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外国為替ヘッジ及び在外営業活動体に対する純投資のヘッジ

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外貨為替ヘッジ及び在外営業活動体に

対する純投資のヘッジ

IAS 第 39 号「金融商品:認識及び測定」に

基づく会計処理

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目次

公正価値ヘッジ ... 4 キャッシュ・フロー・ヘッジ ... 5 適格ヘッジの会計処理 ... 5 在外営業活動体に対する純投資のヘッジ ... 5 ヘッジの有効性 ... 5 ヘッジ会計中止時の処理 ... 6 外国為替ヘッジ ... 7 為替リスクのキャッシュ・フロー・ヘッジの例 ... 7 事例1: 為替予約による予定売上のヘッジ ... 7 事例2: 為替予約によるグループ企業間の予定売上のヘッジ ... 10 事例3: オプション契約による予定売上のヘッジ ... 11 為替リスクの公正価値ヘッジの例 ... 15 事例4: 為替予約による確定約定のヘッジ ... 15 事例5: 為替予約による売却可能資本性投資の為替リスクに起因する公正価値変動のヘッジ ... 19 外貨建資産又は負債のヘッジ例 ... 24 事例6: 通貨金利スワップによる外貨建固定金利借入を 機能通貨建ての変動金利借入に変換する公正価値ヘッジ ... 24 事例7: 通貨スワップによる外貨建固定金利借入を 機能通貨建ての固定金利借入に変換するキャッシュ・フロー・ヘッジ ... 28 事例8: 為替予約による外貨建ゼロ・クーポン債を 機能通貨建てのゼロ・クーポン債に変換するキャッシュ・フロー・ヘッジ ... 36 在外営業活動体に対する純投資のヘッジの例 ... 40 事例9: 純投資の会計処理(ヘッジ会計が適用されない場合) ... 40 事例10: 純投資の会計処理(ヘッジ会計が適用され、非有効部分が生じない場合) ... 44 事例11: 純投資の会計処理(ヘッジ会計が適用され、非有効部分が生じる場合) ... 46

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IAS 第 39 号「金融商品:認識及び測定」は、デリバティブ及びヘッジ活動の認識と測定に関し、包括 的なガイダンスを設けている(なお、2013 年 4 月 1 日時点において、IASB は 2013 年 4~9 月に 一般的なヘッジ会計に関する新基準を公表する予定)。IAS 第 39 号又は IFRS 第 9 号「金融商品」 によれば、デリバティブはすべて純損益を通じて公正価値で測定(FVPL: fair value through profit or loss)しなければならない。しかし、デリバティブが、資産又は負債、あるいは可能性が非常に高い 予定取引をヘッジするために用いられている場合、ヘッジ手段である当該デリバティブとヘッジ対象 の会計処理が整合せず(会計上のミスマッチ)、ヘッジ期間中に報告される損益が、ヘッジの経済的 実態を反映しない可能性がある。 そのため、ヘッジ会計は、一定の要件が満たされる場合に、デリバティブに係る損益の認識時期と、 ヘッジ対象に係る損益の認識時期を一致させることを目的としている。 ヘッジ会計を適用するための主なステップは以下のとおりである。 1. ヘッジ対象リスクの内容を識別する 2. ヘッジ対象又は取引を識別する 3. ヘッジの種類、すなわち公正価値ヘッジかキャッシュ・フロー・ヘッジかを識別する 4. ヘッジ手段を識別する 5. リスク管理目的、ヘッジを実行する戦略、及び有効性評価に用いる方法など、上記 のヘッジ関係を文書化する 6. ヘッジが非常に有効であり、将来に向かってその状態が続くことを立証する 7. ヘッジの期間全体を通じて有効性をモニタリングする ヘッジ対象には、認識されている資産又は負債、未認識の確定約定、確定してはいないが可能性が 非常に高い予定取引、在外営業活動体に対する純投資が含まれる。適格なヘッジ対象は、単一の 資産・負債、約定、取引、共通のリスク特性を有する場合には当該項目のグループである。資産及 び負債のポートフォリオは、個別に設けられた適格要件を満たさない限りヘッジ対象として認められ ない。 また、適格なヘッジ手段は、企業外部との当事者との間で行うデリバティブ(なお、買建オプションを 相殺するものである場合を除き、売建オプションはヘッジ指定できない)、及び為替リスクのヘッジの 場合には非デリバティブ金融資産又は負債である。

公正価値ヘッジ

公正価値ヘッジは、以下のいずれかの項目の公正価値変動に対するエクスポージャーのうち、特定 のリスクに起因し、かつ、純損益に影響しうるもののヘッジと定義されている。 • 認識されている資産又は負債 • 資産を一定の価格で売買するという未認識の確定約定 • そのような資産もしくは負債又は確定約定の識別可能な一部分 ヘッジ手段に係る利得又は損失(公正価値変動)は、それが生じた期間に純損益に認識する。ヘッジ 対象の帳簿価額は、ヘッジ対象リスクに起因する利得又は損失について調整する。また、当該調整

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額は 直ちに純損益に認識する。ヘッジ関係が完全に有効な場合、純損益に認識されるこれら 2 つ の金額は、理論上、互いに相殺されるはずである。

キャッシュ・フロー・ヘッジ

キャッシュ・フロー・ヘッジは、キャッシュ・フローの変動性に対するエクスポージャーのうち、認識され ている資産又は負債、確定約定、あるいは発生可能性が非常に高い予定取引に関連する特定のリ スクに起因し、かつ、純損益に影響を及ぼしうるもののヘッジと定義されている。 ヘッジ手段に係る利得又は損失の有効部分は、その他の包括利益(OCI)として認識される。ただし、 非有効部分は直ちに純損益として認識する。累積その他の包括利益(AOCI)として資本に繰り延べ られた利得又は損失は、ヘッジ対象のキャッシュ・フロー、あるいは関連する非金融資産又は負債が 純損益に影響をもたらす時点で純損益に振り替える(リサイクル)。

適格ヘッジの会計処理

公正価値ヘッジ キャッシュ・フロー・ ヘッジ 1. ヘッジ手段に係る利得又は 損失 直ちに純損益に認識 ヘッジの有効部分はその他の 包括利益に認識 2. ヘッジ対象の調整 ヘッジされたリスクに起因す る公正価値の変動は直ちに 純損益に認識 該当なし 3. ヘッジ非有効部分の純損益 への計上 自動的に計上される 個別に算定し計上する必要が ある 4. 累積その他の包括利益に計 上された利得又は損失の純 損益への振替 該当なし ヘッジ対象のキャッシュ・フロ ー、あるいは関連する非金融 資産又は負債の変動が純損益 に認識される時点

在外営業活動体に対する純投資のヘッジ

在外営業活動体に対する純投資のヘッジは、キャッシュ・フロー・ヘッジと同様に会計処理される。 IAS 第 39 号は、基本的に、期末日の為替レートに基づき、デリバティブ又は金融負債に係る為替差 損益を、在外営業活動体の換算差額(為替換算調整勘定)に対応させるという昔ながらの手法を採 っている。ヘッジ手段に係る利得又は損失は、ヘッジが非常に有効な限りにおいて、純投資から生じ る為替換算調整勘定を相殺するようOCI に計上される。ヘッジ関係の非有効部分は純損益に認識さ れる。

ヘッジの有効性

IAS 第 39 号では、ヘッジ会計の適用要件を満たすためには、ヘッジの有効性が維持されていなけれ ばならないとされている。 ヘッジ関係が非常に有効であるとみなされるためには、以下を立証することが必要になる。 • (将来に向かって)ヘッジ開始時及びヘッジしている期間全体を通じて、ヘッジ手段の公正価値 及びキャッシュ・フローの変動が、ヘッジ対象の公正価値又はキャッシュ・フローの変動を相殺

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するのに非常に有効であると見込まれている • (事後的実績として)各報告日に測定した結果、ヘッジが非常に有効であり、実際の相殺割合が 80%から 125%の間に収まっている ヘッジ会計は、以下のいずれかの状況が生じた場合、その後はヘッジ会計が中止される。 • ヘッジ手段が失効、売却、終了又は行使される場合 • ヘッジが有効性の要件を満たさなくなった場合 • キャッシュ・フロー・ヘッジの対象である予定取引の可能性が非常に高いとはいえなくなった場合 • 企業がヘッジ指定を取り消した場合

ヘッジ会計中止時の処理

以下の処理 公正価値ヘッジ キャッシュ・フロー・ ヘッジ 1. ヘッジ手段の公正価値の 将来における変動 引き続き純損益に計上 直ちに純損益に認識 2. ヘッジ対象の公正価値変動 ヘッジされていないかのように 処理。なお、利付資産のヘッジ の場合、それまでのヘッジ対 象資産の帳簿価額に対する累 計調整額は、満期までの期間 にわたり償却し、純損益に認 識する。 該当なし AOCI に認識された累計額 a) ヘッジ対象が引き続き存 在する場合、又はその発 生が引き続き見込まれる 場合 b) ヘッジ対象又は取引が売 却された場合、あるいはそ の発生がもはや見込まれ ない場合 該当なし 該当なし ヘッジ対象のキャッシュ・フロ ーの変動が純損益に認識され るのと同じ時点で純損益に振 替える。 直ちに純損益に振替える

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外国為替ヘッジ

通常、外国為替ヘッジ(公正価値ヘッジ、キャッシュ・フロー・ヘッジ及び純投資ヘッジ)に対してヘッジ 会計の適用が認められるためには、以下のいずれかの要件を満たさなければならない。 • ヘッジ対象は、企業の機能通貨以外の通貨建てである • ヘッジ関係は、IAS 第 21 号に定義される在外営業活動体に対する純投資のヘッジである そうした取引の例には、次のようなものがある。 • 公正価値ヘッジ:売却可能資本性金融商品に係る為替リスクの為替予約によるヘッジ • キャッシュ・フロー・ヘッジ:外貨建オペレーティング・リースに係る為替リスクの為替予約による ヘッジ • キャッシュ・フロー・ヘッジ:非常に可能性が高い外貨建ての予定売上・売却取引の為替予約に よるヘッジ 外貨建項目の適格ヘッジの会計処理は、他の公正価値ヘッジ及びキャッシュ・フロー・ヘッジと同じ 会計原則に従って行われる。なお、IAS 第 39 号では、確定約定の為替リスクのヘッジについては、 公正価値ヘッジとキャッシュ・フロー・ヘッジのどちらも適用できる。 以下の例では、特定の外貨建取引に適用しうる会計処理を説明している。ただし、ここで挙げている 処理は、必ずしも適用できる唯一の処理というわけではない。

為替リスクのキャッシュ・フロー・ヘッジの例

事例1: 為替予約による予定売上のヘッジ 事例2: 為替予約によるグループ企業間の予定売上のヘッジ 事例3: オプション契約によるヘッジ予定売上のヘッジ 事例1:為替予約による予定売上のヘッジ

ABC 社と、その子会社 DEF 社の機能通貨は、ともにユーロである。ABC 社は、DEF 社が予定してい る円建ての販売取引をヘッジすることにより、次の四半期において、為替の変動によるグループ財 務諸表への影響をヘッジしたいと考えている。ABC 社は、子会社 DEF 社が 20X1 年 6 月 30 日に 13,500,000 円の商品を販売すると見込んでいる。そのため、20X1 年 6 月 30 日に 13,500,000 円を売却し、96,429 ユーロを受け取る 6 カ月物為替予約を 20X1 年 1 月 1 日に締結する(フォワ ード・レートは1 ユーロ=140 円)。ABC 社と DEF 社の両社が同じ機能通貨を有していること、また、 IAS 第 39 号 IG F2.14 項は、ヘッジ対象リスクにさらされている事業単位がヘッジ手段の保有者であ ることは求めていないことから、ABC 社は子会社のエクスポージャーをヘッジすることができる。

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主要なデータは下表のとおりである。 日付 当該日時点の スポット・レート(¥/€) 20X1 年 6 月 30 日の フォワード・レート(¥/€) 為替予約の 公正価値(€) 20X1 年 1 月 1 日 135 140 - 20X1 年 3 月 31 日 140 142 1,3381 20X1 年 6 月 30 日 144 144 2,6792 ABC 社は、以下のようにヘッジ関係の文書化を行う。 リスク管理目的及びヘッジ 対象リスクの内容 取引の目的は、発生可能性が非常に高いと予想される円建ての予 定売上に係る為替リスクをヘッジすることである。 ヘッジ指定日 20X1 年 1 月 1 日 ヘッジ手段 20X1 年 6 月 30 日に 13,500,000 円を売却し、96,429 ユーロを 受け取る6 カ月物の為替予約 ヘッジ対象 20X1 年 6 月 30 日に発生する可能性が非常に高いと予想される 13,500,000 円の予定売上 有効性の評価方法 為替予約と予定取引の主要な条件が一致するため(すなわち通 貨、想定元本及び時期)、ヘッジ対象リスクに起因するキャッシュ・ フローの変動は、ヘッジ手段であるデリバティブにより完全に相殺さ れると見込まれる。 (取引が予定されている金額又は時期に行われなかった、あるいは デリバティブの相手方の信用格付けに変更が生じた結果、オーバ ーヘッジ又はアンダーヘッジが生じる場合を除き、ヘッジの非有効 部分は生じない。) カウンター・パーティーに対する信用リスクについては、継続的にモ ニタリングを行う。 有効性の測定方法 有効性は、ヘッジ対象のフォワード・レートによる予定売上から生じ るキャッシュ・フローの現在価値の変動と、為替予約の公正価値の 変動を比較することにより測定する。 1 {(¥13,500,000/140) - ( ¥13,500,000/142)}/(1.015)(1.5%は、ABC 社が仮定する四半期の割引率を表す(年率は 6%)) 2 (¥13,500,000/140) - (¥13,500,000/144)

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ABC 社は、以下の仕訳を行うことになる。 20X1 年 1 月 1 日のヘッジ開始時点では、為替予約の公正価値はゼロであるため、仕訳は不要で ある。 • 20X1 年 3 月 31 日に終了する四半期 借方(€) 貸方(€) 為替予約の公正価値変動を認識 為替予約 1,338 (累積)その他の包括利益 1,338 • 20X1 年 6 月 30 日に終了する四半期 為替予約の公正価値変動を認識 為替予約 1,341 (累積)その他の包括利益 1,341 為替予約の決済に関する処理 現金 2,679 為替予約 2,679 販売日時点のスポット・レートで売却取引を計上3 売掛金 93,750 売上 93,750 ヘッジ対象である予定取引が純損益に影響を及ぼした時点で関連するヘッジ手段について累積 その他の包括利益に計上された金額をリサイクルする。 累積その他の包括利益 2,679 売上 2,679 3 (¥13,500,000/ 144)

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ヘッジによる損益計算書への影響 上記のヘッジにより、為替レートの事後的な変動にかかわらず、ABC の 13,500,000 円の販売収 益は96,429 ユーロ(13,500,000 円/ヘッジの指定日の先物レート 1 ユーロ 140 円)に固定され た。 ヘッジされた結果は、スポット・レートでの実際の収益(93,750 ユーロ)と、売却日に資本の独立項 目から振り替えられる先渡契約から生じる利得(2,679 ユーロ)との組み合わせにより達成され る。 事例2: 為替予約によるグループ企業間の予定売上のヘッジ 次に、事例1 の事実関係を変更し、ABC 社が機能通貨が円である日本の製造子会社 GHI 社から仕 入を行っていると仮定する。親会社 ABC 社の機能通貨はユーロであり、日本の子会社からの棚卸 資産の購入に係る為替変動の影響をヘッジしたいと考えている。ABC 社は、20X1 年 6 月 30 日に、 子会社GHI 社から 13,500,000 円の商品を購入する予定である。ABC 社は、子会社 GHI 社から購 入した棚卸資産の50%を 20X1 年 9 月 30 日に終了する四半期中に販売し、残りを 20X1 年 12 月 31 日に終了する四半期中に販売する予定である。そのため ABC 社は、20X1 年 6 月 30 日に 13,500,000 円を購入し、96,429 ユーロを売却する 6 カ月物為替予約を 20X1 年 1 月 1 日に締 結する(フォワード・レートは1 ユーロ=140 円)。 なお、ABC 社は、ヘッジ対象が非金融項目を生じさせる場合には、累積その他の包括利益に計上し たヘッジ手段に係る累積損益は、ヘッジ対象の帳簿価額の修正(ベーシス・アジャストメント)を行う 会計方針を採用しているものとする。 IAS 第 39 号は、原則として、ヘッジ対象に指定できるのは、企業外部を相手方とする取引であるとし ているが、発生可能性が非常に高いグループ企業間の予定取引に係る為替リスクについて、当該 取引が取引の当事者の機能通貨以外の通貨建てで行われ、最終的に連結外部に販売されるなど により連結純損益に影響を与える場合には 、これをヘッジ対象とすることを認めている。そのため、 この例における為替予約に係る公正価値変動は、累積その他の包括利益で繰り延べることになる。 ABC 社は、以下の仕訳を行うことになる。 20X1 年 1 月 1 日のヘッジ開始時点では、為替予約の公正価値はゼロであるため、仕訳は不要で ある。 • 20X1 年 3 月 31 日に終了する四半期 借方(€) 貸方(€) 為替予約の公正価値変動を認識 (累積)その他の包括利益 1,338 為替予約 1,338 • 20X1 年 6 月 30 日に終了する第 2 四半期 為替予約の公正価値変動を認識 (累積)その他の包括利益 1,341 為替予約 1,341

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借方(€) 貸方(€) 為替予約の決済に関する処理 為替予約 2,679 現金 2,679 販売日時点のスポット・レートによるグループ内取引の計上とべーシス・アジャストメント グループ企業から購入した棚卸資産 93,7504 グループ企業に対する仕入債務 93,750 累積その他の包括利益 2,679 グループ企業から購入した棚卸資産5 2,679 事例3:オプション契約による予定売上のヘッジ XYZ 社(機能通貨:ユーロ)は、6 カ月後、カナダの顧客に対して 1,400,000 カナダドルの売上を見 込んでいる。スポット・レートが1 ユーロ=1.40 カナダドルであった 20X1 年 1 月 1 日に、XYZ 社は 20X1 年 6 月 30 日に 1,400,000 カナダドルを 979,021 ユーロで売却するオプション(1 ユーロ= 1.43 カナダドル)を購入した。当該オプションの開始時点のプレミアム及び公正価値は 32,000 ユー ロであった。 このオプションは、1 ユーロ=1.43 カナダドル以上のユーロ高になる場合にヘッジの機能を果たし、 ユーロがその水準に達しない場合には効果を持たないことになる。XYZ 社は、為替がユーロ高方向 に振れることのみをリスクと考えており、ユーロ安が発生した場合には為替から利益を得る余地を残 しておきたいと考えている。 4 (¥13,500,000 / 144) 5 べーシス・アジャストメント

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IAS 第 39 号第 74 項(a)は、オプションの価値全体をヘッジ手段として処理するか(その場合、オプシ ョンの時間的価値の変動により非有効部分が生じる可能性がある)、本源的価値のみを指定するこ とを認めている(その場合、時間的価値の変動は直ちに純損益に計上される)。XYZ 社は、ヘッジの 有効性を、スポット・レートで測定したオプションの本源的価値の変動に基づいて評価及び測定する ことを決定した。 予定売上は20X1 年 6 月 30 日に予定通り発生したが、その金額は想定 していたよりも 100,000 カナダドル少ない1,300,000 カナダドルであった。 主要なデータは下表のとおりである。 日付 スポット・レート(CAD/€) 公正価値(€)6 20X1 年 1 月 1 日 1.40 32,000 20X1 年 3 月 31 日 1.45 30,000 20X1 年 6 月 30 日 1.50 45,688 日付 オプションの 本源的価値 (€)7 オプションの 時間的価値(€)6 オプションの 公正価値(€) 20X1 年 1 月 1 日 — 32,000 32,000 20X1 年 3 月 31 日 13,504 8 16,496 30,000 20X1 年 6 月 30 日 45,688 9 — 45,688 6 オプション価格決定モデルにより算出。表示金額は、説明上の仮定である。 7 厳密には、本源的価値は、いつでも行使できる「アメリカン」オプションについてのみスポット・レートに基づくことになる。 一方、満期日にのみ行使できる「ヨーロピアン」オプションは、フォワード・レートを使って評価され、本源的価値は現在価値に割り引かれる。 しかし、IAS 第 39 号はスポット・レートに基づいたヘッジ関係を認めているため、この例で示している処理はヨーロピアン・オプションに関して も妥当となるが、この場合の「本源的価値」はオプションの実際の本源的価値ではなくスポット・レートに基づいていることに留意が必要であ る。 8 (CAD1,400,000/ 1.43) - (CAD1,400,000/ 1.45) 9 (CAD1,400,000/ 1.43) - (CAD1,400,000/ 1.50)

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XYZ 社のヘッジ文書は以下のとおりである。 リスク管理目的及びヘッジ対 象リスクの内容 ヘッジ取引の目的は、非常に可能性の高いカナダドル建ての 予定売上に係る為替の下方リスクに伴うキャッシュ・フローを ヘッジすることである。 指定日 20X1 年 1 月 1 日 ヘッジ手段 20X1 年 6 月 30 日に 1,400,000 カナダドルを売却し、 979,021 ユーロを受け取るオプション(1 ユーロ 1.43 カナダド ル) ヘッジ対象 当該オプションは、20X1 年 6 月 30 日に発生する可能性が非 常に高いと予想される1,400,000 カナダドルの販売取引のヘ ッジとして指定されたものである。 有効性の評価方法 オプションと予定取引の主要な条件が一致するため(すなわち 通貨、想定元本及び時期)、オプションの本源的価値は、予定 取引に係る予想キャッシュ・フローの変動を完全に相殺すると みなされる。 オプションの時間的価値の変動は、IAS 第 39 号第 74 項(a) で容認されているため、有効性評価から除外される。 したがって、ヘッジの非有効部分は、オプションのカウンター・ パーティーの信用格付けが悪化する場合、あるいは予定取引 が予想金額又は時期に行われなかった場合にのみ生じる可 能性がある。これらはどちらもモニタリングの対象となる。 有効性の測定方法 有効性は、オプションの本源的価値の変動と、ヘッジ期間中の ユーロのスポット・レートで測定したカナダドル建ての予定売上 の価値変動を比較することにより測定する。 カウンター・パーティーの信用格付けの悪化、あるいは予定取 引の金額又は時期の変更によって非有効部分が生じる場合、 公正価値の変動により測定する。 オプションの時間的価値の変動は、純損益に直接反映させ る。 XYZ 社は、以下の仕訳を行うことになる。 • 20X1 年 1 月 1 日 借方(€) 貸方(€) オプション契約の購入に際して発生したプレミアムを計上 買建オプション 32,000 現金 32,000

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• 20X1 年 3 月 31 日に終了する四半期 借方(€) 貸方(€) オプション契約全体の公正価値の変動と、予定販売取引のヘッジとして有効である本源的価値の 変動、及び有効性から除外した時間的価値の変動に係る会計処理(1,400,000 カナダドルの予定 売上が生じる可能性は引き続き非常に高いと見込まれている) ヘッジ活動に係る損失 15,50410 (累積)その他の包括利益 13,504 買建オプション 2,000 • 20X1 年 6 月 30 日に終了する四半期 オプション契約全体の公正価値の変動と、予定販売取引のヘッジとして有効である本源的価値の 変動、及び有効性から除外した時間的価値の変動に係る会計処理 買建オプション 15,688 ヘッジ活動に係る損失 16,49611 (累積)その他の包括利益 32,18412 オプションの決済 現金 45,688 買建オプション 45,688 当初予想したより100,000 カナダドル少ない販売取引を実勢スポット・レート(1,300,000 カナダ ドル/1.50)で会計処理 売掛金 866,667 売上 866,667 累積その他の包括利益に計上されたヘッジの有効部分をヘッジ対象取引が利益に影響を及ぼす 時点でリサイクル13 累積その他の包括利益 42,425 売上 42,425 10 €32,000 – (€30,000 - €13,504) 11 €0 – (€30,000 - €13,504) 12 €45,688 - €13,504 13 (CAD1,300,000 / CAD1,400,000) x €45,688).

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なお、この例のように、売上が予定と比べ100,000 カナダドル少なくなることが、20X1 年 6 月 30 日まで判明していなかったとすると、オーバーヘッジの金額を純損益に反映するため、以下の仕訳も 必要になる。 借方(€) 貸方(€) 残りの100,000 カナダドルの売上が生じる可能性がもはや高くなくなった時点でオーバーヘッジによ るオプション契約の本源的価値の非有効部分を純損益に認識する。 累積その他の包括利益 3,263 オプション契約に係る利得 3,263 ヘッジによる損益計算書への影響 損益計算書に計上される売上の合計額は、909,092 ユーロ(866,667 ユーロ+42,425 ユーロ) であり、これは、1,300,000 カナダドル/1.43 で算定した金額と同じである。すなわち、1 ユーロ 1.43 カナダドルの為替レートによる予定販売取引のヘッジの効果が、損益計算書に反映されてい る。一方で、XYZ 社は、この目的を達成するためにオプション・プレミアム 32,000 ユーロをヘッジ 期間にわたり費用計上している(これは、実現しなかった売上に関するデリバティブの「オーバーヘ ッジ」部分から生じた利得3,263 ユーロにより部分的に相殺される)。14 なお、売上債権が認識された後は、当該債権に対して別個にヘッジ会計を適用することもできる。

為替リスクの公正価値ヘッジの例

事例4: 為替予約による確定約定のヘッジ 事例5: 為替予約による売却可能資本性投資の為替リスクに起因する公正価値変動のヘッジ 事例4: 為替予約による確定約定のヘッジ 20X1 年 1 月 1 日、XYZ 社は、1 個あたり 5,000 スイスフラン(SF)で 1,000 個の時計を購入し、 20X1 年 3 月 31 日に引渡しを受ける確定約定を締結する。なお、買掛金の決済日は 20X1 年 4 月 30 日である。20X1 年 2 月 1 日、XYZ 社は、為替リスクをヘッジすることを決定し、3,500,000 ユー ロと5,000,000 スイスフランを 20X1 年 4 月 30 日に交換する契約を締結する(フォワード・レート: 1 ユーロ=1.429 スイスフラン)。この為替予約は、20X1 年 3 月 31 日に時計を購入し、20X1 年 4 月30 日に買掛金を決済する確定約定のヘッジとして指定される。有効性は、フォワード・レートに基 づき評価される。 14 この例では、販売個数が予定と異なったことから、オーバーヘッジが生じているが、実際に販売された部分については、それに見合うデリ バティブの比例部分によって完全にヘッジされている。

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IAS 第 39 号は、確定約定の外国為替ヘッジについては、キャッシュ・フロー・ヘッジ又は公正価値ヘ ッジのいずれかとして取り扱うことを認めている。ただし、前者の処理は、資本の変動性が高まること から、あまり一般的ではない。 主なデータは下表のとおりである。 日付 スポット・レー ト(SF/€) 20X1 年 4 月 30 日が 期日のフォワード・レ ート(SF/€) 為替予約の公正価 値(6%で割引) (€) 為 替 予 約 の 公 正 価値の変動 (€) 20X1 年1 月1 日 1.450 - - - 20X1 年2 月1 日 1.400 1.429 - - 20X1 年2 月28 日 1.400 1.415 33,233 33,233 20X1 年3 月31 日 1.410 1.400 71,071 37,838 20X1 年4 月30 日 1.360 1.360 176,471 105,400 XYZ 社によるヘッジ関係の文書化は以下の通りである。 リスク管理目的及びヘッジ対 象リスクの内容 取引の目的は、為替の変動による確定約定の公正価値の変動 をヘッジすることである。 ヘッジ対象リスクは、ユーロの対スイスフランのフォワード・レー トの変動である。 指定日 20X1 年 2 月 1 日 ヘッジ手段 5,000,000 スイスフランをフォワード・レート 1 ユーロ=1.429 スイスフランで20X1 年 4 月 30 日に交換する為替予約 ヘッジ対象 為替予約は、20X1 年 3 月 31 日に 1 個あたり 5,000 スイスフ ランで1,000 個の時計を購入する確定約定と、20X1 年 4 月 30 日にスイスフランで買掛金を決済する際の為替リスクのヘッジと して指定されたものである。 当該ヘッジは、IAS 第 39 号第 87 項に基づき、公正価値ヘッジ として会計処理する。 有効性の評価方法 為替予約と確定約定の主要な条件が一致するため(すなわち通 貨、想定元本及び時期)、当該ヘッジは、スイスフランのフォワー ド・レートの変動に起因する確定約定の公正価値の変動を完全 に相殺するとみなされる。 カウンター・パーティーに対する信用リスクについては、継続的 にモニタリングを行う。 有効性の測定方法 ヘッジの有効性は、フォワード・レートで測定された確定約定の価 値の変動全体を、為替予約の公正価値の変動と比較して測定され る。 ヘッジ開始後に生じる確定約定の公正価値の変動は、貸借対照表 及び純損益を通じて反映され、為替予約の公正価値変動も純損益 に反映される。

(17)

XYZ 社は、以下の仕訳を行うことになる。 20X1 年 1 月 1 日時点で、確定約定はまだヘッジされていないため、仕訳は必要ない。 20X1 年 2 月 1 日時点で、仕訳は必要ない。公正価値ヘッジ関係を構成する確定約定の公正価値 は、ヘッジ指定日以降に公正価値に変動が生じた場合のみ認識される。また、為替予約の開始時の 公正価値はゼロである。 • 20X1 年 2 月 28 日に終了する月 借方(€) 貸方(€) 為替予約の公正価値変動を認識 為替予約 33,233 デリバティブ損益 33,233 確定約定の公正価値変動を認識 確定約定に係る損益 33,233 確定約定 33,233 (注) ヘッジ開始(20X1 年 2 月 1 日)以降の確定約定の公正価値変動のみが計上される • 20X1 年 3 月 31 日に終了する月 借方(€) 貸方(€) 為替予約の公正価値変動を認識 為替予約 37,838 デリバティブ損益 37,838 確定約定の公正価値変動を認識 確定約定に係る損益 37,838 確定約定 37,838

(18)

借方(€) 貸方(€) 棚卸資産の購入を20X1 年 3 月 31 日時点のスポット・レートで計上15 棚卸資産 3,546,099 買掛金 3,546,099 ヘッジ指定以後の確定約定の公正価値変動を、棚卸資産の帳簿価額の調整として反映する 確定約定 71,071 棚卸資産 71,071 • 20X1 年 4 月 30 日に終了する月 ヘッジ関係が終了した後も引き続き為替予約の公正価値の変動を計上し反映する 為替予約 105,400 デリバティブ損益 105,400 買掛金の帳簿価額をスポット・レートで再測定16 為替差損益 130,372 買掛金 130,372 買掛金の決済17 買掛金 3,676,471 現金 3,676,471 為替予約の決済 現金 176,471 為替予約 176,471 15 SF5,000,000/ 1.41 16 (SF5,000,000/1.36) - €3,546,099 17 SF5,000,000/1.36

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ヘッジの有効性 時計の引渡後に行われる買掛金の最終的な決済も、買掛金が計上される期間(20X1 年 3 月 31 日から4 月 30 日)についてヘッジ対象として指定されている。このため、買掛金から生じる為替差 損130,372 ユーロは、4 月中に生じる為替予約の利得 105,400 ユーロにより相殺される。棚卸 資産は、最終的な正味キャッシュ・アウトフロー3,500,000 ユーロより 24,972 ユーロ少ない 3,475,028 ユーロで計上される。XYZ 社には、デリバティブの公正価値の基礎となるフォワード・ レートと、買掛金の為替換算の基礎となるスポット・レートが収斂する過程の 4 月中において 24,972 ユーロの純損失が生じている。 事例5: 為替予約による売却可能資本性投資の為替リスクに起因する公正価値変動のヘッジ JKL 社(機能通貨:ユーロ)は、20X1 年 1 月 1 日に Yorkshire Jewellers 社の株式 100,000 株を 1 株あたり 1.00 ポンドで取得し、当該投資を売却可能金融資産に分類した。Yorkshire Jewellers 社は、ロンドン証券取引所にのみ上場しており、同社のすべての取引は英ポンド建てで行われる。 JKL 社は、この売却可能資産に係る為替の変動リスクを向こう 6 カ月にわたりヘッジすることを決定 し、20X1 年 6 月 30 日に 100,000 ポンドを 1 ユーロ=0.62 ポンド(1.613 ユーロ=1 ポンド)で売 却する為替予約を締結する。IAS 第 39 号第 74 項は、為替予約の公正価値変動全体をヘッジに反 映するか(その場合、非有効部分が生じる)、スポット・レートの変動による影響のみを反映する(そ の場合、非有効部分は生じないが、スポット・レートとフォワード・レートの差はヘッジ期間にわたり純 損益に反映される)ことを認めている。 主なデータは以下の表のとおりである。 日付 株価(£) ポンド対ユーロのス ポット・レート(£/€) 20X1 年 6 月 30 日が期日のポ ンド対ユーロのフォワード・レー ト(£/€) 20X1 年 1 月 1 日 1.00 0.60 0.62 20X1 年 3 月 31 日 1.50 0.65 0.66 20X1 年 6 月 30 日 2.00 0.70 0.70

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XYZ 社のヘッジ文書は以下のとおりである。 リスク管理目的及びヘッジ対 象リスクの内容 ヘッジ取引の目的は、売却可能資本性証券の為替変動リスクを 6 カ月にわたりヘッジすることである。 当 社 は 、 為 替 リ ス ク を 分 離 し ヘ ッ ジ す る こ と で 、Yorkshire Jewellers 社に対する持分の株価リスクのみ負うことになる。 指定日 20X1 年 1 月 1 日 ヘッジ手段 100,000 ポンドを 1 ユーロ 0.62 ポンドで 20X1 年 6 月 30 日 に売却する為替予約 ヘッジ対象 当該為替予約は、為替リスクに起因する Yorkshire Jewellers 社に対する売却可能資本性投資の公正価値変動のヘッジとし て指定されたものである。 有効性の評価方法 ヘッジの有効性は、売却可能証券の公正価値の変動に含まれ るスポット・レートの変動全体を、当初取得原価の100,000 ポン ド(又はこれより低い場合には公正価値)と比較して評価される。 フォワード・レートとスポット・レートの差の変動は、ヘッジの有効 性評価からは除外され、直接、純損益に計上される。 為替予約の想定元本は、株式への当初投資額と同じであること から、それ以外の非有効部分が生じることは見込まれていな い。 ただし、株価変動により、株式の公正価値が 100,000 ポンドを 下回る場合、ヘッジの有効性評価に影響する。 そのような下落が生じた場合、ヘッジ比率が調整される。 カウンター・パーティーに対する信用リスクについては、継続的 にモニタリングを行う。 有効性の測定方法 当該為替予約は公正価値で計上され、その変動は純損益に直 接反映される。 また、ヘッジ対象である売却可能投資の公正価値変動のうち、 ヘッジされた為替レートの変動に起因する部分は、直接、純損 益に反映される。 ヘッジ会計開始時のスポット・レートとフォワード・レートの差によ る5,377 ユーロの損失((100,000 ポンド/0.60)-(100,000 ポン ド/0.62))は、ヘッジ期間にわたり純損益に反映される。

(21)

日付 株 式 の 公 正 価値( ポ ンド)18 株 式 の 公 正価 値( ユ ー ロ 換 算 後)19 売 却 可 能 証券に係る 利得 (€) フ ォ ワ ー ド ・ レートに起因 するキャッシ ュ ・ フロ ー 変 動 累 計 ( 割 引前)(€) 為替予約の公正価値(6%で割引)(€) 合計 う ち ス ポ ッ ト・レートの 変動 う ち フ ォ ワ ー ド 要 素の変動 20X1 年 1 月 1 日 100,000 166,667 — — — — — 20X1 年 3 月 31 日 150,000 230,769 64,102 9,77520 9,631 12,821 (3,190) 20X1 年 6 月 30 日 200,000 285,714 54,945 18,43321 18,433 10,989 7,444 • 20X1 年 1 月 1 日 JKL 社は以下の仕訳を行うことになる。 借方(€) 貸方(€) Yorkshire Jewellers 社の株式を取得するための当初投資 売却可能金融資産に対する投資 166,667 現金 166,667 • 20X1 年 3 月 31 日に終了する四半期 仕訳を行う前に、JKL 社は Yorkshire Jewellers 社に対する投資の公正価値の増加(又は減少)の うち、どの部分が、株価変動に起因するもので、どの部分が為替レートの変動に起因するものかを 判断するための分析を行う必要がある。したがって、JKL 社は以下の分析を行う。 株価の変動による評価益部分 (£150,000 - £100,000)/ 0.65 76,923 為替差損部分 (£100,000/ 0.65) - (£100,000/ 0.60)(スポット・レートで測定) (12,821) 利得合計 64,102 18株式数×株価 19ポンド建ての株式価値/スポット・レート 20(£100,000/ 0.62) - (£100,000/ 0.66). 21(£100,000/ 0.62) - (£100,000/ 0.70).

(22)

• 20X1 年 3 月 31 日に終了する四半期 20X1 年 3 月 31 日時点で、為替予約の公正価値は 9,631 ユーロであった。スポット・レートの変動 に起因する12,821 ユーロの損失と 9,631 ユーロの利得の差額は、フォワード・レートとスポット・レ ートの差額の変動の結果生じるものであり、有効性の評価からは除外される。除外されたこの差異 は、純損益に計上される。 JKL 社は、20X1 年 3 月 31 日時点で以下の仕訳を行う。 借方(€) 貸方(€) 株価変動に起因する売却可能投資の公正価値変動についての会計処理 売却可能金融資産 76,923 (累積)その他の包括利益 76,923 為替レートの変動に起因する売却可能投資の公正価値の変動を会計処理 為替差損益 12,821 売却可能金融資産 12,821 為替予約の公正価値変動を認識 為替予約 9,631 デリバティブ損益 9,631 • 20X1 年 6 月 30 日に終了する四半期 20X1 年 6 月 30 日時点で、JKL 社は同様の分析を行う。 株価の変動の結果生じる利得 (£200,000 - £150,000)/ 0.70) 71,429 当初残高100,000 ポンドについて、為替レート(スポット・レート)の変動の結果生じた損失 ((£100,000/ 0.70) - (£100,000/ 0.65)) (10,989) 前四半期中に増加した50,000 ポンドについて、為替(スポット・レート)の変動の結果生じた損失 ((£50,000/ 0.70) - (£50,000/ 0.65)) (5,495) 利得合計 54,945

(23)

この四半期において、為替予約の公正価値は8,802 ユーロ(18,433 ユーロ-9,631 ユーロ)増加した。 JKL 社は、20X1 年 6 月 30 日時点で以下の仕訳を行う。 借方(€) 貸方(€) 株価変動に起因する売却可能投資の公正価値変動についての会計処理 売却可能金融資産 71,429 (累積)その他の包括利益 71,429 借方(€) 貸方(€) 売却可能金融資産に対する投資の公正価値変動のうち、ヘッジ対象として指定された投資部分 に係る為替レートの変動に起因する部分についての会計処理(すなわち、当初100,000 ポンドの 投資に係る為替差損) 為替差損益 10,989 売却可能金融資産 10,989 借方(€) 貸方(€) 外国為替ヘッジとして指定された部分とはみなされない残りの売却可能金融資産の公正価値変 動(すなわち、第1 四半期中に株価上昇により増加した 50,000 ポンドに係る為替差損)を、OCI で認識(貨幣性資産の場合には純損益で認識) (累積)その他の包括利益 5,495 売却可能金融資産 5,495 借方(€) 貸方(€) 為替予約の公正価値変動を認識 為替予約 8,802 デリバティブ損益 8,802 借方(€) 貸方(€) 先渡契約の決済に係る会計処理 現金 18,433 為替予約 18,433

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ヘッジの有効性

JKL 社は、対ユーロでの英ポンド安によって生じるマイナスの影響を分離し、当該損失をヘッジし た上で、IAS 第 39 号に基づきヘッジ会計を適用することにより、Yorkshire Jewellers 社株式の投 資価値上昇により、ヘッジ指定しなかった場合と比べ、より多くの金額を累積その他の包括利益に 反映することが可能となった。すなわち、為替予約を締結していなかった場合には、累積その他の 包括利益として119,047 ユーロ(285,714 ユーロ-166,667 ユーロ)が計上されていたのに対し て、ヘッジ後では142,857 ユーロが計上されている。 なお、為替予約のフォワード・ポイント(すなわち、開始時のスポットとフォワードの差額)である 5,377 ユーロの損失は損益計算書に反映されている。

外貨建資産又は負債のヘッジ例

事例6: 通貨金利スワップによる外貨建固定金利借入を機能通貨建ての変動金利借入に変換す る公正価値ヘッジ 事例7: 通貨スワップによる外貨建固定金利借入を機能通貨建ての固定金利借入に変換するキ ャッシュ・フロー・ヘッジ 事例8: 為替予約による外貨建ゼロ・クーポン債を機能通貨建てのゼロ・クーポン債に変換するキ ャッシュ・フロー・ヘッジ 事例 6: 通貨金利スワップによる外貨建固定金利借入を機能通貨建ての変動金利借入に 変換する公正価値ヘッジ MNO 社の機能通貨は米ドルである。MNO 社は、20X0 年 12 月 31 日に、期間 5 年、年利 5.68% で100 百万ユーロの借入を行う。また MNO 社は、20X0 年 12 月 31 日時点で、100 百万ユーロに 対し5.68%の固定金利をユーロで受け取り、102 百万ドルに対し LIBOR+0.536%のドル変動金利を 支払う5 年物通貨金利スワップを締結する。契約の満期時には、102 ドル:100 ユーロのレートで最 終的に元本が交換される(MNO 社は 100 百万ユーロを受け取り、102 百万ドルを支払う)。年利の 支払いは、借入及びスワップについて、年1 回 12 月 31 日に行われる。MNO 社は、通貨金利スワ ップを、金利と為替レートの両方に起因する借入の公正価値変動をヘッジするための公正価値ヘッ ジとして指定する。 なお、評価の基礎となるドル対ユーロのスポット・レート、ユーロLIBOR レート22、ユーロ対ドルのベー シス・スワップ・スプレッド、1 年物米ドル LIBOR に関するヘッジ期間中の毎年 12 月 31 日時点の情 報を次頁の表に示す。これらは借入及びデリバティブの会計処理上要求されるものではないが、会 計処理で使用される評価額の基礎となる。 22単純化のため、ユーロLIBOR は、テナー(金利改訂期間)によって変わらない(すなわち、フォワード・イールド・カーブはフラット)であるとす る。

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20X0 年 12 月 31 日 20X1 年 12 月 31 日 20X2 年 12 月 31 日 20X3 年 12 月 31 日 20X4 年 12 月 31 日 20X5 年 12 月 31 日 ド ル 対 ユ ー ロ の ス ポット・レート($/€) 1.0200 1.0723 1.0723 1.1273 1.1851 1.2458 ユーロLIBOR レー ト 5.160% 5.151% 5.040% 4.854% 4.480% 該当なし ベーシス・スワップ・ スプレッド (0.02)% (0.02)% (0.02)% (0.02)% (0.02)% 該当なし 1 年物ドル LIBOR 6.00% 5.50% 6.00% 6.50% 7.00% 該当なし MNO 社のヘッジ文書は以下のとおりである。 リスク管理目的及びヘッジ対象 リスクの内容 ヘッジ取引の目的は、為替レート及びベンチマーク(ユーロLIBOR) 金利の変動に起因する外貨建借入の公正価値変動をヘッジする ことである。 指定日 20X0 年 12 月 31 日 ヘッジ手段 100 百万ユーロに対し 5.68%の固定金利をユーロで受け取り、 102 百万ドルに対し米ドル LIBOR+0.536%の変動金利を支払う 5 年物通貨金利スワップ(元本を満期時点で交換する) ヘッジ対象 当社は、通貨金利スワップを、金利リスクと為替リスクの両方に起 因する借入の公正価値変動をヘッジするための公正価値ヘッジと して指定する。 有効性の評価方法 通貨金利スワップの(想定)元本が借入の元本と同じであり、借入 とスワップのすべてのキャッシュ・フローが一致しているため、ヘッ ジ関係は非常に有効であると見込まれる。 ユーロLIBOR は、借入のユーロ金利の構成要素と捉えることがで きる。また、ユーロ LIBOR とドル LIBOR の差であるベーシス・スプ レッドの影響は無視できるレベルであるため、通貨金利スワップの 公正価値変動に関し、非有効部分は生じないと判断される。 カウンター・パーティーに対する信用リスクについては、継続的に モニタリングを行う。 有効性の測定方法 IAS 第 39 号の公正価値ヘッジに関する会計処理方法に従い、ヘ ッジ対象である外貨建借入について、ユーロ金利の変動に起因す る公正価値変動を算定し、その変動について帳簿価額を調整す る。その上で、調整後の外貨建帳簿価額を、IAS 第 21 号に従っ て、期末レート(スポット・レート)で換算し、為替差損益を純損益と して認識する。 なお、ヘッジ手段である通貨金利スワップの公正価値変動は純損 益で認識する。

(26)

以下の表は、ユーロ金利及びスポット・レート両方の変動に起因するヘッジ対象借入の公正価値変 動と、通貨金利スワップの公正価値及びその変動(米ドル)を示したものである。なお、本設例では、 単純化のため、すべてのイールド・カーブは期間を通じてフラットであると仮定している。 20X0 年 12月31日 20X1 年 12月31日 20X2 年 12月31日 20X3 年 12月31日 20X4 年 12月31日 20X5 年 12月31日 A. スポット・レート($/€) 1.0200 1.0723 1.0723 1.1273 1.1851 1.2458 B. 借入の調整後の価値(千€)23 (100,000) (100,032) (100,322) (100,567) (100,647) 0 C. スポット・レートでの借入の帳 簿価額(千$) (A*B) (102,000) (107,265) (107,575) (113,366) (119,274) - D. 借入の価値の累計変動額 ($102-C) - (5,265) (5,575) (11,366) (17,274) - E. 債務の帳簿価額の期中変動 額(千$) - (5,265) (310) (5,791) (5,908) 17,274 F. 通貨金利スワップの公正価値 (千$) 0 5,333 5,642 11,472 17,357 - G. スワップの公正価値の期中変 動額(千$) - 5,333 310 5,830 5,885 (17,357) 借入の帳簿価額及びスワップの変動は、直ちに純損益に認識される。20X2 年度において、列(E)と (G)は完全に相殺されていることに留意されたい。これは、スポット・レートが 20X1 年から 20X2 年 にかけて変動しなかったためである。 23現在のユーロLIBOR プラス当初スプレッド(0.52%)で割り引いた、固定受取金額(5.68%)に元本を加算した金額に基づく債務の現在価値。 たとえば、20X1 年 12 月 31 日時点で、当該借入の公正価値 100,032 千€(=100.032 百万€)は、 100.032 千€ = 5.68/(1+ 0.05151+0.0052) + 5.68/(1 + 0. 05151 + 0.0052)2 + 5.68/(1+0. 05151+0.0052)3 + 105.68/ (1 + 0. 05151+0 .0052)4となる。

(27)

MNO 社は、初年度において以下の仕訳を行う。 借方(€) 貸方(€) 金利の受け渡しの処理 利息費用 6,666,72024 現金(借入に係る支払い) 6,094,64025 現金(スワップに係る純額での支払い) 572,08026 通貨金利スワップの公正価値変動を計上 通貨金利スワップ 5,333,333 ヘッジ対象に係る為替差損益相当額 5,230,00027 スワップ評価益 103,33328 ヘッジ対象借入の公正価値の変動を計上 為替差損益 5,230,00027 借入 5,265,000 借入に係る評価損益 35,00029 ヘッジ対象借入の帳簿価額は、まず金利リスクに起因する公正価値の影響について調整し、次に為 替のスポット・レート変動による換算差損益について調整することにより算定される(前頁の表におけ るステップB 及び C を参照)。他の期間の仕訳も上記と同様に行う。 ヘッジによる損益計算書への影響 外貨建借入の元本に適用される固定金利の利息費用は、公正価値ヘッジにより米ドル LIBOR の 変動金利ベースの利息費用に転換されている。 24 (102 百万$ x 6.536%) 25 100 百万€ x 5.68% x 1.073(スポット・レート) 26 (102 百万$ x 6.536%) - (100 百万€ x 5.68% x 1.073) 27 (100 百万€ x 1.0723 - 100 百万€ x 1.02) 28 $5,333,333 - $5,230,000 29 $5,265,000 - $5,230,000

(28)

事例 7: 通貨スワップによる外貨建固定金利借入を機能通貨建ての固定金利借入に変換 するキャッシュ・フロー・ヘッジ ABC 社の機能通貨は米ドルである。ABC は、20X1 年 1 月 1 日に 100 百万ユーロの借入を行う。 当該借入の満期は5 年であり、年利は 5.68%である。 同じく20X1 年 1 月 1 日、ABC 社は、100 百万ユーロに対し 5.68%の固定金利をユーロで受け取り、 102 百万ドルに対し 6.536%の固定金利を米ドルで支払う 5 年物スワップを締結する。スワップ契約 の満期時には、契約時のスポット・レート1.02 米ドル/ユーロで元本が交換される。借入とスワップの 利払日は、ともに12 月 31 日である。 ABC 社は、この通貨スワップを、外貨建借入に係るキャッシュ・フローが機能通貨建てで変動するエ クスポージャーをヘッジするためのキャッシュ・フロー・ヘッジに指定する(ABC 社のヘッジ目的は、外 貨建借入の元利金に係るキャッシュ・フローの変動リスクを除去することであるため、キャッシュ・フロ ー・ヘッジでなければならない)。一般に、固定から固定、あるいは変動から固定へのキャッシュ・フロ ーの変換はキャッシュ・フロー・ヘッジに、固定から変動、又は変動から変動へのスワップは公正価 値ヘッジとなる)。 ヘッジ期間中の米ドル対ユーロの為替スポット・レートは以下のとおりである。 20X1 年 1 月 1 日 20X1 年 12 月 31 日 20X2 年 12 月 31 日 20X3 年 12 月 31 日 20X4 年 12 月 31 日 20X5 年 12 月 31 日 スポット・レート ($/€) 1.0200 1.0723 1.0723 1.1273 1.1851 1.2458

(29)

ABC 社のヘッジ文書は以下のとおりである。 リスク管理目的及びヘッ ジ対象リスクの内容 当該取引の目的は、為替レート変動に起因する外貨建借入に係るキ ャッシュ・フローの変動をヘッジし、機能通貨建てのキャッシュ・フロー を固定することである。 指定日 20X1 年 1 月 1 日 ヘッジ手段 100 百万ユーロに対し 5.68%の固定金利をユーロで受け取り、102 百万ドルに対し6.536%の固定金利を米ドルで支払う 5 年物通貨スワ ップ。 また、満期時には元本の交換が行われる。 ヘッジ対象 当社は、通貨スワップを、為替リスクから生じる当該外貨建借入に係 るキャッシュ・フローの変動をヘッジするためのキャッシュ・フロー・ヘ ッジとして指定する。 有効性の評価方法 通貨スワップの(想定)元本は当該借入の額面と等しく、かつ、借入と スワップは、すべてのキャッシュ・フローの発生日及び金利が同じこと から、ヘッジの非有効部分は生じないと判断した。 しかし、当社は、報告日ごとに相手方の信用リスクと、ヘッジ対象であ るキャッシュ・フローの金額及び時期を評価する。 有効性の測定方法 非有効部分は、「仮想デリバティブ」法を使って測定する。 この方法は、指定されたヘッジ手段の公正価値の変動と、ヘッジ対象 と主要な条件が完全に一致する仮想デリバティブの公正価値変動を 比較することにより行われる。 通貨スワップの(想定)元本は借入の額面と等しく、かつ、借入とスワ ップは、すべてのキャッシュ・フローの発生日及び金利が同じため、本 ヘッジに用いられる実際のヘッジ手段は、ヘッジ対象と条件が完全に 一致する「仮想スワップ」と同じになる。 (注)なお、仮想デリバティブにベーシス・スプレッドを考慮することが できるかについては議論があるが、本設例では、当該ベーシス・スプ レッドにより非有効は生じないとの前提を置いている。

(30)

12 月 31 日に終了する各年度における、ユーロを米ドルに交換する通貨スワップの米ドル建ての公 正価値(これは仮想通貨スワップと等しくなる)、及び純損益に認識されるヘッジの非有効部分、なら びに(累積)その他の包括利益(本設例の表中において AOCI と表記)に計上される残高は、以下のと おりである。 (単位:千ドル) 20X1 年 1 月 1 日 20X1 年 12 月 31 日 20X2 年 12 月31 日 20X3 年 12 月31 日 20X4 年 12 月 31 日 20X5 年 12 月31 日 実際のスワップの公正価値30 - 3,544 5,642 12,401 18,310 22,580 非有効部分31 - - - AOCI の期中変動 3,544 2,098 6,759 5,909 4,270 12 月 31 日に終了する各年度における、為替スポット・レートの変動による外貨建借入の帳簿価額 の変動は以下のとおりである。 (単位:千ドル) 20X1 年 1 月 1 日 20X1 年 12 月31 日 20X2 年 12 月31 日 20X3 年 12 月31 日 20X4 年 12 月31 日 20X5 年 12 月31 日 外貨建借入のスポット・レー トによる換算額 (102,000) (107,230) (107,230) (112,727) (118,507) (124,580) 外貨建借入の帳簿価額の 累積変動額 (5,230) (5,230) (10,727) (16,507) (22,580) 外貨建借入の帳簿価額の 期中変動額 (5,230) - (5,497) (5,780) (6,073) 30上記で説明したように、実際のスワップと「仮想」スワップは同一になる。 31「仮想デリバティブ」法を適用した結果、この例では非有効部分は生じない。仮に実際のスワップと完全な仮想スワップとの主要条件の違い により実際のスワップと仮想スワップの公正価値に違いが存在する場合、(累積)その他の包括利益は、実際のスワップの公正価値の累積 変動額と、仮想スワップの公正価値の累積変動額のいずれか小さい金額に調整される。なお、この調整と実際のスワップの公正価値変動 額との差額は非有効部分として純損益に計上される。

(31)

ヘッジ対象である外貨建借入は、毎期、IAS 第 21 号「外国為替レート変動の影響」に従って換算さ れ、換算差額は直ちに純損益に認識される。IAS 第 39 号は、資本に計上された累積その他の包括 利益のうち、このスポット・レートの変動と相殺される部分も直ちに純損益に振り替えることを求めて いる。 以下の表は、ヘッジ期間中における累積その他の包括利益(AOCI)の調整を示している。 (単位:千ドル) 20X1 年 12 月 31 日 20X2 年 12 月 31 日 20X3 年 12 月 31 日 20X4 年 12 月 31 日 20X5 年 12 月 31 日 AOCI に当初計上された実際のス ワップに係る公正価値変動 3,544 2,098 6,759 5,909 4,270 ヘッジ対象借入れに係る為替差 損益を相殺するための純損益へ の振替額 (5,230) - (5,497) (5,780) (6,073) AOCI の純期中変動額 (1,686) 2,098 1,262 129 (1,803) AOCI の期首残高 - (1,686) 412 1,674 1,803 AOCI の期末残高 (1,686) 412 1,674 1,803 - 為替換算により生じるヘッジ対象借入に係る帳簿価額の変動は、累積その他の包括利益のリサイク ルと合わせて純損益に認識される。12 月 31 日に終了する各年度における、利息費用を含む損益 計算書への影響は以下のとおりである。 (単位:千ドル) 20X1 年 20X2 年 20X3 年 20X4 年 20X5 年 利息費用32 (6,667) (6,667) (6,667) (6,667) (6,667) ヘッジ対象借入に係る為替差損益 (5,230) - (5,497) (5,780) (6,073) AOCI から純損益へのリサイクル 金額 5,230 - 5,497 5,780 6,073 スポット・レートが20X1 年から 20X2 年にかけて変動しなかったため、20X2 年には為替差損益及 びヘッジ損益は生じていない点に留意されたい。 32利息費用は、通貨スワップにより支払う102 百万米ドルに対する 6.536%の固定金利に基づき計算されている。100 百万ユーロの借入に対 して支払われる5.68%の利息は、通貨スワップにより、100 百万ユーロに対して受領する 5.68%の利息により(金利キャッシュ・フロー及び IAS 第 21 号に基づく換算差額の両方について)完全に相殺される。

(32)

• 20X1 年 12 月 31 日に終了する初年度の仕訳 借方($) 貸方($) スポット・レートの変動に係る外貨建借入の帳簿価額の調整 利息費用 6,666,72033 現金(借入に係る支払い) 6,090,66434 現金(スワップの相手方への支払い) 576,05635 為替差損益 5,230,000 外貨建借入 5,230,000 通貨スワップの公正価値をデリバティブ資産・負債ならびに、(累積)その他の包括利益として計 上し、併せてヘッジ対象借入の為替差損益を相殺するため、同額を純損益へ振り替える。 通貨スワップ 3,544,000 累積その他の包括利益 1,686,000 為替差損益 5,230,000 • 20X2 年 12 月 31 日に終了する第 2 年度の仕訳 借入及びスワップに係る金利の支払い(受取り)を認識 利息費用 6,666,72036 現金(借入に係る支払い) 6,090,66437 現金(スワップの相手方への支払い) 576,05635 スポット・レートは20X1 年 12 月 31 日から変動していないため、ヘッジ対象借入の為替換算の仕訳 は行われない。 33 (102 百万$ x 6.536%) 34 (100 百万€x 5.68% x 1.0723) 35 (102 百万$ x 6.536%)—(100 百万€ x 5.68% x 1.0723) 36 (102 百万$x 6.536%) 37 (100 百万€ x 5.68% x 1.0723)

(33)

借方($) 貸方($) 通貨スワップの公正価値をデリバティブ資産・負債ならびに、(累積)その他の包括利益として計上 する。 通貨スワップ 2,098,000 (累積)その他の包括利益 2,098,000 • 20X3 年 12 月 31 日に終了する第 3 年度の仕訳 借方($) 貸方($) 借入及びスワップに係る金利の支払い(受取り)を認識 利息費用 6,666,72038 現金(借入に係る支払い) 6,403,06439 現金(スワップの相手方への支払い) 263,65640 借方($) 貸方($) スポット・レートの変動に係る外貨建借入の帳簿価額の調整 為替差損益 5,497,000 外貨建借入 5,497,000 借方($) 貸方($) 通貨スワップの公正価値をデリバティブ資産・負債ならびに、(累積)その他の包括利益として計 上し、併せてヘッジ対象借入の為替差損益を相殺するため、同額を純損益へ振り替える。 通貨スワップ 6,759,000 累積その他の包括利益 1,262,000 為替差損益 5,497,000 38 (102 百万$ x 6.536%) 39 (100 百万€x 5.68% x 1.1273) 40 (102 百万$ x 6.536%)—(100 百万€ x 5.68% x 1.1273)

(34)

• 20X4 年 12 月 31 日に終了する第 4 年度の仕訳 借方($) 貸方($) 借入及びスワップに係る金利の支払い(受取り)を認識 利息費用 6,666,72041 現金(スワップの相手方からの受取り) 64,64842 現金(借入に係る支払い) 6,731,36843 借方($) 貸方($) スポット・レートの変動に係る外貨建借入の帳簿価額の調整 為替差損益 5,780,000 外貨建借入 5,780,000 借方($) 貸方($) 通貨スワップの公正価値をデリバティブ資産・負債ならびに、(累積)その他の包括利益として計 上し、併せてヘッジ対象借入の為替差損益を相殺するため、同額を純損益へ振り替える。 通貨スワップ 5,909,000 累積その他の包括利益 129,000 為替差損益 5,780,000 41 (102 百万$ x 6.536%) 42 ((102 百万$ x 6.536%) - (100 百万€ x 5.68% x 1.1851)) 43 (100 百万€ x 5.68% x 1.1851) 44 (102 百万$x 6.536%) 45 ((102 百万$ x 6.536%) - (100 百万€ x 5.68% x 1.2458)), 46 (100 百万€x 5.68% x 1.2458), • 20X5 年 12 月 31 日に終了する第 5 年度の仕訳 借方($) 貸方($) 借入及びスワップに係る金利の支払い(受取り)を認識 利息費用 6,666,72044 現金(スワップの相手方からの受取り) 409,42445 現金(借入に係る支払い) 7,076,14446

(35)

借方($) 貸方($) スポット・レートの変動に係る外貨建借入の帳簿価額の調整 為替差損益 6,073,000 外貨建借入 6,073,000 借方($) 貸方($) 通貨スワップの公正価値をデリバティブ資産・負債ならびに、(累積)その他の包括利益として計 上し、併せてヘッジ対象借入の為替差損益を相殺するため、同額を純損益へ振り替える。 通貨スワップ 4,270,000 累積その他の包括利益 1,803,000 為替差損益 6,073,000 借方($) 貸方($) 借入及び通貨スワップの決済仕訳 現金(スワップの相手方からの受取り) 22,580,000 外貨建借入 124,500,000 現金(借入に係る支払い) 124,500,000 通貨スワップ 22,580,000 ヘッジによる損益計算書への影響 仮想デリバティブ法を使った結果、ヘッジは完全に有効であるとみなされたため、純損益に認識さ れるヘッジの非有効部分は存在しない。ヘッジ対象借入の為替換算に係る為替差損益は、累積そ の他の包括利益から振り替えられた為替差損益により完全に相殺される。これによって各期の損 益計算書に生じる影響は、単純に実際のスワップにより固定された利息費用となる。したがって為 替レートの変動により損益計算書が変動することはない。

(36)

事例 8: 為替予約による外貨建ゼロ・クーポン債を機能通貨建てのゼロ・クーポン債に変 換するキャッシュ・フロー・ヘッジ DEF 社の機能通貨は、スイスフラン(SF)である。DEF 社は、20X1 年 7 月 1 日に、額面 154,767 ユーロの、ユーロ建ゼロ・クーポン社債を96,098 ユーロで発行した。当該社債の満期日は 20X6 年 6 月 30 日である。当該社債の条件から計算される実効金利は 10%である4720X1 年 7 月 1 日時 点での、スイスフラン対ユーロのスポット・レート 1.0406(SF/€)に基づくと 96,098 ユーロは 100,000 スイスフランに相当する。DEF 社は、20X1 年 7 月 1 日に、5 年後に 1.0901(SF/€)のフ ォワード・レートで154,767 ユーロ(168,719 スイスフランに相当)を購入する為替予約を締結し、当 該為替予約を、当該社債のユーロから機能通貨であるスイスフランへの換算により生じるキャッシ ュ・フローの変動リスクをヘッジするためのヘッジ手段として指定した。契約時点のスポット・レートとフ ォワード・レートの差異、すなわちフォワード・ポイントは5 年間で 68,719 スイスフランになるため、 スイスフラン建てによる5 年間の利回りは年率 11.028%と計算される48 当該社債と為替予約の通貨、額面/想定元本及び満期日は一致していることから、DEF 社は、非有 効分は生じないと結論付けている。 市場データ、期末残高、キャッシュ・フロー・ヘッジ会計に係る仕訳は以下のとおりである。 日付 スポット・レ ート (SF/€)49 フォワード・ レート (SF/€)50 フォワード・ レートの変 動51 社債の帳 簿価額(€) 52 スポット・レ ートによる換 算後の社債 の帳簿価額 (SF) スイスフラン 建て利回り による償却 原価(SF) 為替予約 の公正価 値(SF)53 20X1 年 6 月 30 日 1.0406 1.0901 0.0000 96,098 100,000 100,000 - 20X2 年 6 月 30 日 1.1000 1.1850 0.0949 105,708 116,278 111,028 11,199 20X3 年 6 月 30 日 1.1000 1.1631 0.0730 116,279 127,906 123,272 9,217 20X4 年 6 月 30 日 1.1000 1.1417 0.0516 127,906 140,697 136,867 6,969 20X5 年 6 月 30 日 1.1000 1.1207 0.0306 140,697 154,767 151,960 4,419 20X6 年 6 月 30 日 1.1100 1.1100 0.0199 154,767 171,791 168,719 3,072 **計算を単純化するため、端数は表示していない。 47 96,098 x (1.10)5 = €154,767 48 (168,719/100,000)1/5=1.11028 49 実効金利法による影響を強調して示すため、スポット・レートは 20X2 年から 20X5 年にかけて変動しないとの単純化した前提を置いている。 50 20X1 年 6 月 30 日時点のフォワード・レートは、両通貨それぞれの 5 年物市場金利から計算することができる。 1.0901 = 1.0406 x {(1 + 0.11028)5/(1 + 0.10)5} 51 現在のフォワード・レートから当初フォワード・レートを控除(すなわち、20X3 年は、1.1631-1.0901=0.073 と計算される)。 52 毎年、実効金利 10%で帳簿価額の償却を行う。 53 為替予約の公正価値は、20X6 年 6 月 30 日現在のフォワード・レートと予約レートとを比較し、差額をリスク・フリー金利(すべての期間で 7%と仮定)で割り引いて計算される。

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