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小学校教師の協働意識と組織感情の関連

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小学校教師の協働意識と組織感情の関連

―「チーム学校」構築のための組織マネジメントに焦点をあてて ―

宮西 真  田村 修一 1  問題と目的

 学校現場における複雑化・多様化する教育課題を背景に、中央教育審議会は、 「チー ムとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」を報告した。この答申 では、学校組織の望ましい姿について、個々の教師が個別に教育活動に取り組むので はなく、学校のマネジメントを強化し、組織として教育活動に取り組む体制を創り上 げることの重要性を指摘している(文部科学省,2015)。

 今の教師は、一人一人の子どもたちの個性を個別の能力とみなし、多様化した社会 に対応できる能力を育てることを求められている。学校教育の対象である児童生徒も 多種多様であり、一人一人の子どもの実態に応じたきめ細やかな教育を行うために は、従来の学級担任のみによる指導・援助では限界がある。学校教育において、教師 が子どもたちを支え教育活動を充実させていくためには、各クラスの児童生徒と担任 教師の関係だけではなく、同じ学校の教師たちが 1 つのチームとなって、その学校の すべての子どもたちに関わることが求められている(高木・三浦・白井,2015)。

 これまで、学校心理学の研究領域においても「チーム援助」の理論研究や実践研究 が行われてきており、その効果に関する知見も少しずつ積み上げられてきている。例 えば、野口・瀬戸(2015)は、「チーム援助」は、担任が一人で問題状況の解決を目 指すよりも効率的で有効であると報告し、井内・西山(2014)は、「チーム援助」を 実践することで学校適応援助体制の充実に効果を及ぼし、教師が一人で抱える負担感 を軽減させると述べている。

 一方、「学級王国」と揶揄されてきた日本の教師たちの閉鎖的意識は、現在でも根 強く残っており、それが教師集団のチーム意識を阻んでいるとの指摘もある。例え ば、北神(2014)は教師の年齢構成の歪みに伴う課題や多忙による時間不足などが相 まって、ルーティンの仕事の処理や打ち合わせ、調整等に多くの時間が費やされ、

チームに期待される機能が十分に発揮できていないこと。また、教師の中核的業務で ある授業や学級経営は、その性質上それぞれの教師個人の責任で行われるという個業 的色彩が強く、相互不干渉主義といった教師文化も根強く存在していることを指摘し ている。

 また、元吉(2011)は実際にチームで問題解決しようとすると、チームのメンバー

(2)

間で問題意識や危機意識に温度差があり、解決方法についても意見の相違があるこ と。また、多忙のために問題解決に取り組む時間や労力を十分に注ぐことができず、

一部のメンバーにそのしわ寄せが来ること。加えて、場合によってはチームのメン バー同士が対立関係になり、問題解決どころではない状況になってしまうことさえあ ると述べている。

 さらに野口・瀬戸(2015)は、小学校教師における「チーム援助」の難しさについ て、①時間の確保ができないこと、②教師の見方が偏っていること、③情報交換が上 手くできないこと、④コンサルテーションを行う中での懸念があること、⑤援助方針 を明確にすることができないこと、⑥援助資源が不足していることの 6 つを挙げてい る。また、これらの背景として、小学校教師の授業時間数の多さや、学級担任制によ る自分の学級以外の児童と関わることの少なさ、さらに安易に他の学級に介入するこ とへの不安や懸念を指摘している。このように、日本の学校組織特性に焦点を当てた 先行研究からは、学校の教職員たちが 1 つのチームとなって効果的な教育を実践し、

有効に機能させることはそれほど容易なことではないことがわかる。

 このような先行研究の結果を見ると、教育効果の高い「チームとしての学校」を具 現化するための大前提として、学校内の組織や指導体制を効率的に整備することは当 然として、それ以上に教師一人一人の「チームとしての学校」に対する肯定的意識を 醸成していくことがより重要になると考える。この点について高橋(2009)は、企業 の組織マネジメントの観点から、組織が有効に機能するための要件として「組織感情」

の重要性を指摘している。また、「組織感情」とは、「職場全体に広まっているとみん なが感じている共通の感情のことで、個人の感情が連鎖したもの」と定義している(高 橋,2009)。この「組織感情」は企業だけではなく、学校現場の「チームとしての学校」

の具現化においても重要な要因になると考えられる。

 そこで、本研究では、とくに小学校教師に焦点をあて「協働意識」と「組織感情」

について、これらがどのように関連し影響し合っているか検討する。具体的には、① 小学校教師の「協働意識」の特徴の検討(小学校の教育活動の中で展開されている教 職員の協働に対する教師の肯定的認知もしくは否定的認知について、その実態を明ら かにする)、②小学校教師の「組織感情」の特徴の検討(自分の所属している職場の 雰囲気について、教師がどのように認知しているか、その実態を明らかにする)、③ 小学校教師の「協働意識」と「組織感情」の関連の検討(小学校教師の「協働意識」

と「組織感情」の相関関係を明らかにする)を行う。そして、それらの分析結果を踏

まえて、教育効果の高い「チームとしての学校」を具現化するための方策について考

察する。以上が本研究の目的である。

(3)

2  方法

( 1 )調査協力者

 首都圏A市内の公立小学校20校の教師485名

( 2 )調査期間

 2016年 9 月 5 日(月)~ 9 月16日(金)

( 3 )調査票の配付および回収

 本研究に関する調査協力の承諾があったA市内の20校の各小学校校長宛に調査票と 個別専用封筒および質問票回収袋を送付した。その後、校長より所属校の全教師に調 査票が配付され、本調査の協力を承諾した者が調査票の各質問項目について回答し個 別専用封筒に入れ封をした後、調査票回収袋に投函した。その後、第一著者が直接各 小学校を巡回訪問し、回答済み調査票を回収した。

 回答者の属性を分析に使用するため、測定具以外に調査票のフェイスシートにおい て、①性別、②職層、③教職経験年数、④年齢(年代)の 4 項目の記載を求めた。回 収された回答済み調査票は総計301名分であり、記入漏れ等によるデータ解析に適さ ない 9 名分を除外した結果、有効回答数は292名分となった(回収率60.2%)。調査協 力者の内訳は以下のとおりであった。

 ① 性別:   男性(105名)、女性(187名)

 ② 職層:   主幹教諭・指導教諭(23名)

         主任教諭(92名)

         教諭(165名)

         その他(再雇用など)(12名)

 ③ 経験年数:  5 年以下(96人)

          6 -10年(68名)

         11-20年(61名)

         21-30年(31名)

         31年以上(36名)

( 4 )測定具

 ① 「教師の協働意識」尺度

 教師の職場における協働に関する意識を調べるために、新たに「教師の協働意識尺

度」を作成した。教師の教育活動における協働場面を想定し、①「チームで働くこと

に関する長所と短所の認識」、②「学年教師集団における協働」、③「スクール・カウ

(4)

ンセラーとの協働」、④「地域人材(ゲストティーチャー・保護者等)との協働」の 4 つの観点から、23の質問項目を作成した。回答は 4 件法とし、それぞれの項目につ いて「 4 :とてもそう思う」「 3 :そう思う」「 2 :そう思わない」「 1 :全くそう思 わない」で回答を求めた。

 ② 「組織感情」尺度

 高橋(2009)が作成した「組織感情尺度」の20項目をそのまま採用した。この尺度 は、職場全体に共有され、広まっている感情を「組織感情」と定義し、①「イキイキ 感情( 5 項目)」、②「あたたか感情( 5 項目)」、③「ギスギス感情( 5 項目)」、④「冷 え冷え感情( 5 項目)」の 4 つのカテゴリーで構成されている。 「回答は 4 件法とし、 「 4:

職場全体に広がっている」「 3 :比較的こうした感情を持つ人が多い」「 2 :比較的こ うした感情を持つ人が少ない」 「 1:こうした感情を持つ人はいない」で回答を求めた。

3  【分析 1 】小学校教師の「協働意識」の検討

( 1 )結果

 ① 「教師の協働意識尺度」の信頼性と妥当性の検討

 はじめに、 「教師の協働意識尺度」(23項目)の因子構造を検討するために、最尤法・

Varimax回転による因子分析を行った。その結果、どの因子にも十分な因子負荷量を 示さなかった10項目の質問を削除し、残った13項目を用いて再度、最尤法・Varimax 回転で因子分析を行った。その結果、.40以上の因子負荷量を示す項目を手掛かりに

4 因子が抽出された(表 1 )。

 因子Ⅰ( 5 項目)は、「チームで働くことで、多様な考えや新たな問題解決策が生 まれる」、 「チームで働くことで、同僚教師(先輩や後輩)からの新たな学びがある」等、

他の教師との協働によってもたらされる効果に関する内容を示しているため「チーム 効果意識」と命名した。因子Ⅱ( 4 項目)は、「チームで働くことで、思い通りに物 事が進まずに苦しさを感じる」、「チームで働くことで、異なった考えに折り合いをつ けることが難しく感じる」等、協働に対する否定と個業的意識に関する内容を示して いるため「個業的意識」と命名した。因子Ⅲ( 2 項目)は、「スクールカウンセラー を活用することで、教育効果の高まりを実感する」等、スクールカウンセラーの活用 という具体的協働場面に関する意識を示しているため、「スクールカウンセラー活用 意識」と命名した。因子Ⅳ( 2 項目)は、「地域人材を活用することで、教育効果の 高まりを実感する」等、地域人材の活用という具体的協働場面に関する意識を示して いるため「地域人材活用意識」と命名した。因子分析によって抽出された 4 つの因子 を手掛かりに本尺度の内容的妥当性について、元小学校校長 1 名、現職小学校教師 2 名、教職大学院生 2 名、心理学を専門とする大学院教授 1 名で検討した。その結果、

小学校教師の「協働意識」を測定する尺度として、概ね適切であると判断した。

(5)

 次に、尺度の信頼性を検討するために、各因子ごとにCronbachのα係数を算出し た。その結果、α係数は、因子Ⅰは.79、因子Ⅱは.71、因子Ⅲは.76、因子Ⅳは.65で あった。因子Ⅳについては、項目数が少ないこともありα係数も若干低めであるが、

本尺度は概ね信頼性が確保されたと判断した。

 ② 「教師の協働意識」尺度の下位尺度得点の性別比較

 男性と女性の「協働意識」の差を検討するため、各因子ごとの得点の平均値(因子 合計得点を項目数で除した)をt検定により比較した。その結果、因子Ⅱの「個業的 意識」のみ、男性の平均値が2.38(SD.52)、女性の平均値が2.25(SD.48)であり統計 的有意差が認められた(t =2.16,df =290,p<.05)。つまり、男性は女性よりも「個 業的意識」が高いことが示された(表 2 )。一方、「チーム効果意識」「スクール・カ ウンセラー活用意識」「地域人材活用意識」の各因子については、男性と女性の平均 値に統計的有意差は認められなかった。

 ③ 「教師の協働意識」尺度の下位尺度得点の年齢別比較

 教師の年齢別による「協働意識」の差を検討するため、各因子ごとの得点の平均値

(因子合計得点を項目数で除した)を一要因分散分析で比較した。その結果、因子Ⅱ の「個業的意識」のみ、F(3,288)=4.05となり、年齢による統計的有意差が認められ た(p<.01)。さらにTukeyのHSD検定による多重比較を行った結果、30代の「個業 的意識」因子の平均値は2.42(SD.50)、20代は2.17(SD.53)であり、30代の「個業的 意識」下位尺度得点は20代よりも統計的に有意に高いことが分かった(p<.01)。一方、

「チーム効果意識」「スクール・カウンセラー活用意識」「地域人材活用意識」の各因 表 1  「教師の協働意識」尺度の因子負荷量行列(最尤法・Varimax回転)

項  目 因子Ⅰ 因子Ⅱ 因子Ⅲ 因子Ⅳ 共通性

1.チーム効果意識( 5 項目)α係数= .789

 チームで働くことで、多様な考えや新たな問題解決策が生まれる。

 チームで働くことで、同僚教師(先輩や後輩)からの新たな学びがある。

 チームで働くことで、職場全体の一体感や連帯感を感じる。

 学年で協力して取り組むことで、教育効果の高まりを実感する。

 チームで働くことで、業務量が分散されて自分の負担が減る。

2 .個業的意識( 4 項目)α係数= .712

 チームで働くことで、思い通りに物事が進まずに苦しさを感じる。

 チームで働くことで、異なった考えに折り合いをつけることが難しく感じる。

 チームで働くことで、会議や打ち合わせが増えて多忙感や負担感を感じる。

 学年として、指導方法や学級経営のあり方をそろえることに苦しさを感じる。

3 .スクールカウンセラー活用意識( 2 項目)α係数= .756  SCを活用することで、教育効果の高まりを実感する。

 SCの活用において、目的が明確になると多忙感や負担感を感じない。

4 .地域人材活用意識( 2 項目)α係数= .647

 地域人材を活用することで、教育効果の高まりを実感する。

 地域人材の活用において、目的が明確になると多忙感や負担感を感じない。

.805 .765 .635 .563 .446

-.214 -.185 -.128 -.074

.194 .103

.145 .299

-.141 -.154 -.197 -.128 -.180

.753 .712 .529 .436

.048 -.134

-.183 -.063

.050 .088 .127 .154 .017

-.055 -.015 .023 -.052

.977 .586

.173 .211

.082 .016 .190 .080 .166

-.033 -.031 -.151 -.050

.070 .317

.956 .422

.677 .618 .495 .364 .260

.617 .543 .320 .201

.999 .472

.316 .999 因子負荷量の 2 乗和

寄与率(%)

累積寄与率(%)

2.415 18.574 18.574

1.734 13.341 31.915

1.429 10.990 42.905

1.303 10.023 52.928 .

(6)

子については、年齢群の平均値に統計的有意差は認められなかった(表 3 )。

 ④ 「教師の協働意識」に関する性別×年齢別グループ間の平均値の比較

 「教師の協働意識」の性差及び年齢差の検討から、教師の「個業的意識」に特徴的 な結果が認められたため、「教師の協働意識」が、性別及び年齢ごとにどのような得 点分布を描くか、さらに分析を進めた。その際、 4 つの因子を一括りにし、「協働意 識総合得点」として、平均値を求めた。具体的には、因子Ⅱ「個業的意識」は、協働 に関する否定的意識と捉えることができる。一方、因子Ⅰ「チーム効果意識」、因子

Ⅲ「スクールカウンセラー活用意識」、因子Ⅳ「地域人材活用意識」は、協働に関す る肯定的意識と捉えることができる。そこで、因子Ⅱ「個業的意識」のみ逆転項目と し、 4 つの下位尺度得点を合算し、平均値を求めた(表 4 )(表 5 )。

 続いて、男女別に「教師の協働意識」総合得点の年齢差を検討するため、一要因分 散分析による比較を行った。その結果、男性の場合は、F(3,101)=.32となり、年齢 による有意差は認められなかった。一方、女性の場合は、F(3,183)=2.90となり、年 齢による有意差が認められた(p<.05)。さらに、TukeyのHSD検定による多重比較 を行った結果、20代女性の平均値は3.25(SD.42)、30代女性は3.05(SD.41)となり、

30代は20代よりも「協働意識」総合得点が有意に低いことが認められた(p<.05)(図 1 )。女性は男性と比べて、「チーム」での協働を肯定的に見る傾向が強いにもかかわ らず、30代女性に限り、何らかの要因によって協働意識レベルを著しく低くさせてい ることが示された。

表 2  「教師の協働意識」尺度の下位尺度得点の性別比較 ( t 検定の結果)

N=105 男性 M ( SD )

N=187 女性

M ( SD ) t 値 チーム効果意識 3.30(.35) 3.22(.38) 1.57 個業的意識 2.38(.52) 2.24(.48) 2.16*

SC活用意識 2.82(.66) 2.93(.67) 1.35 地域人材活用意識 2.87(.59) 2.96(.58) 1.28

*p<.05

表 3  「教師の協働意識」尺度の下位尺度得点の年齢別比較 (分散分析の結果)

意識 20代

M ( N=87 SD )

N=103 30代 M ( SD )

N=47 40代 M ( SD )

50・60代

M ( N=55 SD ) F 値 多重比較 チーム効果 3.24(.38) 3.24(.35) 3.30(.40) 3.24(.36) .31 n.s.

個業的 2.17(.53) 2.42(.50) 2.28(.40) 2.27(.50) 4.05** 30代>20代 SC活用 2.90(.70) 2.88(.69) 2.93(.66) 2.85(.58) .93 n.s.

地域人材活用 2.98(.61) 2.84(.56) 2.96(.64) 2.96(.51) 1.10 n.s.

**p<.01

(7)

( 2 )考察

 ① 「教師の協働意識尺度」の信頼性と妥当性

 本研究では、小学校教師を対象に職場における「協働意識」を調べるために、新た に「教師の協働意識尺度」を作成した。その際、教師の教育活動における協働場面を 想定して、①チームで働くことに関する長所と短所の認識、②学年教師集団における 協働、③スクール・カウンセラーとの協働、④地域人材(ゲストティーチャー・保護 者等)との協働の 4 つの観点から23の質問項目を作成した。因子分析の結果、因子Ⅰ

「チーム効果意識( 5 項目)」、因子Ⅱ「個業的意識( 4 項目)」、因子Ⅲ「スクール・

カウンセラー活用意識( 2 項目)」、因子Ⅳ「地域人材活用意識( 2 項目)」の 4 因子 構造(全13項目)となった。この結果は、因子Ⅰ「チーム効果意識」および因子Ⅱ「個 業的意識」は、当初想定していた①「チームで働くことに関する長所と短所の認識」

に相当する。また、②「学年教師集団との協働」を 1 つの因子として想定していたが、

因子分析の結果 1 つの因子とはならなかった。これは、学校における協働に対する肯 定的認知と否定的認知が、因子Ⅰ「チーム効果意識」と因子Ⅱ「個業的意識」にそれ ぞれ分かれて集約されたものと考えられる。そのため、本研究で作成した「教師の協 働意識尺度」は、概ね当初予想していた因子構造を示しており、小学校教師の協働意 識を測る尺度としてふさわしいと判断した。

 ② 「教師の協働意識」の性差

 本研究では、「協働意識」の 4 つの下位尺度の中で、唯一「個業的意識」のみ、男 性が女性に比べて統計的有意に高い値を示し、性差がみられた。これまでの先行研究 では、例えば中学校教師を対象とした被援助志向性(他者に援助を求める態度)に関 する研究で、男性は女性より被援助志向性が統計的に有意に低いことが報告されてい る(田村・石隈,2001)。また、小学校教師を対象とした被援助志向性に関する研究 でも、男性は女性より被援助志向性が低いこと(統計的有意傾向)が報告されている

(貝川・鈴木,2006)。これらの被援助志向性に関する研究で示された結果と同様に、

表 4  「教師の協働意識」尺度得点(平均値)の年齢別比較 (男性の場合)

N=29 20代 M ( SD )

N=49 30代 M ( SD )

N=17 40代 M ( SD )

50・60代

M ( N=10 SD ) F 値 多重比較 協働意識 3.18(.43) 3.11(.32) 3.09(.27) 3.12(.40) .318 n.s.

表 5  「教師の協働意識」尺度得点(平均値)の年齢別比較 (女性の場合)

N=58 20代 M ( SD )

N=55 30代 M ( SD )

N=30 40代 M ( SD )

50・60代

M ( N=44 SD ) F 値 多重比較 協働意識 3.25(.42) 3.05(.41) 3.23(.35) 3.16(.34) 2.90* 20代>30代

*p<.05

(8)

本研究でも男性は女性と比較して、誰かの力に頼るのではなく、自分の考えや力で教 育活動を進めたいという個業的意識が高いことが示された。しかしながら、「チーム 効果意識」「スクール・カウンセラー活用意識」「地域人材活用意識」については、性 差はみられなかった。

 ③ 「教師の協働意識」の年齢差

 年齢別比較において統計的有意差が認められたのは、性別比較の結果と同様に「協 働意識」の 4 つの下位尺度の中で唯一「個業的意識」のみであった。とりわけ30代教 師に最も「個業的意識」が高いという特徴が見られた。この結果を解釈すると、30代 教師は一定の教職経験を重ね、中堅期キャリアへと移行する年代と考えられる。自分 で教育経験を重ね、成功体験を得ていく中で、児童理解や学級経営・学習指導・生徒 指導等の実践的能力が自分なりに確立されてくる年代でもある。そのため、30代教師 は自分の考えや独力で教育活動を進めたいという「個業的意識」が強まることが推察 される。また、30代は学級担任としての業務以外に、主要な校務分掌の中核を担う年 代でもある。「個業的意識」下位尺度の項目の一つである「チームで働くことで、会 議や打ち合わせが増えて多忙感や負担感を感じる」の平均値は、20代が2.39(SD.72)、

30代が2.74(SD.70)であった。さらにTukeyの多重比較を行うと、30代は20代と比 べて統計的有意差が認められた(p<0.1)(表 6 )。これらの結果から、20代は学級経 営のみに集中することができたが、30代は校内の様々な校務の負荷が増大し多忙感や 負担感が高まる年代であり、30代教師の「個業的意識」を一層高める要因になってい る可能性がある。

 一方、30代の「チーム効果意識」「スクール・カウンセラー活用意識」「地域人材活

3.18

3.11 3.09 3.12

3.25

3.05

3.23

3.16

2.95 3 3.05 3.1 3.15 3.2 3.25 3.3

2030405060

年齢

男性 女性

図 1  男女別・年齢別「教師の協働意識」尺度得点(平均値)

(9)

用意識」の各下位尺度得点の平均値は他の年齢群と大差なく、チームとして働くこと の効果を肯定的に受け止めていることもわかる。これらの結果を総合すると、30代の 教師は、チームとして働くことの効果を概ね肯定的に認知しつつも、校務分掌の仕事 の増加に伴う多忙感や教育経験の蓄積を背景とした「個業的意識」の高まりとの狭間 で、「チームとしての学校」という喫緊の課題について葛藤している可能性が考えら れる。

 ④ 30代女性の「教師の協働意識」の特徴とサポートの必要性

 本研究の結果、女性は概ね男性よりも「教師の協働意識」が高いことが示された。

しかしながら、例外として女性は20代から30代に移行するときに一端著しく「教師の 協働意識」が低下することが明らかになった。この結果について解釈すると、多くの 30代女性は、それぞれ様々な家庭生活の事情を抱えており、それが大きく影響してい るのではないかと考えられる。つまり、30代の女性は、子育て世代であり、育児に手 のかかる就学前や小学校段階の子どもがいる可能性がある。教師の仕事と家事・育児 の両立に物理的時間の面で苦戦している可能性がある。そのような状況の中で、日常 的に多忙感・負担感を強く感じている30代の女性教師は、学校における「教師の協働 意識」が低いというよりも、物理的時間の制約のために、職場で他の教師と協働した くても協働できない事情があり、表面上「教師の協働意識」が低下しているように見 えている可能性がある。もしそうであるならば、30代の女性教師がチームで教育活動 をしやすくする何らかの具体的な手だてを学校現場で工夫する必要があるだろう

4  【分析 2 】小学校教師の「組織感情」の検討

( 1 )結果

 ① 「組織感情尺度」の信頼性と妥当性の検討

 「組織感情尺度」(20項目)の因子構造を検討するために、最尤法・Varimax回転に よる因子分析を行った。その結果、どの因子にも十分な因子負荷量を示さなかった 6 項目の質問を削除し、残った14項目を用いて再度、最尤法・Varimax回転による因子 分析を行った。その結果、.50以上の因子負荷量を示す項目を手掛かりに、 2 つの因

表 6  「教師の協働意識」尺度の項目別得点の年齢別比較 (分散分析の結果)

N=87 20代 M ( SD )

N=103 30代 M ( SD )

N=47 40代 M ( SD )

50・60代

M ( N=55 SD ) F 値 多重比較

【内容項目】

チームで働くことで、

会議や打ち合わせが 増えて多忙感や負担 感を感じる。

2.39(.72) 2.74(.70) 2.53(.62) 2.51(.69) 4.12** 30代>20代

**p<.01

(10)

子が抽出された(表 7 )。

 因子Ⅰ( 8 項目)は、「自分は結局一人であるという孤独な気持ち」「何をしてもど うせ変わらない気持ち」「お互いに踏み込まない、関わらない気持ち」等、孤独感・

沈滞感・不安感といった職場に広がるネガティブな感情に関する内容が示されてお り、「ネガティブ感情」と命名した。因子Ⅱ( 6 項目)は、「お互いが弱いところを補 い合っているという気持ち」「お互いに対するあたたかい気持ち」「同じビジョン、目 標に向かって頑張ろうという一体感」等、連帯感・安心感・高揚感といった職場に広 がるポジティブな感情に関する内容が示されており、「ポジティブ感情」と命名した。

因子分析によって抽出された 2 つの因子を手掛かりに本尺度の内容的妥当性につい て、元小学校校長 1 名、現職小学校教師 2 名、教職大学院生 2 名、心理学を専門とす る大学院教授 1 名で検討した。その結果、小学校教師の「組織感情」を測定する尺度 として、概ね適切であると判断した。

 次に、因子Ⅰ及び因子Ⅱの信頼性を検討するために、Cronbachのα係数を算出し た。その結果、因子Ⅰは .87、因子Ⅱは .86となり、尺度の内的整合性は高く信頼性 は十分であると判断した。

 ② 小学校教師の「組織感情」の性別比較

 男性と女性の「組織感情」の差を検討するため、各因子ごとの得点の平均値(因子 合計得点を項目数で除した)をt検定により比較した。その結果、因子Ⅰ「ネガティ ブ感情」は、男性の平均値が1.97(SD.36)、女性の平均値が1.98(SD.43)となり、統 計的有意差は認められなかった(t=.281,

df

=290,n.s.)。一方、因子Ⅱ「ポジティブ 感情」も、男性の平均値が2.98(SD.41)、女性の平均値が3.02(SD.45)となり、統計

表 7  「組織感情」尺度の因子負荷量行列(最尤法・Varimax回転)

項 目 因子Ⅰ 因子Ⅱ 共通性

1 .ネガティブ感情( 8 項目) α係数= .873  自分は結局一人であるという孤独な気持ち  何をしてもどうせ変わらない気持ち  お互いに踏み込まない、関わらない気持ち  相手を否定する気持ち

 気が重い、やる気がでない気持ち  相手を排除したいという気持ち

 この先どうなるかわからない不安な気持ち  相手が何を考えているかわからないという気持ち

2 .ポジティブ感情( 6 項目) α係数= .863  お互いが弱いところを補い合っているという気持ち  お互いに対するあたたかい気持ち

 同じビジョン、目標に向かって頑張ろうという一体感  一人ひとりの良さ、長所を認めようという意識  今の職場が楽しいという気持ち

 自分から進んでやってみようという気持ち

.745 .691 .665 .635 .620 .616 .548 .517

-.273 -.278 -.229 -.276 -.288 -.203

-.174 -.317 -.183 -.294 -.276 -.336 -.204 -.280

.761 .706 .645 .641 .632 .621

.585 .578 .476 .490 .461 .492 .343 .346

.653 .575 .468 .488 .482 .426 因子負荷量の 2 乗和

寄与率(%)

累積寄与率(%)

3.616 25.826 25.826

3.248

23.203

49.029

(11)

的有意差は認められなかった(t=.832,

df

=290,

n.s.

)(表 8 )。つまり、職場に広が る感情である「組織感情」については、性差は認められなかった。

 ③ 小学校教師の「組織感情」の年齢別比較

 年齢別による「組織感情」の差を検討するために、各因子ごとの得点の平均値(因 子合計得点を項目数で除した)を一要因分散分析により比較した。その結果、因子Ⅰ

「ネガティブ感情」および因子Ⅱ「ポジティブ感情」の年齢別平均得点は、共に統計 的有意差は認められなかった(表 9 )。つまり、職場に広がる感情である「組織感情」

については、年齢差がなかった。

( 2 )考察

 ① 「組織感情尺度」の信頼性と妥当性

 この尺度を開発した高橋(2009)は、企業における「組織感情」を「①イキイキ感 情( 5 項目)」「②あたたか感情( 5 項目)」「③ギスギス感情( 5 項目)」「④冷え冷え 感情( 5 項目)」の 4 つの観点でとらえている。「①イキイキ感情」は、職場の主体感 や連帯感を、「②あたたか感情」は職場の支え合い感や認め合い感を示しており、い ずれもポジティブな「組織感情」を示している。一方、「③ギスギス感情」は、職場 の苛立ち感や不信感を、「④冷え冷え感情」は、職場の沈滞感やあきらめ感を示して おり、いずれもネガティブな「組織感情」を示している。本研究では、小学校教師を 対象に質問紙調査を行い因子分析をした結果、「ネガティブ感情( 8 項目)」と「ポジ ティブ感情( 6 項目)」の 2 因子構造になった。因子Ⅰ「ネガティブ感情」は、「③ギ スギス感情」と「④冷え冷え感情」を融合したものと考えられ、因子Ⅱ「ポジティブ 感情」は、「①イキイキ感情」と「②あたたか感情」を融合させたものと考えられる。

「ネガティブ感情」と「ポジティブ感情」は正反対の「組織感情」であり大変シンプ 表 8  「組織感情」尺度得点(平均値)の性別比較 (t 検定の結果)

N=105 男性 M ( SD )

N=187 女性

M ( SD ) t 値 ネガティブ感情 1.97(.36) 1.98(.43) .28 ポジティブ感情 2.98(.41) 3.02(.45) .83

n.s.

表 9  「組織感情」尺度得点(平均値)の年齢別比較 (分散分析の結果)

感情 20代

M ( N=87 SD )

N=103 30代 M ( SD )

N=47 40代 M ( SD )

50・60代

M ( N=55 SD ) F 値 多重比較 ネガティブ 1.94(.48) 2.00(.39) 1.97(.38) 1.99(.37) .41 n.s.

ポジティブ 3.01(.55) 3.00(.40) 3.01(.42) 2.99(.32) .04 n.s.

(12)

ルであるが、小学校教師の「組織感情」を捉えるには有益であり妥当性があると考え た。信頼性係数も十分であるため、小学校教師の「組織感情」を測る尺度としてふさ わしいと判断した。

 ② 「組織感情」の性差・年齢差

 本研究では、小学校教師の「組織感情」については、性差、年齢差は共に認められ なかった。この結果は、小学校教師の「組織感情」に対する意識は、男女で特有のと らえ方の違いはなく、加えて教職経験の長短にもあまり影響を受けないと解釈でき る。この結果から、もし職場におけるネガティブな「組織感情」を意図的にポジティ ブな「組織感情」に変えるために管理職やミドルリーダーが学校組織マネジメントを 工夫した場合には、性別や経験年数に関係なく、すべての教師によい影響を及ぼす可 能性が期待できる。

5  【分析 3 】 小学校教師の「協働意識」と「組織感情」の関連

( 1 )結果

 ① 「教師の協働意識」と「組織感情」の相関分析

 はじめに、全データ(292名分)を用いて「教師の協働意識」の下位尺度(因子Ⅰ「チー ム効果意識」、因子Ⅲ「スクールカウンセラー活用意識」、因子Ⅳ「地域人材活用意識」)

と「組織感情」の下位尺度(因子Ⅰ「ネガティブ感情」、因子Ⅱ「ポジティブ感情」)

のそれぞれの相関を調べるため、Pearsonの積率相関係数を算出した。その結果、因 子Ⅰ「チーム効果意識」については、「ネガティブ感情」との間に負の相関が認めら れ(r = -.39,p<.001)、「ポジティブ感情」との間に正の相関が認められた(r =.40,

p<.001)。また、因子Ⅲ「スクールカウンセラー活用意識」については、「ネガティ ブ感情」との間に負の相関(r = -.24,p<.001)、「ポジティブ感情」との間に正の 相関が認められた(r = .34,p<.001)。さらに、因子Ⅳ「地域人材活用意識」につい ては、 「ネガティブ感情」との間に負の相関が認められ(r = -.24,p<.001)、 「ポジティ ブ感情」との間に正の相関が認められた(r = .27,p<.001)。

 次に、性差の見られた「教師の協働意識」の下位尺度(因子Ⅱ) 「個業的意識」と「組 織感情」の下位尺度(「ネガティブ感情」と「ポジティブ感情」)の相関を調べるため、

男女別に分析した。男性の場合、因子Ⅱ「個業的意識」は、「ネガティブ感情」との 間に中程度の正の相関がみられ(r = .42,p<.001)、「ポジティブ感情」との間には 相関がみられなかった。一方、女性の場合は、因子Ⅱ「個業的意識」は、「ネガティ ブ感情」との間に中程度の正の相関がみられ(r = .42,p<.001)、「ポジティブ感情」

との間に負の相関がみられた(r = -.37,p<.001)(表10)。これらの結果を整理す ると女性は、 「組織感情」がネガティブな場合には「個業的意識」が強まり(正の相関)、

逆にポジティブな場合には「個業的意識」が弱まるという負の相関が見られ、「組織

(13)

感情」と「個業的意識」が直接的に関連していることがわかった。一方、男性は「組 織感情」がネガティブな場合には「個業的意識」が強まる傾向(正の相関)は女性と 同じだが、ポジティブな「組織感情」と「個業的意識」の間には負の相関が示されず、

無相関であった。この結果は、男性教師の場合には、例え自分の職場の雰囲気をポジ ティブに捉えている教師でも、他の教師との協働や連携よりも、自分の考えや自分一 人の力で教育活動を進めていきたいという「個業的意識」の強い教師がいる可能性が あることを示していると考えられる。

 ②  「チーム効果意識」下位尺度得点と「ポジティブ感情」下位尺度の各質問項目 得点の相関分析

 「チーム効果意識」下位尺度得点と「ポジティブ感情」下位尺度の各質問項目得点 の相関分析を行った結果、全ての質問項目について正の相関が認められた。中で も.30以上の相関係数が示された 2 つの質問項目が抽出された。具体的には、「お互い が弱いところを補い合っているという気持ち」(r =.43,p<.001)、 「一人ひとりの良さ、

長所を認めようという意識」(r =.33,p<.001)であった。これらの結果は、教師同 士がお互いの弱みについて理解し補い合おうという「相互援助」と、それぞれの教師 が有する良さや強みを認め合おうとする「相互承認」が「チーム効果意識」を高める ことを示していると考えられる。

表10 「教師の協働意識」と「組織感情」の各下位尺度間の相関分析結果

<全データの場合>

ネガティブ感情 ポジティブ感情 チーム効果意識

スクールカウンセラー活用意識 地域人材活用意識

-.29***

-.24***

-.24***

.40***

.34***

.27***

  N=292 ***p<.001

<男性の場合>

ネガティブ感情 ポジティブ感情

個業的意識 .42*** -.14

  N=105 ***p<.001

<女性の場合>

ネガティブ感情 ポジティブ感情

個業的意識 .42***  -.37***

  N=187 ***p<.001

(14)

 ③  「個業的意識」下位尺度得点と「ネガティブ感情」下位尺度の各質問項目得点 の相関分析

 「個業的意識」下位尺度得点と「ネガティブ感情」下位尺度の各質問項目得点の相 関分析を男女別に行った結果、男女共に全ての質問項目について正の相関が認められ た。中でも.35以上の相関係数が示された質問項目が抽出された。男性の場合は、「何 をしてもどうせ変わらないという気持ち」(r =.40,p<.001)の 1 項目、女性の場合は、

「相手を排除したいという気持ち」(r =.39,p<.001)「自分は結局一人であるという 孤独な気持ち」(r =.38,p<.001)の 2 項目であった。つまり、男性の場合は、教師 一人の力では何をしても職場が変わらないという「あきらめ」「無力感」が、女性の 場合は、職場の同僚に対する「排他的態度」「孤独感」が、教師の「個業的意識」を 強めることを示していると考えられる。

( 2 )考察

 ① 小学校教師の「協働意識」と「職場感情」の関連、

 本研究の結果、チームとして働くことを効果的と捉える認知と、職場の雰囲気をポ ジティブに捉える認知は、明らかな相関があることが示された。一方、他の教師との 協働よりも単独での教育活動を望む教師は、職場の雰囲気をネガティブに捉える傾向 にあり、ネガティブな感情が職場全体に広がっていくと、チームで働くことを否定的 に捉え、「個業的意識」が高まることが示された。ただし、男性教師の場合には、例 え自分の職場をポジティブに捉えている教師でも、女性に比べて自分の考えや自分一 人の力で教育活動を進めていきたいという「個業的意識」がより強いことも確認でき た。

 教育現場では、生徒指導が困難を極め、学級経営が難しい状況に陥ったときでも、

管理職や同僚との関係が良好であれば、前向きに乗り越えられるとの言葉をよく教師 達から聞く。このような事実は、職場の雰囲気をよりポジティブにつくり上げていく ことが、「チーム学校」の前提となる「教師の協働意識」を高めていくことへとつな がる可能性を示している。逆に、ネガティブな感情が広がる職場の雰囲気では、「教 師の協働意識」を低下させることも容易に想像できる。

 本研究では、「職場感情」は性別や経験年数の違いによる差がないことが示された。

そのため、学校の全教職員が職場の雰囲気をより良くしていこうとする意識を高める ことが、「チーム学校」構築の重要な促進要因になることが改めて確認された。

 ② 「教師の協働意識」を促進する「相互援助」と「相互承認」

 水野・中林・佐藤(2011)は、教師のチーム援助志向性を高めチーム援助を導入し

ていくためには、「被援助志向性」を高めていくことと、「協働的な職場雰囲気」が重

要であると報告している。教師同士がお互いの弱さを理解し補い合うためには、教師

自らが管理職や同僚に対して積極的に援助を求めていくこと、また、援助を求めやす

(15)

い職場雰囲気をつくっていく必要がある。

 チーム援助を進める際、教師の物事の感じ方や捉え方は人それぞれであるため、そ れがチームでの取り組みを難しくする要因になることがある。一方、全ての教師が同 じ見方や価値観ではないことが、逆に多様な子どもたちに対して多角的なアセスメン トを可能にし、多面的な援助サービスを提供することにつながると考えることもでき る。これらのことから、個々の教師の価値観や教育観を大切にしつつ、チームのメン バーを互いに尊重し合える「チームとしての学校」を意図的につくっていく必要があ る。その際、チーム機能を高める望ましい組織づくりや職場雰囲気の醸成には、教師 同士の「相互援助」や「相互承認」がカギを握っていると言える。

 ③ 「教師の協働意識」を抑制する「無力感」「排他的態度」「孤独感」

 日本の小学校教育における学級担任制度の歴史は、教師の相互不干渉や無関心とい う負の側面を生み出した。この点について紅林(2007)は、他国に比べ日本の教師は、

学級経営や授業実践の交流に消極的で、学級王国的な性格がより深いこと。そして、

学級王国は過去の産物ではなく、今なお進行していると指摘している。一方、これら の原因は、教師個人の問題だけではなく、学校現場の多忙化が背景としてあることを 指摘している。

 近年、学校組織は、校長の権限強化、副校長・主幹教諭・指導教諭などの中間管理 職の導入により、統制型組織へと転換している。「鍋蓋型」と言われ、閉鎖的で自己 完結型だった過去の学校組織とは大きく異なる組織構造であり、校長の学校経営方針 のもと、学校という組織体としての教育活動がより強く求められるようになった。し かしながら、露口(2013)は「統制型」の課題として「教員の側からの発案が具体化 するまでに相当の時間を要すること」や「決定への参加抑制に伴う教員のモチベーショ ンが低下」を指摘している。本研究の分析結果においても、チーム機能を阻害するも のとして、職場の「無力感」「排他的態度」「孤独感」などのネガティブ感情が協働的 な意識よりも「個業的意識」を強めるとの知見が示された。今後、教育効果のある

「チーム学校」を構築していく上で、これらの課題を認識しておくことは、大変重要 である。

6  総合的考察

( 1 )教育実践への示唆

 ① 時間確保のための学校組織マネジメントの工夫

 児童へのきめ細やかな指導・援助を実践するためには、打ち合わせの時間の確保が

不可欠である。この点について石隈(1999)は、援助チームの結成と維持にとって最

大の課題は「時間の確保」と指摘している。また、野口・瀬戸(2015)も、教師がチー

ム援助に困難を感じる要因の一つに「時間の確保」をあげている。そこで、管理職が

(16)

積極的に校務改善をすすめ、教員の「時間の確保」のために校務のスリム化・効率化 や、会議の精選、短時間で効率的なチーム会議や打ち合わせの方法を各学校で工夫し 作り上げていく必要がある。

 ② スタンダード教育と教師の個性とのバランス

 近年、教育の質を保障するために教育方法のスタンダードを確立し、全教職員が共 通理解を図る取り組みが各学校で多く見られるようになった。具体的には、全学級で 統一した規律に基づいて学級経営を行うことや、共通の教材や授業展開に基づく授業 の実践等があげられる。このような「スタンダード教育」の確立は、学習指導や生活 指導、幼保小連携や小中連携の円滑な接続、若手教員の人材育成等、様々な側面にお いて利点もある。しかしながら、本研究の結果では、30代教師の「個業的意識」が他 の年齢群よりも高いことが示された。この結果は、過度な「スタンダード教育」の縛 りが、教師一人ひとりの個性や強みを制限し、とくに教師として自信をもちはじめる 30代教師のストレスになっている可能性も考えられる。

 この点について大瀬・佐藤(2003)は、学校組織で一番大事なことは、一人一人の 教師が「専門家」として「自律」することであるが、現実は教師間で個性をつぶし合 うシステムになっていると指摘している。今後は、各学校の実態に応じて、必要最低 限の「スタンダード教育」を確立した上で、各教師の個性や強みが発揮できるような バランスのよい組織マネジメントが必要である。教師同士が、互いに教育の専門家と して自律し、それぞれの教育観や指導方法を相互に認め合うという良い意味でのバラ ンス感覚が教育現場に求められる。

( 2 )本研究の限界と今後の課題

 本研究は、教師の内的心情や人間関係に関わる内容を扱うデリケートな調査であっ た。現在、職場の人間関係に悩んでいたり、職場雰囲気をネガティブに受けとめてい る教師は、調査回答を拒否した可能性もある。有効回答数は20校で292名分であり、

分析データ数としてはある程度の量を確保することはできたが、学校ごとに回収率の 偏りもみられたため、分析結果の解釈は慎重でなければならない。また本研究は、量 的データのみに基づいた分析及び解釈であるため、今後は面接調査等による質的デー タも収集し、教育効果のある「チーム学校」のあり方についてより深い分析をする必 要がある。

引用文献

石隈利紀(1999)『学校心理学―教師・スクールカウンセラー・保護者のチームによ る心理教育的援助サービス―』誠信書房

井内昭子・西山久子(2014)「チーム援助の実践が学校全体の適応援助体制に及ぼす

(17)

効果の検討」『日本教育心理学会総会発表論文集』,56,547.

貝川直子・鈴木眞雄(2006)「教師バーンアウトと関連する学校組織特性,教師自己 効力感」『愛知教育大学研究報告教育科学編』,55,61-69.

北神正行(2014)「《チーム》を機能させて個々を磨く」『教職研修』,42,21-23.

紅林伸幸(2007)「協働の同僚性としての《チーム》―学校臨床社会学から―」『教育 学研究』,74( 2 ),174-188.

水野治久・中林浩子・佐藤博子(2011) 「教師の被援助志向性,職場雰囲気が教師のチー ム援助志向性に及ぼす影響」『日本教育心理学会総会発表論文集』,53,504.

文部科学省(2015)『中央教育審議会:チームとしての学校の在り方と今後の改善方 策について(答申)』

元吉忠寛(2011)「よいチームの条件―社会心理学からの視点―」『児童心理』,65,

35-40.

野口智世・瀬戸美奈子(2015)「チーム援助の困難さに対する教師の意識 ―小学校教 師への調査から―」『三重大学教育学部研究紀要』,66,159-164.

大瀬敏昭・佐藤学(2003)『学校を変える―浜之郷小学校の 5 年間―』小学館 高木展郎・三浦修一・白井達夫(2015)『<チーム学校>を創る』三省堂 高橋克徳(2009)『職場は感情で変わる』講談社

田村修一・石隈利紀(2001)「指導・援助サービス上の悩みにおける中学校教師の被 援助志向性に関する研究―バーンアウトとの関連に焦点をあてて―」『教育心理学 研究』,49,438–448.

露口健司(2013)「学校の求められている<組織>とは何か」『教職研修』,41,18-

21.

(18)

Relationship between Elementary School Teachers’

Collaborative Consciousness and Organizational Emotion

— Focusing on Organizational Management to Build a “Team School” —

Makoto MIYANISHI Shuichi TAMURA

The purpose of this study is to understand the actual conditions of “collaborative consciousness” and “organizational emotion” of elementary school teachers, clarify the factors that enhance and hinder team function, and consider the ideal way of the organizational management necessary to promote "team school". We conducted a questionnaire survey on teachers from 20 public elementary schools in the metropolitan area. As a result, it was shown that (1) the average value of “individual consciousness” was statistically significantly higher for men than for women, and statistically significantly higher for men in their 30s than in their 20s. (2) the average value of “cooperative consciousness” was statistically significantly lower in women in their 30s than in women in their 20s. (3) there was no statistically significant difference in the average value of “organizational emotion” due to gender or age differences.

(4) there is a positive correlation between “team effect consciousness” and “positive emotion”, and a positive correlation was shown between “individual consciousness” and “negative emotion”. Based on these results, this study discussed the organizational management necessary to promote “team school”.

Keywords: elementary school, teachers, collaborative consciousness, organizational emotion, team school, organizational management

参照

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