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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

食虫植物モウセンゴケ属における、送粉者捕獲と素 早い花閉鎖に関する研究

田川, 一希

https://doi.org/10.15017/1931743

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式6-2)

氏 名 田川 一希

論 文 名 Studies on pollinator trapping and rapid flower closure of carnivorous plants, Drosera spp.(食虫植物モウセンゴケ属におけ る、送粉者捕獲と素早い花閉鎖に関する研究)

論文調査委員 主 査 九州大学 教授 矢原 徹一 副 査 九州大学 教授 舘田 英典 副 査 九州大学 准教授 粕谷 英一

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

食虫植物は一般に貧栄養な環境に生育し、捕虫葉と呼ばれる葉が変形した特殊な器官によって昆 虫を捕獲し、たんぱく質を分解して窒素を得ている。このような食虫植物に関する従来の研究では、

送粉昆虫の捕獲をさけるために、 捕虫葉の位置を花から離したり、 開花期を終えてから捕虫葉の 捕虫機能を発達させるなどの方法で、送粉昆虫の捕獲を避けていると考えられてきた。しかし、モ ウセンゴケ属ナガバノイシモチソウ類では、他のモウセンゴケ属の種とは異なり、花の近くに捕虫 葉をつける。本研究では、シロバナナガバノイシモチソウDrosera makinoi、アカバナナガバノイ シモチソウ D. toyoakensisを材料に、2012 年から2014年にかけて 3年間の野外観察を行ない、

これら2種の送粉昆虫と捕虫葉に捕獲される昆虫を記録した。その結果、2種において最も高頻度 の訪花が確認された送粉昆虫はヒメヒラタアブSphaerophoria menthastriであった(全訪花回数に 占める割合;シロバナ22.6% 、アカバナ67.3% )。ヒメヒラタアブはナガバノイシモチソウ類の花 粉を体につけていた。シロバナナガバノイシモチソウ・アカバナナガバノイシモチソウはともに、

ポリネータとして有効なヒメヒラタアブを捕獲していた。ポリネーター種と餌昆虫種の重複度合い を示す指数Jの平均±標準偏差は、シロバナナガバノイシモチソウで 0.83 ± 0.21、アカバナナガ バノイシモチソウで0.07 ± 0.18であり、近交係数が高い(F = 0.497)シロバナナガバノイシモ チソウでは、近交係数が低い(F = 0.260)アカバナナガバノイシモチソウに比べ、ポリネーターの 捕獲割合が多かった。また、花の除去実験を行った結果、 ナガバノイシモチソウ 2 種の花の誘引 効果は有意ではなく、一緒に咲いている他種の花に誘引された昆虫が捕獲されていることが判明し た。これらの結果は、自家受粉によって繁殖できるナガバノイシモチソウ2種が有効な送粉昆虫を 捕獲していること、自家受粉への依存度が高いシロバナナガバノイシモチソウでは、送粉昆虫を捕 獲する割合が高いこと、自家受粉への適応として花の誘引機能を減らし、他種の花の誘引機能に依 存していることを示した点で、食虫植物の繁殖生態に関する重要な貢献である。

本論文ではまた、モウセンゴケ属の2種(コモウセンゴケ・トウカイコモウセンゴケ)において、

花茎やがくに接触刺激を与えると、2-10分で花を閉じるという現象を明らかにした。おしべ・めし べを刺激しても閉じないので、受粉に対する反応ではない。花茎をのぼって花を食べる食害者に対 する防御機構の可能性がある。また、近縁種のモウセンゴケでは、この反応は見られないことを明 らかにした。

これらの研究は、食虫植物というユニークな生活様式の生態学研究における重要な貢献である。

よって、本論文は博士(理学)の学位論文に値するものと認める。

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