Effect of Vacuum Processing Method on Quality Improvement of Concrete Slab
-Relationship between surface Concrete Quality after 4years and Blister of Coating-
Takashi SASAKI, Noboru YUASA, Yoshio KASAI and Isamu MATSUI
真空脱水工法によるコンクリートスラブの品質改善効果
-4年を経過したコンクリート表層の品質と塗り床材のふくれの関係-
日大生産工 ○佐々木 隆 日大生産工 湯浅 昇 日大生産工 松井 勇 (株)建和 村松 昭夫
1. はじめに
コンクリートに施した塗り床等の仕上げ材に生じ るふくれ、剥がれといった不具合は、下地コンクリ ートの品質、特に表層部の品質と密接な関係がある と考えられており、この問題を解決するために考案 された施工方法として真空脱水工法がある。本工法 を施すことで、コンクリート表層の強度改善効果が 得られ、塗り床に生ずるふくれの抑止効果が得られ ることがわかっている
1)。
本研究は、練置き時間を一定にしたコンクリート
(シリーズ 1)および練置き時間を意図的に変化さ せたコンクリート(シリーズ 2)の打設直後と 4 年 経過後の表層の品質を比較するとともに、表層の品 質と塗り床材の関係について検討したものである。
なお、材齢 4 年後のコンクリート表層の品質と塗り 床材のふくれの関係について、ふくれ促進試験を用 いて検討を行ったが、ふくれの発生が全く見られな かったため、本報告では、コンクリートと塗り床材 の付着性状について記述する。
2. 試験概要
2.1 コンクリート試験体作製
本試験で用いたコンクリートはシリーズ 1、シリ ーズ 2 ともに表 1 に示す調合により混練されたもの であり、材料、調合などを厳格に管理されたU社製 生コンクリートである。試験体の形状は床スラブを 想定し、900×900×150mm とし、これを表 2(シリー ズ 1)および表 3(シリーズ 2)に示す試験条件のよ うに真空脱水処理およびシート養生を施した。その 後、試験体は日本大学生産工学部敷地内(屋外)に 静置した。なお、材齢 4 年後の試験体は、各試験に 供するコアを採取後、20℃の水に 24 時間浸漬した後、
14 日間 20℃、R.H.60%の恒温恒湿室にて乾燥させた。
2.2 試験方法 (1) 圧縮強度測定
コンクリート試験体からφ 100×150mm のコアを採取し、
圧縮強度試験を行った。コアの採取および圧縮強度 試験は、材齢 28 日および 4 年に行った。なお、結果 に示した強度は高さ補正は行っていないものである。
(2) 表面強度測定
コンクリート表面強度を測定するために、引っか き試験およびリバウンドハンマーによる反発度測定 を行った。
(3) 細孔構造測定
細孔構造測定用試料は、コア試験体を脱水処理面 から 0~10mm の位置で切断した後、2.5~5.0mm の粒 度に調整し、アセトン処理および D-dry 処理を行い 作製した。その後、水銀圧入法を用いて細孔構造を 測定した。試料作製は、材齢 28 日および 4 年に行っ た。また、コンクリート表層部の SEM 観察を行った。
(4) 中性化深さの測定
打設後 4 年を経過した試験体からコアを採取し、
中性化深さを測定した。
(5) コンクリートと塗り床の接着力試験
打設後 4 年を経過した試験体に塗り床材を施工し た後、14 日後にコンクリートと塗り床材の接着力を 調べるため、 皮剥ぎ式剥離接着強さ試験
2)を行った。
3. 結果および考察 3.1 圧縮強度試験結果
図 1 に圧縮強度試験結果(シリーズ 1)を示す。
全ての試験体において、材齢の経過とともに強度の 増加が見られた。また、真空脱水処理を行った試験 体において、S4 および S5 の強度が他の試験体に比 し高い結果となった。これらは、真空脱水処理時間 が 20 分と長く、表層部の水セメント比がより低減し 処理が 22 分の試験体(S2)は、打設直後に処理を行 ったため、セメント分を多く排出してしまい、強度
表 1 コンクリートの調合
水 セメント 細骨材 粗骨材
24 57 46.5 181 318 804 964 5.1 15.6 20.0 空気量
(%)
スランプ
(cm)
練り温
(℃)
注)セメント密度:3.16(g/cm3) 細骨材(表乾)密度:2.57(g/cm3) 粗骨材(表乾)密度:2.65(g/cm3) 質量(kg/m3)
s/a
(%)
W/C
(%)
設計基準 強度
(N/mm2)
に悪影響に悪影響を与えたものと考 えられる。シート養生を行った試験体 は、 材齢 28 日および材齢 4 年ともに、
養生期間が長い方が、強度が高い傾向 が見られた。特に、保水効果が高い N 社製マットを使用した試験体(S11)
の強度が高かった。
図 2 に圧縮強度試験結果(シリーズ 2)を示す。練置き時間にかかわらず 全ての試験体において、材齢の経過と ともに強度の増加が見られた。特に、
脱水処理時間が長い S⑥と S⑩の増加 が大きいことがわかった。
3.2 表面強度測定結果 (1) 引っかき試験結果
図 3 に引っかき試験結果(シリーズ 1)を示す。
真空脱水処理を行った試験体において、材齢の経過 によって引っかき傷幅は低下する傾向が見られた。
一方、シート養生を行った試験体は、材齢の経過に より引っかき傷幅が増加した試験体(S8、S10、S11)
がみられた。これらのコンクリート表面を観察する と、セメントペースト部分が風化し剥ぎ取られ、骨 材が表面に出てきてしまっており、この影響により 傷幅が大きくなったものと考えられる。真空脱水処 理を行った試験体とシート養生を行った試験体を比 較すると、S2 および S3 を除き、真空脱水処理を施 した試験体の方が引っかき傷幅は小さいことがわか った。
図 4 に引っかき試験結果(シリーズ 2)を示す。S
①、S④、S⑤、S⑥、S⑨は、材齢の経過とともに、
傷幅が増加していた。これらはシリーズ 1 と同様、
骨材が表面に出てきてしまっており、この影響で傷 幅が大きくなったものと考えられる。一方、真空脱 水を行わなかった S⑩は、材齢の経過とともに傷幅 が大きく低下し、脱水処理を行った試験体との差が 見られなかった。
(2) リバウンドハンマーによる反発度測定結果 図 5 にリバウンドハンマーによる反発度測定結果
(シリーズ 1)を示す。全ての試験体において、材 齢の経過とともに反発度の増加が見られ、強度が増 加していることがわかる。また、引っかき試験結果 と同様、真空脱水処理を施した試験体は、シート養 生を施した試験体に比し反発度が高く、強度が高い ことがわかる。
図 6 にリバウンドハンマーによる反発度測定結果
(シリーズ 2)を示す。全ての試験体において、材 齢の経過とともに反発度が増加していたが、練置き 時間の違いによる反発度の差は見られなかった。
3.3 細孔構造測定結果
図 7 にコンクリート表層 0~10 ㎜における総有効 細孔量(シリーズ 1)を示す。材齢 28 日において、無 処理の試験体に比し真空脱水処理を行った試験体の方 が、総有効細孔量が少なかった。しかし材齢 4 年を見 ると、 S3 およびS4 の総有効細孔量が無処理に比し高く、
真空ポンプ
方式 ろ過マット 脱水処理開 始時間
処理時間
(分)
養生剤 塗布 S1
(無処理) - - - - - - -
S2 BF Oldタイプ 直後 22 - - -
S3 BF Newタイプ 約2時間後 5 - - -
S4 BF Newタイプ 約2時間後 20 - - -
S5 三重大 Newタイプ 約2時間後 20 - - -
S6 BF Newタイプ 約2時間後 5 有 - -
S7 BF Oldタイプ 約2時間後 5 - - -
S8 - - - - - STDマット(1日) -
S9 - - - - - STDマット(3日) -
S10 - - - - - STDマット(7日) -
S11 - - - - - H社製マット(7日) -
S12 - - - - - N社製マット(7日) -
養生マット
(養生期間) 透水型枠 試験体
番号
真空脱水
注)BF:ベストフロアーシステム、STDマット:スタンダードマット
表 2 真空脱水処理およびシート養生条件(シリーズ 1)
試験体 の種類
練り置き
時間(分) 脱水工法 脱水処理開始 時間(分)
処理時間
(分)
S① 30 BF標準施工 打設後120 5 S② 60 BF標準施工 打設後120 5
S③ 60 BF施工 打設後90 5
S④ 90 BF標準施工 打設後120 5
S⑤ 90 BF施工 打設後90 5
S⑥ 90 BF施工 打設後120 10 S⑦ 120 BF標準施工 打設後120 5 S⑧ 120 BF施工 打設後90 5 S⑨ 120 BF施工 打設後120 10
S⑩ 120 無処理試験体
※S①、S②、S④、S⑦:BF(ベストフロアー)標準施工 (打設後120分・5分脱水処理)
表 3 真空脱水処理条件(シリーズ 2)
図 1 圧縮強度試験結果(シリーズ 1)
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
S1 S2 S3 S4 S5 S6 S7 S8 S9 S10 S11 S12
試験体の種類 圧縮強度(N/mm2 )
材齢28日 材齢4年
(真空脱水処理) (シー ト養生)
(
無 処 理
)
0 10 20 30 40 50
S① S② S③ S④ S⑤ S⑥ S⑦ S⑧ S⑨ S⑩ 試験体の種類
圧縮強度(N/mm2 )
材齢28日 材齢4年
(60分)
(30分) (90分) (120分)
( )練混ぜ後打設まで の時間
図 2 圧縮強度試験結果(シリーズ 2)
逆にS2 が大きく低下する結果となった。この結果の原 因は不明である。シート養生を施した試験体は、材齢 28 日ではマットの種類および養生期間の違いによる差 は明確には見られないが、材齢 4 年を見ると、養生期 間が長いほど、総有効細孔量が少なくなる傾向が見ら れた。
図 8 にコンクリート表層 0~10 ㎜における総有効細 孔量(シリーズ2)を示す。真空脱水処理を行った試験 体は、無処理の試験体に比し、総有効細孔量が少ない 結果となった。しかし、練置き時間の違いによる傾向 は、材齢28 日および材齢 4 年ともに見られなかった。
図 9 にコンクリート表層の SEM 観察結果を示す。真 空脱水処理条件および練置き時間の違いによる差は明 確にはわからなかった。
3.4 材齢4 年後の中性化深さ
図9 に材齢4 年経過後の中性化深さ(シリーズ1)を
示す。真空脱水処理を行った試験体は、その他の試験 体に比し中性化深さが小さかったが、これは処理によ るコンクリート表層の緻密化が中性化の進行を抑えた ためと考えられる。一方、シート養生を行った試験体 は、無処理の試験体に比し中性化深さが大きい結果と なった。これは、材齢 4 年の総有効細孔量が、無処理 に比し高い事が影響していると考えられるが、明確な 原因については不明である。
図 10 に材齢 4 年経過後の中性化深さ(シリーズ 2)
を示す。シリーズ 1 と同様に、真空脱水処理を行った 試験体の中性化は少ないことがわかった。しかし、練 置き時間の違いによる差は見られなかった。
3.5 コンクリートと塗り床の接着力
図 12 にコンクリートと塗り床の接着力(シリーズ 1) を示す。真空脱水処理を行った試験体は、その他の試 験体に比し接着力が強いことがわかった。また、S7 を 図 3 引っかき試験結果(シリーズ 1)
図 5 リバウンドハンマーによる反発度(シリーズ 1)
図 7 コンクリート表層の総有効細孔量(シリーズ 1)
図 4 引っかき試験結果(シリーズ 2)
図 6 リバウンドハンマーによる反発度(シリーズ 2)
図 8 コンクリート表層の総有効細孔量(シリーズ 2)
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40 0.45
S1 S2 S3 S4 S5 S6 S7 S8 S9 S10 S11 S12
試験体の種類
引っかき傷幅(mm)
材齢28日 材齢4年
(真空脱水処理) (シート養生)
(
無 処 理
)
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40 0.45
S① S② S③ S④ S⑤ S⑥ S⑦ S⑧ S⑨ S⑩ 試験体の種類
引っかき傷幅(mm)
材齢28日 材齢4年
(60分)
(30分) (90分) (120分)
( )練混ぜ後打設まで の 時間
0 10 20 30 40 50
S1 S2 S3 S4 S5 S6 S7 S8 S9 S10 S11 S12
試験体の種類
リバウンドハンマーによる反発度
材齢28日 材齢4年
(真空脱水処理) (シー ト養生)
(
無 処 理
)
0 10 20 30 40 50
S① S② S③ S④ S⑤ S⑥ S⑦ S⑧ S⑨ S⑩ 試験体の種類
リバウンドハンマーによる反発度
材齢28日 材齢4年
(60分)
(30分) (90分) (120分)
( )練混ぜ後打設まで の 時間
0 5 10 15 20 25 30
S① S② S③ S④ S⑤ S⑥ S⑦ S⑧ S⑨ S⑩ 試験体の種類
総有効細孔量(×10-2 cc/g)
材齢28日 材齢4年
(60分)
(30分) (90分) (120分)
( )練混ぜ後打設まで の 時間
0 5 10 15 20 25 30 35
S1 S2 S3 S4 S5 S6 S7 S8 S9 S10 S11 S12
試験体の種類 総有効細孔量(×10-2 cc/g)
材齢28日 材齢4年
(真空脱水処理) (シー ト養生)
(
無 処 理
)
のぞくと、処理時間が長い試験体は接着力が高い傾向 が見られた。
図 13 にコンクリートと塗り床の接着力(シリーズ 2) を示す。処理条件の違いによる接着力の差は明確には わからなかったが、これは表面凹凸度等の他の因子が 影響を及ぼしているものと考えられる。また、塗り床 材をコンクリートから剥離した後、塗り床材に付着し ているコンクリートの状況を観察すると、剥離強度の 高い試験体(S⑤、S⑨、S⑩)は、塗り床材のコンクリ ートが多く付着していた。よって、コンクリート表層 部の引張強さが値に大きく影響したものと考えられる。
4. まとめ
(1) 真空脱水処理時間が長いほど、材齢の経過ととも に圧縮強度が増加する傾向が見られた。
(2) 材齢の経過とともに引っかき傷幅は小さくなる が、コンクリート表面が風化した試験体は傷幅が 大きくなっていた。リバウンドハンマーによる反 発度は、材齢の経過とともに一様に大きくなって いた。
(3) 真空脱水処理を施した試験体の総有効細孔量は 少なく、シート養生を行った試験体は養生期間が 長いほど総有効細孔量は少なかった。
(4) 真空脱水処理を行った試験体は、処理条件に係 わらず中性化が少ないことがわかった。
(5) 真空脱水処理を行い材齢4年を経過したコンク リートは、塗り床材との接着力が大きかった。
参考文献
1)筒井文康、湯浅昇、松井勇、村松昭夫、山口武志:真空脱
水工法による塗り床材のふくれ防止に関する研究、日本建 築学会大会学術講演梗概集A-1 分冊、pp.727-728、2007 2) 佐藤弘和、笠井芳夫、松井勇、逸見義男、湯浅昇:皮剥 式仕上接着強さ試験方法の提案、日本大学生産工学部第27 回学術講演会、pp.13-16、1995
S S 1111 (((( 無 処 理 S S 無 処 理 無 処 理 )))) 無 処 理
10µm
S 4 S 4 S 4 S 4
S 1 0 S 1 0 S 1 0 S 1 0
S ② S ② S ② S ②
S ④ S ④ S ④ S ④
S ⑩ S ⑩ S ⑩ S ⑩
シリーズ 1 シリーズ 2 図 9 SEM 観察結果
図 10 材齢 4 年後の中性化深さ(シリーズ 1)
図 11 材齢 4 年後の中性化深さ(シリーズ 2)
図 12 コンクリートと塗り床の接着力(シリーズ 1)
図 13 コンクリートと塗り床の接着力(シリーズ 2)
0 1 2 3 4 5 6 7
S1 S2 S3 S4 S5 S6 S7 S8 S9 S10 S11 S12
試験体の種類
中性化深さ(mm)
(真空脱水処理) (シー ト養生)
(
無 処 理
)
0 1 2 3 4 5 6
S① S② S③ S④ S⑤ S⑥ S⑦ S⑧ S⑨ S⑩ 試験体の種類
中性化深さ(mm)
(60分)
(30分) (90分) (120分)
( )練混ぜ後打設まで の 時間
0 5 10 15 20 25
S1 S2 S3 S4 S5 S6 S7 S8 S9 S10 S11 S12
試験体の種類
剥離強度(N/cm)
(真空脱水処理) (シー ト養生)
(
無 処 理
)
0 5 10 15 20 25
S① S② S③ S④ S⑤ S⑥ S⑦ S⑧ S⑨ S⑩ 試験体の種類
剥離強度(N/cm)
(60分)
(30分) (90分) (120分)
( )練混ぜ後打設まで の 時間