福岡県立大学人間社会学部における
初年次情報リテラシー教育の効果(
2019年度)
柴 田 雅 博*
要旨 福岡県立大学人間社会学部の平成
31年度入学の新入生を対象に、前期開講必修科目「情報 処理の基礎と演習」の受講前後で、学生生活における情報機器利用実態および情報機器操作スキ ルの修得状況に関するアンケート調査を行った。情報機器利用実態調査では、入学時と半期の授 業を終えた後を比較するとパソコンの利用時間が大幅に増加しており、授業の課題等でパソコン を使う習慣が身に付いたと考えられる。情報機器操作スキル調査では、入学時と半期の授業を終 えた後を比較するとすべての項目で修得率が向上し、学生のパソコン操作に対する苦手意識を払 拭できた。個々の項目についても、大半の項目については修得率
8割程度まで達成でき充分な教 育効果が確認できた。一方、修得率の低い項目については、今後教育方法などの工夫が必要であ る。
キーワード 情報教育、コンピュータリテラシー、高大接続
1
.はじめに
日常生活や学業、就業において、コンピュー タやインターネットの利活用が当たり前となっ て久しい。たとえば、人々の新聞離れやテレビ 離れが進み、特に若年層に置いては、ニュース や情報は新聞、テレビのようなマスメディアか らではなくインターネットから入手するという ことが当たり前になってきており、またスマー トフォンなどを中心としたモバイル情報端末を 手元に置きながら、地図を調べる、電車の時刻 表を調べる、
SNSで友人や世界の人たちとコ
ミュニケーションをとるといった生活を送って いる。特に今の大学生はディジタルネイティブ の世代であり、生まれたときからコンピュータ やインターネットのある環境が当たり前となっ ており、生活において情報端末は必要不可欠な 存在となっている。
そんな中、情報教育においても以前より文部 科学省の中央教育審議会などで議論され、情報 活用能力の向上が求められている
1)。学習指導 要領の改訂により平成
15年度から高等学校に おいて教科「情報」が必修化された。平成
25年 度にはこれまでの「情報A」、「情報B」、「情報
*福岡県立大学人間社会学部総合人間社会コース・講師
調査報告
C」という
3科目構成から「社会と情報」、「情 報の科学」という
2科目構成への見直しがなさ れ、平成
28年度より新構成となった教科「情報」
の履修者が大学に入学している。さらに、来年 度から小学校でプログラミング教育の必修化が 始まり、令和
4年からは高等学校の教科「情報」
も共通必修科目「情報Ⅰ」と選択科目「情報Ⅱ」
へと変更予定である。また、大学教育において も、政府の
Society5.0に向けた
AI人材育成方 針に伴い国立大学では全学部に対して
AI初級 教育の推進が進められ、私立大学や公立大学に おいても今後
AI教育が求められる流れになる と予測される。このように、昨今、情報教育改 革が急速に進んでおり、大学においても情報教 育に対する戦略が求められている。
しかし、学生はまだまだ情報科学の知識や技 能に長けているとは言えないのが現状である。
他大学においても学生の情報教育に対する実態 調査がなされ
2) 3) 4) 5)、高等学校で学習した 教科「情報」の内容が必ずしも身に付いていな いという実態が報告されている。特に最近はス マートフォンの普及により若年者のパソコン離 れが報じられ、数年前に比べてもパソコンの操 作スキルが落ちているという指摘もある。情報 教育においても高等学校時代に基本的なパソコ ン操作スキルを持たないまま大学入学してくる 学生、パソコンに対する苦手意識を強く持って いる学生も多く、高大接続の観点からも大学で の専門的学びを進める上で、大学初年次に改め て情報機器の操作、インターネット利用、オ フィスソフトの操作など情報リテラシー教育の 徹底が重要となる。
福岡県立大学でも、平成
20年度から人間社会 学部の新入生に対して前期開講の必修科目「情 報処理の基礎と演習」の授業の中で情報リテラ
シーに関する調査を継続して行っている
6)−16)。 筆者は平成
27年度より本授業の担当を引き継 ぎ、新入生の情報リテラシーに関するアンケー ト調査を実施している。本稿では今年度の「情 報処理の基礎と演習」の教育効果を確認すると ともに、今後の授業展開への課題を考察する。
2
.調査方法
福岡県立大学人間社会学部の平成
31年入学 の新入生全員を対象に、以下のアンケート調査 を実施する。
2
.
1調査対象
福岡県立大学人間社会学部で開講される「情 報処理の基礎と演習」の受講者(
3クラス)を 調査対象とする。なお、本科目は人間社会学部 の
1年生対象の必修科目であり、同学部
1年生 の全員が受講するものである。
2
.
2調査方法
「情報処理の基礎と演習」の授業内でeラー ニングシステムのアンケート機能を利用してア ンケート調査を実施する。回答は無記名とし、
アンケート結果から個人の特定ができない状態 のデータとして回収する。
2
.
3調査時期
調査は「情報処理の基礎と演習」の受講前後
を比較して教育効果を測るため、受講前データ
として本科目
1回目の授業において
1回目のア
ンケート調査(以下「受講前調査」と記す)を
実施、受講後データとして第
15回目の授業終了
時に
2回目のアンケート調査(以下「受講後調
査」と記す)を実施する。アンケート調査項目
は一部を除いて共通のものを使い、受講前と受 講後での結果の変化を調査する。
2
.
4調査項目
アンケートでは、大きく学生の情報機器利用 状況に関する調査と、学生の情報機器操作スキ ルに関する調査を行う。アンケート調査項目と しては、高等学校での情報教育の状況について
1項目(
3.1節)、パソコンやその他の情報機器 の利用状況について
11項目(
3.2節)、情報機器 操作スキル関する学生の自己評価について
5項 目(
3.3節)、パソコンの基本的な操作について 項目別操作スキル
5項目(
3.4.1節)、ワープロ ソフト
Wordの利用について項目別操作スキル
13
項目(
3.4.2節)、表計算ソフト
Excelの利用 について項目別操作スキル(
3.4.3節)、プレゼ ンテーションソフト
PowerPointの利用につい て項目別操作スキル
10項目(
3.4.4節)、インター ネットの利用について項目別操作スキルおよび 語句理解
15項目(
3.4.5節)、授業の進め方に対 する項目(受講前調査においては授業への要 望、受講後調査においては授業の感想および要 望)を
2項目置く。このうち、高等学校での情 報教育の状況
1項目と授業の進め方に対する
1項目を除いて、同じ内容の項目を受講前と受講 後の
2回調査する。
なお、アンケート質問には複数回答可の質問 もいくつかあったが、回答を見るとこれらの質
問に複数個の回答をしている学生は一人もいな かった。そのため、たとえば「パソコンを何に 使っていますか」といった質問に対して、きち んとした統計が取れなかった。eラーニングの 設定等を確かめたが、特に問題は見られなかっ たので、回答者が複数回答可であることに気づ かなかったということかもしれない。このよう な理由で今回は複数回答が重要となる項目につ いて正しい分析ができなかったため、結果の提 示は省略する。
2
.
5回答者内訳
学科毎の調査対象者内訳を表
1に示す。公共 社会学科において、受講前調査に比べて受講後 調査の回答率が低いが、第
15回目の授業におい て授業時間内に十分な回答時間を確保できず、
授業時間内に回答が間に合わなかった学生に対 しては、授業後の空き時間にeラーニングシス テムでの回答をお願いしたという経緯によるも のと考えられる。しかし、
3学科全体で見ると 受講前で約
97%、受講後で約
90%の回答率を得 ることができた。
学科別の履修者数はそれぞれ
50~60名と統計 的傾向を見るにはやや少ない。また授業では学 科に関わらず同じ内容を教えているため、学科 によって傾向が大きく異なるとは考えにくい。
そこで、以下の分析では学科毎の分析ではな く、受講者全体での傾向を分析する。
表
1調査回答者内訳
受講前 受講後
学科 履修者(人) 回答者(人) 回答率(%) 回答者(人) 回答率(%)
公共社会学科 55 51 93% 42 76% 社会福祉学科 54 53 98% 53 98% 人間形成学科 57 57 100% 55 96%
全体 166 161 97% 150 90%
3
.調査結果
本節では受講前、受講後のアンケート調査の 結果と考察を述べる。
3
.
1高等学校での情報教育状況
受講前調査で聞いた高等学校での教科「情 報」の履修実態を表
2に示す。平成
24年度まで の高等学校入学者の教科「情報」の区分は「情 報A」、「情報B」、「情報C」であり、平成
25年 度以降の高等学校入学者からは区分が「社会と 情報」、「情報の科学」に変わっている。なお、
浪人生などを考慮し複数回答可としているが重 複回答はなかった。なお、この項目については 受講前と受講後で変化することはないため、受 講前アンケートでのみ聞いている。
これを見ると新入生の約
97%が高等学校で 教科「情報」を履修している。しかし、必修科 目であるはずにも関わらず約
3%の学生は「履 修していない」と答えており、ごく少数ながら 高等学校で十分な情報教育を受けてないあるい は情報教育を受けた自覚がないという学生もい ることが分かる。教科区分を見ると「社会と情 報」を履修している者が多く、高等学校では、
情報科学に対する基礎知識の修得よりも、情報 機器の活用スキルの修得を目的として情報教育
が進められてきたことが推測される。一方、全 体の約
53%と半数以上の学生は「履修科目が分 からない」と答えており、「情報」という大き な科目名については認識しているものの、その 教科区分まで意識していない様子が窺える。
3
.
2学生生活における情報機器利用実態 本節では学生の日常生活における情報機器利 用について調査した結果を示す。
まず、自宅でのパソコン・インターネット環 境を表
3に示す。
自宅で利用できるパソコンがある学生は受講 前で約
94%、受講後で約
97%と、入学時には すでに
9割以上の学生が自宅でパソコンを利用 できる環境にあり、また前期終了までにはほと んどの学生が自宅でパソコンが利用できる環境 を整えている。また自分専用のパソコンを所有 している学生についても、受講前で約
82%、受 講後で約
92%と、ほとんどの学生が自分専用の パソコンを所有していることが分かる。実家か ら通学している学生よりも寮やアパートなどで 暮らしている学生の割合が多いという本学特有 の事情があるにしても、家族と共有のパソコン を使用している学生は非常に少なく、パソコン は個人所有の情報機器として扱われていること が分かる。この傾向は数年前から大きく変わら
表
2高等学校での「情報」の履修状況(複数回答可)(
N=
160)
人数(人) 割合(%)情報A 5 3%
情報B 0 0%
情報C 0 0%
社会と情報 51 32%
情報の科学 14 9%
履修科目名が分からない 85 53%
履修していない 5 3%
回答者 160 100%
ず、学生のパソコン離れによるパソコン操作ス キルが問題になっていると言われているのに反 して、パソコンを取得し自宅でも利用できる環 境が整っていると分かる。
自宅のインターネット環境については、受講 前で約
75%、受講後で約
91%と前期終了時に はほとんどの学生が自宅にスマートフォン(
3G、
4Gなど)以外のインターネット環境を整 えていることが分かる。
学生のパソコンおよびスマートフォンの利用 時間について表
4、表
5に示す。
パソコンについては受講前約
64%が
1週間 で「ほとんど利用しない」と答えたのに対し受 講後は「ほとんど利用しない」と答えた者は約
5%と大幅に減少しており、授業課題やその他 でパソコンを利用する習慣が身についたと考え
られる。また受講後の調査を見ると、「週
3〜
4日程度」という学生が約
44%、「週
1〜
2日 程度」という学生が約
30%と全体の
7割半を占 めており、それ以上使用しているという学生も
2割程度いるなど、パソコンの使用日数も増加 していることが窺える。一日当たりとしても、
受講前約
63%の学生が「ほとんど利用しない」
と答えたのに対し受講後は「ほとんど利用しな い」と答えた者は約
7%と大幅に減少してい る。受講後の調査を見ると一日に「
1〜
3時間」
程度利用している学生で約
75%と最も多く、そ のばらつきは小さい。
一方、スマートフォンについては、受講前か らほぼ全員が「毎日」利用しており、これは受 講後においてもほぼ変わらない。一日あたりの 利用時間としても、受講前からほとんどの学生 表
3自宅のパソコン・インターネット環境
受講前 受講後
はい(人) いいえ(人) はい(人) いいえ(人)
自宅でパソコンが利用できる
(受講前N=159、受講後N=147)
149
(94%)
10
( 6%)
143
(97%)
4
(3%)
自分専用のパソコンを持っている
(受講前N=150、受講後N=143)
123
(82%)
27
(18%)
132
(92%)
11
(8%)
自宅でインターネットを利用できる
(※スマートフォンを除く)
(受講前N=161、受講後N=144)
120
(75%) 41
(26%) 131
(91%) 13
(9%)
表
41
週間当たりのパソコン・スマートフォンの利用日数
パソコン スマートフォン
受講前(人) 受講後(人) 受講前(人) 受講後(人)
毎日 11( 7%) 15( 10%) 158( 99%) 146( 99%)
週
5
〜6
日程度 2( 1%) 15( 10%) 1( 1%) 0( 0%)週
3
〜4
日程度 16( 10%) 65( 44%) 0( 0%) 0( 0%)週
1
〜2
日程度 28( 18%) 44( 30%) 0( 0%) 1( 1%)ほとんど利用しない 102( 64%) 8( 5%) 0( 0%) 0( 0%)
全体 159(100%) 147(100%) 159(100%) 147(100%)
が一日に
1時間以上使用しているのだが、受講 後においては「
1〜
3時間」が減った分、「
3〜
6時間」、「
6時間以上」と長時間に渡り利用 するという回答が増加しており、この傾向は数 年前から変わらない。この原因については、自 宅に加えて授業の空き時間などキャンパス内で の利用が増えているのではないかと推測され る。また、両親の監視から離れ、自分で利用時 間を管理することになり、利用時間が伸びたと も考えられる。スマートフォンの利用について は特にスマートフォン依存症など過度な利用が 精神的疾患につながる可能性もあり注意が必要 である。
3
.
3「情報処理の基礎と演習」受講前後での 情報機器操作スキル
高等学校での教科「情報」での情報機器活用 スキルの修得状況について、また福岡県立大学 で開講した「情報処理の基礎と演習」での情 報リテラシー教育の効果を調べるために、「パ ソコンの基本的な操作スキル」、「『ワープロソ フト
Word』の操作スキル」、「『表計算ソフト
Excel
』の操作スキル」、「『プレゼンテーショ ンソフト
PowerPoint』の操作スキル」、「イン ターネット利用のスキル」について、「(操作ス キルが)充分ある」、「ある程度ある」、「あまり ない」で自己評価してもらった。調査対象者に
おいて「充分ある」、「ある程度ある」、「あまり ない」それぞれ回答した者の割合を図
1に示 す。
受講前調査においてインターネット利用以外 の項目について約半数以上の学生が、スキルが
「あまりない」と考えており、高等学校の情報 教育では不充分であることが見受けられる。特 に
Excelについては約
72%が「あまりない」と 答えており、表計算ソフトに対する理解が弱 いことが分かる。一方、受講後調査においては
「充分ある」と答えた者の割合はまだまだ少な いものの「ある程度ある」が非常に伸びている。
一方、 「あまりない」という回答は「
Word」 「イ ンターネット利用」については
10%を切る結果 となり、その他も
20%以内に収まっている。 「情 報処理の基礎と演習」を受講することにより、
ほとんどの学生はある程度のパソコン操作スキ ルを身につけることができているものと考えら れる。ただし、パソコンの基本操作について自 信が「あまりない」者が約
20%残っており課題 が残る。
3
.
4項目別スキルに対する調査
「パソコンの基本的な操作スキル」、「『ワープ ロソフト
Word』の操作スキル」、「『表計算ソ フト
Excel』の操作スキル」、「『プレゼンテー ションソフト
PowerPoint』の操作スキル」、 「イ 表
51
日あたりのパソコン・スマートフォンの利用時間
パソコン スマートフォン
受講前(人) 受講後(人) 受講前(人) 受講後(人)
6
時間以上 0( 0%) 1( 0%) 12( 8%) 28( 20%)3
〜6
時間 5( 3%) 13( 9%) 74( 49%) 79( 54%)1
〜3
時間 27( 17%) 110( 75%) 71( 45%) 37( 25%)数分〜数十分程度 28( 18%) 13( 9%) 1( 1%) 0( 0%)
ほとんど利用しない 100( 63%) 10( 7%) 0( 0%) 1( 1%)
全体 160(100%) 147(100%) 160(100%) 115(100%)
ンターネット利用のスキル」に関する個別の項 目について「できる」か「できない」の二択で 回答してもらった。各部門について、項目別に 操作スキルの修得状況を調査検討する。
3
.
4.
1パソコンの基本操作
パソコンの基本操作スキルについての項目別 操作スキルの調査結果を図
2に示す。図は各項 目に対して「できる」か「できない」の
2択で 回答させた結果のうち、「できる」と答えたも のの割合を示している。これについては以下の
調査でも同様である。
こちらを見ると、「ファイルの保存」、「新規 フォルダ作成」など基本的な部分でも受講前調 査では
4割程度と低く、高等学校における情報 教育では基礎的なパソコンの操作スキルの習得 ができていない。特に「十分な速度でのキー ボード入力」について約
26%と低い。しかし、
授業中の様子などを窺うに、作業に支障を来す ほどキーボード入力がたどたどしい学生はそこ まで多くなく、必要以上に苦手意識を持ってい ることが窺える。高等学校の情報教育がブライ
3%2%
1%
4%
8%
40%
42%
28%
37%
53%
58%
56%
72%
59%
39%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
ࣃࢯࢥࣥᇶᮏ᧯స
Word Excel PowerPointࣥࢱ࣮ࢿࢵࢺ⏝
ᒚಟ๓
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8%
12%
19%
76%
78%
77%
77%
73%
20%
7%
15%
12%
7%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
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Word Excel PowerPointࣥࢱ࣮ࢿࢵࢺ⏝
ᒚಟᚋ
ศ࠶ࡿ ࠶ࡿ⛬ᗘ࠶ࡿ ࠶ࡲࡾ࡞࠸
図
1「情報処理の基礎と応用」受講前後での情報機器操作スキル(受講前
N=
159、受講後
N=
147)
ンドタッチやタイプ速度に過剰に偏重してお り、それが学生の苦手意識を植え付けているの ではないかとも考えられる。
また、「アプリケーションのインストール」
に比べて「アプリケーションのアンインストー ル」について、比較的高い値が出ている。昨年 度も同様の傾向が見られたが、こちらの原因は よく分からない。
受講後調査では「ファイルの保存」、「新規 フォルダの作成」については課題の保存やファ イル管理を通して修得されていることが分か る。一方、「キーボード入力」や「アプリケー ションのインストール・アンインストール」に ついては、授業中に実際に演習を行ったわけで はないが、それでも「できる」の割合が増加し ている。パソコンを日常的に利用する習慣が身 についたため、これらの操作についても慣れて きたものと考えられる。ただし「キーボード入 力」については苦手意識が高いままであり、学 内
PCにタイピングソフトを導入するなど対策
を講じるべきかもしれない。
3
.
4.
2「ワープロソフト
Word」操作
「ワープロソフト
Word」の項目別操作スキ ルについて調査結果を図
3に示す。
これを見ると「半角・全角の切り替え、漢字 変換」、「文字列のコピー、移動」、「文字フォン ト、サイズ、スタイル」、「文字列配置」など文 章を書く上で基礎となる部分においては受講前 調査の段階でも
70%以上と高く、こちらについ ては高等学校での情報教育でしっかり修得でき ていることが分かる。また、「表の挿入」、「写 真の挿入」、「文書のページ設定」については
40
%〜
60%程度と少し低いものの高等学校で も学習したことが窺える。一方、「インデント の変更」、「脚注の挿入」、「図表番号の挿入」、
「ページ番号の挿入」など、大学でのレポート 作成においては必須の項目の修得率は
30%以 下と非常に低く、高等学校では文書作成の基本 的な部分しか教えられておらず、少し応用的な
44%36%
26%
32%
53%
90%
78%
39%
63%
81%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
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ࣉࣜࢣ࣮ࢩࣙࣥࡢࣥࣥࢫࢺ࣮ࣝ
ᒚಟ๓ ᒚಟᚋ
図
2パソコンの基本操作に関する項目別操作スキル(受講前
N=
159、受講後
N=
147)
項目については手が回っていないことが確認で きる。
受講後調査においては、各項目とも「でき る」の割合が大幅に増加しており、ほとんどの 項目で
90%を超えている。ただし、「インデン トの変更」について約
55%と低く、「タブによ る文字列の位置揃え」について約
81%とやや低
い。特に、インデント設定は他の文書から「引 用」する場合に重要な操作であるため、大学で レポートを作成する上では必須である。著作権 上の問題を絡めて、引用のルールの徹底とそれ に伴うインデント設定の重要性をもっと掘り下 げて授業を行う必要がある。情報教育とは直接 関係ないものの、授業の様子を見るに、引用と
99%
79%
74%
77%
9%
11%
54%
55%
26%
20%
44%
29%
13%
99%
94%
97%
99%
55%
86%
98%
100%
97%
98%
98%
81%
93%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%100%
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ᒚಟ๓ ᒚಟᚋ
図
3「ワープロソフト
Word」操作に関する項目別操作スキル(受講前
N=
159、受講後
N=
147)
著作権に対する意識付けはできているものの、
引用箇所の明治方法や引照記号の付与について 慣れておらず、戸惑っている様子が窺えた。ま た、引用文献に対する項目や文献表についても 同様に、具体的に何をすればいいのか戸惑って いるようであった。「何のためにこれらの記入
をするのか」という意味を含めてもっと具体例 を挙げて指導する必要があるのではないかと考 えられる。
3
.
4.
3「表計算ソフト
Excel」操作 「表計算ソフト
Excel」の項目別操作スキル
31%40%
32%
38%
19%
14%
5%
43%
23%
37%
14%
25%
10%
14%
11%
96%
95%
90%
99%
87%
81%
63%
99%
77%
96%
86%
97%
86%
90%
92%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%100%
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Excel
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図
4「表計算ソフト
Excel」操作に関する項目別操作スキル(受講前
N=
159、受講後
N=
147)
について調査結果を図
4に示す。
これを見ると受講前調査において各項目の修 得率が非常に低く、一番修得率の高い「罫線」、
「グラフの作成」についても
4割程度である。
高等学校の情報教育において表計算の修得が充 分でないことが分かる。高等学校の時点では集 計や統計処理などを実践する機会が少なく、表 計算がどんな役に立つのか、どの様に利用すべ きなのかについて、認識できていないのではな いかと推測される。ほかの項目としては「表の レイアウト調整」、「オート
SUM」などについ
ては比較的修得率が高く、高等学校においては 簡単な集計作業、グラフの作成に利用するとい う使い方の学修に留まっていることが見て取れ る。
受講後調査においても、他の部門に比べて
「表計算ソフト
Excel」の項目別操作スキルの 習得率は比較的低い。多くの項目については 修得率
80%を超えるところまで達成している が、
90%を超える項目は半数程度である。「セ ルの相対参照・絶対参照」については修得率が 約
63%と低いが、昨年が約
53%であるのに比べ
58%
59%
55%
64%
53%
53%
21%
14%
63%
35%
96%
96%
96%
99%
97%
99%
99%
97%
98%
88%
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図
5「プレゼンテーションソフト
PowerPoint」操作に関する項目別操作スキル(受講前
N=
159、受講後
N=
147)
ると今年度は
10%ほど高くなっている。一方、
データ管理としての利用方法については、受講 前の習得度が非常に低くおそらく高等学校では 充分に教えられていないものと推測されるのに 対し、受講後調査では
8割から
9割の修得率に 達しており教育効果が見て取れる。
3
.
4.
4「 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン ソ フ ト
PowerPoint」操作
「プレゼンテーションソフト
PowerPoint」 の項目別操作スキルについて調査結果を図
5に 示す。
これを見ると受講前調査において多くの項目 の修得率は
5割を超え、高等学校の情報教育で も発表資料作成について基本的な機能や操作に
71%
11%
43%
62%
43%
72%
82%
81%
13%
41%
30%
5%
9%
40%
4%
99%
44%
99%
86%
88%
91%
95%
95%
46%
73%
52%
19%
27%
68%
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図
6「インターネット利用」に関する項目別操作スキル(受講前
N=
159、受講後
N=
147)
ついての操作スキルは修得していることが分か る。一方で「スライド番号の挿入」や「発表者 ノートの利用」といった応用的な項目について は不充分である。
一方、受講後調査においては「配布資料形式 での印刷」を除いて修得率
95%以上となった。
PowerPoint
自体が非常に直観的に操作できる アプリケーションであることもあり、操作スキ ルに対する「情報処理の基礎と演習」の教育効 果は充分に達成されていると言える。今後は効 果的なプレゼンテーション資料の作成について など、利活用のノウハウにもっと重きを置いて 指導するのがよいのかもしれない。
3
.
4.
5インターネット利用
「インターネット利用」の項目別操作スキル について調査結果を図
6に示す。
まず受講前調査に関しては「メールの送受 信」、「検索エンジンを使ったキーワード検索」
などの基本的なインターネット利用に関する操 作については、修得率は比較的高い。新入生は ディジタルネイティブ世代でありインターネッ トを日常的に使用しているため、基本的な利用 方法については自然と修得できていると考えら れる。ただし「メールの宛先、
CC、
BCCの使 い分け」のような応用的な知識については修得 率が約
11%と非常に低く、プライベートでは 電子メールによるコミュニケーションはすでに 廃れたものになっていることが見て取れる。ま た、「セキュリティ」、「情報モデル」、「知的財 産権・著作権」に注意しながらのインターネッ ト利用について修得率が非常に高く、高等学校 の情報教育においてネットリテラシー教育が重 点的に行なわれていることが確認できる。その 一方で、インターネット関連用語知識について
の修得率は極端に低い。
受講後調査においては、すべての項目に置い て修得率の向上は確認できるが、最終的な修得 率は項目によってまちまちである。操作関連 についてはほとんどの項目で
80〜
90%程度の 修得率が得られたものの「メールの宛先、
CC、
BCC
の使い分け」については約
44%と低いま まであった。授業内で担当教員に対して日常 的にメールを出させる仕組みを施しており、ビ ジネスメールの送信に慣れさせているものの、
メールの送受信者のプライバシー設定について あまり注意が向いていない様子である。個人情 報の扱い等も含めて、安全性を考慮しながらの メール送受信を意識させる必要がある。イン ターネット関連の用語説明については、受講後 に多少上昇したとはいえ、受講後でもまだ修得 率が低い。「情報処理の基礎と演習」が演習科 目であることもあり、学生はパソコンやアプリ ケーションの操作に対しては興味があるが、情 報科学の基盤知識に対する興味は高くないもの と考えられる。それでも「
URL」や「
Wi-Fi」 など日常生活やメディアでよく使われるキー ワードについては比較的修得率が高い。授業時 間にこれらを詳しく説明する時間を取るのはス ケジュール的に難しいため、eラーニングシス テムなどを活用して、基本的な情報学用語の理 解を促す仕組みを作る必要がある。
4
.おわりに
本稿では福岡県立大学人間社会学部新入生を
対象にアンケート調査を行い、学生の情報機器
利用実態および情報リテラシー科目「情報処理
の基礎と演習」に対する教育効果について検証
し課題をあぶり出した。
学生の情報機器利用実態においては、平成
31
年度新入生の約
94%が自宅でパソコンを利 用できる環境にあり半年後にはさらに増えて約
97
%の学生が自宅でパソコンを利用できるこ とが分かった。また、入学時に約
75%の学生は 自宅でインターネットを利用できる環境を持っ ており、半年後には約
91%の学生が自宅でもイ ンターネットが利用できる環境を整えていた。
パソコン・スマートフォンの利用時間につい て、入学時にパソコンを日常的に使用するとい う学生は多くなかったものの半年後にはパソコ ンを使う頻度が上がり、また利用時間として も
1日に
1時間以上使用するという学生が約
84
%に増え、授業等の課題をパソコンで作成す るという習慣がついているものと推測される。
一方で、スマートフォンの利用については毎日 使用しているという学生が入学時から約
99% に至っており情報端末としてスマートフォンを 中心に利用していることが分かる。利用時間に ついても傾向としては入学時よりその半年後の 方が長時間利用していることが分かった。特に
6時間以上という学生も約
20%おり、依存症な どのリスクに注意が必要である。
「情報処理の基礎と演習」の教育効果につい ては、「パソコンの基本操作」、「ワープロソフ ト
Word」、「表計算ソフト
Excel」、「プレゼン テ ー シ ョ ン ソ フ ト
PowerPoint」、「 イ ン タ ー ネット利用」の各部門において、受講前と受講 後で操作スキルが「充分ある」、 「ある程度ある」
と答えた割合が非常に増加しており、充分な教 育効果が得られたと言える。また各部門の項目 別操作スキル調査においても全項目について受 講前と受講後で「できる」と回答した割合が増 加しており教育効果が得られたことが確認でき た。
今後は項目別操作スキル調査で伸びの弱かっ た項目についてどのように指導していくか検討 する必要がある。また、eラーニングシステム などを活用し、いかに情報科学の基盤知識を身 につけさせることができるか検討していく必要 がある。
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