経営 と経済 第
86巻 第
2号
2006年
9月
CFROI
会計 と企業価値評価
上 野 清 貴
Abstract
Thepurposeofthispaperistostudythecashflowreturnoninvest‑ ment(CFROI)accountingfrom aviewpointofcorporatevaluationand toclarifythecharacteristicsandthegrounds.Thecharacteristicsand thegroundsofCFROIaccountingareasfollows.(1)TheCFROIac‑ countingistherealpresentvalueaccounting.(2)IntheCFROIac‑ counting,theinvestmentvaluationinthefutureisdirectlydoneby CFROIpredictionandreal‑assetgrowthrateprediction.(3)Thedis‑ countrateofCFROIaccountingisthemarketrelateddiscountrate,the futureorienteddiscountrate,andthediscountrateinwhichthefeed‑
backsystem isinherent.Themostimportantcharacteristicofthe CFROIaccountingisthatsincetheinvestmentvaluationinthefutureis directlydoneandvaluationoftheexistingassetsisalsodirectlydone, thecorporatevalueistherealvalueonlybyindependentvariables.
Keywords:CFROI,corporatevaluation,competitivelifecycle,mar‑ ketdiscountrate
Ⅰ
は じ め に
前稿では,キ ャッシ ュ ・フロー投資利益率
(CFROI,cashflow returnon investment)を指標 とする会計の企業業績評価機能 について論述 し,その特
質 および問題点を究明 した。そ こでは,
CFROI会計の特質 および利点を, 会 計 シ ステム,会 計数値 比較 お よび会計主体 の観 点 か ら解 明 し, さ らに
CFROI会計の問題点をその計算構造的側面 および
CFROIと企業価値 との 関係の側面 か ら指摘 した。そ して,それ らの結論 を要約す ると,次の ように なった。
(1) CFROI
会計は,一方では個別企業の レベル において
CFROIを計算 する段階で,他方では全企業の レベルにおいて市場割引率を計算する段 階で,会計数値が相互に関連す る総合会計システムである。
(2) CFROI
会計は,会計システム的に実質取得原価会計であ り,そ こに おける会計数値 は, 実質投資利益率 とい う比率で表 されることによって, すべての状況に対 して期間比較 および企業間比較 を可能 にする。
(3) CFROI
会計は,一方では投資者 に帰属す るフ リー ・キ ャッシ ュ ・フ ロー概念を重視 し,他方では投資者の一般購買力の維持 を重視する,投 資者中心思考の会計システムである。
(4) CFROI
会計は,平均思考 を有 してお り,現在のキ ャッシ ュ ・フロー が将来のキ ャッシ ュ ・フローにも妥当する とい う非現実的な仮定 によっ てお り,さらに,論理 的な意味で真の業績評価であるか どうかは疑問で ある。
(5) CFROI
会計 は,比率性 を有 しているがゆえに,
CFROIの増加はそれ 自体,必ず しも企業価値 を増加 させた ことにはな らない。
これ らは
CFROI会計 を過去的な企業業績評価の観点か ら考察 した場合の
結論であ るが,
CFROI会計の機能はそればか りではない。 この会計は未来
的な企業価値評価梯能 も有 しているのである。過去的な
CFROI会計が従来
の会計システムに比 してい くつかの特質を有 していたの と同様 に,未来的な
CFROI会計 も企業価値評価 に関 して他の会計システムにはないい くつかの
特徴 を有 している。そ して, この評価手法を米国のコンサルティング会社で
あるホル ト社
(HoltValueAssociates)が現実に推進 しているのである。
CFROI
会計 と企業価値評価
3そ こで本稿では, この会計の重要性 に鑑み,
CFROIを企業価値評価の観 点か ら会計学的に考察 し,その特質および論拠 を明 らかにすることを 目的 と
している。本稿の内容は以下の とお りである。
(1)
まず,再確認の意味で
CFROI会計の概要を説 明 し, この考 えに基づ いて企業価値評価 が どの ように行われるのかを概説す る。
(2)
次 に,
CFROI会計 による企業価値評価 を具体的な数値例 に よって行 い,企業価値 を最終的に計算する。
(3)
これによって,企業価値評価 に関する
CFROI会計のほぼ全容が明 ら かになる と思われるので, これ らに基づいて,
CFROI会計を会計構造 的お よび会計思考的側面か ら検討 し,い くつかの観点か らこの会計シス テムの特質およびその論拠を明 らかにす る。
(4)
最後 に,
CFROI会計の若干の問題点を指摘するとともに,
CFROI会 計が企業価値評価 に果たす真の役割を究明 し,企業価値評価の方 向性を 示唆する。
Ⅱ cFROl会計による企業価値評価
CFROI
会計の考 えに基づいて企業価値評価 が どの ように行われ るのかを 説 明す ることが本節の 目的である。 これを行 うためには,まず
CFROIとは 何であ るかを知 ってお く必要がある。 これに関 しては,前稿で詳述 した とこ ろであ るが,本節の 目的を達成す るために,再確認の意味で改めて ここで概 説 してお くことにしよう。
1 CFRO
l会計の概要
CFROI
会計の提唱者であるマ ッデソによれば,
CFROIはまず企業業績を 表す経済的尺度であ り,企業が達成 した投資利益率
(ROI,returnoninvest‑ ment)を貨幣購買力単位の変化で修正 して求め られる。 この場合,
ROIは
内部収益率
(IRR,internalrateofreturn)であ り,プロジ ェク トにおける
各期のキ ャッシ ュ ・フローの現在価値合計 とそれに対す る投下資本が等 しく なるような収益率 として計算 され る。キ ャッシ ュ ・アウ トフロー とキ ャッシ
ュ ・イソフローは,同じ貨幣購買力単位で表 され,毎期の・ 一般物価水準の変 動が調整 される。経済的業績の測定はインフレ修正を必要 とする。そ うでな ければ,そのキ ャッシ ュの額は経済的業績 と貨幣単位変動の混合物 となって しまうか らである。 こうして,プロジ ェク トに対する企業の経済的業績は, 実質ベースで達成 された
ROIとなる
(Madden[
1999] p.14)0
かかる
CFROIを計算するためには,同 じ貨幣購買力単位および現在の貨 幣価値で表 された次の
4つの計算要素が必要 となる。
(1)
資産の耐用年数
(2)
資産総額 ( 償却資産および非償却資産)
(3)
これ らの資産の耐用年数 にわたって仮定 される期間的キ ャッシ ュ ・フ ロ‑
(4)
資産の耐用年数末期 における非償却資産の回収価額 これ らの計算要素の関係を図示する と,図1 の ようになる。
非償却資産の
回収価額
資産総額
図
1 CFRO
lの計算要素そ して,
CFROIは次式 によって計算 され, この式を満たす割引率 という ことにな る。
巨 CF t
∫
‑ ∑
t fi(1+CFRO
J)NDAL,
(
1+CF R O J )L(1)
ここで,Zは資産総額 ( 投下資本)
,I,は資産の耐用年数
,CFはキ ャッシ ュ
CFROI
会計 と企業価値評価
5・フロー,
NDAは非償却資産の回収価額 をそれぞれ表 している。
最後 に, この
CFROIは現在の貨幣価値 で表 された企業の実質資本 コス ト と比較 され
CFROIが資本 コス トを上回れば,企業は価値 を創造 してお り, 下回れば価値 を破壊 してい るとい うことになる。
CFROI会計では, この よ
うに して企業の業績評価 を行 うのである。
2
企業価値評価
それでは,かかる
CFROI会計の考 えに基づいて,企業価値評価 が どの よ うに行われるのかを次に見てい くことに しよう。
CFROI
会計 において ,企業 の価値 は一般 に次 の式 に よって表 され る
(Madden[1999]pp.65,110)0企業価値 キ ャッシ ュ ・フロー
1 +割引率 +非営業資産の実現可能価値
(2)すなわち,企業価値は将来の予測キ ャッシ ュ ・イソフロー とキ ャッシ ュ ・ アウ トフロー との差額である純 キ ャッシ ュ ・フローをある割引率で割引いた 現在価値 に非営業資産の売却時価 を加算 した もの となる。これ らは もちろん,
同じ購買力単位で表 され,毎期の一般物価水準の変動 が調整 され る。いわゆ る, インフレ修正が行われる。
このキ ャッシ ュ ・フローをマ ッデソはネ ッ ト受取キ ャッシ ュ
(NCR,net cashreceipt)と呼んでいるが, これは,彼 によれば,債権者 および株主の 双方 が請求権 を有するものである。企業 か ら見た場合,
NCRは,総キ ャッ シ ュ ・フローか ら総資本支出 と純運転資本の変動 か らなる再投資額 を控除 し た ものである。他方,資本提供者か ら見た場合,彼 らが手に入れるキ ャッシ
ェは,支払利息,負債の元本返済額,配当金お よび株式の買い戻 し額であ る。
したがって, この場合の
NCRは, これ らのキ ャッシ ュか ら新規借入れ と追
加株式発行,つま り資本提供者の支出したキ ャッシ ュを控除 した ものである
(Madden [1999]p.67)。 この ように見 る と,マ ッデンのい う
NCR, ここ
でのキ ャ ッシ ュ ・フローはいわゆ るフ リー ・キ ャ ッシ ュ ・フロー
(FCF,
freecashflow)であると解す ることがで きる。
また, ここでの割引率は,後述す るように,市場割引率 に企業独 自の リス ク格差 ( 企業規模お よび財務 レバ レッジ)を加味 して決定 される。
キ ャッシ ュ ・フローに関 して
,CFROI会計ではさ らに,予測キ ャッシ ュ ・ フローは 2段階に分 け られる。すなわち, ( 1 ) 既存資産 か らのキ ャッシ ュ ・ フローお よび
(2)将来投資か らのキ ャッシ ュ ・フローである。各キ ャッシ ュ ・ フローはそれぞれ別 々に割引かれ,企業価値 はそれ らの現在価値の合計額 と い うことになる。いまこれを表す と次式の ようにな り, これが
CFROI会計 における正式な企業価値評価額 となる
(Madden[1999]pp.68,88)0
i
. CF
i.阜 CFt
企業価値 ‑∑ t fi( 1 + D R )
i't91( 1 + D R) i
(4)ここで,CF はキ ャッシ ュ ・フローであ り,DR は割引率である
。 (4)式の 右辺第 1項 は既存資産の経済的期間
(L年間) にわたるキ ャッシ ュ ・フローの現在価値 を表 してお り,第
2項は将来投資の企業存続期間
(H年 間) に わたるキ ャッシ ュ ・フローの現在価値 を表 している。
3 競争的 ライフサ イクル
以上が
CFROI会計 に基づ く企業価値評価の方法であるが, これは従来の 企業価値評価方法 とい くつかの点で著 し く異な っている。そ して,その 1つ は,
CFROI会計 においてキ ャッシ ュ ・フローを予測す る際に
,「 競争的 ライ フサイクル
」(competitivelife‑cycle)とい う考 えおよび手法が導入 されてい ることであ る。
ここで競争的ライフサ イクル とは,平均以上の
CFROIを達成 している企
業 は長期 的には競争圧 力にさ らされ,次第 に平均的な経済的利益率 に逓減
(fadedownward)していき,逆 に平均以下の
CFROI企業 は,相対的競争
力の回復 によって
CFROIが平均 レベルまで逓増
(fadeupward)してい く
CFROI
会計 と企業価値評価
7ことを示 している
(Madden[1999]p.9)0ある企業が平均以上の利益率を達成す ることに成功する と,競争企業 もそ の利益率の高 さに誘引され,さらに効率的なサービスで顧客を満足 させ よう とす る。 この競争原理 によって,高い
CFROI企業 はいずれ平均 レベルにま で押 し下げ られて しまう
。これが競争的 ライフサ イクルである1 ) 。
この競争的 ライフサ イクルの予測は,具体的には,
CFROIと実質資産成 長率の予測 によって行われ る。 この うち,
CFROIの予測は
CFROIの時系 列データか ら得 られる。予測のポイン トは,追加 され る投下資本の利益率, つま り投資利益率
(ROI)であ り,過去の
CFROI水準 とその傾 向は,将来 の
ROIを予測するための有益な材料 となる。
他の条件がすべて同じな ら,資本 コス トを上回る
CFROIによって,また その資産が大 きいほ ど,企業価値 が創造 される。 しか し,資産の成長率が高 いほ ど,
CFROIが低下する傾 向 も観察 される。 したがって,企業のライフ サ イクルは,
CFROIと実質資産成長率の両指標 を示 して完全な もの となる。
マ ッデソは これを次の ように述べている
。「CFROI評価モデルの重大な利 点は,将来の業績予測の最 も重要な要素 である,
CFROIと実質資産成長率 の企業実績 を,画面上で見 ることがで きることである
。」(Madden[1999] p.21)4
割引率
CFROI
会計 における企業価値評価が従来の企業価値評価 と著 し く異なる もう 1つの点は, 企業価値評価 に際 して適用 される割引率の算定方法である。
前 稿 で述 べた ように,
CFROI会 計 では,従来 の資 本資産評価 モ デル ( CAPM) お よび βは利用 されず,企業の割引率は市場割引率 に企業独 自 の リスク格差を加味 して決定 される。そ して, この企業の リスク格差は,企 業規模および財務 レバ レッジか らなる。
市場割引率は,全企業の負債 および資本の市場価値総計 と全企業の予想キ
ヤツシ ュ ・フロー総計か ら導 き出される。具体的 には,次式 を満たす割引率 として決定 され
(Madden[1999]p.89),個別企業の
CFROIを計算す るの と同 じ手法 が用い られ る。
全企業 の負債 ・資本市場価値総計 予想キ ャッシ ュ ・フロー総計
1+市場割引率
(5)この市場割引率 に企業独 自の リスク格差を加味 して,企業の割引率が決定 され るが , そ の 場 合 ま ず ,財 務 レバ レ ッジ は次 の よ うに考 慮 され る。
CFROI
はすべての企業資本提供者 に対 す る総キ ャッシ ュ ・フローか ら計算 されてお り,キ ャッシ ュ ・フローは支払利息の税節約のために高 くな るので,
CFROI
と予想 キ ャッシ ュ ・フロー も高 くな る。企業のキ ャッシ ュ ・フロー に関す るこの好影響を相殺す るために, よ り高い割引率を設定 しなければな らない。
企業規模 に関 して,小企業 に投資す る場合,取 引 コス トは高 くな る。それ ゆえ,投資者 は,それを補償す るために取引 コス ト前の よ り高い収益率を期 待す るこ とにな る。 さ らに,ある水準の小規模企業では,経営 ミスや景気後 退 か ら生 じる大 きな障害 に十分対応で きないため,投資者 はその ような リス
クも補償す る収益率を期待す るこ とになる
(Madden[1999]p.101)0 これ らの結果,一般 に次の ようにい うことがで きる。
( 1 ) 財務 レバ レッジが高 くなるほ ど, リスク格差は大 き くなる。
(2)
企業規模 が小 さ くなるほ ど, リスク格差は大 き くなる。
したがって, これ らの状況が生 じる場合,企業 の割引率は市場割引率 よ り も高 く設定 され ることになる。
Ⅲ cFROl企業価値の計算
これによって,企業価値評価 に関す る
CFROI会計の概要 が明 らか とな っ
たので,本節 では この会計をさ らに理解す るために,具体的な数値例 に よっ
て
CFROI会計 による企業価値評価 を行い,企業価値 を最終的 に算定 してみ
CFROI
会計 と企業価値評価
9よう
。その場合,マ ッデソの用いた数値例
(Madden[1999]pp.69‑78)を 解説す る形式で進め ることとする。
1
計算の前提 と従来の企業価値計算
マ ッデソによれば,企業価値評価 に関する
CFROI会計の計算論理 を理解 するための基礎 は,あ る特定の
ROIを もつプロジ ェク トである。 ここでは, キ ャッシ ュ ・フローがすべての期間でそのプロジ ェク トの
ROIと一致する
とい う不変的事業環境が前提 とされている。そのモデル企業はい くつ ものプ ロジ ェク トを運営 してお り,その市場価値 は どの時点で も, ( 1 )既存 プロジ ェク トの集合お よび
(2)追加プロジ ェク トへの将来投資機会 か ら構成 されて いる。
各投資 もし くはプロジ ェク トについて,次の条件が設定 される。
( 1 ) 初期投資額の
80%が償却資産であ り
,20%が非償却資産ない し運転資 本である。
(2)
プロジ ェク トの継続期間は
3年である。
(3)
各プロジ ェク トか らのキ ャッシ ュ ・フローは継続期間中一定であ る。
(4)
運転資本はプロジ ェク ト終了時にキ ャッシ ュで回収 される。
単純化のために,企業のライフサ イクルは
20%の
ROIでスター トし
,10%の資本 コス トまで逓減 してい くと仮定 され る。具体的には,
1年度か ら
4年度までが
20%であ り
,5年度が
17%,
6年度が
15%,
7年度は
12%であ り,
それ以後は
10%の資本 コス トを下 回るので, 投資が行われない と仮定 される。
また,各年度の再投資率はその年の
ROIの半分 とされる。
投資は年度末に行われ,そ こか らのキ ャッシ ュ ・フローは次年度末に発生 する. 1年 目の投資額は
100であ り,仮定 によ り,そq)うち
80が新規設備で
20
が運転資本である。 このプロジ ェク トの内部収益率
20%は
,42のキ ャッシ
ュ ・フローが
3回に,
3年後 に回収 される
20の運転資本を加算 した ものか ら
計算 される
2)0
これ らの前提 に基づいて,まず従来の企業価値評価方法 によって この企業 の企業価値 を計算す ると,表 1の ようになる。
表
1従来の企業価値計算
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
(A)
成長率
10.0% 10.0% 10.0% 8.5% 7.5% 6.0% (B)プロジェク トROⅠ
20.0% 20.0% 20.0% 20.0% 17.0% 15.0% 12.0%プロジェクトCF
2345671
42.0 42.46.02 4456.0.2.028 46.550.5.289 5550.5.7.829
5555.7.9.921 5558.7.9.821 558.9.81 58.8 (C)グ ロス
CF 0.0 42.0 88.2 138.9 152.8 163.9 172.1 1.75.0 117.8 58.8 (D)運転資本投資
20.0 22.0 24.2 26.6 28.9 31.0 32.9 0.0 0.0 0.0 (E)運転資本の回収
0.0 0.0 0.0 20.0 22.0 24.2 26.6 28.9 31.0 32.9(F)
運転資本の増減
(D‑E) 20.0 22.0 24.2 6.6 ̲6.9 6.8 6.3 (28.9) (31.0) (32.9) (G)設備投資
80.0 88.0 96.8 106.5 115.5 124.2 131.6 0.0 0.0 0.0 (班)CF (C‑F‑G) (100.0) (68.0) (32.8) 25.8 30.4 32.8 34.2 203.9 148.9 91.7(
Ⅰ)B/S:運転資本
20.0 42.0 66.2 72.8 79.7 86.6 92.8 64.0 32.9 0.0 (∫)B/S:総資産
100.0 210.0 331.0 364.1 398.5 432.8 464.2 319.8 164.6 0.0 (K)非償却資産比率 ( %)
20.0% 20.0% 20.0% 20.0% 20.0% 20.0% 20.0% 20.0% 20.0%(L)CFROⅠ 20.0% 20.0% 20.0% 20.0% 18.9% 17.2% 14.6% 13.5% 12.0%
企業価値
PVCF(t +
1)〜10年
(H) 354.3 363.9 369.9 374.0 377.3 211.1 83.3 0.0表
1の各数字は次の ように計算 される。 まず,各プロジ ェク トのキ ャッシ ュ ・フローは,その前年度の
(D)運転資本投資お よび
(G)設備投資の合計額 が,
3年間のキ ャッシ ュ ・フローおよび
3年 目の
(E)運転資本の回収 をその 前年度の
(B)プロジ ェク ト
ROIでそれぞれ割引いて算定 され る。例 えば,
プロジ ェク ト
5のキ ャッシ ュ ・フロー
57.2は,次の ように計算 され る
57.2/1.17
+
57.2/(
1.17)2+57.2/( l
l.17)3+
28.9/(
1.17)3‑144.4
‑投資
(D5+G5)CFROI
会計 と企業価値評価 ll
そ して
, (D)運転資本投資お よび
(G)設備投資は,前年度の これ らの額 に 当年度 の
(A)成長率 を乗 じて算定 され る。 また,
(∫)B/S:総資産 は,前年 度の総資産 に当年度の
(F)運転資本の増減 お よび
(G)設備投資 を加算 し,
3年前の
(G)設備投資 を減算 して算定 され る。例 えば,
4年度の総資産
364.1は,次の ように計算 される。
331.0+6.6+106.5‑80.0‑364.1
企業価値 は,各年度末の
(班)キ ャッシ ュ ・フローを
10%の割引率で割引い た現在価値 である。例 えば,
3年度の企業価値
354.3は表
2の ように計算 さ れる
3)0表
2 3年度の企業価値
年 度
4 5 6 7 8 9 10合計
(a)
キ ャッシ ュ .フロー
25.8 30.4 32.8 34.2 203.9 148.9 91.7(C)
企業価値
(a)×(b) 23.5 25.1‑ 24.6 23.4 126.6 84.0 47.1 354.32 CFRO
l企業価値計算
それでは,同じ数値例 によって,本節の 目的である
CFROI会計に基づ く
企業価値 の計算を行 ってみ よう。既述の ように,
CFROI会計 において,企
業価値 は( 1 ) 既存資産 か らのキ ャッシ ュ ・フローの現在価値,お よび
(2)将来
投資か らのキ ャッシ ュ ・フローの現在価値 を合計 した ものである。 この計算
思考 に基づいて,
CFROI会計 による企業価値 を計算する と,表
3の ように
なる。
表 3 CFRO l会計による企業価値計算
午 . .皮 ‑. 開 始 追加投資な し
1 2 3 4 5 6 7‑ 8 9 10
既存資産
(M)
当年度の
CF現在価値 244.6 269.1 285.4 396.9 300.6 155.7 53.4 0.0 (N)運転資本回収の現在価値
54.5 60.0 65.7 71.4 76.6 55.4 29.9 0.0 (o)既存資産の現在価値
299.2 329.1 351.1 368.3 377..3 211.1 83.3 0.0将来投資
( p) 投資
(D+G) 121.0 133.1 144.4 155.2 164.6 0.0 0.0 0.0 (Q)投資の現在価値
144.5 158.9 163.9 170.2 170.9 0.0 0.0 0.0( R) 創造された価値増加
(Q‑P)
毎 .5 25.8 19.5 14.9 6.3 0.0 0.0 0.0 (S)将来投資の現在価値
55.1 34.8 18.8 5.7 0.0 0.0 0.0 0.0企業価値
(0+S) 354.3 363.9 369.9 374.0 377.3 211.1 83.3 0.0(T)
( ( 株主収益率 価値(
t)+CF(t) ) / 価値
(t‑1 ) ト
1 10.6% 10.0% 10.0% 10.0%̲10.0% 10.0% 10.0%この裏 は次の ように計算 されている。例 えば
3年度 に注 目す る と,まず,
(0)
既存資産 の現在価値
299.2は
,(M)キ ャッシ ュ ・フローの現在価値
244.6に
(N)運転資本回収の現在価値
54.5を加算 した ものであ る。そ して,それぞ れの数字の算 出過程 を示す と,表 4の ようになる4 ) 0
表
4 3年度の既存資産の現在価値
年 度
4 5 6今 計
( a) 将来キ ヤツシ i .フロー
42.0 46.2 50.8プロジ ェク ト1
プロジエ? ト2
46.2プロジ ェク ト3
50.8 50.8( b) キ ャッシ ュ .フロー合計
138.9 97.0 50.8( C) 運転資本の回収 ( E)
20.0 22.0 24.2 (d)現在価値割引要素
(lo常) 0.909 0.826 0.751(e)
キャッシュ .フローの現在価値 ( b)
×(d) 126.2 80.2 38.2 (M)244.6( i ) 運転資本の現在価値
(C)×(d) 18.2 18.2 18.2 (N)54.5CFROI会計 と企業価値評価 13
次に,将来投資の現在価値の計算であるが,ある年度 における将来投資の 価債 は,その後の投資か ら創造 される各将来年度における価値 を計算 し,そ れ らの価値 を現在価値 に割引 き,それ らの現在価値 を合計 した額 となる。 こ の計算過程 を示す と,表
5の ようになる
5)0
表5 4年度 からの投資による創造価値
年 度
5 6 7 合計
(a)
キ ャッシ ュ .フロ二 ( プロジ ェク ト
4) 55.9 55.9 55.9( b) 運転資本の回収 ( E)
26.6( C)キ ャッシ ュ .フロー合計
(a)+( b)
55.9 .55.9 82.5 (d)現在価値割引要素
(lo財) 0.909 0.826 0.751( e) キャッシュ .フ占‑の現在価値 ( C )
×(d) 50.8 46.2 62.0 (Q)15由.9( f ) 投琴合計 ( D
4)+( G
4) (P)133.14
年度の投資合計
133.1
(P)は,(
G)設備投資
106.5と(
D)運転資本投資2
6.6の合計である。前提である内部収益率2
0%を用いる と,将来のキ ャッシ ュ ・フローは55.
9( 表 1におけるプロジ ェク ト4 のキ ャッシ ュ ・フロー)となる。
この
4年度 におけるプロジ ェク トの現在価値 は,1
0%の割引率を用いて158.9 (Q)と計算 される。その金額は投資合計
133.1を2
5.8(R)上回っている。 これ が
4年度のプロジ ェク トか ら創造 された価値 となる。
同様の計算で,
5,
6および
7年度の投資創造価値 を示す と表
6の ように な り,それ らを現在価値 に割 引 いて合計す る と,将来投資の現在価値
55.1(S)
が算出され る。
表6 3年度末における将来投資の現在価値
年 度
4 5 6 7合 計
(a)
創造価値
25.8 19.5 14.9 6.3 (b)現在価値割引要素
(lo常) 0.909 0.826 0.751 0.683そ して,上で計算 した既存資産の現在価値
299.2とこの将来投資の現在価 値
55.1との合計
354.3が
CFROI会計 における企業価値 とな り,前項 で示 し た従来の企業価値計算 と一致す ることになる。
Ⅳ cFROl会計の特質 と論拠
これまで,
CFROI会計の概要 を説 明 し, この考 えに基づいて企業価値評 価 が どの ように行われるのかを概説 した。次 に,
CFROI会計 による企業価 値評価 を具体的な数値例 によって行い,企業価値 を最終的に計算 した。 これ によって,企業価値評価 に関す る
CFROI会計のほほ全容が明 らかになった ことと思われる。 そ こで,本節では これ らを受けて,
CFROI会計を会計構 造的お よび会計思考的側面か ら検討 し,い くつかの観点か らこの会計の特質 およびその論拠 を明 らかにしていきた い。
1
実質現在価値会計
まず,企業価値評価 に関する
CFROI会計を会計システムの観点か ら考察 してみ よう。前稿で述べた ように,一般 に,会計システムはすべて測定要素 である測定単位 と評価基準か ら構成 され,利益が決定 される。測定単位 とは, 資産を測定するための基準単位であ り,それには,( 1 )名 目貨幣単位
,(2)一 般購買力単位
,(3)個別購買力単位お よび
(4)貨幣収益力単位がある。他方, 評価基準 とは,測定単位 によって関係づけ られる資産の基準 となる測定値の ことであ り, これには, ( 1 ) 取得原価,
(2)購入時価, (
3)売却時価お よび
(4)現在価値 がある。各会計システムはこれ らの測定単位 と評価基準を組衣合わ せ ることによって導 出されることになる。
いま,これを行 った結果を‑表 にま とめ,各会計システムに名称 を付す と,
表
7の ようになる ( 上野
[2005] 7頁) 0
CFROI
会計 と企業価値評価
表
7会計 システムの諸類型
15
評 価 基 準
測 定 単 位 取得原価 購入時価 売却時価 現在価値
名 目 貨 幣 取得原価 購入時価 売却時価 現在価値
単
位会 計 . 会 計
会計 会 計
一般購買力 実質取得 実質購入 実質売却 実質現在
単
位原価会計 時価会計 時価会計 価値会計
個別購買力 実体取得 実体購入 実体売却 実体現在
単
位原価会計 時価会計 時価会計 価値会計
貨幣収益 力 成果取得 成果購入 成果売却 .成果現在
これ らの ことを前提 として企業価値評価 に関す る
CFROI会計を考察する と, この
CFROI会計における評価基準は現在価値であ り,測定単位は一般 購買力単位であることが分かる。それゆえ, この会計は実質現在価値会計で
あるとい うことがで きる
。まず,評価基準に関 して,企業価値評価 に関す る
CFROIでは,既述の よ うに,企業価値 は将来の予測キ ャッシ ュ ・イソフロー とキ ャッシ ュ ・アウ ト フロー との差額である純キ ャッシ ュ ・フローをある割引率で割引いた現在価 値 として評価 される。
そ して, この予測キ ャッシ ュ ・フローはさらに
2段階に分け られる。すな わち, ( 1 )既存資産 か らのキ ャッシ ュ ・フローおよび
(2)将来投資か らのキ ャ ッシ ュ ・フローである。各キ ャッシ ュ ・フローはそれぞれ別 々に割引かれ, 企業価値 はそれ らの現在価値の合計額 とい うことになる。いまこれを再述す ると次式の ようにな り, これが
CFROI会計における正式な企業価値評価額 となる。
巨 CFi
. 阜
CFt企業価値 ‑ t
∑el(1+DR)i
Iie .( 1+DR)i (4)ここで,
CFはキ ャッシ ュ ・フローであ り,
DRは割引率である
。 (4)式の 右辺第
1項は既存資産の経済的期間
(L年間)にわたるキ ャッシ ュ ・フロー の現在価値 を表 してお り,第
2項 は将来投資の企業存続期 間
(H午問) に わたるキ ャッシ ュ ・フローの現在価値 を表 している。 したがって, これ らの ことか ら,企業価値評価 に関する
CFROI会計 における評価基準は現在価値 であ るとい うことがで きる。
そ して, この現在価値 に基づ くキ ャッシ ュ ・フローは,同じ貨幣購買力単 位で表 され,毎期の一般物価水準の変動が調整 され る。 これは,企業価値評 価 に関する
CFROI会計が測定単位 として一般購買力単位 を使用 しているこ
とにはかな らず, これ らの意味で,この
CFROI会計は実質現在価値会計で ある とい うことがで きるのである。
2
将来投資価値評価
次 に,企業価値評価 に関す る
CFROI会計の特質を会計構造的側面か ら検 討 してみ よう。既述の ように,
CFROI会計 において企業価値評価 は上記の
(4)式で行われ るこ とにな り,既存資産 か らのキ ャッシ ュ ・フローお よび将 来投資か らのキ ャッシ ュ ・フローの現在価値の合計額 とい うことになる。キ ャッシ ュ ・フロー予測を 2段階に分けて行 うことは従来の企業価値評価 と同 じであるが, ここでの特質は,
CFROI会計では従来のそれ とは異な り,将 来投資価値 を独立的に算定す る ということである。
これを明 らかにするために,従来の企業価値評価 を説 明してお く必要があ る。従来の方法によって企業価値 を評価す る場合,企業価値 は将来期間のキ ャッシ ュ ・フローの現在価値合計 となる。すなわち,次の ようになる。
企業価値 ‑将来期間のキ ャッシ ュ ・フローの現在価値
(6)問題 は将来期間のキ ャッシ ュ ・フローを どの ように予測するかであるが,
これには通常
「2段階アプローチ」が とられる。それは,将来期間を予測期
CFROI
会計 と企業価値評価
17間 と予測期 間以降 に分 け,直近 の一定期 間 に対 して詳細 なキ ャッシ ュ ・フ ロー予測 を行い,それ以降の長期予測は簡略化す る とい う方法であ る。 これ による と,企業価値 は次の ように表 され る。
企業価値 ‑予測期間におけるキ ャッシ ュ ・フローの現在価値
+予測期間以降のキ ャッシ ュ ・フローの現在価値
(7)予測期 間以降のキ ャッシ ュ ・フローの現在価値 は,遠 い将来 に対 して予測 が継続す る と仮定 して算定す る価値であるので 「 継続価値」 と呼ばれ,一般 に次の式で計算 され る。
継続価値
NOPATT.1(1‑g/ROZC)WACC‑g (8)
ここで,各記号は次の こと表 している。
NOPATT.1
‑予測期間以降の 1年 目における標準化 された 税引後営業利益 ( NOPAT)
g‑NOPAT
の永続的な期待成長率
ROJC
‑新規投資 に対 して期待 され る投下資本利益率
‑NOPAT/投下資本
WACC