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述語 のアスペ ク ト特性 に関す る言語類型 一形態的特徴か らの分析

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(1)

述語 のアスペ ク ト特性 に関す る言語類型

一形態的特徴か らの分析 1)一

は じめに

1.結 果 を表す構文 i形 態的特徴 か らの一般化 1,1.Taltty(1985)の タイポロジー

1.2.述 語 のアスペ ク ト特性 とタイポロジー 2.結 果構文 の諸 4B

3.「 結果 Jを 意味す る構文 における言語 タイプ

4.形 態要素 と「結果」 を表す構文 I Snyder(1995),Snyder(2001)

5。 「結果」 を生み出す普遍原理 と個別言語 を生み出す メカニズム 結語

は じめに

英語の 」 ohn walked to the top.と いう表現に対応する日本語の文「ジヨンは頂上へ歩い た」が不 自然 に感 じられ、仮に容認可能であったとしても英語の文が頂上への到着を含意 するのに対 して、日本語のそれは到着の意味を含意 しない。英語 と同じ到着の意味を表す ためには、「歩いて行った」のような複雑述語の形成が必須 となる (Yoneyama(1986))。

この事実から、到着の意味を生み出すためには、日英語では形態的な表示に差があること が分かる。 また、上記の英語に対応するスペイン語の表現、」 uan camin6 hasta la cima.

には英語 と同様 な到着の意味がない とされる。英語 と相同の到着 を合意 させるためには、

「歩 く」 という移動様態を表す動詞ではな く、 Juan subib a la cima.の ように到着を本来 的に合意する動詞を使わないと到着の意を表すことができないとされる (Aske(1989))。

このような現象に対 して、Talmy(1985)は 、移動を表す表現が個別言語においてどのよ うに表出するか、広 く事実を観察 し、人間の移動 に関わる普遍的な認知的要素 (「 移動 J

「様態」「経路」 など )を 認定 し、その組み合わせパ ターンによつて個別言語が大 きく 2 つのタイプに分類されることを提案 している。英語などゲルマン諸語が示す「移動」に

「様態」が組合わさるタイプ (satellite‐ frame言 語 )と スペイン語などのロマンス諸語が 示す「移動」 に「経路」が組合わさるタイプ (verb̲frame言 語 )の 2つ である。 しか し、

Talmyの 分析 は、 (1)タ イポロジーという、いわば、「傾 向」 を示 したものに過 ぎず、理論 的な検証性が低い点、 (li)同 じ言語タイプに分類 される言語群にもその現れ方に有為な差 がある点など、理論的・分類的に問題があ り、人間言語の生成メカニズムを考察する上で、

それは、より反証性の高い普遍メカニズム (ci Chomsky(1965,1981,1986,1995,2005)な ど )に よつて、再分析する必要があると考えられる。そこで、本論は、特に「結果」を表 す 2つ の構文 (上 述の移動 を表す文 と結果構文 )に ついてこれまでの議論 をまとめ、 (I)

日 口

山 田

(2)

島根県立大学『総合政策論叢』第 14号 (2008年 2月

)

Talmy(1985)の 言語 タイプは、認知的な概念 か ら導 きだ され るのではな く、述語 の意味 的特性 (特 に、 そのアスペ ク ト的特性 )の 表示手段 の違いか ら導 き出 されることを示 し、

(II)日 本語の「結果 Jを 合意する構文 に特徴的な形態合成手段 を基盤 として理論 を整備 し て、 よ り反証性 の高い理論 を提案す る。つ ま り、「結果」 を意味す る構文の言語 タイプを 動詞の形態的な特徴か ら捉 え直 し、人間言語 に普遍的に存在す ると考 えられる素性 を仮定 す ることで、 「結果」 を表す構文の普遍原理 を導 き出 し、 また、その素性の値の組み合 わ せか ら言語 タイプが導 きだされることを主張す る。

本論 の構成 は、以下である。 1節 では、 Talmy(1985)の タイポロジーを検討 して、その 問題点 を指摘 し、 (i)そ れは述語のアスペク ト特性 とい う意味的概念 に収敏すること、 (ii)

形態的な特徴か ら 3つ の言語 タイプが存在することを示す。 2節 では、結果構文 をその意 味的特徴 と個別 言語 における違いか ら観察 した Washio(1997)を 検討 し、その分析 を拡張 し、移動動詞 と同様 に形態的特徴か ら言語 を 3つ のタイプに分類する必要があることを示 す。 3節 では、  1,2節 の 2つ の構文か ら別々に導 き出 した言語 タイプを「アスペク ト転 換」 とい う意味 的概念か ら一般化で きることを主張す る。 4節 において、形態的特徴か ら 結果 を意味す る文 について理論的枠組み を提案 した Snyder(1995,2001)を 概観 した後 に、

5節 において、 3節 で導 いた一般化 が人間言語 に存在す る普遍 的 な素性 と仮定す る [士

Overt Morpheme]、 [± Covert MOrpheme]の 組み合わせか ら捉 えられることを示す。 こ の提案 によ り、 Talmy(1985)の 言語類型 は、抽象的な素性か ら導 き出され、普通性 を備 え た理論的検証性 を持つ枠組みへ と生 まれ変わる。最後 に、本論 をまとめる。

と。結 果 を表 す構 文 :形 態 的特徴 か らの一般化

本節では、本論 が議論する「結果 Jを 表す 2つ の言語現象の中か ら、特 に、移動動詞 につ いて先行研究で指摘 されてきた事実 をまとめて再分析 し、その形態的な特徴か ら事実を捉 え直す ことで新 たな一般化が可能であることを示す。 まず、 1,1節 において移動動詞 につ いて Talmy(1985)の タイポロジーを槻観す る。そ して、 1.2節 で タイポロジーよ り高次の 意味的概念 であ る述語のアスペク ト特性の観点か ら Talmyの 分析 を捉 え直す。そ して、述 語のアスペ ク ト特性 をそれぞれの言語 において どの ように表示す るのか、形態的な観点か

らとらえ直す と、 Talmyと は異な り 3つ の言語 タイプを認める必要があることを示す。

1.1.Talmy(1985)の タイポロジー

本節では、「移動 Jの 概念 について考察 し、個別言語 の事実 を検証す ることで移動動詞の タイポロジーを提案 した Talmy(1985)に ついて議論す る。 Talmyは 、移動動詞 を人間の認 知的な側面 か ら観察 し、「移動 (=Motion)」 と結 びつ くことが可能な移動の偵 I面 、つ まり、

その主体が どこを移動す るか を表す「経路 (=Path)」 、主体が どの ように移動 を行 うか と い う「様態 (=Manner)」 などが、個別言語 において どの ように語彙化 されるかについて 観察 し、い くつ かの言語のタイプに分類で きることを提案 している。

「移動 Jに 関 わる認知的側面 とは、その移動 を行 う実体 (=移 動物 (=Figure))と その

移動の参照点 (=Ground)、 それ と移動の経路の 3つ の要素の同定が人間言語の移動 とい う

概念 を語彙化す る際 に欠かす ことので きない要素である。 また、移動が どの ような手段で

なされたか (様 態 )、 その移動 を駆動す るものは何 なのか (原 因 (=Cause))と いった要素

(3)

も移動 を語彙化する際に関わる要素であるとされる。このような 5つ の認知的概念 を基に Talmy(1985)で は、個別言語においてどのような要素が「移動」 という概念 と結びついて 動詞 として表出するのかについてさまざまな言語の事実を観察 し、大 きく2つ の言語 タイ

プを提案 している。

1つ は、「移動」 に「様態 Jを 取 り込 んで 示する言語 タイプ (=satellite‐ frame言 )

1つ の動詞 として表示 し、「経路」 を外 的に表 である。以下の例 を観察す る。

(1) a. The rOck shd/roned/bounced down the hill.

b.I ran/iumped/stumbled/rushed/groped my way down the stairs,

(Talmy(1985163)) (1)で は、「移動 Jと そ の様 態 「表面 をなめ らか に」、「回転 しなが ら」、「跳 ね なが ら」 とい った概念 を 1つ の語彙 と して表 してい る。 そ して、 その移動 の及 ぶ場所 (移 動 の着 点 )を

down the hill、 down the stairsと い う前 置 詞句 と して表示 してい る。 この よ うに、英 語 の場合 2)、 「移動」 と「様態」 を 1つ の動詞 として表示 し、「経路」 を付加詞 として表す傾 向を持つ言語である。

もう 1つ は、移動の概念 に「経路」 を取 り込んで「様態 Jを 外的に表示する言語 タイ プ (=verb̲frame言 語 )で ある。イタリア語 ,ス ペイン語などは、英語 とは異なり「移動」

と「経路」を合わせて 1つ の動詞 として表 し、「様態」は付加詞 として文に生起 させる。

(2) a. La  botella entr6     a  la  cueva (■ otando) the bottle  WIOVE‐ in to  the cave  (noating)

̀The bottle noated into the cave.'

b, WEetl       el  barril a  la  bodega    rodhndolo.

I… WEOVEin the keg   to the storeroonl rollingit

̀I rolled the keg into the storeroom.'       (Talmy(1985):69‐ 70) (2)の イタリア語の移動動詞 は、「移動」 にその「経路 J(inと して表示 )を 取 り込み 1つ の 動詞 として生 じている。そ して、その「様態」 は付加詞 として生 じている。

この ように、「移動」 に「様態」 を取 り込 むのか、「経路」 を取 り込 むのかによつて、 2 つの言語 タイプが存在す ることを Talmy(1985)は 主張 している。

この タイプ分 けの妥当性 は、英語 とスペ イン語 の翻訳小説の対照研究 を行 った Slobin (1996)に よつて経験的に裏付 け られている。

(3) a. The three women drifted inertly down the hot street.

b.Las tres m ereS Siguieron,pausadamente,calle abaio.

̀The three women continued,slowl滉 down the street,'   (Slobin(1996):212) (3a)の 英語は、移動の様態が動詞 に取 り込 まれて 1つ の動詞 (drift)と して表示 されてい る。一方、 (3a)の 翻訳である (3b)の スペイン語の例 では、動詞 (siguierOn)1よ 移動 のみで 様態を合意せず、それは副詞 として文 に生起 している。

また、移動動詞 と「経路」 を表す前置詞句 との共起関係 にも違いが見 られる。

(4)

島根県立大学 F総 合政策論叢』第 14号 (2008年 2月 )

(4)a.I went through the drawing‐ room to the mor ng‐ room.

b, Pasando por el sa16n,fui al gabinete.

̀Passing through the drawing‐ room,I wentto he morning‐ room.' (5) a, He str011ed across the rooni to the doo■

b. Se dirigi6 a la puerta.

̀IIe went to the doo■ '      (Slobin(1996):211)

(4a)の 英 語 で は、  1つ の 動 詞 に対 して 2つ の経 路 (thrOugh he drawing‐ rOom、 to the mOrning‐ room)が 共起 してい るの に対 して、 その翻訳 であ る(4b)で は、文 に 2つ の動 詞

(pasandO,fui)が 現 れ、 そ れ ぞ れ に対 して 1つ ず つ経路 が共起 して い る。 (5)で は、英語 に存 在 してい る経路句 は、 スペ イ ン語 へ 翻訳 の際 に削 除 され てい る。移動 の 「経 路 Jを

動 詞 に包含 す る傾 向 を持 つ verb‐ frame言 語 に分 類 され るスペ イ ン語 は、「経路 Jを 外 置 す る こ とを好 まない。一方 、 satellite― frame言 語 に分 類 され る英 語 は、動詞 に取 り込 むの は

「様 態」 であるので、「経 路」 は外置 す る傾 向が強 い。そのため、複数 の経路句 が 1つ の動 詞 と共起 で きる。 この よ うに、 ロマ ンス諸 語 とゲルマ ン諸語で は、動詞 に包含 され る要素 が異 なることか ら、同 じ意味 的概念 を表す際 にその表現が異 なるこ とが見 て とれ る。

しか し、 Talmy(1985)の 主張はタイポロジーの域 を超 えるものではな く、以下の ように 英語であつてもverb̲frame言 語の、 ロマ ンス語であつても satellite‐ frame言 語の特徴 を持 つ移動動詞が存在する。

(6) a。   」 ohn enteFed the room.

b. Juan bailo en circulos,

̀(ht。 )Juan danced in circles(=around)' c. El libro se deslizo hasta el suelo.

̀(ht.)The book shd down to the■ oo■

'

(Aske(1989),3) (6a)の 英語の移動動詞 enterは 、「移動」 に「内的な空間へ」 とい う「経路」が包含 して動 詞 を形成 している。他 に も、 ascend,descendな どの上下への方向 を移動 の概念 と組み合 わせ て語彙化す る satellite‐ frame言 語 の特徴 とは異 なる動詞が見 られる。一方、 (6b‐ c)の

スペ イン語の例 は、移動 の概念 にその様態の意味 を包含 した移動様態動詞である。 このよ うに、 Talmy(1985)は タイポロジーの提案 によつて言語 に見 られる傾 向を示 したものにす ぎず、高い理論的検証性 を備 えた主張ではない。

日本語は、 Talmy(1985)の タイポロジーにおいて、 どちらの言語 タイプに属す るのかに ついて も議論がある。田中 &松 本 (1997),Ohara(2002)な どは、以下の事実か ら日本語は

ロマ ンス諸語 と同 じ verb‐ frame言 語 に分類 されるとしている。

(7)a。 彼 は 1意 気揚 々 と /車 で /歩 いて 1山 の頂上 まで登 った。

b。 彼 は 1意 気揚 々 と /車 で /歩 いて │サ IIを 渡 った。    (田 中 &松 本 (1997):141)

「登 る」「渡 る」 とい う動詞 にはそれぞれ「上へ」「対向へ」 とい う「経路」が合意 されて

お り、 ロマ ンス諸語 と同 じveお ‐ frame言 語 の特徴 を示す。 また、 (8)の ように「経路」 を

包入す る移動動詞 と (9)の ように「様態」 を包入す る移動動詞 を列挙す る と、圧倒 的 に前

(5)

者が多いことか らも分かる。

(8)行 く、来 る、登 る、下 る、上が る、降 りる、落 ちる、沈 む、帰 る、越 える、渡 る、

越 える、渡 る、過 ぎる、抜 ける、横切 る、 曲が る、 くぐる、 回る、巡 る、寄 る、通 過する、入 る、出る、至る、達する、着 く、到着する、去 る、離れる、出発する

(9)歩 く、走 る、駆ける、這 う、滑る、転がる、跳ねる、舞 う、泳 ぐ、飛ぶ、潜る、急 ぐ

(田 中 &松 本 (1997):14卜 143) このような事実か ら日本語は、ロマ ンス諸語 と同様 に「経路 Jを 動詞 に取 り込むタイプの

verb‐ frame言 語である とされて きた。 しか し、 日本語 は、 ロマ ンス諸語 とは決定的な差 がある。以下の例 を観察する。

(lo)ジ ョンが駅へ走 つて行 った。

(■ )a.1人 の男が ポーチ に歩 み出た。

b.ヤ シの実が浜辺 に流 れ着 いた。

(Yoneyama(1986):2)

(影 山 &由 本 (1997))

どの例 も「移動」 と「経路 Jが 複合 している例である。ロマンス諸語では、動詞の内部に

「経路」が完全 に取 り込 まれ、  1つ の動詞 として表示されていた ((2)参 照 )が 、上例の日本 語では、動詞 として語彙化するはずの「経路」の概念の一部が形態的に表示 されて複合動 詞 となっている。主動詞 に複合 している形態素「行 く」「出る」「着 く」は、どれも主動詞 の動作の「結果」 を表す動詞である。これらの動詞を (8)と 同 じタイプの動詞であるとみ

なせば、 (lo)‐ (11)は 、「経路」 と「移動」が融合 して 1つ の概念 を構成する verb‐ 持 ame言

語の特徴 を示す動詞 となる。 しか し、動詞に取 り込んだ「経路」 を形態的に表示する点は、

「移動」 と「経路」 を完全 に 1つ の動詞 として表示 し、形態的にそれらを区別 しないロマ ンス諸語 とは、動詞の構成に大きな差がある。これまでの先行研究 (Talmy(1985)、 日中

&松 本 (1997)、 Ohara(2002)な ど参照 )は 、このような日本語の事実に注 目して言語分類 を試みて来なかった。このような事実に着目して、Talmy(1985)を 提え直すことで、新た な言語の分類が可能であると考えられる。

1.2.述 語のアスペク ト特性 とタイポロジー

前節では、Talmy(1985)の 移動動詞の言語タイプについて概説 し、それが理論的検証性を 備えていない点、同 じ言語 タイプに分類 される言語群の中にも動詞の構成の仕方に違いが あることがある点など、再考すべ き点があることを指摘 した。そ して、このタイポロジ ーは、日本語の事実を中心 として捉え直すことで新たな分析が可能であることを指摘 し た。本節では、 Talmyの 認知的な観点からの移動動詞のタイポロジーではな く、動詞のア スペク ト的性質を精査することで移動動詞のタイポロジーを提出する分析 (Dowty(1991), Levin&Rappaport(1995),Tenny(1994)な ど参照 )に ついて概観 し、 Talmyの タイポロジ

ーは、述語のアスペク ト特性 というより抽象度の高い意味的な概念から捉え直す必要があ ることを述べる。

まず、以下の例 を観察する。

(6)

島根県立大学『総合政策論叢』第 14号 (2008年 2月

)

(12) a. John walked to the top.

b. Juan canlin6 hasta la ciェ na.

̀(lit.)Juan walked up to the top.' (Aske(1989)つ )

(12)は 、それぞれ英語 とスペイン語の「足 を動か して進む」 とい う意味 を表す移動様態動

詞 に着点句 を共起 させ て形成 した文である。 2つ の文は、同 じ要素か ら成 り立 っている文 であるため、一見す る と同 じ意味 を表す ように思われるが、言語間で意味的合意が異なる。

(12a)の 英語では、 「足 を動か して移動 していつた」先、つ ま り、頂上への到着点 を合意す るが、 (12b)の スペ イ ン語では、頂上への到着 までは合意せず、移動 の方向 を示すのみで ある。同様 なことは、 Higginbotham(1999)が 指摘する以下の例 にも見 られる。

(13) a. The boat  is noating under the bridge。    (goa1/1ocative) b. La  barca galleggia sotto  il pont.

the boat  noat     under the bridge (locative)

̀The boat is■ oating under the bridge,'

(■ [igginbOtham (1999):132) (13a)が 英語 の例、 (13b)が イタリア語の例であるが、いずれ も「ユ ラユ ラと浮かぶ」 とい

う意味の移動様態動詞 に前置詞句 を付加 して文が構成 されている。 (13a)は 、 (1)ボ ー トが ユ ラユ ラと揺れて流れてゆ き、最終的に橋の下 にた どり着 く、 (ii)ボ ー トがユ ラユ ラと揺 れている場所が橋 の下である、 とい う 2つ の意味が存在する。一方、 (13b)は 、 (ii)の 意味 は表すが、 (1)の ような移動 によってある位置への到達 したことは合意 しない。つま り、 2 つの言語 には、移動様態動詞 に着点句 を付加 して、その地点への到着 を合意で きるか否か に違いがある。 この ような、到着の含意 に関する言語的差異 は、述語のアスペ ク ト的特性 (特 に、述語 の有界性 (Dowty(1991),Tenny(1994)な ど参照 ))を 観察することで検証で きる。述語が表す動作 に限界点があることを表す述語 (=有 界述語 )の 場合、in an hour の ような期 間を限定す る副詞句 を述語 に付加で きるが、述語の表す動作が際限な く続 き、

その終了点が明確で はない述語 (=非 有界述語 )の 場合、 for an hourの ようなある時間 的に広が りのある長 さを表す副詞句 を付加で きる。 この観点か ら、英語 ・スペイン語の事 実 を確認す ると以下の ような違いが観察 される。

(14) a.  ohn danced for/*in an hour.

b.  」ohn swam for/*in an hou■

(15) a.  ohn ran to the nexttown in/*for an hou4

b。   」 ohn、valked to school in/*for an hou■

(16) a.  uan can n6 hasta la ciina?*en dos horas,

̀(lit。 )」 uan walked up to the top in two hours,'

(Tenny(1994):77)

b. Juan ca■ lin6 por/a‐ traves del tunnel?*en dos horas/dos horas,

̀(lit,)」 uan walked through the tunnolin two hours/for two hours.'

(Aske(1989):7)

(14)で は、 そ れ ぞ れ の 動 詞 が for〜 と共 起 し in〜 と は不 共 起 で あ る こ とか ら非 有 界 的 な性 質

(7)

を持 っていると言 える。つ まり、動作 の継続 は示すが、動作 の完結は含意 していない。一 方、 (15)の ように、 (14)の それぞれの文 に着点句 を付加すると共起可能な副詞句が逆転 し、

有界的 な特徴 を示 している。 この場合、述語の表す動作 に時間的な限界があることを意味 す る。 (15)に 対応す るスペイン語の例 (=(16))は 、 in〜 に相当する期 間句 と共起 しない こ とか ら、 これ らの例が有界的でない ことが分かる。 また、イタリア語 もスペイン語 と同様 に、移動様態 を示す correre(run'は 、非有界的な性質 を持つが有界的な解釈 は持つ こと がで きない。

(17) a. *Gianni e corso lungo la siaggia in un'ora.

̀(■ t,)」 ohn ran beside the beach in an hou■

'

b.  Ciianni ha corso lungo la spiaggia per un'ora.

̀(ht。 )John ran beside the beach for an hou■

'

(Folli(2001):185)

(14)‐ (17)に 含 まれ る動詞 は、本来的 には英語で もロマ ンス諸語 で も in〜 句 と共起 で きず、

非有界 的 な性質 を持つ。 しか し、英語では、 (15)の 例 に見 られるように移動動詞が前置詞 句 と共起す ると、期 間を限定する副詞節 と述語が共起可能 とな り、述語のアスペク ト性が 本来の非有界的な ものか ら有界的な ものへ と転換 している。一方、ロマ ンス諸語の例では、

移動動詞 と前置詞句が共起 して も有界性の変更 は起 こらず、非有界的な性質のままである。

この こ とか ら、 (12)‐ (13)の 意味的含意の違い と (15)― (16)の 文法性の違いは、 2つ の言語 に 見 られ る非有界述語の有界述語への転換 (本 論では、 これを「アスペク ト転換」 と呼ぶ。 ) の言語 的違いにあると説明される。

また、 日本語の移動動詞 をアスペ ク ト性の観点か ら検証す ると、上述の 2つ の言語 タイ プとは異 なる特徴 を観察することがで きる。 日本語では、「経路」 を合意す る移動動詞 は、

以下の ように、着点 を伴 うと有界的な性質 を示す。

(18)a。 太郎が駅に 11時 間で /*1時 間 1着 いた。

b.太 郎が家 に 110分 で /*10分 間 1帰 った。

c.太 郎が富士山 (の 山頂 )に 11時 間で /*1時 間 1登 つた。

一方、移動様態動詞は以下のように非有界である。

(19)a.ジ ヨンが 11時 /*1時 間で 1走 つた。

b.太 郎が 11時 間 /*1時 間で 1泳 いだ。

c。 その赤ちゃんが 11時 間 /*1時 間で 1這 つた。

これ らの動詞 に着点句 を付け加 えた として も容認可能な文 とはならず、前節で考察 したロ マンス諸語の事実 と符合する。

(20)a.ジ ヨンが 駅 に 11時 間 /*1時 間で 1走 った。

b.太 郎が 対岸へ 11時 間 /*1時 間で 1泳 いだ。

c。 その赤 ちゃんが 向こう側 に 1数 分 /*数 分で 1這 った。

しかし、Yoneyama(1986)が 指摘 しているように、着点句は、 (21c)の ように複雑述語を形

成することで移動様態動詞と共起可能となる。

(8)

島根県立大学 『総合政策論叢』第 14号 (2008年 2月

)

(21)a.ジ ヨンが走 つた。

b。 ?ジ ョン が駅へ走 った。

c.ジ ョンが駅へ走 つて行 った。 (Yoneyama(1986):1‐ 2)

同様 に、 (20)の 移動動詞 に到着の意味 を持つ動詞 を結合 して複雑述語 を形成す ると、有界 的な性 質 を持つ文法的な文が生成する。

(22)a。 ジ ヨンが 駅に │*1時 間 /1時 間で 1走 つて行 った。

b.太 郎が 対岸へ │*1時 間 /1時 間で 1泳 ぎ着いた。

c。 その赤ちゃんが 向こう側 に │*数 分 /数 分で 1這 って行 った。

ここで重要なのは、 (19)の ように、本来、非有界的な性質を持つ「走る」「歩 く」などの 移動様態動詞が、 (22)の ように複雑述語の形成 によつて有界的な性質を持つ動詞へ と変化 して、「到着」 を表す文 となることである。同様の例は、影山・由本 (1997)に も見 られる。

(23)a,1人 の男がポーチに ?*歩 んだ /歩 み出た。

b.ヤ ンの実が浜辺に ?*流 れた /流 れ着いた。 (影 山 &由 本 (1997):151) (23)の 事実 も、以下のように、 どれ も有界的な性質 を持つ。

(24)a.1人 の男がポーチ に *10分 /10分 間で歩み出た。

b.ヤ シの実が浜辺 に *1年 /1年 間で流れ着いた。

このような事実は、日本語のアスペクト転換は、主動詞に結果を表す形態素を複合する形 態合成によってなされることが分かる 3ち この点が、同じ verb‐ frame言 語に分類されるが アスペクト転換を有しないロマンス諸語と異なり、また、アスペクト転換に形態素を必要 としない英語などの言語との違いである。

そ こで本論では、 Talmy(1985)の タイポロジーを再構築 し、特 に、移動動詞 におけるア スペ ク ト転換 を日本語 に見 られる形態 プロセス を中心 に捉 え直 し、以下の 3つ の言語 タイ プを提案す る。

(25)(i)日 本語は可視的で音形 に現れる形態素 によって、アスペク ト転換が可能である。

(ii)英 語 を中心 とするゲルマ ン諸語 は、形態 プロセスによらず着点句 と移動動詞が 共起するだけでアスペク ト転換が可能である。

(iii)イ タリア語・スペイン語 な どのロマ ンス諸語 は形態合成・移動動詞の着点句 と の共起のいずれの手段 によつて もアスペ ク ト転換が不可能である。

移動動詞 は、形態的な観点か ら、 (A)ア スペ ク ト転換が可能か否か、 (B)明 示的な形態素 を使 うか否か によって 3つ の言語 タイプに分類 される と分析す る。 (A)の 観点か らロマ ン ス語が他 の 2つ の言語 とは異 なる性質 をもち、 (B)の 観点か らは 日本語が特徴 的な性質 を 持つ。つ ま り、 Talmy(1985)で verb‐ frame言 語 とみなされた 日本語 とロマ ンス語は、形態 的な特徴 か ら事実 を精査することで区別の必要性があることが分かる。

次節 では、移動動詞 と同様 に述語 に結果 を表す語 または句 を付 け加 えることで変化主体

の結果 を合意す る文 を形成する結果構文 を観察 して、 (25)と 同様 な形態要素か らの 3つ の

(9)

言語 タイプの認定が必要であることを明 らかにする。

2.結 果構 文 の諸相

本節では、移動様態動詞 と同様 に結果を表す前置詞句や形容詞句 を動詞 と共起することで

「結果」 を意味する構文 (=「 結果構文」 )に ついて、その基本的な性質と個別言語におけ る現れ方の違いを概観する。

よく知 られているように、結果構文は動詞句に結果述語を共起 させると、動詞句の示す 動作の後に生み出される被動作主体の最終的な結果状態を表す文である。

(26) a.  ohn pounded the xnetal nat.

b.  」 ohn painted the wan red.

(26)は 、それぞれ「金属 をたた く」「壁 を塗 る」 とい う述語が本来表す動作 り結果 として、

その動作 の被影響者の状態が変化 し、被影響者が最終的にそれぞれ「平 らになった」「赤 色 になった」 ことを意味す る文である。つ ま り、結果構文 は、基体 となる述語 とその述語 の表す動作の結果 として生ず る結果状態 を表す結果述語の 2つ の要素が結合 して 1つ の出 来事 を表す文である。

また、結果構文 は、 (21)の ように基本的には有界的な事態 を表す。

(27)a. The waiter wiped the table(in/for twO minuteO b. The waiter wiped the table dry(in/*for two lninute0

(Levin&Rappaport(1995):58) (27a)の ように、本来的には有界 ・非有界の解釈 を持ちうる述語 wipe the tableは 、 (27b)

のように dryと いう述部の描 く事態の結果を表す語 と共起 して結果構文を形成すると有界 的な解釈のみ持つ。つまり、結果構文は有界的な性質を持つのである。

このような特徴 を持つ結果構文であるが、その構文形成プロセスは一様ではないと指摘 する分析が存在する。Washio(1997)は 、結果構文を形成する述語の意味的合意 と結果述 語が表す意味の関係 を精査することで、結果構文には2つ のタイプが存在することを論 じ ている 4)。

以下のような結果構文とその基体動詞の意味を考えてみる。

(28) a. The hOrses dragged the logs smooth, b. The jockeys raced the horses sweaty.

(29) a. Org/gi tO pull(something heavy)along with great effort.

b. rα c9i to cause(an anilnal or vehicle)to run a race.       (Washio(1997)110) (28)を 形成 す る動詞 の意 味 は、 それぞ れ (29)の ように記述 され るが、 これ らの動詞 の意味 の 中 には、結 果述 語 の表 す状 態 は含 意 され てい ない。 そ の一 方 で、 (30)の よ うな結 果構文 の 基体動詞 を観察す る (=(31))と 、上記 の結果構文 とはその性質 には大 きな違 いが見 られる。

(30) a, Mary dyed the dress pink.

b. I froze the ice cream hard/solid.

(10)

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)

(31)a.の 9:tO g e a(different)color to(something)by means Of dye.

b. Fr99Z9:to cause to harden,esp.into ice,as a result of extreme cold.

(Washio(1997)■ 0‐ 11) (30a)の 基体動詞dyeの 意味 (=(31a))に は、「染める」 とい う出来事 によって生 じる結果 状態、つ ま り、本来 と別 の色が与 え られることが記述 されている。 (30b)も 同様 に、基体 動詞 freezeの 意味 には、動作 の結果 として生 じる状態が記述 されている。つ ま り、 (28)と

(30)の 結果構文 は、一見す る と同 じように見 えるが、述語が記述す る出来事 を精査す ると

動詞の意味 に結果性の含意 に違いがあるか どうかに違いがあることが分かる。 (30)の 結果 構文 には、動詞があ らか じめ変化 の含意 を持つが、 (28)に はない。 (28)は 、動詞 は本来、

結果 を含意 しないが、結果述語 と共起すると述部 に結果の意味的含意が生 じる。

Washio(1997)は 、動詞が持続 的・継続的な意味 を持 ち本来的に結果 を合意 しないが、

それに結果述語が共起することで動作の被影響者が結果述語の描写す る状態へ と変化する ことを意味す る (28)の ような結果構文 を strOng resultat e、 動詞が本来 的 に結果性 を持 ち、結果述語がその結果 を表示す る働 きを有す る達成動詞や作成動詞か ら成 る (30)の よう な結果構文 を weak resultativeと 呼んで区別する 5ち

また、Washio(1997)は 、上述の結果構文の 2つ のタイプを基準 として、個別言語の事 実を確認すると、それらは、一様の現れ方をしないことを観察 している。

(Washio(1997):6) (33) a. *」 ean chevauxont traine les rondins hsses.(strong resultative)

̀The hourses dragged the logs smooth.' (32) a. The horses dragged the logs smooth.

bo She kicked the dog black and white.

c. John rOcked the dough thin.

d.  」ohn ponshed the metal shiny.

b. *Jean a battu WIarie sanglante,

̀」 ohn beat Mary bloody.' c. *」 'ai peint le xnur rouge.

̀I painted the wall red.' d. *」 ean l'a fusille 140rt.

̀」 ohn shot hiin dead.'

(34)a。 *馬 が九太 をスベ スベ に引 きず った。

b.*彼 女 は息 子 を痣 だ らけ に蹴 っ た。

c。 ジ ョンはパ ン生 地 を薄 く延 ば した。

d.ジ ョンは金 属 を ピカ ピカ に磨 い た。

(strong resultative) (strong esultative)

(ヽ

veak resultative) (weak resultative)

(strong resultative)

(weak resultative)

(weak resultative)

(Washio(1997):28) (strong resultative)

(strong resultative) (weak resultative) (weak resultative)

(Washio(1997):6)

英語 (=(32))は 両 タイ プの結 果構文 が比較 的 自由に生成可能 であ る。 フラ ンス語 (=(33))

は、いず れの結果構文 の生成 で きず、 日本語 (=(34))は weak resultat eは 生成可能 であ

るが、strong resultativeは 不 可能である。 ここまでの事実 は、以下の ように まとめ られる。

(11)

(35)

英   語 日本語 ラ ンス語

Strong Resultatives y * *

Weak Resultat es y y *

(覇 砿 shio(1997)i30を 修正 )

日本語では、結果構文の生成は、動詞が結果状態の含意 を語彙的に持 ちうるか否かに影響 を受ける。動詞が記述する出来事 に結果性の合意がなければ、 日本語では結果構文が生成 されない。 この ように、 Washioは 、結果構文 を基体動詞 と結果述語 の意味的な関係 によ って三分割 し、その三分法が個別言語 による結果構文の文法性 の違いを説明すると論 じて ヤヽる。

しか し、 日本語 の strong resultativeの 生成 は、常 に阻止 され るので はない。以下 の ように動詞の形態 を複雑 にす る と生成が可能 となる ものがある (影 山 (1996),Hasegawa (1998)参 照 )。

(36)a.彼 は鉄 を平 らにたたき延ば した。

b.ラ ンナーが シユーズをボロボロに走 り潰 した。

(36)の 「たた く」「走 る」 は、本来、 strOng resultativeを 形成す る非有界の性質 を持つ動 詞であるが、これ らの動詞 に変化主体の結果 を表す動詞 を複合 して複雑述語 を形成すると、

容認 される。つ ま り、先 に議論 した移動動詞 と同様 に、 日本語 の結果構文の中には、結果 を合意す る形態素 を主動詞 に結合 して複雑述語 を形成す ることで生成可能 なものがある。

この点が 日本語 に特徴的な点で、英語やロマ ンス諸語 とは異 なる部分である。

本節では、結果構文 についてその特徴 とタイポロジーの両面か ら検討 して きた。結果構 文の生成 は、ロマ ンス諸語 においてはかな り制限 され、英語では、動詞 に変化主体である 名詞句 と結果述語が生 じ、意味的な蠅締が生 じなければかな り自由に結果構文の生成が可 能である。 日本語 は、動詞 自体が結果性 を合意す るものであれば、その結果の意味 を結果 述語で表示で きるが、そ うでない動詞 は単一の動詞 によつて結果構文の形成がで きず、結 果性 の合意 を持 ち うる要素 を主動詞 に複合 させて、複雑述語 を形成す ることで結果構文 を生成す る。特 に、 3つ の言語 タイプは、 Washio(1997)の strong resultatives、 つ まり、

アスペ ク ト転換が必要な結果構文の生成用件 に大 きな差がある と言える。そこで、本論で は、 この点について以下のような言語 タイプを提案す る。

(37)ア スペク ト転換 を有する strong resultativeの 生成可否 (i)  ロマ ンス諸語 :不 可

(li)ゲ ルマ ン諸語 :可 能

( )日 本語 :不 可 (た だ し、複雑述語 を形成す ると可能 )

つ ま り、結果構文は、アスペ ク ト転換 とい う観点か ら見た時、 3つ の言語 タイプに明確 に

差が生 じ、また、 (37)は 、1.2節 でまとめた移動動詞の言語的な差異 をまとめた (25)と 軌 を

一 にす ることが分かる。そこで次節 において、 2つ の言語現象 をまとめて「結果」 を表す

構文 における言語の タイポロジーを提案す る。

(12)

島根県立大学『総合政策論叢』第 14号 (2008年 2月 )

3。 「結果」を意味する構文における言語タイプ

ここまで移動動詞 と結果構文 に関 して、それぞれの特徴 に言及 しなが ら主にアスペク ト転 換が必要な事実 においてロマ ンス諸語、英語 をは じめ とす るゲルマン諸語、 日本語が どの ような現れ方 をするのかを中心 に議論 してきた。 1.2節 で、移動動詞のアスペク ト転換 は、

(A)動 詞句 と着点句 の共起 。複雑述語の形成のいずれの手段 によって も到着の合意が持 て ないロマ ンス諸語、 (B)動 詞 と着点句 を共起 させ ると、動詞 自体 に結果性の含意がな くて も結果の意味が生 じるゲルマ ン諸語、 (C)ゲ ルマ ン諸語 と同 じ結果性の含意 を持たせ るた めには、主動詞 と結果 を表す形態素が複雑述語 を形成す ることが必須 な 日本語の 3つ の タ イプがある と結論づ けた。 また、 WashiO(1997)が 提案す るアスペ ク ト転換が必要 となる strong resultativeに おいては、 (A)英 語ではかな り自由にその生成が可能であるが、 (B) ロマ ンス諸語では、それが制限され、(C)日 本語では、複雑述語の形成が必要であるとそ れぞれの言語 において振 る舞いの差が見 られる。 どち らの構文 において も、位置・状態の 最終的な結果状態 を意味 し、特 に、非有界述語か ら有界述語の転換 を伴 うアスペク ト転換 があることか ら、両構文 は、意味的に等価 な構文である。そ こで、本論では、両構文 は、

同 じ原理 によつて導 きだ される言語現象である とみな し (ci影 山 (1996))、 アスペ ク ト転 換 に関 して、それぞれの言語が示す特徴か ら、以下の ような言語 タイプを提案する。

(38)ア スペク ト転換 に関す る言語 タイプ

(A)ロ マ ンス諸語 :あ くまで も動詞が語彙的に合意するアスペク ト特性 を基軸 として、

統語的・形態的なアスペ ク ト転換現象 を有 しない。

(B)ゲ ルマ ン諸語 :動 詞 自体 のアスペ ク ト特性 は、動詞が着点句 や結果述語 など結果 を含意す る要素 と共起することで比較的 自由に行 える。

(C)日 本語 :動 詞 自体 のアスペ ク ト特性 は変更で きないが、結果 を合意す る動詞 を主 動詞 に編入 して複雑述語の形成することで行 う。

しか し、 (38)は あ くまで も一般化であって、 Talmy(1985)の タイポロジーを形態的な観点 か ら捉 え直 したにす ぎず、理論 的 に高次 な提案ではない。本論 の 目的は、「結果」 を生み 出す普遍的なメカニズムの解明であることか ら、 (38)の 一般化 をよ り高次の理論 によって 捉 え直 し、人 間言語 を構成す るメカニズムを提示す る必要が あ る。そ こで、次節で、述 語 のアスペ ク ト特性 と形態的 な特徴 について理論 的な観点か ら分析 す るSnyder(1995), Snyder(2001)に ついて概観 して、 (38)の 理論的基盤 を探 る。

4.形 態要素と「結果」を表す構文 :Snyder(1995),Snyder(2001)

前節 までに移動動詞及 び結果構文 にみ られる言語的差異 について、アスペ ク ト転換の観点 か ら形態的な特徴 に注 目 して一般化 を試み、 (38)の 3つ の言語 タイプを認めるべ きである ことを主張 した。 しか し、この提案は、あ くまで も形態的な特徴 か ら言語事実 を捉えたも のであつて、一般化 の域 をでる ものではな く、理論的検証性が低 い。そ こで、本節では、

Snyder(1995),Snyder(2001)の 分析 を取 り上 げて、形態的なプロセスの有無がアスペ ク ト性の予測 に肝要であ り、 この観点か ら (38)に 理論的枠組み を提供す ることが可能である ことを示す。

Snyder(1995)は 、「結果」 を意味するい くつかの構文 (結 果構文、小辞 を含む構文、移

(13)

動 動 詞 な ど )に つ い て議 論 し、英語 には音 形 には現 れ ないが有界 的 な特徴 を もつ形 態素

(=銑 e.c)が 統語構 造 に存在 す る と仮 定 す る こ とで、 これ らの構 文 の統 語 的 ・意 味 的特 徴 を説 明 で きる と分析 す る。例 えば、英語 の結 果構文 (=(39a))は 、(39b)の 統 語構 造 を持 ち、統語構造 において駐Л cが 動 詞 と結 合 す る こ とで動 詞 が有界性 を帯 び、述 語 の解釈 が有 界 的 とな る とす る。

(39) a. JOhn painted the house red.

b.         vP

VP the

paint ⌒

x       AP

(40)‖ り telic‖ P(e)=true, for any event e and any predicate of events R iff fOr that event e'which is a subset of e and which is the natural endpoint of e,P(e')=

true.

統 語構 造 内 に (40)の よ うな解釈 を持 つり tttcと い う形態素が生 じる と、その ホス トとなる動 詞 が それ と結合 し、述 語全体 が この形 態 素 の意 味 的特徴 に よ り有界 的 な特性 を持 つ こ とが 保 証 され る。英語 で は、 この ような統 語構 造 にお ける形態合成 プロセス に よつて、結 果構 文 を は じめ と した結果 を合 意 す る構 文 が 自由 に派生す る こ とが予測 され る。一方 、 ロマ ン ス諸語 であ るが、以下 の フラ ンス語 の例 の ように、英語 と異 な り結果構文 が生成 されない。

(41) a. *Elle a soigneusement essuy6 1a vaisselle.

̀She careFuny wiped the dishes,' b. *Il a rit coHllne une baleine.

̀He laughed hke a whale.' (Levin&Rapoport(1988):280) 問題 となるのは、 (41)が(39b)の 統語構造 を持てば、 (41)が 文法的であることを予浪〕 するこ

とである。この問題を解消するために、 Snyder(1995,2001)は 、 (39b)の ような動詞 とゼロ 形態素を統語構造において合成 されて、  1つ の動詞を形成できるか否かという形態合成プ ロセスがイ 固別言語に存在 しているか否かが結果構文の生成可否を決定すると論 じている。

英語では、 ̀teacup'と い う N‐ N複 合語が存在す るが、 フランス語 では、同 じ表現 を

̀tasse h thё 'の ように複合語ではな く名詞句で表現する (Snyder(1995:469)。 また、英 語の ̀frog man'と い う語は、「カエルに似た人」「カエルのように振舞 う人」「カエルを 集める人」 といった「カエル」か ら連想 される様々な特徴 を持った人 とい う意味で解釈

されるが、それに相当するフランス語の ̀homme grenouille'は 、「潜水作業員 Jと いう 語彙的に決められた意味 しか存在 しない (Snyder(2001:328))。 これらの事実は、英語で は、 2つ の形態素が統語構造上で結合 し、解釈部門に送 られるため多様な解釈 を持ちうる が、フランス語では、統語構造 における形態合成手段がなく、語彙部門で意味が確定 し統

red

atellc

(14)

島根県立大学 写 総合政策論叢』第 14号 (2008年 2月

)

語構造 に送 られる。そのため、英語 において合成語で表す単語 もフランス語では句 で表 し た り、英語では、緩やかな解釈 を許す表現 もフランス語では語彙的に単一の意味 しか示す こ とがで きない。つ まり、 2つ の言語 タイプの間には、 2つ の形態素 を統語構造 において 結合で きるか否かに関 して違いがあることになる。そのため、フランス語 (な どのロマ ン ス諸語 )で は、複合語 を作 り出す統語的メカニズムがない ということは、 (41)が 仮 に (39b) の統語構造 を持 ったとして も、② t』 とをホス トの動詞 に結びつける形態合成手段がない こと を意味 し、統語構造 において 2つ の形態素が合成 されず、有界的な解釈 を持つ構文が生成 されない。そのため、結果構文の生成がで きない と分析する。つ ま り、言語が有するアス ペ ク ト特性 を有 した形態要素が、結果 を表す文の生成可否に強 く関与するのである。

Snyderの 提案で重要 なのは、一見、「結果」 の意味 を生み出す表現 に形態素が関与 して い ない と思われる英語の ような言語 において も、それを生成するためには形態素が必要で あ ることが示 された点である。 この分析 に従 うと、 (38)の ゲルマ ン諸語の特徴 の記述 は、

形態的な特徴か ら再定義する必要がある。

既 に指摘 したように、 日本語の結果の意味 を作 り出すい くつかの構文 は、形態的な力 を 借 りてアスペ ク ト転換 を起 こす。

(42)a,1人 の男がポーチに ?*歩 んだ /歩 み出た。

b.ヤ シの実が浜辺 に ?*流 れた /流 れ着いた。 (〓 (11))

(43)a。 彼 は鉄 を平 らにたた き延ば した。

b.ラ ンナーがシユーズをボロボロに走 り潰 した。 (=(36))

この ような形態素が Snyder(1995)の 仮定す るり tЛ cの 音声的な具現形である と分析可能 な のか、検証が必要であ り、議論 の余地がある ものの、Synderの 分析 によ り結果 を生 じる 形態要素の働 きによつて述語のアスペ ク ト性が捉 えられることが示 されたことは、 日本語 の形態合成手段 を基軸 として、「結果」 を表す構文の普遍性 と個別性 を考察す る本論 の方 向性 と一致するものである。

しか し、Snyderの 分析 には幾つか問題点がある。

Snyder(2001)に おいて、 日本語 は、 N‐ N複 合 と結果構文 の派生 につ いて、英語 と同 じ振 る舞 い を見せ る として、 2つ の言語 を同一の言語 タイプに分類 してい る。 しか し、

(32)。 (34)の ように、結果述語が動詞の意味 か ら完全 に独立 していないweak resultative は、 日・英語で共通 して結果構文の生成が可能であるが、結果述語が動詞の意味か ら完全 に独立 している strong resultativeは 、英語 のみ、その生成が可能で、結果構文の生成は 日本語 よりも英語の方が より広い分布 を示す。

また、杉 岡 (1998)が 指摘す るように、 日本語の複合名詞は、英語の複合名詞 とは異 なる 分布 を示す ものがある。英語の複合名詞 は、基体 となる述語の頂要素が主名詞 に編入で き

るが、付加詞 (特 に基体が他動詞の もの )は 編入で きない。

(44) a. pasta‑lnaker, letter‐ writing,potato‐ baking

b。  *fast― inake恥 *hand‐ Inaking(of clothes),*pen― writing(of letters)

一方、 日本語は、述語の語彙意味的な情報 に従 つて、項関係 にある要素だけでな く付加詞

の要素 も比較的 自由に編入 を許す。

(15)

(45)a.玉 拾い、手紙書 き、ね じまき、山崩れ

b.よ ちよち歩 き、黒焦げ、手作 り、 日焼 け (杉 (1998):342‐ 343) つ ま り、 2つ の言語の複合名詞の形成方法が異 なるのである。

Snyder(1995,2001)は 、 「結果」 を表す構文の派生 についての普通 的な原理 を提案 し、

個別言語の特徴 をその言語が持つ形態 プロセスの特徴 か ら導いた。つ まり、 「結果」の意 味 を表すためには、如何 なる形であって も形態要素が関与することが普遍の原理であつて、

それが関与 しない言語 においては、普遍的な特徴 とは異 なるパ ラメター (=Parameter) の働 きによつて個別言語 の特徴が導 きだされると分析 しなければな らないことを示 してい る。次節 において、 Snyderの 分析 を視野 に入れなが ら、言語 に普遍的 に存在す る と思わ れる 2つ の素性 を導入 して、 (38)の 言語 タイプを提 えられる理論的検証性の高い普遍的メ カニズムを提案する。

5,「 結果」を生み出す普遍原理と佃別言語を生み出すメカニズム

前節 までに、 (I)結 果 を表す構文 を形態的観点か ら分類す ると 3つ の言語 タイプを認める 必要があること ((38)参 照 )、 (H)Snyder(1995)な どの先行研究 により英語 の ような一見 す ると「結果」 を表す構文 に形態要素が関与 していない ような言語 において も、音声的に 空の形態要素がその構文 の生成 に関与す ることが明 らかにされ、「結果」 を表す構文 は、

形態プロセスか ら捉 えるべ きであることを見た。

本節では、形態的な特徴 か ら導 きだ した (38)の 一般化 を 2つ の素性 を仮定す ることで、

上記の 3つ の言語 タイプがそれ らの素性の組み合 わせか ら自然 に導 きだ されることを示 す。

まず、 日本語 の ようなアスペ ク ト転換 に明示 的 な形態素が 関与す る言語 を捉 えるた め に [Overt MOrpheme](=[OM])と い う素 性 を仮 定 す る。 ま た、 Snyder(1995)に 従 っ て、英語 の ように音形 を持 たない形態素がそれ に関与す るこ とを提 えるため に [Covert Morpheme](=[CM])の 素性 を仮定す る。そ して、 これ ら 2つ の素性 は、 [± ]の 2つ の値 を 持つ ([土 OM]/[± CM])と 仮定す る。 これ ら 4つ の素性 を組み合 わせ ることで、以下の よ うに 4つ の言語 タイプ (そ の うち 1つ は原理的 には存在 しない。 )が 言語 に存在 している ことが予測 される。

(46)ア スペク ト転換 に関わる言語のタイプ分け +Overt Morpheme

([+OM])

‐ Overt Morpheme

([‐ OM]) +Covert WIorpheme

([+CWI]) * ゲルマ ン諸語

‐ Covert WEorpheme

([― CM]) 日本語 ロマ ンス諸語

ここで提案 した [± OM]/[± CM]の 素性 は、個別言語の形態的な特徴 か ら導 き出 した素性

である。語彙の根幹 をな し、意味 を担 う最小の単位である自由形態素、時制や一致、品詞

転換 などを担 う拘束形態素 と人間言語 を構成するのは形態素である。 これ らの形態素、特

(16)

島根県立大学『総合政策論叢』第 14号 (2008年 2月

)

に、機能的な役割 を果たす拘束形態素は、言語 ごとに可視 ・不可視が異 なる。本論の提案 する形態的特徴 を示 した 2つ の素性 は、このような形態素の一般的な特徴 か ら導 き出 した

ものであ り、その存在 は妥当なものであると言える。

2つ の素性の組み合 わせ によって、 (46)の ように (38)の 3つ の言語 タイプが予測で きる。

日本語の ように明示 的な形態素 を持つ言語は、卜 OM],[‐ CM]、 英語の ように音声的に空 の形態素が関与す る言語 は

[―

OM],[+CM]、 ロマ ンス諸語の ように形態要素が関与 しない 言語は、

[‐

OM],[‐ CM]の 素性 をそれぞれ持ち、 (38)の 3つ の言語 タイプが、素性の組み合 わせか ら導 き出 されることが分かる。 この提案か らTalmy(1985)の 分析 は、 [± CM]の 素性 に関わる部分のみで タイポロジーを提案 していたことが分かる。つ ま り、 [+CM]の 素性 を 持 てば、 satellite‐ frame言 語が、卜 CM]を 持 てば、 verb̲frame言 語 が認定 され る。 しか し、前述の通 り、 この ような視点のみでは、 日本語 とロマ ンス諸語の違いは捉 えられず、

[土 OM]の 素性 を仮定す ることで、先行研究が捉 えることがで きなか った事実 を適切 に予 測で きる。

(46)の 提案 は、前節 で議論 したSnyderの 分析が抱 える問題点 も解消で きる。 日本語 は、

「ている」「てある」が代表であるが、述語のアスペ ク ト特性 を表示する形態素が豊富 に存 在する。 また、「飲みかけの ビール」 の「かけ」 (岸 本 (2000)な ど )「 しば りたての ミルク」

の「たて」 (山 田(2005))な ど述語のアスペク トを切 り取 り、連体修飾節 を形成する形態素 も存在する。 さらに、英語では、 bark,biteな ど動詞 と名詞が同形で どちらの品詞 にも対応 する語が存在す るが、 日本語の場合、動詞か ら名詞 を形成す る際 には、以下の ように、そ の結果 として生 じる要素 を名詞の一部 として表示する必要がある (Kageyama(2001)参 照 )。

(47)a.吠 え声

b.咬 み傷 (Kageyama(2001):44)

つ まり、 日本語 においては、可視的な形態素が「結果」 を表す ことが様々な言語現象にお いて観察 されるが、英語 はそれに相当する形態素が明示的な形態要素 として生 じないこと がある。 この ような事実 は、 日本語 と英語の形態表示 に音声的 ・形態的に表示の差が存在 し、その明確 な区別の必要性 を示唆する。本論の提案 は、 日本語 と英語が異なる素性の組 み合わせ を持つ ことで両言語の形態的要素の違いを的確 に捉 えることがで き、また、 N‐ N

複合や結果構文の生成可否 といった言語事実 にその妥当性 を求めな くて も、形態的な特徴 のみに言及す ることで理論的枠組みが提示で きるため、 Snyderの 提案が抱 える問題点 を 解消する。

ここで議論が必要 となるのが、 [+CM][+OM]の 組み合わせ を持つ言語である。両方の 素性が [+]の 素性 を持 つ と、可視・不可視 の 2つ の形態素 によってアスペ ク ト転換がなさ れることとなる。 この ような言語 タイプは、これまでの先行研究 によって議論 されて きた 事実 によつて排除されると思われる。

Goldberg(1995)は 以下の ような例が非文法であることを指摘 している。

(48) a. *John kicked Bob a suitcase open, b. *She kicked hian bloody dead.

c. *Shirely sailed into the kitchen into the garden. (Goldberg(1995):82)

(17)

(48a)の 使 役 変化構 文 にお い て は、kicked Bob a suitcaseと い う述語 の段 階で既 に、 Bob

にsuitcaseが 渡 る とい う結果 の意味 を持 ってい る。 その述語 にさらに結果述語 である Open

を付 加 してsuitcaseの 結果状態 を表 そ うと してい るが非文法である。(48b)は 述部 に結果述 語 が 2つ 共起 した例 、 (48c)は そ れ に着点句 が 2つ 共起 した例 であ るが 、 どち らも述部 の表 す 1つ ので きご とに よつて 2つ の結果状態 を強 いてい る。

また、」 ackendoff(1990)は 、以 下 の ような結 果性 を強 く含意す る達 成動詞 は結 果構文 が 生 成 で きない ことを指摘 してい る。

(49) *Harry destroyed/demolished/、 vrecked the car into bits.

(」 ackendOff(1990):117) 動 詞 が本 来 的 にあ る (予 見 され た )結 果状 態 を含 意す る場合 、動詞 が含 意 す る結 果 と異 な

る結果状態 を結果述語 に よつて強制 しようとす る と非文法性 を示す。 この例 で も、動 詞 を 中心 と した 1つ の述語が 2つ の結果状態 を持 つ よう解釈 を強制す るため、非文法性 を生 じ て い る。

これ らの事実 を説明す るため に、 Goldberg(1995)は 以下の ような制約 を提案 してい る。

(50) Unique Path cOnstraint:

If an argument X refers to a physical obiect,then no more than one distinct path can be predicted of X within a single clause. The notion of a single path entails two thingsI(i)X can40t be predicted toュ 40Ve tO two distinct locations at any given tianeチ ,and(ii)the mOtion must trace a path within a single

landscape. (Goldberg(1995):82)

(50)で 重要なのは、  1つ の事態あた り生 じる結果 は 1つ であるとい うことである。 (48)の 例 は どれ も 1つ の事態 に対 して複数の結果 を求めている。 また、 (49)は 、動詞が合意す る 結果 とそれ と異なる結果状態 と 2つ の結果 を 1つ の文が表示することを求めている。 これ

らの例 は、 (50)に よつて排除 される。

影山 (1996)は 、 日本語の複合動詞 にも (50)の 制約が働 くことを観察 している。

(51)a.*皿 を投 げ割った。 (「 投 げつけて割 った Jと いう意味 )

b.*目 覚 まし時計 を蹴 り壊 した。 (影 山 (1996):229) (51a)で は、「投 げる」 とい う物理的な移動 と「割 る」 とい う状態変化の 2つ の「結果」 を 合意す る要素が結合 してい る。 (51b)は 、「蹴 り飛 ばされた時計が壁 まで飛 んでいって壁 に 当たって壊れた」 とい う意味 を持 ち、その場合、「蹴 る」が移動の意味 を持ち、「壊す」が 状態変化の意味 を持つため、やは り、 2つ の「結果」 を表す要素が結合 している。

この ように、  1つ の文 には 1つ の結果 を表示す る要素のみが生 じることがで きるとい う のが言語の普遍的な特徴であると考 えられる。 また、言語の経済性の立場か ら考察すると、

ある 1つ の要素がある意味内容 を示せば、同 じ意味内容 を他の要素で さらに明示的に示す こ とは避 け られると考 え られ る。 この議論 か ら (46)の 表で *で 示 された言語 タイプが仮 に 存在す ると仮定すると、結果 を表すために二重の要素、つ まり、 [+CMIの 音形 に現れない

「結果」 を意味す る形態素 と l■ OM]の 明示的な「結果」 を意味す る形態素が 1つ の述語 に

(18)

島根県立大学『総合政策論叢』第 14号 (2008年 2月

)

存在す ることとなる。 この ような場合、結果の表示 に余剰性が生 じ、言語の形式 としては 好 ま しくな く、言語が このような形式 をとることを避ける、極言す ると、言語の形式 とし ては許 されない と考えられる。

本節では、普遍的な [士 OM]、 [± CM]と い う素性 を仮定 し、その組み合 わせか ら (38)の

3つ の言語 タイプが導 き出 されることを提案 した。 この提案 により、 Talmy(1985)の タイ ポ ロジーは、素性 とい う抽象的な概念か ら導 き出 され、理論的検証性 を備 えた理論 に昇率

した と言える。

結 語

本論 は、これまで単なるタイポロジー (Talmy(1985)参 照 )と して議論 されて きた「結果」

を表す表現 における個別言語の現 れ方 の違いは、 (i)形 態的な特徴 (特 に、 日本語の形態 合 成手段 )を 理論構築の中核 に据 えることで、 これ まで捉 えられなか ったverb̲frame言

語 と satellite‐ frame言 語の区別 と同 じ言語群 に分類 される言語であつて も、 日本語 とロマ

ンス諸語の ように現 れ方 に差が生 じる事実 を明確 に捉 え られる新 たな言語 タイプを認定 し、 (ii)そ の言語 タイプは、人間言語の特性か ら導 きだされる普遍的な素性 ([± OM]、 [土

CM〕 )を 仮定することで理論的検証が可能な理論 的枠組みか ら導 き出 されることを提案 し た。つ ま り、「結果 Jを 表す表現 は、 2つ の素性 によってその意味的特徴が普遍的に捉 え られ、 2つ の素性がそれぞれ どの ような値 を持つのかによつて、個別言語が生成す ること に適切 な説明が与 えられるのである。 この ような提案 は、 Chomsky(1981)以 来の「原理 とパ ラメター (=Principles and Parameters)」 を基盤 とする言語理論 に与す るものであ り、人間言語の普遍性 と個別性 を考 える上で重要な提案であると思われる。

本論で とった言語事実の観察 と理論的基盤の追求は、 (A)詳 細 な個別言語の事実観察 に よ り個別言語の特徴 を明 らかに し、 (B)観 察 した言語事実か ら言語 に普遍的なメカニズム を導 きだす ことで、理論的基盤 を与 えるとい う言語の科学的考察によって、人間言語の生 成 メカニズムの解明 (Chomsky(2005)参 照 )に 寄与す ると考 えられる。 また、本論 で取 り上 げた「結果」 を表す表現 は、人間の物事 の捉 え方 といった認知的な側面 に密接 に絡み 合 う重要な言語現象であることか ら、人間の認知のあ り方 と言語表現の関係 を考察する上 で重要であると思われる。

1)本 論は、神田外語大学に提出した博士論文 (山 田 (2006))の 一部 (主 に第2章 と第3章 )を 加 筆・訂正 したものである。また、本論は、平成 18年 度島根県立大学学術教育研究特別助成金 (研

究テーマ「言語の普通性と個別性に迫る :「 結果」性に関わる言語のタイポロジーの再考と理論 的枠組みの提示」 )の 助成を受けて行った研究成果である。

2)ド イッ語でも、英語と同じパターンの語彙化が見られる。

(i)a. Sic     haben    gestern   viel   getanzt.

they   have… A【 二 K yesterday much  danced‐ PR

b. Er   ist     zur     insel    geschwOHl14en,

he  is―AUX to― the  island  swum‐ Pユ (吉 田他 (2001)■ 14)

また、以下の例のように、 ドイツ語には移動様態動詞が多数存在 している。

(ii)bummeln「 ぶ らつ く」、nanieren「 ぶらぶ ら歩 く」、hinken「足を引きずって歩 く J、

(19)

schlendern「 ぶ らぶ ら歩 く」、spazieren「 ぶ らぶ らの んび り歩 く J  (吉 田他 (2001):111) つ ま り、「移動」 の概 念 に「様 態」 の概 念 を包入 させ る こ とで移 動 (様 態 )動 詞 を作 る傾 向 を 持 つの は、ゲ ルマ ン諸語 一般 の特徴 なのであ る。

3)こ の よ うな複合述 語 の形 成 に よるアスペ ク ト転換 は、 日本 語 に限 つた現象 で はな く、韓 国語 に おいて も観察 され る。

(i)a. *」 Ohn― i      kongwon― ey talll― ess‐ ta.

John― NoHェ    park― Loc    run‐ Past― Decl

̀」 ohn ran to the park,'

b.   」 ohntt   kongwon― ey sip pwun man― ey /*sip pwun tongan talll― e ka― ss― ta, Joh― Nom park― to       ten minute in  /ten minute for    run‐ L  go― PASttDECL

̀」 ohn ran to the park in ten 41inutes/*for ten ininutes.'

(Oh&Zubizzareta(2004):111) 4)Washio(1997)と 同様 な視 点 か ら、 同様 の結 論 に至 っ た分 析 と影 山 (1996)が あ るが 、本 論 で

は、以下 の節 で Washio(1997)が 導 い た結果構文 の タイポ ロジー に深 く言 及す るため、本 節 では、

Washio(1997)の 分析 を考 察す る。

5)Washio(1997)は 、以 下 の ように、weak resultativeの ように結 果述 語 が動詞 の意味 を明示 的 に 表示 す る ものであ るが 、 その状 態性 は段 階的であ り、 また、本 来、形 容詞句 で表 され る結果述語 が副詞句 と して も表示 で きる ような結 果構文が存在 す る とす る。

(1)a. He tied his shoelaces tight/tightly.

b.He tied his shoelace loosen。 。 sely.      (Washio(1997):17)

この よ うな結 果構 文 をspurious resultativeと 呼 んで 3つ 目の タイ プ と して認 め てい る。本論 での議 論 と直接 関係 が ないので その存在 を認 め る ものの深 く立 ち入 らない。

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