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自動化農機のための作業管理システムの開発

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Academic year: 2021

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1.は じ め に 我が国の農業においては,高齢化等による農家人口の 減少や農業生産法人の増加などを背景として,農業生産 組織の経営規模拡大と担い手への農地の集約が進んでい る。また,生産物のトレーサビリティが重要視されるよ うになり,農業生産の現場においては規模拡大と緻密な 情報管理という相反する課題への対応が急務となってい る。このような情勢の中,農研機構は 2014 年度に開始 した「戦略的イノベーション創造プログラム(次世代農 林水産業創造技術)」(以下,SIP))において,IT 等の先 端技術による農業のスマート化により高品質・省力化を 同時に達成する生産システムの実現を目指し,農業機械 の自動化技術の高度化およびほ場情報に基づく作業機械 の高度化・知能化技術の開発に取り組んだ。ここでは, これらの取組みのうち,株式会社フジミック新潟の協力 のもとに進めた自動化農機のための作業指示データ生成 および解析機能を備えたシステム(以下,作業管理シス テム)の開発について,その概要を紹介する。 2.開発の概要 SIP には,本特集や本誌 81 巻 5 号で特集されたロボッ トトラクタや可変施肥機等の Ò自動化農機Ó の開発を行 う研究グループに加え,多数のほ場を効率的に管理する 情報システムである Ò多圃場営農管理システムÓ の開発 を行う研究グループが参画し,グループ間の連携のもと で研究開発が進められた。筆者らは自動化農機の研究グ ループに属し,自動化農機と多圃場営農管理システムと の間で情報交換を仲介する Ò作業管理システムÓ の開発 を担当した。作業管理システムの開発では,ロボットト ラクタと可変施肥機による可変施肥作業を主な対象作業 として,多圃場営農管理システムが出力する圃場形状 データや施肥量設定等の情報を可視化するとともに可変 施肥機やロボットトラクタによる自動化作業に適した作 業指示データへ変換すること,自動化農機による作業記 録を作業の履歴として整理するとともに多圃場営農管理 システムへ報告することを具体的な開発目標とした。 3.作業管理システムの概要 欧米を中心とする海外では,大型トラクタと搭載され る作業機,大型コンバイン等を中心に制御・通信のため の CAN バスを利用したネットワークが既に実用化さ れ,メーカの異なる機器類をネットワークに接続した際 の互換性を保証する統一規格である ISO 11783(以下, ISOBUS)に準拠した農業機械が普及段階に入っている。 さらに,ISOBUS では,自動化作業における作業指示や 作業履歴を一元的に記述できるデータ形式として, ÒISO11783_TaskDataÓ をルート要素とする XML ファイ ルと XML ファイルから参照されるバイナリ形式の補助 ファイル等から構成されるデータ形式(以下,TaskData) が定義されており,TaskData に対応した可変施肥機や スプレーヤによる作業の自動化や作業履歴の取得に利用 されている。本開発の開始時において我が国ではまだ ISOBUS は一般的ではなかったが,将来的には普及が進 みデータの互換性確保が重要となると想定されたため, 開発する作業管理システムには TaskData に準拠した作 業指示データを処理する機能を実装することとした。実 際の作業管理システムの開発には,農研機構が以前から 開発を進めてきた営農管理支援システムである FARMS をプラットフォームとして利用し,新たに開発する解析, 情報交換の機能を追加実装することで,多圃場営農管理 システムと自動化農機を仲介し情報交換が可能な作業管 理システムとした(図 1)。 1)作業指示データの生成および作業結果の解析機能 作業管理システムでは,開発のプラットフォームとし て利用した FARMS に元々備わる GIS 機能やほ場デー タや資材を管理するデータ管理機能を活用するととも に,作業指示データの生成や解析に必要な機能を追加す ることで,施肥マップの可視化や編集を行い,編集結果 を TaskData と し て 保 存 す る こ と が 可 能 と な っ た。 ISOBUS における施肥マップは,ほ場を矩形に分割して 生成するメッシュの集合か,ほ場に包含されるポリゴン 農 業 食 料 工 学 会 誌 第 81 巻 第 6 号(2019) 356( 30 )

林 和信

(はやし かずのぶ) 1970 年 5 月生 1995 年 生研機構入所,同生産システ ム研究部を経て, 現在,農研機構 農業技術革新工学研究 センター 高度作業支援システム研究 領域 高度土地利用型作業ユニット ユ ニット長 農業食料工学会正会員 E-mail:[email protected]

特 集

自動化農機のための作業管理システムの開発

Development of Work Management System for Automated Agricultural Machines Kazunobu HAYASHI

キーワード:情報,GIS,ロボットトラクタ,可変施肥,ISO 11783

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の集合として定義され,メッシュやポリゴン毎に施肥量 を設定することができる。作業管理システムではメッ シュによる施肥マップのみに対応しており,GIS 画面上 でほ場を選択し,生成するメッシュサイズ,あるいはほ 場を包含する矩形の東西および南北方向での分割数を入 力することでほ場を任意のサイズのメッシュに分割する ことができる。施肥マップへの施肥量の設定は,メッ シュ毎に入力することも,外部の表計算ソフト等で計算 した施肥量をコピー&ペーストで取り込むことも可能で あり,施肥量の変更は即座に GIS 画面の表示に反映され るので確認が容易である(図 2)。なお,ISOBUS の仕様 によりメッシュは東西南北に整列し回転させることはで きないため,実際のほ場が東西南北に対して整列せず斜 めに造成されている場合などには,メッシュを十分に細 かく生成する等で,可変施肥機による自動施肥量調整が 狙いどおりに動作するように工夫する必要がある。 作業管理システムでは,ロボットトラクタ等の自動走 行に用いる作業経路情報の生成も可能である。作業管理 システムで,作業を行うロボットトラクタの機体寸法や 作業機の作業幅,作業を行うほ場の形状,枕地等の外周 作業の行程数等を設定すると,設定条件に基づいた一次 的な作業経路が生成され,GIS 画面上に表示される。生 成された作業経路は,GIS 画面上でマウスによる操作で 編集することで,作業が可能な作業経路に仕上げること ができる(図 3)。さらに,本開発においては,可変施肥 等の作業マップ情報に加えて TaskData の経路誘導に関 する定義を一部拡張して作業経路情報を TaskData 内に 記述することも試行し,生成した TaskData を利用した ロボットトラクタの自動走行が可能なことを確認した。 作業結果の解析については,自動化農機による作業時 に生成される作業ログ情報を TaskData から抽出するこ とで行う。抽出したデータを利用し移動軌跡に基づく進 行方向の推定,セクション(ISOBUS において,作業機 の作用範囲を複数に分割して資材投入の On/Off や投入 量を制御する機能)ごとの移動軌跡や施肥量の解析など を行うことで,散布の重複部分も再現した施肥結果マッ プを生成,表示することが可能である。また,作業結果 は静止した状態だけではなく,作業機の走行や散布状態 を再現したアニメーションとして表示することも可能で ある(図 4)。アニメーション表示は,施肥結果マップと 重ね合せて表示することで散布の重複が発生した際の作 業方法を確認するといった使い方ができる。 2)多圃場営農管理システムとの情報交換機能 多圃場営農管理システムとの情報交換機能の開発は, 多圃場営農管理システムの開発を担当する日立ソリュー ションズとの連携のもとで実施し,主に可変施肥作業の 自動化に必要な施肥マップと作業結果に関する情報交換 の実現を目標として,① 多圃場営農管理システムにおけ る処方箋にしたがった施肥マップの生成,② 作業管理シ ステムにおける可視化と TaskData への変換,③ 可変施 肥機等の TaskData 対応作業機による作業の実施と作業 ログの取得,④ 作業管理システムにおける作業ログの抽 出と解析,⑤ 多圃場営農管理システムへの報告,⑥ 多圃 場営農管理システムにおける作業結果の蓄積および可視 化,という流れの作業シナリオを設定した。この作業シ ナリオの実現に必要となる機能の開発を作業管理システ ムおよび多圃場営農管理システムのそれぞれで実施した 林:自動化農機のための作業管理システムの開発 357( 31 ) 図 1 作業管理システムと関連システムの連携の概要 図 3 生成した経路情報の表示 図 2 施肥マップの編集

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ことで,USB メモリ等を利用したファイル単位での情報 交換に加え,農業データ連携基盤(以下,WAGRI)を介 した情報交換が可能となった。WAGRI を介した情報交 換については,WAGRI のプライベート領域に専用の API(Application Programming Interface)や JSON によ るデータ構造を定義することで実現されている(図 5)。 作業管理システムを多圃場営農管理システムと連携さ せて可変施肥作業で利用する場合,施肥マップはほ場 データと併せて多圃場営農管理システムから提供される が,作業管理システム上で生成した場合と同様に,必要 に応じて編集することや TaskData としての保存が可能 である。多圃場営農管理システムへの報告は,前述の解 析機能により作業後の TaskData から作業履歴を抽出 し,集計値と時系列値の両方を多圃場営農管理システム へ送信することで行い,多圃場営農管理システム上では 受信したデータを即座に表示し,作業結果を確認するこ とが可能である。 4.実証試験 本開発では,新潟県十日町市と千葉県横芝光町におい て実証試験を実施した。十日町市においては,作業管理 システムで生成した作業指示データに基づき,可変施肥 機を搭載したロボットトラクタによる水稲の基肥の可変 施肥作業を行うとともに,水稲作における可変施肥の効 果の確認も併せて行った。試験に用いた可変施肥マップ は,試験の前年に取得したレーザ式生育センサ(Topcon 製 CropSpec)の測定値から作成した生育マップを基準 として,試験地の栽培上の課題であった重度の倒伏の回 避を狙い,生育が旺盛な場所の施肥量を減少させ,反対 に生育が不足している場所の施肥量を増加させる方針で 農 業 食 料 工 学 会 誌 第 81 巻 第 6 号(2019) 358( 32 ) 図 5 WAGRI を介した多ほ場管理システムとの連携に おける作業の流れ 図 4 作業結果のアニメーション表示 図 6 ロボットトラクタと可変施肥機による自動作業 (上)とマップ化した施肥量(下) 図 7 メッシュ施肥量と生育量変化の関係

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作業管理システム上で作成した。作成した施肥マップお よび作業経路情報を作業指示データとして利用して,無 人のロボットトラクタによる自動走行を行いつつ可変施 肥作業を実施することが可能であった(図 6)。可変施肥 効果の確認は,生育期間中の生育センサによる測定と, 収穫時の倒伏程度の観察により行い,メッシュ単位の施 肥量と生育センサの測定値の前年からの変化に正の相関 が認められたことや,重度の倒伏が皆無となったこと等 から可変施肥の一定の効果を確認することができた(図 7)。 横芝光町においては,リモートセンシングによって取 得した生育マップを多圃場営農管理システムで施肥マッ プに変換し,先に述べた情報交換のシナリオに従って作 業管理システムで詳細作業データを生成した。生成した 詳細作業データを利用して,市販の施肥機に TaskData 対応のコントローラを付加して試作したスマート追肥装 置による可変追肥作業を実施することができた(図 8)。 また,可変施肥作業後には得られた TaskData のログか ら作業結果を抽出,可視化するとともに,多圃場営農管 理システムに作業履歴として報告することが可能であっ た。 5.お わ り に 本開発においては,既に多くの製品が普及段階にある 多圃場営農管理システムと,今後の普及が期待される自 動化農機との間で情報交換を仲介する作業管理システム の開発を行い,実証試験地における実作業に供試してそ の機能を確認した。ISOBUS や TaskData という国際的 な標準規格やデータ形式を選択するとともに,農業デー タ連携基盤を介して多圃場営農管理システムとの連携を 行うことで,一つの事例にすぎないものの,システムの 垣根を越えた情報交換の可能性を示すことができたと考 えている。本開発が規模拡大やトレーサビリティの向上 と言った農業の課題解決を図る上での一助となれば幸い である。 本開発は,SIP(戦略的イノベーション創造プログラ ム)「次世代農林水産業創造技術」による助成を受けて実 施された。ここに記して謝意を表す。 参考文献 内閣府,2014. 戦略的イノベーション創造プログラム「次世代農 林水産業創造技術」研究開発計画。https://www8.cao.go.jp/ cstp/gaiyo/sip/iinkai/nougyou_1/1_nougyou_shiryou_3. pdf. Accessed Aug. 30, 2019. 元林浩太,2011. 制御・通信ネットワーク規格 ISO 11783 とその 国際情勢。農業機械学会誌,73(4),220-223. 林:自動化農機のための作業管理システムの開発 359( 33 ) 図 8 施肥マップとスマート追肥装置による可変施肥作業

参照

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