九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
ラットの外因性高コレステロール血症発症の機作と その改善に関する研究
永尾, 晃治
九州大学農学研究科食糧化学工学専攻
https://doi.org/10.11501/3135075
出版情報:Kyushu University, 1997, 博士(農学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
の
ラットの外肉性高コレステロール血症発症の機作と その改善に関する研究
ノ1<J喝 見治
199 8
第I章 序論
ラットの外!大!性向コレステロール血症発症の機作と その改善に関する研究
-ff次ー
第II藍 高コレステロール血症発症の機作
第1節 コレステロール代謝関連タンパク質の量、 活性および遺伝子発現 4頁 第2節 トリグリセリド代謝関連酵素の活性および遺伝子発現 1
8
第3節 ゴルジ装置のリボタンパク質組成第III章 高コレステロール血症発症に及ぼす食事脂肪の影響 第1節 コレステロール無添加食摂取時の影響
第2節 コレステロール添加食摂取時の影響
3 0
3
6頁 43頁
第IV章 ベルオキシソームプロリファレーターによる高コレステロール血症の改益 第1節 コレステロール添加食摂取時の影響 5 0頁 第2節 核内転写因子の発現に対する影響 6 7頁 第V章 高コレステロール血症発症に関与する遺伝子の検索 7 5頁
第VI章 総括 8 4貞
謝辞 8 8頁
文献
8
9第I章 序論
近年、 食生活の欧米化に伴って日本人の血清コレステロールレベルが上昇してい ることは周知の事実であり、 それが病態レベルまで達した高コレステロール血症は 動脈硬化症の最大の危険凶手である。 このことはFramingham
strudy [1 J、 Multiple Risk Factor Intervention Trial [2J、 Lipid Research Clinics Program
[3, 4 Jなどの 疫学研究、 動物実験、 臨床研究により明 ら かにされている。 動脈硬化症は、 癌、 高 血圧と並ぶ3大生活習慣病の一つであり、 近年の日本における主要な死亡原凶である 虚血性心疾患や脳梗塞 などを引き起こすことか ら、 高コレステロール血症のより有 効な予防や治療法の確立のための基礎実験に適したモデル動物が必要で、ある。現在、 高コレステロール血症発症機作解明のために、 ウサギ、 サル、 ブタなどの モデル動物が利用されている】 特に、 遺伝子欠損により病態を発症し、 家族性高コ
レステロール血症のモデル動物として用いられているWatanabe heritable
hyperlipidemic
(WHHL)
rabbitが有名である[5J。 しかしこれらはいずれも一例体が大きいため、 食事による予防や治療薬開発におけるスクリーニング等の多検体を 要する実験に適していないや これに対し、 ラットは遺伝的に確立した系統が容易に 入手でき、 価格的にも適当であり、 比較的小型で、ありながら分析に十分な量の試料 を得ることができるという利点を持つ。 すでにラットにおいても高コレステロール
血症を呈する幾つかの系統が確立されており、 RICOラット[6J、 JCR:LA-肥満ラッ
ト[7J、 Zukker fattyラット[8Jおよび、無アルブミン血症ラット[9J等が知 ら れ ている。 しかしこれ ら の系統の病態発症要因は、 内因性のコレステロールによるも のであり、 食習慣による外因性のコレステロールが引き起こす病態とは発症機作が 異なると考え ら れる。 実際、 食事コレステロールに対して高応答性を示すヒトや応 答性が低いヒトがいる。 このような応答性の違いは明 ら かでないが、 消化管か ら の コレステロールの吸収、 血清リボタンパク質態コレステロールの分泌と取り込み、
肝臓でのコレステロールの合成・異化および排灘、 などが複雑に関与していると思
われる。
lrnaiとMatsumuraは、 Sprague-Oawley (SD)ラットから、 食事コレステロールに対 して速やかに応答し、 容易に高コレステロール血症を引き起こす系統を分離し、
Exogenously hypercholesterolemic (ExHC)ラットと命名した[10J。 現在までの研 究によりこのラットでは、 経口投与したC-lC]コレステロールの血中からの消失が抑 制される、[ 1251 Jβ-VLOLの肝臓への取り込みが低い、 肝臓からのコレステロールエ ステルに富みトリグリセリドの少ないリボタンパク質粒子の分泌がコレステロール 摂食に応答して増加する[11, 12Jことなどが示されているo またSakonoらは、
ExHCラットを過剰のビタミンO2で処理し、 その後、 高コレステロール食を180日 間与えることで動脈硬化モデ、ルを作製できること、 このラットを用いたモデ、ルで、
大豆タンパク質の動脈硬化病変形成に対する抑制効果を評価できることを示し、
ExHCラットがコレステロール代謝や動脈硬化に対する食事の影響を検討するのに 有用な実験動物となりうることを示した[13J。 したがって、 このラットの食事コ レステロールに対する高応答性の原因を探ることで、 ヒトでの外国性コレステロー ルに対する応答のメカニズムや、 ひいては動脈硬化に対する食事の影響を理解する ための有益な知見を得ることができると期待される。
このExHCラットの安定した高コレステロール血症の発症には複数の遺伝子が関 与していると考えられるが[14J、 病態の発症とコレステロール代謝、 トリグリセ リド代謝およびリボタンパク質代謝に関連する遺伝子の発現などとの関係について の詳細な検討は行われていない。 そこで本論文第II章では、 まずExHCラットの高コ レステロール血症発症の機作について、 肝臓における脂質代謝関連タンパク質の遺 伝子発現の観点から検討を行っている。 まず第1節では、 コレステロール代謝関連遺 伝子のmRNAの発現と、 そのタンパク質としての発現について調べたo 第2節では、
トリグリセリド代謝関連酵素の活性および遺伝子発現について調べたo 第3節では、
血清リボタンパク質の前駆休であるゴルジ装置中のリボタンパク質組成について調 べた。 第III章では、 ExHCラットにおける高コレステロール血症発症に対する、 食 事脂肪による改善効果について検討を行った。 第IV章では、 ベルオキシソームプロ リファレーターであり、 トリグリセリド低下剤として欧米で広く用いられているジエ
ンフィブロジルを用いて、 ExHCラットの高コレステロール血症の改善効果とその 機構について検討を行った。 第V章では、 ExHCラットの病態発症に関連する遺伝子 の検索を行い、 食事による病態発症の予防および改善のためのターゲットとなる遺 伝子の検討を行った。
略号
ACAT, アシルコエンザイムA:コレステロールアシルトランスフエラーゼ;
CoA,コエンザイムA;アポA-IV,アポリボタンパク質A-IV;DDフディフアレンシヤル ディスプレー;ODT,ジチオスレイトール;ExHC,外因性高コレステロール血症- FAO,フラビンアデニンジヌクレオチド;HOL,高密度リボタンパク質; HMG-CoA
3-ヒドロキシー3-メチルグ、ルタリルコエンザイムA;HPLC,高速液体クロマトグラ フィ-;LOL,低密度リボタンパク質;NAD,ニコチンアミドアデ、ニンジヌクレオチ ド;NADP,ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸;NF-KB, Nuclear factor KB
PCR,ポリメラーゼチエインリアクション;
RAP>
Random arbitary primed; RT,リバー ストランスクリプション; SO, Sprague-Dawley; SSC, Standard saline citrate; TLC,薄 層クロマトグラフィ-;VLOL,極低密度リボタンパク質3
第II章 高コレステロール血症発症の機作
第1 fi↑i コレステロール代謝関連タンパク質の量、 活性および遺伝子発現
II- 1 - 1 緒言
ExHCラットの病態発症においては、 その系統構築の経緯から複数の遺伝子の関 与が考えられ[14J、 またコレステロールは正あるいは負の制御因子として肝臓の コレステロール代謝関連タンパク質の遺伝子発現に関わっていることが示されてい ることから[15J、 食事からのコレステロールの摂取に対する遺伝子発現の応答は ExHCラットとSDラットで異なっていることが考えられる。
そこでコレステロール代謝関連タンパク質として、 コレステロール7α-ヒドロキ シラーゼ、 LDLレセプタ一、 アポリボタンパク質のmRNA発現に及ぼす食事コレス
テローノレの影響をsoラットとExHCラットで比較した。 またそれらのタンパク質の 発現量についても検討した。
II-1-2 実験材料および方法
試薬ヒトβーアクチンcDNAは和光純薬工業(大阪)から購入した。 ナイロンメンブレ
ン
(
Zeta
Probe membra
ne)はBioRad Japan (東京)から購入した。 マルチプライムDNAラベリングシステム、cお1]標識ロバ抗ウサギ抗体(0.5μCi/ml)はアマシャムジャ パン(東京)から購入した。[α_32p] deoxycytidine triphosphate
(dCTP, 3,000
Ci/mmol )は1 CNBiomedicals
(CA, USA)から購入した。[ 4-14Clコレステロール(60 mCi!mmol)はNEN Research Products (MA, USA)から購入した。 放射性コレステロー・
ルはベンゼン:酢酸エチノレ(7:3, v/v)を展開溶媒として用い、 TLCにて純化した
[16J。 コレステロールはナカライテスク(京都)から購入した。 脂肪酸フリー牛 血清アルブ、ミンはMiles Scientific, ICN Immuno Biologicals (IL, USA)から購入した。
実験動物および飼料
2VÇの雄性ExHCラット(F55-1.1)と6匹の雌性ExHCラット(F55-1.2.3.4.5.6)が
武田薬品工業
(
大阪)から1 987年 に 分与 され、
九州大学医学部付属動物実験施設(福岡)で繁殖、 飼育された。 1995年よりセアック吉富(旧成和実験動物研究所、
福岡)で繁殖、 飼育された。 雄性SDラットはセアック吉富(旧成和実験動物研究所、
福岡)から購入した。 九州大学農学部食糧化学工学科動物飼育室 (22"'-'250C)で、
ラットに市販の固形飼料 (NMF、 オリエンタル酵母、 東京) と脱イオン水を自由に 摂取させ、 12時間の明暗サイクル(8 : 00点灯、 20 : 00消灯)で予備飼育した。
純化食はAIN76n1に準じて調製した。 即ち、 重量%で10オリーブ油(ナカライテ スク)、 20カゼイン(和光純薬工業)、 15コーンスターチ(日本食品化工、 岡
山)、 5セルロース粉末(日本農産工業、 東京)、 3.5塩類混合(A IN7
6 T
�f .日本
農産工業)、 lビタミン混合(A
IN76™.日本農産工業)、 0.3 DL-メチオニン(ナカ
ライテスク)およびショ糖(大日本製糖、 東京)で100[17Jとした。 コレステロー ル食は1%コレステローノレを上記の純化食に添加することで調製したD
無コレステロール食あるいはコレステローノレ食で1週間飼育したのち、 ジエチル エーテル麻酔下で大動脈採血により朝10時から11時の間に屠殺した。 肝臓を直ちに 摘出後-800Cに冷凍保存した。 血液は30分室温放置後氷冷し、 40C、 3,000中mで15 分間遠心し、 血清を分離した。 コレステロール7αーヒドロキシラーゼ活性の測定に は、 同様に飼育後、 真夜中の1時半から2時半の聞に断頭により屠殺し、 直ちに肝臓 から調製したミクロソーム画分を用いた。
本実験は九州大学の実験動物取り扱い規定に基づいて行われた。
血清および肝臓脂質濃度
血清のトリグリセリ ド、 コレステロール、 HDL-コレステロール濃度は市販の酵 素法キット(トリグリセライドG-テストワコー、 コレステローノレC-テストワコー、
それぞれ和光純薬工業、 HDL-C2 r第一」、 第一化学薬品、 東京)にて測定した。
肝臓脂質濃度は、 脂質をFolcht.去[18Jにて抽出した後、 化学法にてトリグリセリド [19J、 コレステロール[20J、 リン脂質[21J濃度を測定した。
5
WLレセプター、 コレステロール7α ーヒドロキシラーゼ、 アポリボタンパク質
mRNA測定
細胞の総RNAはグ アニジンチオシアネート/セシウムクロライドを用いた Chirgwinらの方法[22Jに従って超遠心法により調製した。 ノーザンプロッテイン
グ、はThomasの方法[23Jに従って行った。 実験に供したcDNAはアマーシャム社の マルチプライムDNAラベリングシステムを用いて[α_32p] dCTP (3,000 CilmmoI)で標 識した。 ハイブリダイゼーションはアマーシャム社の操作方法に従って行ったD ァ ポA-IV cDNAは米国ワシント ン大学のJ. 1. Gordon博士、 アポBcDNAは国立健康・ 栄 養研究所のA.
Matsumoto博士、 アポEcDNAはオーストラリアモナ シュ大学のG.
Schreibcr博士、 7α-hydro.'\ylasc cDNAは広島大学のM. Noshiro陣士、 LDLレセプター cDNAは米国スタンフォード大学のA. D. Cooper 博士からそれぞれ入手した。
ハイブリダイゼージョン後のメンブレンフィルターは室温で:2x SSC
(0.3M NaCI
O.lM sodium citrate)- 0.1
(,70 sodiunl dodecylsulfate
(SDS)で2回洗浄、 ついで650Cで O.:2XSSC (0.03M NaCI,O.OlM sodium citrate)
-0.10/0 SDSで4回洗浄後、 風乾した。mRNAシグナルの強さはバイオイメージングアナライザー(BAS-1000,フジ写真フィ ルム ・株、 東京)を用いて測定後、 X線フィルムにオートラジオグラフィ ーを行つ
た(図II-l-1、 図11-1-2)。 結果は同時にハイブリダイゼーションしたβ-アクチン m時�Aの強さの相対値で表した(データは示さず)。
血清アポリボタンパク質濃度
血清アポA-IVとアポEはロケット免疫電気泳動法[24Jにて測定した。 血清アポ
A-IVとアポE濃度は5週齢のSDラットから得た貯蔵血清の希釈サンプルからロケッ
トの高さを比較することで求め、 任意の単位として表した。ApoA・IV SF lO}lg
.. ___ I
5μE 電量圏直島 SC IOl"g .. !
5μg 電車亘旨 EF 10μg彊_ ,
5μg 震璽亘重量富島l
EC 10μg . _..
5μg 重量聖塾l
ApoB SF 5μg 轟轟�II
2.5μg z三三三 SC 5μg 檀重重量l
2.5μg 亡ご三
EF 5μg E三三�I
2.5μg 亡三三二
EC 5μg 聾璽璽事 2.5μg --:-:=三三τ
LD L receptor 15μg
7.5μg 15μg 7.5μg
15μg 7.5μg 15μg 7.5μg
ApoE 5μg
2.5μg コμg 2.5μg
コμg 2.5μg
3μg 2.5μg
Fig.II・I・1Slot blot hybri dimuonof hepatic apoAJV,B,E and LDL receptor HERNA SF and SC;SD rats fed cholesterol-free and -containing diets,respective13f
EF and EC;ExHC rats fed cholesterol-free and -containing diets,respect11re ly-
Two different am ount of totalRNAwere blotted for analysis of apo A-IV(lo and 5μg), LDL receptor (15 and 7.5μg) , apo B (5 and 2.5μg) and apo E (5 and 2.5μg) mRNA, rcspectively.
7
Cholesterol 7α-hydroxylase
4.4Kb -
2.3Kb - 2.0Kb -
SF SC EF EC
�
日g.II・I・2 Northern blot hybridization of hepatic cholesterol 7αーhydroxylase mRNA
SF and SC ; SD rats fed cholesterol-frce and -cont出ning diets, respectively.
EF and EC ; ExHC rats fed cholesteroI-free and -containing diets, respectively.
30μg of totaI RNA ,vcrc electroblotted onto nylon membrane.
Cholesterol 7α-hydro.'\ylase mRNA of 3.7 Kb band is indicated by an arrow.
The posi tion of marlωr DNAs with 2.0, 2.3 and 4.4 Kb is shown.
コレステロール7αーヒドロキシラーゼ活性の測定
ミクロソーム岡分の調製は、 肝臓を4倍容の20
mMシステアミン、 4mM塩化マグ、ネ
シウムを合むO.lMリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)でホモジナイズし、 核、 ミトコ ンドリア画分を除去後、 超遠心分離(55P-72超遠心機、 RP55T-450ロータ一、 目立、東京: 105,000 X g、
6
0分)することにより
行った。 コ
レステロール
7α ーヒ
ドロキシ
ラーゼの活性はCantfortらの方法[25Jに準じて測定した。 即ち、 20mMグルコース6-リ
ン酸、 2mM NADPおよび1 IUグルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ、 20mMシステ アミンおよび4mM塩化マグネシウムを合む0.1 M KCl緩衝液、 pH 7.4の反応液を用 い、 基質として300μM [4_J4C]コレステロール(0.5μCi/ml、 アマシャムジャパン)をTween-80 (1.5 mg / m l )を 月j
いて可溶
化した も
のを 添加
し、反応 を 開始
した。 3 7
0C
の 振渥恒温糟で30分間の反応を行い、 20倍容のクロロホルム:メタノール(2:1,v/v)で 反応を停止した。 脂質はFolchらの方法 [18Jで抽出し、 ベンゼン : 酢酸エチル( 7:3, V八1)を展開溶媒として用いたTLCにより7α-ヒドロキシコレステロールを分幽 後、 放射能活性を液体シンチレーシヨンカウンター(Tri-Carb 2250、 Packard Japan、 東京)を用いて測定した。LDLレセプタータンパク質量の測定
ラッ ト
LDL
レセプター
のカ
ルボキ、ンル基末端のア
ミノ酸15
残基(
NH2-
Thr-Tyr-ProSer-Arg-Gln-Met-VaトSer二Leu-Glu-Asp-Asp-VaトAla-COOH) [
2
6Jを
合む
多抗原性ペプ
チド
[27
Jの合成を
イワキ硝子(
千葉)に
依託した。
このペ
プチドを
用いてLDL
レ セプタ
ーのポリ
クローナルの抗血清を
日本白色ウサギ
から調製した
。 即ちペプチ
ド2 mgとAdjuvant Complete Freund (DIFCO Lab.、 MI、 USA)1 mlを混合し、 超音波
破砕機でエマ
ルジョンに
して、 ウサギ
の背中に
皮内注射した
。 その2
週間後から2 週間おきにペプチド0.5 mgとAdjuvant Incomplete Freund (DIFCO Lab.)
1mlのエマ ルジョンを同じウサギの背中に皮下注射し、 計5回追加免疫を行った。 最後の追加
免疫の1 週間後にネンブタール麻酔後、 腹部大動脈より採血し抗血清を得た。肝臓の膜両分タンパク質はCosgroveらの方法で調製し、 可溶化した [28J 。 可溶
9
化した膜i両分タンパク質(500μg)を7. 5%ポリアクリノレアミドゲル電気泳動によっ て分画後、 0.8mA/cm2、 1.5時間でエレクトロプロッテイング装置(semi-dry transf er equipment BE-300、 Biocraft、 東京)を用いてナイロンメンブレンに転写した。 メン ブレンを5%脂肪酸フリー牛血清アルブミンでブロッキング後、 LDLレセプター抗 血清の200倍希釈溶液でインキュベートした。 ついでC25I]標識ロバ抗ウサギ抗体(
0.5μCi / mI)でインキュベートした。 他の報告とほぼ一致する[28, 29J、 分子
約135,000のバンドをLDLレセプタータンパク質として同定し、 バイオイメージング アナライザーを用いてLDLレセプター量を測定した(図II-1-3、 図II-1-4)。
統計解析
結果はDuncan's nc\\' multi ple-range test [30Jおよびラットの系統(s)、
食事コレステロール(C)および交互作用(S x C)の影響を二因子分散分析法 [31Jにより解析した。 危険率5%以下を有意とした。
II- 1 -
3 結果 体重増加量、 摂食-1週間の飼育期間中の体重増加量、 摂食量には系統および食事コレステロールの 有無の影響は認められなかった(データは示さず)。
血清、肝臓脂質濃度
表II-l-1にラットをコレステロール添加あるいは無添加の純化食で1週間飼育した 時の血清および肝臓の脂質濃度を示した。 血清コレステロール濃度は、 食事コレス テロールを添加したExHCラットでのみ上昇し、 SDラットでは上昇しなかった。 血 清トリグリセリド、濃度への食事コレステロールの影響は顕著ではなかったが、 SDラッ
トでExHCラットよりも高い値を示した。 肝臓の総コレステロールおよび、遊離コレ ステロール濃度は食事へのコレステローノレ添加により上昇したが、 系統による違い は見られなかった。 肝臓トリグリセリド濃度は、 コレステロール添加の影響を受け なかったが、 SDラットでExHCラットよりも顕著に高い値を示した。 肝臓リン脂質
199000-
120000- 87000-
3000
2000
1000 ω=-偲降、同め晶
ハUAU
1200 ハUAV
AU --i
800 Protein
(μg)
600 400
200
Fig.II・I・3 Intensities of immunoblotting of LD L receptor protein with an increase of blotted proteins
Liver membrane proteins (93, 186, 373, 745 and 1118μg) were electroblotted onto nylonmembrane, and the membrane was treated as described in the
MA TERIAL AND MEfHODS
(the upper panel).Strength of radioactivities
(PSL
value : photo stimulated luminescence value) was dependent on the amount of membrane proteins applied (the lower panel), and followed the followingequation: y = 0.892x+1.44*10-3x2+2.10*10-7x3-98.4 (r=1.00).
11
SF SC EF EC 199000-
120000- 87000-
Fig.II・1・4 Immunoblotting of hepatic LDL receptor protein SF and SC : SD rats fed cholesterol-free and -containing diets, respectively.
EF and EC ; ExHC rats fed cholesterol-free and -containing diets, respectively.
500μg of the membrane proteins were electroblotted onto nylon membrane.
Table 11-1-1 Serum and liver lipids in ExHC and SD rats
Serum lipids (mg/dl) Cholesterol
Triglyceride Hepatic lipids (mg/g)
Total cholesterol Free cholesterol Triglyceride Phospholipid
Groups
SF SC EF EC
133:1::10a 142:1:: 9a 127:t 6a 338:t29b 251:t49a 209:1::17ab 165:t16ab 125:t16b
3.81:t0.36a 20.2:t1.3b 3.24:tO.88a 22.4:t1.7b 1.48:t0.18a 3.09:tO.58b 1.32:tO.03a 3.74:tO.72b 65.7:t4.9a 79.3:1::18.1 a 8.61:1::0.32b 21.2:t0.7b 27.4:1::0.9 25.8:t1.5 26.8土0.4 26.6:t1.2
SF and SC, SD rats fed cholesterol-free and -containing diets, respectively.
EF and EC, ExHC rats fed cholestβrol-free and -containing diets, respectively.
Values are means :t SEM for five rats per group. NS means no significant difference.
Values with different superscript letters show significant difference at Pく0.05.
ANOVA
Strain Cholesterol S X C
(S) (C)
Pく0.05 Pく0.05 Pく0.05 Pく0.05 NS NS
げ--14 NS Pく0.05 NS
NS Pく0.05 NS Pく0.05 NS NS
NS NS NS
濃度は、 系統や食事コレステロールの影響を受けなかった。
肝臓mRNA量および血清、 肝臓タンパク質発現量
表II-1-2に1%コレステロール添加および無添加の純化食で1週間飼育したラット肝 臓のコレステロール7α-ヒドロキシラーゼ、 LDLレセプター、 アボタンパク質の
mRNA量およびそれらのタンパク質の肝臓または血清中の発現量を示した。 コレス テロール添加によりExHCラットのコレステロール7αーヒドロキシラーゼ、mRNA
は増加し、 LDLレセプタ-mRNA貴は低下した。 これらの影響はSDラットでは観察 されなかった。 食事コレステロールの有無に関わらず、 コレステロール7αーヒドロ キシラーゼmRNA量はExHCラットで高く、 LDLレセプタ-mRNA量はExHCラツ トで低かった。 食事コレステロールはアポA-IV、 B、 EのmRNA置に影響しなかった が、 アポA-IV mRNA量はExHCラットでSDラットと比較して低い値を示した。
肝臓のコレステロール7α-ヒドロキシラーゼ活性は、 食事コレステロールにより 増加しExHCラットで高い値を示した。 肝臓のLDLレセプタータンパク質量は、 系 統や食事コレステロールの影響を受けなかった。 血清アポA-IV濃度は、 食事コレス テロールによる影響を受けなかったが、 Eオ-ICラットでSDラットよりも低い値を示 した。 血清アポE濃度は、 両系統ラットで食事コレステロールにより低下した。
II-1-4 考察
Hortonらは、 コレステロール食を合む同じ食事をSDラットとハムスターに与えた とき、 ラットではコレステロール7α-ヒドロキシラーゼのmRNA置と活性が増加し
たが、 ハムスターではそのような応答が見られないことを示した[32J。 これらの 結果から、 彼らはハムスターがコレステロールに対して感受性が高く、 血清コレス テロール濃度上昇が見られるのはコレステロールによる本酵素の誘導が起こらない からであると主張している。 本実験では、 肝臓におけるコレステロール異化の律速 醇素であるコレステロール7α-ヒドロキシラーゼ、のmRNA量および活性が、 食事コ レステロールによりExHCラットでSDラットにくらべ顕著に増加する事を示した。
しかし、 糞中への胆汁酸の排液量に両系統ラットで違いが見られず[33J、 また
Table 11-1-2 Hepatic mRNA abundance, activities of cholesterol 7α-hydroxylase and LDL receptor protein mass,
and serum apolipoprotein abundance in ExHC and SD rats
Groups ANOVA
SF SC EF EC Strain Cholesterol S X C
(S) (C) mRNAs (arbitrary unit)
7α-hydroxylase 100:t26a 127土13a 165:t17a 378:t60b Pく0.05 Pく0.05 P.く0.05 LDL receptor 100:t 8a 100:t 5a 75. 2::t4. 2b 56.9:t2.1 c Pく0.05 NS NS
Apo A-IV 100:t 7a 109:t 8a 72.3:t2.7b 75.7:t4.4b Pく0.05 NS NS
Apo 8 100土15 121:t13 96.2:t12.4 111:t18 NS NS NS
ApoE 100:t 5 114:t 3 98.8土3.4 109:t 6 NS NS NS
Hepatic proteins
7α-hydroxylase (nmol/hr/mg protein) 0.393:t0.051 a 0.660:tO.080b 0.645:tO.036b 1.03:tO.06c P.く0.05 Pく0.05 NS LDL receptor (arbitrary unit) 100:t13 111:t 5 114:t 7 106:t 5
Serum apoproteins (arbitrary unit)
Apo A-IV 100:t 9a 102:t 9a 78.6:t3.6b 72.5:t1.6b ApoE 100土 6a 51.1:t4.9b 100:t14a 55.0:t1.9b
SF and SC, SD rats fed cholesterol-free and -containing diets, respectively.
EF and EC, ExHC rats fed cholesterol-free and -containing diets, respectively.
Yalues are means :t SEM for five rats per group. NS means no significant difference.
Values with different superscript letters show significant difference at P く 0.05.
NS NS NS
Pく0.05 NS NS NS Pく0.05 NS
V"'.
ExHCラットでSDラットよりもコレステロール負荷後の血清コレステロール濃度は 高いことから、 ExHCラットの高コレステロール血症発症に本酵素は重要な役割を 演じていないと考えられた。 従って、 ExHCラットにおける食事コレステロールに 対する高感受性は、 ハムスターの場合におけるそれとは異なった機構によって制御 されていると考えられた。
なお、 食事コレステロールに対するコレステロール7αーヒドロキシラーゼ活性の 増加は両系統ラットにおいて同程度であるにも関わらず、 mRNAの発現はSDラット の27%に比べExHCラットでは2.7倍もの増加が見られたことから、 両系統ラットに おける本遺伝子の転写後および翻訳後の調節機構は異なっていると考えられた。
本実験では、 肝臓へのコレステローノレ取り込みに関係するLDLレセプターの mRNA量は、 食事コレステロールによりExHCラットでSDラットにくらべ顕著に低
する事を示した。 食事コレステロールによるLDLレセプタ-mRNA最のダウンレ ギユレーションはマウス[34J、 ハムスター[32J、 ウサギ[35J、 サル[36Jで 報告されているが、 SDラットではそのような応答は認められていない[32J。 本実 験でもSDラットではコレステロール負荷に伴うLDLレセプタ-mRNAレベルの低下 は認められなかった。 上述のコレステロール 7 αーヒドロキシラーゼ、mRNA量の顕著 な上昇と考えあわせると、 ExHCラットにおけるコレステロール代謝に関わるタン パク質の遺伝子発現システムは食事コレステロールに対して極めて感受性が高いと いえる。 しかしながらLDLレセプタ-mRNA量の違いは、 このタンパク質量には反 映されなかった。 従って、 ExHCラットにおけるコレステロール負荷に対する高感 受性をLDLレセプタータンパク質の発現量の面から説明することはできない。
Roachらも食事コレステロールによってSDラットでLDLレセプタータンパク質 が影響を受けなかったと報告している[37J。 しかしこの場合のLDLレセプタータ ンパク質量とは、 リボタンパク質に対するレセプターの親和性の違いや、 実際にリ ボタンパク質の取り込みに関与している細胞膜表面のレセプターの存在量などを
確に反映しないため[38, 39J、 肝臓でのリボタンパク質の取り込みの程度を必ず しも意味しない[32J。 実際、 ImaizumiらはlTI V1VOや初代培養肝細胞を用いた実験 においてβ-VLDLの肝細胞への取り込みはExHCラットでSDラットと比較して低い
16
ことを示していることからも[11J、 E泣-ICラットの高コレステロール血症発症に は、 レセプターのリポタンパク質に対する親和性、 細胞膜表層と細胞内との聞での レセプターのリサイクリングの変化などが関与している可能性は残っている。
本実験では、 肝臓のアポA-IVmRNAレベルがSDラットに比べExHCラットで低 していている事を示した。 LeBoeutらは留歯類や鳥類における肝臓のアポA-IV発 現と肝臓トリグリセリドの蓄積と分泌の研究から、 アポA-IVはトリグリセリドの VLDLとしてのパッケージングに必要であると示唆している[40J。 それゆえに、
本遺伝子の発現低下が肝臓トリグリセリド濃度の低下と相乗的に作用する事で、 第 II章第3節に示すように、 コレステロールエステルに富むß -VLDLの形成増加 [12Jを介して、 ExHCラットの高コレステロール血症発症に関与している可能性 がある。 なお本実験では、 VLDLやLDLの構成タンパク質であるアポBやアポEの mRNA量はラットの系統や食事コレステローノレの影響を受けなかった。
II-1-5 小括
ExHCラットとSDラットで肝臓のコレステロール代謝関連タンパク質の量、 活性
と遺伝子発現に及ぼす食事コレステロールの影響について検討した。 食事コレステ ロールに応答してExHCラットのコレステロール7αーヒドロキシラーゼmRNA量は
増加し、 LDLレセプタ-mRNA最は低下した。 肝臓のコレステロール7αーヒドロキシラーゼ活性は、 食事コレステロールにより増加しExHCラットで高い値を示した。
肝臓のLDLレセプタータンパク質量は系統や食事の影響を受けなかった。 従って、
ExHCラットにおける食事コレステロールに対する高応答性をこれらコレステロー ル代謝関連タンパク質の量や活性に関連づけて説明することはできなかった。
アポB、 EmRNA量は系統や食事コレステロールの影響を受けなかった。 アポA- IVmRNA量は食事コレステロールの影響を受けなかったが、 ExHCラットでSDラッ
トよりも低かった。 肝臓のトリグリセリド濃度もExHCラットで低かった。 血清ア ポA-IV濃度は、 食事コレステロールによる影響を受けなかったが、 ExHCラットで SDラットよりも低い値を示した。 血清アポE濃度は、 両系統ラットで、食事コレステ
ロールによりイ広;下した。
17
第2節 トリグリセリド代謝関連酵素の活性および遺伝子発現
II-2- 1
治者百Sakonoらは、 コレステロール負荷ExHCラットはコレステロールに富みトリグリ セリドが少ない、 β-VLDL様のリボタンパク質を肝臓から分泌するする事を報告し た[12J。 前節にも示した通り、 ExHCラットにおいて肝臓でのトリグリセリド濃 度はSDラットに比べて顕著に低い値を示した。 コレステロールに富みトリグリセリ ドが少ないβ-VLDLのln VIVQでの血中からの消失は、 通常のVLDLと比較して遅い
ことが知られている事から[41 J、 ExHCラットでの高コレステロール血症の原因 には、 肝臓で生成するβ-VLDL様のリボタンパク質の構造が関係している可能性が ある。 ExHCラットの肝臓におけるトリグリセリド低下のメカニズムを探るため、
本節では肝臓トリグリセリド濃度に影響を与えると考えられる肝臓脂肪酸合成系、
ß-酸化系、 トリグリセリド、合成系酵素活性とその遺伝子発現について検討した。
II-2 -2 実験材料および方法
試薬
トリトンX-100 、 L-リンゴ酸、 DTT、 5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸) (DTNB) はナカライテスクから、 アセチノレCoA、 マロニノレCoA、 パルミトイノレCoA、 L-カル ニチン、 CoA、 FAD、 ホスファチジン酸、 ホスファチジルコリンはSigma Chemical Co.
(MO,
USA)から、 NADP、 NADPH、 NAD及びグノレコース6 -リン酸はオリエ ンタル酵母工業から、 6-ホスホグルコネイトデヒドロゲナーゼ、はBoehringerMannheim GmbH (Germany)から購入した。 18SリボソームRNA cDNAは American Type Culture Collection (MD, USA)からH薄入した。
実験動物および飼料
第II章第1節と同様の食事でExHCおよびSDラットを1%コレステロール添加及び、
無添加の純化食で1週間飼育した。 大動脈採血により午前10時から1 1時の間に屠殺を 行い、 血清と肝臓を採取した。
18
細胞画分の調製
肝臓を氷冷下で6倍容の 0. 25M煎糖と1mMEDTAを合む10mMトリス塩酸緩衝液(
pH7.4)でホモジナイズ後、 700Xgで10分間遠心した上清を、 さらに10,000X gで10 分間遠心分離することにより、 ミトコンドリア画分を沈殿させた。 その上清を 125,000 X gで60分間遠心分離し、 上清の細胞質画分及び沈殿したミクロソーム画分
を得た 。 各回分のタンパク最はLowry法で定 量した[42J。
Fatty acid synthase活科:の測定
脂肪酸合成酵素活性はKeI1eyらの方法で測定した[43J。 即ち、 最終濃度0. 05mM アセチノレCoA、 O.3mM NADPHおよび0.2mM EDTAを合む100mMリン酸カリウム緩 衝液(pH7.0)に細胞質問分(タンパク量約0. 7mg)を添加し、
NADPHの減少を30
OC、 340nmで1.5分間追跡し(ブランク)、 その後マロニノレCoA(最終濃度0.2mM) を加えて混合し、 さら に 5分間追跡した(総量1mL)。 マロニノレCoA添加時に得られ た吸光度の減少からブランクの吸光度の減少を差し引くことにより、 次のように NADPHの減少速度を求め、 酵素活性を計算した。 活性( nmol/rrtin/mgprotein) ={
(反応時の吸光度の減少ーブランクの吸光度の減少)/6,220} X 109 X (反応液量 ml / 1000) X (1 /測定時間min)X (1 /タンパク量 mg)。 なお 、 6.220はNADPH の モル吸光係数である。Glucose 6-phospha te dehydroxylase活性の測定
グ戸ルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ活性は、 Kelleyらの方法で測定した[44J。
即ち、 最終濃度3.3mMグ、ルコース6-リン酸、
1.6mM NADP、 0.5U 6-ホスホグ、ルコネ
イトデヒドロゲナーゼ、および、30mM塩化マグネシウムを合む160mMトリス塩酸緩衝 液(pH7.6)に細胞質画分(タンパク量約0.35mg)を添加し、 生成したNADPHの増 加を300C、 340nmで 3分間吸光度を追跡し(総量1mL)、 得られた吸光度の増加 から 次のように NADPHの生成速度を求め、 酵素活性を計算した。 活性( nmol!min/mgprotein)
=(吸光度の増加/6,220)X 109
X(反応液量 mL
/1000) X (1 /測定時間
19
min) x (1 / タンパク量mg) x (1/ 2)。 なお、 全体を2で割つであるのはグルコー ス6-リン酸1分子からNADP+2分子が転換されるためである。
Malic enzyme活性の測定
リンゴ酸酵素活性は、 Ochoaらの方法で測定した[45J。 即ち、 最終濃度
1.2mML-リンゴ酸、 4mM塩化マンガン、 1.2mMNADPを合む64mMトリエタノール アミン緩衝液(pH7.4)に細胞質画分(タンパク量約0.56mg)を添加し(総量
1mL)、 270C、 340nmで2分間吸光度を追跡し、 得られた吸光度の増加lから次のよう にNADPHの生成速度を求め、 酵素活性を計算した。 活性(nmol!mÌn/mg proteÌn )
= (吸光度の増加/ 6,220)X 109 x (反応液量mL/ 1000) x (1 /反応時間min)
x (] / タンノミク民mg)。
Phospha tida te phosphohydrolase活性の測定
ホスファチジン酸ホスホヒドラーゼ活性は、 Waltonらの方法で測定した[46J。
即ち、 最終濃度J.OmMホスファチジン酸と1.0mMホスファチジルコリン(0.9%塩化 ナトリウムを用いて超音波処理により混合させたもの)および、 1.25mM EDTAを 合む50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)に3.25mM塩化マグネシウム添加もしくは無 添加の条件で、 ミクロソーム(タンパク量約O.l2mg)を添加し370C、 15分間インキュ ベートした(総容量0.2mL)。 反応液に0.8mLの発色液(0.13%ラウリル硫酸ナトリ ウム、 1.25%アスコルビン酸、 0.32%モリブデン酸アンモニウム四水和物及び
O.375M硫酸の水溶液)を加え、 450Cで20分間インキュベートすることにより反応生 成物である無機リンを発色させ、 820nmで吸光度を測定した。 ホスファチジン酸と ホスファチジ、ルコリンが入っていない反応によりミクロソームからのリンの産生阜、
ミクロソームが入っていない反応によりホスファチジン酸とホスファチジルコリン からのリンの産生量を測定した。 それらをブランクとして差し引くことにより次の ように反応生成物である無機リン量を求めた。 無機リン産生量(μg) =反応による リン産生量一(ミクロソームからのリンの産生量+ホスファチジン酸とホスファチ
ンルコリンからのリンの産生量)。 求めた無機リン産生量から次のように酵素活性
20
を計算した。 PAP活性(nmol!min/mgproteÌn) =無機リン産生量X 103 X ( 1 /
30.97) x (] /15min) x (1 /タンパク量 mg)。 なお、 リンの原子量を30.97とした。
Camitine palmitoyJ transferase活性の測定
カルニチンパルミトイルトランスフエラーゼ活性は、 Marl刊rellら の方法で測定し た[47J。 即ち、 最終濃度0.0375mMパルミトイノレCoA、 0.25mMDTNB、 1.25mM EDTAおよび0.1%トリトンX-I00を合む58mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)にミトコ
ンドリア(タンパク量約0.52mg)を添加し、 270C、 412nmで5分間吸光度を追跡し (ブランク)、 その後しカルニチン(最終濃度1.25mM)を添加し、 CoAの生成を5
分間追跡した(総容量lmL)0 L-カルニチン添加時に得られた吸光度の増加からブ ランクの吸光度の増加を差し引くことにより、 次のようにCoAの生成速度を求め、
醇素活性を計算した。 活性(nmollmin/mgprotei n)二{ (反応時の吸光度の増加
ブランクの吸光度の増加) / 13,600
} x
109 X (反応液量ml / 1000)x
(1 /反応時間 min)x
(1 /タンパク量mg)。 なお、 13,600はCoAのモル吸光係数である。PeroxisomaJ ß-oxida tion活性の測定
ベルオキシソームのß-酸化活性は、 Lazarowの方法で測定した[48J。 ミトコン
ドリアの脂肪酸酸化 系の初発酵素であるアシルーCoA脱水素酵素は、 シアンなどの電 子伝達系阻害剤によって酵素活性が阻害されるが、 ベルオキシソームの系はこれら によって影響を受けない。 よってこのベルオキシソーム系のシアン非感受性を利用 して、 シアン存在下におい てß-酸化活性の測定を行う。 即ち、 最終濃度O.2mM
NAD、 1mM DTT、 75μg/mL牛血清アルブ、ミン、 100μg/mLトリトンX-100、 O.lmM CoA、 O.OlmM FADおよびlmMシアン化カリウムを合む47mMトリス塩酸緩衝液 (pH8.0)にミトコンドリア(タンパク量約0.26mg)を添加し、 370C、 340 nmで3分
間吸光度を追跡した(ブランク)。 その後、 1mMパルミトイノレCoA(最終濃度
O.OlmM)を混合し、 NADHの生成を5分間追跡した(総容量lmL)。 パルミトイル CoA添加時に得られた吸光度の増加からブランクの吸光度の増加を差し引くことにより、 次のようにNADHの生成速度を求め、 酵素活性を計算した。 活性(nmol!min/
11
mg protein)二{ (反応時の吸光度の増加ーブランクの吸光度の増加)/6,220} X 109
x (反応液電m1 / 1000) x (1 /測定時間min)x (1 /タンパク最mg)。 なお、
6,220はNADHのモル吸光係数である。
肝臓mRNA発邸主iの測定
第II章第1節と同様の方法により測定した。
リンゴ、酸酵素cDNA [49J、 グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼcDNA [50J、
脂肪酸合成醇素cDNA [51Jは帝塚山学園大の入谷信子教授から入手した。
統計解析
第II�第1節とIrij段に行った。
II-2-3 結果
肝臓におけるトリグリセリド代謝関連酵素活性
表II-2-1に1%コレステロール添加および無添加の純化食で1週間飼育したラット肝 臓のトリグリセリド代謝関連酵素の活性を示した。 脂肪酸合成酵素の活性は、 食事 コレステロールによる影響を受けなかったがSDラットに比べExHCラットにおいて 低い値を示したD 一方、 脂肪酸合成系にNADPHを供給するグルコース6-リン酸デ
ヒドロゲナーゼ およびリンゴ酸酵素活性には、 系統および食事による影響は見られ なかった。 トリグリセリド合成系の律速酵素と考えられるホスファチジン酸ホスホ ヒドラーゼ活性は、 Mg2+依存性ではSDラットに比べExHCラットにおいて低い値を 不し、 Mg2+非依存性ではSDラットに比べEオ-ICラットにおいて高い値を示した。
Mg2+{:衣存性、 非依存性ともに、 食事コレステロールによる影響は受けなかった。 ミ
トコンドリアでのβ-酸化の指標となるカルニチンパルミトイルトランスフエラーゼ 活性は、 食事コレステロールによる影響を受けなかったがSDラットに比べExHCラッ トにおいて高い値を示した。 ベルオキシソームのβ-酸化活性は、 食事コレステロー
ルによる影響を受けなかったがSDラットに比べExHCラットにおいて低い値を示し た。
Table 11-2-1 Activities of enzymes related to triglyceride metabolism in ExHC and SD rats
Groups ANOVA
SF SC EF EC Strain Cholesterol S X C
Fatty acid synthase Malic enzyme
Glucose 6-phosphate dehydrogenase Phosphatidate phosphohydrolase
恥192+ーdependent
35.4:i:2.3 ac 87.6:i: 7.8 105:t8 18.0:i:Ü.5
nmol/min/mg protein 37.8:i:2.9a 27.3:i:1.1 b 83.2:t6.1 80.3:i:6.0 90. 9:i: 10.0 85.7:i:10.5 17.4:i:0.6 15.3:i:1.3
29.5土2.1bc 81.6:i: 1 0.1 87. 7:i: 18.4 15.7:i:1.1
(S)
Pく0.05 NS NS
Pく0.05 Mg2+ - independent 5.36:i:Ü.17ab 4.88:i:Ü.13a 5.63:i:Ü.27ab 6.02:i:Ü.41 b Pく0.05 Camitine palmitoyl transferase 1.73:i:0.19a 1.42土0.13a 2.36:i:0.17b 2.52:i:0.21 b Pく0.05 Peroxisomal ß-oxidation 10.3:i:Ü.6a 9.40:t1.39a 4.32:i:0.60b 3.92:i:0.75b Pく0.05
SF and SC, SD rats fed cholesterol-free and -containing die臼, respectively.
EF and EC, ExHC rats fed cholesterol-free and -containing diets, respectively.
Values are means :i: SEM for five rats per group. NS means no significant difference.
Values with different superscript letters show significant difference at P く 0.05.
(C)
NS NS NS NS NS NS
NS NS NS NS NS NS NS NS
げ?1l
肝臓におけるトリグリセリド代謝関連酵素mRNAの発現
肝臓におけるトリグリセリド代謝関連遺伝子の発現は、 ノーザンハイブリダイゼー シヨン法により測定した(図II-2-1)。 リンゴ、酸酵素mRNAは肝臓において2種類の 異性体が報告されており[52J、 2.7kbと4.5kbの2つのバンドが検出された。 これ
ら2種の異性体は非翻訳領域の長さの違うだけで、 最終的に合成される酵素タンパ
ク質としては同じものであることが報告され ていることから[52J、 両方のバンド がリンゴ酸酵素の転写段階での発現量を示していると考えられ た。 グ、ルコース6-リ ン酸デヒドロゲナーゼ、mRNAおよび脂肪酸合成酵素mRNAは、 それぞれ2.3kb、
9.1kbの位置にバンドが検出された。 また内部標準として用いた18SリボソームRNA 霊は系統および食事による影響を受けなかった。 表II-2-2に肝臓のトリグリセリド代 謝関連遺伝子の発現を示した。 肝臓における脂肪酸合成酵素mRNAの発現量は、 食
コレステロールによる影響を受けなかったがSDラットに比べExHCラットにおい て低い値を示した。 同様に肝臓におけるグルコース6- リン酸デヒドロゲナーゼおよ びリンゴ、酸酵素のmRNAの発現量は、 食事コレステロールによる影響を受けなかっ たがSDラットに比べExHCラットにおいて低い値を示した。
II-
2
-4 考察本実験においても第11章第1節と同様に、 SDラットに比べExHCラットにおいて肝 臓および血清中のトリグリセリド濃度が低いことが確認された(データは示さ ず)。 食事による血清トリグリセリド濃度低下作用としては、 食事脂肪として魚油 を与えた場合、 肝臓での脂肪酸合成の抑制およびß-酸化の充進によりトリグリセリ
ド合成が減少し、 肝臓コレステロール濃度は低下しないが、 VLDLトリグリセリド の血中への放出が抑制されることが知られている[53, 5 4 J。 いずれ にせよ、 本実 験におけるExHCラットの血清トリグリセリド濃度の低下は、 肝臓トリグリセリド の合成抑制および濃度低下に起因するものであると考えられる。 そこで、 肝臓のト
リグリセリド濃度に影響を与える脂肪酸合成系、 トリグリセリド合成系および脂肪 酸βー酸化系の酵素の活性と遺伝子の発現に及ぼすラットの系統と食事コレステロー
Glucose 6・phosphate dehydrogenase
SF SC EF EC
2.3 kb-
Fatty acid synthase
SF SC EF EC
9.5 kb-
Malic enzyme
4.5 kb- 2.7 kb-
SF SC EF EC
18s ribosomal RNA
SF SC EF EC
2.2 kb-
田園轟覇
Fig. 11-2・1 Northern hybridization of mRNAs related to triglyceride metabolism SF and SC;SD rats fed cholesterol-free and -containing diets,respectively-
EF and EC;ExHC rats fed chol esterol-free and-containing diets,respectively-
25
Table 11-2-2 Abundance of hepatic mRNAs in ExHC and SD rats
Groups
SF SC EF EC
arbitrary unit
Fatty acid synthase 100:t23 114:t56 41.3:t9.3 31.1:t5.0
Malic enzyme 100:t9a 89. 5:t 19. 7a 49.2:t4.8b 52.2:t9.7b Glucose 6-phosphate dehydrogenase 100:t10a 76.2::t23.0ac 43.9:t5.8bc 33.1:t5.7b
SF and SC, SD rats fed cholesterol-free and -containing diets, respectively.
EF and EC, ExHC rats fed cholesterol-free and -containing die包, respectively.
Values are means :t SEM for five rats per group. NS means no significant difference.
Values with different superscript letters show significant difference at P く 0.05.
ANOVA
Strain Cholesterol S X C
(S) (C)
Pく0.05 NS NS Pく0.05 NS NS
ぞ可、〉}
Pく0.05 NS NS
ノレの最多響について検討した。
脂肪酸合成酵素mRNA発現量は、 食事コレステロールの影響を受けなかったが、
SDラットに比べExHCラットで低い値を示した。 また本酵素活性も食事コレステロー ノレの影響を受けなかったが、 SDラットに比べExHCラットで低い値を示した。 一方、
脂肪酸合成系にNADPHを供給するグルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼおよびリ ンゴ酸酵素mRNA発現量は、 食事コレステロールの影響を受けなかったがSDラット に比べExHCラットで低い値を示した。 しかしそれらの酵素活性は、 系統および食 事の影響を受けなかった。 SD[52Jおよび、Wistarラット[55Jにおいては、 両酵素 とも活性とmRNA量の聞には高い相関があることが報告されていることから、
ExHCラットにおけるこれら酵素タンパク質量はSDラットと比較して減少している と予想される。 本実験では、 食事脂肪としてオレイン酸に富むオリーブ油を用いた。
飽和脂肪酸に富む油脂を脂肪源としてExHC、 SDラットを 2週間飼育した場合では、
リンゴ酸酵素とグ、ルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ活性は、 いずれもExHCラット でSDラットよりも顕著に低かった(データは示さず)。 ただし飽和脂肪酸食ではこ れら酵素の活性は、 本実験における不飽和脂肪酸食の場合と比較して高いので、 酵 素活性の高さも何らかの関係があるのかもしれない。 これらのことから本実験でグ ルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ、およびリンゴ酸酵素の活性とmRNA量の聞にホ 関が見られなかったのは、 酵素活性が酵素タンパクの量以外の要因によって影響を 受けた可能性が考えられる。 いずれにしても本実験では、 ExHCラットの脂肪酸合 成に関与している酵素の遺伝子発現はSDラットと比較して低いことが示された。 従っ て、 ExHCラットでは肝臓のトリグリセリド濃度の低下に脂肪酸合成系が関与して いることが推察された。
トリグリセリド合成系の律速酵素と考えられるホスファチジン酸ホスホヒドラー ゼ活'性は食事コレステロールの影響を受けなかったが、 Mi+依存性のそれはSDラッ
トに比べExHCラットにおいて低い値を示し、 Mg2+非依存性のそれはSDラットに比 べExHCラットにおいて高い値を示した。 Mg2+非依存性のホスファチジン酸ホスホ
ヒドラーゼは細胞内情報伝達系にジグリセリドを供給する酵素と考えられており [56J、 肝臓トリグリセリド濃度への本酵素の寄与は少ないと見なされている。 従つ
27
て、 ExHCラットの.トリグリセリド合成系はSDラットと比べて低下していると考え られた。
。-酸化系として、 ミトコンドリアでのβ-酸化の指標となるカノレニチンパルミト イノレトランスフエラーゼ活性とベルオキシソームのβー酸化活性を測定した。 カルニ チンパルミトイルトランスフエラーゼ活性は、 食事コレステロールの影響は受けな かったがSDラットに比べExHCラットで高い値を示した。 ベルオキシソームのβ-酸 化活性に系統による影響が見られたが、 ベルオキシソームのβー酸化は極めて長鎖の 脂肪酸(C20以上)に基質特異性を示す事と本実験の食事脂肪として用いたオリーブ 油にはそれらはほとんど合まれない事から、 本実験における肝臓トリグリセリド濃 度の変化への関与は少ないと考えられた。
以上のことから、 ExHCラットは脂肪酸合成能、 トリグリセリド合成能が低く、
かつ脂肪酸のß-酸化系への利用が充進し、 そのために肝臓のトリグリセリド濃度が 低下していると考えられた。 ExHCラットではNADPH供給系酵素の遺伝子の発現と 脂肪酸合成酵素の遺伝子発現能がSDラットと比較して低いことが明らかとなった。
トリグリセリド合成の律速酵素であるホスファチジン酸ホスホヒドラーゼ、 ミトコ ンドリアでのβ-酸化の律速酵素であるカルニチンパルミトイルトランスフエラーゼ、
の遺伝子発現の程度についても今後検討していく必要がある。
II-2-5 小括
ExHCラットとSDラットで肝臓のトリグリセリド代謝関連酵素の活性発現と遺伝 子発現に及ぼす食事コレステロールの影響について検討した。 脂肪酸合成酵素の活 性はSDラットに比べExHCラットにおいて低い値を示した。 グルコース6-リン酸デ ヒドロゲナーゼ、およびリンゴ酸酵素活性には、 系統および食事による影響は見られ なかった。 ホスファチジン酸ホスホヒドラーゼ活性は、
Mg2+依存性ではSDラットに
比べExHCラットにおいて低い値を示し、 Mg2+非依存性ではSDラットに比べExHC ラットにおいて高い値を示した。 カルニチンパノレミトイルトランスフエラーゼ活性 は、 SDラットに比べExHCラットにおいて高い値を示した。 ベルオキシソームのβ酸化活性は、 SDラットに比べExHCラットにおいて低い値を示した。 肝臓における
脂肪酸合成酵素、 グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼおよびリンゴ酸酵素の mRNAの発現量は、 SDラットに比べExHCラットにおいて低い値を示した。
29
第3節 ゴルジ装置のリボタンパク質組成
II- 3 - 1
緒言肝臓におけるリボタンパク質合成は、 肝細胞の滑面小胞体からの脂質成分と粗面 小胞体からのアボタンパク質が両小胞体接合部で会合する事により行われ、 そのム 成調節は細胞内のコレステロール量やトリグリセリド量によっても影響を受けるこ とが知られている[57J。 合成されたリボタンパク質はゴ、ルジ装置に移動し、 ゴル ジ装置で形成された分泌小胞で糖を負荷された後、 細胞外へ分泌されるため、 ゴル ジ装置中には血流中へ分泌される寸前の新生リボタンパク質が存在すると考えられ る。 第II章第2節で示したように、 ExHCラットの肝臓ではトリグリセリド合成能が 低いことから、 相対的にコレステロールエステルに富むリボタンパク質が分泌され ている可能性がある。 そこで、 両系統ラットにおける1%コレステロール摂食後のゴ、
ルジ装置中のリボタンパク質の脂質組成を検討した。
II- 3 -2 実験材料および方法
試薬
デキストランT-500はファルマシアジャパン(東京)、 ダウエックス1X8は室町化 学工業(東京)から購入した。 N-アセチルグルコサミンはナカライテスクから、
UDP-D-ガラクトースはSigma Chemical Co.から、 UDP-D-ガラクトースー[l�C]はアマ
シャムジャパンから購入した。 5αーコレスタンはナカライテスクから、 Silicone OV-17 (3%、 Gas chrom Q、 60/80 mesh)はガスクロ工業(東京)から購入した。
実験動物および飼料
第II章第1節と同様の1%コレステロールを合む純化食で、 SDおよび、ExHCラット を1週間飼育した。 朝日時から11時の聞に大動脈採血により屠殺を行い、 血清と肝臓 を採取した。
ゴルジ装置からの新生リボタンパク質の調製
Swiftらおよび、Hamiltonらの)i法により、 肝臓からゴ、ルジ装置を調製した
[58, 59J。 肝臓を19あたり2.0mLの0.25M煎糖、 1.0%デキストランT-500、 0.01M 塚化マグネシウムを合む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.3)(ホモジナイズバッファー) に、 ウルトラディスパーサー(ULTRA-TURRAX、 lanke&kunkel GmbH&
CoKG、 IKA-Werk、 German)を用いて氷冷中でホモジナイズした。 ホモジネイト を600Xgで5分間遠心しベレットを得た。 また、 その上清を14,000X gで30分間遠心 分離しベレツトを得た。 それぞれのベレツトの上3分のlを3mLのホモジナイズバッ ファーで懸濁して合わせ(約10mL)、 22.5mLの1.25M煎糖溶液に重層した。 それら を超遠心分離(55P-72、 SRP28SAロータ一、 日立、 75,000X g、 30分)する事により、
煎糖溶液層上に集まる白色のゴルジ画分を採取した。 この画分を]0倍量のホモジナ イズバッファーに懸濁し、 3,000X gで、20分間遠心分離した。 このゴルジベレツトを 154mM塩化ナトリウムを合む15mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)に懸濁した。 ゴ、ル
ジ懸濁液をテフロンホモジナイザーで2回緩やかに押し演すことによって、 ゴルジ装 直中の新生リボタンパク質を遊離させた。 それらをd=1.006 g
/
mLで超遠心分離 (Optima TL Ultracentrifuge、 100.2ロータ一、 ベックマン ・株、 東京: 40.000rpm、16hr)することにより、 リボタンパク質を回収した。
UDP-ガラクトース: N-アセチ/レグルコサミンガラクトシルトランスフエラーゼの活 性測定
ゴルジ装置の標識酵素であるUDP-ガラクトース: N-アセチルグ、ルコサミンガラク トシルトランスフエラーゼの活性は、 Mo汀eらの方法[60Jに従い、 UDP-D-ガラク
トースからN-アセチルグ、ルコサミンに転位されるガラクトースの量を測定して求め た。 インキュベーション系は2μmoIトリス塩酸緩衝液(pH7.5)、 5μmoI 2-メルカプ トエタノール、
1μmoI塩化マグネシウム、 0.5μmoI塩化マンガン、0.45μmoI N-アセチ
ルグルコサミンおよび、32.2町nolUDP-D-[U_14C]ガラクトース(26,000dpm)とゴルジ 画分(タンパク景O.4mg)を合み、 総容量を200μLとした。 反応は370Cで15分間イン キュベートした。 反応終了後、 直ちに氷水で冷却し、 反応液を約1mLの陰イオン交 換樹脂(ダウエックス1X8、 100-200メッ シユ)を詰めたカラム(0.8X 4cm)に注入し
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た。 生成したN-アセチルラクトサミンと加水分解により生じたガラクトースを
O.4mLの水で3回洗浄することで溶出させた。 溶出液は直接計測用パイアルに入れ、
シンチレーター(アクアゾ〉ル2、 Packard
Ins.、 USA)10mLを加え、 液体シンチレー
シヨンカウンター(Tri-Carb 2250、 PackardJ apan、 東京)で測定した。 ゴ、ルジ画分 のタンパク質量はBradford法[61Jで測定した。リボタンパク質中の脂質濃度
リボタンパク質qlの脂質濃度は、 脂質をFolch法[18Jにて抽出した後、 化学法に てトリグリセリド[19J、 リン脂質[21J濃度を測定した。 コレステロールについ ては、 石油エーテル:ジ、エチルエーテノレ/酢酸(82:18: 1, "八)を展開溶媒として用い、
TLCにて遊離型とエステル型コレステロールに分離後[62J、 別々に抽出、 ケン化、
トリメチルシリル化を行い、 5αーコレスタンを内部標準としてガスクロマトグラ フィーにて定量した(カラム: OV-17、 キャリアガス:窒素、 カラム温度: 2600C、
インジェクタ ・ディテクタ組度: 3000C、 ガスクロマトグラフ:島津GC-4CM)。
統計解析
結果はStudent's {-test [63Jにより解析した。
II- 3 - 3
結果ゴルジ装置の標識酵素であるUDP-ガラクトース: N-アセチルグ、ルコサミンガラク トシルトランスフエラーゼの活性は、 文献値[64Jと同様にホモジネイトに比ベゴ
ルジ画分で約72倍の活性(ホモジネイト0.204
nmol/hr/mg proteinに対しゴルジ画分 14.5 nmol!hr/mg protein)を示した。
表11-3-1に1%コレステロール食で1週間飼育したSDおよび、ExHCラットの、 ゴルジ 装置中の新生リボタンパク質の脂質組成を示した。 その結果dく1.006画分に回収され た新生リボタンパク質中の各脂質の割合には両系統ラットにおい て違いが見られた。
遊離型コレステロールおよびリン脂質の割合は、 群聞で差が見られなかった。 コレ ステロールエステルとタンパク質の割合は、 SDラットに比べExHCラットで高く、
Table 11-3-1 Composition of Golgi lipoprotein (dく1.006) from ExHC and SD rats
SC EC
wt%
Free cholesterol 1.1 O::tO. 71 O.937::tO.371
Phospholi pid 2. 69::tO.35 3. 18::tO.66
Protein 1 O.4:!:Ü. 8 16.4:!:Ü.7*
Esterified cholesterol 7.76::tO.95 24.4::t1.4*
Triglyceride 78.1::t1.4 55.1::t1.8*
Esterified cholesterol / Triglyceride 0.1 OO::tO. 014 O.447::tO.038*
SC and EC ; SD and ExHC rats fed 1 % cholesterol diets, respectively.
Values are means ::t SE恥1 for five rats per group.
Statistical significance (P<ü.05) between two groups is indicated by an asterisk.
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逆にトリグリセリドの割合は、 SDラットに比べExHCラットで低い値をノ示した。 従っ て、 エステル型コレステロール/トリグリセリド比はExHCラットで、顕著に高かった。
II-3 -
4
考察第II章第2節にぶしたように、 ExHCラットではSDラットと比較してトリグリセリ
ド合成系の低下と脂肪酸の酸化系の充進に基づく肝臓トリグリセリド濃度の低ドが あり、 リボタンパク質合成の際、 トリグリセリド利用の低下が生じている可能性を 指摘した。 そのため相対的にコレステロールエステルに富むβ-VLDL様のリボタン パク質形成が増加し、 そのことがExHCラットの高コレステロール血症発症に関与 する可能性があることを示してきた。 そこで本節では、 肝臓でのリボタンパク質ム 成の段階で、 実際にそのような粒子が形成されているかを検討するため、 分泌直則 のリボタンパク質粒子が存在するゴルジ装置中の新生リボタンパク質の脂質組成を 調べた。 その結果、 新生dく1.006g
/
mlリボタンパク質中の各脂質の割合にはExHC とSDラットにおいて違いが見られ、 特にトリグリセリドに対するコレステロールエ ステルの比がSDラットに比べExHCラットで顕著に高い値を示した。 これは現在までの結果とも整合性があり、 ExHCラットでコレステローノレエステルに富むβ
-VLDL様リボタンパク質の形成増加が起こっていることが確認された。 β-VLDL粒
子の血中での異化速度はトリグリセリドに富むV L D L粒子と比較して遅いことか ら[41J、 ExHCラットにおけるコレステロール摂取に基づく高コレステロール血 症は、 肝臓における異常なリボタンパク質の合成が関わっていることが推察された。
II- 3 -
5 小f6
1%コレステロール食で1週間飼育したSDおよびExHCラットの、 ゴ、ルジ装置中の 新生リボタンパク質の脂質組成を検討した。 dく1.006 g/rnlリボタンパク質中の各脂 質の割合には両系統ラットにおいて違いが見られ、 コレステロールエステルとタン パク質の割合は、 SDラットに比べExHCラットで高く、 逆にトリグリセリドの割合 は、 SDラットに比ベExHCラットで低い値を示した。 コレステロールエステル/トリ グリセリド比を比較すると、 SDラットに比べExHCラットで顕著に高い値を示した。
これらの結果は、 コレステロール摂取ExHCラットでは血中での異化が遅いβ
VLDL様の粒子が生成していることを示唆している。
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