最適化された焦点距離 24㎜(35 ㎜判換算)のF2.8広角レンズを搭載 しているため画面の隅々まで歪みを抑えて、静止画や動画を撮影できるのが特徴である。また、1 インチ 2000 万画素の CMOS センサーを搭載し、メカニカルシャッターと大口径探勝レンズを使 用しているため、高速飛行中の際に被写体を撮影しても映像が歪んでしまうローリングシャッター 現象を回避できる。Phantom4 ProはDJI社が提供しているアプリケーションソフト(DJI GO 4)
を用いることにより安全で簡単な飛行、撮影が可能である。
6
図2.1 本研究で使用したDJI社製Phantom4 Pro
7 2.1.2.観測手法
本研究では手動でドローンを操縦し、河川フロントが写真の中に映る海域の直上でホバリングさ せ撮影を行う。これによって、河川フロントの時間変化を捉えた。飛行高度は航空法により規制さ れている上限の150mにして、できるだけ広範囲の撮影を可能にした。撮影間隔はバッテリーの消 費量、カメラのメモリの容量などを考慮しつつ、できるだけ細かく撮影するため、最初は5秒間隔 で実施したが、その後に容量に余裕があったため3秒間隔での撮影に切り替えた。カメラの角度を 90度に設定した場合に、撮影できる真下の範囲は150×100mであり、解像度は約1pixel=3.0cmで ある(図2.2)。また、カメラのホワイトバランスを固定することで、カメラの色彩自動補正機能に よって画像ごとに色彩が変わることを防止し、長時間海色の違いを正確にとらえることのできる設 定にした。
陸上からのドローンの離着陸はすべて自動操作で行うことができ、着陸時の帰還位置も GPS座 標で自動的かつ自律的に決定される。しかし、不安定かつ時々刻々と場所を変える船上での離着陸 は、自動操作で離着陸させることは不可能なため手動で操作し離着陸させる。また、コントローラ との接続が切れた際に自動着陸をする設定の代わりに、ホバリングをする設定に切り替えておくこ とで、水没のリスクを軽減させた。
8
図2.2 ドローン観測模式図
図2.2. 観測風景
9 2.1.3.北海道の厚岸での観測
2019年10月2日と3日の2日間に北海道厚岸町(図2.3)にて観測を実施した。厚岸町は北海道の
南東に位置している。観測には北海道大学の観測船「みさご丸」を利用した。この海域では、厚岸湖 へ別寒辺牛川から流れる河川水の流出や、厚岸湖と厚岸湾の間に形成される河川フロントの観測が 期待できる(図2.4)。加えて、多くの河口域では、都市に隣接していたり、近隣に空港や発電所が あったりするため、航空法の規制によってドローンの飛翔が禁止されている場合が多いが、厚岸湖 周辺は人口密度が低く、ドローン観測がしやすい利点がある。以上より、本研究では同水域を観測 対象に選定した。また、別寒辺牛川は湿原河川であり、海水とは明確に海色が違うため、本研究で 使用した可視光カメラでも、海水と河川水の明瞭な色の違いで河川フロントの撮影が容易であると 期待された(長尾ら,2018)。
観測1日目は厚岸湖と厚岸湾の間で形成される河川フロントを観測するため、厚岸大橋周辺で観 測を行った(図2.5(a))。当日の天候は曇りで雨も降らず、海面の日光の照り返しもなく観測に適し た天候であった。船上でフロントに沿った泡列が目視できた位置からドローンを飛ばし、上空150m から河川フロントが撮影範囲に入るように撮影を行った。
観測2日目は厚岸湾内にフロントが形成されていないかを確認するため、厚岸湾の湾口へと範囲 を広げて観測を行った(図2.4(b))。2日目も天候は曇りで、1日目と同様に観測に適した天候であ った。湾沖に出ると泡列は見えず、船上からの目視ではフロントを見つけるのが困難であったため、
ドローンを飛ばし、ドローンの映像から広範囲を見ることでフロントを目視探索した。その結果、
フロントの存在をうかがわせるアマモの集積域が確認された。ただ、フロントを境にした海色の違 いは識別できず、アマモの集積域だけの局所的な海色変化が見られた。また、湾沖は風が強くドロ ーンの操縦には不適であったため、1日目よりも高度を落として120mからの撮影をした。
観測1日目と2日目ともに、泡列、アマモの集積域が、確かに海水と河川水といった異なる水塊 が隣接するフロントであることを確認するために、フロントの両側でCTDを用いて水温・塩分を 測定した。ドローンによる観測は少ない人員で行えるため、いくつかの観測を同時に行うことによ り、効率的に海洋観測が行えた。
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図2.3 北海道厚岸町の位置
(地図はGoogle Maps(https://www.google.co.jp/maps/)より)
図2.4 厚岸町の河川水の流れと2日目観測場所(b)
(地図はGoogle Maps(https://www.google.co.jp/maps/)より)
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図2.5 1日目観測場所(a)
(地図はGoogle Maps(https://www.google.co.jp/maps/)より)
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2.2.画像相関法
本研究では衛星観測赤外画像の研究で用いられてきた画像相関法(Taniguchi et al. 2019)を用い ることで、厚岸の観測画像から速度場を求めていく。画像相関法とは、同じ場所で連続して撮影し た 2 枚の画像における各画素の値の空間相関に基づいて、画像の変化から速度場を得る手法であ る。ここでは、画像相関法の手順について説明する。
① 2枚の連続して撮影した画像A,Bを用意する。A,Bの解像度をn cm/pixelとする。
この時、Aの撮影時間をt、Bの撮影時間をt+Δtであり、AとBを比較することで、Δt 間の変化を求める。
② Aの中の任意の点p(i,j)を決め、p を中心とした領域Xijを相関をとる基準範囲(その幅を 基準スケール)、とする。捉えたい現象によってXijの大きさは決定し、(i,j)は画像の左上か ら(右方向、下方向)のピクセル値である。
③ Bの中の点(i,j)を中心として、Xijと同じ大きさの領域をXij’とする。Bの中でXij’よりも大 きな領域Zijをとり、この中の任意の点q(s,t)を中心として、Xijと同じ大きさの領域Xst’と Xijの相関をとる。
④ 領域Zijに含まれるすべての点q(s,t)を中心としたXst’の中から、Xijと最も相関が高かった Xst’を求め、その中心座標を(u,v)と置く。
⑤ (i,j)の点が(u,v)の点に移動したと考えられるので、その移動距離はピクセル数では
(移動距離) = √(𝑢 − 𝑖)2+ (𝑣 − 𝑗)2 となるので、地齋の移動速度は
(移動速度) = (移動距離) × n ÷ Δt [cm/s]
と求めることができる。
⑥ ①~⑤を画像の各点に対して行うことにより、画像全体の速度場を求める。
例として具体的な数値を代入して説明をする(図2.6)
① 2枚の連続して撮影した画像A,Bを使用する。(A,Bの解像度を3cm/pixelとする)
この時、Aの撮影時間を10:00:00、Bの撮影時間を10:00:03とし、AとBを比較すること で、3秒間の変化を求める。Aの中の点p(30,30)を中心とした領域10×10pixelを相関を とる基準のスケールとする。これが領域Xである。
② Bの中で(30,30)を中心として、周辺の領域Zの中で相関を取る。Zの大きさは30×30pixel とする。
③ 相関を取った中から最も相関が高かった領域の中心の点は(30,18)であった。
④ (30,30)の点が(30,18)の点に移動したと考えると、
(移動距離)= √(30 − 30)2+ (18 − 30)2 = 12(pixel) よって
(移動速度)= 12(pixel) × 3(cm/pixel) ÷ 3(s) = 12(cm/s) と求めることができる。
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⑤ ①~⑤を画像の各点に対して行うことにより、画像全体の速度場を求める。
このような画像相関法をドローンに搭載されている可視カメラで撮影した画像に用いることに よりフロントの速度場を求める。
図2.6 画像相関法模式図
図
2.7画像相関法 具体例
14
2.3.画像の色空間と平滑化
観測で取得した画像データに画像相関法を使用するうえで、正確に速度場を算出するために画像 処理を行った。画像相関法は画像の色の値をもとに相関をとっていくため、初めに RGBで構成さ れたデータをグレースケールに変換した(図2.8①)。しかし、グレースケールではフロントを挟ん で色の違い・勾配が抽出できず、画像相関法を用いるには不十分であった。そこでクロロフィルa の濃度の解析にも使われるGR値[=(G-R)/(G+R)]に変換をした。その結果、河川水と海水の色の 違いがはっきりと区別できるようになった。
さらに、そこから細かなノイズを除去するためにGR値の空間平均をとって平滑化を行った。こ の空間平均は各pixel点を中心とした幅60㎝(20pixel相当)の正方形内のGR値を平均である。1ピ クセルずつ移動させながら画像全体に対して平均値を求めていくことで平滑化を行う。色の変換を 行った後、平滑化を行った画像データが図2.8②である。
図2.8 画像処理を行った画像(①:グレースケール、②:GR、平滑化を行った画像)
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第 3 章 河川フロント上の速度の算出
3.1.観測で得たデータ
2章で述べた観測で得たデータについて説明していく(図 3.1)。1日目の観測ではフロントに沿 った泡の列が見え、2日目の観測ではフロントらしき海色の違いが見えた。
(a)はフロントの泡の列が確認できるが、フロントの近くを通過した船の航跡波で、フロントが少 し崩れている。画像上方では、船が通過した直後の航跡波が確認され、画像相関法を用いる際のノ イズとなる可能性がある。画像相関法を用いる画像は航跡波など人為的な擾乱がない状況や、その ような人為的擾乱によってフロントが崩れていない状況が望ましい。
(b)もフロントに沿った泡列が観測できる。また画像右側では二つのフロントが一つになってい る様子も捉えられている。ノイズが少なく、フロント上に泡が沿っており、目視でも確認できる。
(c)は 2 日目の湾内での観測で撮影した画像である。フロント上にアマモが集積したことによっ
てフロントの位置を捉えることはできたが、フロントを境目にした上下の海色の違いは明瞭でない。
画像相関法を用いるには海色の違いが少なく、フロントも先鋭でないため、本研究では使用しなか った。
(d)も2日目の湾内で撮影したものである。これまでの画像はカメラを真下に向けた角度90度で
撮影していたが、カメラの角度を 40度にして広い範囲を撮影したものである。カメラの角度を変 えて観測することにより、船からの目視範囲でフロントが確認できない際に、上空から探すことに より、フロントを見つけることができた。
このような画像を取得できたが、この中でフロントがよく捉えられていてノイズも少ない(b)
の画像を用いて、以降の解析を進めていくことにした。
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図3.1 厚岸観測で撮影した画像(a)二つのフロントに沿った泡列 (b)別時刻における二つのフロ
ントと泡列 (c) アマモが集積したフロント (d) カメラを斜めにして撮影したフロントとその周辺
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3.2.フロント上の速度の算出結果
図3.2は、フロントに沿った泡列がしっかりと捉えられていて、人為的なノイズの少ない画像で ある。フロントを挟んで右上が河川水で、左下は海水があり、画像左上方向に厚岸湾、右下方向に 厚岸湖が存在している。図3.2(b)は図3.2(a)から3秒後の画像で、図3.2(c)は60秒後の画像であ
る。図 3.2(b)は図 3.2(a)の 3 秒後の撮影のため、目視では両者の違いがあまりわからないが、図
3.2(a)と図 3.2(c)を比較するとフロントの形状や位置がわずかながらに変化している様子が捉えら
れている。図3.2(a)と図3.2(b)の画像に第2章で述べた画像相関法を用いることにより河川フロン トの速度場を求めた。
2.3節で述べたような画像処理を2枚の画像に対して行い、画像相関法を適用した。図2.6のXij
に相当する元画像の一定領域を、フロント上に存在する渦の典型的規模である 3m×3mの正方形 とした。相関係数の閾値を0.85とした場合の領域中心位置の移動距離を矢印で表示した(図3.3)。 フロントに沿って厚岸湾に向かった流れと、画像の右側からきた河川水がフロントで合流する様子 が見られた。また、相関係数が閾値を超えた部分の平均速度は約30cm/sであった。画像相関法の 特徴として空間分布に勾配がない領域は相関が取れないため、海水や河川水だけが占める領域から は速度場が求められない。また、フロント内に細かな擾乱が存在するが、その擾乱周辺の流速構造 までは解像できない。
この方法で他の時刻に撮影した画像でも、画像相関法で得た移動ベクトルの空間分布を作成した
(図3.4)。(a)~(h)の各間隔は30秒ごとである。これら一連のベクトルプロットより、撮影した時
間帯では、常に厚岸湾に向かった流れが存在していることが分かった。また、フロント全体がゆっ くりと左下の方に移動していることも分かった。各相関図で相関が取れた点の平均移動速度を求め たところ、全て30~35cm/sであり、この結果からフロント上の流れ場は5分ほどでは大きく変化 しないことが分かる。
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図3.2 画像相関法に用いた画像((b):(a)から3秒後の画像、(c):(a)から60秒後の画像)
図3.3 フロントの移動を矢印で表示した画像
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図3.4 画像相関法で求めた移動ベクトルのプロット(a~hは各間隔は30秒)
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3.3.結果の妥当性
前述した結果で得られたフロント上の速度は約30cm/sであったが、その結果の妥当性を前年度 に係留測定したデータと潮汐データ(https://tide736.net/)を比較することにより検証する。使用す る係留測定のデータは、2018年9月12日の昼頃から14日の朝までの厚岸大橋下で得た係留流速 データである(図 3.5)。ここでは、画像相関法で可視化された東向きの流速(厚岸湖から厚岸湾に 向かった流れ)を比較に用いる。
図3.5と図3.6を比較すると干潮から満潮になる際に東向きに最大となり、満潮から干潮になる 際に西向きに最大となっている。最大流速はどちらも約50cm/sであり、満潮と干潮のちょうど中 間の時間帯である。今回観測したのは河川水が流出する様子なので西向きの流れとなっているはず である。流速を求める際に使用した画像は10月2 日10:00:02 と10:00:05に撮影されたものであ るので図3.7からわかるように満潮から干潮に代わる間の時間帯なので流速は0から西向きに転流 している時間だと考えられる。よって厚岸湖から厚岸湾(西向き)に向かって30cm/sの結果は妥 当な結果だといえる。
図3.5 係留測定 東方流速データ(田中指針)
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図3.6 厚岸潮汐データ(2018/9/12~2018/9/15)
図3.7 厚岸潮汐データ(2019/10/02~2019/10/04)
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3.4.ホバリングの誤差
本研究では、ドローンを上空で静止(ホバリング)させることで、連続した空撮画像データを得 ている。しかし、ホバリング中にドローンが風に流されて位置が移動する場合もあるので、画像の 位置情報の安定性について検証する必要がある。海洋の撮影では、ホバリング中のドローンの移動 による位置同定の誤差以外に、時々刻々と変化する波に応答する姿勢変化が誤差要因となる。従っ て、ホバリングに伴う誤差のみを抽出した検証はできない。よって、時間変化のない海岸(陸上)
を撮影することで、ドローンのホバリング中の動きだけが作り出すノイズを検出し、画像相関法で その移動速度を算出する。これにより、ホバリングによる画像の移動が分かるため、ホバリング精 度の検証ができる。
2020年8月19日に福岡県宗像市(図3.8)で観測を行った。宗像市で観測を行った理由は、航 空法により規制されていないこと、そして、コロナ禍での観測であったため近場かつ人混みがない 海岸での観測が求められたためである。
検証の方法としては海岸を撮影し、動かない部分に画像相関法を用いることにより移動速度を算 出する。取得した画像は図3.9であり、そのうち海が入っていない赤枠で囲んだ部分だけで相関を 取った。厚岸での観測と条件を一致させるため、上空150mでホバリングをしながら3秒間隔で撮 影を行った。また、画像相関法に関しても、条件を同じにするため、海上で適用する際と同様にGR 値への変換と平滑化を行った。
結果は図3.10のように、海面ではない右側半分の移動距離が約1.7cm/sであった。3.2節で求め
た流速は30cm/sであり、ホバリングによるノイズはこの結果の数値の10分の1程度に相当する。
また、今回は解像度3.0cm/pixelで3秒間隔の撮影のため、最小の検出できる速さは1.0cm/sまで であることから1.7cm/sのホバリング誤差は検出できる最小の速度に近い値である。よって、フロ ント上の速度場を算出させる方法はホバリングによる誤差は無視してよいものと考える。強風時な どには、ホバリングの精度が悪くなる可能性があるが、強風時にはドローンの飛行自体が困難にな ることや、飛行高度を下げる必要もある。そのため、強風時のドローン空撮におけるホバリングに 伴う誤差評価に関しては再度検証の必要がある。
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図3.8 福岡県宗像市の位置
図3.9 海岸部分の画像
相関を取る領域
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図3.10 陸地に画像相関法を用いた結果
海
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3.5.まとめ
⚫ 厚岸での沿岸域のドローンによる観測は、フロントに沿った泡の列が確認でき、フロントの 時間変化を捉えることができた。
フロント上に泡がない場合は、色の違いが捉えられるアマモの存在により河川フロントの位 置は捉えられている。ただこのような画像から画像相関法で速度場が算出できるか、今後検 証が必要である。
⚫ フロント上の渦一つの大きさを基準としたスケールで画像相関法を用いることにより、フロ ント上の速度場を求めることに成功した。
フロント以外の領域には大きな勾配がなかったため、正しく相関が取れないため速度場を算 出できなかった。また、フロント上に存在する細かな擾乱の様子までは捉えられなかった。
⚫ 前年度の係留測定データと潮流データを比較することにより、求めた速度場の妥当性を検証 した。
係留測定データから観測した海域での最大流速は 50cm/s程度であり、潮汐から考えると厚 岸湖から厚岸湾へ河川水が流出しだした時間帯のため、求まった30cm/s という結果は妥当 であると考えられる。
⚫ ドローンのホバリングにより、連続撮影を行っているためホバリング中にドローンが風など により移動していないか検証を行った。
ホバリングによる誤差は約1.7cm/sであり、今回の撮影データから求めた最小の速度に近く、
また求まった 30㎝/sよりも十分小さいことから、ホバリングによる誤差は影響しないと考 えられる。
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第 4 章 フロント上の擾乱とフロント全体の流れ
第3章ではフロント上の渦と同程度である3m×3mの正方形内で相関を取ったが、それよりも空 間規模の小さなフロントの擾乱が時間変化する様子までは捉えることができなかった。また、複数 画像の観察により見えたそれよりも空間規模の大きな背景流に伴うフロント全体の動きも見えて いない。そこで相関を取る基準となる空間スケールを変えることにより、擾乱の時空間変化や背景 流に伴うフロント全体の動きを捉えていく。
4.1.フロント上の擾乱の様子
図4.1に示すようにフロントには小さな渦が重なっていて、回転運動をしている様子が観察され た。3章の方法では渦の大きさを基準として相関をとるため、渦自体の形の変化や回転している様 子といった細かな時空間構造まで捉えることはできなかった。しかし、図4.2のようにドローンで 得た可視画像では、渦が反時計回りに回転する時間変化が捉えられている。そこで、相関を取るス ケールを変えることにより、このような細かな擾乱に関連付けられる速度場が可視化できると考え た。
スケールを狭めた画像相関法を用いる際に、これまで用いた平滑化では空間規模が粗すぎて渦が ぼやけ、回転の様子も分からなくなる。そこで、微細なノイズを除去でき、かつ渦の時空間変化が 残る程度の平滑化のスケールを求めた。図4.3は平滑化を行った画像の中で、x=100のy軸に沿っ たGR値である。幅が30㎝以上(10pixel相当)の平滑化では、一つのGR値のピークは確認でき るものの、渦内の構造は捉えられていない。12㎝幅(4pixel相当)の平滑化にすれば、ピーク内の 増減はまだ小さいものの M 型のグラフとなり、画像相関法が利用できる程度に渦内構造が捉えら れるようになった。6㎝幅(2pixel 相当)の平滑化にしてしまうと、ピーク内に際立つ増減がノイ ズとなって、相関が正しく取れないと考えた。このことから、多少のノイズはあるが幅 12 ㎝の平 滑化を行い、画像相関法を適用した。
画像相関法を用いる基準のスケールは、大きさが3m×3m程度の渦を捉えるため、十分な解像度 を期待して36㎝×36㎝とした(図4.4)。相関を取るスケールを小さくしたため、もし画像全体に 画像相関法を用いると計算時間がかかりすぎてしまう。そのため、今回は図4.1にある単一の渦に 注目して、画像相関法を適用した。
移動ベクトルの空間分布を図4.5に示す。渦の周辺で有意な相関係数を得ることができ、連続す る画像で目視した通りに、反時計回りの回転を示唆する結果となった。ただ、反時計回りとは明ら かに方向が異なるベクトルも多く描かれてしまう結果となった。原因としては、渦が連続する画像 間の3秒で大きく形を変えたため正しく相関が取れなかったことと、細かなノイズが除去しきれな かったためであろう。
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そこで、どの程度の回転角までであれば、線形近似として速度場算出が適用できるか検証した。
本研究で用いた画像相関法は、水平方向の平行移動を前提として相関を取っているため、大きく回 転変化をする現象には適用が難しい(線形近似ができないことによる)。このことから、元画像か ら、反時計回りに 2 度回転させた画像と、10 度回転させた画像とを比較することで回転成分だけ を抽出し、回転角に対する画像相関法の有効性を検証した。結果は図4.6のようになり、回転角2 度であれば渦の回転が捉えられているが、10度では動きのない中心付近か、フロントなどの特徴が 明瞭な部分しか相関をとることができなかった。このことから、回転角2度程度であれば線形近似 が可能であり、画像相関法で回転に関連付けられた速度場を求めることができるが、回転角 10度 以上では正確性は落ちてしまうことが分かる。
以上のことから、フロント上の渦周辺の速度の空間分布を捉えるほど時間的に密なデータが今回 の観測データでは取得できず、線形近似ができなかったと考えられる。さらに細かい時間間隔のデ ータの取得方法として、Phantom 4Proでは3秒間隔ではなく1秒間隔での撮影や、バーストシャ ッターモードと呼ばれる1秒間に14回撮影できる連射機能が存在する。ただ、それらの機能を使 えばデータ量が多大なものとなり、データを取得できる時間が少なくなってしまう。同様に、動画 撮影を行えばさらに細かい時間変化を捉えることが可能であるが、動画は解像度が悪いために、渦 内の構造を十分に捉えられない可能性がある。このように今回使用しなかった撮影方法によりさら に細かい時間変化を捉えることも可能であるが、それぞれに利点と欠点があるため、解析したい現 象によって撮影の方法を変えていくことが必要である。
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図4.1 フロント上の渦の様子
図4.2 フロント上の渦の時間変化
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図4.3 平滑化の検証(左:x=100の値、右:平滑化済み画像)
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図4.4 相関をとるスケール
図4.5 渦の回転運動の相関図
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図4.6 回転に対する線形近似の検証画像
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4.2.フロント全体の流れの算出
4.1 節では小スケールの渦に対して画像相関を用いて、渦の回転を捉えたが、連続する画像間で 時空間変化が大きく、線形近似をすることができなかった。続いて、背景流に伴うフロント全体の 移動を捉えるため、相関を取るスケールを逆に大きくして画像相関法を適用した。3.2 節では複数 画像の観察により、フロント全体が紙面の左下方向に移動している様子が観察された。この移動を 解析対象とする。
上述の通り、断片的な情報であるがフロント全体の動きは大まかに捉えることはできているため、
3章で求めた速度場の中には、フロント全体を移動させる背景場の速度成分が含まれているはずで ある。そのため、フロント周辺の速度の長時間平均をとって、まず背景流を抽出しようとしたが、
常に移動するフロントでは、全ての時間帯で画像相関を取ることができた点は存在しない。よって 連続的な速度が求められないので長時間平均をとることができず、フロント全体の動きを求めるこ とはできなかった。
そこで、この流れを画像相関法で捉えるためには、相関をとる基準のスケールを拡張して、フロ ントの移動方向を見る必要がある。60秒後の画像と比較し、相関をとる基準の大きさを1500cm×
1500cmにして画像相関法を用いた(図4.7)。その他の画像処理は第3章の際と同じ条件で行った。
結果は図4.8のようになり、期待していた通りフロント全体が下方に移動する速度場を抽出する ことができた。また、画像全体で平均したフロントの移動速度は2.6cm/sであった。このことから 相関をとる基準スケールを変えることで、捉えることのできる流れも変わることが分かる。
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図4.7 相関をとるスケール
図4.8 フロント全体の流れを捉えた移動ベクトル分布
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4.3.まとめ
⚫ 相関を取る基準のスケールを小さくすることで、フロント上に重なって回転する渦周辺の流速 分布を捉えることができた。ただし、時間変化が大きすぎた今回の観測データでは、回転する 渦以外の流速が誤検出された恐れがある。
誤検出を軽減させるために観測の時間間隔を短くすることが有効であろうが、解像度を犠牲に する問題があって汎用的な解決策ではない。捉えたい現象に適合した観測をする必要がある。
⚫ 回転角に対する画像相関法における線形近似の有効性を検証した。
水平移動を想定した今回の画像相関法は、回転角 2度であれば適用できるが、回転角10度を 超えるような大きな時間変化があれば、線形近似ができなくなって、適用できなくなった。
⚫ 背景流に流されるフロント全体の動きを捉えるため、相関を取る基準のスケールを大きくした 画像相関法を用いることで、フロント全体を移動させる移動ベクトルや背景流速の抽出に成功 した。
フロント全体の動きは約2.6cm/sであり、時間変化の少ない変化も捉えることができた。
⚫ 画像相関法では、相関を取る基準のスケールを変えれば捉える現象も変わってくる。ターゲッ トにする現象を捉える適切なデータの取捨選択と、適正なスケールの決定が必要である。
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第 5 章 まとめ
本研究では、沿岸域のリモートセンシングによる速度場の推定方法の開発を目的とした。現在の 観測手法では観測が困難な沿岸域の流速分布を、ドローンにより撮影した画像データを利用して、
画像相関法を用いて推算した。
ドローンによる観測では、ホバリング状態での連続空撮により、フロントの時間変化を捉えるこ とができた。また、フロント上に存在している数mスケールの擾乱の様子まで3㎝程度の高解像度 で収めることができた。
観測で得た可視画像から流速を算出するため、衛星観測データで使われている画像相関法を用い た。まず、フロント上の擾乱と同じ大きさで相関を取ることにより、フロント上の速度場を求める ことができた。しかし、画像相関法の欠点として、色の空間分布にあまり勾配のない河川水や海水 だけの領域に関しては、速度場を求めることはできなかった。また、画像相関法で複数画像の組み 合わせで解析を行った結果、観測期間を通して常に同じ向きの流れが存在して、5分ほどでは大き な流れの変化はないことと、フロントは全体的に2.6cm/sの背景流によって移動していることが分 かった。
係留測定のデータと潮汐データを比較することで、沿岸域に対する画像相関法の有効性を確かめ た。また、ホバリング中にドローンの位置が動いていない前提で画像相関法を用いているが、実際 に位置の変化がないか(ホバリングの精度)の検証を行った。海潮流による水平移動のない海岸を 撮影することで、ホバリング精度を測定した。すなわち、ドローンの動きだけを抽出して移動速度 を出したところ、今回の観測データで測定できる最小の誤差しかなく、ホバリング精度による誤差 は考えなくてよいものとした。
フロント上の速度場を求めるにあたっては、渦一つと同じ大きさのスケールで相関を求めたが、
フロントに重なる渦内の流速分布までは捉えることができなかった。これを可能にするため、相関 を取るスケールをさらに小さくした。渦の回転運動は抽出することができたが、変化は時間変化が 大きくノイズが多かったため線形相関ができず、渦の速度場を正確に求めることはできなかった。
次に、背景流に流されるフロント全体の移動を求めるため、相関を取るスケールを大きくしたとこ ろ、フロント全体の2.6㎝/s程度の移動を抽出することに成功した。このことから相関を取るスケ ールを変えることで抽出できる現象が変わることが分かったが、時間変化が速い現象はさらに細か な時間間隔の撮影データがないと線形近似ができず、速度場を求めることができないことがわかっ た。
ドローン空撮画像に画像相関法を用いて速度場を算出する方法は、適切なスケールや時間間隔で 得たデータが必要である。今後は、適切データの選択方法を精査することで、ドローン観測による
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可視画像から、フロント周辺の速度だけではなく、沿岸域に典型な諸現象に関連付けられる速度場 の算出が可能であろう。
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謝辞
本研究を遂行するにあたり、終始大変熱心にご指導ご鞭撻していただいた九州大学応用力学研究 所の磯辺篤彦教授並びに木田新一郎准教授に深く感謝いたします。
また、厚岸での観測では共同研究者である北海道大学低温科学研究所の三寺史夫教授、中村知裕 講師、東京大学大気海洋研究所の田中潔准教授、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの 伊佐田智規准教授には、観測方法のアドバイスやデータの提供など大変お世話になりました。心よ り御礼申し上げます。また、観測の際には北海道大学の厚岸臨海実験所を使用させていただき、研 究所の職員の方々には観測準備などご協力いただきました。皆様に心より感謝いたします。
研究室の技術職員の皆様、秘書の皆様には研究室での活動が快適にかつ円滑に進むよう多くのサ ポートをしていただき、大変お世話になりました。御礼申し上げます。
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