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刑 事 判 例 研 究

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(1)

判 例 研 究

刑 事 判 例 研 究

(二)  

強 姦 目 的 で 殺 意 を も っ て 婦 女 を 殺 害 し 姦 淫 し た ば あ い ー

山 火 正 則

⇔刑 事 判 例 研 究

昭和四七年七月一九日札幌地裁判決(昭和四七年(わ)一〇九号殺入︑強姦致死等被告事件)

判例時報六九一号一〇四頁

︹事実︺被告人XはY女と連れだって︑乗用車でスナヅ

クに行き︑同店で一緒に飲食した後︑﹁﹃海を見たい︒﹄というY

を前記自動車の助手席に乗せて札幌市内から小樽市方面に向か

い︑途中︑琴似駅前を経て石狩海岸近くの同市銭函地内に至って

車を停めて休憩中︑同女に肉体関係を迫ったところ︑同女が﹃そ

んなことするんなら殺してよ︒バックにカミソリも入っている

から︒﹄などと予想に反して凄い剣幕で怒り出したため同女の

首を両手で絞めて押しつけたりしたものの同女の態度から肉体

関係をすることはできないものとあきらめ︑一旦は同女と仲直

りをし理由もなく一緒に泣いたり雪合戦をしたりした後︑:・⁝

⁝再び車を発進させ篠路駅︑丘珠空港付近を経て札幌市内に向 かった︒しかし︑その間︑機会があれぽ再度同女に言い寄ろう

と思いつつもうまく口説くことができないまま︑⁝⁝:同女ア

パート付近まで戻ってきてしまったため︑この機会をのがせば

同女と関係することができなくなると考えた被告人は︑前記の

態度から同女との肉体関係を遂げるためには同女を殺害するよ

り他に方法がないと決意し︑⁝⁝⁝前記アパートをわざと通り

すぎ某所付近路上に前記自動車を停車させたうえ︑助手席でリ

クライニソグシートを倒して眠り込んでいる同女の頸部に自分

のズボソからはずした皮製バソドを巻きつけ︑助手席に膝をつ

き同女の前面から約五分間その両端を力いっぱい両手で引っ張

って絞めつけ︑よってそのころ同所において同女を窒息死する

に至らしあて殺害したうえ︑強いて同女を姦淫しLた︒

︹判旨︺判決はこの事実に対し︑殺人の点は刑法一九九

59{59)

(2)

条に︑強姦の点は同法一七七条前段に該当するとのべ︑さらに

検察官がこれを殺入罪と強姦致死罪に該当すると主張したこと

に対し︑﹁この見解は一個の死を二重に評価することになって

不当であるばかりでなく︑右強姦致死罪は殺意なくして死の結

果を生じさせた場合にのみ適用せられるべきものであるから︑

前記のように殺人罪および強姦罪(同法一七七条前段)に該当

すると解すべきであり︑このように解しても︑右両罪は︑一所

為数法の関係となるのであるから︑検察官主張の適条と比較し

て刑の不均衡を生ずることなく︑また強姦致死罪を︑法定刑と

して死刑が定められている強盗殺人罪(同法二四〇条後段)と

同様に解釈すべき理由もないというべきである﹂とのべた︒

︹研究︺一行為者が殺意をもたず︑ただ強姦の意思だ

けで︑その実行行為をおこなって︑婦女を死に致らしめたばあ

い︑刑法一八一条強姦致死罪が成立する︒これについては︑ま

ったく問題はない︒問題は殺意をもって︑被害者を姦淫し︑死

に致したばあい︑または本件事実のように︑強姦の目的で︑殺

意をもって︑被害者を殺害し︑その後姦淫したばあいである︒

行為者に殺意のある点が問題となる︒

二まず︑行為者が殺意をもって︑被害者を強姦し︑死に致

したばあいについて検討しよう︒強姦行為に関し︑行為者に殺

意あるばあい︑その殺意をどのように評価するかについて︑こ

のようなばあいについて多く議論がなされているからである︒

三つの見解⁝を予定することができる︒すなわち︑ ω強姦致死罪と殺人罪との観念的競合とするもの︒

@強姦致死罪だけが成立するとするもの︒

の強姦罪と殺人罪との観念的競合とするもの︒

三殺人の意思で被害者を強姦し︑死に致したばあいについ

て︑強姦致死罪と殺人罪との観念的競合であるというωの見解

はすでに古くから判例のとるところであった︒大審院はつぎの

ように判決した︒

﹁暴行又ハ脅追ヲ以テ婦女ヲ姦淫シ因テ被害者ヲ死二致シ

タルトキハ刑法第百八十一条ノ犯罪ヲ構成スルモノニシテ其

ノ死亡ノ結果二付キ故意ヲ有スルト否トハ毫モ該犯罪ノ成立

ヲ左右スルモノニ非スト難モ若シ其ノ死亡ノ結果二付故意ヲ

有シ暴行ヲ以テ婦女ヲ姦淫シ因テ死二致シタルトキハ一面二

於テ右第百八十一条ノ犯罪成立スルト同時二他ノ一面二於テ

同法第百九十九条所定ノ殺人罪ヲ構成スルモノナルコトハ猶

強盗力殺意ヲ以テ人ヲ死二致シタルトキハ刑法第二百四十条

ノ強盗致死罪ト同法第百九十九条所定ノ殺人罪トノニ罪ヲ構

成スルト異ナル所ナシ:・:・:・原院力強姦致死ノ所為二対シ刑

法第百八十一条又同人ヲ絞殺シタル所為二対シ同法第百九十

九条ヲ問擬シ一箇ノ所為ニシテニ箇ノ罪名二触ルルモノトシ

テ同法第五十五条第一項ヲ適用シ唾キ殺入罪ノ刑ヲ以テ処断

シタルハ相当﹂である(大判大正四年=﹁月一一日刑録二一輯八〇八八頁)このような態度はその後の判決にもひきつがれている︒

﹁被告人は犯行の露見を虞れ︑かつ情慾をとげようとの一

Cso) 60

(3)

槻鞭Ψ4.穣・傭︑喉隔,.岐︑,

刑 事 判 例 研 究

{κヨ'旨""",{i詞

念に駆られて同女を静かにさせようと考え︑そのためには少

女が死亡しても構わぬという気持になり︑ここに殺意を生

じ︑同女の咽喉に両の栂指を揃えて強くあて︑その他の指を

両方から後まで廻して力一杯に絞るようにして四︑五分位締

め続けて同女の呼吸を止めた後︑即時同所において同女を姦

淫しその目的をとげ︑かつは右絞拒による窒息死にもとずき

同女を即死させ︑すなわち殺害したものである︒﹂といういわ

ゆる鏡子ちゃん殺し事件について︑上告趣意が﹁純理論とし

て一八一条一本でゆくぺきで︑刑法二四〇条との刑の権衡論

から一九九条と一八一条の観念的競合をみとめることは︑法

の不備を解釈によって拡張するもので罪刑法定主義に反する

もので正しくない﹂︒と主張したのに対し︑

﹁原審の是認した第一審判決が︑強姦致死の点につ

き刑法一八一条︑一七七条を︑殺人の点につき同法一九九条

を適用し︑両者は同法五四条一項前段の一個の行為にして数

個の罪名に触れる場合であるとして同法一〇条に基き︑重い

殺人罪の刑によって処断すべきであるとした法律判断は正当

であって︑この点に関する原審の判示は相当である︒﹂とした

(最一判昭和三一年一〇月二五日刑集一〇巻一〇号一四五五号)︒

四このような判例の見解はそのまま多くの学説の容認する

と こ ろ と な ぞ い る ( 欝 隷 蝶 論 ハ㌔ 遡 一韓 栖 梅 綿 翫 醤

脚 灘 辮 皿 二 臨 癖 上 壽 鯉 縦 講 果 鯛 鯉 鋒 騙 巌 ・.・ 植 鄭

法・順注釜〜韻糠刑)︒ここでは︑前掲した昭和三年6月二五日の最高裁判所判決を評釈された小野(清)博士の見解を手が

かりとしながら︑検討していくことにしたい︒つぎのように︑

結論された︒﹁結果的加重重犯の重い結果につき故意があった

場合には︑その結果的加重犯の規定と︑その重い結果に対する

故意犯の規定とを併せて適用し︑両者の観念的競合を認めるの

が正しいとおもふのである()︒強姦犯人が殺意を

もって婦人を殺した場合には刑法一八一条と一九九条とを適用

するのが当然であるとおもふ︒﹂(小野・的競合﹂駕難獲罐鮪軽.禦)

と︒このような結論にいたる根拠はふたつの点において示され

ている︒

第一は結果的加重犯の構成要件的構造からであるとされる︒

すなわち︑

﹁このような結果的加重犯は︑何といっても︑発生した

﹃結果﹄に重きをおいて規定した構成要件である︒その結果

につき故意のあることを要求したものではない︒といふこと

は︑必ずしも故意のない場合に限るといふのではない︒重い

結果につき故意を必要としないといふだけで︑過失がある場

合でもよいし︑また故意がある場合でもこれを適用すること

に別段差支はない︒重い結果についてせいぜい過失を

要求するだけで︑故意は要求しない︑といふだけのことであ

る︒﹂(小野・前掲七〇頁︒)

とされる︒この点から︑強姦犯人が殺意をもって婦女を殺害し

(61)

61  

,

(4)

たばあいに︑強姦致死罪の成立をみとめることができると考え

られるわけである︒

第二として︑つぎのようにのべられる︒

﹁始めからその重い結果を認識して行為した場合はどうかということになる︒私の考えでは︑故意がそこまで及んでゐ

る場合は︑行為の意味が本質的にちがってくる︒⁝⁝⁝この

故意と過失との原則的な差別を基本として考えるとき︑結果

的加重犯の構成要件のうちに︑結果につき故意のある場一合

と︑せいぜい過失があるにすぎない場合とを併せて規定した

ものと解する.﹂とはできない︒L(小野・前掲七〇頁︒)﹁抑も結果的加重犯は︑重い結果につき意思のない場合に︑なおその重い

結果に着眼して刑を袈するものである︒﹂(小野・前掲七三頁︒)すなわち︑行為者が結果的加重犯の重い結果に対して故意をも

っていたばあい︑それは結果的加重犯として評価できないか

ら︑故意を有する点については故意犯の成立をみとめようとさ

れるのである︒

このようにして︑小野(清)博士は強姦犯人が殺意をもって婦

女を殺害したばあいについて︑第一の点から強姦致死罪とし

て︑第二の点から殺人罪として評価しようとされるのである︒

五しかし︑このような論理展開に対してはぬぐいさること

のできない重大な疑問が生じる︒それは小野(清)博士の示され

た第一の点と第二の点は論理的に両立しえないのではないかと

いうことである︒第一の点として︑結果的加重犯の構成要件は

己縛脚壽ρ"戸一,ーU毒崎凋444ー謹2型ーレ'

そ の 結 果 に 対 し て 墾 鍬 急 雰 寒 毬 肝 で 蓉 と さ れ る ・

行為の結果を重視し︑意思の意味は問わない主張となってい

る︒ところが︑他方で︑第二の点として︑結果的加重犯の構成

要件のうちには︑結果につき故意のあるばあいと︑過失がある

にすぎないばあいとをあわせて規定したものではないとされ

る︒行為の主観的側面の意味を重視した主張となっている︒し

たがって︑ここでの主張は一方で︑強姦致死罪は死の結果に対

し故意あるばあいも含むとされながら︑他方で︑強姦致死罪は

死の結果に対し故意あるばあいを評価しえないから︑その点は

故意犯として評価しなければならないというものになってい

る︒強姦致死罪の構成要件的行為について︑視点をかえることによって︑たくみに使い分けようとされている︒

しかし︑行為の意味はその全体について問わなければならない︒里の行為について︑芳で結果だけを抽出して刑法的評

価をくわ・兄︑他方で意思だけを抽出して刑法的評価をくわえることはできない︒たしかに︑結果的加重犯は結果に重点をおいて︑規定されたものである.しかし︑そのことは結果さえ存在していれば︑その結果に対する意思の意味をまったく問題にしなくともよいという.﹂とではない︒もし︑小野(清)博士が笙

の点において主張されるように︑結果的加重犯を構成要件がその結果に対して故意のあるばあいにも適用することができるというのであれば︑いわゆる故意ある結果的加重犯というものをみとめる.﹂とになるであろう︒しかし︑このことは小野博士の

{sz)s2

(5)

第二の点の主張を否定することになる.また︑逆に第二の占恥と

して主張されているように︑結果的袈犯の畿要件繕果に

鍵 縫 欝 終 鍵 蕎 ビ緊 義

乏・行為の箋をまったく分華ることによって︑刑法的評

難 総 難 繋 灘

漿 鷲 錘 難 難 辺 複 檎蕪 灘 難 雛 難

欝 躁 馨 にの 欝 蟹 講 警 ) ・ ⇔ 加蕪 ガ融 聾 難 難 磁幽 鮮 礫 野 勤 籍 輪 緯 脳灘 砒難 砿

判いては・強薮死罪だけを蕪すれば+分なはずである︒その

艀意睦おいて・安平警の見蟹論理的にすぐれている.つぎ

鍵 掃靴 雛 卿惣 繋

晟妾認むべきである・L(安平・改正刑法各論昭和三五年三八七頁︒)と.

験 翫 攣 励鰻 謙 麟 顯 墾 試 霧 羅 難 難 熱

る・したがって・強制墾行為︑強姦行為に﹁因テ﹂人を死に

弩 擁 翻 難 嘆 薩 醐繊 撫

るばあいは・強製褻行為︑強姦行為によるものとはい︑柔㌔

轟 繋 蟻 騰 舞 蕪 磁蟻

るまあいをふくむとすることは馨致死罪の叢要件的行為の

意脚をこえるものである︑強姦致死罪の刑罰法規窺定してい

な 難 製 齢 騨 難 輔 意 犯 { て 考 慮 し 礁 の

ばならない・結果的加嘉籍果に対する故意がないばあしω

翫 蕎 讐 繰 糠 樺 αb﹂ 碓鰭 縮

(6)

 灘  懇            羅 霧 雛 勲 難 撫 繁 織 藤  辮 羅 戴

七殺意ある難殺人のばあいに︑殺人罪と強嚢死罪とのばあいは刑法二・四条の刑の上限に近い方向において考慮する禦的響をみとめようとするものにいわゆヲ荊の務論からなど︑具体的・個別的に刑の量定の場で刑の権衡窪かるほかの主張がある.ふたつの観占州か皇張されている︒ひとつはこないであろう︒.﹂のようなことを前提としたうえで・傷望︒の故のばあいに安平教授のように強姦致死罪としてだけ処断しよう意ある強蕎人のばあいも︑やはり強姦罪と傷害罪の禦的競とすることに対するものである︒強姦致死罪における刑が殺人合と考︑兄るべきである︒実定法の規定から︑論理的にこのよう罪のそれよりも軽いことを理由に︑讐あるばあいに刑の袈な結論が生じる以上︑単に刑の権衡論の角度からだけ・これを

をお.﹂なおうとする(群讐罪㌧四嚢灘鼠狸護講蒜変更する.︑とはできない.それは立法論に属する蟹である・

級備薦).しかし︑このばあいに︑強姦致死罪の成妾けをし奈って︑殺意ある強姦殺人のぽあいは︑当然︑強姦罪と

みとめようとすることじたい︑理論的に成立しえないものであ殺入罪の讐豊朋倉して轟すべきである.

った.刑の権衡論を展開するまでもない・八殺意をもって強姦し死亡させたというばあいについて

ー 撫 整 麹 繕 欝 礁 へ鶴 綜 購 鰍

(64) 64

(7)

職. 婁 .〜 ,. ︑︑ 試 彪 街 萄 匙 詑 鋲 嘱 麟 い 昏 い ﹂肩冠 郵 緊 麟 郵 ゲ 鴇

しめて殺害したうえL︑﹁強いて同女を姦淫し﹂たものである︒

これと類似する事実に対する判例はすでに存在しており︑そこ

では強姦致死罪として処断した︒すなわち︑

﹁⁝⁝⁝︑同女を殺した上情慾を遂げようと決意し︑:::

⁝仮死状態になった同女を⁝⁝⁝完全に死に至らしめるた

め︑同女の上に馬乗りとなり再び両手指にてその頸部を掘し

更に所携の日本手拭をその頸部に巻きつけて絞拒して即時窒

息死に至らしめてこれを殺害した上同女を強いて姦淫し﹂た

という第一審の事実認定にもとついて︑つぎのように判決し

た︒﹁これにょれば右判決は姦淫の目的の為め︑その手段と

して判示のごとき暴行脅迫を用い結局被害者を窒息死に至ら

しめ︑姦淫の目的を遂げたという趣旨を認定しているのであ

って︑本件の場合は︑姦淫行為が殺害の直後であったとして

もこれを包括して強姦致死罪と解すぺきである︒﹂(馨雛肺

磐 羅 ・輪 蜘 藝 の ば 建 婆 死 罪 と 殺 人 罪 の 観 念

的競合をみとめる判例の立場からは当然の結論である︒

蹴ところが・慧をもって強嚢人したぽあいに︑強姦罪と殺

例人罪の観念的競合とするものも︑この判決を容認している︒た

劉とえば︑大塚教授はつぎのようにのべておられる.﹁強姦の目

刑的で暴行を加えて婦女を死亡させ︑その直後に姦淫したとき

ー 帆 ゼ 樹 郵 藪 狛 緊 頗 鶉 熱 ガ ダ 勾 駿 ひ講 い︑

と︒しかし︑昭和三六年のこの判決の事実は︑単に強姦の目的

で強姦の手段にとどまる暴行を加えて婦女を死亡させ︑その直

後に姦淫したというものではない︒はじめから殺意のあったば

あいである︒大塚教授は殺意をもって殺害した事実をどのよう

に評価されるのであろうか︒殺意ある強姦殺人のぼあいに︑判

例のような立場にたたれるのなら︑それもやむをえない︒しか

し︑大塚教授は殺意ある強姦殺人のぽあい︑殺意をもって殺害

した面を正当に評価しておられたはずである︒(前述六参照)やは

り︑このばあいの暴行は単なる強姦の目的のための手段として

の面をこえるものをもつ︒その点については︑殺人罪の成立を

考えなければならない︒そして︑強姦の目的のための手段にと

どまる暴行の部分を評価することにより︑強姦罪成立を一応予

定しなければならない︒このばあい︑現実的には屍姦なわけ

で︑結局︑強姦未遂罪の成立を考えるべきである︒被害者の死亡

雛 禦 撫 哺轍 欝 鞭 癖 繕 獄 懸 螺酬

がって︑このばあい︑殺人罪と強姦未遂罪の観念的競合として

解決すべきことになる︒

また︑大塚教授と若干ニュアソスを異にするが︑同じく殺意

ある強姦殺人のぼあいに強盗罪と殺人罪の観念的競合をみとめ

ながら︑強姦目的で殺意をもって被害者を死亡させ︑姦淫した

(65}

65

(8)

'

ばあいには︑強姦致死罪にあたるとする見解がある︒このばあ

いを・強姦未遂による致死として理解しようとする(繭馴翻竹納か

塞)︒このような見解に対しても︑大塚教授に対すると同義

判があてはまる︒殺意をもっていた点をまったく無視するもの

である︒はたして︑強姦の未遂による死亡といえるかどう力

殺意ある殺害によって︑強姦が未遂におわったにすぎない︒

本件事実についても︑やはり強姦未遂罪と殺人罪の観念的競

合として考えるべきである︒判決は殺人罪と強姦罪の観念的競

合とした︒これは殺意ある強姦殺人のばあいの殺意の面に関す

る正しい理解をそのまま本件事実に適用したものであろう︒強

姦罪をめぐっての殺意あるぽあいについて︑これまでの判例の

いき方に反し︑殺意の点を考慮したことについては︑正当なも

のとして評価しなけれぽならない︒しかし︑強姦罪の成立をみ

とめたことについては疑問とすべきである︒

(昭和四八年七月七日稿)

5 .ノ

(66)66

参照