第11回 麻布大学 生殖・発生工学セミナー 79
第11回麻布大学 生殖・発生工学セミナー
第ll回麻布大学生殖・発生工学セミナー:
「生殖とミトコンドリア」
柏崎 直巳,伊藤 潤哉
麻布大学獣医学部動物繁殖学研究室ミトコンドリアは,細胞のエネルギー産生の中核 をなし,核ゲノムとは異なるmtDNAを有し,母性遺 伝によって受け継がれています。近年,生殖系列細 胞におけるミトコンドリアの役割が注目されており
ます。精子においてはその中片耳に局在して精子運 動性に関与します。受精の際には卵母細胞へ精子由 来のミトコンドリアが持ち込まれますが,その後に は排除されます。他にも胚の初期発生,卵母細胞の 老化,活性酸素種,ミトコンドリアに起因する病気
など,その重要な機能が注目されております。さら に生殖工学においては,核移植によって作出された 再構築胚(クローン胚)でmtDNAがヘテロプラズミ ーの状態になり,その後の発生能との関連やその状 態がいつまで維持されるのかなど,たいへん興味深 いものがあります。そこで,本年度のセミナーでは,
生殖系列におけるミトコンドリアに着目することに いたしました。
講演1として,この分野の第一人者である米川先 生に「ミトコンドリアDNAの遺伝学1母性遺伝とボ
トルネック効果」をご講演していただきます。通常,
細胞内のミトコンドリアは1種のmtDNAしか存在し ません。この現象は「ホモプラズミー」あるいは
「同質性」とよばれ,この現象を維持する機構とし て生殖系列における「ボトルネック効果」の存在が 論争されています[1]。米川先生の研究グループは,
マウス生殖系列における細胞あたりのミトコンドリ ア数の発生時系列的推移を丹念に調べられておりま
す。
講演Hとしては,中田先生に「ミトコンドリアゲ ノム変異の逆遺伝学:ミトコンドリア呼吸機能の破 綻による病態病理」を,お願いしております。この 研究では,異常ミトコンドリアのモデルマウス「ミ トマウス」[2]が生殖工学的手法によって作出され,
この「ミトマウス」から多様な病態の発症機構精に ついての情報がえられております。さらに,この
「ミトマウス」の雄性不妊についても,このセミナ ーに参加される皆様にとってたいへん興味深いもの であると思います。
今後とも,益々のご指導,ご鞭捷を賜りますよう,
よろしくお願い申し上げます。
参考文献
1)Cree LM.ε∫αム,八厩Gθ τα40,249−54(2008).
2)Inoue K.αα1.,Nα∫Gε z8∫,26,176−181(2000).