1 / f ゆ らぎを用 いた 自動作曲・編曲システムの開発
堀内征治 堀内泰輔
A D e v e l o p m e n t o f a S y s t e m
f o r A u t o m a t i c M t u i c a l C o m p o s i t i o n a n d A r r a n g e m e n t U
t i l i z i n g 1 / f F l u c t u a t i o n T h e o r y
Seiji HORIUCHI Taisuke HORIUCHI
I nt hena t u r e ,t he r ea r et hr e epa t t e r nso ff l uc t u a t i o nc l a s s i f i e dbyf r e q u e n c ys p e c
・t r um. The yar ewhi t ef l u c t u a t i o n , I / i( p i n k )f lu c t ua t i o na n dbr o w n f l u c t u a t i o n. Be t we e n t h et h r e e ,i tha sbe e nr e p o r t e dt ha tp l e a s a n ts t a t eo fmi n di ss u p pl i e dbya n y1 / f f l u c t u a t i o n .
I no r d e rt oc r e a t eana t u r a lmu s i ca u t o ma t i c a l l y, wea p p l i e dt h i s1 / ff l u c t ua t i o nt o mus i c a lc o mp o s i t i o na n da 汀a n ge me n t , Wh i c hi so n eo ft heb r a i nwo r ks .Sa mee xp e r i ・ me n t sha v ebe e nr e p o r t e d, b u ti nt hi ss y s t e mweu s e dne wa l go r i 仙mf o rge n e r a t i n g1 / ff l u c t ua t i o nwede ve l o p e d.
1
.
は じ め に1 9 7 0
年代 に研究 の緒 についた人工知能( A
I)紘, コンピュータ′、‑ ドウェアの発展 と相 まって,最近 きわめて大 きな関心を集める対象 となってきた.急速 に脚光を浴 びてきたエキ スパー トシステムは,AI
の実用化 を象徴す るものであるし, 自動翻訳や人工知能言語 につ いても議論が盛 んである.一方,生産 ・流通 ・教育等の広範 な社会 においては, より高品質 の, とりわけ知的 なシス テムが要求 されてきている. これ らのシステムの一翼を担 うソフ トウェアにも当然,付加価 値 としてのインテ リジ ェン トな要素が必要 とされるが,現状では従来か らの手続 き型 のアプ
ローチか ら仲々脱却できずにいるのが一般的であろ う.
これ らの背景か ら,筆者 らは
,BASI C
やC
など, ソフ トウェア生産 の中で はかな り使用 頻度が高い とされている言語を用いて ソフ トウェアのインテ リジェン ト化を試みてきた.本 論ではその中か ら,AI
の主柱である推論機能 と知的データベースの概念を,人工知能言語 以外のもので表現することを目標 として開発 した自動作曲お よび自動編曲システムについて 報告する.'1 9 8 9
年1 2
月 長野県テクノ.、イラソド開発機構研究助成事業研究講演会で発表 日 機械工学科 助教授●●●.機械工学科 講師
8 堀内征治 ・堀内泰輔
これは自然界の現象の中で最近注目を集めている
1 / f
ゆ らぎをアルゴ リズ ミックにとらえ, 知識 データベースを利用 して,作曲 ・編曲とい う, より人間的な技術 に応用 しようとす るも のである.2.
1/fゆらぎとコンピュータ音楽自然界に存在す る種々のゆ らぎ現象をスペク トルで分類す ると, ほぼ,白色ゆらぎ (ホ ワ イ トノイズ)
,1 / f
ゆ らぎ (ピンクノイズ),1 / f
2ゆ らぎ (ブラウンノイズ)の3
つのパ ター ンに分けられ る.1 / f
ゆ らぎは,工学的には,抵抗体に直流電流を流 した ときの雑音電圧変動 が有名である が,気温変動や心拍数あるいは木 目模様 といった ものにもこの′(メ‑ソが及んでいる.心地 よい音楽 もまた,周波数分析 を試みると1 / f
型 のスペク トルを もつ ことが知 られている1). す なわち,1 / f
ゆらぎを特性にもつ現象は,人間 にとって きわめて自然で,な じみやすい も のであるといえる.一方, コンピュータ音楽 は,自動演奏を皮切 りに, 自動採譜 ・自動作譜などの変遷 を経て, 最近では自動編曲 ・自動作曲 といった より人間的なジャンルに及 んでいる.本論の主柱であ
る自動作曲についても,一様乱数を用いでの初歩的な (初期的な) ものか ら,Aより自然で音 楽的なもの‑ と発展 している.
R
.F.Vo s
sは先述の1 / f
ゆ らぎに着 目し,1 / f
スペ ク トルをもつ乱数を発生 させ, より自然なメロデ ィー ・ライソを作 り出す ことに成功 している2). 本論では先ず
,Vo s s
のアプローチ とは別 のアル ゴ リズムで,1 / f
ゆ らぎを もつ旋律 を自 動生成す る作曲システムについて言及 し,あわせて,生成 した旋律動機か ら,ベース リズム や和音を推論す るとい う基礎的な編曲システムの試行 について述べ る.また,総合的な コンピュータ音楽 システムへのアプローチとしての自動演奏 についても付加的に報告す る.
3. 旋律線の自動生成 とその解析
本 システムでは,一般 の言語処理系 のほとん どが有 している一様乱数 (算術乱数 xh)を 用い, これが
1 / f
のスペク トルを持つ ようにフィルタをかける方法を とってい る (これをデ ィジタルフィルタと称す る).す なわち,n個 の1 / f
乱数系列bn )を得 るために ,2n
個 の 一様乱数を用意 し,微分要素を含む係数 aIを算出した後,yn=句
X h +a l
Xh.i+Lh私 .2+‑ ‑+aiも .Iに従 って,系列 を決定 した.
本研究においては,以上のアルゴ リズムを構造化
BASI C
(BASIC/98)で実現 した.得 ら れたデータの うち,1 / f
乱数系列の時間変化 に対す る振舞いを,一様乱数系列 のものと比較した ものが図
1
である.明 らかに一様乱数の単調な変化に比べて,適度な変化が得 られてい る.また,図
2
に, このアルゴ リズムによって得 られた1 / f
乱数系列のパ ワースベク.トルを示 す.次 に,旋律線の自動生成 (自動作曲)をさせ るため,作 曲に必要 な音域 を与 え,
1 / f
乱数 系列 の最大お よび最小値bm & x , y m . ∩
) と音域の上限,下限振動数 Vmax.fm,n)との関係か ら,音階を振動数 として表現す る こととした.いいかえれば,
1 / f
乱数系列 か ら次 式 によ り, 1 ・̲振動数系列 zJを求めることに o
なる.
zJ‑ayJ+fm
l
n‑
aymlnα
= ふ x‑ ふ nymax‑ ymlrl
さらに調を与 え,その調 に おける音階の振動数に zJの債 を寄せ ることによ り,旋律線 の音高が決定す る.
図 3
は,青苗決定 について のデ ィジタルフィルタの効果 を分析 したものであ り,上 の 手法で得 られた音高のデータ の散 らば りの状態を,乱数系 列 の数 犯をパ ラメータとして みたものである.散 らば りの 状態は音高 (1単位 は半音 ‑1 / 1 2
オクターブ)の標準偏差 で示 した.破線が フィルタを かけない場合,実線が フィル タをかけた場合である. これ か らも明 らかなよ うに,後者 については,一刀の数の増加 に よって,旋律線が前のデータ の影響 をより強 く受け,標準 偏差が小 さくなっている.す なわも,多 くの一様乱数によ って作 り出された フィルタを かけると, メpデ ィーライソ がよりなめ らかな様相 を呈す ることが推定 され る.図
4
は,上記の手法 によっ て得 られた旋律線 (動機‑モ チーフ)のひとつである.本システムでは,発生す る 音符の単位長 さを
8
分音符 と2 1 0
12
一一図
1
一様乱数系列 (上)と1
/f
乱数系列 (下)0 0 l
l1(
エ4YYILl.V
早
10Ll
1 0 0 1 01 1 0 2
周 波 数 (Hz)
図 2 1/f乱数系列のパワースペクトル
8765.4‑321
(I))側壁卦野Q)悼紳
l l I I
1 0I I O 2 1 0 3
乱数系列の数(n)
図
3
ディジタルフィルタの特性1 0 堀内征治 ・堀内泰輔
・ 図4 日動作曲の結果例 (千チーフ)
し,同一小節内で同 じ音高の音符が生 じると,その連続性 に従 って,音符 の長 さの処理 を行 う.た とえば,‑音が 3個連 なった場合 はその音符 を付点 4分音符 と決定する.
この日動作曲に関す る処理中,ユーザ側か ら与 えるべ き情報 は,
① 調 (長 ・短調の区別 も含む)
(参 拍子 (表示 されるメニューか ら選択)
③ 小節数
であ り,他はシステム内で自動的にセ ットされ る.I
4.
自動編曲へのアプローチ本 システムではさらに,前節で得 られた基本旋律線 (モチーフ)をもとに, 自動編曲 も試 みた.編曲の主要素 としては, メロデ ィーに対する
(D コー ド
② ベース リズムl
③ ,サブメロデ ィー
の付加が考えられるが,今回開発 した自動編曲機能では(∋および② を可能 にした.いずれ も 知識データベースをもとに決定 されるもので, コー ドについては次の手順 で決定す るこ■とに
した.
(D モチーフの小節単位の各音階か ら構成可能 な コー ドの候補を複数個検索す る.
② さらに音楽理論 に従 った コー ド進行データベースを参照 して,その候補の如 ゝら最 も適当なコー ドを選択す る.
③ ただ し,候補がえられない場合 は,データベース中の和音を補充す ることにす る.
上記ゐコー ド進行 については,具体的には図
5
に示す1 6
種類 (長調9
種類,短調7
種類) のパ ターンをデータベースに用意 した.コンピュータ処理 においては, これ らのコー ドを表現す るために,通常のコー ドネームは 用いず,構成音を
1 6
進数で表現す ることにした. これにより, どのような調が設定 されても コー ドネームを変えることな く, トニ ック (主和音)・ドミナン ト (属和音)・サブ ドミナン ト (下属和音)を考慮す るだけで処理を進めることが可能 になる.すなわち, トニ ックコ‑ドのルー ト音 (た とえば,‑長調 ならば
C
の音 (日本音名では‑))を1 6
進数 の0 1
と置 き, 半音の上昇に対 して1 6
進数の1
だけ増加 させ ることにした.なお,今回は同一小節内では和 音 の変化を考 えないこととした.一方ベース 1)ズムの決定で も,モチーフの各小節の リズム′(ターンとデータベース中のベ ース リズム形を比較 して,最 も一致 していると判断 される リズムパ ターンを知識ベースか ら 選択す る方法をとった. この自動編曲を司 る部分 も
BASI C/ 9 8
によって記述 した.図
6
に自動編曲の結果例を示す.(D
I I Ⅳ V7
②
Ⅰ Ⅳ V7 ‑ I
@ I Vh 7 ‑ Ⅳ V7
⑥
Ⅰ‑ Ⅵ 17 l T Ⅱ 17 ‑ V7
@ I I7 ‑ r V V7 ( む T Ⅵ 7 ‑ Ⅱ 17 ‑ V7
⑦ Ⅰ Ⅱ7 ‑ Ⅳ V7
@
I Ⅱ7 ‑ I lt7 ‑ V7
⑨
l I7 ‑ Ⅳ Ⅳ1
( 》 Ⅰ‑ bⅥ‑ Ⅳ t VT ( a I‑ bⅥ‑ Ⅱ 1 7 VT ( 卦 Ⅰ‑ I7 ‑ Ⅳ■ VT
⑥ Ⅰ ‑ Ⅵ 7 ‑ Ⅱ17( b5) ‑V7
⑤ 1 I ‑ Ⅱ7 ‑ Ⅳ 1 I V7
⑥ 11‑ Ⅱ7 ‑
Ⅱ17( b5) ‑V7
⑦ 7I‑ bⅦ‑ bⅥ V7
長調で使用される進行ノミタ‑ソ 短調で使用される進行バターン
図 5
コー ド進行バターンC6 F6 c c6 F6 C F6
G7
図
6
自動編曲の実行結果例5.
自動演奏システム上述 の手順 で自動的 に作曲お よび編曲された曲を,直 ちに演奏す るために,以下 の自動演 奏ルーチソを付加 した.演奏系 としては,
① コンピュータに内蔵 されてい る
FM
音源 の利用② シンセサイザによる演奏
の
2
系列 とし, メニューによりユ‑ザが選択できる形態を とった.このた め に は先 ず,前 節 で決 定 した音 高 お よび音 長 を言語 処 理 系 で指 定 す る
MML ( Mus i cMa c r oLa n gua ge )
データに変換す る必要がある.上記① のFM
音源演奏 では単 にサウン ド命令で
MML
データを処理す れば よいが,② の シンセサ イザ演奏 で はさ らにMI DI ( Mus i c alI ns t r ume n tDi gi t a lI nt e r f a c e )
データを生成 しなければならない.本 システムでは,このデータ変換 とシソセサイザへの出力を
C
言語で実現 した. この時点でユーザか ら入力す る情報 は,曲の速度,音量お よび音色である.6. む す
び現在 さまざまな分野で注 目を集めている
1 / f
ゆ らぎを作曲 ・編 曲に用い, よ り自然で心地1 2
堀内征治 ・堀内泰輔よい音楽が コンピュータによ り自動的 に得 られた点を報告 した.
本 システムにより生成 された旋律お よび編曲の結果 は,必ず しも洗練 された ものではない.
しか し, このシステムで作曲された一部 は,すでに市販 されている.iッケ‑ジ ソフ トウェア の
BGM
として実用 されてお り,その ソフ トウェア使用者の音楽 に関す る反響 もかな り良い もの と評価 されていることか ら,当初 の目的は十分果たされているように感 じる.今後, システムに人工知能手法であ るエキスパ ー ト化を図 り, さらにマソマシンインター フェースを考慮 して,人間の感性が十分に反映 されるシステムへ と発展 させていきたい.
おあ りに,本 システムの開発 に当た っては,東京工業大学武者利光教授の懇切丁寧 なご指 導があって成立 した ものであ り, ここに厚 く感謝申し上 げる. また,本研究 の一部 は本校機 械工学科の卒業研究 として行 った. ともに尽力を惜 しまなかった上原猛,山本文事 (共 に
2 3
期生),加藤茂
( 24
期生)の諸君 に深 く敬意 を表す る次第である.参 考 文 献
1) 武者利光 :ゆらぎの世界,BLUEBACKS (