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フランチャイズ店舗向け電力ディスアグリゲーショ ン方式の研究

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(1)

著者 尾崎 友哉

発行年 2018‑06

出版者 静岡大学

URL http://doi.org/10.14945/00026098

(2)

静岡⼤学 博⼠論⽂

フランチャイズ店舗向け

電⼒ディスアグリゲーション⽅式の研究

平成 30 年 6 ⽉

⼤学院 ⾃然科学系教育部 情報科学専攻

尾崎 友哉

(3)
(4)

i

要旨

近年,⼈間が消費するエネルギーは増加の⼀途であり,世界的に顕在化する社会・環 境問題の⼤きな要因となっている.持続可能な社会の実現には,エネルギー消費の低 減が⼤きな課題である.しかしながら,ユーザはエネルギーを使った快適な⽣活に慣 れてしまっているため,単純なエネルギーの削減はユーザに我慢を強いることにな り,継続が難しい.そのため,ユーザにできるだけ負担をかけずに無駄を排除してい くことが重要となる.そこで,本研究では,様々な省エネルギー対策の中で,ICT を

⽤いて,消費電⼒の⾒える化,データの蓄積と分析,機器の制御などが可能となるエ ネルギーマネージメントシステム(EMS)に着⽬し,これによりユーザに負担をかけず に無駄を排除し,エネルギー消費を低減することを⽬指す.

第 1 章では,世界および⽇本のエネルギー消費動向から,エネルギー消費を低減すべ きターゲットについて述べる.世界的に顕在化する社会・環境問題の⼤きな要因が,

⼈間の消費するエネルギーの増加である.⽇本も例外ではなく,1970 年代までの⾼度 成⻑期に,⽇本のエネルギー消費は⾼い伸び率で増加し,多くの環境問題を引き起こ してきた.近年の⽇本においては,製造業を中⼼に省エネルギー化が進むとともに,

省エネルギー型製品が開発され,エネルギー消費は減少傾向となっている.しかしな がら,家庭部⾨や,ビルや店舗などの業務他部⾨のエネルギー消費,特に電気エネル ギーの消費が増⼤してきている.業務他部⾨においては,総エネルギー消費量に占め る割合の⼤きさ,組織・業態上の特性などを考慮した結果,「フランチャイズチェーン 店」,「百貨店、スーパー等卸・⼩売業」,「事務所ビル」が優先的に対策すべきターゲ ットになっている.そこで,本研究では,エネルギー消費原単位の⼤きさ,フランチ ャイズチェーンの組織形態を活かし本部を通じた温暖化対策の⽔平展開が可能である こと,今後の増加⾒込み等を考慮し,フランチャイズチェーン型⼩規模店舗(以下,フ ランチャイズ店舗)を対象とした省エネルギー化をターゲットとすることにした.

第 2 章では,フランチャイズ店舗向け EMS の機能要件と課題を明らかにし,本研究 で取り組むフォーカスエリアについて述べる.⼀般的に,省エネルギー化は,(1)機器 の運転状況を⽰すデータを計測し,(2)計測したデータを蓄積,グラフで視覚化し,

(3)問題点に気付き,(4)改善策を検討して実践する,という⼀連のサイクルを回すこ とで⾏われる.さらにフランチャイズ店舗特有の要件として,(5)低コスト化,(6)多 店舗への展開が上げされる.EMS の導⼊が進まなければ省エネルギー化のサイクルが

(5)

ii した.

第 3 章では,上記 2 つの課題を解決するための電⼒ディスアグリゲーション⽅式を提 案すると共に,提案⽅式を組み込んだシステムを実際の店舗で動作させることで有効 性の確認する.電⼒ディスアグリゲーション⽅式では,分電盤の 1 カ所で計測した電 流波形から各機器の特徴を検出し,機器の動作状態や消費電⼒を推定する.本研究で は,周波数特性とともに時間領域の情報も抽出可能なウェーブレット変換を利⽤し,

電流波形をウェーブレット変換した結果得られる展開係数を⽤いて機器の状態を推定 する.また,展開係数が波形の振幅,つまり,消費電流の⼤きさに⽐例する性質を利

⽤し,動作中の機器の消費電⼒を推定する.ただし,ウェーブレット変換では,マザ ーウェーブレットの種類や変換レベルにより展開係数の⼤きさが⼤きく異なる.その ため,機器の動作状態推定,消費電⼒推定に適したマザーウェーブレット,変換レベ ルを明らかにする.これらの検討結果に基づき,提案⽅式を組み込んだシステムを⽤

いて,代表的なフランチャイズ店舗であるコンビニエンスストアで実証実験を⾏っ た.その結果,推定対象とした機器の状態推定に関して概ね 90%以上の正解率で状態 を識別できること,消費電⼒量推定に関して⼀部の機器を除き絶対平均⽐率誤差 MAPE15%以下の精度で推定できることを確認した.また,空調機と冷凍機によう に,電源回路がほぼ同じ場合,電流波形に差がほとんどなくなるが,このような場合 でも,出⼒の差を利⽤して両者の消費電⼒を分離する⼿法を検討し,分離できる可能 性を⽰す.

最後に,第 4 章で,本研究の成果をまとめると共に,今後の新しい研究への展望につ いて述べる.本研究の成果を製品に適⽤していくことにより,フランチャイズ店舗への EMS 導⼊の障壁が下げることができる.その結果,⼩規模店舗への EMS の導⼊が進 み,消費電⼒⾒える化,消費電⼒のピーク制御など,店舗の省エネルギー化が進むと考 える.

(6)

iii

⽬次

第 1 章 序論 ... 1

1.1. 背景 ... 1

1.1.1. 世界的に顕在化する様々な社会・環境問題 ... 1

1.1.2. 世界のエネルギー動向 ... 4

1.1.3. ⽇本のエネルギー動向 ... 5

1.1.4. 業務他部⾨におけるエネルギー消費の動向 ... 6

1.2. 研究の⽬的 ... 12

1.3. 論⽂構成 ... 14

第 2 章 本研究のフォーカスエリアと関連研究 ... 15

2.1. はじめに ... 15

2.2. フランチャイズ店舗における省エネルギー対策と課題 ... 16

2.2.1. 省エネルギー対策のモチベーション ... 16

2.2.2. ⼩規模店舗向け EMS の普及状況 ... 22

2.2.3. ⼩規模店舗向け EMS の例 ... 23

2.2.4. フランチャイズ店舗の特徴 ... 26

2.3. 本研究のフォーカスエリア ... 29

2.3.1. フランチャイズ店舗向け EMS の要件と課題 ... 29

2.3.2. 本研究のフォーカスエリア ... 31

2.4. ⼩規模店舗向け EMS の例 ... 34

2.5. エネルギーマネジメントシステムに関する研究 ... 34

2.5.1. 機器の状態のセンシング,電⼒の計測 ... 34

2.5.2. 機器の状態の⾒える化と制御⽅式 ... 35

2.5.3. データ分析と制御 ... 37

2.5.4. 省エネ⾏動の誘導 ... 38

2.6. まとめ ... 40

第 3 章 フランチャイズ店舗向け電⼒ディスアグリゲーション⽅式 ... 41

3.1. はじめに ... 41

3.2. フランチャイズ店舗への EMS 導⼊を容易にするための要件 ... 42

(7)

iv

3.4. 本研究の位置づけ... 46

3.5. ウェーブレット変換を⽤いた推定原理 ... 47

3.5.1. 解析⼿法の選択 ... 47

3.5.2. ウェーブレット変換による特徴量の抽出... 48

3.6. ウェーブレット変換パラメータの決定 ... 52

3.7. 機器情報の登録と推定... 54

3.7.1. 機器情報の登録 ... 54

3.7.2. 機器の状態と電⼒の推定 ... 56

3.8. フランチャイズ店舗向け EMS のシステムの構成 ... 57

3.9. 実証実験 ... 60

3.9.1. 実証実験の⽬的 ... 60

3.9.2. 実験の概要 ... 60

3.9.3. 事前調査 ... 61

3.9.4. 推定原理の動作確認 ... 63

3.9.5. 推定精度の評価⽅法 ... 67

3.9.6. 推定精度の評価結果 ... 68

3.10. 類似機器の分離 ... 74

3.10.1. 課題 ... 74

3.10.2. 分離⽅法の検討 ... 74

3.10.3. 空調機・冷凍機の成分分離機能の評価 ... 77

3.11. 考察 ... 79

3.12. まとめ ... 81

第 4 章 結論と今後の展望 ... 83

4.1. 結論 ... 83

4.2. 今後の展望 ... 85

謝辞 ... 88

参考⽂献 ... 89

著者発表論⽂ ... 97

(8)

v

図⽬次

図 1-1 社会経済システムにおける循環と⾃然環境における循環 ... 2

図 1-2 世界の編平均気温偏差(出典:気象庁) ... 2

図 1-3 SDGs(持続可能な開発⽬標) ... 3

図 1-4 世界のエネルギー消費量の推移(地域別,⼀次エネルギー) ... 4

図 1-5 1 ⼈当たりの名⽬ GDP と 1 次エネルギー消費(2015) ... 5

図 1-6 最終エネルギー消費と実質 GDP の推移 ... 6

図 1-7 業務他部⾨業種別エネルギー消費の推移 ... 7

図 1-8 業務他部⾨エネルギー消費原単位の推移 ... 8

図 1-9 業務他部⾨エネルギー源別消費原単位の推移 ... 8

図 1-10 ⽇本におけるコンビニエンスストア店舗数 ... 11

図 1-11 ドラッグストアの売上⾼・総店舗数の推移 ... 11

図 1-12 省エネルギー対策のポイント ... 13

図 2-1 東京都内コンビニエンスストア電気使⽤量の分布図 ... 17

図 2-2 契約電⼒の決定⽅法 ... 17

図 2-3 業務⽤空調機の期間消費電⼒量の⽐較(10 ⾺⼒相当ダクト型の場合) .... 19

図 2-4 LED 照明による省エネルギ効果(12,000lm タイプの場合) ... 19

図 2-5 BEMS の概要 ... 20

図 2-6 有望 4 業種における BEMS の普及率 ... 23

図 2-7 クラウド型 EMS の例 ... 24

図 2-8 パルコスモ株式会社 PN-XERO の概要 ... 25

図 2-9 富⼠電機クラウド型 EMS の概要 ... 26

図 2-10 フランチャイズ店舗向け EMS の要件... 29

図 2-11 本研究のフォーカスエリア ... 33

図 2-12 スマートタップの事例[54] ... 35

図 2-13 業務⽤空調機に ECHONET Lite を適⽤した例(出典:[58]) ... 36

図 2-14 省エネルギーと快適性のバランスを考慮した制御[61] ... 38

図 3-1 電⼒ディスアグリゲーションの概要 ... 43

図 3-2 電気機器の電流波形の例 ... 48

図 3-3 ウェーブレット変換のブロック図 ... 48

図 3-4 電流波形 ... 49

(9)

vi

図 3-8 ウェーブレット変換のレベルと展開係数 ... 52

図 3-9 ウェーブレット変換のレベルと周波数の関係 ... 53

図 3-10 マザーウェーブレットの違いによる展開係数の差異 ... 54

図 3-11 システム構成図... 57

図 3-12 計測装置のブロック構成図 ... 58

図 3-13 EMS コントローラ試作機のソフトウェア構成 ... 59

図 3-14 設置の様⼦ ... 61

図 3-15 事前調査結果 ... 62

図 3-16 分電盤および個別機器の電⼒波形 ... 65

図 3-17 ウェーブレット変換後の展開係数 ... 66

図 3-18 消費電量と展開係数の関係 ... 67

図 3-19 推定精度の評価⽅法の概要 ... 68

図 3-20 状態推定の結果... 70

図 3-21 消費電⼒推定分散図 ... 71

図 3-22 電⼒推定結果(空調機・冷凍機) ... 71

図 3-23 電⼒推定結果(IH 機器) ... 72

図 3-24 電⼒推定結果(照明) ... 72

図 3-25 電⼒推定結果(電⼦レンジ) ... 73

図 3-26 同⼀電⼒時の空調機と冷凍機の電流波形⽐較 ... 74

図 3-27 ⾼周波(96KHz)サンプリングの結果 ... 75

図 3-28 電⼒の変化量(Δp)と閾値の調整 ... 76

図 3-29 成分分離の処理フロー ... 76

図 3-30 成分分離機能の評価⽅法概要 ... 77

図 3-31 成分分離の検証結果(空調機) ... 77

図 3-32 成分分離の検証結果(冷凍機) ... 78

図 3-33 登録データ再利⽤のイメージ ... 80

図 4-1 今後の展望 ... 85

図 4-2 リストバンド型汗センサ(出典:[91]) ... 87

(10)

vii

表⽬次

表 1-1 業種別総エネルギー消費量の推計結果 ... 10

表 2-1 省エネルギー対策 ... 18

表 2-2 店舗における BEMS の普及率想定 ... 23

表 2-3 フランチャイズ店舗の特徴 ... 28

表 3-1 電⼒ディスアグリゲーション⽅式の⽐較(リアルタイム⽅式) ... 46

表 3-2 機器情報 ... 55

表 3-3 計測装置のスペック ... 58

表 3-4 EMS コントローラ試作機のスペック ... 59

表 3-5 設置機器 ... 60

表 3-6 登録した機器情報 ... 64

表 3-7 実証実験の結果 ... 69

(11)

viii AI ⼈⼯知能 (Artificial Intelligence)

BEMS Building and Energy Management System CEMS Community Energy Management System CT クランプ型電流センサ

DWT 離散ウェーブレット変換 (Discrete Wavelet Transform) EMI Electromagnetic Interference

EMS エネルギーマネジメントシステム (Energy Management System) EV 電気⾃動⾞ (Electric Viechle)

GUI Graphical User Interface

HEMS Home Energy Management System

HHM Hidden Markov Model

ICT Information and Communication Technology

IH Induction Heating

IoT Internet of Things

MAPE 絶対平均⽐例誤差 (Mean Absolute Percentage Error) MCU Micro Control Unit

NN Neural Network

OA Office Automation

(12)
(13)
(14)

1

第1章 序論

1.1. 背景

1.1.1. 世界的に顕在化する様々な社会・環境問題

地球上の⾃然環境は,⼤気圏,⽔圏,⼟壌圏及び⽣態系の間を物質が循環し,⽣態系 が微妙な均衡を保つことで成⽴している.⼀⽅,19 世紀後半にイギリスで始まった産 業⾰命以降急速に⼯業化が進み,⽣産,流通,消費といった社会経済活動を通して,資 源・エネルギーの採取と消費,不⽤物の排出等の形で⾃然環境に対し負荷をかけるよう になってきた (図 1-1).⾃然環境は,社会経済活動において⽣じた負荷を吸収し軽減 するという機能を有している.しかしながら,社会経済活動に伴って⽣じる環境負荷の 総量が⾃然環境の循環を通じた吸収・軽減機能の限界を超え,様々な社会・環境問題を 引き起こしている.このような社会・環境問題としては,例えば,下記があげられる.

l 地球温暖化[1][2]

l 資源の枯渇[3]

l ⽔不⾜[4]

l 廃棄物の増加[4]

l ⽣態系の破壊 l ⾷糧不⾜[7]

l エネルギー消費の増加

例えば,地球温暖化に関して,図 1-2 に⽰したように,世界の平均気温は今世紀末に は現在と⽐較して最⼤ 4.8℃上昇するといわれている.また,世界の廃棄物発⽣量は 2050 年までに 2 倍以上の約 223 億トンに増加(2010 年⽐),⽔不⾜は世界⼈⼝の 40%

に影響を及ぼし今後もその割合は増加,毎年世界では⽇本の国⼟の約 1/7 相当の森林が 失われている[8]などと予想されており,このままでは,かけがえのない地球を回復不 能な状態にまで損なう危険性がある.

(15)

2

図 1-1 社会経済システムにおける循環と⾃然環境における循環 (出典:環境省)

図 1-2 世界の編平均気温偏差(出典:気象庁)

(16)

3

このような状況の下,国際社会は,直⾯する社会・環境問題の解決に向けて様々な取 組を始めている.例えば,2015 年には,2 つの重要な国際的な枠組みが採択されてい る.1 つ⽬は,2030 年に向けての国際社会の共通⽬標である持続可能な開発⽬標 (SDGs)[9]の策定である.図 1-3 に,SDGs で定める開発⽬標を⽰す.SDGs では,国 連に加盟するすべての国が対象として,持続可能な世界を実現するために,経済,社会,

環境などの 17 ⽬標と 169 のターゲットを定めている.2 つ⽬は,温室効果ガスを削減 する国際条約であるパリ協定[10]である.パリ協定は,気候変動枠組条約[11]の会合 COP21[12]において,世界の平均気温の上昇を産業⾰命前と⽐較し 2℃より⼗分に低く 保つ国際社会の合意であり,すべての国(先進国と発展途上国)が協調して取り組むこと となっている.

図 1-3 SDGs(持続可能な開発⽬標)

(17)

4 1.1.2. 世界のエネルギー動向

先に説明した環境問題を引き起こす⼤きな要因として,エネルギー消費量の増加[13]

があげられる.世界におけるエネルギー消費量(⼀次エネルギー)は経済成⻑とともに増 加を続けており,⽯油換算で 1965 年の 37 億トンから年平均 2.6%で増加し続け,2015 年には 131 億トンに達している.特に,2000 年代以降,新興国におけるエネルギー消 費の伸び率が⾼くなっている.⼀⽅,先進国では,経済成⻑率,⼈⼝増加ともに,発展 途上国と⽐較して低く⽌まっていることや,産業構造が変化し省エネルギーが進んだこ とが影響し,伸びは鈍化している.

⼀⽅,図 1-5 に⽰すように,1 ⼈当たりのエネルギー消費量をみると,国によってば らつきがあるものの,現時点では先進国で⼤きくなっている.⼀般的に,経済成⻑とと もにエネルギー消費量が増加するため,今後,発展途上国のエネルギー消費量も増加す ると予想される.従って,発展途上国においてエネルギー効率をためていくことが重要 であり,先進国がその⼿助けをしていくことが求められている.

図 1-4 世界のエネルギー消費量の推移(地域別,⼀次エネルギー) (出典:2017 年度エネルギー⽩書)

(18)

5

図 1-5 1 ⼈当たりの名⽬ GDP と 1 次エネルギー消費(2015) (出典:2016 年度環境⽩書)

1.1.3. ⽇本のエネルギー動向

⽇本におけるエネルギー消費のトレンド[13]を図 1-6 に⽰す.1970 年代までの⾼度 成⻑期に,⽇本のエネルギー消費は⾼い伸び率で増加した.しかしながら,その後の 2 度のオイルショックを契機に,製造業を中⼼に省エネルギー化が進むとともに,省エネ ルギー型製品も開発されてきた.その結果,2004 年度をピークに,エネルギー消費は 減少傾向となっている.さらに,2011 年に発⽣した東⽇本⼤震災を契機に節電意識が

⾼まり,近年ではさらに減少が進んでいる.

部⾨別に⾒ると,1973 年度から 2015 年度までの伸びは,産業部⾨で 0.8 倍,業務他 部⾨で 2.4 倍,家庭部⾨で 1.9 倍,運輸部⾨で 1.7 倍となっており,業務他部⾨,家庭 部⾨での伸びが⼤きくなっている.それに伴い,これらの部⾨がエネルギー消費全体に 占める割合も⼤きくなっており,1973 年度と 2015 年度で,家庭部⾨は 8.9%から 13.8%

に,業務他部⾨では 9.2%から 18.2%に増加している.特に,近年では,業務他部⾨の 伸びが⼤きく,何らかの対策をとることが必要となっている.

(19)

6

図 1-6 最終エネルギー消費と実質 GDP の推移 (出典:2017 年度エネルギー⽩書)

1.1.4. 業務他部⾨におけるエネルギー消費の動向

業務他部⾨は,事務所・ビル,デパート,ホテル・旅館,劇場・娯楽場,学校,病院,

卸・⼩売業,飲⾷店,その他サービス(福祉施設など)の 9 業種に⼤別される.これら 9 業種のエネルギー消費のトレンドを図 1-7 に⽰す.1975 年度まではホテル・旅館のエ

(20)

7

ネルギー消費が最⼤であったが,近年では,卸・⼩売り,事務所・ビルの消費が多くな っている.このため,オフィスや店舗における消費電⼒の低減が重要な課題となってい る.

業務他部⾨エネルギー消費原単位の推移を図 1-8 に⽰す.エネルギー消費を⽤途別 に⾒た場合,主に,動⼒・照明,冷房,給湯,暖房,厨房の 5 ⽤途に分けることができ る.近年,OA 化などの影響により,動⼒・照明⽤途が⼤きく伸びてきている.⼀⽅,

冷房⽤途は空調機器の普及により拡⼤してきていたが,2000 年後半から空調機器の普 及が⼀巡したこと,および,機器のエネルギー消費効率が上昇したことにより減少傾向 にある.ただし,冷房⽤,暖房⽤途を合計すると全体の 29%であり,引き続き⼤きな割 合を占めている.また,業務他部⾨エネルギー源別消費原単位の推移を図 1-9 に⽰す.

近年では,電⼒として消費されるエネルギーの割合が増加しており,1965 年度には 16%

であったが,2015 年度には 50%となっている.

図 1-7 業務他部⾨業種別エネルギー消費の推移 (2017 年度エネルギー⽩書)

(21)

8

図 1-8 業務他部⾨エネルギー消費原単位の推移 (2017 年度エネルギー⽩書)

図 1-9 業務他部⾨エネルギー源別消費原単位の推移 (出典:2017 年度エネルギー⽩書)

2004 年における業務他部⾨の業種別エネルギー消費量の推定結果[14]を表 1-1 に⽰

す.ここでの推計は,各種の統計資料等からのエネルギー消費原単位,床⾯積等の数値 を組み合わせて使⽤しており,あくまで,およその総エネルギー消費量,各業種別エネ ルギー消費量の相対的な関係を⽰したものとなるが,およその傾向を読み取ることはで きる.これらの分析を元に,総エネルギー消費量に占める割合の⼤きさ,組織・業態上

(22)

9

の特性などを総合的に勘案し,国は,「フランチャイズチェーン店」,「百貨店,スーパ ー等卸・⼩売業」,「事務所ビル」を優先すべきターゲットとして定めた.そして,上記 背景のもと,⽯油危機を契機として 1979 年に制定された「エネルギーの使⽤の合理化 に関する法律」(以下,省エネ法)を,エネルギー消費量が⼤幅に増加している⺠⽣部

⾨(業務他部⾨と家庭部⾨)のエネルギー使⽤合理化を⽬的に改正にした.2010 年 4 ⽉ から施⾏された改正省エネ法[15]では,⼯場・事業場単位のエネルギー管理から事業者 全体でのエネルギー管理に規制体系が変わった.この改正により,企業直営店に加え,

フランチャイズチェーン展開している⼩規模店舗も新たに規制対象に加わった.規制対 象となる企業では,全事業所で使⽤している電⼒量を把握したり,消費電⼒のピークを 抑えたりするなどの省エネルギー対策が急務となっており,多拠点向け遠隔管理システ ム市場や診断・コンサル市場が急拡⼤している.

フランチャイズチェーン店の店舗数は現在も増加を続けている.フランチャイズチェ ーン店の⼀例として,図 1-10 に⽇本におけるコンビニエンスストア店舗数の推移[16]

を,図 1-11 にドラッグストア店舗数の推移[17]をそれぞれ⽰す.これらフランチャイ ズチェーンは⼩規模店舗が多いが,営業時間が⻑く,単位⾯積あたりのエネルギー消費 量(エネルギー消費原単位)も⼤きい.そのため,店舗数の増加に伴い,フランチャイズ チェーン全体で消費される電⼒は,2004 年度の推計よりも⼤きくなってきていると思 われる.

そこで,本研究では,エネルギー消費原単位の⼤きさ,フランチャイズチェーンの組 織形態を活かし本部を通じた温暖化対策の⽔平展開が可能であること,今後の増加⾒込 み等を考慮し,フランチャイズチェーンの⼩規模店舗(以下,フランチャイズ店舗)を対 象とした省エネルギー化を検討することとした.

(23)

10

表 1-1 業種別総エネルギー消費量の推計結果 業種 エ ネ ル ギ ー 消

費原単位 [MJ/㎡・年]

面積 [㎡]

総 エ ネ ル ギ ー 消費量

[103TJ/年]

フ ラ ン チ ャ イ ズチェーン店

コ ン ビ ニ エ ン スストア

10,614 5,636,472 60

フ ァ ミ リ ー レ ストラン

11,952 2,383,720 28

フ ァ ー ス ト フ ード

12,520 8,337,940 104

小計 - 16,358,1342 193

百貨店,スーパ ー等卸・小売業

百貨店 3,455 10,414,543 36

スーパー 2,943 75,381,059 222 卸・小売業その

2,943 314,887,927 927

小計 - 400,683,528 1,185

事務所ビル 1,919 435,331,000 835 ホテル・旅館 3,039 93,184,000 283 病院・医療関連施設 2,868 73,625,000 211 学校・試験研究機関 1,212 342,016,000 415

合計 - 1,361,197,660 3,122

(24)

11

図 1-10 ⽇本におけるコンビニエンスストア店舗数

(⼀般社団法⼈⽇本フランチャイズチェーン協会のデータを元に作成)

図 1-11 ドラッグストアの売上⾼・総店舗数の推移

(出典:⽇本チェーンドラッグストア協会「⽇本のドラッグストア実態調査」)

(25)

12

1.2. 研究の⽬的

以上説明したように,オフィスや店舗などの業務他部⾨や,家庭部⾨におけるエネル ギー消費が増加傾向にあり,持続可能な社会の実現に向けて,これらの部⾨におけるエ ネルギー消費の低減が課題となっている.特に,単位⾯積あたりのエネルギー消費量の

⼤きさ(エネルギー消費原単位の⼤きさ),フランチャイズチェーンの組織形態を活かし 本部を通じた温暖化対策の⽔平展開が可能であること,今後の増加⾒込み等を考慮する と,コンビニエンスストアなどのフランチャイズチェーン型の⼩規模店舗(以下,フラ ンチャイズ店舗)のエネルギー消費を低減することが重要となる.

しかしながら,ユーザはエネルギーを使った快適な⽣活に慣れてしまっているため,

単純なエネルギーの削減はユーザに我慢を強いることになり,継続が難しい.例えば,

店舗の空調機を⽌めればエネルギー消費を抑えることができるが,店員や顧客の快適性 が損なわれ,店舗の経営は難しくなる.そのため,例えば図 1-12 に⽰すように,利便 性と経済性のバランス,環境配慮と利便性のバランスなど,さまざまな視点でのバラン スをとりながら,全体を調和させることが重要となる[18].

ユーザに我慢を強いることなくエネルギー消費を低減し,快適で安全・便利な暮らし を続けることができれば,⾃然環境とも調和しそれが継続する.そのためには,ユーザ にできるだけ負担をかけずに無駄を排除していくことが⼀つの有⼒なアプローチとな る.本研究では,エネルギー消費低減の重要性が⾼いフランチャイズ店舗を対象に,快 適性を損なわずエネルギー消費を低減するシステムを構築できるようにすることで,持 続可能な社会の実現に貢献することを⽬指す.

(26)

13

図 1-12 省エネルギー対策のポイント (出典:⽇⽴製作所)

(27)

14

1.3. 論⽂構成

本論⽂の構成を以下に⽰す.

本章では,世界,および,⽇本におけるエネルギー消費動向を⽰した.⽇本において は,家庭部⾨やビルや店舗などの業務他部⾨のエネルギー消費,特に電気エネルギーの 消費が増⼤しており,特にコンビニエンスストアなどのフランチャイズ店舗における電 気エネルギー消費が増加している.そこで,本研究では,フランチャイズ店舗を対象と した省エネルギー化を研究対象とすることを述べた.

第 2 章では,本研究の対象となるフランチャイズ店舗向けにおける省エネルギー対策 をまとめる.本研究では,その中で,ICT を⽤いて,消費電⼒の⾒える化,データの蓄 積と分析,機器の制御などを可能とするエネルギーマネージメントシステム(EMS)に着

⽬する.そして,本研究でターゲットとするフランチャイズ店舗における EMS の現状 と課題,および,フランチャイズ店舗向けの EMS の要件を整理し,EMS 導⼊の障壁と なっている課題を明らかにする.また,関連研究として,EMS の基本機能となるセン シング,⾒える化,データの分析に関する関連研究を取り上げる.

第 3 章では,導⼊の障壁となっている課題を解決するための⼿法として,分電盤⼀ヶ 所で計測する電流波形から動作中の機器識別と消費電⼒推定を可能とする電⼒ディス アグリゲーション技術に着⽬し,電流波形をウェーブレット変換してその展開係数から 動作中の機器の特定と消費電⼒を推定する⽅式を提案する.そして,実際の店舗で実証 実験により,提案⽅式の有効性を⽰す.

第 4 章では,本研究の成果をまとめると共に,快適性と省エネルギーを両⽴させる新 しい研究への展望について記述する.

(28)

15

第2章 本研究のフォーカスエリアと関連研究

2.1. はじめに

本章では,まず,フランチャイズ店舗における省エネルギー対策と課題について述べ る.次に,フランチャイズ店舗向け EMS の要件を整理して,EMS 導⼊の障壁となって いる課題を明らかにし,本研究がフォーカスするエリアについて述べる.さらに,2.4 節ではフランチャイズ店舗向け EMS の現状と課題について述べ,2.5 節では EMS の基 本機能となるセンシング,⾒える化,データの分析に関する関連研究を取り上げて簡潔 に説明する.

(29)

16

2.2. フランチャイズ店舗における省エネルギー対策と課題

2.2.1. 省エネルギー対策のモチベーション

フランチャイズ店舗が省エネルギー対策を⾏うモチベーションとしては,環境負荷の 低減とともに,電気料⾦の削減があげられる.電気料⾦削減の観点では,消費電⼒量⾃

体を低減するとともに,消費電⼒量のピークを低く抑えること(ピークカット)で電気料

⾦を削減することができる.

フランチャイズ店舗の代表的例であるコンビニエンスストアの消費電⼒の分布[19]

を図 2-1 に⽰す.図 2-1 からわかるように,コンビニエンスストアの消費電⼒は 500kW 未満のことが多く,電⼒会社とフランチャイズ店舗との間の契約は,「⾼圧⼩⼝」と呼 ばれる契約がなされることが多い.例えば,東京電⼒の場合,⾼圧⼩⼝契約の電気料⾦

は以下の式で計算される[20].

電気料⾦=基本料⾦+電⼒量料⾦+再⽣可能エネルギー発電促進賦課⾦

基本料⾦=料⾦単価×契約電⼒×(185 - ⼒率) / 100

電⼒量料⾦=「夏季」または「その他季」の料⾦単価×消費電⼒量 ± 燃料費調整額

ここで,契約電⼒は,過去 1 年における 30 分間の平均消費電⼒の最⼤値(最⼤需要電

⼒)にもとづき決定される(図 2-2).そのため,最⼤需要電⼒,つまり,消費電⼒量のピ ークを抑えることで電気代を削減できる.例えば,最⼤需要電⼒が極端に⼤きい⽉があ れば,節電対策を徹底することによって,1 年後の基本料⾦を⼤幅に削減できる可能性 がある.

表 2-1 に消費電⼒の低減,および,消費電⼒量のピークカットの対策をまとめる.以 下では,それぞれの詳細について述べる.

(30)

17

図 2-1 東京都内コンビニエンスストア電気使⽤量の分布図 (出典:東京都環境局)

図 2-2 契約電⼒の決定⽅法 (出展:関⻄電⼒)

(31)

18

表 2-1 省エネルギー対策

電⼒消費の低減 消費電⼒量のピークカット

⼈⼿ ① 手作業による省エネルギー ① 手作業によるピークカット 設備 ② 省エネルギー機器への置き換え

③ 自然エネルギーの利用

④ 建物の断熱性の強化

② 自然エネルギー(PVなど)によ るピークカット

③ 蓄電池によるピークカット ICT ⑤ EMSによる省エネルギー ④ EMSによるピークカット

(1) 電⼒消費⾃体の低減

オフィスや店舗における省エネルギー⽅法には,家庭における省エネルギー⽅法と同 様,以下のような様々な⽅法が考えられる[21][22].

① ⼿作業による省エネルギー

② 省エネルギー機器への置き換え

③ ⾃然エネルギーの利⽤

④ 建物の断熱性の強化

⑤ エネルギーマネジメントシステム (EMS)による省エネルギー

①の「⼿動による省エネルギー」とは,時間帯や気温に合わせ,⼈⼿でエアコンの設 定温度をこまめに変更したり,無駄な照明を OFF したりする⽅法である.これには,

従業員が省エネルギーに対して適切な知識を有しているおり,無駄に対して常に意識を 払ったり,⾏動を起こしたりする必要がある.そのため,⼈への依存度が⼤きく,また,

⼈によってはモチベーションを⻑く持続できないといった課題もある.

②の「省エネルギー機器への置き換え」とは,例えば,エネルギー効率の⾼い空調機 器や,⽩熱電球や蛍光灯から LED 照明への取り替えなどである.業務⽤空調を製造・

販売している⽇⽴アプライアンス株式会社の試算[23]では,15 年前の 10 ⾺⼒相当の業 務空調機の消費電⼒が 8,218kWh/年であるのに対し,最新型では 5,625kWh/年となっ ており,約 31%の消費電⼒削減効果がある(図 2-3).また,蛍光灯から LED 照明に置 き換えた場合,12,000 ルーメンタイプの照明を 84 台導⼊している施設では,消費電⼒

が 14,364W から 6140W に約 57%削減される(図 2-4)[24].器機の置き換えは,節電効 果が⾼いが,設備導⼊のための新たな投資が必要である点が課題である.

(32)

19

図 2-3 業務⽤空調機の期間消費電⼒量の⽐較(10 ⾺⼒相当ダクト型の場合) (出典:⽇⽴アプライアンス)

図 2-4 LED 照明による省エネルギ効果(12,000lm タイプの場合) (出典:⽇⽴アプライアンス)

③の「⾃然エネルギーの利⽤」とは,オフィスや店舗で使⽤するエネルギーをソーラ パネルなどで⾃家発電して補う⽅法である.②同様,本機能も⾮常に節電効果が⾼い⽅

法である.ただし,ソーラパネルなどの機器と施⼯費などを合わせて数百万程度かかる ことや,設置場所の確保などが課題となる.

(33)

20

④の「建物の断熱性の強化」とは,オフィスや店舗をリフォームすることで省エネル ギー化を図る⽅法である.壁に断熱材を適切に⼊れたり,建物内の窓を⼆重窓やペアガ ラスに変えたりして断熱効果を増すことで,冷房や暖房を効率的に使⽤することができ る.このように建物の観点から省エネルギー化を考えることも⾮常に重要である.

⑤ の エ ネ ル ギ ー マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム (EMS) に よ る 省 エ ネ ル ギ ー と は , ICT(Information and Communication Technology)技術を活⽤して照明や空調などを制 御し,最適なエネルギー管理を⾏うものである.店舗に置いては,BEMS(Building and Energy Management System)[25]が⽤いられることが多い.要素技術としては,図 2-5 に⽰すように,各種センサと制御装置を組み合わせたものである.

図 2-5 BEMS の概要 (出典:環境省)

(34)

21 (2) 消費電⼒量のピークカット

ピークカットの⽅法としては,以下の⽅法が考えられる.

① ⼿作業によるピークカット

② ⾃然エネルギーによるピークカット

③ 蓄電池によるピークカット

④ EMS 導⼊によるピークカット

①の「⼿作業によるピークカット」とは,先に説明した「⼿作業による省エネルギー」

と同様に,時間帯や気温に合わせ,⼈⼿でエアコンの設定温度を変更したり,照明を OFF したりして,ピーク時の消費電⼒をおさえる⽅法である.これには,従業員が省エ ネルギーに対して適切な知識を有し,電⼒消費に合わせて適切に機器を操作する必要が あり,⼈の能⼒への依存度が⼤きいという課題がある.

②の「⾃然エネルギーによるピークカット」とは,「⾃然エネルギー利⽤による省エ ネルギー」と同様に,ソーラパネルなどによる⾃家発電でピーク時の消費電⼒を補う⽅

法である.本⽅法には,機器と施⼯費の費⽤に加え,必ずしも必要なときに必要な電⼒

が得られるとは限らないという課題もある.

③の「蓄電池によるピークシフト」とは,例えば,消費電⼒が少ない夜間に蓄電池に 電⼒を蓄え,消費電⼒が⼤きい⽇中に蓄電池から放電することにより,電⼒会社から購

⼊する電⼒のピークを抑える⽅法である[39].本⽅法はピークシフトとも呼ばれ,⼀般 的に,④の「EMS 導⼊によるピークカット」と組み合わせて利⽤されることが多い.

本⽅法は,エアコンなどの設定温度を変更する必要がないため,快適性を損なわずにピ ークを抑えることができるという利点がある.しかしながら,設備導⼊のための新たな 投資が必要である点が課題である.

④の「EMS 導⼊によるピークカット」とは,設定した消費電⼒量を超えそうになっ た場合,EMS がアラームや警報などで通知し,エアコンや照明などを制御する⽅法で ある.制御⽅法としては,あらかじめ制御する機器を決めておいて制御するパターンと,

アラームや警報などの通知を受けたユーザが⼿動で制御する⽅法がある.本機能は,デ マンドコントロール機能とも呼ばれる.

以上,説明したように,電⼒消費の低減,消費電⼒量のピークカットともに,様々な

⽅法が提案され,実⽤化されつつある.EMS を導⼊することにより,⼈のノウハウや

(35)

22

モチベーションに依存しない省エネルギーが可能となる.また,⾃然エネルギーや蓄電 池を⽤いた省エネルギー対策においても,発電量に応じた機器の制御や,充電・放電など のエネルギーマネジメントが重要となる.従って,本研究では,EMS を⽤いた店舗の 省エネルギー化に着⽬する.

2.2.2. ⼩規模店舗向け EMS の普及状況

業務他部⾨における EMS の普及想定を表 2-2 に⽰す.EMS の普及は,これまで建 物の延べ床⾯積が 1 万㎡を越えるような⼤規模ビルから先⾏して進んできた.⼀⽅で,

中⼩規模ビル/建築物には中央監視装置のない場合も多く,エネルギーの可視化はそれ ほど進んでこなかった[26].さらに,フランチャイズ店舗などの⼩規模の店舗において は,導⼊コストなどの問題から普及が進んでいない.しかしながら,業務他部⾨における 省エネの必要性の⾼まりなどにより,徐々に中⼩規模ビルでも EMS の導⼊が始まって いる.

⼩規模店舗は,オフィスビルやスーパーや家電量販店などの⼤規模物販店舗と異なる 特徴を持つ.⼀つは建物規模である.⼩規模店舗の延べ床⾯積は,⼀般的にオフィスビ ルやスーパーよりも⼩さい場合が多い.例えば,物販店舗であるスーパーや家電量販店 等では延べ床⾯積500〜1万㎡の店舗が多いが,コンビニエンスストアでは延べ床⾯積 500㎡以下の店舗が多い.さらに,ファーストフード店,ファミリーレストラン,居酒 屋などの飲⾷系店舗の延べ床⾯積は,ほとんどが500㎡以下である.⼀⽅で,⼩規模店 舗はフランチャイズチェーンの場合が多いという特徴がある.コンビニエンスストア,

ドラッグストア,居酒屋など多くの店舗で,店舗全体に占めるフランチャイズチェーン の割合は⾼くなっている.フランチャイズチェーンの場合,本部などが⼀括してエネル ギー管理を⾏うニーズがあるため,店舗⾯積が⼩さくともEMSが導⼊される可能性が

⾼く,2012年の普及率4%が2030年に30%になると予想されている(2015/03 時点).

また,別の統計データ[27]では,事務所ビル,物販・飲⾷・サービス施設,医療・福祉・

宿泊施設,⼤学といった有望 4 業種施設における 2015 年度の EMS 普及率は 12.0%と なっている(図 2-6).物販・飲⾷・サービス施設の普及率が最も⾼く 29.4%,次いで医 療・福祉・宿泊施設が 20.8%,施設ストックが多い事務所ビルが最も普及率の低い 4.3%

となっている.このデータからの物販・飲⾷・サービス施設の普及が期待されることが 伺える.

(36)

23

表 2-2 店舗における BEMS の普及率想定 (⽇⽴コンサルティング推計をベースに編集)

延べ床面積 ~500㎡ 500㎡~10000㎡ 10000㎡~

店舗の例 コンビニエンスス トア,ドラッグスト アなど

スーパー,家電量販 店など

大規模スーパー,大 型家電量販店など

2012年の普及率 4% 4% 27%

2030年の普及率 30% 80% 80%

備考 フランチャイズチ

ェーン店舗の比率 を考慮

事務所ビルと同等と仮定

研究対象 本研究の対象 本研究の対象外

図 2-6 有望 4 業種における BEMS の普及率

2.2.3. ⼩規模店舗向け EMS の例

EMS の機能⾯に関して,最近では,可視化に加えて制御の機能を備えるものが普及 すると共に,クラウドベースで複数拠点をエネルギーマネジメント事業者が複数⼀括に 管理する例が増加している(図 2-7).クラウドベースのシステムでは,複数拠点を⼀括 して管理することができるため,例えば複数の店舗を持つフランチャイズチェーンのエ ネルギー管理を⼀括して⾏うことが可能となっている.以下,実際に商⽤サービスが⾏

われている⼩規模店舗向け EMS の例を説明する.

(37)

24

図 2-7 クラウド型 EMS の例

(1) パルコスモ社 PN-XERO[28],PN-mXERO[29]

デマンド管理が必要なフランチャイズチェーンなど⼩規模店舗や⼩規模事務所をタ ーゲットした EMS である.店舗や事務所の電⼒使⽤量をリアルタイムでクラウドに集 めて集計し,エネルギーを多く使⽤する時間帯を把握や,使い過ぎの際には警報を設定 可能となっている.また消費電⼒が規定の値を超えたときにエアコンを制御するデマン ド管理機能も備えている.

本システムでは,監視対象や制御対象となる機器に対して,電⼒センサ等の各種セン サや,制御するための装置を設置する必要があり,初期導⼊の⼿間やコストが導⼊の障 壁となっている.

(38)

25

図 2-8 パルコスモ株式会社 PN-XERO の概要 (出展:パルコスモ株式会社)

(2) 富⼠電機クラウド型 EMS[30][31]

図 2-9 にクラウド型 EMS の例を⽰す.クラウド型 EMS では,各店舗に設置した EMS コントローラからネットワーク経由でデータを収集する.中⼩規模ビル〜複数拠 点を統合管理する⼤規模ユーザーまで対応できるサービスとなっている.クラウド型 EMS では,店舗毎のエネルギー使⽤状況の⾒える化/デマンド管理だけでなく,拠点間 の⽐較や企業全体での消費電⼒量の把握など,統合的にマネージメントするための機能 を提供する.

なお,クラウド型 EMS においても,消費電⼒を計測するためのセンサや,データ収 集・クラウドへのアップロードを⾏う EMS コントローラを各拠点に設置する必要があ り,初期導⼊の⼿間やコストが導⼊の障壁となっている.

(39)

26

図 2-9 富⼠電機クラウド型 EMS の概要 (出展:富⼠電機株式会社)

2.2.4. フランチャイズ店舗の特徴

フランチャイズ店舗と,⼤規模店舗,家庭と⽐較し,フランチャイズ店舗の特徴を明 らかにする.⽐較結果を表 2-3 に⽰す.フランチャイズ店舗向け EMS では,これらの 特徴を考慮することが重要となる.

(1) 店舗数

家庭数に⽐べると数は少ないものの,⼤規模店舗に⽐べ,フランチャイズ店舗は店舗 数が多いという特徴がある.そのため,全店舗に導⼊するためには,必要な EMS の数 も多くなる.

(2) 使⽤する機器

フランチャイズ店舗で使⽤される機器は,フランチャイズチェーンごとに同じ機器が 導⼊されることが多い.⼀⽅,⼤規模店舗では,集中管理機能のついた⼤規模店舗専⽤

の機器および管理システムが導⼊されることが多く,機器の数も多くなる傾向にある.

また,家庭の場合,⼀つの家庭で使⽤される機器はさほど多くないが,家庭ごとに使⽤

(40)

27

する機器が⼤きく異なっており,全体として機器の種類が⾮常に多くなるという特徴が ある.

(3) EMS 導⼊にかけられるコスト

⼀般的に,EMS 導⼊の原資としては,削減した電気代が当てられることが多い.従 って消費電⼒の⼤きな⼤規模店舗ほど EMS 導⼊にかけられるコストは多くなる.コン ビニエンスストアなどの電気代は,店の⾯積にも依存するが,⽉ 20 万円〜30 万円くら いのことが多く[19],仮に消費電⼒が 10%削減できたとしても,削減される電気代は⽉

2〜3 万円程度,年間で 20〜30 万円程度となる.⼀⽅,EMS の導⼊・運⽤にかかるコ ストとしては,主に,機器の費⽤や設置の費⽤,および,⽇々の運⽤費⽤がかかるため,

これらの費⽤をできるだけ抑えることが重要となる.

(4) ネットワーク対応

⼤規模店舗では,集中コントロールを⾏うために,BACnet や LONWORKS といった ネットワークが導⼊されていること多く,これらのネットワークを介して機器の状態の 監視や制御が可能となっている.しかしながら,これらのネットワークを導⼊するため には,対応する機器を導⼊したり,ネットワークを敷設したりといったコストが必要と なるため,コストがあまりかけられないフランチャイズ店舗や家庭では普及するに⾄っ ていない.フランチャイズ店舗では,すでにネットワーク化されていない機器が導⼊さ れ使⽤されていることが多く,このような機器の状態でも監視できるようにする必要が ある.

(41)

28

表 2-3 フランチャイズ店舗の特徴

フランチャイズ店舗 大規模店舗 家庭

店舗数 多い 少ない 非常に多い

導入されている 機器

同 じ 系 列 で は 同 じ 機 器 が 使 用 さ れ る こ と が多い

集中管理され た専 用の機器

1店舗あたりの機器 の数が多い

各家庭で異なり,種 類も多い

EMSにかけられ るコスト(月額)

〜3万 数万円以上 〜数千円

機器のネットワ ーク対応

されていない 進んでいる されていない

(42)

29

2.3. 本研究のフォーカスエリア

2.3.1. フランチャイズ店舗向け EMS の要件と課題

フランチャイズ店舗向け EMS に求められる要件について考える.図 2-10 にフラン チャイズ店舗向け EMS の要件を⽰す.

図 2-10 フランチャイズ店舗向け EMS の要件

⼀般的に,省エネルギー化は,(1)機器の運転状況を⽰すデータを計測し,(2)計測し たデータを蓄積,グラフで視覚化し,(3)問題点に気付き,(4)改善策を検討して実践す る,といった⼀連のサイクルを実践することで⾏われる.EMS は,これら⼀連のサイ クルを⾃動で管理することを⽬指している.これらを実現するために,EMS に求めら れる機能は以下の通りである.

(1) 機器の状態のセンシング,電⼒の計測

店舗全体で消費される電⼒を計測するとともに,利便性や快適性を考慮した制御を⾏

えるようにするためには,個々の機器の状態や消費電⼒を計測することが重要となる.

(43)

30

そのための⽅法として,分電盤にクランプ型電流センサ(CT)[32]を取り付けたり,コン セントにスマートタップ[33]を取り付けたりするなど,個別にセンサを取り付ける⽅法 がとられている.また,BACnet[34]などのネットワークに対応した機器においては,

ネットワーク経由で機器の状態や消費電⼒を把握することも可能となっている.

しかしながら,機器毎にセンサの取り付けが必要となるため,必要なセンサの数が多 くなる,あるいは,ネットワーク対応機器の導⼊が必要という課題がある.

(2) データの蓄積と⾒える化

センシングした機器の状態や消費電⼒を蓄積し,グラフなどの形で視覚化する機能で ある.これにより,いつどの機器がどのくらい電⼒を消費したかを把握可能にすること で節電に役⽴てられる.さらに,リアルタイムでの消費電⼒を可視化することにより,

契約電⼒量に達しそうな時に機器の消費電⼒を抑えるなど,消費電⼒ピークカット制御 に役⽴てられる.

最近では,データの蓄積と可視化には,クラウドが⽤いられることが多い.センシン グしたデータは,ネットワークを経由してクラウドに送付され,蓄積・可視化される.

(3) データの分析

蓄積したデータを分析することで,以下のような気づきを与えることが可能となる.

・ 外気温と空調機の消費電⼒の関係を分析することで無駄な運転を⾒つけたり,他店 舗との⽐較することで無駄を⾒つけたりする.

・ 過去のデータと⽐較することで機器の異常を検知する.

・ どの機器の電源が⼊れられたか,あるいは操作されたかなどの情報が集めることで,

⼈の動き・活動を把握する.

・ 過去の消費電⼒データから将来の電⼒需要を予測し,最適な運転計画を⽴案する.

データの分析には,相関分析[35],クラスタリング[36]といった⼿法が⽤いられるこ とが多い.加えて,最近では,⼈⼯知能(AI)が活⽤されることも多くなってきている.

(4) 機器の制御

消費電⼒量が⼀定の値を超えそうになった場合に空調機の設定温度をあげたり,無駄 を検知した場合に無駄な運転を取りやめたりするなど,あらかじめ決められたルールや データ分析の結果に従って機器を制御し,エネルギー使⽤を改善する.機器の制御のた めには,コントローラと制御対象の機器を接続するネットワークが必要となる[37].ま

(44)

31

た,機器⾃体も外部からの制御を受け付けるインタフェースが必要となる.ネットワー クの例としては BACnet などのネットワーク,制御のインタフェースとしては接点⼊⼒

[38]などがある.

上記にあげた⼀般的な EMS に求められる機能に加え,「2.2.4 フランチャイズ店舗 の特徴と EMS 導⼊の課題」で述べたフランチャイズ店舗の特徴を考慮すると,フラン チャイズ店舗向け EMS の要件として以下を考慮する必要がある.

(5) 低コスト化

「2.2.4 フランチャイズ店舗の特徴と EMS 導⼊の課題」で述べたように,⼀般的に,

EMS 導⼊の原資としては,主として,削減した電気代が当てられることが多く,コン ビニエンスストアなどの場合,削減額は⽉ 2〜3 万円程度,年間で 20 万円〜30 万円程 度となる.⼀⽅,EMS のコストとしては,主に,導⼊費⽤として機器の費⽤や設置⼯

事のコスト,および,⽇々の運⽤コストがかかるため,これらのコストをできるだけ抑 えることが重要となる.また,すでに設置されている機器をそのまま利⽤できることも 低コスト化の観点で重要となる.

(6) 多店舗への展開

フランチャイズ店舗向けには,低コストで多店舗に導⼊できるだけでなく,⼀つの店 舗に導⼊したシステムを他店舗へも容易に展開できることが重要となる.コンビニエン スストアなどの場合,各店舗に導⼊される機器は同じ種類のものが多い.しかしながら,

全く同じというわけではなく,店舗毎に多少異なったり,環境が異なったりする.⼀般 的に EMS の導⼊には,店舗の環境に合わせた設定が必要となるため,店舗の環境に依 存する設定などはできるだけ少なくすることで,容易に導⼊できるようにすることが重 要となる.

2.3.2. 本研究のフォーカスエリア

図 2-11 にフランチャイズ店舗向け EMS の要件と本研究のフォーカスエリアをまと め る . 要 件 (2) 「 デ ー タ の 蓄 積 と ⾒ え る 化 」 に 関 し て は , す で に , 多 く の HEMS[40][41][42][43]や BEMS で製品化されている.また,AR(拡張現実)を⽤いて 個別荷電の消費電⼒を表⽰する⽅法[44]も提案されている.従って,フランチャイズ店 舗固有の課題は少なく,これらの先⾏事例の成果を導⼊することが可能である.また,

(45)

32

要件(3)「データ分析」に関しては,今後,さらに研究が必要となる分野である.より多 くのデータが集まれば,より⾼度な分析がなされ,データ間の関連性が明らかになって いくものと思われる.ただし,そのためには,まずは,データを集めることが肝要とな る.要件(4)「機器の制御」に関しては,機器を制御するためのネットワーク,制御する ためのインタフェースの標準化が進められており,これらの標準を採⽤することで対応 可能である.

そこで,本研究では,フランチャイズ店舗への導⼊の障壁となっている下記の課題に ついて取り組む.

① 要件(1)「機器の状態のセンシング,電⼒の計測」とフランチャイズ店舗特有の要件 (5)「低コスト化」を両⽴する,より多くの機器の状態を低コストでセンシングでき るようにすること

② フランチャイズ店舗特有の要件(5)「低コスト化」と要件(6)を両⽴するため,店舗 の環境に依存する設定などはできるだけ少なくし,導⼊作業をへらすこと.

上記 2 つの課題を解決する技術として,電⼒ディスアグリゲーション技術[45][46]に 注⽬する.電⼒ディスアグリゲーション技術とは,分電盤⼀ヶ所で計測する電流波形か ら動作中の機器の識別と消費電⼒推定を実現する技術である.この電⼒ディスアグリゲ ーション技術を⽤いることで,測定対象の機器ごとに計測⽤センサを設置する必要がな くなり,計測⽤センサ数の削減や,設置の⼿間を省くことで導⼊の障壁を下げることが できる.なお,快適性を損なわずに制御を⾏うためには,要件(3)「データ分析」による 無駄の検知や,制御アルゴリズムが重要となるが,普及の前段階では,まずは,EMS を 導⼊しデータを蓄積することが重要となるため,今後の課題とする.

以下,2.4 節においてフランチャイズ店舗向け EMS の現状と課題,2.5 節において EMS に関する従来研究について説明する.

(46)

33

図 2-11 本研究のフォーカスエリア

(47)

34

2.4. ⼩規模店舗向け EMS の例

2.5. エネルギーマネジメントシステムに関する研究

2.5.1. 機器の状態のセンシング,電⼒の計測

⼀般的に,消費電⼒の計測は分電盤で⾏われることが多く,個別の機器の消費電⼒ま では測定できない.個別機器の電⼒を計測できるようにするために,⼩型電⼒センサに 関する研究が⾏われている[47].例えば,上⽥らは,コンセントに直結した⼩型 CT を

⽤いて計測した電⼒を Bluetooth[48]でサーバにするシステムを提案している.このよ うに,機器毎にセンサを取り付けることで,各機器の電⼒計測が可能となる.

また,消費電⼒を⽤いて,ユーザが使⽤している機器を⾃動的に識別する研究も⾏わ れている.このような研究としては,例えば,スマートタップに接続した個別家電の消 費電⼒データを細粒度で収集し,スマートタップ側に搭載された MCU(Micro Control Unit)で各種家電の固有の消費電⼒波形並びに電流・電圧波形を解析することで,スマ ートタップに接続した家電の種別(メーカ,種類,型式等)などを⾃動判別する研究があ る[49][50][51][52][53][54].機器を⾃動的に識別することができれば,店舗導⼊時の 設定作業を軽減させることができる.しかしながら,スマートタップ⽅式では,測定し たい機器毎にスマートタップを設置する必要があり,測定対象の機器が多くなると導⼊

コストが⾼くなるという課題がある.また.機器の⾃動識別などの解析処理機能をおこ なうためには,スマートタップに搭載の MCU はそれなりに⾼速性・⾼性能なものが要 求され,かつ,数⼗ミリ秒単位の細粒度で消費電⼒の測定を⾏う必要があるため,スマ ートタップ⾃⾝のコストも⾼くなるという課題がある.

(48)

35

図 2-12 スマートタップの事例[54]

2.5.2. 機器の状態の⾒える化と制御⽅式

クラウドを活⽤することで,多地点の計測するシステムを迅速に構築するための研究 が⾏われている.きめ細やかな節電計画の⽴案には,店舗の分電盤ごと,さらにはブレ ーカごとの細分化した単位でリアルタイムに消費電⼒を可視化する必要がある.しかし,

必要な電⼒計側点が多くなるため,システム全体のコスト削減やスケーラビリティの向 上が課題になる.この課題を解決するため,⾼野らは,安価な電⼒計測ユニット(1 計測 点あたり 2500 円)とクラウドコンピューティング技術を⽤いることで安価かつスケー ラブルなシステムを実現可能としている[55].これにより,多くの店舗からデータを収 集し,管理することが可能となる.しかしながら,機器ごとに消費電⼒の測定が必要な 場合,より多くの電⼒計測ユニットを接続する必要があり,電⼒計測ユニットのコスト,

(49)

36 設置のコストが問題となる.

また,⼩型⼩売店舗向けに,ホームネットワーク技術である ECHONET Lite[56]の 導⼊を⽬指す研究も⾏われている.家庭⽤機器と業務⽤機器の違いの⼀つとして,機器 の構成があげられる.すなわち,家庭⽤機器は単⼀の機器で構成されるのに対し,業務

⽤機器は複数の機器で構成され,各機器間は独⾃のネットワークで接続されている.そ のため,そのままでは ECHONET Lite では制御できない.また,例えば,店舗などで 使⽤される業務⽤空調機は,複数の室外機と複数の室内機で構成され,同⼀の冷媒配管 で接続する他の機器への影響を把握できるようにする必要があるが,ECONET Lite で は,室外機と室内機の接続関係を把握することができない.そこで,村上らは,業務⽤

空調機コントローラに ECHONET Lite デバイとしての機能を搭載することで,

ECHONET Lite のコントローラから制御できるシステムを提案している[57][58].ま た,村上らが提案するシステムでは,ECHONET オブジェクトの「グループ情報」を 室内機と室外機の対応付けに利⽤することで,室外機と室内機の接続関係を把握できる ようにしている.しかしながら,本⽅法では,空調機コントローラなどを ECHONET Lite に対応させる必要があるという課題がある.

図 2-13 業務⽤空調機に ECHONET Lite を適⽤した例(出典:[58])

(50)

37 2.5.3. データ分析と制御

収集したデータを分析し,機器を最適に制御するための研究も⾏われている.例えば,

店舗向けではないが,収集したデータを分析し空調機の最適制御を⾏う研究として,朝 らは,データセンタ向けに空調機の最適制御⽅式を提案している[59].朝らの提案⽅式 では,IT 機器の稼動履歴情報から統計的に算出した IT 機器の予測消費電⼒と,IT 機 器と空調機の間の温度感度関係を⽤いることで,将来の空調電⼒をリアルタイムに計算 し,この空調電⼒が最⼩となる空調機台数及び給気温度設定値を導出して,空調機を制 御している.

また,消費電⼒の低減と快適性を両⽴させる制御に関する研究が⾏われている.従来 の EMS では,主に消費電⼒の低減に焦点が当てられていたが,住居環境における快適 性悪化により知的⽣産性や作業効率を損なうことが知られている[60].そこで,中部ら は,消費電⼒の低減と快適性を両⽴するデマンドコントロールアルゴリズム Amenity Aware Controller (AAC),および,操作しやすいユーザインタフェースを提案している [61].AAC では,図 2-14 のように,X 軸に平均消費電⼒,Y 軸に快適性指標(不満⾜

率)をとり,この平⾯上に任意の制御⼿法を⽤いたときの最良の制御応答である最適運 転曲線 f(x,y)をプロットする.そして,現在の環境を最適運転曲線状に向けて移動させ るように制御する.また,現在環境点を最適運転曲線状のどの点へ移動させるかという 制御の⽅向θを居住者が設定可能な唯⼀のパラメータとして使⽤する.これにより快適 性とのバランスやユーザの好みを反映させながら,消費電⼒を低減できるようにしてい る.なお,最適運転曲線の導出には,空調効果,室内の定常発熱,換気などによる熱損 失などを考慮した温熱環境モデルが必要であり,過去の実績データなどから温熱環境モ デルを構築しなければならない.

以上のように,機器の稼働状況に関する詳細なデータを集め,分析することで,各機 器を最適に制御し,省エネルギー化を実現することができる.

(51)

38

図 2-14 省エネルギーと快適性のバランスを考慮した制御[61]

2.5.4. 省エネ⾏動の誘導

機械による⾃動制御だけでなく,ユーザに省エネ⾏動を促す研究も⾏なわれている.

⽷井川らは,規範活性化理論[62]に基づいて設計した情報の提⽰による省エネルギー

⾏動の誘発を意図した実測を⾏なっている[63].その結果,「いつも節電にご協⼒いた だきありがとうございます」のように節電を直接的に求めるのではなく,「いつも環境 について⾼い問題意識を持っていただきありがとうございます」のように,道徳的意識 に働きかけることで⾃発的な⾏動を促すことが有効であることを⽰している.

⼩林らは,空間内に設置された様々なセンサからエネルギー消費にかかわる⼈の⾏動 を検出し,削減可能なエネルギーを算出して⾦額換算するシステムで,細かな省エネル ギーのためには⾦額換算は逆効果であることを⽰している[64].

井垣らは,ユーザが⽇々の電⼒消費をより細かく振り返ることができる電⼒消費振り 返りサービスを提案している[65].提案システムでは,電⼒浪費⾏動を,特定の家電が

⻑時間継続して実⾏される「電⼒消費超過」,サービスが提供できない状態であるにも かかわらず機器機能が実⾏され続ける「サービス提供不能」,ユーザの在/不在,室温な どの環境状態を考慮せずに機器機能が実⾏される「環境状態無視」に分類し,消費電⼒

ログ,機器操作ログ,環境センサログをマッシュアップして表⽰することにより,電⼒

浪費⾏動を確認できるようにしている.ユーザが振り返りを⾏うことで省エネ⾏動へと

(52)

39 誘導することを⽬指している.

また,豊川らは,家庭での燃料電池によるガス発電量と電⼒会社からの買電量のコス ト差を明⽰することで省エネ⾏動を意識付けできることを確認している[66].志⽥らは,

家電のコントローラ画⾯と電⼒の⾒える化を同⼀画⾯に表⽰し,家電動作のスケジュー リング機能を追加することで継続的な省エネ⾏動ができる可能性を⽰している[67].

以上のように,ただ単に消費電⼒を⾒える化するだけでなく,他の情報と適切に組み 合わせて表⽰を⾏うことで,ユーザに省エネ⾏動を促すことができる.

(53)

40

2.6. まとめ

本章では,フランチャイズ店舗向け EMS の機能要件と課題を明らかにし,本研究で 取り組むフォーカスエリアについて述べた.⼀般的に,省エネルギー化は,(1)機器の 運転状況を⽰すデータを計測し,(2)計測したデータを蓄積,グラフで視覚化し,(3)問 題点に気付き,(4)改善策を検討して実践する,という⼀連のサイクルを回すことで⾏

われる.さらにフランチャイズチェーン店舗特有の要件として,(5)低コスト化,(6)多 店舗への展開が上げされる.しかしながら,EMS の導⼊が進まなければ省エネルギー 化のサイクルを回すことはできない.そこで,本研究では,EMS 導⼊の障壁となって いる導⼊コストを下げることに着⽬し,①多くの機器の状態を低コストでセンシングで きるようにすること,②店舗の環境に依存する設定などはできるだけ少なくし導⼊作業 をへらすこと,の 2 つの課題を解決することを⽬指す.

参照

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