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長 崎大学 教育 学部 化学 教室 (昭和60年10月30日 受理)

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(1)

長 崎 大学 教 育 学 部 自然 科 学研 究報 告   第37号39〜44(1986)

ベ ン ズ ア ル デ ヒ ドの 液 相 空 気 酸 化 に 関 す る研 究        1.溶 媒 キシレン異性体 の影響

竹  友 一 成

長 崎大学 教育 学部 化学 教室 (昭和60年10月30日 受理)

On the Liquid-phase Air Oxidation of Benzaldehyde

I . The Effect of Xylene Isomers as the Solvent on the Oxidation

Kazushige TAKETOMO

Chemical Laboratory, Faculty of Education,

Nagasaki University, Nagasaki, Japan (Received Oct. 30 , 1985)

Abstract

A mixture of benzaldehyde and xylene was used as the oxidation sample. The mixture was benzaldehyde/xylene =1 in mol ratio. The oxidation was carried out by passing air in the mixture at 70°C. The formation of benzoic acid was investigated on the three isomeric xylenes.

The formation of benzoic acid increased in the order : o-xylene p-xylene > m- xylene.

1. 緒

  筆 者 は これ ま で ベ ン ズ ア ル デ ヒ ドの 気 相 空 気 酸 化 に関 す る一 連 の 研 究 を行 っ て きた が, 前 報1)にお い て は,こ の 気 相 空 気 酸 化 に及 ぼ す 介 在 物 キ シ レ ンの 影 響 に つ い て検 討 し た。そ の 結 果,ベ ン ズ ア ル デ ヒ トの気 相 空 気 酸 化 に お い て,介 在 物 と して の キ シ レ ン に,窺 一 キ シ レ ンの異 常 性,つ ま り,安 息 香 酸 の 生 成 の順 が,〃z一キ シ レ ン>o一 キ シ レ ン 〜 か キ シ レ ン で あ る こ とが 見 出 さ れ た。

  今 回,キ シ レ ン異 性 体 を 溶 媒 とす る液 相 空 気 酸 化 を試 み た と こ ろ,上 記 の 気 相 空 気 酸 化

(2)

とは違う結果が得られたので,これについて報告する。

2.実験材料および方法

2.1試

ベンズアルデヒド(市販特級)は無水硫酸ナトリウムで充分乾燥後,ウィドマー分留管 を用いて窒素雰囲気下に減圧蒸留して用いた。溶媒としては,o・キシレン,卿・キシレンお よびかキシレンをそれぞれ用いた。これら(市販特級)は金属ナトリウムで乾燥後,ウィ ドマー分留管を用いて精製した。

試料としては,ベンズアルデヒドとキシレンの混合液を使った。混合液のベンズアルデ ヒドとキシレンとのモル比は1:1である。

2.2 空気酸化

反応装置をFig.1に示す。空気酸化は次の如く行った。

H

A

G

F

E D C B B

Fig.1.Reaction apParatus

A=Water head tube,B:Air reservoir C:Gaきwashing−bottle(20%NaOH soln.)

D:Drying tube(NaOH),E:Thermostat,F:Reaction tube

G二Condenser,H:Dryingtube(NaOH)

(3)

ベンズアルデヒドの液相空気酸化に関する研究 41

 内径26φ㎜のかっ色ガラス製の反応管(F)に試料混合物609(または709)をとり,こ れに,内径6φ㎜,外径8φ㎜のかっ色ガラス製の空気導入管を装着した。反応管を恒温槽

(E)に取付け,恒温槽温度を70。Cに保持した。一方,空気は,水頭管(A)の水圧を利 用して,101空気だめびん(B)から連続的に洗気びん(C)へ送り二酸化炭素を除いた 後,乾燥管(D)を経て反応管内の試料に空気導入管から一定の速度(3。21/hr〉で送込ま れた。空気流通速度は洗気びん中に発生する空気泡の数(個/15秒)にて調節した。

 なお,反応時間は5時間,空気流通総量は161である。

 2.3 分  ・析

 分析はガスクロマトグラフィーにより行った。ガスクロマトグラフ装置は島津製作所 GC.5A(検出器:TC D)である。充てん剤として,DEGS−H3PO4(Shimalite,60〜80mesh)

を,内部標準試薬として,o一渉碗・ブチルフェノールをそれぞれ用いた。カラムはガラスカラ ム(2m×3φ㎜),キャリャーガスはヘリウム、キャリャーガス流速は43mJ/min,カラム 温度は1600Cである。

 安息香酸の同定は混融試験により,その他の化合物は,反応生成物の保持時間から推定

した。

 ベンズアルデヒドの安息香酸への転化率は,次の式により計算した。

        生成した安息香酸(mol)

転化率(m・」%)一 し、たベンズアノレデヒド(m。1)×100

3.実験結果および考察

 キシレンを溶媒とするベンズアルデヒドの液相空気酸化(反応温度70℃)の酸化生成物 は安息香酸のみであり,気相空気酸化1)(反応温度235。C)で認められたフェノールの生成 は確認できなかった。

 キシレンの3異性体をそれぞれ溶媒とするベンズアルデヒドの液相空気酸化の結果を,

Table1に示す。

Table1.Effect of xylene solvents on hquid−phase air oxidation of benzaldehyde       (Reaction temp.:70℃)

    Sample      Reaction        con(iition

Run  Benz−  Solvent傘

  aldehyde      Time   Air    (9)  (9) (hr) (♂/hr)

Yield Composition of product(wt%)

 of pro(iuct Benzoic  Benz−  Solvent

(wt%)acid aldehyde

30.01 35.01 30。03 34.99 30.02 34.99

30.02象1)

35.10*1)

30.02*2)

35.05*2〉

30.01傘3)

35.03*3)

3.2 3.2 3.2 3.2 3.2 3.2

99.80 99.98 99,73 98.90 99.70 99.03

4.8 4.3

1.8 1.3 5.0 4.1

46.1 46.5 48.8 49.1 45.6 46。6

49.1 49.2 49。4 49.6 49.2 49.3

申 Solvent: 事1)o−xylene, 率2)禍一xylene, 喰3)P−xylene

(4)

℃ Q

    10.0

,9

N    9.O

.8_

o訳  8・0

リ ャ

鋸 7・o

盆一

Φ    6.O 踏

N    5.O q

Φ

    4.0 ρ も

q    3.O

.9

ヨ Φ    2.0

q

O    1.O

Q

o

o

o

o−Xylene 卿一Xylene  ρ一Xylene Solvent

Fig.2.Effect of xylene isomer solvents on conversion     of benzal(iehy(ie to benzoic aci(i in liqui(1−phase     air oxi(iation of benzal(iehy(ie.

 Table1の結果を,ベンズアルデヒドの安息香酸へのモル転化率(mol%)で図示すれば Fig.2のようである。

 安息香酸へのモル転化率は,o一キシレンで9.33,8.61(平均8.97),吻一キシレンで3.64,

2.73(平均3.19),ヵ一キシレンで9.96,8.09(平均9.03)であった。前報1)の気相空気酸化 の場合は,o一キシレンやρ・キシレンを介在させたときより,卿一キシレンを介在させたとき の方が,安息香酸へのモル転化率は大きくなった。つまり,今回の液相空気酸化とは逆の 結果であった。したがって,いわゆる雛キシレンの異常性は,一般に認められているキシ レン自体の反応性(相対塩基度および相対ハロゲン化度等)のみならず,今回のように,

キシレンを溶媒として用いる実験(液相空気酸化)でも,また前報1)のようにキシレンを介 在物として用いる実験(気相空気酸化)でも明らかに認められると言うことができる。

 以上のように,彫・キシレンの異常性が,液相空気酸で安息香酸へのモル転化率の低下,

気相空気酸化で安息香酸へのモル転化率の増大という点で認められることは,液相空気酸

化と気相空気酸化とでは,ベンズアルデヒドの酸化機構が違うものと考えられる。

(5)

ベンズアルデヒドの液相空気酸化に関する研究 43

一般に,アルデヒドの空気酸化の律速段階は,

(熱酸化)

(光酸化)

   O

−C\  十 〇2 −

   H    0

−C\  十 hッ ー→・

   H

C=O + H−O−O・ ・①

Cニ〇 十 H…     ②

であると言われている。筆者の試みた酸化は言うまでもなく熱酸化であるが,液相空気酸 化(低温熱酸化)と気相空気酸化(高温熱酸化)の律速段階を上式の①で統一することは,

上記の結果からして無理があるように考えらる。

 液相空気酸化の熱エネルギーは,気相空気酸化のそれより著しく小さい。液相空気酸化 の律速段階は,上式の①と考えられるが,気相空気酸化では,その律速段階を上式②に近 い形の反応式,つまり次式③のように表わすことが妥当であるかのように思われる。

(低温熱酸化)

(高温熱酸化)

   0

−C\ +02一→ C=0+H−0−0・

   H       ・    〇

一C\H+ σT4→ 9ニ0+H●

一①

・③

換言す繊一C謡からの熱エネルギーによる一9一・の生成は,7伊Cでは起こらなレ】

が,235。Cでは起こり得るのではないだろうか,ということである。このように仮定すれ ば,キシレン異性体が酸化反応に関与する機構を説明しやすくなるであろう。

 なお,無溶媒,すなわちベンズアルデヒド(359)のみを用いた同条件下の液相空気酸 化の場合,ベンズアルデヒドの安息香酸へのモル転化率は4.85(mol%)であったことを付 記しておく(Fl9.2と比較参照)。

 筆者のこれまでのベンズアルデヒドの空気酸化に関する一連の実験結果から,以上のよ うな律速段階を想定しているが,今後,ベンズアルデヒドの液相空気酸化などの実験をさ らに積重ねて,修正・補正を加えてゆきたい。

4.要

 o・,雛およびかキシレンをそれぞれ溶媒とするベンズアルデヒドの液相空気酸化を,反 応温度70。Cで行い,次の結果を得た。

(1)酸化生成物として安息香酸のみが生成した。気相空気酸化(反応温度235℃)で生成す  るフェノールは認められなかった。

(2〉ベンズアルデヒドの安息香酸へのモル転化率(mol%)は      0一キシレン窄ρ・キシレン〉形一キシレン

  の順であった。この順は,ベンズアルデヒドの気相空気酸化における安息香酸へのモ  ル転化率と逆の結果であるが,解キシレンと他のキシレン異性体とでは反応性が異なる  という点で,いわゆる筋キシレンの異常性を認めることができた。

(3)上の結果から,ベンズアルデヒドの空気酸化(熱酸化)においては,酸化機構が液相

 空気酸化(70。C)と気相空気酸化(2350C)とでは違うものと推定された。

(6)

 本研究は池田隆一および藤田裕幸両氏のご協力におうところ大であった。欄筆に臨み深謝の意を表

 します。

       文     献

1) 竹友一一成,長崎大学教育学部自然科学研究報告,第35号,p.23(1984).

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