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2 バナッハ空間とヒルベルト空間

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Academic year: 2021

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(1)

2 バナッハ空間とヒルベルト空間

(2011

1

26

日更新)

K を R または C , X は K 上の線形空間とする。c C の複素共役を c と書く。

2.1 ノルムと内積

有限次元空間 K d ではベクトル x K d の “長さ” を測る指標のひとつがユークリッド ノルム: | x | = (∑ d

i=1 | x i | 2 ) 1/2

である. 無限次元の線形空間 X でも, 一様ノルム (1.1) や

L p -ノルム (1.5) のように x X の “長さ” のようなものが定義される場合がある. そ

うした例を思い浮かべつつ, 抽象的な公理を述べよう:

定義 2.1.1 記号 ∥ · ∥ で表される関数:

∥ · ∥ : X [0, ) (x 7→ ∥ x ) (2.1) に対し以下の条件を考える:

x = 0 ⇐⇒ x = 0, (2.2)

x + y ∥ ≤ ∥ x + y , x, y X (三角不等式), (2.3)

cx = | c |∥ x , c K , x X. (2.4) I (2.3)–(2.4) を満たす ∥ · ∥X 上の半ノルム (semi-norm), また (2.2) を満たす半ノ ルムを X 上のノルム (norm) と言う。

I X に,あるノルム ∥ · ∥ を指定したとき、組 (X, ∥ · ∥ ) をノルム空間 (normed vector space) という。

I ∥ · ∥ i , i = 1, 2 が共に X 上のノルムとする。次のような定数 m, M (0, ) が存在 するとき、ノルム ∥ · ∥ i , i = 1, 2 は同値であるという:

m x 2 ≤ ∥ x 1 M x 2 , x X.

注:関数 (2.1) が (2.2)–(2.3), 及び

∥ − x = x , x X. (2.5)

を満たせば(特に ∥ · ∥ がノルムなら)、

ρ(x, y) def. = x y

は距離の公理 (0.17)–(0.19) を満たす. 従って (X, ∥ · ∥ ) は距離 ρ に関する距離空間と

なる.そこで,今後ノルム空間に対し距離空間に関する用語(0.5 節参照)をそのまま

適用する.

(2)

2.1.1 ρ を線形空間 X 上の距離とする.以下の条件 a)–c) について 「a) b) &

c)」を示せ:a) x def = ρ(0, x) がノルム. b) ρ(0, cx) = cρ(0, cx), c K , x X. c) ρ(x + z, y + z) = ρ(x, y), x, y, z X.

2.1.2 S を集合,

X = { x : S K ; 有界 } , x S = sup

s S

| x(s) | , x X とする。このとき,(1.2) より (X, ∥ · ∥ S ) はノルム空間. 特に S R d なら

C b (S) = { x : S K ; 有界かつ連続 } は (X, ∥ · ∥ S ) の閉部分空間である(定理 1.1.4).

2.1.3 1 p ≤ ∞ に対し L p (µ) は(µ-a.e. に一致する元を同一視することにより)

ノルム ∥ · ∥ p についてノルム空間である (問 1.2.1, 定理 1.2.4).

2.1.4 E XX の基底とする, 即ち x Xx = ∑

e E x(e)e と一意的に表さ れる (x(e) K , 有限個の e を除き x(e) = 0, 従って ∑

e E x(e)e は有限和). 更に

x p =

{ (∑

e E | x(e) | p ) 1/p

, 1 p < ,

sup e∈E | x(e) | , p = x X (2.6)

と定める. これらは全て X 上のノルムである(例えば三角不等式 (2.3) は p = なら 明らか,p < なら有限和に対する (1.7) に帰着する).任意の線型空間は基底を持つ

(命題 0.4.2). 従って任意の線型空間にノルムが存在する.

dim X = なら異なる p に対するノルム (2.6) は同値でない.簡単のため p = 1, 2 を 考える.e 1 , e 2 , ... E, x n = ∑ n

j=1 1

j e j に対し

x n 1 =

n

j=1

1

j −→ ∞ , sup

n 1 x n 2 = (

j=1

1 j 2

) 1/2

< . よって ∥ · ∥ p (p = 1, 2) は同値でない.

“ノルム” という言葉は、F. リースが X = C([a, b]) ([a, b] R ), x = max

t [a,b] | x(t) | の場 合に最初に用いた(1918 年)。因みにノルムを x と書くことが多いが、この記号は、

E. シュミットが X = 2 ( N ) の場合に最初に用いた (1908 年) 15 . シュミットは 2 ( N ) という無限次元空間を, ユークリッド空間の類似と見做す幾何学的視点をとり入れた.

x という記号にも、このような思想の反映が見てとれる.

有限次元空間 K d では x K d のユークリッドノルム: | x | = (∑ d

i=1 | x i | 2 ) 1/2

はユー クリッド内積: x · y = ∑ d

i=1 x i y i を用い | x | = (x · x) 1/2 と表せる. これはユークリッド 空間に「直交性」という特別な幾何学的特性を付与する. これと類似の構造をもつノル ム空間が内積空間である (詳しくは命題 2.1.8 参照). まずは, 内積を公理的に導入する:

15

Erhard Schmidt (1876–1959)

(3)

定義 2.1.5 関数 (x, y) 7→ ⟨ x, y (X × X K ) に対し以下の条件を考える:

x, x = 0 ⇐⇒ x = 0, (2.7)

x, x ⟩ ≥ 0, x X, (2.8)

y, x = x, y , x, y X, (2.9)

cx + y, z = c x, z + y, z , c K , x, y, z X. (2.10) (2.9)–(2.10) から次が導かれる:

z, cx + y = c z, x + z, y c K , x, y, z X. (2.11) I (2.8)–(2.10) が満たされるとき, 上の関数を半内積 (semi inner product), (2.7) を満 たす半内積を内積 (inner product) と呼ぶ.

I 内積を備えた線形空間を内積空間という.

2.1.6 L 2 (µ) は次の内積 ⟨ · , · ⟩ について内積空間である:

x, y =

x(s)y(s) dµ(s). (2.12)

2.1.7 E XX の基底とする, 即ち x Xx = ∑

e E x(e)e と一意的に表さ れる (x(e) K , 有限個の e を除き x(e) = 0, 従って ∑

e E x(e)e は有限和). 次の ⟨ · , · ⟩X 上の内積:

x, y = ∑

e E

x(e)y(e) . (2.13)

また,この内積が誘導するノルムは (2.6) で p = 2 の場合である.任意の線型空間は基

底を持つ (命題 0.4.2). 従って任意の線型空間に内積が存在する.

命題 2.1.8 半内積 ⟨ · , · ⟩ に対し

x def. = x, x 1/2 (2.14)

とおく. このとき, x, y X に対し

x + y 2 = x 2 + 2 Re x, y + y 2 , (2.15)

|⟨ x, y ⟩| ≤ ∥ x ∥ ∥ y , ( 一般化されたシュワルツの不等式 ), (2.16)

x = max {⟨ x, z ; z X, z = 1 } , (2.17)

x + y ∥ ≤ ∥ x + y . (2.18)

(2.14),(2.18) より, ⟨ · , · ⟩ が (半) 内積なら ∥ · ∥ は (半) ノルム. ∥ · ∥(半) 内積が誘導 する (半) ノルムと呼ぶ. 特に内積空間 X はノルム ∥ · ∥ に関してノルム空間である.

証明:(2.15): 次の展開式と (2.14) による:

x + y 2 = x + y, x + y = x, x + x, y + | {z } y, x

= x,y

+ y, y .

(4)

(2.16): 1) ⟨ · , · ⟩ が内積とき: y 2 = y, y = 0 なら y = 0, 従って x, y = 0 (問 2.1.2). 故に y > 0 としてよい. このとき z = x,y y

2

y に対し x z, z = 0 (容易にわ かる) より

x 2 (2 = .15) x z 2 + z 2 ≥ ∥ z 2 = |⟨ x, y ⟩| 2

y 2 , よって (2.16) を得る.

2) ⟨ · , · ⟩ が内積でないとき:⟨ · , · ⟩ を任意の内積, (例えば例 2.1.7 のもの), ε > 0 とす ると x, y ε

def = x, y + ε x, y は内積. よって 1) より ⟨ · , · ⟩ ε は (2.16) を満たす. そ こで ε 0 とし ⟨ · , · ⟩ に対する (2.16) を得る.

(2.17): (2.16) より不等号 が成立, かつ x = 0 なら両辺=0. 一方 x ∥ ̸ = 0 なら z = x/ x に対し z = 1 かつ x = x, z より不等号 が成立.

(2.18): x + y (2.17) = max

z =1 x + y, z = max

z =1 ( x, z + y, z )

(2.16)

≤ ∥ x + y . 22.1.2 半内積 ⟨ · , · ⟩ について x = 0 または y = 0 なら x, y = 0 を示せ.

2.1.3 記号は命題 2.1.8 の通りとする. x, y X に対し以下を示せ:

i) x + y 2 + x y 2 = 2 x 2 + 2 y 2 (中線定理 16 ).

ii) K = R のとき、 x, y = 0 ⇐⇒ ∥ x + y 2 = x 2 + y 2 .

iii) K = C のとき、 x + iy 2 = x 2 + 2 Im x, y + y 2 . 従って、 x, y = 0 ⇐⇒

x + y 2 = x + iy 2 = x 2 + y 2 .

iv) K = C のとき x + y 2 = x 2 + y 2 ̸⇒ ⟨ x, y = 0 (例示せよ).

2.1.4 p ( N ) (p ̸ = 2) は内積空間でないことを示せ. ヒント:内積空間は中線定理を 満たす. 例えば x = (1, 1, 0, ....), y = (1, 1, 0, ....) はどうか?

2.1.5 記号は命題 2.1.8 の通りとする. x, y, x n , y n X に対し, 以下を示せ.

i) lim n →∞ x x n = lim n →∞ y y n = 0 = lim n →∞ x n , y n = x, y . ii) lim n →∞ x x n = 0 ⇐⇒ lim n →∞ x n , x = lim n →∞ x n 2 = x 2 . 問 2.1.6 (2.16) で等号成立 ⇐⇒ ∥ ∥ y 2 x − ⟨ x, y y = 0 を示せ.

2.1.7 X をノルム空間,X 0 を稠密な線形部分空間とする.X 0 に内積が存在し,X 0

上で X のノルムを誘導するなら,X は内積空間であることを示せ.

2.2 ノルム空間の直積と等長同型

定義 2.2.1 (ノルム空間・内積空間の直積) X, Y をノルム空間, Z = X × Y , p = 1, 2,

z p = ( x p X + y p Y ) 1/p , z = (x, y) Z (2.19) とする. z p (p = 1, 2) は共に Z 上のノルムで両者は同値 (容易に分かる).

16問

2.1.3 ii)

より内積が誘導するノルムは中線定理を満たすが、逆に、中線定理を満たす任意のノル

ムは内積が誘導するノルムであることも知られている(例えば

[吉田 (耕), 39

頁]).

(5)

I (Z, ∥ · ∥ 1 ) を X, Y の直積ノルム空間という.

I 特に X, Y が内積空間のとき、

z, z Z

def = x, x X + y, y Y , z = (x, y), z = (x , y ) Z (2.20) は Z 上の内積かつ、∥ z 2 2 = z, z Z . (Z, ⟨ · , · ⟩ Z ) を X, Y の直積内積空間という.

2.2.1 (⋆) Z を K 上の線型空間, Z の部分線型空間 X, Y それぞれノルム ∥ · ∥ X ,

∥ · ∥ Y に関しノルム空間とする. このとき, X + Y = { x + y ; (x, y) X × Y } は次の ノルムに関しノルム空間であることを示せ:

z X+Y = inf {∥ x X + y Y , (x, y) X × Y } . 定義 2.2.2 X, Y をノルム空間, X T Y を線型とする.

I T x Y = x X , x X なるとき, T を等長作用素 (isometry) と言う.

I T が全射等長作用素なら,T を等長同型作用素 (isometric isomorphism) と言い,こ のとき,ノルム空間 X, Y も等長同型であると言う.

注: 1) ノルム空間 X, Y が等長同型なら両者のノルム空間としての性質(完備性,内積 により誘導される,可分性,等々)は全く同じである.その意味で,等長同型なふたつ のノルム空間を同一視することもある.

2) X, Y が内積空間のとき, 等長同型の同義語としてユニタリ (unitary) という言葉を使 うこともある (命題 2.2.4 参照).

3) 無限次元のノルム空間は自分自身と等長同型な真部分空間を含み得る(例 2.2.3).

4)(X, ρ X ), (Y, ρ Y ) を距離空間, X f Y とする.

ρ Y (f (x), f ( e x)) = ρ X (x, e x), x, ∀e x X

なるとき, f を等長 (isometry) と言う. 定義 2.2.2 は X, Y がノルム空間, T : X Y が 線型という特別な場合である.

2.2.3 1 p ≤ ∞ , X = { x p ( N ) ; s ̸∈ 2 N x(s) = 0 } , 更に x X, s 2 N に 対し T x(s) = x(2s) とするとき,T : X p ( N ) は等長同型.

証明: 線形性は明らか.また,ℓ p ( N ) のノルムの定義から x X に対し T x p = x p . 更に y p ( N ) に対し

x(s) = {

y(s/2), s 2 N , 0, s ̸∈ 2 N .

とすると,x X かつ T x = y. 故に T は全射. 2 命題 2.2.4 (内積空間どうしの等長作用素) X, Y が内積空間, X T Y が線形なら

T は等長 ⇐⇒ ⟨ T x, T e x Y = x, e x X , x, ∀e x X

(6)

証明:⇒ : Y の内積をノルムで書き換える式(問 2.1.3)より

y, e y Y = y + y e 2 Y − ∥ y y e 2 Y

4 + i y + i y e 2 Y − ∥ y i y e 2 Y

4 .

上式で, y = T x, e y = T x e とすれば, T の線型性, 等長性より T x, T e x Y = x, x e X .

: x = x e とすればよい. 2

2.2.2 X を内積空間, X f Y (線型と仮定しない) とする. 次を示せ:

f (x), f( e x) Y = x, e x X , x, ∀e x X = f は等長かつ線型

2.2.5 (⋆) (S, A , µ) は測度空間, φ : S S は可測, µ φφ による µ の像測度とする:

µ φ (A) = µ (

φ −1 (A) )

, A A . 1 p < に対し次の T φ : L pφ ) L p (µ) は等長作用素:

T φ : x 7→ x φ.

実際, 像測度の性質より,

S

| x φ | p =

S

| x | p φ , x L pφ ).

特に, φ が測度 µ を保存する (µ φ = µ) とき, T φ : L p (µ) L p (µ) が等長作用素となる.

µ φ = µ となる具体例として以下のようなものがある:

S は高々可算な集合, µ は個数測度, φ : S S は任意の全単射.

S = R d , µ はルべーグ測度, φ(s) = U s + t (U は直交行列, t R d は定ベクトル)

2.3 バナッハ空間とヒルベルト空間

有限次元空間 K d で点列の収束を考えるとき, 完備性 (任意のコーシー列が収束するこ と) が役立つことが少なくない. 例えば, 「絶対収束級数が収束する」という命題は完 備性と等価である.

実は, こうした事情は無限次元のノルム空間にも共通している. そこで, 有限次元空 間での概念の自然な拡張として完備性を定義し, 完備なノルム空間, 内積空間をそれぞ れバナッハ空間, ヒルベルト空間と呼ぶことにする (詳細は 定義 2.3.1).

今日、バナッハ空間と呼ばれる完備なノルム空間の概念は、1920 年から 1922 年にか けて、N. ウィナー, S. バナッハ, E. ヘリー達が独立に導入した 17 。ヒルベルト空間の 具体例 (主に 2 ( N )) は D. ヒルベルトや E. シュミット達が 20 世紀初頭から調べてい たが, 抽象的な公理は J. フォンノイマンによる 18 (1929 年).

17

Norbert Wiener(1894–1964), Stefan Banach(1892–1945), Eduard Helly(1884–1943)

18

Johann von Neumann (1903–57)

(7)

定義 2.3.1 (X, ∥ · ∥ ) はノルム空間,{ x n } n 0 X とする。

I x X, lim

n x n x = 0 なら、(x n ) n 0 は x に収束すると言い、これを次のように 記す:

lim n x n = x 或いは x n −→ x.

特に点列 s n def = x 0 + ... + x n , n 0 が上の意味で収束するとき,級数:

n=0

x n (2.21)

が収束するといい, lim

n →∞ s n を記号 (2.21) で表す.

I lim

m,n →∞ x n x m = 0 なら、(x n ) n 0 はコーシー列であるという。また, 部分集合 M X 内の任意のコーシー列が M の点に収束するとき、M は完備であるという。

I X 自身が完備なら X をバナッハ空間という。

I 内積空間 X が、内積が誘導するノルム (命題 2.1.8) に関して完備なら X をヒルベル ト空間という。

注:(X, ∥ · ∥ ) が (2.2),(2.3),(2.5) を満たせば(従って特にノルム空間なら)X は距離 ρ(x, y) = x y により,距離空間である(定義 2.1.1 後の注).定義 2.3.1 で定めた用 語「収束」,「コーシー列」,「完備」は X を距離空間と見なし,その意味で用いたもの と,それぞれ一致する.

2.3.1 X がノルム空間, M X とするとき以下を示せ:i) M が完備 M が閉.ii) X がバナッハ空間なら i) の逆も真.

2.3.2 X をノルム空間, M X とし,次の命題 a),b) の同値性を示せ:a)M が完備.

b) 次のような M 0 M が存在する:M 0 = M かつ,M 0 内の任意のコーシー列が M の 点に収束する.

2.3.3 定義 2.2.1 について以下を示せ: i) X, Y がバナッハ空間なら直積ノルム空間 Z もバナッハ空間. ii) X, Y がヒルベルト空間なら直積内積空間 Z もヒルベルト空間.

2.3.4 (⋆) 問 2.2.1 で, X, Y がバナッハ空間ならノルム空間 X + Y もバナッハ空間 であることを示せ.

次に距離空間における一般的命題を述べる.

命題 2.3.2 距離空間 (X, ρ) において次の条件は同値である:

a) X は完備。

b) { x n } n 0 X,

n 1

ρ(x n , x n 1 ) < なら { x n } n 0 は収束。

(8)

証明: a) b): ∑

n 1

ρ(x n , x n 1 ) < なら { x n } n 0 はコーシー列。実際 1 M < N < , M ↗ ∞ なら

ρ(x N , x M )

N

n=M+1

ρ(x n , x n 1 ) −→ 0.

よって 完備性から { x n } n 0 は収束。

b) a): { x n } n 1 X を任意のコーシー列とし、 { x n } n 1 が収束部分列を含むことを 言えば十分(問 2.3.5)。そこで、コーシー列の性質を用い、自然数 N 1 < N 2 < .... を 次のように選ぶ:

sup

n>N

k

ρ(x n , x N

k

) 2 k , k = 1, 2, ...

このとき、 ∑

k 2

ρ(x N

k

, x N

k−1

) < だから仮定より { x N

k

} k≥1 は収束する。 22.3.5 距離空間 X におけるコーシー列 (x n ) n 0 について部分列 (x N

k

) k 0x X が lim k x N

k

= x を満たすとき、lim n x n = x を示せ.

次の系は具体的なノルム空間の完備性を示す際に役立つ場合が多い:

2.3.3 ノルム空間 (X, ∥ · ∥ ) において次の条件は同値である:

a) X はバナッハ空間.

b) { y n } n 0 X,

n 0

y n < なら

n=0

y n は収束.

証明:x n = y 0 + ... + y n として,命題 2.3.2 に帰着する. 22.3.4 例 2.1.2 と同じく,S を集合,

X = { x : S K ; 有界 } , x S = sup

s S

| x(s) | , x X

とするとき,(X, ∥ · ∥ S ) はバナッハ空間. また,S R d に対し (C b (S), ∥ · ∥ S ) はバナッ ハ空間.

証明: (X, ∥ · ∥ S ) について,ワイエルシュトラスのMテスト(定理 1.1.2)より系 2.3.3 の条件 b) が満たされる. (C b (S), ∥ · ∥ S ) は (X, ∥ · ∥ S ) の線形閉部分空間 (例 2.1.2), 従っ

てバナッハ空間(問 2.3.1). 2

次に述べる L p 空間の完備性も基本的である。p = 2 の場合は,1907 年, E. フィッ シャー 19 が, 更に p ̸ = 2 の場合は, 1910 年, F. リースが示した.

2.3.5 1 p ≤ ∞ に対し (L p (µ), ∥ · ∥ p ) (定義 1.2.1) はバナッハ空間, 特に p = 2 な ら, ヒルベルト空間 (例 2.1.6 の内積はノルム ∥ · ∥ 2 を誘導する).

19

E. Fischer (1875–1959)

(9)

証明: 定理 1.2.5 より 系 2.3.3 の条件 b) が満たされる. 22.3.6 関数空間:

c( N ) = { x ( N ) ; lim s →∞ x(s) が存在する. } , c 0 ( N ) = { x ( N ) ; lim

s →∞ x(s) = 0. } ,

c c ( N ) = { x ( N ) ; 有限個の s を除き, x(s) = 0. } について:

a) c( N ), c 0 ( N ) は共に ( N ) のノルムについてバナッハ空間である.

b) c 0 ( N ) = c c ( N ).

証明 : a): c( N ),c 0 ( N ) ともに ( N ) の閉線形部分空間であることを言えばよい (問 2.3.1) 共に線形部分空間であることは明らか. c( N ) が閉集合であることを言うため, x n c( N ), x ( N ), x n x 0 とする.ℓ n

def = lim s →∞ x n (s) に対し | n m | ≤ ∥ x n x m . よって n C はコーシー列.そこで s N ,ℓ def = lim n →∞ n に対し

| x(s) | ≤ | x(s) x n (s) | + | x n (s) n | + | n | . s → ∞ とすると,

s→∞ lim | x(s) | ≤ ∥ x x n + | n | .

更に n → ∞ として,上式右辺 0. よって x(s) s −→ →∞ となり x c( N ). 上の証明を n 0 (従って = 0) として読み直すと c 0 ( N ) が閉集合であることも分かる.

b) x c 0 ( N ) に対し x n (s) = x(s)1(s n) とすると x n c c ( N ), x x n =

sup s>n | x(s) | n→∞ −→ 0. 2

2.3.6 1 ( N ) は 2 ( N ) の閉集合でない (従って問 2.3.1 より,ℓ 1 ( N ) 上に 2 ( N ) のノル ムを与えたノルム空間は完備でない) ことを示せ.

2.4 有限次元ノルム空間

関数解析の俎上にのせるノルム空間はほとんどが無限次元であり, 今我々は本格的に無 限次元へ旅立とうとしている. だが, ここで少し立ち止まり有限次元の特性について考 えてみよう. この考察は, 逆に

無限次元とはどんなものか?

を垣間見ることでもある. ノルム空間 X に対し次の記号を導入する;

dis(x, M ) = inf {∥ x m ; m M } , x X, M X. (2.22)

補題 2.4.1 X がノルム空間, M X は線型部分空間,X ̸ = M とする。このとき、任

意の ε (0, 1) に対し e ε X で次のようなものが存在する:

e ε = 1, dis(e ε , M ) 1 ε.

(10)

証明 : X ̸ = M より、x X で、δ def = dis(x, M) > 0 なるものが存在する。このと き、δ < 1 δ ε により m ε Mδ ε def = x m ε ∥ ≤ 1 δ ε なるようにとれる.そこで e ε = (x m ε )/δ ε とすれば、∥ e ε = 1 かつ任意の m M に対し m ε + δ ε m M . 従って

e ε m = 1

δ ε x m ε δ ε m ∥ ≥ δ

δ ε 1 ε.

m M について下限をとり、dis(e ε , M ) 1 ε. 2

命題 2.4.2 線型空間 X に対し以下の命題は同値である:

a) dim X < .

b) X 上のノルムは全て同値.

c) X 上の任意のノルム ∥ · ∥ に関し,全ての有界閉集合はコンパクト.

d) X 上の任意のノルム ∥ · ∥ に対し単位球面 S = { x X ; x = 1 } はコンパクト.

証明: a) b): X の任意の基底 e 1 , ..., e n (n = dim X) をとり x = ∑ n

i=1 x i e i のユーク リッドノルム x 2 = ( ∑ n

i=1 | x i | 2 ) 1/2 を考える. X 上の任意のノルム ∥ · ∥ に対し

x ∥ ≤

n

i=1

| x i | ∥ e i ∥ ≤ M

n

i=1

| x i | ≤ M

n x 2 , 但し M = max

1 i n e i .

よって ∥ · ∥ は (X, ∥ · ∥ 2 ) 上連続 (上の不等式で xx y に置き換えればわかる). ユー クリッド空間の性質から S 2 = { x X ; x 2 = 1 } は (X, ∥ · ∥ 2 ) でコンパクト. 更に x 7→ ∥ x の零点は x = 0 のみだから S 2 上にはない. 従って次のような m, M (0, ) が存在する:

1) m ≤ ∥ e ∥ ≤ M, e S 2 . よって

2) m x 2 ≤ ∥ x ∥ ≤ M x 2 , x X.

実際, x = 0 なら 2) は自明, x ̸ = 0 なら e = x/ x 2 を 1) に代入して 2) を得る. 以上 で, 任意のノルムがユークリッドノルムと同値であることが言えた.

b) a):例 2.1.4 による.

a) c): a) b) の証明中 2) より (X, ∥ · ∥ ) と (X, ∥ · ∥ 2 ) の位相的性質は同じ.一方,ユー クリッド空間 (X, ∥ · ∥ 2 ) で有界閉集合はコンパクトだから (X, ∥ · ∥ ) でもコンパクト.

c) d):S は (X, ∥ · ∥ ) の有界閉集合.

d) a): dim X = とする. また e 1 , e 2 , ... S (具体的なとり方は後で述べる) に対し

M ne 1 , ..., e n の一次結合全体とする. M n は有限次元, 従って特に閉部分空間. よっ

M n = M n ̸ = X. そこで, e 1 S を任意, e 2 , e 3 , ... S を帰納的に dis(e n , M n 1 )

1/2, n = 2, 3, ... なるようにとれる (補題 2.4.1). このとき 1 m < n なら e m e n ∥ ≥

1/2. 従って (e n ) n 1 のいかなる部分列も収束しない. 故に S はコンパクトでない. 2

参照

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