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学位規則第 4 条第 2 項該当(論文博士)

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Academic year: 2021

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(1)

氏 名 なかお あきら

中尾 明

学 位 の 種 類

博士(医学)

報 告 番 号

乙第 1784 号

学位授与の日付

令和 1 年 10 月 3 日

学位授与の要件

学位規則第 4 条第 2 項該当(論文博士)

学 位 論 文 題 目

Nab-Paclitaxel maintenance therapy following carboplatin + nab-paclitaxel combination therapy in chemotherapy naïve patients with advanced non-small cell lung cancer:

multicenter, open-label, single-arm phaseⅡ trial

(化学療法未施行ⅢB/Ⅳ期非小細胞肺癌に対する Carboplatin + nab-Paclitaxel 併用療法後の nab-Paclitaxel 維持療法の PhaseⅡ試験)

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

岩崎 昭憲

(副 査) 福岡大学 教授

高松 泰

福岡大学 准教授

濵﨑 慎

内 容 の 要 旨

【 目的】

CBDCA(Carboplatin) + nab-PTX(Paclitaxel)療法は、StageⅢB/Ⅳの未治療非小細胞肺 癌を対象とした国際共同第Ⅲ相試験において、コントロール群である CBDCA + PTX 療法 に対して、奏効率(RR)の点で優越性を、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の点で非 劣性を証明したレジメンである。また、この試験で有害事象が少ない傾向にあることが 示された。本試験を実施した時点において、維持療法としての nab-PTX 療法のエビデン スはなく、本試験は CBDCA + nab-PTX 療法後の維持療法として nab-PTX 療法の有効性と 安全性を検討することである。

【対象と方法】

対象は、20 歳以上の StageⅢB/Ⅳの未治療非小細胞肺癌患者で、パフォーマンス・ス

テータスが 0-1、標的病変があり主要な臓器機能が保たれ、心電図異常や末梢神経障害が

なく、12 週間以上の予後が予測される症例とした。方法としては、CBDCA(AUC 6)を Day1

に、nab-PTX(100mg/m

2

)を Day1,8,15 に点滴投与するというスケジュールの治療を 4 週間

毎に 4 コース繰り返し、効果ありと判断された症例では nab-PTX 単剤での同スケジュー

ル治療を増悪が見られるまで継続した。主要評価項目は維持療法開始後の PFS で、副次

(2)

評価項目は RR、OS、安全性(末梢神経障害を始めとする)、維持療法への移行率とした。

これまでの維持療法を検証した臨床試験の結果より、維持療法開始後の PFS 期待値を 6.0 ヶ月、閾値 PFS3.0 ヶ月、片側α=0.05、1-β=0.75 とし、正規近似法に基づいて必 要症例数を算出すると 35 例となる。脱落症例を考慮し、40 例を登録することとした。2 年間の登録期間と 2 年間の追跡期間を設定し、試験を実施した。

【結果】

40 症例が登録され、うち 1 例の脱落があり 39 例での解析となった。19 例(48.7%)の症 例が導入 4 コースを完遂し、15 例(38.5%)の症例が維持療法へ移行した。維持療法開始後 の PFS は 6.5 (90%信頼区間: 1.4-11.4)ヶ月であった。OS 中央値は 12.6(95%信頼区間:

7.4-not reached)ヶ月であった。5%以上の症例にみられた Grade3 以上の有害事象として は、好中球減少(55.0%)、貧血(15.0%)、発熱性好中球減少症(5.0%)であったが、いずれ も維持療法によって増加したものはなかった。

本試験において、PFS は 6.5 ヶ月と維持療法の先行研究(PARAMOUNT 試験;維持療法開 始後で 4.1 ヶ月)よりも長く、また CBDCA+nab-PTX 療法の既存の臨床試験(CA031 試 験;導入療法のみで 4.1 ヶ月)と比較しても長く、全奏効率も 41.0%と CA031 試験と比 べ良好な結果であった。

維持療法への移行率が想定した 75%よりも低く実際には 38.5%に留まったため、統計 学的に有意な効果は証明できなかったが、維持療法へ移行できた症例に関しては良好な 成績が得られた。この維持療法への移行率の低さに関しては、PARAMOUNT 試験を始めとす る維持療法の positive study の年齢中央値がいずれも 60 歳ほどであったのに対し、本 試験では 68 歳と比較的高齢であったことが要因の一つである可能性はある。しかし今 後、nab-PTX 維持療法へ移行できる患者群を検証することができれば有望な治療レジメン の一つとなる可能性がある。

【結論】

CBDCA + nab-PTX 療法後の nab-PTX 単剤維持療法は、進行期非小細胞肺癌の症例におけ る治療選択肢のオプションとなりうるレジメンであると考えられる。

審査の結果の要旨

本論文は、進行肺癌の薬物治療に関するものである。

肺癌は病期により外科治療や薬物治療が選択される。最近では切除不能 III, IV 期の進

行例に対しては、ドライバー遺伝子の変異/転座の検査により明らかになった腫瘍の特性

(3)

に応じて、分子標的薬物、免疫チェックポイント阻害薬などの治療が実施されることによ り良好な効果が得られるケースもある。しかしながら、これらの治療効果が得られるのは 一部であり依然としてプラチナ製剤を中心とした化学療法は重要な役割を担っており、プ ラチナ製剤と第三世代細胞障害性抗癌剤の併用が OS・PFS 延長を示すことが明らかにされ ている。

カルボプラチン/パクリタキセルは推奨レジメンの一つである。申請者は、このパクリ タキセル改良型である nab-PTX を用いて、同時併用療法後の維持療法としての効果を明ら かにした。

1 斬新さ

1)これまでに使用されていた Paclitaxel(以下 PTX)は、アルコールと油で溶かして用いら れており、ぜん息様の呼吸困難や発疹などの重篤なアレルギー反応副作用も多く認められ ていた。今回著者らが用いた nab-PTX は、溶媒がアルブミンに改良されたもので副作用が 軽減され使用が容易になったものを使用している。

2)維持療法(maintenance)には、プラチナ製剤併用療法による導入療法後,導入療法で使 用した薬剤とは別の薬剤に切り替えて投与する方法(Switch maintenance)と、プラチナ 製剤併用療法による導入療法後,プラチナ製剤と併用した薬剤を継続して投与する方法

(Continuation maintenance)があり本研究は後者である。

同時併用療法の CBDCA(Carboplatin) + nab-PTX(Paclitaxel)療法の国際共同第Ⅲ相試 験では、従来の CBDCA+ PTX 療法に比べ、奏効率(RR)の点で優越性が証明されている。本 研究はさらに持続維持療法として nab-PTX 療法の有効性と安全性を検討したこれまでに ない研究デザインの結果を示した斬新さがある。

2 重要性

1 次治療が奏効しても、ほとんどの患者が病勢進行(PD)をきたすため、1 次治療終了 後も治療を継続して PD までの期間を延ばす維持療法の必要性が認識されている。維持療 法は、基本的に全身状態の良い患者が日常生活を続けながら長期にわたって行う治療であ る。

これまで進行非小細胞肺癌の維持療法として、2012 年に発表された第 III 相試験

(PARAMOUNT 試験)の結果で、CDDP+ぺメトレキセ-ト(PEM)施行後に PEM による維持 療法の臨床試験が行われ、有意な PFS 延長と OS 延長が認められ、QOL も維持されていた報 告後は、このレジメンが多く用いられてきた。

今回の研究では、この先行 PARAMOUNT 試験と比較し、PFS の延長(4.1 ヵ月 vs 6.5 ヶ

月)を認めたことより、nab-PTX(Paclitaxel)を用いた持続維持療法の有用性を示してい

るので、今後の新たな治療選択肢となりうる。また国際共同第Ⅲ相試験 CA031 試験(J Clin

Oncol 2012;30:2055-62)に報告された CBDCA(Carboplatin) +nab-PTX(Paclitaxel)の導入

療法試験と比較しても PFS は良好で、奏効率も高かった(33% vs 41%)ことは、維持療法

(4)

の有用性を示唆したもので貴重な知見である。

今後、nab-PTX 維持療法へ移行できる患者群をさらに解析し明らかにすることができれ ば、進行肺癌に対するプラチナ製剤と第三世代細胞障害性抗癌剤の有望な治療レジメンの 一つとなる可能性がある点で重要である。

3 研究方法の正確性

これまでの維持療法を検証した臨床試験の結果を参考にして、維持療法開始後の PFS 期 待値を 6.0 ヶ月、閾値 PFS3.0 ヶ月、片側α=0.05、1-β=0.75 とし、正規近似法に基づ いて必要症例数を算出し 35 例を見込み、脱落症例を考慮し、40 例を登録した。2 年間の 登録期間と 2 年間の追跡期間を設定し、試験が実施されている。このように統計学的推論 のもとに症例集積が行われており研究は正確に遂行されている。

2012 年から 2017 年まで国内 3 施設から 20 歳以上の PS 0~1 で組織学的に確定された進 行非小細胞肺癌 IIIB, IV が対象。評価法も RECIST に基づき CT を駆使し行われ、厳格な 的確症例が選択されていた。

結果は、 40 症例が登録され、うち 1 例の脱落があり 39 例での解析となった。19 例(48.7%) の症例が導入 4 コースを完遂し、15 例(38.5%)の症例が維持療法へ移行できている。

PFS 期待値の 6.0 ヶ月を超えて 6.5 ヶ月の結果が得られているので、見込みどおりであ る。

4 表現の明確さ

研究デザインも結果も明瞭なもので、図表も整理されており発表においても多数のスラ イドで丁寧に解説されていた。

5 主な質疑応答

Q1 維持療法への移行率が 38.5%と低かった原因はなにか。4 コース完遂できなかった原 因は?

A1 病勢進行(PD)による症例が多かった。導入療法のレジメン検証も課題かもしれない

Q2 nab-PTX(Paclitaxel)といえども末梢神経障害などの副作用があるが、そのような副 作用のための脱落は無かったのか?

A2 末梢神経障害のための脱落は無かったが、好中球減少症によるものはあった。

Q3 治療効果から導入療法での SD は 30 人以上いるので 40 人中で維持に移行できたのは

は、この 30 人程度はできた可能性はある。実際には完遂できたのは 19 人になってい

(5)

るが、11 人はどうなったのか・

A3 6 コースの経過中効果が得られたものもあり、導入療法終了時までに病勢進行(PD)

による脱落である

Q4 胸水貯留症例に奏効が高かったのはどうしてか?

A4 経験として実感しているが、メカニズムはわからない

Q5 組織のなかに Others が 2 例含まれているが、免疫染色をしても分からなかったのか、

検体は TBLB によるものか

A5 TTF-1 や P40 が陰性であったことより腺癌のようなものである可能性はあるが、明確 ではない

Q6 用 い ら れ た nab-PTX(Paclitaxel) と プ レ ゼ ン に あ っ た SPARC(Secreted Protein Acidic and Rich in Cysteine)との関係について、もう少し詳細な説明がほしい A6 アルブミンをリガンドとし、これを輸送する蛋白質である。膵癌では、免疫染色で

SPARC の発現が高いものが nab-PTX(Paclitaxel)効果が高い報告がある。これに着目 して本研究でも治療前の血清値を測定したが、逆の結果になった。組織と血清値に乖 離があったが、興味ある結果として今後研究を進める。

以上いくつかの質問にも的確かつ丁寧に説明でき、よく練られた研究デザインで考察も しっかりしたものであった。

本論文は、既に評価も高い雑誌にも既に掲載されており(IF 2.663)学位論文に値する

と評価された。

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