水 セメント 細骨材 粗骨材
W C S G
20 60 10 5.0 168 280 826 996 2.80 8.11 単位量(kg/m
3)
混和材 NaCl G
max(mm)
W/C
(%)
スランプ
(cm)
空気量
(%)
単位(mm) 875
L R
875 L RR センターホールロードセル
M
センターホール ジャッキ 載荷リング
200 240
@4=240 60 40
L R 80 50
変位計 M
745
(1)
鉄筋とコンクリートの付着性状に及ぼす鉄筋腐食の影響に関する研究
Effect of rebar corrosion on bond performance between concrete and rebar
土木工学専攻
23号 鈴木 綾
SUZUKI Aya1. はじめに
近年,既存の鉄筋コンクリート構造物の経年劣化に伴い,
耐久性能や構造性能の低下が深刻な問題となっている。そ の中でも, 中性化や塩害に起因する
RC構造物の鉄筋腐食は 鉄筋への応力伝達を抑制し,設計時とは全く異なる変形性 能や耐荷性能を引き起こす原因につながる。
現在までに腐食を生じた鉄筋とコンクリートとの付着性 状を評価した研究は散見されるが,既存の研究
1)は単調増加 による評価に留まり,繰り返し載荷履歴下における付着性 状を評価したものはない。
また,鉄筋腐食が生じた
RC梁において,腐食生成物およ びひび割れの影響により付着応力は非腐食時に比べ大幅に 低下し,鉄筋が構造体として十分に機能しない恐れがある。
そのため,鉄筋腐食が生じた状態での鉄筋とコンクリート の付着応力性状を定量的に評価することは,
RC構造物の現 在の構造性能を評価する上で非常に重要な位置付けである。
そこで本研究では,鉄筋とコンクリートの付着性状に及 ぼす鉄筋腐食の影響を評価することを目的として,鉄筋と コンクリートの繰り返し引抜き実験を実施し,付着性状に 及ぼす鉄筋のひび割れ幅の影響を考慮した付着構成則を提 案し,その適用性を検討した。
2. 実験概要
2.1 試験体形状と実験パラメータ
試験体の形状寸法および配筋を 図-1 に示す。試験体は,
240
×
200×
875mmで あ り , か ぶ り
40mmの 位 置
D16(SD295A)異形鉄筋を60mm間隔で
2本配筋した(
L鉄 筋,
M鉄筋,
R鉄筋と称する) 。せん断補強筋が無い試験体 では,自由端からの鉄筋の抜出しを抑制するため,自由端
から
130mmの領域に定着筋を
2本配筋した。一方,せん断
補強筋を有する試験体は,D6 のせん断補強筋(SD295A)を
80mm間隔で配筋した。
試験体は,打設後
48時間で脱型した後に,
28日間湿布養 生を施した。荷重の載荷は,材齢
36日時点とした。コンク リートの配合は表-1 に示す通りである。なお,セメントは 普通ポルトラントセメントを使用し,練混ぜ水には,鉄筋 腐食を促進させるため
5%NaCl水溶液を用いた。
2.2 引抜試験方法
引抜き試験概要を図-1 に示す。引抜く鉄筋は配筋された
3本の鉄筋の内, 試験体側面から
60mmの位置に配筋された 外側の鉄筋である。なお,載荷速度は
9.8kN/minとした。
また,
20kN,40kNおよび
60kNまで荷重を載荷させた後 に除荷を行い,その後,鉄筋の降伏荷重である
70.5kNを最 大荷重とする載荷・除荷を
10回繰り返し
10回目で試験体 が破壊に至るまで荷重を載荷し続けた。
2.3 電食試験結果
図-2 にコンクリートのかぶり面および端面に発生した 腐食ひび割れ性状を示す。
2.4 付着試験結果
鉄筋に沿った各位置における付着応力τは,式(1)を用い 算出した。
ここで,
Dは鉄筋径,
Pは鉄筋力であり,鉄筋径は腐食試 験体において計測した局所腐食率から換算した。
鉄筋力は,計測した鉄筋ひずみから鉄筋応力を算出した 後,計測した局所腐食率から換算した断面積を乗じること により算出した。具体的な鉄筋力勾配の算出方法であるが,
着目する計測点を含む近傍の3点を通る
2次曲線から,各測表-1 コンクリートの配合(設計基準強度 30N/mm
2)
図-1 試験体の形状寸法および配筋
dx dP
D
1
表-2 実験パラメータ
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
τ/f'c2/3
S/D(%)
載荷1回目 載荷3回目 載荷5回目 載荷7回目 載荷9回目 載荷11回目 載荷13回目 包絡線 単調載荷(15D)
試験体名 引抜き鉄筋 目標腐食率[%] 実測値[%]
BD-S0-0L-CY
BD-S0-20L-CY 20 14.5
L鉄筋
(外側)
-
(2)
定点の鉄筋力勾配を算出した。すべり量は,鉄筋とコンク リートの相対的なずれが生じない位置を基準として,式(2) により算出される。
図‐3 および図‐4 は,それぞれ
9Dおよび
15Dの付着応 力とすべり関係を表したものであり, 各図(a)~(b) はそれ ぞれ試験体BD‐S0‐0LおよびBD‐S0‐20Lに対応してい る。なお,既往の研究
1)と同様に,付着応力は,圧縮強度 の
2/3乗,すべり量は鉄筋径で除することにより無次元化し た。
まず,既往の単調載荷
2)と繰り返し載荷を比較すると繰り 返し載荷の試験体は付着応力の低下が顕著である。これは,
荷重の繰り返しによりコンクリート内にひび割れが発生し,
コンクリートの拘束圧が解放されることにより生じる。し かしながら,健全試験体の場合は,繰り返し載荷よりも付 着応力が大きい値を示している。これは,腐食ひび割れが 発生していないため,コンクリートの拘束圧が解放されず,
鉄筋とコンクリートの付着応力が大きくなったと考えられ る。
載荷履歴に応じた付着応力性状であるが,いずれの試験 体においても3サイクルとなる60kN まで荷重を作用させた ときには急激な増加を示した後に付着応力が最大となるが,
それ以降の載荷では緩やかに増加するとともに,載荷回数 に応じてその増加率も小さくなっている。これは, 3 サイ クル以降では腐食ひび割れ幅が荷重の載荷に伴い開口する ことにより,鉄筋とコンクリートの相対すべり量が大きく なるためであると考えられる。特に,試験体
BD-S0-20Lに おいては,このような挙動が顕著である。
2.4 最大付着応力-腐食率-ひび割れ幅関係
図‐5 に最大付着応力と腐食率および最大付着応力時のひ び割れ幅の関係を示す。 図‐5 に示すように,せん断補強筋 なしの試験体では腐食率およびひび割れ幅の増加とともに 付着応力は低下する。したがって,付着応力性状を定量的 に評価するためには,腐食率およびひび割れ幅について考 慮しなければならない。
3. ひび割れ幅を考慮した付着構成則の構築 3.1 モデル概要
本研究では,
Mohr-Coulombの破壊基準的アプローチを利 用したモデルを提案する。鉄筋が腐食した際の鉄筋とコン クリートの付着応力は,鉄筋の腐食膨張圧やコンクリート に発生する腐食ひび割れ性状ならびに鉄筋とコンクリート の相対すべり量に応じて変化する。そのため,非腐食鉄筋 のものよりも付着応力は増加或いは低下する。腐食ひび割 れ発生以前では,コンクリートの拘束効果により付着応力 は増加することに対して,発生後はその喪失により大幅に 低下する。したがって,腐食鉄筋の付着応力性状は,式(3) に示すように非腐食鉄筋の付着応力性状を基準としてそれ らの影響を加味することにより表現可能となる。すなわち,
Mohr-Coulomb
の破壊基準における粘着力を無載荷状態の
付着応力と仮定して,付着応力と内部摩擦角をすべりの関 数として捉えることとした。本来であれば,内部摩擦角も 腐食ひび割れ幅に依存する関数となるが,本研究ではすべ り量を介して間接的に加味することとする。
ここで, :ひび割れ幅を考慮した付着応力, :非腐食 時の付着応力(粘着力), :腐食膨張圧およびひび割れ幅を 考慮した拘束圧, :内部摩擦角で表される。
式(3)に示される内部摩擦角および粘着力は,鉄筋軸直交 図‐2 腐食ひび割れ性状
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
τ/f'c2/3
S/D(%)
載荷1回目 載荷3回目 載荷5回目 載荷7回目 載荷9回目 載荷11回目 載荷13回目 包絡線 単調載荷(17D)
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
τ/f'c2/3
S/D(%)
載荷1回目 載荷3回目 載荷5回目 載荷7回目 載荷9回目 載荷11回目 載荷13回目 包絡線 単調載荷(9D)
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
τ/f'c2/3
S/D(%)
載荷1回目 載荷3回目 載荷5回目 載荷7回目 載荷9回目 載荷11回目 載荷13回目 包絡線 単調載荷(9D)
(b) BD-S0-20L
(a) BD-S0-0L
(b) BD-S0-20L(a) BD-S0-0L
図‐3 付着応力-すべり関係(9D 位置) 図‐4 付着応力-すべり関係(15D 位置)
0
n
( )
tan )
0(S D n S D
n
n
(3)
dx
s
ε
ひび割れ幅[mm]
腐食率[%]
max
試験体名 引抜き鉄筋 目標腐食率[%] 実測値[%]
BD-S0-0L
BD-S0-20L 20 16.0
BD-S0-10M M鉄筋
(中央側) 10 6.5
L鉄筋
(外側)
- コンクリート
鉄筋 腐食生成物
EI q a4 2 3
b a
ab q2 EI3
3
a b
2 2
) cos 1
4 ( q
M a
n
2
1 q
nq
M
方向の応力に依存した付着性状に関わる重要な要因要素で
あり,それらには鉄筋表面の凹凸度が大きく影響する。例 えば,異形鉄筋では,節間のせん断破壊および
2次ひび割 れの発生による影響が大きく,徐々に進展するコンクリー トの破壊が密接に関係する。したがって,内部摩擦角はす べりに伴って変化するため,内部摩擦角をすべりに依存す る関数と捉えた
3)。なお,式
(3)中の鉄筋が非腐食状態のおける付着応力
0に関しては,式
(4)に示す通り島ら 4)のτ~s モデルを適用した。
3.2 内圧と付着応力の関係
一般に,図-6 に示す異形鉄筋のような表面に凹凸が存在 する鉄筋を引き抜くと,凹凸部分とコンクリートの噛み合 わせにより鉄筋軸直行方向にはずれに伴った開きを生じる。
したがって,鉄筋表面にはせん断応力(付着応力)とリン グテンションを分力とした合力が生じることとなる。
ここで, :コンクリートにかかる内圧, :付着応力, : リブ表面と鉄筋軸方向の間の角( )で表される。
3.3 ひび割れ幅に伴う拘束圧の低下
コンクリートには,鉄筋の腐食膨張圧によって圧力
q1が 発生し,この値が引張強度以上になると腐食ひび割れが発 生する。本研究では厚肉円筒理論により足助ら
5)による腐食 膨張圧モデルより
q1を算出した。
ひび割れ発生後は,厚肉円筒理論から梁理論に移行する こととし,ひび割れが発生することにより解放される圧力 を
q2とした。ひび割れが発生することによって解放される 拘束圧
q2の算出方法を以下に示す。
かぶり表面にひび割れが到達した後のひび割れ幅は,か ぶり方向に対して線形分布を仮定する。すなわち,かぶり 表面におけるひび割れ幅は,中心角にかぶり厚さを乗じた 値となり,その時に発生するモーメント を算出する。
ここで, a:鉄筋と腐食生成物の半径, :ひび割れ発生 時の角度(図-7 参照)で表される。
このときに生じる変位
δを算出すると次式のように示す ことができる。
ここで,E:コンクリートの弾性係数,I:断面二次モーメ ントで表される。
また,変位
δはコンクリート表面に発生したひび割れ幅 と次式に示す関係を持つ。
ここで, :コンクリート表面に発生したひび割れ幅,
b:かぶり(図-7 参照)で表される。
ひび割れの発生によって解放される圧
q2は,
(7)および(8)式から次式によって示される。
腐食膨張圧およびひび割れ幅を考慮した拘束圧 は次 式によって表される。
以上のように導出したすべりに応じた拘束圧である式
(10)を式(3)に代入することにより,付着モデルが構築される
こととなる。
4.モデルの適用性評価 4.1 実験概要
図‐5 最大付着応力-腐食率-ひび割れ幅関係
'23 0.6
0 0.9 1 exp 40
SD fc
(4)
tan
i p
pi
図‐7 付着構成則のモデル図
図‐6 内圧と付着応力の関係図
表‐3 実験パラメータ
45
pi
(6)
(7)
(10) (8)
(9) (5)
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
τ/f'c2/3
S/D(%)
9D 17D 22D 島式
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
τ/f'c2/3
S/D(%) 19D 25D 島式 解析値
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
τ/f'c2/3
S/D(%) 9D 15D 島式 解析値
引抜き試験概要を図-1 に示す。引抜きの対象とした鉄筋 は,配筋された
3本の鉄筋のうちの
L鉄筋および
M鉄筋で ある。なお,コンクリ-との配合を表-1,実験パラメータ を表-3 に示す。載荷試験方法は単調片引き試験とし,載加
速度は
9.8kN/minとした。また,腐食ひび割れ性状を図-8
に示す。
4.2 付着モデルの精度の検討
本モデルでは,鉄筋腐食率は鉄筋軸方向および断面内で 一様であるものと仮定し,ひび割れ幅は平均ひび割れ幅,
腐食率は主鉄筋の平均腐食率を用いた。試験結果と本モデ ルによる解析結果の比較を図-9 に示す。各図中には島モデ ルを導入した結果も示している。いずれの結果においても,
本モデルは実験結果を比較的精度良く評価していることか ら,本モデルの適用性が確認される。試験体
BD-S0-20Lお よび試験体
BD-S0-10Mを比較すると,引抜く鉄筋軸上に腐 食ひび割れが発生していない試験体BD-S0-10M は付着応力 が増加している。これは,腐食ひび割れが発生しないこと によって,コンクリートの拘束圧が解放されなかったため である。
しかしながら,本研究では,腐食率を一定として腐食ひ び割れ幅は平均値を代入したため,実際は腐食があまり進 んでいない鉄筋も一様に腐食されていると仮定したことと なる。したがって,本解析では,付着構成則を導入したが,
せん断補強筋,ダボ作用等を考慮することで更なる向上が 期待できる。
5.まとめ
以下に本研究で得られた知見を要約する。
(1)非腐食試験体では,繰り返し載荷に伴うひび割れ発生に
起因しコンクリートの拘束圧が解放されることにより,
急激に付着応力が低下する。
(2)腐食試験体では,腐食ひび割れが既に発生しているため,
繰り返し載荷に伴う付着応力の低下が緩やかである。
(3)せん断補強筋が無い場合は,最大付着応力は腐食率およ
びひび割れ幅と相関性がみられた。
(4)ひび割れ幅を考慮した付着構成則のモデルは実験値と比
較的,良好な値を示した。
参考文献
1)
村上祐貴,木下哲秀,鈴木修一,福本幸成,大下英吉:鉄筋 腐食を生じたRC 梁部材の残存曲げ耐力性状に関する研究, コ ンクリート工学論文集,第
17巻,第1 号,2005.1
2)
村上裕貴:鉄筋腐食を生じたRC 梁の残存耐荷性能に関する研 究,中央大学博士論文, pp.28-85,2008
3)
工藤礼央,染谷弘法,大下英吉:鉄筋とコンクリートの付着 性状に関する直応力依存型挙動のモデル化と適用性評価,コ ンクリート工学論文集,第
23巻,第3 号,2005.1
4)
島弘,山本恭史:腐食した鉄筋の局所応力~局所すべり関係,
コンクリート工学年次論文集,
vol.13,
No.1,
pp.663-668,
1991 5)足助美岐子,大下英吉,鈴木修一,堤知明:鉄筋腐食率に基づ く 腐 食 ひ び 割 れ 幅 推 定 手 法 に 関 す る 研 究 ,
vol.66,V-233,pp465-466,20116) S.P.Timoshenko:弾性論,コロナ社,pp65-91