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刊 行 に よ せ て

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Academic year: 2021

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 現代社会は、ヒト・モノ・カネ・情報が国境などの領域を越えて移動、行き来するグロ ーバリゼーションの時代だといわれる。私の長年の調査地、山形県のある山村では国際結 婚の韓国のお嫁さんの活躍によりキムチが村の特産品として好評を博している。最もロー カル性を示す発酵食品も、今日では国境を越え、グローバル化している。日本人が好む寿 司やそばもその食材の多くは外国産である。また、ICT(情報通信)技術の進歩は、イン ターネット利用の一般情報・informationから、最新のiPadなどの電子書籍リーダーの登 場で、新聞、書籍情報・intelligenceまで含んだ「知」のグローバリゼーションを急激に もたらしている。

 換言すれば、世界中で大多数を占める普通の人々の普通の暮らしぶりを容易に、また深 く知ることができる時代になった。しかし、残された文字記録から支配者階級の歴史は構 築できるのに対し、庶民の歴史は、数少ない文字資料を援用しつつ、身体や言葉、道具か ら土地や景観に刻まれたあらゆる記憶、非文字資料を動員して組み立てる必要がある。こ のような庶民、常民の生活史を再構成する視角と方法を日本の柳田國男は早くに、民俗学 として体系づけ、日本常民文化研究所の設立者、澁澤敬三は常民の中でも海を生活の場と する人々、また常民が生活の必要から生み出した民具に注目し、その資料としての有効性 をさまざまな形で示した。

 このような日本常民文化研究所の長年の研究実績をもとに、21世紀COEプログラム「人 類文化研究のための非文字資料の体系化」(2003 〜 7 年度)では、図像・身体技法・景観 研究において多大の成果を上げ、後継組織である非文字資料研究センターで引続き取り組 むとともに、2009年 8 月からはさらに文部科学省により「国際常民文化研究機構」として 研究者コミュニティに開かれた共同研究拠点に認定され、常民文化研究の国際化、発信の 場となることを要請されるに至った。

 世界中の常民、普通の人々の暮らしを研究の主題とするためには文字・非文字を問わず 生活史資料を利・活用して、“世界常民” 学ともいうべき学が樹立される必要がある。そ の第一歩として、魚食をはじめ海洋資源への注目が国際的に高まる中、漁業制度史研究で 培ってきた方法論は世界の研究者に参考に供することができるだろうし、絵引きや民具と いう資料が、ebiki, minguとして国際的な学術語として普及し、常民研究の意義や資料論 としての有効性が認められればと考える。本誌が、共同研究グループの成果発表の場とし てだけではなく、世界中の人々の等身大の生活文化をお互いに理解しあう一端に連なり、

多文化共生社会といわれる現代社会に多少の貢献ができることを意図するものである。

国際常民文化研究機構運営委員長 神奈川大学日本常民文化研究所長 佐野 賢治

刊 行 に よ せ て

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