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フランス語の法助動詞 devoir の否定について
叙 法 と否 定 の意 味 解 釈 をめぐって
L’auxiliaire modal devoir au négatif
— sur l’interprétation du mode et de la négation
神 林 慶 Kei KAMBAYASHI 東 京 外 国 語 大 学 博 士 前 期 課 程
Master’s Program, TUFS
ふらんぼー(Flambeau) vol.43 2017, p.103-117.
原 稿 受 理 2017-12-04 ; 最 終 版 2017-02-05
抄 録
フランス語 の法 助 動 詞 devoir が、否 定 形 に置 かれた場 合 の解 釈 を、devoir の叙 法 と時 制 との関 係 から考 察 する。まず、英 語 の法 助 動 詞 と否 定 に関 して先 行 研 究 を概 観 した上 で、フランス語 devoir, falloir の否 定 とその解 釈 について、先 行 研 究 を整 理 する。次 に、コーパスを用 いて、実 際 の用 例 を、
主 語 となる名 詞 句 、devoir の叙 法 と時 制 、後 続 する動 詞 、用 法 の 4 つの観 点 から分 類 し、特 に条 件 法 現 在 形 に置 かれた、devoir の否 定 形 に関 して、考 察 をしていく。
Résumé
Quand on utilise le verbe modal « devoir » au négatif, il est possible que l’interprétation de
« devoir » soit différente selon le temps et le mode de « devoir ». Après avoir observé les études précédentes sur le verbe modal et la négation, on analyse des exemples dans le corpus en classant par le sujet, le temps, l’infinitif qui suit, et l’emploi. En particulier, on fait la recherche sur des exemples au conditionel présent.
キーワード
法 助 動 詞 、devoir、 否 定 、 条 件 法
© ふらんぼー Flambeau 43 (2017) pp.103–117.
183-8534 東 京 都 府 中 市 朝 日 町 3-11-1 東 京 外 国 語 大 学 フランス語 研 究 室 183-8534 French Section, Tokyo University of Foreign Studies, 3-11-1 Asahi-cho Fuchu City, Tokyo
本 稿 の著 作 権 は著 者 が保 持 し、クリエイティブ・コモンズ表 示 4.0 国 際 ライセンス (CC-BY)下 に提 供 します。
https://creativecommons.org/ licenses/by/4.0/deed.ja
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1.はじめに
本 稿 は、フランス語 の法 助 動 詞 devoir1が否 定 形 に置 かれた場 合 、devoir の叙 法 (mode)と否 定 の意 味 解 釈 に、どのような関 係 が見 られるかを考 察 することを目 的 とする。
この点 に関 して、まず、Charaudeau (1992, p.563-564) が、以 下(1), (2)の興 味 深 い 用 例 を取 り上 げている。(下 線 は筆 者 による 2)
(1) Tu ne dois pas parler avant le président de séance.
会 長 の前 に話 してはいけない。
(2) Tu ne devrais pas parler avant le président de séance.
会 長 の前 に話 さない方 がいい。
Charaudeau (1992) に お い て 、devoir が 直 説 法 現 在 形 に 置 か れ た(1)は 全 否 定 (négation totale)、devoir が条 件 法 現 在 形 に置 かれた(2)は部 分 否 定(négation partielle) であるとされている 3。
Touratier(2008, p.27-28)は、(1)と(2)において、否 定 のスコープ(portée)は変 わらない ものの、(2)は実 際 に発 話 時 点 で話 している聞 き手 に向 けられている発 話 文 であるため、否 定 の焦 点(foyer)から主 語 の tu が除 外 され、部 分 否 定 になるとしている 4。つまり、その場 にいる人 に対 する、いわば「一 般 的 な」禁 止 を表 す(1)に、条 件 法 を付 加 することで、実 際 に 話 を し て い る 「 聞 き 手 個 人 へ の 」 警 告 へ と 変 わ っ て い る と い う 指 摘 で あ る 5。 た だ し 、 Charaudeau(1992)では、(1), (2)の前 後 文 脈 について、言 及 がないため、ここでは、(1), (2) の文 意 を比 較 し、その差 異 を述 べることしかできない。
また、van Hecke (2007) では、フランス語 devoir, falloir の否 定 形 の用 法 に関 して、
時 制 により、分 布 にどのような差 異 が見 られるかを調 査 している。この調 査 においては、法 助 動 詞 devoir, falloir を「断 定 的 用 法(emploi assertif)」「評 価 的 用 法(emploi évaluatif)」
「認 識 的 用 法(emploi épisthémique)」に大 きく三 分 割 し、時 制 ごとの分 布 をまとめており、
時 制 と用 法 の関 係 は一 定 程 度 説 明 されているといえる。
しかし、van Hecke (2007) の調 査 は、直 説 法 現 在 形 、直 説 法 複 合 過 去 形 、直 説 法
1 動 詞 の不 定 形 を続 ける devoir, pouvoir, vouloir などの語 は、動 詞 の過 去 分 詞 形 を後 続 する être, avoir と区 別 するため、法 動 詞(verbe modal)、準 助 動 詞(semi-auxiliaire)など、さまざまな呼 び方 があ るが、以 下 ではRiegel (1994, p.254)にならい、法 助 動 詞(auxiliaire modal)と呼 ぶこととする。
2 解 釈 を示 すため、例 文 には本 稿 筆 者 が、日 本 語 訳 を付 けている。
3 Chareaudeau(1992)は、(1)のタイプの否 定 をaffirmation d’un contenu négatif、(2)のタイプの否 定 をréfutation d’un énoncé positifと、それぞれ呼 んでいる。両 者 は、後 述 する澤 田(2006)における、
「否 定 命 題 断 定 」と「既 存 命 題 否 認 」に概 ね相 当 する。
4 Touratier (2007) において、foyerは portée の中 でも、意 味 作 用 や解 釈 の上 で、中 心 的 な役 割 を 果 たすものと、定 義 されている。すなわち、portéeの中 に foyerが含 まれる関 係 となっている。この点 、 金 水(2000)は、前 者 を「スコープ」、後 者 を「焦 点 」としており、構 文 的 条 件 から特 定 される「スコープ」
に対 し、「焦 点 」の特 定 には、構 文 的 要 素 に加 え、文 脈 などの発 話 的 な要 素 が必 要 であるとしている。
5 なお、ここで、devoir を直 説 法 から条 件 法 へ変 えることで、否 定 の焦 点 だけでなく、devoir自 体 の用 法 も変 化 していることに、注 目 したい。
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半 過 去 形 、直 説 法 単 純 未 来 形 のみを対 象 としているため、条 件 法 におけるdevoirの否 定 に関 しては、言 及 がない。
そこで、以 下 では、法 助 動 詞 と否 定 の意 味 解 釈 に関 して、フランス語 に加 えて、英 語 の事 例 についての先 行 研 究 を概 観 した上 で、フランス語 devoir の否 定 形 に関 して、用 例 を調 査 する。その結 果 から、devoir が用 いられる時 制 や叙 法 と、devoir の用 法 との関 係 を 考 察 していくこととする。
2. 英 語 の法 助 動 詞 と否 定 についての先 行 研 究 2. 1. 太 田 (1980)
太 田 (1980) では 、英 語 の 法 助 動 詞 6に、大 別 し て、認 識 的(epistemic)と義 務 的 (deontic)の二 通 りの意 味 があるとしている。前 者 は、「その立 言 内 容 に関 する話 者 の知 識, 確 信 の程 度 をあらわすもの」であり、後 者 は、「話 者 ではなくて, その文 の主 語 の意 志, 必 要 性, 義 務(be required), 能 力, などをあらわす」ものである。例 えば、must について、以 下 の例 を言 い換 え表 現 として、取 り上 げている。(E は認 識 的, D は義 務 的)
(3) must E. It is certain that S
It is necessarily the case that S D. be required to, be obliged to It is necessary for … to
そして、認 識 的 意 味 、義 務 的 意 味 それぞれに関 して、法 助 動 詞 の否 定 の意 味 を、論 理 記 号 を用 いて、以 下 のようにまとめている。(∃は存 在 記 号, ∀は全 称 記 号)
(4)
認 識 的 義 務 的
cannot/can’t ~∃ ~∃
can not7 ∃~ ∃~
may not ∃~ ~∃
must not ?∀~ ∀~
should[ought] not ?∀~ ∀~
don’t have[need] to ~∀
太 田(1980)は、全 体 としては意 味 論 的 観 点 からの考 察 であるが、(4)に言 及 のある英 語 の法 助 動 詞 のうち、may not以 下 のものに関 して、認 識 的 意 味 と義 務 的 意 味 で、否 定 の 焦 点 や容 認 度 に差 が見 られることに、注 目 しておきたい。
6 ここでは、will/would, can/could, may/might, shall/should, must のこと。(太 田(1980), p.459)
7 cannot[can’t]と異 なり、can not は、否 定 が canではなく後 続 する動 詞 句 にかかっていることを示 す。
また、「この場 合 、否 定 縮 約 が不 可 能 であることから、この文 は、統 語 論 的 には、構 成 素 否 定(=動 詞 句 否 定)であり、全 体 として肯 定 文 である」。(澤 田(2006), p.173)
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2. 2. 澤 田 (2006)
澤 田(2006)は、英 語 の助 動 詞 と否 定 辞 の not が共 起 した文 を以 下 のように区 別 する。
(5)
「構 成 素 否 定 」は、「否 定 のスコープが文 の一 部(特 定 の語 ・句 ・節 など)にしか及 ばな い場 合 」であり、全 体 としては肯 定 文 であるので、ここでは、「助 動 詞 否 定 」のみを考 慮 する。
まず、認 識 的 不 可 能 性 を表 す英 語 の法 助 動 詞 に関 して、認 識 的 can’t(=(6))が「モダ リティ否 定 」となり、認 識 的 must not(=(7))が「命 題 否 定 」となることに関 して 8、前 者 を(8)に よって、後 者 を(9)によって、それぞれ説 明 している。
(6) A: John didn’t come to class today; maybe he is ill.
ジョンは今 日 授 業 に来 なかった。たぶん彼 は病 気 なんだろう。
B: He can’t be ill; I heard him play the bagpipes this morning.
彼 が病 気 であるはずがないよ。今 朝 彼 がバグパイプを演 奏 するのを聞 いたから。
(7) Brian said he would definitely be here before 9:30. It’s 10:00 now, and he’s never late. He must not be coming.
ブライアンは 9 時 半 前 にここにきっと来 ると言 っていた。今 10 時 だ、そして彼 は決 して遅 刻 をしない。彼 は来 ないに違 いない。
(8) 既 存 命 題 否 認 の条 件 :
話 し手 は、モダリティ否 定 の認 識 的 法 助 動 詞 を用 いる際 には、証 拠 q に基 づいて、
既 存 命 題(もしくは、主 張 ・想 定)p(または、~p)を否 認 したり、p(または~p)とは思 えない と主 張 したりしている。
(9) 否 定 命 題 断 定 の条 件 :
話 し手 は、命 題 否 定 の認 識 的 法 助 動 詞 を用 いる際 には、「命 題 pならば、証 拠 qとい うことはないはずだ。しかし、実 際 には、q だ。それゆえ、p ではない」と断 定 している。
すなわち、「認 識 的 」モダリティが否 定 形 に置 かれる場 合 、(8), (9)のいずれかの条 件
8 澤 田(2006)は、助 動 詞 の意 味 を「認 識 的 」と「束 縛 的 」とに分 類 している。
モダリティ否定 助動詞否定(=文否定)
命題否定
構成素否定 命題否定
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を満 たしているということである。
一 方 、「束 縛 的 モダリティ」に関 しては、 (a) 「義 務 ・必 要 」、(b) 「許 可 」、(c) 「不 必 要 」、(d) 「不 許 可 、禁 止 」の下 位 区 分 を想 定 し、「明 示 的 であれ非 明 示 的 であれ、なんら かの形 でそのモダリティの『動 機 づけ』が伴 っている」とし、以 下 の四 要 素 を含 むスキーマを 提 示 している。(Xは義 務 を課 す主 体 、Yは義 務 を課 される存 在 、pは義 務 の内 容 、Zは義 務 づけのための動 機 づけを表 す。)
(10) 義 務 づけのスキーマ
「義 務 づけのための動 機 づけ」のうち、明 示 的 なものとして、理 由 ・目 的 ・条 件 があるが、
義 務 表 現 の本 質 をつかむために、これは、考 慮 すべき要 素 であると論 じている。しかし、澤
田(2006)も、時 に、この「義 務 づけのための動 機 づけ」が必 ずしも自 明 と感 じられない場 合
があることを認 めており、
(11) 敵 を愛 し、迫 害 する者 のために祈 れ (『マタイによる福 音 書 』第 5 章 第 44 節)
を例 に、義 務 づけの理 由 ・動 機 づけは、「話 し手 ・聞 き手 の共 通 知 識 、あるいはその 発 話 を取 り巻 くコンテクスト(教 義 、社 会 背 景 、文 化 など)に大 きく依 存 する」としている。つ まり、英 語 の助 動 詞 において、明 示 的 であれ暗 示 的 であれ、「義 務 づけのための動 機 づけ」
の存 在 が、「束 縛 的 」モダリティのマーカーとして、機 能 しているということである。
3. フランス語 の法 助 動 詞 と否 定 についての先 行 研 究 3.1. van Hecke (2007)
先 述 の 通 り 、van Hecke(2007)の 調 査 は 、 拘 束 的(déontique)法 助 動 詞 の devoir, falloir が否 定 形 に置 かれた場 合 に関 して、その時 制 ごとの用 法 の分 布 をまとめたものであ る。渡 邊(2010)が指 摘 するように、この調 査 は、「拘 束 的 法 助 動 詞 の否 定 は『してはいけな い』の解 釈 になる」という従 来 の前 提 が、常 に成 り立 つわけではないことを示 したという点 で、
画 期 的 である。
また、用 法 の分 類 に際 しては、次 の例 を用 いて、説 明 している。
(12a) Le résumé ne doit pas dépasser 200 mots.
要 約 は、200 語 を超 えてはならない。
(12b) Le résumé doit ne pas dépasser 200 mots.
Z
MOTIVATE
X p Y DEMAND
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(13a) Tu ne dois pas essayer de comprendre tout d’un coup car c’est impossible.
全 部 を理 解 しようとしても無 駄 だ。不 可 能 だから。
(13b) Tu dois ne pas essayer de comprendre tout d’un coup car c’est impossible.
(13c) Il est inutile d’essayer de comprendre tout d’un coup car c’est impossible.
すなわち、(12a)の 言 い換 え とし て、(12b)は 妥 当 であるが 、(13a)の 言 い換 え とし て、
(13b)ではなく(13c)が妥 当 であることを踏 まえ、「しなくてよい」解 釈(il n’est pas nécessaire que)と 「 し て は い け な い 」 解 釈(il faut ne pas que)の 間 に は 、 非 推 奨(il n’est pas recommandé que)という中 間 的 な解 釈 が存 在 するとしている 9。
ただ し 、イタ リ ア語 ・ ル ー マ ニ ア語 との 対 比 に お いて、用 法 の 分 類 は 、以 下 の(14a), (14b), (14c)の三 通 りとなっている。すなわち、先 述 の「非 推 奨 」解 釈 は、中 間 的 な解 釈 で はあるものの、分 類 としては「してはいけない」解 釈 の一 部 と見 なされている 10。
(14) a) emploi assertif: ‘il n’est pas nécessaire que p’
b) emploi évaluatif: ‘il faut ne pas que p’ ‘il n’est pas utile, poli, etc.’
c) emploi épisthémique: ‘probablement p’ ‘manifestement p’
また、epistemic と deontic を別 個 のものとして扱 っていた、太 田(1980)や澤 田(2006) と異 なり、van Hecke(2007)は、devoir 自 体 を déontique な法 助 動 詞 として捉 えており、そ の否 定 形 の一 つの解 釈 として、épisthémique を位 置 づけている点 に、注 意 が必 要 である。
分 析 にあたっては、Google を用 い、各 時 制 について、100 例 ずつ用 例 を集 め、各 用 法 に分 類 している(van Hecke(2007), p.166)。そこで、顕 著 な差 異 が見 られたのは、法 助 動 詞 devoir, falloir が現 在 形 に置 かれた場 合 と、複 合 過 去 形 に置 かれた場 合 である。フラン ス語 に関 してのみ、言 及 すると、現 在 形 では il ne faut pas に 99 例 、tu ne dois pas に 63 例 見 られた評 価 的 解 釈 が、複 合 過 去 形 においては皆 無 となり、il n’a pas fallu は 100 例 と も断 定 的 解 釈 、tu n’a pas dûは 100 例 とも認 識 的 解 釈 であった。
なお、現 在 形 において、数 は多 くないものの、断 定 的 解 釈 11と認 められる用 例 は、存 在 する。(il ne faut pas は 1 例 、tu ne dois pas は 19 例 。) そして、この解 釈 を促 す要 因 と して、van Hecke(2007, p.167-168)は、以 下 の三 つを挙 げている。
(15) a) pour (que)など、目 的 を表 す副 詞 句 ・副 詞 節 があるとき、目 的 に対 する条 件 の 必 然 性 を否 定 12
9 (12a)は、主 語 が非 ・人 間 のle résuméであるのに対 し、(13a)は、主 語 が人 間 のtu である。後 述 され る分 析 では、tu を主 語 とするdevoirのみを使 用 しているが、主 語 となる名 詞 句 の性 質 の差 や、それに よる発 話 文 への影 響 などに言 及 がないまま、devoir の用 法 を分 類 することは、難 しいように思 われる。
10 以 下 、渡 邊(2010)にならい、emploi assertif を「断 定 的 」用 法 、emploi évaluatif「評 価 的 」用 法 、 emploi épisthémiqueを「認 識 的 」用 法 と呼 ぶこととする。
11 van Hecke(2007)において、途 中 から、lecture littérale と呼 ばれ、訳 語 としては「字 義 的 解 釈 」など となるが、指 すものは、依 然 emploi assertif のことであるので、混 乱 を避 けるため、「断 定 的 」と呼 ぶ。
12 この点 に関 しては、Hélène Huot (1974, p.81-82)にも言 及 があり、文 中 に「目 的(but)」「対 立
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b) nécessairementなどの副 詞 が否 定 に伴 うと、‘il faut ne pas p’解 釈 を妨 げる c) 話 者 が p の必 然 性 の否 定 を伝 達 する発 語 内 的 意 図 に加 え、対 話 者 に p を
しないよう説 得 する発 語 媒 介 的 意 図 がある場 合
各 用 例 の分 類 が、どのようにしてなされたかについて、ハッキリとした言 及 はなく 13、結 果 として見 られる時 制 ごとの分 布 に関 して、議 論 が進 められている 14。この点 で、(15)など の分 析 は、「記 述 的 であり、解 釈 をみちびきだす原 理 が解 明 されているとは言 いがたい(渡 邊(2010))」。しかし、用 法 ・解 釈 を特 定 するにあたり、一 定 程 度 参 考 になる記 述 でもある 15。
3.2. Hélène Huot (1974)
Hélène Huot (1974)は、動 詞 の不 定 形 を後 続 する devoir の用 法 に関 して、主 語 とな る名 詞 句 、devoir の叙 法 と時 制 、後 続 する不 定 詞 の形(単 純 形 か、複 合 形 か)、共 起 され る副 詞 などとの関 係 から、論 じている。
なお、devoir の用 法 の分 類 に際 しては、obligation/nécéssité と probabilité/futur とい う用 語 を用 いており 16、devoirの叙 法 など、条 件 ごとに、各 用 法 の容 認 度 を記 述 している。
さらに、いくつかの叙 法 ・時 制 に関 しては、容 認 度 を示 す表 だけでなく、追 加 の記 述 がある。例 えば、条 件 法 現 在 形 に関 しては、以 下 の通 りである。(p.48-49)
(16) DEVOIR が条 件 法 現 在 形 に置 かれると、その価 値 は、条 件 法 現 在 の用 法 の二 つの価 値 と結 びつけられることとなる。
a) 事 行 が、明 示 的 もしくは暗 示 的 に、未 来 に位 置 づけられると、probabilité を表 す Jean devrait reprendre son activité (dans quelques jours).
ジャンは、(数 日 のうちに)活 発 さを取 り戻 すはずだ。
b) 事 行 が、現 在 の状 況 との対 比 を表 す場 合 、obligation を表 す Jean devrait préparer son examen (mais il est parti au cinéma).
ジャンは、試 験 の準 備 をしなければならない (が、彼 は映 画 館 に出 かけた。)
ただし、問 題 は、事 行 を位 置 づけ、動 詞 の-rait 形 に的 確 な価 値 を与 えうる要 素 があ るかどうかを 特 定 することに ある。そして、devoir が 否 定 形 に 置 か れた場 合 に関 し ては 、
(opposition)」「原 因(cause)」を表 す句(や節)がある場 合 、devoirは obligation を表 すとしている。た だし、この記 述 は、devoirの否 定 形 に関 してではない。すなわち、obligation が否 定 形 に置 かれた際 、 van Hecke(2007)の分 類 における、断 定 的 用 法 になるのか、評 価 的 用 法 になるのかについては、言 及 していない。
13 (14)にあるように、例 えば、tu ne dois pas p が、il n’est pas nécessaire que p と言 い換 えられると見 なされれば、emploi assertif に分 類 しているようである。
14 極 端 に言 えば、用 法 の分 類 自 体 が、van Heckeによる、直 感 テストである可 能 性 も否 定 できない。
15 例 えば、(15a)は、澤 田(2006)における「義 務 づけのための動 機 づけ」と一 部 重 なる部 分 がある。
16 前 者 は、太 田(1980)における「義 務 的 」、澤 田(2006)における「束 縛 的 」意 味 に、後 者 は、太 田 (1980)および澤 田(2006)における「認 識 的 」意 味 に、それぞれ相 当 する。
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(17)のような記 述 がある。(p.99-10017) (17)
DEVOIR=obligation DEVOIR=probabilité parler
en public
avoir parlé en public
parler en public
avoir parlé en public pas
il ne doit plus jamais
+
+
+
-
-
-
-
-
-
+
+
+ pas
il ne devait plus jamais
+
+
+
-
-?
-
-
-
-
+
+?
+ pas
il ne devra plus jamais
+
+
+
+
-?
-
-
-
-
-
-?
- pas
il ne devrait plus jamais
+
+
+
+
?
?
+
+
+
+
?
? pas
il n’a plus dû jamais
-
-
-
*
*
?
+
+
+
*
*
? pas
il n’avait plus dû jamais
-
-
-
*
*
?
+
+
+
*
*
? pas
il n’aura plus dû jamais
-
-
-
*
*
??
+
+
+
*
*
??
pas
il n’aurait plus dû jamais
+
+
+
+
*
+
-
-
-
-
*
-
この表 で、注 目 に値 するのは、直 説 法 現 在 形 、半 過 去 形 、単 純 未 来 形 は、後 続 する 動 詞 が単 純 形 か否 かにより、obligation の解 釈 と probabilité の解 釈 の優 位 度 が逆 転 する のに対 し、条 件 法 現 在 形 は、後 続 する動 詞 が単 純 形 の場 合 に、どちらの解 釈 も導 き出 さ れうるという点 である。この点 、(16)における、条 件 法 現 在 形 に置 かれた際 にdevoirの解 釈 を特 定 しにくい場 合 があるという指 摘 は、否 定 形 でも当 てはまるといえる。
17 Hélène Huot (1974) においては、obligationとprobabilité に分 けて、表 があるが、本 稿 では対 称 性 をより明 らかにするため、一 つの表 にしている。
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4. 用 例 調 査
序 論 でも言 及 した通 り、van Hecke (2007) の調 査 は、直 説 法 現 在 形 、半 過 去 形 、複 合 過 去 形 のみを対 象 としている。しかし、本 稿 の出 発 点 は、(1), (2)((18),(19)として再 掲) に見 られる devoir の否 定 と叙 法 との関 係 について、考 察 をすることにある。
(18) Tu ne dois pas parler avant le président de séance. (= (1)) 会 長 の前 に話 してはいけない。
(19) Tu ne devrais pas parler avant le président de séance. (= (2)) 会 長 の前 に話 さない方 がいい。
このため、ここで、devoir が否 定 形 に置 かれた用 例 に対 し、Hélène Huot (1974) によ る尺 度 のうち、主 語 に置 かれる名 詞 句 、devoirの叙 法 と時 制 、共 起 される副 詞 句 を目 安 に、
分 析 をすることとする。
4.1. 調 査 方 法
本 調 査 では、フランス語 の大 規 模 な書 き言 葉 コーパスである Frantext において、ne, devoir, pas が共 起 されている用 例 のうち、年 代 的 に新 しいもの 400 例 を対 象 とする。各 用 例 に関 して、主 語 となる名 詞 句 、devoir の叙 法 と時 制 、後 続 する動 詞 の不 定 形 、用 法 の 四 点 で、分 類 をした。
4.2. 各 項 目 の用 例 数 4.2.1. 主 語 となる名 詞 句
je 76 nous 15
tu 9 vous 14
il (人 間) 24 ils (人 間) 15
il (非 ・人 間) 20 ils (非 ・人 間) 1
elle (人 間) 16 elles (人 間) 2
elle (非 ・人 間) 6 elles (非 ・人 間) 2
ça, ce (人 間) 4 その他 の名 詞 句 (人 間) 40
ça, ce (非 ・人 間) 29 その他 の名 詞 句 (非 ・人 間) 79
on 48
主 語 となる名 詞 句 については、代 名 詞 か否 かを基 準 に、分 類 をした。また、人 間 を 指 す je, tu, on, nous, vous 以 外 の代 名 詞 ・名 詞 句 は、その別 を述 べるだけでは不 十 分 で ある 18ため、それが「人 間(humain)」であるか、「非 ・人 間(non-humain)」であるかによっても 分 類 をしている。なお、主 語 が「人 間 」である例 は、263 例 、主 語 が「非 ・人 間 」である例 は、
18 例 えば、三 人 称 男 性 単 数 形 の人 称 代 名 詞 ilには、人 間 を指 し示 す用 法 に加 えて、いわゆる「非 人 称 」と呼 ばれる特 定 の指 示 対 象 を持 たない用 法 がある。
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137 例 現 れている。
4.2.2. devoir の叙 法 と時 制 19
直 説 法 現 在 形 185 接 続 法 現 在 形 3 直 説 法 半 過 去 形 145 単 純 未 来 形 2
条 件 法 現 在 形 63 単 純 過 去 形 2
devoir の 叙 法 と 時 制 に 関 し ては 、直 説 法 現 在 形 と直 説 法 半 過 去 形 だ けで 、全 400 例 中 330 例 を占 めている。次 いで、条 件 法 現 在 形 が 63 例 現 れている。
4.2.3. 後 続 する動 詞
être 61 faire 13
être + 過 去 分 詞 25 y avoir 12
avoir 17 ∅20 8
5 例 以 下 のものが多 いため、ここでは 用 例 数 の多 かったもの 6 個 を示 すのみとす る。その中 で、62 例 と最 も数 の多 かった être は、属 詞 を後 続 する用 法 であり、その次 に多 かったのは、受 動 態 を構 成 する être に過 去 分 詞 を後 続 する用 法 であった。
動 詞 個 々の出 現 数 としては、一 般 化 が難 しいため、その動 詞 が「状 態 」を表 すもの か、「動 作 」を表 すものかにより分 類 したところ、前 者 が 215 例 、後 者 が 185 例 となった。
4.2.4. 用 法
ここでは、van Hecke(2007)を参 考 に、断 定 的 、評 価 的 、認 識 的 の三 分 類 とした。ただ し、この三 分 類 の適 応 が、容 易 には思 われない用 例 もあったため、中 間 的 な解 釈(「断 定 的/評 価 的 」と「評 価 的/認 識 的 」)を認 めている。このため、実 際 には五 分 類 となっている。
断 定 的 断 定 的/評 価 的 評 価 的 評 価 的/認 識 的 認 識 的 4.2.1. 主 語 と
なる名 詞 句
人 間 :20 非 ・人 間 :3
人 間 :4 非 ・人 間 :1
人 間 :146 非 ・人 間 :28
人 間 :2 非 ・人 間 :0
人 間 :86 非 ・人 間 :110
4.2.2. devoir の叙 法 と時 制
直 ・現 :4 半 過 :8 条 ・現 :11
直 ・現 :2 条 ・現 :3
直 ・現 :94 半 過 :55 条 ・現 :21 接 ・現 :2 単 未 :2
直 ・現 :1 半 過 :1
直 ・現 :84 半 過 :81 条 ・現 :28 接 ・現 :1 単 過 :2 4.2.3. 後 続 す
る不 定 詞
状 態 :14 動 作 :9
状 態 :1 動 作 :4
状 態 :50 動 作 :124
状 態 :1 動 作 :1
状 態 :149 動 作 :47
用 法 毎 の合 計 23 5 174 2 196
19 今 回 の調 査 で使 用 する用 例 を検 索 する際 、他 の要 因 が入 り込 むことを防 ぐため、ne, devoir, pas がこの語 順 で出 てくるもののみを対 象 とした。だが、これにより、van Hecke(2007)で 言 及 のあった直 説 法 複 合 過 去 形 など、pas の後 にdevoir の過 去 分 詞 dûが出 現 する用 例 が含 まれていない。
20 前 文 の繰 り返 しとなるため、devoirの後 に、動 詞 の不 定 形 が直 接 現 れていない用 例 のこと。後 続 す るものが、動 詞 の不 定 形 ではなく、名 詞 などである用 例 は、本 調 査 の対 象 でないため、除 外 している。
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なお、用 法 の分 類 にあたっては、主 語 が人 間 か否 か、動 詞 の意 味 特 性 は動 作 か 状 態 かなど、4.2.1.~4.2.3.で言 及 した要 素 を考 慮 している。
4.3. 用 例 の分 析
各 項 目 の用 例 数 をまとめた 4.2.4.の表 から、以 下 の傾 向 を述 べることができる。
(20) 主 語 となる名 詞 句 に関 して、断 定 的 ・評 価 的 用 法 では、「人 間 」が多 いものの、
認 識 的 用 法 では、「非 ・人 間 」の数 が上 回 っている。
(21) 後 続 する不 定 詞 に関 して、評 価 的 用 法 では、「動 作 」を表 す動 詞 が多 く、認 識 的 用 法 では、「状 態 」を表 す動 詞 の数 が逆 転 している。
一 方 、4.2.2.で取 り上 げた、devoir の時 制 ・叙 法 と devoir の用 法 の関 連 について、量 的 な議 論 をすることは賢 明 ではない。最 大 の理 由 は、既 に述 べたように、直 説 法 現 在 形 と 直 説 法 半 過 去 形 の出 現 数 が、8 割 以 上 と多 く、他 の時 制 ・叙 法 との比 較 において、均 衡 を十 分 に保 つことができないことにある。
そのため、ここでは、直 説 法 現 在 形 と直 説 法 半 過 去 形 、そしてその次 に用 例 数 の多 かった条 件 法 現 在 形 を取 り上 げ、それぞれの解 釈 との関 連 を詳 細 に考 察 することとする。
4.3.1. 直 説 法 現 在 形
断 定 的 断 定 的/評 価 的 評 価 的 評 価 的/認 識 的 認 識 的
4 2 94 1 84
直 説 法 現 在 形 において、割 合 としては、(22)のような評 価 的 用 法 や(23)のような認 識 的 用 法 が大 半 を占 めている。(22)では、動 詞 réprimander の意 味 的 性 質 や、総 称 的 に用 いられている une militante が評 価 的 価 値 をもたらしている。(23)では、recommencer という 動 作 を表 す動 詞 の主 語 が非 ・人 間 の cela であるため、断 定 的 解 釈 や評 価 的 解 釈 が生 ま れにくく、結 果 として、認 識 的 価 値 に至 っているものと考 えられる。
(22) Pierre me réprimanda : « Une militante ne doit pas pleurer ! » ピエールは私 を叱 った。「活 動 家 たるもの、泣 いてはいけない!」
(BRIÈRE-BLANCHET Claire, Voyage au bout de la révolution : de Pékin à Sochaux, 2009, p. 135)
(23) Je pose la question : est-ce qu'on va recommencer à nouveau comme en 1968 ? 私 は質 問 した。1968 年 のように、また再 開 する予 定 ですか。
Je réponds :non, cela ne doit pas recommencer.
私 は答 えた。いいえ、再 開 するはずがありません。
(MANCHETTE Jean-Patrick, Journal : 1966-1974, 2008, p. 447) 一 方 、(24)のような断 定 的 用 法 は、4 例 のみとごく少 数 であった。なお、(24)では、前
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文 の Tu ne pouvais pas savoir.が、次 の発 話 文 の根 拠 を表 している。
(24) Tu ne pouvais pas savoir. Tu ne dois pas te sentir coupable.
君 は知 ることが出 来 なかった。君 は、自 分 のせいだと感 じなくていい。
(BOIS Ariane, Et le jour pour eux sera comme la nuit, 2009, p. 52)
これは、4.2.4.の表 にもあったように、断 定 的 解 釈 は、条 件 法 現 在 形 が担 う傾 向 があ ることと、関 係 があるように思 われる。実 際 、いずれの用 例 も、評 価 的 ・認 識 的 でないと判 断 するにあたっては、前 後 文 脈 を踏 まえた上 で、解 釈 することが求 められるものであった。
4.3.2. 直 説 法 半 過 去 形
断 定 的 断 定 的/評 価 的 評 価 的 評 価 的/認 識 的 認 識 的
8 0 55 1 81
直 説 法 半 過 去 形 に関 しては、認 識 的 用 法 が多 く、次 いで、評 価 的 用 法 、そして、直 説 法 現 在 形 同 様 、断 定 的 用 法 は、8 例 と少 なかった。例 えば、(25)では、直 後 の現 在 分 詞 passant 以 下 が 認 識 的 解 釈 に 至 る 判 断 の 根 拠 を 表 し て い る 。 一 方 、(26)で は 、une chose à faire が必 要 性 を表 していることから、評 価 的 解 釈 が導 き出 される。
(25) Mais lundi après-midi, alors que subitement ma fonction de bibliothécaire m'était apparue lourde, ennuyeuse et longue, il est venu. Il ne devait pas venir, passant son examen de droit le lendemain. J'étais inondée de joie. Pendant un long moment, nous n'avons pu nous parler.
しかし、月 曜 日 の午 後 、司 書 の職 務 が私 には重 く、退 屈 で、長 く感 じられたが、
彼 が来 た。翌 日 法 学 の試 験 を受 けるので、来 るはずがなかった。私 は、喜 びでいっぱい になった。長 い間 、我 々は 互 いに話 すことが出 来 なかった。
(BERR Hélène, Journal 1942-1944, 2008, p. 155)
(26) Mais nous avions une chose à faire, notre lecture l'après-midi, que nous ne devions pas rater. Dans l'avion je lui avais dit : tu as parlé hier parce qu'on fait la lecture aujourd'hui ? Il disait : tu crois ? Je disais : oui, je crois.
しかし、我 々には一 つすべきことがあった。午 後 の読 書 である。これは、我 々がやり 損 ねてはいけないのである。飛 行 機 で、私 は彼 に言 った。「今 日 読 書 をするからって、昨 日 言 った?」「そうだっけ?」「うん、そう思 う。」
(ANGOT Christine, Rendez-vous, 2006, p. 141)
また、(27)の断 定 的 解 釈 を特 定 する上 では、文 修 飾 の副 詞 théoriquement の影 響 が大 きい 21。つまり、「原 則 として」は、不 必 要 であるが、例 外 があれば、義 務 が生 じるという
21 (15b)にあった、il faut ne pas p解 釈 を妨 げる条 件 を再 度 参 照 されたい。
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ことである。
(27) Ce recensement concernait les personnes et les biens qu'elles possédaient.
Théoriquement, les personnes qui s'étaient déjà déclarées ne devaient pas le faire à nouveau.
この調 査 は、人 間 とその所 有 する財 産 に関 するものです。原 則 として、すでに言 明 された方 は、再 度 行 わなくていいです。
(MILEWSKI Françoise, Un livre du souvenir : à la recherche d'une famille juive décimée en Pologne., 2009, p. 196)
4.3.3. 条 件 法 現 在 形
断 定 的 断 定 的/評 価 的 評 価 的 評 価 的/認 識 的 認 識 的
11 3 21 0 28
条 件 法 現 在 形 に関 しては、先 の2 時 制 と比 べ、用 例 数 が少 ないため、出 現 数 を割 合 として比 較 することは、難 しい。まず、(28)が評 価 的 用 法 、(29)が認 識 的 用 法 の例 である。
(28) Je pense à l'égalité, à la fraternité, à tous ces trucs qu'on apprend à l'école et qui n'existent pas. On ne devrait pas faire croire aux gens qu'ils peuvent être égaux ni ici ni ailleurs.
私 は、平 等 、友 愛 、そして学 校 で習 うが、存 在 しないこれら全 てのトリックのことを考 え ている。我 々は、ここでも他 のところでも、平 等 となりうる人 々に、(このことを)信 じさせてはい けないのである。
(VIGAN Delphine de, No et moi, 2007, p. 102) (29) Est-ce que les catholiques méritent le nom de chrétiens, alors que s'ils appliquaient la parole du Christ, il ne devrait pas exister une chose qui s'appelle : différence de religion, et de races même ?
キリストの言 葉 に当 てはめれば、宗 教 や人 種 の違 い、と言 われるものは存 在 しないは ずであるのに、カトリック教 徒 はキリスト教 徒 の名 に値 するのだろうか。
(BERR Hélène, Journal 1942-1944, 2008, p. 173)
とはいえ、(30)のような断 定 的 用 法 で用 いられる用 例 が直 説 法 現 在 形 ・半 過 去 形 と比 べて、わずかながら多 いことは、条 件 法 現 在 自 体 の用 例 が少 ないことを踏 まえると、注 目 すべき点 である。ここで、条 件 法 現 在 形 は、直 説 法 現 在 形 、半 過 去 形 、単 純 未 来 形 と 異 なり、obligation とも probabilité とも解 釈 されうるとした、(17)の記 述 を参 照 されたい。
(30) - Tu ne devrais pas t'impliquer à ce point dans leur histoire.
この点 では、君 は彼 らの話 に熱 中 しない方 がいい。
- Merci du conseil !
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助 言 をありがとう。
(CHAIX Marie, L'été du sureau, 2005, p. 81)
(30)では、否 定 形 のdevoir を次 の応 答 文 においてconseilで受 け直 していることか らもわかるように、忠 告 ・提 案 の含 意 が読 み取 れる 22。これは、条 件 法 の、いわゆる「語 調 緩 和 」(atténuation)用 法 に由 来 している。
そして、ここで序 論 に話 を戻 すと、(2)の用 例((31)として再 掲)も、この用 法 に近 いも のであると考 えられる 23。
(31) Tu ne devrais pas parler avant le président de séance. (=(2)) 会 長 の前 に話 さない方 がいい。
ただし、devoir 自 体 の用 法 が、断 定 的 であるか評 価 的 であるかを、分 類 することは、と き に 容 易 で な い こ と が あ る 。 も ち ろ ん 、 「 束 縛 的 (déontique)」 意 味 か 、 「 認 識 的 (épisthémique)」意 味 かの線 引 きは、英 語 の先 行 研 究 でも言 及 されているように必 要 であ ると思 われるが、その下 位 区 分 は明 確 でないように感 じられる 24。
条 件 法 で用 いられる devoir に関 して、渡 邊(2004)には、「devrait25の場 合 であっても、
devoir の『ほかの可 能 性 の排 除 』という本 質 的 機 能 は十 全 に発 現 しているのであり、その
『ほかの可 能 性 の排 除 』のなかでも、確 信 度 の低 いタイプの解 釈 へと限 定 するはたらきを 条 件 法 が果 たしているのである。(p.285)」とあり、その中 の一 つの解 釈 として、忠 告 や提 案 の読 みが可 能 となるのである。
おわりに
以 上 のように、本 稿 では、フランス語 の法 助 動 詞 devoir が否 定 形 に置 かれた場 合 の 意 味 解 釈 について、考 察 してきた。ただし、各 時 制 ごとに用 例 数 を 100 例 用 意 した van Hecke (2007)と異 なり、動 詞 の叙 法 ・時 制 ごとに用 例 数 を揃 えることができなかったため、
用 例 が直 説 法 現 在 形 と直 説 法 半 過 去 形 にかなり偏 っている。このため、両 時 制 の出 現 頻 度 が高 いことは確 認 できたが、否 定 に対 する叙 法 と時 制 の影 響 を考 察 する上 で、十 分 な 分 析 を す る に は 至 ら な か っ た 。 加 え て 、 本 調 査 に お け る 用 例 の 分 布 が 、 調 査 対 象 を
Frantextのみとしたことに起 因 するのか、他 のコーパスではどのような傾 向 が見 られるのかと
いう点 などを今 後 さらに分 析 していく必 要 がある。
22 TLFi のdevoir の項(http://www.cnrtl.fr/definition/devoir)のうち、II. d) α)を参 照 。avec une nuance de conseil, de suggestion, d’invitation; souvent au cond. prés. とある。
23 ただし、序 論 でも触 れたように、(31)(=(2))には前 後 文 脈 が付 されていない。
24 特 に、van Hecke(2007)における、「断 定 的 」と「評 価 的 」は、程 度 の差 であるように思 われることも多 い。とりわけdevoir が条 件 法 で用 いられた場 合 、devoir自 体 の用 法 によるものか、用 いられる叙 法 に よるものかは、区 別 することが難 しい。用 法 をいくつに分 けるかについては、今 後 も検 証 が必 要 である。
25 条 件 法 現 在 形 で用 いられるdevoirのこと。
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また、条 件 法 現 在 形 が用 いられた用 例 を分 析 するにあたっては、devoir 以 外 の法 助 動 詞 が条 件 法 で用 いられた場 合 と、比 較 するなどして、条 件 法 特 有 の効 果 、devoir 特 有 の効 果 、そして 両 者 が共 起 されることによる効 果 などを、さらに考 察 していくことが、必 要 と なる。こうした点 も 今 後 の課 題 として、取 り組 んでいきたい。
参 考 文 献
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