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Academic year: 2021

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博士(スポーツ科学)学位論文  概要書 

 

高たん白質間食摂取後の軽レジスタンス運動が  筋肉の増量と増強に及ぼす効果 

―  筋肉組織血液量の変動パターンの観点から  ― 

Effect of intermittent blood-volume fluctuation of light-resistance exercise after high-protein snack ingestion on the increase of skeletal muscle mass and strength in young adults

       

2010 年 1 月

 

早稲田大学大学院  スポーツ科学研究科  加藤  雄士 

Kato, Yushi

 

研究指導教員:  鈴木  正成  教授 

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【研究の背景】

  高齢者の基本生活行動自立力を確保し、要介護生活に陥ることを防止する方策の提案 が、健康科学分野に求められている。具体的には、老化に伴う筋肉減弱化の進行を防止 するために、体たん白質合成活性化作用を持つ高齢者向けの軽レジスタンス運動法の提 示と、それを補助するたん白質栄養のあり方を明らかにすることである。後者について は、高齢者は食欲を低下させているため、朝・昼・夕の基本食でたん白質を十分量摂取す ることが難しいこと、さらには、高齢者の小腸と肝臓は若年者と同等に高いたん白質合 成力(アミノ酸要求)を保持していることの2点に配慮しなければならない。すなわち、

小腸-肝臓-心臓を経由で栄養分を受け取る筋肉には、十分量のアミノ酸が配給されにく い状況にある。

  これらの基本的問題に対して、鈴木らはグルココルチコイド誘発性老化モデルラット による基礎研究で、基本食で小腸と肝臓のアミノ酸要求を満足させておき、その3時間 後あたりで高たん白質間食を摂取すると、効果的に筋肉などの末梢組織にアミノ酸が配 給されることを示した。そして、この栄養法が筋肉たん白質合成に利用され筋肉増量効 果を示すには、高たん白質間食摂取単独では不可能であり、軽レジスタンス運動(タワ ークライミング運動)との共同作用を必要とすることを示した。次いで、ヒトにおいて も基本食3時間後に高たん白質間食を摂取すると、末梢血中アミノ酸濃度は顕著に上昇 し、筋肉などの末梢組織にアミノ酸を確実に供給できる栄養法であることが確認された。

  以上の基本的知見を背景にして、高齢者向けの軽レジスタンス運動として玄米300g を布袋に詰めた「玄米にぎにぎ」を使うダンベル体操と高たん白質間食(卵白+砂糖)

を組み合わせることによって、筋肉づくりを促進できるか否かを明らかにするために、

3つの課題を設けて研究した。

【研究課題1】高たん白質間食摂取後の軽レジスタンス運動(玄米にぎにぎダンベル体 操)が血漿分岐鎖アミノ酸濃度に及ぼす影響(若年成人女性)

  高たん白質間食で末梢血中に上昇するアミノ酸が、その後の玄米にぎにぎダンベル体 操によって筋肉組織による取り込み促進されるか否かについて、血中分岐鎖アミノ酸

BCAA)濃度上昇が抑制されるか否かを指標にして検討された。その結果、血中BCAA 濃度が上昇過程にある高たん白質摂取後60-75分のダンベル体操によって、血中BCAA 濃度の上昇は有意に抑制され、筋肉組織などによる血中BCAAの取り込みが促進された 可能性を示した。

【研究課題2】高たん白質間食摂取後の軽レジスタンス運動(玄米にぎにぎダンベル体 操)が筋肉の増量と増強に及ぼす影響(若年成人男性)

高たん白質間食摂取後の玄米にぎにぎダンベル体操を、日常的に継続した場合、筋肉 は増量・増強するか否かという、本研究において最も重要な課題が検討された。実験は、

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ウオッシュアオウト期間を挟んで被験者が次の3つの条件を順次5週間ずつ実施してい く方法で実施された。①高たん白質間食摂取60-75分に玄米にぎにぎダンベル体操を実 施、②高たん白質間食摂取のみ、③ダンベル体操のみの3条件である。その結果、前腕 筋横断面積は、高たん白質間食を摂取しただけ、またはダンベル体操を実施しただけで は増大しなかった。それに対して、高たん白質間食-玄米にぎにぎダンベル体操の組み 合わせた条件においては、前腕筋横断面積は有意に増大し、あわせて、握力と等尺性膝 伸展力も有意に増強した。ヒトで認められたこれらの事実は、さきに老化モデルラット で高たん白質間食とクライミング運動を組み合わせた条件で得られたデータと基本的 に一致している。

  そこで、ラットのクライミング運動とダンベル体操の運動特性の共通点を見出すこと が重要となるが、筋肉組織の血液動態に注目して、ダンベル体操中の前腕筋肉組織と大 腿部筋肉組織の血液量(ヘモグロビン量)の変動が調べられた。その結果、12種目から なるダンベル体操の各種目の運動中に筋肉組織から血液は減少していき、次の種目に移 る数秒間のインターバル中に血液は一気に増量するという基本的パターンが示された。

これは、ダンベル体操で「玄米にぎにぎ」をしっかり握り締めたあと、手首を内反させ て固定し、全身の筋肉を緊張させ、上体前傾,中腰の姿勢で、動作を区切らず、緩慢に 連続的に動作することによる。緊張させた筋肉には血液流入が制限されるが、筋肉伸縮 運動によって筋肉中の血液が流出していく。そして、筋肉の緊張を解いた時に、血液は 一気に流入する。したがって、筋肉の血液量が間欠的に減少・増量する刺激が、血中ア ミノ酸の筋肉組織による取り込みを促進すると判断された。

【研究課題3】高たん白質間食摂取後の腕屈伸運動による血液量変動パターンの違いが 血漿分岐鎖アミノ酸濃度に及ぼす影響(若年成人男女)

研究課題1、および2の結果を踏まえ、虚弱高齢者にも実践できる軽レジスタンス運動 の提示と、筋肉によるアミノ酸取り込み効果のより大きい筋肉血液量減少・上昇リズム を検討することにした。運動法として、両手の手のひらを上向きにして「玄米にぎにぎ」

を握り、手首を内半させ固定し、握りこぶしを肩まで引き付けたあと、ゆっくり前方に 伸展させることを繰り返す腕屈伸運動が採用された。まず、この腕屈伸運動を繰り返す と、前腕筋肉組織の血液量が減少し、握りを緩めて運動を休むと血液は一気に増量する ことが確認された。そして、高たん白質間食摂取後にこの腕屈伸運動を実施すると、血 中BCAAの上昇が抑制されることも確認された。

そこで、この腕屈伸運動とインターバルの組み方(リズム)をどのようにするのが、

より効果的に血中BCAAの筋肉による取り込みを促進するかを明らかにするために、2 つの運動リズムの効果が比較検討された。多腕屈伸運動-長インターバル方式(腕屈伸 運動15-インターバル(10)9セット;屈伸運動135回、15分)と、同じ総運動回数と時 間からなる少腕屈伸運動-短インターバル方式(腕屈伸運動5-インターバル(3-4)27

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セット;屈伸運動135回、15分)である。その結果、高たん白質間食摂取後の血中BCAA 濃度の上昇抑制効果は、後者で有意に大きかった。以上の結果により、少腕屈伸運動- 短インターバル方式の血液量変動パターンが、多腕屈伸運動-長インターバル方式と比 べ、筋肉組織への血中栄養成分(BCAA・グルコース)の取り込みを効果的にもたらす 血液量の変動パターンであることが確認され、筋肉組織の血液量を頻繁に減少・増量さ せることが筋肉づくりに有効である可能性を示した。 

【結論】

以上3つの研究の結果、高たん白質間食摂取後の軽レジスタンス運動を日常的に継続 することが、ヒトにおいても筋肉増量および筋力増強を示し、超高齢社会におけるサル コペニア予防の新たな運動栄養方策として有効であることが明らかとなった。研究課題 3においては、少腕屈伸運動-短インターバル方式の血液量変動パターンが、多腕屈伸運 動-長インターバル方式と比べ、筋肉組織への血中栄養成分(BCAA・グルコース)の取 り込みを効果的にもたらす血液量の変動パターンであることが確認された。

今後の課題として、さらに、筋肉組織による血液動態に着目し、より軽負荷な運動で、

効率よく血中栄養成分を体組織に取り込み促進させる血液量変動パターンを検証し、そ のメカニズムを解明することができれば、超高齢社会におけるサルコペニア予防法とし ては、もちろん、メタボリックシンドローム対策にも活用でき、さらに、子どもの成長 期のからだ作り、スポーツ界の筋肉作り・強化などにも応用できるであろう。

参照

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