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ビッグバン元素合成とダークエネルギーの進化

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

ビッグバン元素合成とダークエネルギーの進化

一政, 遼太郎

https://doi.org/10.15017/1806810

出版情報:Kyushu University, 2016, 博士(理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

(様式6-2)

氏 名 一政 遼太郎

Big Bang Nucleosynthesis and Evolution of Dark energy

ビッグバン元素合成とダークエネルギーの進化

論文調査委員 査 九州大学 教授 氏名 橋本正章 査 九州大学 准教授 氏名 寺西 査 九州大学 准教授 氏名 成清

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

ビッグバン理論に基づく標準宇宙モデルは,近年の観測精度の飛躍的な向上により,多くの現 象を再現しうる理論として確立している.代表的な観測として,我々が現在直接観測可能な最も古 い時代の情報であるWMAP衛星やPlanck衛星による宇宙背景放射の観測(赤方偏移: z ~1100),そ してIa型超新星を用いた宇宙膨張の観測(z <1.4),ハッブルパラメータH0の観測(z <0.15),また 宇宙初期(z ~109)に起こるビッグバン元素合成(BBN)によって合成される軽元素の観測量がある.こ れらの観測により,現在の宇宙の組成のうち,我々のよく知っているバリオン物質はおよそ 4% か存在せず,残りは 28%のダークマターと 68%のダークエネルギー(DE)に支配されていることが 明らかとなった.宇宙進化や元素の進化を正しく記述するためには,これらの成分の時間進化を正 確に予測することが必要となる.したがって,より詳細な観測や理論的解析が必要とされている.

まず,宇宙初期に起きる BBN において特に重要なのは,ヘリウムや重水素の観測量である.こ のうちヘリウム4に関するものは観測の不定性に加え,銀河の化学進化モデルを用いて宇宙初期の 量を評価しているため不定性が大きく,解析グループによって結果が大きく異なる.一方,重水素 の量は銀河形成が始まった頃の原始銀河であるクエーサーからの吸収スペクトルから推定されてお り,高い精度で決まっている.これらBBNで合成される軽元素の量を理論的に予測するためには,

中性子の半減期を含めた核反応率や,ニュートリノ数などを精度よく決定する必要がある.

一方,現在近傍の宇宙ではDEが支配的になっており,宇宙進化を特徴づけるため,その性質を 明らかにすることは現代宇宙論における重要な課題の一つである.DE の候補として理論的に予測 されているものはいくつかあり,その一つに宇宙項が存在する.これはアインシュタインによって 導入された静的なモデルである.また,他の候補として,クインテッセンス場やファントム場とい った動的なモデルも提案されている.このように,スカラー場のダイナミクスによってDEの特徴 を記述する方法があるが,修正重力場理論,状態方程式を用いることでも,同様に特徴づけること もできる.

近年では,ガンマ線バースト(GRB) DEの性質に対する制限への利用可能性について多くの議 論がなされている.従来Ia型超新星を用いることで極近傍の場合の性質に対して制限が加えられて きたが,GRB を用いることができれば,赤方偏移にしておよそ7倍も広い範囲(z < 10)の情報を使 用した制限を加えることができる.

本研究では,BBN期におけるヘリウム4に対してIzotov et al.(2013) Aver et al. (2013)の観 測値,重水素の観測値にCooke et al.(2014)のものを採用した.また,BBN計算の核反応率には,

最新の実験値を用いた天体核反応率(NACRE-II),中性子の半減期には 880.1±1.1 s を用い解析を

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行った.この結果,Aver et al.(2013)の観測値を採用すると標準宇宙モデルで再現できた.しかし ながら,Izotov et al.(2013) の観測値を信頼する場合,BBNの観点からバリオンの数密度を一意に 決定することができない事が明らかとなった.我々は,電子ニュートリノの縮退パラメータを考慮 したモデルを採用し計算を行った.この結果,1σ信頼度で縮退パラメータは非ゼロの値を取りう る事が明らかとなった.

第二に,低赤方偏移の宇宙におけるダークエネルギーの性質を明らかにするため,一般化された 状態方程式を採用することでDE の密度進化を調査した.さらに,Ia型超新星爆発と GRBの観測 値を用いることで状態方程式の時間進化に対して制限を加える事ができた.その結果,ファントム からクインテッセンスへと振る舞いが変化するDEのモデルは除外されることが分かった.

以上の結果は、現段階における最新のビッグバン元素合成の計算と観測とを比較することにより 得られたものである。また数多くの観測データをもとにした暗黒エネルギーの時間的進化の研究は 宇宙の構成物に関して新たな発展を与えるユニークかつ価値のある業績であると判断できる。よっ て、本研究者は博士(理学)の学位を受ける資格があるものと認める。

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