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Vol.18 , No.2(1970)082金治 勇「敦煌発見の勝鬘経疏 (奈93) と勝鬘経義疏との比較-主として分章科段について-」

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敦 煙 発 見 の 勝 髭 経 疏 (奈 93) と 勝 髭 経 義 疏 と の 比 較 ( 金 治) 三 九 四

(奈

93)

勝 髭 経 義 疏 撰 述 に 際 し て、 聖 徳 太 子 が 根 本 所 依 の 参 考 書、 即 ち 所 謂 ﹁ 本 義 ﹂ と し て 採 用 さ れ た も の が 何 で あ る か は、 従 来 明 ら か に さ れ て い な か つ た が、 昨 年 京 大 人 文 科 学 研 究 所 の 藤 枝 晃 教 授 を 中 心 と す る 敦 煙 研 究 班 の 人 た ち に よ つ て、 北 京 図 書 館 所 蔵 の 勝 髭 経 疏 ( 奈 93) が、 そ の 内 容 か ら み て、 太 子 義 疏 と 密 接 不 離 の 関 係 に あ る こ と が 発 見 さ れ、 こ れ が 或 は 太 子 義 疏 の ﹁ 本 義 ﹂ に 当 る も の で は な い か と、 推 定 さ れ る に 至 つ た こ と は、 太 子 義 疏 を 研 究 す る も の に と つ て、 大 き な 刺 戟 と も な り、 ま た い ろ い ろ の 意 味 で、 研 究 の 便 宜 が 与 え ら れ た わ け で、 大 変 あ り が た い こ と で あ つ た。 実 は 私 も 昨 年 六 月 四 天 王 寺 女 子 大 学 の 水 尾 助 教 授 が 京 大 の 人 文 科 学 研 究 所 か ら 奈 93 の 複 写 を も ら つ て き た の を み せ て も ら つ て 驚 ろ い た の は、 そ こ に、 わ た く し ど も が、 従 来 太 子 の 独 自 釈 と し て 勝 量 経 義 疏 の 中 で も、 最 も 特 色 の あ る も の と 考 え て い た 摂 受 正 法 章 の、 ﹁ 得 一 切 衆 生 殊 勝 供 養 者、 語 少 倒。 応 言 得 供 養 殊 勝 一 切 衆 生 L ( 二 七 右) と い う 文 章 が、 ほ と ん ど そ の ま ま 奈 93 に 出 て い た こ と で あ る。 義 疏 の こ の 言 葉 は、 経 文 批 判 に 亘 る 大 胆 な 発 言 で あ つ て、 花 山 信 勝 博 士 が こ れ を 太 子 の 独 自 釈 と し て、 大 き く 取 り 上 げ ら れ て 以 来、 多 く の 学 者 に よ つ て 注 目 さ れ て き た も の で あ つ て、 私 も 亦 そ れ を 信 じ て 疑 わ な か つ た の で あ る が、 奈 93 を み る に 及 ん で、 そ れ が 決 し て 太 子 の 独 自 釈 で は な つ た こ と を 知 つ た 次 第 で あ る。 そ れ 以 来、 私 と し て は 奈 93 の 研 究 に 力 を 注 い で 今 日 に 至 つ た の で、 論 述 す べ き 問 題 は 沢 山 あ る が、 限 ら れ た 紙 数 の こ と で あ る か ら、 今 は そ の 中 主 と し て 分 章 科 段 の 問 題 を 取 り 上 げ、 終 り に 奈 93 の 学 系 に つ い て 簡 単 に ふ れ て み た い と 思 う。 し か し、 そ の 前 に、 奈 93 が 太 子 の 義 疏 と ど れ だ け 密 接 な 関 係 が あ る か と い う こ と で あ る が、 そ れ は 丁 度、 法 華 義 疏 と そ の ﹁ 本 義 ﹂、 即 ち 法 雲 の 法 華 義 記 と の 関 係 に 近 い も の が あ る。 勿 論 奈 93 は 著 者 不 明 の 三 大 願 章 以 後 の 残 欠 本 で あ つ て、 首 部

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の 序 説 と 正 説 の 第 M、 二 章 を 欠 い て い る か ら、 太 子 義 疏 の 全 文 と 逐 一 比 較 す る こ と は で き な い が、 三 大 願 章 以 後 に つ い て い え ば、 太 子 義 疏 の 科 文、 字 句 釈 等 の 過 半 が、 勝 壼 経 疏 ( 奈 93) の 伝 承 で あ る と 考 え ら れ る。 し か し、 義 経 の 文 章 は、 奈 93 の そ れ を 或 は 簡 潔 化、 或 は 前 後 入 れ か え る な ど し て 可 な り 変 容 さ れ て お り、 ま た 奈 93 以 外 の 義 解 や 有 師 釈 に よ つ て、 内 容 が 豊 富 に な つ て い る 所 も あ る か ら、 奈 93 だ け が 唯 一 の 所 依 本 で あ つ た の で は な い こ と が わ か る。 殊 に 科 文 に つ い て は、 本 義 説 を 引 き な が ら ﹁ 私 意 少 異 ﹂ ﹁ 今 不 須 ﹂ ﹁ 此 少 不 宜 ﹂ な ど と、 こ れ を 批 判 し て 自 家 の 立 場 を 打 ち 出 し て お ら れ る と こ ろ も 多 い の で、 決 し て 所 依 本 に 盲 従 し て 義 疏 を 書 か れ た の で は な い こ と は 明 ら か で あ る。 南 北 朝 時 代 殊 に 江 南 の 学 風 に お い て は、 経 典 解 釈 の 重 点 を 科 経 に お い て み る 傾 向 が あ り、 し た が つ て、 諸 家 の 最 も 力 を 注 い だ の が 経 典 の 科 段 分 文 で あ つ た。 今、 奈 93 を み る と 分 科 詳 細 で し か も 形 式 整 美、 対 照 併 行 の 妙 を 発 揮 し て お り、 そ の 点 高 度 な 科 経 で あ つ て、 南 朝 釈 家 の 学 風 が う か が え る。 こ れ だ け の 経 疏 の 書 け る 人 な ら ば、 よ ほ ど 勝 れ た 名 の あ る 学 僧 で あ つ た に 違 い な い と 思 わ れ る。 し か る に 太 子 義 疏 が 所 々 本 義 を 批 判 し て、 自 家 の 分 科 を つ く り 出 そ う と 努 力 し て い る 跡 の み え る こ と は、 太 子 も 亦 江 南 の 学 風 を 承 け て、 義 疏 の 主 力 を 科 経 に 注 が れ た か ら で あ り、 自 己 の 分 科 に よ つ て 経 典 を 読 む こ と こ そ、 真 に 経 典 を 理 解 す る 道 で あ る と 考 え ら れ た か ら に ち が い な い。 さ て、 こ れ を 前 置 き と し て、 次 に 両 疏 の 分 章 科 段 を 比 較 し、 太 子 義 疏 の 特 色 を 探 ぐ る と 同 時 に、 勝 髭 経 疏 ( 奈 93) が い か な る 学 系 に 属 す る も の で あ る か を 考 え て み た い。 ま ず 最 初 に、 両 疏 の 章 段 区 分 を 眺 め て み よ う。 (1) 第 一 表 を み る と 一 経 を 序 ・ 正 ・ 流 通 の 三 段 に 大 別 し、 正 説 段 を 十 四 章 に 分 け る 点 に お い て、 両 疏 そ の 軌 を 一 に し て い る。 凡 そ 釈 経 に 当 つ て こ の 三 分 法 を 用 い る こ と は、 道 安 に 始 ま り、 法 雲 に 至 つ て 定 型 化 し た と み ら れ る。 吉 蔵 の 宝 窟 に ﹁ 古 旧 相 伝 多 開 三 分。 謂 序 正 流 通 ﹂ と あ る の が、 そ の 間 の 消 息 を 伝 え て い る と み て よ い。 太 子 の 義 疏 に は、 ﹁ 夫 れ 大 聖 世 に 応 じ て 物 の 為 に 法 を 説 き た も う に、 経 巻 の 多 少 を 撰 ら ば ず、 明 理 の 深 浅 を 別 た ず、 皆 三 段 を 用 い て 説 を 為 す ﹂ ( 一 左) と あ つ て、 既 に 定 型 化 さ れ た 三 分 法 を そ の ま ま 受 用 さ れ て い る の で あ る。 し か し、 古 い 注 疏 に は 三 分 法 に よ ら ぬ も の が あ り、 例 え ば 僧 肇 の ﹃ 注 維 摩 経 ﹄ や、 敦 燈 発 見 の 勝 髭 義 記 な ど が そ れ で あ る。 (2) 次 に こ の 経 の 正 説 を、 十 四 章 に 分 け る か、 十 五 章 と す る か は 議 論 の あ つ た と こ ろ で、 宝 窟 を み る と、 吉 蔵 自 身 は 十 五 章 区 分 を 採 つ て い る が、 ﹁ 有 人 言 ﹂ と し て 十 四 章 区 分 を と る 釈 家 の あ つ た こ と を 記 し て い る。 今 現 伝 の 諸 注 疏 本 に つ い て み る と、 十 四 章 区 分 を と つ て い る の は、 当 面 の 奈 93 の 疏 と 敦 煙 発 見 の 勝 髭 経 疏 ( 奈 93) と 勝 蛋 経 義 疏 と の 比 較 ( 金 治) 三 九 五

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敦 煙 発 見 の 勝 壼 経 疏 ( 奈 93) と 勝 壼 経 義 疏 と の 比 較 ( 金 治) 三 九 六 太 子 義 疏 の 外 に 敦 燈 発 見 の 勝 髭 義 記 が あ る。 こ れ ら の 章 名 の 基 づ く と こ ろ は、 流 通 説 に ﹁ 仏 言。 比 経、 歎 如 来 真 実 第 一 義 功 徳、 ﹃如 是 受 持 ﹂ 以 下、 十 六 の 経 名 を 挙 げ て い る の を、 初 め か ら 順 次 章 名 に 割 り 当 て た も の で、 十 五 章 区 分 を と る 釈 家 は、 第 十 五 番 目 の 経 名 ﹁ 勝 髭 夫 人 師 子 吼 ﹂ ま で を こ れ に 当 て る の で あ り、 十 四 章 区 分 を 主 張 す る 釈 家 は、 こ の 第 十 五 の 経 名 に 該 当 す る 経 文 は な い と し て、 第 十 五 章 を 別 立 す べ き で は な く、 こ れ を 第 十 六 の 経 名 ﹁ 断 一 切 疑 決 定 了 義 入 一 乗 道 ﹂ と 併 せ て 一 経 全 体 の 経 題 と す べ き だ と す る の で あ る。 こ の 故 に 前 記 の 義 記 に は、 ﹁ 第 十 五 経 ( 名) 無 別 文 ﹂ と 簡 単 に 記 し、 太 子 義 疏 に は そ の 理 由 を 詳 し く の べ て い る ( 七 三 右)。 奈 93 に は 何 ら 説 明 す る と こ ろ が な い が、 同 じ 理 由 か ら と み て よ い。 (3) 次 に、 奈 93 に は 前 述 の 如 く 一 (第 繭 表) 勝 量 経 義 疏 勝 量 経 疏 ( 奈 93)

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応 正 説 を 十 章 に 分 け て は い る が、 如 来 蔵 章 と 法 身 章 と に つ い て は、 ﹁ 如 来 蔵 章 法 身 章 更 無 別 文。 即 是 前 歎 甚 深 及 勧 信 二 段 也。 附 明 以 顕 不 仮 別 出 也 ﹂ と し て 章 を 分 け ず、 実 際 に は 如 来 蔵 章 に 当 る 部 分 を 第 六 無 辺 聖 諦 章 に、 法 身 章 に 当 る 部 分 を 第 九 空 義 隠 覆 章 に 収 め て い る か ら、 事 実 上 は 十 二 章 区 分 で あ る が、 流 通 説 の 経 名 列 記 の 順 序 に 従 つ て 章 名 を つ け て い る か ら、 第 七 ・ 八 章 を と ん で 第 六 章 か ら 直 ち に 第 九 章 に 移 つ て い る の で あ る。 今、 太 子 義 疏 を み る と、 ﹁ 本 義 に 云 く ﹂ と し て、 ﹁ 如 来 蔵 章 法 身 章 更 無 別 文。 但 附 明 已 顕 不 仮 別 出 ﹂ と あ り、 奈 93 と 同 文 を 掲 げ な が ら、 そ れ に も 拘 ら ず、 第 七 の 如 来 蔵 章 と 第 八 の 法 身 章 と を 明 ら か に 区 分 し て、 事 実 上 の 十 四 章 区 別 を 確 立 さ れ て い る か ら、 こ こ に も 太 子 の 苦 心 が う か が え る。 し か し、 如 来 蔵 章 と 法 身 章 と を 経 文 の ど こ で 分 け る か に つ い て は、 古 来 釈 家 に よ つ て 異 説 ま ち ま ち で あ つ た ら し く、 宝 窟 を み る と、 古 旧 説 ・ 晩 講 説 ・ 曼 師 説 等 を あ げ た 上、 吉 蔵 自 身 は 古 旧 説 に よ つ て い る の で あ る。 こ れ ら を さ ら に 現 伝 諸 書 並 に 太 子 義 疏 と 比 較 し て み る の に、 部 分 的 に は 符 合 す る も の も あ る が、 全 面 的 に 一 致 す る も の が な い。 試 み に そ れ を 図 示 す る と 左 表 の 如 く で あ る。 こ の よ う に、 第 六 ・ 七 ・ 八 ・ 九 章 の 経 文 区 分 が 釈 家 毎 に み な 違 う の は、 実 は こ の 乗 境 段 に 限 つ て、 章 を は つ き り 分 け る こ と に 無 理 が あ る の で、 む し ろ 一 つ の も の と み て、 全 体 的 に 把 握 す べ き も の な の で あ る。 た だ 流 通 説 中 に 十 六 経 名 が 列 記 さ れ て い る た め、 各 釈 家 は そ の 順 序 を 追 う て、 分 章 す る の に 苦 心 し た も の と 思 わ れ る。 吉 蔵 の 如 き は 古 旧 説 に よ つ て、 第 七 を 法 身 章 と し、 第 八 を 如 来 蔵 章 と し て、 こ の 部 分 に 限 つ て 順 序 を 逆 に し て い る の で あ る。 し た が つ て、 今 こ れ ら の 分 章 の 中 で ど れ を 以 て 正 し い と す る か は、 判 定 の 基 準 が な い。 た ( 第 二 表) 勝 髭 経 1 世 尊 声 聞 縁 覚 初 観 聖 諦 以 下 2 聖 諦 者 説 甚 深 義 以 下 3 何 以 故 此 説 甚 深 如 来 之 蔵 以 下 4 如 来 蔵 者 是 如 来 境 界 以 下 5 若 於 無 量 煩 悩 蔵 以 下 6 世 尊 過 於 恒 沙 不 離 以 下 7 世 尊 如 是 如 来 法 身 不 離 以 下 8 世 尊 如 来 蔵 智 是 以 下 9 世 尊 有 二 種 如 来 蔵 空 智 以 下 ( 註) (6) ⋮ ⋮ 第 六 無 辺 聖 諦 章 (8) ⋮ ⋮ 第 八 法 身 章 (7) ⋮ ⋮ 第 七 如 来 蔵 章 (9) ⋮ ⋮ 第 九 空 義 隠 覆 章 敦 煙 発 見 の 勝 壼 経 疏 ( 奈 93) と 勝 堂 経 義 疏 と の 比 較 ( 金 治) 三 九 七

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敦 燈 発 見 の 勝 髭 経 疏 ( 奈 93) と 勝 量 経 義 疏 と の 比 較 ( 金 治) 三 九 八 だ こ こ で 注 意 す べ き は、 太 子 義 疏 に い う 本 義 説 と 奈 93 の 分 章 の 態 度 が 一 致 し て お り、 し か も そ れ が 既 に の べ た よ う に 他 の 疏 家 と 可 な り 異 る 特 色 を も つ て い る こ と で あ る。 そ し て、 そ れ ら が 不 思 議 に も 僧 曼 説 と 一 致 し て い る と こ ろ を み る と、 奈 93 の 勝 髭 経 疏 は 或 は 僧 曼 の 講 述 本 で は な か ろ う か と 思 わ れ る。 (4) 次 に 太 子 の 義 疏 で 問 題 に な つ て い る の は、 真 子 章 の 取 り 方 で あ る。 即 ち 義 疏 に は、 ﹁ 本 義 云。 従 若 我 弟 子 以 下、 入 真 子 章。 就 中 有 二。 第 一 如 来 但 挙 信 順 二 忍、 故 名 為 略 明 真 子。 従 此 下、 勝 壼 備 挙 三 忍、 故 名 為 広 明 真 子。 而 如 来 欲 以 此 経 推 功 於 勝 展、 故 但 略 明 信 順 二 忍、 合 為 勝 髭 真 子 章 也。 随 欲 可 用 ﹂ (七 〇 右) と あ る。 こ れ は 太 子 自 身 が ﹁ 爾 時 勝 髭 白 仏 言 更 有 大 利 益 ﹂ 以 下 を 真 子 章 と し て 別 立 し、 そ れ 以 前 を 第 十 三 自 性 清 浄 章 と す る 立 場 を 取 り な が ら、 さ ら に 本 義 説 を 引 い て、 そ れ を 取 る も ま た よ し と さ れ る の で あ る。 こ こ に い う 本 義 説 は、 大 体 奈 93 の 中 に 含 ま れ て い る 文 と 一 致 す る が、 そ れ に よ る と ﹁若 我 弟 子 ﹂ か ら ﹁ 有 是 大 利 益 不 諺 深 義 ﹂ ま で を、 ﹁ 第 一 仏 略 説 真 子、 但 明 信 順 二 忍 也 ﹂ と し、 ﹁ 爾 時 勝 髭 ﹂ か ら 以 下 を ﹁ 第 二 勝 鷺 広 説 真 子 備 明 三 忍 也 ﹂ と し て 三 段 に 分 け、 前 後 合 わ せ て 第 十 四 真 子 章 と し て い る の で あ る。 し か る に、 太 子 が 何 故 本 義 と 異 な る 分 章 の 立 場 を と ら れ た か と い う と、 本 義 が 経 文 第 一 段 の ﹁ 随 信 信 増 上 ﹂ を 信 忍、 ﹁ 随 順 法 智 ﹂ を 順 忍 と 解 し た の に 対 し て、 ﹁ 而 る に 疑 う ら く は 只 順 忍 章 門 の み な ら ん。 随 信 信 増 上 と は 只 是 れ 順 ( 忍) の 本 を 挙 ぐ る な り ﹂ と 解 せ ら れ た か ら で あ ろ う。 即 ち 太 子 の 理 解 で は、 後 段 の ﹁ 爾 時 勝 髭 ﹂ 以 下 で、 始 め て 信 ・ 順 ・ 法 の 三 忍 が 説 か れ る の で あ り、 こ の 三 忍 を あ わ せ て 真 子 と 呼 ぶ き で あ る と い う こ と で あ ろ う。 と す れ ば、 そ の 後 段 こ そ 真 子 章 と す る に ふ さ わ し い と い う こ と に な る。 な お、 こ の あ た り の 分 章 区 分 も 釈 家 に よ つ て 異 説 あ り、 表 示 す る と 次 の 如 く で あ る。 こ れ を み る と、 太 子 義 疏 の 分 章 と 敦 煙 発 見 の 勝 髭 義 記 の そ れ と が ほ ぼ 一 致 し て い る こ と が わ か る。 但 し 義 記 の 場 合、 義 ( 第 三 表) 勝 量 経 1 世 尊 如 来 蔵 者 是 法 界 蔵 以 下 2 若 我 弟 子 随 信 以 下 3 爾 時 勝 髭 白 仏 言 更 有 大 利 益 以 下 4 爾 時 勝 髭 与 諸 春 属 以 下 5 爾 時 世 尊 放 勝 光 明 以 下 ( 註) (13) ⋮ ⋮ 第 十 三 自 性 清 浄 章(14) ⋮ ⋮ 第 十 四 真 子 章 (15) ⋮ ⋮ 第 十 五 勝 髪 師 子 吼 章 流 ⋮ 流 通 説

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疏 と ち が う と こ ろ は 流 通 説 を 別 立 し て い な い こ と で あ る。 し た が つ て、 序 ・ 正 ・ 流 通 の 三 分 法 に よ ら ず に、 直 ち に 全 経 を 十 四 段 に 分 け た も の と 思 わ れ る。 そ れ か ら 十 四 段 に 分 け て は い る が、 各 段 に 章 名 を つ け ず、 た だ 各 段 の 最 初 の 一 句 を 掲 げ て、 そ れ が 第 何 段 の 経 に 当 る か を 記 す に す ぎ な い。 例 え ば、 ﹁ 是 法 界 蔵 者、 是 第 十 三 経 名 也 ﹂ ﹁ 更 有 余 大 利 益 者、 第 十 四 経 名 也 ﹂ と あ る だ け で、 ﹁ 自 性 清 浄 章 ﹂ と か ﹁ 真 子 章 ﹂ と か と 名 づ け る こ と を し て い な い。 こ れ は 経 疏 と し て は、 余 程 時 代 の 古 い こ と を 物 語 る も の で あ つ て、 末 尾 に は ﹁ 正 始 元 年 二 月 十 四 日 写 詑 ﹂ と あ り、 そ れ は 西 紀 五 〇 四 年 に 当 る か ら こ の 書 の 著 作 は そ れ 以 前 と い う こ と に な る。 し た が つ て、 太 子 が こ の 疏 を み ら れ た と は 考 え ら れ な い。 経 文 の ﹁ 随 信 信 増 上 ﹂ を 解 し て ﹁ 上 品 信 忍 也 ﹂ と し、 ﹁ 随 順 法 智 ﹂ を ﹁ 順 忍 人 也 ﹂ と 釈 し て い る の は、 明 ら か に 信 ・ 順 二 忍 を 分 け て 考 え て い る の で、 太 子 が ﹁ 随 信 信 増 上 者 只 是 順 ( 忍) 本 也 ﹂ と い わ れ る の と は ち が う。 恐 ら く 太 子 は、 こ の 疏 と は 関 係 な く、 独 自 の 立 場 で 分 章 せ ら れ た の で あ ろ う。 な お こ の 義 記 は、 前 に も の べ た よ う に、 ﹁ 第 十 五 経 無 別 文 ﹂ と し て、 十 四 段 ( 章) 区 分 を 正 当 と し て い る 点、 太 子 義 疏 な ら び に 奈 93 と 一 致 し て い る の で、 或 は 奈 93 の 勝 髭 経 疏 の 釈 家 が、 こ れ を 参 考 に し た と 考 え ら れ ぬ で も な い 宝 窟 に ﹁ 有 人 言、 唯 十 四 章。 第 十 五 無 別 体 ﹂ と あ る の は、 或 は こ の 義 記 を 指 し て い る の か も し れ な い。 (5) 次 に、 奈 93 に 比 し て 太 子 義 疏 の 大 き な 特 色 と も い う べ き 点 は、 前 者 が 正 説 段 を 分 け て 直 ち に 十 四 章 と す る に も 拘 ら ず、 太 子 が 正 説 段 を さ ら に 乗 体 ・ 乗 境 ・ 御 乗 人 の 三 段 と し、 そ の 中 第 一 段 の 乗 体 を さ ら に 自 分 行 と 他 分 行 と に 分 け、 第 二 段 の 乗 境 を ま た 総 と 別 と に 二 分 し て お ら れ る 点 で あ る。 ( 第 一 表 参 照)。 そ れ で は こ の よ う な 体 系 的 把 握 が、 果 し て 太 子 の 独 創 に よ る も の か ど う か と い う こ と で あ る が、 こ れ に つ い て 大 正 大 蔵 経 (古 逸 部) 所 収 の 敦 煙 発 見 の 勝 壼 経 疏 を み る と、 次 の よ う な 構 造 把 握 を 行 つ て い る こ と が わ か る。 ﹁ 正 説 ﹂ と い 勝 髭 経 -一 序 説 二 経 之 正 体 -1 乗 之 体 行 (第 一 -五 章) 2 乗 之 境 (第 六 i 十 三 章) 3 受 行 之 人 ( 第 十 四 ・ 五 章) 三 流 通 説 う 代 り に ﹁ 経 之 正 体 ﹂ と い つ て い る が、 こ れ を さ ら に ﹁ 乗 之 体 行 ﹂ ﹁ 乗 之 境 ﹂ ﹁ 受 行 之 人 ﹂ の 三 段 に 分 け て い る の は、 太 子 義 疏 と 殆 ど M 致 す る。 し か し、 太 子 義 疏 の よ う に、 乗 体 を 自 分 行 ・ 他 分 行 に、 乗 境 を 総 ・ 別 の 二 つ に 分 け る こ と は し て い な い。 し た が つ て、 太 子 の 義 疏 は こ の よ う な 体 系 的 構 造 把 握 を、 前 述 の 勝 量 経 疏 か ら 学 び、 さ ら に そ れ を 発 展 さ れ た の か も し れ ず、 こ の 点 同 経 疏 や 奈 93 に 比 し て 勝 れ た 特 色 が 窺 え る。 そ れ で は 太 子 が こ の 勝 髭 経 疏 を み ら れ た か ど う か と い う こ と で あ る が、 摂 受 正 法 章 の ﹁ 得 衆 生 宝 ﹂ の 解 に つ い て 四 家 の 説 を 挙 げ ら れ た 中、 第 三 家 の 説 が こ の 経 疏 の 解 釈 と 一 致 し て お 敦 燈 発 見 の 勝 蛋 経 疏 ( 奈 93) と 勝 量 経 義 疏 と の 比 較 ( 金 治) 三 九 九

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敦 燵 発 見 の 勝 量 経 疏 ( 奈 93) と 勝 壼 経 義 疏 と の 比 較 ( 金 治) 四 〇 〇 り、 こ れ は 奈 93 に も 引 用 し て い な い 文 で あ る と こ ろ か ら み て も、 或 は こ の 書 を 参 考 に せ ら れ た の で は な か ろ う か と 推 定 さ れ る。 (6) 次 に 太 子 義 疏 の 本 義 並 に 奈 93 が い か な る 学 系 に 属 す る も の で あ る か と い う こ と で あ る が、 わ た く し の 考 え を 卒 直 に の べ る な ら ば、 前 に も 少 し ふ れ た よ う に、 そ れ が 南 北 朝 時 代 江 南 の 学 系 に 属 す る も の で あ る こ と は、 ま ず 間 違 い が な い と 思 う。 し か も 奈 93 に み る ほ ど の 内 容 整 備 し た 勝 壼 経 疏 の 講 述 ま た は 撰 述 で き る 人 と な る と、 よ ほ ど 勝 れ た 学 僧 で あ つ た に 相 違 な く、 そ う す る と 江 南 の 染 代 に 勝 髭 経 の 研 鎖 を 以 て 名 を な し た 荘 厳 寺 の 僧 曼 が ま ず 思 い 出 さ れ る。 そ こ で 注 意 し て 調 べ て み る と、 既 に の べ た よ う に 乗 境 段 の 分 章 の 取 り 方 に 於 て、 奈 93 と 僧 曼 説 と が 一 致 し て い る 外、 七 地 八 地 の 分 判、 摂 受 正 法 の 階 位、 四 種 生 死 説、 十 八 界 観 釈 等 重 要 な 部 分 に お い て も 両 者 の 類 同 を 見 出 す こ と が で き る の で あ る。 こ れ ら の 問 題 に つ い て は、 い ず れ 機 を み て 発 表 し た い と 思 う が、 現 在 わ た く し と し て は、 奈 93 の 撰 述 者 を 僧 曼 か ま た は そ の 学 系 に 結 び つ け て 考 え る の が 最 も 妥 当 で は な い か と 思 つ て い る。

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