大学公開 講座の あり 方に づ い て
‑ 公開講座の アンケ ー ト調査 の分析から ‑
大場 範明
( 平 成2 年1 0月3 0 日受理)
要 旨
本稿は, 大 学 開 放事 業の 一 つ である大 学公開 講座に関して, 全 国 的な概 況 を把握 すると 共に本 学
にお ける公開 講座の受 講生像を通して地 域社 会から求めら れて いる大 学 開放のあ り方を検 討 するた めの資料 を 提供 すること を 目的と している。
全 国 的に み ても 大 学公開講座の講座 開設 数, 講座 内容の多様 化は, ここ数 年で頭打ち 状態に達し た観があり, 分 野で は国立大 学の 「職業専 門」 を内容の柱と した講座 数が増えつ つ あ る事 実 か 指摘
でき る。 また, 本 学に おけ るアンケ ー ト調査 の結 果からも, 受 講生 は大 学に「実用的知 識を 身に つ け」 かつ 「仕事に役立つ」 講座 を強 く 望ん でい る様子がうか がえ る。 こ の ことを踏 ま え, 今 後の本 学の公開講座では, さ らに 「職 業 専 門」 技術 を重視し, 受 講生 (企業人) が体系的・継 続 的な講 座 受 講が可能と なる講 座企画プロ グ ラムを提 案 する。
/
キ ー ワ ー ド
大 学 開放, 生 涯学習, 学習 社会, 大 学公開 講座, 企業 内教 育
1 は じ めに
い
今日, 我が国の学 習 社 会の形 成は, 教 育が 学校 や 社 会教 育機 関のみ で行 わ れるのでなく,
2)
知 識産 業, 特に情報 産業と教 育 産業の発 展に よっ て, 知 識 や 技能が学校以 外でもいく らで
も 獲得できるようにした。 また, 企業に おけ る従 業月各層‑ の教 育 (企 業 内教 育) や各種
の事業 所が行う 情報サ ー ビ ス なども多種多様
で, 我々 に多くの学習機会 を提供 してく れて
3‑5)
いる。 こ のような 生 涯 学 習の時 代と呼ぶ に ふ さ わしい社 会の中で 「大 学 開 放」 を 考 えて み る と, 大 学はその地 域 社 会に お いて, 他の教 育 機 関に比べ て は る か に多くの, しかも 質の 高い教 育 的 財 産 を 保有して い る。 施 設, 設 備, 最 新の研 究デ ー タ および研 究や教 育に必 要 な 短 期大 学 開放センタ ー
各種資料, また多くの専門家集 団を 抱 えてい る。 こ のような大 学の持つ教 育 的財産や教 育 機能を広く 社 会に開放する と いうこと は, 大 学が これからの生 涯教 育のま さに中核的機 関
とな りうることを 示唆して いる。 また, 地 域 社 会からの期待も 大 きい。
本 学もこ のような生 涯学習の時代に広く 地 域 や 社 会 に対して開かれた短期大学の 「モデ
ル」 となる ことをめ ざ して昭 和5 8年1 0月に創 設 さ れた。 その特 色は, 設 置された学科構成,
実 践 的 な職 業 専 門教 育 をねらいとする教 授 陣,
授 業 形 態, 那 ) キュ ラム編 成, 積 極 的 な社 会 人入学 制 度 など にも 現 れて い る。 その中でも 特 徴 的 な こと は, 関 学 当 初から 大 学 開 放セ ン
タ ー を 設 置 して い ること である。 地 域に開か れ た大 学として教育 ・ 研 究 活 動と共に開 放 事
98
( 講 座)
3 0 00
開設 講 座数 国立大学: ○ 公 立大学 : △ 私 立 大 学 : □
= こ
ロ ロ
i.: .. ∴ 〇 I‑‑ I‑ ‑‑〇‑‑÷ =L こ こ
LL
IA‑̲.A 一 心・止 血・
‑ A‑‑ A‑ ‑A I‑A‑‑ 血・ ‑TA
大 場 範明
( 千人)
3 00
1 00
51 5 2 53 5 4 5 5 56 5 7 5 8 5 9 6 0 6 1 62 6 3 ( 年 度)
受 講者数 国立 大学: ○ 公 立大学: △
私立大学: □
=
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ニ
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51 52 53 5 4 5 5 5 6 5 7 58 59 6 0 6 1 62 6 3 ( 年 度)
6)
図1 国公 私 立大 学別 大 学公開講座の開設講座数と受 講者 数の推移 業 を 本 格 的, 積 極 的に行うべく 性 格づけ ら れ
た組 織 を もっ て出 発 して い る。
本 稿で は, 開放 事業のうち特に大学公 開 講 座に関する現 状 を 概 観 し, さらに, 本 学での 公 開 講 座の実 績の 一 面 を 示すと思われる受講 生による評価, 即 ち 受 講 生の アン ケ ー ト 調 査 等に基づき, 本学に おける今 後の公 開 講 座の 方 向 を 考 える と共にその問 題 点につ い て検 討 する。
2 大学公 開講座の概況
現 在, 全国で実施さ れてい る大学 開放 事業
に は, 夜 間 部( 定 時制) ・通 信教 育, 社 会 人 入 学制度, 聴 講 (研 究) 生 制 度, 共 同 研 究 員 ・ 受 託 研 究 月制度, 公 開 講 座 など がある。 これ
らの事業は, い ずれも 社 会が生 涯 学 習 社 会 へ 移 行 する中で, 時 間 的 余裕が乏 しく, 学 習 歴
や 日常の学 習 環 境, 知 識, 経 験 等が異 なっ た 社 会 人 (特に有職 者) に多様 な学 習 機 会 を 与
えて い る と いえる。
特にこ の 中で, 大 学に おける公 開 講 座は,
大 学の学 術 研 究 。 教 育の成 果 を 直 接 社 会に開
放し, 地 域 住 民 ・ 成 人 一 般に高度な学 習の機 会 を 提 供する目 的で実 施されて い るものであ
る。
次に全国的 な 概 況 をこ こ1 0数年につ い てな が め て み る。
① 年度別 実 施 状 況
昭 和5 1年度か ら昭 和6 3年度までの講 座 開 設
6)
状 況 (図1) をみ る と, こ の1 3年 間に開 設 大 学 数 は, 約2 .7倍の3 7 0大 学とな り, 開 設 講 座 数は約4 .0倍の2 ,8 4 0 講 座にものぼ っ てい る。
受 講者の延べ 人数は約4 .7倍の約3 7万 人, その ほ と ん ど が成 人と推 定される。 特に, 国民が
「物の豊か さ」 よ り も 「心の豊か さ」 を 重 視す
7】
る傾 向が年々 強 まっ てきた昭 和53年 以 後, そ れ に とも なっ て講 座の 開 設 数 ・ 受 講 者 数 も 伸 び てきており, こ こ 2 年 間では や や頭 打ち状 態になっ た とも 推 定 できる。 受 講 者 数, 開 設 時 間 数につ いて昭 和6 3年 度の資 料 を 参 考にす れ ば, 一 講 座 当 りの受 講 者は13 0 .1 人, 開 設 時 間 数が 1 5 .1 時 間となっ て いる。 しかし 開 放 事 業として系 統 的 ・ 組 織 的 な公開 講 座 を 実 施 す
る大 学の数は少 ない もの と思わ れ る。
また, こ の数字は国公 私 立3 7 0大 学につ い ての
統 計 資料であ り, 内容に関して国公 私 立大 学
のそ れ ぞれ につ いて検 討 を 加 える と, その目 的とする ところ に若干の違いがあること がわ か る。
国立 大学で は,
一 講 座 当 りの開設時間数が 2 0 ‑ 2 5時 間, 受 講者 数は6 0 ‑ 8 0人に対して公 立, 私 立の大学で は, 開 設時間数が0 ‑ 5時間,
受 講者 数は1 0 0 ‑ 2 0 0人となっ てい る。 講 座の 形態や方法に かな り 違いがあること が分か る。
( 資料2 ‑ 4)
つ ま り 公 立, 私 立の大学で は, 成 人 一 般に よ り広くか つ啓蒙的に学習の機会 を与えて い るのに対して, 国立 大学で は, 学習対 象者を 絞 っ た実務的 な 講 座 を核として実施さ れて い
る様子がうか がえる。
つ ぎに, こ の違いを 講 座 内容に求め て みよ う。
② 講 座 内容
大学の公開講 座は, 地 域の成 人の 多様な 学 習ニ ー ズ に応 えるべ く, その内容はス ポ ー ツ
,
趣 味∴語学, 郷土, 家庭 生 活, 健康 ・ 保健,
教 養, 専門 職 業等, 多岐に わ た っ てい る。
夷施されて い る講 座 内容につ い て, 昭 和6 0,
6 2, 6 3年度および平成元 年度 (表1) の資料
を参考にする と, こ こ数 年の国立大学の行 う 公開講 座の内容に顕 著 な特徴がある。 以前よ り国立 大 学で は, 公立, 私立の大 学に比べ て
一 講 座 当 りの講 座 開 設時間(2 1 .5時間), 受 講 者数 (6 0 ・3 人) に お いてみ る と おり 少 人 数 を 対 象に時間 をかけた講 座が多く,
「専 門職 業」
分 野での講 座 比率も割り あい高か っ たのだ が,
そ れでも 「教 養」 が主 流であっ たのに対して 平 成 元 年度で は,
「専門職業」3 1% ,
「教 養 等」
1 9% と 「専門 職 業」 対 「教 養」 の比率が逆 転 し, 職 業 人 を 対象としたその職 業能力の向上 を 目 的とする講 座開設がトッ プを 占め る に至
っ て い る。 近年の社 会に おける所 得水 準の向
上, 自 由時間の増 大, 高学歴 化および人口構 成の変化 など から, 人々 の各 時期, 各領域に おける学習意欲の高ま り や 内容の高度化, 多 様化 など から学習 需 要がよ り高 度に職業専門 的 な もの ‑ と変 化 した現 れで はないだ ろうか。
また違 っ た見 方 をすれば, あ ま りにも 大学公 開 講 座が量 的 ・ 質的に多様化 しすぎて他の教 育機関の行う講 座との競 合が激 し く なっ てき たこ とへ の対 策として, 大 学で最も得 意とす る基 礎 専 門分 野で地 域 社 会 へ の貢 献 を 模 索 し 始め た現れ とも 思 わ れる。
また,
「教 養」,
「 スポ ー ツ」,
「趣 味」 とい っ
表1 全 国大 学公開 講座の内容 ( 資 料: 大 学 資 料, 文部 省)
区 分年度 スポー ツ 趣 味 語 学 郷 土 家畢生括 健康.保健 教養等 専門職業 合 計
国立大学
団 133(22.7) 54(9 .2) 4(0.7) 20(3 .4) 5(0.9) 29(4 .9) 223(38.0) 121(20.6) 田 回 130(19.4) 52(7 .8) 9( 1.3)、 41(6 .1) 10(1.5) 49(7 .3) 243(36.3) 137(20.4) EEg Bl 136(19.3) 53(7 .5) 21(3.0)
㌔ 41(5.8) 12(1.7) 49(7 .0) 246(34.9) 149(21 .1) EEL
元 128(18.6) 68(9.9) 23(3 .3) 38(5.5) 29(4 .2) 58(8.4) 128(18.6) 2 16(31 .4) E蔓国
公立大学
田 6(3 .9) 9(5.8) 7(4 .5) 7(4.5) 3( 1.9) ll( 7.1) 113(72.9) 6(3 .9) EⅠ司
62 7(3 .6) 8(4.1) ll(5 .6) 7(3.6) 1(0 .5) 20(10.2) 125(63.8) 18(9.2) EE3 Bl 6(3 .3‥ 5(2.7) 4(2 .2) 7(3.8) 1(.0 .5) 16(8.7) 125(68 .3) 19(10.4) 183 私立大学
団 36(2.3) 190(12.0) 78(4.9) 34(2.2) 39(2 .5) 67(4.2) 997(63 .1) 152(9.6) \ 1,5 79
団 55(2.7) 188(9 .1) 155(7.5) 43(2 .1) 35(1.7) 77( 3.7) 1353(65 .5) 175(8.5) 2 065
Bl 53(2.7)・ 98(5 .0) 160(8.2) 39(2 .0) 34(1.7) 87(4 .5) 1288(66.0) 211(10 8)
I
E R A■
(注) 2 つ以 上の内容をもつ ものは, そ れ ぞ れに 1 講 座と数えてい る○ また, 昭和63年 度につ いては 生 涯学習 振 興 課 よ り直接 資料を 頂 いたo
さ らに, 平 成元年 度 国立大 学分につ い ては, 「文部 広 報No・85 8」 平 成元年6 月20 日を参 考と した。
1 ()() 大 場 範明
( 資 料1)
全 国 大 学公開講 座の開 設状況 ( 資料: 大 学 資料, 文部 省)
大 学 資料に は, 国立, 公 立, 私 立別に詳 し く解 説してあるが, こ こ で は, 全体 的把握 を する た め に その合 計 を読み取り表 を作 成してある。
年 度 開 設 大学 数 開 設 講座 数
1 講座 当 1 講座 当 1 講座 当
S 5 1 1 3 7 7 1 1 4,9 2 7 6 .9 1 3,8 8 6 1 9 .5 約7 8,0 00 約11 0
5 2 1 6 2 6 8 4 6 ,7 3 7 9 .8 1 8,8 02
●
2 7.5 8 1,0 0 0 1 20 5 3 1 7 5 7 5 3 8 ,0 31 1 0 .7 2 3 ,2 7 7 3 0 .9 1 2 0 ,0 0 0 1 5 9 5 4 2 0 1 1 ,1 8 1 1 0 ,0 2 5 8 .5 2 5 ,4 8 4 2 1 .6 1 1 3 ,4 6 2 9 6 .1 5 5 2 4 5 1 ,2 7 7 8 ,2 1 1 6 .4 2 9 ,3 8 2 2 3 .0 1 4 8 ,2 0 3 1 1 6 .1 5 6 2 5 9 1 ,4 7 9 * ** * * * 26 ,4 7 7 1 8 .5 21 0 ,2 6 5 1 4 2 .2
5 7 2 7 6 1
,7 9 2 * ** * * * 2 8,3 9 6 1 6 .4 2 61 ,7 9 7 1 4 6 .6 5 8 2 91 1 ,8 95 * ** * ** 2 7,5 6 1 1 4 .9 2 1 5 ,7 88 1 1 3.9 5 9 3 0 8 2 ,1 62 ** * * * * 3 0,9 67 14 .7 2 4 9 ,3 9 9 1 1 6 .3 6 0 3 2 0 2 ,3 21 ** * * ** 3 4,6 84 1 4.9 2 6 1 ,5 1 7 1 1 5 .5 6 1 3 3 8 2 ,5 1 1 ** * * ** 3 8,9 7 0 1 5.5 3 3 0 ,4 8 6 1 3 1 .8 6 2 3 5 1 2 ,9 3 1 ** * * ** 4 2 ,3 7 6 1 4.5 36 3 ,1 8 5 1 2 3 .9 63 3 7 0 2 ,8 4 0 ** * * ** 42 ,7 9 0 1 5 .1 3 69 ,4 9 5 1 3 0 .1
( 資料2)
国立大 学公開 講座の開 設状況 ( 資料: 大学 資料, 文部 省)
年 度 開設 大 学数 開設講座 数
1 講 座当 1 講 座 当 1 講 座 当
S 51 6 4 32 2 2 ,5 3 9 8 .0 8 ,0 8 1 2 5 .0 約2 2 ,0 0 0 約 7 0
5 2 6 4 32 2 2 ,8 1 5 8 .7 8 ,3 7 6 2 6 .0 2 0,0 0 0 6 0
5 3 6 3 3 13 2 ,5 7 6 8 .2 8 ,30 1 2 6 .5 1 9 ,00 0 6 1
5 4 7 0 3 5 3 2 ,93 1 8.3 9 ,0 9 0 2 5.8 2 3 ,2 6 6 6 5.9
5 5 72 3 8 1 3 ,1 34 8 .2 9 ,3 0 6 2 4.4 2 6 ,1 3 2 6 8.6
5 6 7 8 4 2 9 ** * * ** 1 0 ,3 5 8 2 4.1 3 0 ,5 1 5 7 1 .1
5 7 7 8 51 0 ** * * ** 1 0 ,2 6 2 2 0 .1 34 ,3 7 4 6 7 .4
5 8 8 0 5 4 3 ** * * ** 1 2 ,6 7 1 2 3 .3 3 4,8 5 8 6 4 .2
5 9 8 3 5 8 1 ** * ** * 1 2,8 04 22 .0 3 3,1 39 57 .0
6 0 84 5 8 7 * ** * * * 1 2,6 2 0 2 1 .5 3 3,51 9 5 7 .1
61 8 7 6 5 4 * ** * * * 1 4
,2 9 0 2 1 .9 3 9 ,0 4 3 5 9 .4
62 8 7 6 7 0 * ** * * * 1 4 ,4 1 4 2 1 .5 4 0 ,4 0 3 6 0 .3
6 3 8 7 7 05 * ** * * * 1 5 ,1 3 2 2 1 .5 3 9 ,7 5 2 56 .4