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高選択的二相系ヒドロホルミル化反応のための金属錯体触媒の開発

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Academic year: 2021

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(1)

高選択的二相系ヒドロホルミル化反応のための金属錯体触媒の開発

— 新規水溶性カリックスホスフィン配位子の分子デザインと合成経路の探索 —

日大生産工

(

)

  ○高橋  純 日大生産工      清水  正一 

1

  緒言 

  工業的に重要な原料であるアルデヒドは,オレフ ィンのヒドロホルミル化反応により大量に製造され ている。この反応の触媒としては配位子のトリフェ ニルホスフィンと

Rh

錯体の組み合わせが多く,

Rh

金属が高価であることから,均一系反応においては 触媒の回収・再使用が極めて重要な課題であった。

これを解決したプロセスとして

Ruhrchemie/Rhône -

Poulenc

プロセスが知られている。これは水溶性配位

子であるトリフェニルホスフィントリスルホナト

(TPPTS)

Rh

錯体を触媒として水相/有機相二相

系で反応を行うプロセスで,プロペンを原料として 毎年

60

t

以上のブタナールが製造されている。し かし,水に不溶な高級オレフィンでは収率が著しく 低下するため,このプロセスは適用できない。そこ で最近,基質をゲスト分子として水相に移動させる ことで反応を促進させる逆相間移動触媒を用いる方 法が活発に研究されている。本研究室では,これま でにカリックス

[4]

アレーンの

wide rim

distal

位に ジフェニルホスフィノアルキル基が二つ結合した水 溶性配位子を合成し,その

Rh

錯体を触媒とする二 相系ヒドロホルミル化反応を開発した1。この触媒は 非常に高い活性を示し,高収率で目的生成物が得ら れ,さらには触媒を含む水相は繰り返し使用できる。

これは水溶性カリックスホスフィンの

Rh

錯体が金 属錯体触媒としてだけではなく,逆相間移動触媒と しても機能したことに拠るものと考えられている。

  一方,均一系ヒドロホルミル化反応においては,

直鎖アルデヒド選択性の向上に関する研究が活発に 続けられ,P-M-Pのなす角である

bite angle

120°

付近に制御することにより高い

l/b

比が得られるこ とが分かってきた2

  これらの知見を踏まえ,我々は新たにカリックス ホスフィン二座配位子をデザインした

(FIGURE 1)

具体的には,逆相関移動触媒作用を担うカリックス

[4]

アレーンをプラットホームとして,その

wide rim

側に高い直鎖アルデヒド選択性を与えることで知ら

れている

Xantphos

部位を架橋として導入した。した

がって,この配位子の

Rh

錯体触媒は,水相/有機 相二相系でのヒドロホルミル化において高い活性お よび直鎖選択性を実現できるものと期待される。こ れまで幾つかの経路でその合成に取り組んできたが,

目的生成物

1-SO

3

Na

を得るには至っていない。

  そこで今回は,1-SO3

Na

の合成経路を再検討し,

SCHEME 1

に示した経路で合成を行っているのでそ

の経過を報告する。

実験

  カリックス[4]アレーン部位の化合物

5 (SCHEME 1)

は次のように合成した。まず,既知化合物

2

を文

1に従い,

p-tert-ブチルフェノールとホルムアルデ

ヒドとの環化縮合 (58%),脱アルキル化

(70%),O-

ベンジル化 (85%),臭素化 (91%),O-ベンジル化

(88%)

5

段階で合成した。次いで,

2

p-

ブロモ

フェニルアルデヒドとのクロスカップリングにより

3 (85%)

を合成し,続いて水素化ホウ素ナトリウムを 用いた還元反応によりアルコール

4 (84%)

へと変 換した。さらに三臭化リンを用いて,水酸基を臭素 に変換して

5 (58%)

を得た。

Development of Metal Complex Catalyst for High Selective Biphasic Hydroformylation

– Molecular Design and Exploration of Synthetic Route to New Water-Soluble Calixphosphine Ligand – Jun TAKAHASHI and Shoichi SHIMIZU

NaO3S

HOOHOH HO

O

P P

2 2

SO3Na NaO3S

SO3Na NaO3S

SO3Na

SO3Na SO3Na NaO3S

NaO3S NaO3S

SO3Na

1-SO3Na

F IGURE 1. New Water-Soluble Calixphosphine.

(2)

5: Mp 103–105 ˚C; R

f

0.58 (CHCl

3

/hexane 1:1);

1

H NMR (400 MHz, CDCl

3

); δ 7.18–7.34 (m, 28H), 6.88 (s, 4H), 6.49–6.51 (m, 4H), 4.99 (s, 4H), 4.95 (s, 4H), 4.51 (s, 4H), 4.24 (d, J = 13.4, 4H), 2.98 (d, J = 13.5, 4H); IR (KBr):

3027, 2915, 2964, 1608, 1177 cm

-1

; Anal. Calcd for C

70

H

58

Br

2

O

4

: C, 74.87; H, 5.21. Found: C, 74.82; H, 5.11.

  一方,

Xantphos

部位の合成は,

9,9-

ジメチルキサ ンテンの

4,5

位を選択的に臭素化した

7 (82%)

を基 体として行った。次に,このキサンテン骨格にリン 原子を導入するために用いるリン試薬の合成を行っ た。フェニル (p-トリル) ホスフィン酸クロリド

10

は,トリエチルホスファイトからフェニルマグネシ ウムブロミドとの反応でジエチルフェニルホスホナ イト (41%) とし,次に臭化ニッケルを触媒とした

p-ブロモトルエンとの反応,続いて加水分解により

フェニル (p-トリル) ホスフィン酸 (59%) とした。

最後に塩化チオニルによる塩素化で目的のリン試薬

10 (89%)を得た。

10:

1

H NMR (400 MHz, CDCl

3

) δ 7.83–7.89 (m, 2H), 7.76 (dd, J = 8.13, 14.1 Hz, 2H), 7.57–7.61 (m, 1H), 7.48–7.53 (m, 2H), 7.31–7.34 (m, 2H), 2.42 (s, 3H);

31

P{

1

H} NMR (162 MHz, CDCl

3

) δ 45.74.

3

  結果および考察

  目的化合物

1-SO

3

Na

を合成するためにはさまざ まな経路が考えられるが,分子間環化反応の難しさ を考慮し,

Xantphos

部位およびカリックス部位を比 較的反応性が高いベンジル位に臭素が導入された化 合物

5

および

9

に分割して合成し,これを組み合わ せる経路を採用することにした。キサンテン部位の 合成において,当初は

7

のリチオ化物に

2

当量のジ クロロフェニルホスフィンを反応させ,次いで

2

当 量の

p-

クロロメチルフェニルリチウムを順次反応さ

せる

one-pot

合成を用いていた。しかし,中間体の

4,5-ビス(クロロフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキ

サンテンと

7

のリチオ化物が反応し,多量の副生成 物が生成し,単離収率は

12%

と低いものであった。

そのため合成経路を変更し,ジクロロフェニルホス フィンから調製したフェニル (p-トリル

)

クロロホ スフィンを用いて反応を試みた。しかし,この合成 のために調製したリン試薬には複数の位置異性体が 含まれていたため,数種の副生成物を含む粗生成物 が得られ,目的生成物の単離が困難となった。そこ でリンを導入するための試薬の再検討を行い,クロ ロホスフィン酸

10

を用いる合成経路に変更した。

10

を用いて

7

のリチオ化物と反応させた結果,その

生成物の1

H NMR

スペクトルには,

2.37 ppm

にトリ

ル基のメチルプロトンに帰属されるシグナル (6H) が,さらに31

P NMR

スペクトルには

29.58–32.28 ppm

にシグナルが認められたことから

8

の生成が確認さ れた。リンのシグナルはブロードで複数現われ,

4,5

位に導入したフェニル

(p-

トリル

)

ホスホリル基の 立体的込み合いによる,コンホメーション異性体の 存在が示唆された。今後は,

8

のキャラクタリゼー ションを行い,その臭素化物である

9

とカリックス 部位

5

とのカップリング反応,次いで還元,脱ベン ジル化,スルホン化を行い目的生成物を得る予定で ある。

参考文献

(1) Shimizu, S.; Shirakawa, S.; Sasaki, Y.; Hirai, C.

Angew. Chem. Int. Ed. 2000, 39, 1256–1259.

(2) (a) Casey, C. P.; Whiteker, G. T.; Melville, M. G.;

Petrovich, L. M.; Gavney, J. A.; Powell, D. R. J. Am.

Chem. Soc. 1992, 114, 5535–5543. (b) Matt, D.; Sémeril, D.; Jeunesse, C.; Toupet, L. Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 5810–5814.

BnOOBnOBn BnO

OHC CHO

3 (85%)

BnOOBnOBn BnO

HOH2C CH2OH

4 (84%) BnOOBnOBn

BnO

Br Br

2

BnOOBnOBn BnO

BrH2C CH2Br

5 (58%)

BnOOBnOBn BnO

O

P P

2 2

6 O

P P

BrH2C CH2Br O

Br Br

7

9

S CHEME 1

a

i, ii iii iv

v

a Reagents and conditions: (i) n-BuLi, B(OCH3)3, THF, –78 ˚C, rt, 1N HCl; (ii) p-BrC6H4CHO, Pd(OAc)2, PPh3, 2M Na2CO3,toluene, 1-PrOH, reflux; (iii) NaBH4, THF, EtOH, rt; (iv) PBr3, THF, rt; (v) n-BuLi, P(O)Ph(p-tolyl)Cl (10), THF, –78 ˚C.

O

P P

H3C 8 (85%) CH3

O O O O

O O

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