消費者商品の売買及び品質保証に関するEU指令(一
) : その制定過程とドイツ法への影響を中心とし て
その他のタイトル Directive EC of the sale of consumer goods and associated guarantees (1) : centering around the legislative process and the effect on German Law
著者 今西 康人
雑誌名 關西大學法學論集
巻 50
号 1
ページ 50‑91
発行年 2000‑04‑15
URL http://hdl.handle.net/10112/00023615
序
一序 二指令の制定過程と同指令の内容 1指令原案提案までの経緯 2 E u
指令原案の内容
3 E u
指令の内容
4本指令の制定過程における議論の概観︵以上︑本号︶
5本指令の特徴
三 ド イ ツ 法 へ の 影 響 四 結 び
一九九九年五月二五日︑欧州議会及び閣僚理事会は﹁消費者商品の売買及びこれに付帯する保証の一定の局面に関
今
ー そ の 制 定 過 程 と ド イ ツ 法 へ の 影 響 を 中 心 と し て
1
西 康
消費者商品の売買及び品質保証に関する
E
u
指令
五〇(
‑
︶
︵ 五
0)
人
消 費
者 商
品 の
売 買
及 び
品 質
保 証
に 関
す る
Eu
指令(‑)
趣 旨
で あ
る ︒
五
︵ 五 一 ︶
(1 )
する欧州議会及び閣僚理事会指令﹂︵以下︑本指令と略称する︶を出し︑加盟各国に対し二
0
0
二年一月一日までに
本指令が要求する内容の国内法を立法化することを求めている︒本指令の目的はその第一条に明記されているとおり︑
動産である消費者商品の売買及びこれに付帯する商品品質保証︵具体的には売主の法律上の瑕疵担保責任・品質保証
[ l e g
a l g
u a
r a
n t
e e
] 責任及び約定保証[
c o
m m
e r
c i
a l
g u
a r
a n
t e
e ]
)
に関して消費者保護を実現すべくミニマムの保護
基準を引上げると共に︑域内市場を秩序に従い適切に機能させることにある︒そのために︑本指令は加盟国の右事項
に関する権利規定及び行政規則を平準化させることを命じている︒すなわち︑物の自由な移動は商取引のみならず消
費者取引にも関わり︑消費者が共通のルールに基づき
Eu
域内のどこでも自由に商品を購入できることが要求される︒
しかし︑現状では消費者商品に関する法制が加盟国間で異なり︑その結果︑各国の消費者商品の市場が互いに異なり︑
売主間の競争が阻害されている︒他方︑情報技術の飛躍的発達により自国以外の他の加盟国からより有利な条件で商
品の購入を熱望する消費者にとっても︑消費者商品の売買及びこれに付帯する商品品質保証に関し共通の最低限の
ルールがない現状は︑自国以外で商品を購入するにつき域内市場の大きな障壁となっている︒以上より︑
E
U 内のど
こで購入される消費者商品であろうとすべてに適用される消費者法の最低限の共通ルールを創設することは︑消費者
の信頼を高め︑消費者が大きな域内市場を形成することを可能にする︒これが本指令の基本的なスタンスであり制定
(2 )
ところで︑本指令の原案が
Eu
委員会によって提出されたのは一九九六年六月一八日である︒約三年をかけてよう
やく本指令が採択されるまでの間︑指令原案に引続き︑第一次修正指令案︑第二次修正指令案が提出され︑さらに欧
州議会と閣僚理事会との間での調停委員会において一定事項につき最終決着が図られるなど︑まさに紆余曲折を経た︒
第五
0
巻 第 一 号
︵ 五 二 ︶
その理由として以下の事情を指摘することができる︒本指令が対象とする動産売買︑特にその瑕疵担保責任・品質保
証は︑消費者取引及び消費者法の主要部分を占める︒また民法における売買規定は動産売買を念頭に置くものに他な
らず︑国内取引・国際取引の中心法規でもある︒本指令の規定内容は民法の売買における瑕疵担保規定そのものであ
り︑従って︑本指令は消費者法のみならず︑加盟各国の民法典︑さらにウィーン統一売買法とも競合または関係する︒
例えば︑民法典の債権編につき改定作業を開始し︑現在その進展が一時中断しているドイツでは︑本指令は国内法化
の方法如何によっては民法典自体に大きな影響を与えるとの受け止め方も可能なのである︒以上の諸事情より︑指令
内容をめぐって激しい意見対立があったことが窺われ︑最終指令は妥協の産物としての色彩が強い︒そこで︑本稿で
は本指令が成立するまでの制定過程を重要項目につき簡単に振り返り︑個々の規定につき
Eu
委員会︑閣僚理事会︑
欧州議会の間でどのような議論が行われ︑いかなる修正が繰り返されたかを丹念にみることによって︑本指令の特徴
と問題点を明らかにしていきたい︒その上で︑本指令に対する加盟各国の反応の一例としてドイツ法の状況を若干紹
介することとする︒
指 令 の 制 定 過 程 と 同 指 令 の 内 容
指令原案提案までの経緯
内市場の便益はすべての消費者によって享受されるべきであり︑消費者がこの市場においていっそう積極的な役割を
( 3)
一九九三年︱一月一五日の﹁消費者商品の保証及びアフターサーヴィスに関するグリーンペーパー﹂は︑﹁域
果たすことが奨励されなければならず︑ヨーロッパ市民を形成させるためには何らかの措置を講じることが重要であ
関法五
悪化している︒
(2)
J
とが必要である︑と強調している︒
五
( cr o
s s , b
or de r)
/ l r ? ,
' i i r ,
る﹂と結論つけ︑この分野での消費者保護政策の推進を提言している︒これに先立ち︑
Eu
委員会は︑第二次消費者
(4 )
政策計画(‑九九三ー一九九五︶において︑消費者がどの国の供給業者からも同一のアフター・サーヴィスを享受す
ることができることが消費者自身に保証されているときにのみ︑越境ショッピングは繁栄し︑さらに国内市場を適切
に機能させようとするならば︑域内市場での動産売買についてはどの加盟国かを問わず︑消費者が効果的なアフ
ター・サーヴィスから利益を享受し︑商品のあらゆる欠陥につき利益を主張することができることが保障されている
これら報告書から明らかなように︑当時の法律上の品質保証及び約定保証︑さらにアフター・サーヴィスの現
( 5)
状は以下のようなものであった︒すなわち︑商品の売買に関する消費者の主たる苦情は︑商品の品質︑保証及びアフ
(6 )
ター・サーヴィスの機能に関係する︒この点は他の加盟国の商品を購入するクロス・ボーダー
でも同様である︒欧州消費者情報センターから
Eu
委員会に提供された情報によると︑消費者の大半が動産売買︑と
りわけクロス・ボーダー動産売買において法律上の保証
( le g ga l ua ra nt ee )
及び約定保証
(c om me rc ia lg ua ra nt ee ) (7 )
︵8
)
につき苦情を申し立てている︒苦情の中では商品交換と修理に関するものが多い︒この種の取引では︑紛争の性質上︑
つまり適用可能な法律の問題︑各国内法間の差異︑約定保証に依存することの問題等々を理由に消費者の立場が一層
以 上
よ り
︑
Eu
における最低限の権利を欧州の消費者に付与することを目的とした指令を早急に制定する必要が
あった︒その指令は︑法律上の品質保証を規律する加盟各国の国内法を平準化することを実現することにあった︒す
べての加盟国において︑法律上の品質保証は︑売買の目的である商品の品質及び適性に関する消費者の権利の基本部
消 費 者 商 品 の 売 買 及 び 品 質 保 証 に 関 す る
Eu
指令(‑)
︵ 五
三 ︶
( 1 )
2法定保証における指令案の目的は︑契約に適合しない
( n o n
︑ c o
n f o r
m i t y
w i t h
t h e
c o n
t r a c
t )
第 五
0 巻第一号
分に当たる︒また︑法律上の品質保証は約定保証の発展及び作用の基礎である︒
条項に関する
Eu
の委員会指令﹂でこれを定める予定であった︒しかし︑閣僚理事会はこれらの問題を別個独立に︑
と こ
ろ で
︑
Eu
委員会は︑本指令の内容につき当初︑日本でもよく知られている﹁消費者契約における不公正 かつ︑より徹底して取り扱う方が適切であると考え︑右不公正条項に関する指令の中に保証に関する規定を設けるこ
とを拒絶し︑代替案として
Eu
委員会に対し消費者契約における加盟国内の保証制度の調和につき別途施策を検討し︑
必要ならばこれに関する指令を提案することを求めた︒その結果︑消費者契約における不公正条項に関する
Eu
指令
の内容は取引内容に関する契約条項のみに係わり︑契約が債務の本旨に従って履行されなかった場合における消費者 の権利については何ら規定されなかった︒そのため︑右指令がその後国内法化されるならば︑商品の欠陥に関する売 主の免責条項は無効でありながら︑他方︑消費者の権利については各加盟国で内容が異なるという事態の発生が予想
(9 )
さ れ
︑ E
内の消費者の単一のミニマムの保護基準を早急に定める必要に迫られていた︒ U
一九九六年六月一八日消費者商品の売買及び消費者のための保証に関する
Eu
指令原案の内容
基本的な立場
商品を買った場合における消費者の保護を実現する規定を設けることにある︒ただ︑完全に加盟各国の売買法を調和 させることを目的にはしていない︒そのため︑契約の成立︑契約における瑕疵︑契約の履行又は不履行の効果︑不完 全履行の形式などの問題は取り扱わず︑すべて加盟各国の国内法に委ねた︒したがって︑第一条から第四条において 法定保証︑第五条において約定保証に関し各々規定を設けるだけである︒しかも︑法定保証という用語は指令原案の
関 法
五 四
︵ 五
四
消 費 者 商 品 の 売 買 及 び 品 質 保 証 に 関 す る
Eu
指 令
︵ 一
︶
第 一
条 ︹
適 用
範 囲
及 び
概 念
定 義
︺
1 本 指 令 の 目 的 は ︑ 域 内 市 場 に お け る 消 費 者 保 護 の ミ ニ マ ム 基 準 の 引 上 げ を 実 現 す る た め に ︑ 消 費 者 商 品 売 買 及 び 消 費 者 の た
め の
保 証
に 関
す る
加 盟
国 の
権 利
規 定
及 び
行 政
規 則
を 平
準 化
さ せ
る こ
と に
あ る
︒
2
本 規
定 で
は 以
下 の
よ う
に 定
義 す
る
い消費者二匡接的には職業上の活動とならない目的のために本指令に該当する契約を締結するすぺての自然人
5⑯消費者商品二小動産を除く通常最終消費又は最終費消のための特定の生産物
5̀ ̲ ︑
2
,.
し
対象となった重要個所︵第 1 条ー第 6 条︶だけを紹介しておく︒ さらに︑保証の内容は修理︑代金減額︑取替え等に限定されており︑契約不適合により消費者に発生する直接損
害・間接損害の責任につきなんら規定を設けていない︒また︑消費者の権利を定めるに際し︑売主と消費者との間に
一定のバランスを保つ必要があるとの立場から︑契約不適合に関する﹁消費者の通知義務︵第四条︶﹂を設け︑消費
者がこの義務を履行しない場合︑その権利を失うことを定めた︒法定又は約定保証の履行とは別個独立した︑商品の
使用︑メンテナンス及び修理などのようなアフターサーヴィスは︑個々の業界の自主的な取り決めに委ねるほうが適
切であるとの判断から︑結局指令原案では取り扱っていない︒
指令原案の全体については既に邦訳が存在するので︑ここでは原案のうちその後の修正の 指令原案の概観
︵ 第
一 条
二 項
d 及
び 第
五 条
参 照
︶ ︒
文言には使用されなかった︒なぜなら︑法定保証の概念は必ずしも従来から定着しておらず︑内容の確定が難しいか
らである︒そのため︑指令原案では︑保証
( g u a
r a n t
e e )
五 五
︵ 五 五 ︶
という用語は約定保証の意味で使用しているだけであった
消費者商品の品質及び性能が︑当該消費者商品の性質︑代金額より︑及び売主︑製造者又はその代理人によって当該消費 者商品につき行われた公の表示を考慮するならば︑満足のいくものである場合 消費者商品の誤った組み立てを原因とする契約不適合は︑当該消費者商品が売主又はその代理人によって組み立てられたと
きには︑消費者商品の契約不適合と同様であるとみなす︒
第三条︹売主の義務︺
1
売主は︑消費者商品の消費者への引渡し当時に存在し︑かつ︑引渡し時より二年内に明らかとなった契約不適合につき︑消 費者が契約締結当時契約不適合を知らず︑又は知り得なかった場合に限り︑消費者に対して責任を負う︒
消費者商品が製造者又はその代理人によってなされた公の表示と適合しない場合︑売主は以下のときに限り︑責任を負担し
2 3
(d) (c) (b)
売主ごての職業上の活動内において消費者商品を販売する自然人又は法人
i
保証盆消費者商品が契約に適合しないときに︑消費者商品の販売に関する法律規定のほかに代金の減額︑目的物の交換又 は修理︑若しくはその他の方法による処理を行う売主又は製造者による付加的な約束をいう︒
第二条︹契約に適合すること︺
1 消費者商品は売買契約に適合したものでなければならない︒
2
消費者商品は︑その引渡し時において︑以下の各号にあたる場合には︑契約に適合したものとする︒
囚消費者商品が売主によってなされた記載と一致し︑かつ︑売主が見本又はモデルとして消費者に提供した物の性質を有す
(d) (c)
第五 0
巻 第 一 号
る場合
5消費者商品が同一の種類の消費者商品に関する通常使用の目的に適合している場合
i
消費者商品が消費者が当該消費者商品につき必要とする特別な目的に適合し︑かつ︑消費者がその目的を契約締結当時売
主に知らせている場合︑但し︑買主が売主の説明を信頼していないことが諸般の事情から明らかな場合はこの限りでな 関法
五 六
︵ 五
六 ︶
消費者商品の売買及び品質保証に関する
Eu
指 令 ( ‑ )
五 七
︵ 五 七 ︶
ない~
←元主が当該表示を知らず︑かつ︑合理的にみて知り得なかったことを証明するとき
5←冗主が売買の当時当該表示を訂正したことを証明するとき
5ーーー売主が消費者商品を購入する意思決定が当該表示によって影響され得なかったことを証明するとき
3 引渡後六ヶ月以内に明らかとなった契約不適合は︑反証があるまで︑引渡し当時存在していたものと推定する︑但し︑この
推定が当該消費者商品の性質又は契約不適合の性質と一致しないときはこの限りでない︒
4 契約不適合が第四条に従って売主に通知されていた場合︑消費者は︑可能ならば︑相当期間内に無償で消費者商品を修理し︑
若しくは消費者商品を取替えることを請求する権利を︑又は代金の相当額の減額若しくは契約の解除を請求する権利を有する︒
解除又は取替えの権利の行使は一年までとする︒
加盟国は︑軽微な契約不適合の場合において本項第一文で定める権利の範囲を限定する旨の規定を設けることができる︒
5 最終売主が製造者又は契約相手方である直近の売主若しくはその他流通過程における前売主の作為又は不作為を原因とする
契約不適合を理由に消費者に対して責任を負担する場合︑最終売主は︑国内法が定める要件に従い最終責任者に対して求償す
る 権 利 を 有 す る ︒
第四条︹消費者の義務︺
1第三条が定める権利を享受するためには︑消費者は︑契約不適合を発見し︑通常発見すぺきであった日より一ヶ月以内に売
主に対して当該契約不適合を通知しなければならない︒
2 前項に従う通知は︑第三条第四項に定める期間の進行を停止する︒
第 五 条 ︹ 保 証
︺
1 売主又は製造者によって申し込まれる保証は︑保証書及びこれに関する広告において定められた条件に従い申込者を法律上
拘束し︑かつ︑国内法の消費者商品売買に関する規定に基づく場合よりも︑より有利な地位に相手方を置くものでなければな
第五 0 巻 第 一 号
ら な
い ︒
2 保証は︑購入前に自由に閲覧することができ︑かつ︑保証に基づく請求に必要な重要な要素︑特に保証期間︑保証の適用領
域 及 び 保 証 者 の 氏 名 ︑ 住 所 を 誤 解 を ま ね か な い 形 式 で 定 め た 書 面 の 方 式 を 必 要 と す る ︒
第 六
条 ︹
本 指
令 上
の 規
定 の
強 行
法 規
性 ︺
1 本指令によって消費者に付与される権利を制限又は排除する旨の契約条項及び契約不適合の通知前に売主と交わすこの旨の
合 意
は ︑
消 費
者 を
拘 束
し な
い ︒
2 加盟国は︑当該契約に適用可能な法律如何にかかわらず︑当該契約が加盟国の領土と密接な関係にある限り︑消費者がこの
指 令 に よ っ て 付 与 さ れ る 保 護 を 奪 わ れ な い よ う ︑ 必 要 な 措 置 を 講 じ な け れ ば な ら な い ︒
指令原案の問題点
者商品の範囲︵有体動産に限定されるのか︑中古品が含まれるのか︑消費者による組立てを要する商品に関する取扱
( 1 1 )
指令原案がいくつかの問題点を内包していることは既に紹介されている︒例えば︑消費
いなど︶︑消費者商品の契約適合性
( c o n
f o r m
i t y
o f t
h e c
o n
s u
m e
r g
o o
d s
i t w
h t h
e c o
n t r a
c t )
に関するみなし規定にお
ける掛酌事情の妥当性︑売主以外の責任負担者における責任要件及び責任負担者の範囲︑消費者の通知﹁義務﹂の強
制とその意義︑消費者の四つの権利の行使要件・方法︵特に行使の順番の有無︶︑保証の意義など様々な問題点が指
摘された︒しかし︑ここではそれらを逐一列挙することはやめ︑まず最初に本指令自体の内容を紹介することによっ
て指令原案が最終的にどのように修正されるに至ったのかをみることにする︒そして︑その後で指令原案︑第一次修
正指令案︑さらに第二次修正指令案及びこれらに対する欧州議会の意見表明及び閣僚理事会の共通意見
( C
o m
m o
n
P o s i
t i o n
)
を個々の問題点ごとに整理していく︒
関 法
五 八
︵ 五
八 ︶
3
(e) (d) (c)
消費者商品の売買及び品質保証に関する
Eu
指令 売
五 九
︵ 五 九
一九九九年五月二五日の消費者商品の売買及び消費者のための保証の一定局面に関する
E u
指 令 の 内 容
第一条︹適用範囲及び概念定義︺
1
本指令の目的は︑消費者保護の最低基準の引上げを実現し域内市場を秩序正しく機能させるために︑消費者商品売買及び消
費者のための保証の一定の局面における加盟国の権利規定及び行政規則を平準化させることにある︒
2 本指令の目的のため︑以下のように定義する
り消費者二直接的には職業上の活動とならない目的のために本指令に該当する契約を締結するすべての自然人
i⑯消費者商品二何体動産をいう。但し、以下の場合を除く~ー強制執行によって又は公法により売却された動産︑
ー特定の質量で販売されない水及びガス︑
ー電気~
主ごての取引︑営業又は職業の上の活動内において消費者商品を契約に基づき売却する自然人又は法人をいう
i製造者盆消費者商品を製造する者︑
Eu
域内に消費者商品を輸入する者又は消費者商品上に自らの名義︑商標若しくはそ
の他の標章を印刷することによって製造者であると称する者
i保証盆消費者商品が保証内容又は重要な広告において記載された仕様と合致しない場合において︑売主又は製造者が既
払代金の返還︑消費者商品の交換又は修理︑若しくはその他の方法による処理を行う旨の消費者に対する無償の
いかなる約束をもいう
5囮修理こ週合しない場合において消費者商品を売買契約に適合させることをいう︒
3
加盟国は︑消費者が自ら参加する機会を有する公売における中古品を消費者商品という文言から除外する規定を定めること が で き る
︒
第二条︹契約に適合すること︺
1
売主は︑売買契約に適合した消費者商品を消費者に提供しなければならない︒
2
消費者商品は︑その引渡し時において︑以下の各号にあたる場合には︑契約に適合したものと推定する︒
囚消費者商品が売主によってなされた記載と一致し︑かつ︑売主が見本又はモデルとして消費者に提供した物の性質を有す
る場合i
固消費者裔品が消費者が当該消費者商品につき必要とする特別な目的に適合し︑かつ︑消費者がその目的を契約締結当時売 主に知らせ︑かつ︑売主がその目的を承諾している場合
i
団消費者商品が同一の種類の消費者商品に関する通常使用の目的に適合している場合
i
④消費者商品が同一種類の消費者商品につき通常である性質及び性能を有し︑かつ︑売主︑製造者又はその代理人によって 当該消費者商品の特定の性質につき特に広告又はラベルにより行われた公の表示を考慮するならば︑消費者が合理的に期 待することができる性質及び性能を有する場合︒
3
契約が締結された当時︑消費者が契約不適合を知り︑又は合理的には知り得た場合︑及び契約不適合が消費者によって供給 された材料にその原因がある場合︑消費者商品は契約不適合とはみなされない︒
4
売主が以下のことを証明するとき、売主は本条二項
dにいう公の表示に拘束されない~
山冗主が当該表示を知らず︑かつ︑合理的に見て知り得なかったことを証明するとき︑
││点ル主が契約を締結することによって公の表示を訂正したことを証明するとき︑
←冗主が消費者商品を購入する意思決定が当該表示によって影響されなかったことを証明するとき︒
5
消費者商品の誤った組立てを原因とする契約不適合は︑組立てが消費者商品の売買契約の一部を形成し︑かつ︑消費者商品 が売主によって又は売主の責任で組立てられたときには︑消費者商品の契約不適合と同様であるとみなす︒消費者によって組
4
製造される消費者商品の供給のための契約は︑本指令の目的のための売買契約とみなされる︒ 関法
第五
0
巻 第 一 号
六〇
︵ 六
0
立てられることを目的とした製造物が消費者によって組立てられ︑かつ︑誤った組立てが組立て説明書の欠点に基づくときも︑
同 様 で あ る ︒
第三条︹消費者の権利︺
1 売主は︑消費者商品の消費者への引渡し当時に存在する契約不適合につき消費者に対し責任を負う︒
2 不適合の場合︑消費者は︑消費者商品につき本条三項に従い無料で修理又は取替えによって適合させ︑又は本条五項及び六
項に従い価格を適切に減額し又は契約を解除する権限を有する︒
3 最初に︑消費者は売主に対し無料で消費者商品の修理又は取替えを要求できる︒但し︑それが不可能又は不均衡である場合
は︑この限りでない︒
以下の事情を考慮すれば、他の救済法に比較して不合理な費用を売主に課す場合、その救済法は不均衡とみなされる~
ー不適合がなければ消費者商品が有するであろう価値︑
ー不適合の重大性︑
ー消費者に重大な不便を与えずに他の救済法が実行できるか否か︒
修理及び取替えは︑消費者商品の性質及び消費者が消費者商品を必要とした目的を考慮して︑合理的な期間内に︑かつ︑消
費者に重大な不便を与えず実行されねばならない︒
4 本条二項及び三項にいう無料とは︑消費者商品を適合させるのに必要な費用︑特に郵送料︑人件費および材料費をいう︒
5消費者は、以下の場合、価額の適切な減額又は契約の解除を要求できる~
ー消費者が修理及び取替えを行う権限を有しない場合︑
←冗主が合理的な期間内に修理及び取替えを実行しない場合︑
ー←冗主が消費者に対する重大な不便を与えずに修理及び取替えを行うことができない場合︒
消費者は︑不適合が軽微な場合︑契約を解除する権限を有しない︒ 6
消費者商品の売買及び品質保証に関する
Eu
指令(‑) 六
︵ 六
一 ︶
関法 第五 0
巻 第 一 号
第 四 条 ︹ 求 償 権 ︺
最終売王が製造者又は契約相手方である直近の売主若しくはその他流通過程における前売主の作為又は不作為を原因とする契 約不適合を理由に消費者に対して責任を負担する場合︑最終売主は︑契約の連鎖において責任を負担する者に対して求償する権 利を有する︒最終売主が求償できる責任負担者及び訴訟の内容・行使の条件は国内法がこれを定める︒
第五条︹期間制限︺
1
売主は︑不適合が消費者商品の引渡しから二年以内に現れた場合︑三条に従い責任を負う︒三条二項に定められた権利が国 内法において期間制限に服する場合︑その期間は引渡し時から二年の期間内は終了しない︒
2
加盟国は︑消費者がその権利を享受するためには消費者が売主に不適合をそれを発見した時からニヶ月以内に報告しなけれ
ばならない旨を定めることができる︒
加盟国は︑本条項の利用につき委員会に報告しなければならない︒委員会は加盟国のこのオプションの存在が与える影響に
つき消費者及び域内市場に対して意見聴取しなければならない︒
遅くとも二
0 0
1 ︱一年一月七日までに︑委員会は︑加盟国による本条項の利用状況につき報告書を作成しなければならない︒
この報告書は
Eu
の 0
J に掲載されなければならない︒
3
反証がない限り︑消費者商品の引渡しの六ヶ月以内に現れた不適合は︑引渡し時に存在したものと推定する︑但し︑この推
定が消費者商品の性質又は不適合の性質と一致しないときは︑この限りでない︒
第 六 条 ︹ 保 証
︺
1
保証は︑保証書及びこれに関する広告において定められた条件に従い申込者を法律上拘束する︒
2保証は、以下のことを必要とする~
ーー消費者が消費者商品の売買を規律する適用可能な国内法規の下で法的権利を有し︑それらの権利が保証によって影響され
ないことを明確にする旨を表示したものでなければならず︑ 六
︵ 六
二 ︶
4 3
消費者商品の売買及び品質保証に関する
Eu
指令(‑)
六 一
︵ 六 三 ︶
—平易で理解しやすい言葉で保証内容及び保証の下で請求を行うために必要な本質的事項、特に保証者の氏名・住所、さら
に保証期間及び保証の及ぶ地域範囲を定めたものでなければならない︒
消費者が請求すれば︑保証は書面で又は消費者が利用・アクセス可能な他の永続的な媒体で利用可能なものでなければなら
な い
消費者商品が市場で売買される加盟国は︑その領域内において ︒
E
U 条約の規定に従い共同体の公用言語の中から決定した一
つ又は複数の言語で保証書が作成されることを定めることができる︒
5 保証が本条二項から四項が定める要件に抵触する場合︑当該保証の効力は影響を受けず︑消費者はなお保証に依拠し保証が
付与するものを要求できる︒
第 七 条 ︹ 強 行 的 性 質 ︺
1 不適合の以前に売主と取り交わされる契約条項又は合意が本指令から生ずる権利を直接又は間接的に排除し又は制限する売
主の留保をもたらす場合︑たとえそれが国内法によって定められているとしても︑消費者を拘束しない︒
加盟国は︑中古品の場合︑売主と消費者が売主の責任につき五条一項に定める期間よりも短期の期間を有する契約条項を定
め又はそのような合意を行ってよい旨を定めることができる︒
2 当該契約が加盟国の領土と密接な関係を有する場合において︑契約に適用される法として非加盟国の法を選択する結果とし
て本指令によって付与される保護を消費者が奪われないよう︑加盟国は必要な措置を講じなければならない︒
第八条︹国内法及び最低限の保護︺
1本指令によって認められる権利は︑消費者が契約上又は契約外の責任を規律する加盟国の国内法規に基づき主張することが
できる他の権利によって︑影響を受けない︒
2 加盟国は︑より高い消費者保護のレベルを達成すべく︑この指令によって定めらる領域につき︑条約と抵触しないより厳格
な規定を設け︑又は存続させることができる︒
m
指令のタイトル
4本指令の制定過程における議論の概観
関法
略
第 五
0 巻第一号
第 九
条
1第 一
0 条
略
第︱一条国内法化
加 盟 国 は ︑ こ の 指 令 を 実 現 す べ く 遅 く と も 二
0
0 二 年 一 月 一 日 ま で に ︑ 必 要 な 法 律 上 の 規 定 及 び 行 政 法 規 を 定 め な け れ ば な ら
な い
︒ 以
下 ︑
略 ︒
第︳ニー︳四条
言及しない限りゴチック体で示した条文は本指令のそれを指す︶︒ 一 九 九 九 年 三
最初に︑本指令が成立に至るまでの経過を簡単に振り返っておく︒まず指令原案に対して一九九六年︱一月二七日
( 12 )
︵1 3 )
社会・経済委員会の意見が付され︑さらに欧州議会の意見表明︵第一読会︶が一九九八年三月一
0
日に行われ修正意
( 14 )
見が提出された︒これを受け
Eu委員会は同年三月三一日第一次修正指令案を提案した︒閣僚理事会はこの修正指令
( 15 )
案を基本的に支持しつつも同年九月二四日に修正を内容とする共通意見の提案を行った︒しかし︑この共通意見に対
( 16 )
し︑欧州議会は同年︱二月一七日修正を求める決定︵第二読会︶を行った︒そこで︑これに必ずしも全面的承服しな
( 17 )
い
Eu委貝会は意見を付し︑翌年の一九九九年一月一九日に第二次修正指令案を提案した︒そのため︑
月一八日欧州議会及び閣僚理事会の協議機関として調停委員会にこの提案が回付され︵第三読会︶︑
( 18 )
合意が整った︒これに従い︑ようやく一九九九年五月二五日に本指令が成立した︒
次に以上の経過において議論となった主たる論点につき以下①から⑭に分けて審議過程を見てみよう︵なお︑特に
当初︑指令原案でも第一次修正指令案でも︑この指令のタイトルは︑消費者商品の売買及
六 四
︵ 六 四
一定事項につき
消 費
者 商
品 の
売 買
及 び
品 質
保 証
に 関
す る
Eu
指 令
︵ 一
︶
るあらゆるタイプの契約が含まれるべきであるとの立場から︑
六 五
︵ 六 五 ︶
一 条
二 の
a 項として﹁製造される消費者商品のための び消費者のための保証に関する指令であることを示すだけであった︒しかし︑本指令一条が定める適用範囲の文言か ら明らかなように︑これは消費者商品の売買及び保証に関する包括指令ではない︒そこで︑閣僚理事会は指令の内容 を明確化する趣旨から﹃一定局面に関する﹄という文言を付加し﹁消費者商品の売買及びこれに付帯する保証の一定
( 19 )
局面に関する
Eu指令﹂と修正すべきことを第一次修正指令案に対する共通意見において提案し︑これが採用される
こ と
と な
っ た
︒
② 欧 州 議 会 は 指 令 原 案 に 対 す る 意 見 表 明 に お い て 生 産 物 を
﹁ 動 産
﹂ に
︑ ま た
﹁ 消 費 者 に 対
( 20 )
し売主によって供給される﹂という語を動産の前に付加すべき修正意見を述べた︒第一次修正指令案はこれを基本的
( 21 )
に承認すると共に︑﹁有体動産﹂に改めた︵一条二項b号︶︒
対し︑さらに︑指令の適用が排除される例外有体動産として電気︑ガス・水道などの三つのもの
含書︶を挙け︑これが採用された︒
︵ 一
条 二
項 b
号 但
なお︑中古品については指令原案に規定は存在しなかった︒しかし︑新品に限定する必要もなく︑むしろ中古品
︵例えば中古車︶につき瑕疵担保責任が当然のごとく適用対象となっていたことを理由に︑閣僚理事会は第一次修正
売買契約の範囲 以下の点は最後まで議論となった︒すなわち︑指令原案は売買契約につき何ら定義規定を 指令案に対する共通意見において中古品が消費者商品に当然含まれることを前提にし︑ただ公売事例を適用除外とす
( 23 )
るか否かを加盟国の裁量に委ねた︒これがそのまま指令の内容となった︵一条三項︶︒
設けていなかった︒これに対し欧州議会はその意見表明において消費者商品の売買には消費者に売主が商品を供給す 一方︑閣僚理事会の共通意見はこの第一次修正指令案に 消費者商品の意義
第五
0
巻 第 一 号供給契約も売買契約に含まれる﹂旨の修正意見を提出し︑﹁供給契約﹂の具体例として代金支払いに代えて物品が交
( 24 )
付される交換契約︑賃貸借契約︑所有権留保付き割賦販売契約を想定した︒第一次修正指令案は賃貸借契約を含める
ことには指令の適用範囲を大きく変更させることになることを理由に反対したが︑それ以外については欧州議会の修
( 25 )
正意見を受け容れ︑一条三項を新たに設けた︒﹁消費者商品の売買﹂とは単に売買契約だけでなく︑これら契約をカ
( 2 6 )
バーする包括的なものでなければならないというのが修正理由である︒したがって︑ここでの﹁供給契約﹂とはさら
( 27 )
に製作物供給契約
e r
( Wk l i e f e r u n g s v e r t r
a g )
を指し︑請負契約もここに含まれることになる︒しかし︑この第一次修
正指令案に対し閣僚理事会の共通意見は︑製作物供給契約につき限定を設け﹁消費者が生産につき必要な材料のうち
( 28 )
重要部分を供給しなければならないのでない限り﹂という文言を挿入すべきことを修正提案した︒消費者が商品の重
要部分を提供している場合において︑その部分を原因とする瑕疵についてまで売主に責任を負担させる必要はない︑
というのがその理由である︒他方︑欧州議会は第一次修正指令案を支持しそのような限定を付加する必要はないとし︑
( 29 )
︵3 0 )
限定文言の削除を求めた︒第二次修正指令案も欧州議会のこの削除案に同調したため︑意見は平行線のままであった︒
そこで︑欧州議会及び閣僚理事会双方からなる調停委員会において妥協案が提示され︑削除を認める︵一条四項︶と
共に︑﹁契約不適合が消費者によって提供された材料にその原因がある場合︑消費者商品は契約不適合とはみなされ
( 31 )
ない﹂というみなし条項が契約適合性を定める二条の中に新設することで︵二条三項︶︑決着した︒
契約適合性
関法指令原案は契約適合性
( c
o n
f o
r m
i t
w y
i t
h t
h e
c o
甘
n
a c t )
4
則と評価する立場から︑これを定めた︒また︑この概念は既に一九八
0年のウィーン統一売買法三五条において採用 の概念をもって加盟各国に共通する原
されており︑指令原案二条は同法三五条を参考にしたものである︒当初︑指令原案ではその二条一項において消費者
六 六
︵ 六
六 ︶
消 費
者 商
品 の
売 買
及 び
品 質
保 証
に 関
す る
Eu
指 令
号は二条二項
c号とほぼ同一の内容である︒また︑ b 号は同項 b
号 と
︑
六 七
︵ 六 七 ︶
商品の契約適合性を定めていたのに対し︑第一次修正指令案に対する閣僚理事会の共通意見は﹁売主の目的物提供義
( 32 )
務﹂の視点から︑契約適合性を﹁売主﹂の義務として定める修正意見を述べ︑これが採用された︵二条一項︶︒
最も問題となったのは契約適合性の具体的内容を定める二条二項である︒この条項は契約適合性に関する売主の証
明責任を緩和することを趣旨としており︑その点で適合に関する要件規定ではなく推定
( p
r e
s u
m p
t i
o n
V ,
e r
m u
t u
n g
)
( 3 3 )
規 定
で あ
る ︒
同条項の a 号から
C号は基本的にはウィーン統一売買法三五条二項の a 号から
C号に従った内容になっている
( a
c号は同項
a号と各々内容上類似する︶︒ま
ず︑売主により提供された商品見本又はモデルが有した性質を当該商品が有することを要求する本指令二条二項
a号
は︑指令原案を結局そのまま採用したものである︒指令原案に対する欧州議会の修正意見が商品に関する記載及び見
( 34 )
本又はモデルの提供の主体として﹁製造者﹂を追加すべき修正意見を出したのに対し︑第一次修正指令案はこれを退
けた︒製造者を加えることは契約適合性の観念と矛盾し︑また製造者については同項 d 号によってカバーできる︑さ
らに製造者が消費者に見本やモデルを提供することは実際の取引で通常行われていない︑というのが
Eu
委員会の挙
( 35 )
げ た
理 由
で あ
る ︒
第二に︑消費者の特別な目的に商品が適合することを定める二条二項 b 号については本指令の内容となるまでに何
度か修正された︒もともと b 号は指令原案では
C号であった︒そして︑指令原案には﹁売主が特別な目的を承諾して
( 35 )
いる﹂という文言はなく︑他方︑ウィーン統一売買法条二項 b 号と同様﹁買主が売主の説明・専門知識
( e
x p
l a
n a
,
t i o n
, S
a c
h k
e n
n t
n i
s )
を 匡
E
芦{していないことが諸般の事情から明らかな場合﹂は売主に知らされた買主の特別目的に
第五
0
巻 第 一 号当該商品が適合するか否かは問題とならない︑つまり適合しなくても契約不適合とならない旨の但書きが挿入されて
( 3 6 )
︵3 7
)
︵3 8 )
いた︒しかし︑第一次修正指令案は指令原案に対する欧州議会の修正意見を受け容れ︑この但書きを削除した︒他方︑
この削除案に対し閣僚理事会はその共通意見において但書きの復活を主張した︒その理由はウィーン統一売買法三五
( 39 )
条二項 b 号にも類似の内容の但書きが存在していたからである︒しかし︑欧州議会は第一次修正指令案に対する修正
( 40 )
意見においても削除案に固執した︒そこで︑第二次修正指令案は一転して閣僚理事会の共通意見を採用し︑但書きを
復 活
さ せ
た ︒
Eu
委員会は︑類似の規定がウィーン統一売買法にある以上︑規定文言もパラレルに考えるべきであり︑
( 41 )
またミニマムな基準を設けることを目的とした本指令の性格上このように考えるべきであるとしたのである︒ただ︑
売主の責任をより厳格にする削除案は国内法による上乗せ立法として実施可能であることは認められた︒しかし︑欧
( 42 )
州議会はこれを承服せず︑その後の調停委員会において遂に但書き削除案に落ち着いた︵二条二項 b
号 ︶
︒ も
と も
と
消費者売買では消費者が売主の専門知識を信頼しないことは稀であるので︑このようなケースにつきわざわざ言及す
( 43 )
る必要はないと評価したのである︒また︑最終段階で﹁売主が特別な目的を承諾している﹂という文言が追加され︑
売主が商品に関する消費者の特別目的を承諾していたことが明示された︵二条二項 b 号︶︒内容の上からは当然のこ
とであり規定する必要性もなかったが︑特別目的を一方的に買主から通知される売主の立場を懸念する一部加盟国の
( 44 )
意見に配慮したのである︒第三に︑商品が同一種類の商品が有する通常使用目的に適合することを定める二条二項
C号では指令原案がそのまま本指令として採用され︑議論とはならなかった︒
最後に︑指令原案から内容が大幅に修正されたのが二条二項 d 号である︒売主以外の﹁第三者︵製造者︶﹂の広告
表示をも契約適合性の概念に組み入れた点で異色の規定であり︑ウィーン統一売買法三五条二項には存在しなかった 関法
六 八
︵ 六
八 ︶
消 費
者 商
品 の
売 買
及 び
品 質
保 証
に 関
す る
Eu
指令︵ として消費者が期待してよい
六 九
︵ 六 九
ものである︒消費者売買では消費者による契約締結の決定的要因となるのは売主の説明ではなく製造者の広告である
( 45 )
ことが多い︒これに着目したのが d 号である︒但し︑本指令はあくまで売主の責任を定めたものであり︑製造者が本
号により﹁広告表示者﹂として消費者に対し責任を負担するのではない点については制定過程で異論はなかった︒責
任負担者はあくまで売主である︒その結果生じる売主への責任過重については︑本指令は売主が公の表示に拘束され
ない旨を定める二条四項によって免責可能性を売主に付与することにより回避しようとした︒さらに︑二条四項の要
件を充足せず免責されなかった売主についても︑公の虚偽の表示を行った製造者に対する求償権を四条により認めて
と こ
ろ で
︑
d 号につき指令原案は商品の品質及び性能が﹁満足のいく
( s a t
i s f a
c t o r
y )
ものである﹂ことをもって
契約適合性を肯定し︑満足の有無に関する掛酌事情として商品の性質︑代金額及び売主︑製造者等の公の表示を列挙
していた︒これに対し︑欧州議会は消費者の満足の有無ではなく商品の性質・性能に対して消費者が有してよい﹁合
理的な期待﹂の有無を基準とすべき修正意見を述べたため︑第一次修正指令案はこれを採用し﹁消費者商品の品質及
び性能が売王︑製造者又はその代理人によってその製造物につき広告又はラベルにより行われた公の表示を特に理由
( 46 )
( w
e r
e e
n t i t
l e d t o
x e
p e
c t
)
ものである場合﹂を契約適合例とする修正を行った︒しか
し︑閣僚理事会は第一次修正指令案に対する共通意見において﹁期待してよい﹂を﹁合理的に期待することができる
( c
a n
e r
a s
o n
a b
l y
e x p
e c
t )
﹂に赤久百やすると共に︑指令原案の勘酌事情をやはり合理的期待の判断に際し考慮すべきこと
を述べた︒そして閣僚理事会は︑﹁消費者商品がその性質上及び売主︑製造者又はその代理人によって商品につき特
に広告又はラベルによりなされた商品の特定の性質に関する公の表示を考慮するならば︑同一種類の商品における通 い
る ︒
契約不適合と組立て•取付けを要する消費者商品 消費者商品と関連した売主のサーヴィス例えば組立て
( c o u
l d n o t
r e
a s
o n
a b
l y
e b
u n
a w
a r
e o
f : 今口理的には知らないはずがあり得ない︶﹂場合︑契約不適合が存在しない旨を
定める二条三項前段の規定は︑指令原案からあった︵但し︑指令原案はこれを売主の免責要件として三条一項で定め
( 48 )
ていた︶︒この規定は︑同種の定めを行うウィーン統一売買法三五条三項に基づく︒消費者が契約不適合を知り︑又
は知り得べきであった︑つまり消費者が契約不適合につき悪意又は過失がある場合︑厳格に言えばそもそも契約不適
合は存在しない︒消費者はそのような物として商品を受領し︑従って契約に適合しているのである︒ただ︑契約不適
( 49 )
合につき消費者に過失がある場合をも契約適合例とすべきか否かについては議論があった︒欧州議会はこのような場
( 50 )
合を契約適合例から削除すべき修正意見を提出したため︑第一次修正指令案では消費者が悪意の場合︵売買の時点で
契約不適合を知っているにもかかわにず契約の締結を承諾している場合︶のみ契約適合とみなす規定に内容が変更さ
( 51 )
れた︒しかし︑閣僚理事会はこの変更に反対し︑買主に過失のある場合を契約適合例に含めるべきとする共通意見を
( 5 2 )
提出︑その際欧州議会との妥協案として﹁合理的には
( r e a
s o n a
b l y
̀ v e
r n u n
f t i g
e r w e
i s e )
﹂という文言を追加し︑これ
が本指令となった︵二条三項後段︶︒この文言によって解釈上契約適合例とみなされる場合は一応限定されることと
なった︒知り得なかったことが﹁不合理で﹂すらあることが必要とされるのだから︑これは消費者の単なる軽過失よ
( 53 )
りも程度の著しいものを指すと思われる︒消費者に契約不適合につき検査義務を課すのでないからである︒
6 ⑥契約適合性と消費者の主観的態様
関法
第 五
0 巻第一号
常の性質及び性能を有し︑かつ︑消費者が合理的に期待できる性質及び性能を有する場合﹂と改める修正意見を提出
( 4 7 )
した︒閣僚理事会のこの意見はそのまま本指令に採用されたのである︵二条二項d号︶︒
消費者が契約締結時に﹁契約不適合を知り︑又は合理的には知り得た
七 〇
︵ 七
0)
消 費
者 商
品 の
売 買
及 び
品 質
保 証
に 関
す る
Eu
指令(‑)
七
︵ 七 一 ︶
︵取付け︶︑修理︑メンテナンスに瑕疵がある場合︑これを契約不適合と取扱うか否かについては既に指令原案の作成
以前から議論があった︒前述のグリーン・ペーパーは商品の契約不適合の問題をこれらの瑕疵にまで拡張することに
好意的な立場を採っていたのに対し︑
Eu
委員会は︑サーヴィスの複雑性・多様性を考慮するならばそれらに契約不
適合を単純に拡張することは適切でないと判断した︒ただ︑売買と関連した消費者商品の組立てについては︑このよ
うな拡張を行うことに問題がないのみならず︑むしろサーヴィスか否かを区別することは実際上困難であり︑従って
( 54 )
一貫して消費者を保護する必要があると考え︑その結果︑この条項︵指令原案二条三項︶を設けた︒但し︑指令原案
では︑売主による︑又は売主の責任による﹁誤った組立て
( i n s
t a l l
a t i o
n ) ﹂を原因とした消費者商品の契約不適合を
もって商品自体の契約不適合とみなす旨の条項が存在するのみであった︒しかし︑この指令原案に対し欧州議会は
﹁製造物が消費者によって組立てられ︑かつ誤った組立てが組立て説明書における適合性の欠如
l a ( a c k o
f c
o n
f o
r ,
( 55 )
m i
t y
)
を原因とする場合も︑同様とする﹂旨の第二文をさらに新設すべきことを求め修正意見を提示し︑これが第一
( 5 6 )
次修正指令案に採用された︒他方︑閣僚理事会はこの第一次修正指令案を基本的に支持しつつも︑専門家でなく消費
者による組立てを最初から予定する商品も存在しているという事情︑さらに書面による組立て説明書の内容が平均的
な消費者にとって適切なものか否かが問題となるケースも存するという事情を考慮するならば︑欧州議会での第二読
会で再度議論すべきである︑とし︑結論として第二文は削除し第一文に﹁組立てが消費者商品売買契約の一部を構
( 5 7 )
成﹂しているという要件を新たに付加した上で指令原案に戻すべきとする共通意見を表明した︒しかし︑欧州議会は
( 58 )