47
生産地 におけ る水産物流通 に関す る研究−I
定 置 網 漁 業 地 帯 に お け る流 通 形 態 に つ い て
安 岡 晴 幸
Studies on Marketing and Distribution of Fisheries Products from Landing Place-I
A Distribution Pattern from the Area of Fixed Net Fisheries
Haruyuki YASUOKA
1.序
本 報 告 の 内 容 とな って い る調 査 を 行 な った 上 五 島 地 区 とは,長 崎 県 の 西 端 五 島 列 島 北 部 に 位 置 す る中 通 島 を さす。 現在 同 島 内 は 有 川 町 ・新 魚 目町 ・上 五 島 町 ・奈 良 尾 町 ・若 松 町 の5行 政 区 画 に 分 割 され て い る。 この 上 五 島 地 区 内 に お い て沿 岸 漁 業 の中 心 とな っ てい る 漁 業 協 同 組 合(以 下 漁 協 と略 称 す る)は,第1図 に み る よ うに 有 川 町 に7・ 新 魚 目町 に3
・上 五 島 町 に2・ 奈 良 尾 町 に3の 合 計15の 漁 協 が 位 置 して い る。 つ ぎに 地 区 内 の 漁 業 形 態 は 第1表 に み る よ うに 定 置 網 ・釣 延 網 ・ま き網 漁 業 が 主 体 で あ るが,と くに 定 置 網 漁業 は
第1表 上 五 島 地 区 年 度 別 漁 業 種 類 別 漁 獲 量 ・金 額(単 位 トン ・千円)
昭40昭41昭42昭43
漁 矧 金 劉 漁 細 金 額 漁 劇 金 額 漁 獲量 降 額
ま き 網15111,68555g∴7,17511,39192,328、,64。1117,182 (3)(1)(8)(3)(18)(10)(21)(14)
釣'延 縄11111146♂ll1811118511}111111165♂ll
(lll156811
定 置 網3,620613,3334,882601,7634,669538,4294,748、463,841
〔68)(73)(7・)(68)(59)(61)(62)}(57) そ の 他56273,61846172,449・65988,03340777,206
(10)(9)(7)(8)(8)(10)(5)(10) 1
計 1瀦841il81[lill/881il8/儲881illllillい11illl
()内 は構 成 比(年 度 は4月 〜3月) 長 崎 農 林水 産 統 計年 報 よ り作 成
第1図 上五島地区漁業協同組合位置図
ト\
触π 鋳ノ
ρ0 ! / ρ︒
転︑一躍論
N
N
蕊一
へ\1 き {へ
蹴腰
li
奈良尾町 新魚目町
N
レ・一ノ〜、馬
s
崎
ノ
衡1μ
ノ
有川
町∠♪
1.有川町有川漁協 4.奈良尾漁協
2.魚目漁協 5.浜串漁協
3.岩瀬浦第一漁協
昭和43年度地区内総漁獲高のうち漁獲量で62%・金額で57%を占め,また累年別にみても 安定した漁獲を続けている。このように上五島地区は定置網漁業地帯ということができる。
よって今回地区内でとくに大型定置網漁業が行なわれている有川町有川漁協・魚目漁協・
岩瀬浦第1漁協・奈良尾漁協の4漁協で実地調査を行なった。
この報告は前記4漁協を対象とした定置網漁業地帯における漁獲物流通の実態を解明し,
結論的に若干の分析を行ない流通形態上の諸問題を考察したものである。
2.漁協別漁獲物流通形態 (1)有川町有川漁協
有川漁協地区内には大型定置4統と小型定置(ます網も含む)が9統あり,漁獲物は有 川漁協に水揚される。定置網漁業以外には磯建網・1本釣漁業が若干行なわれているにす
ぎない。
安岡:定置網漁業地帯における流通形態 49 定置網漁業のうち大型定置4統と小型定置7統は有川町漁業共同経営団 (以下有川共営 団と略称する)が経営しており,第2表にみるように有川漁協に水揚される漁獲物のうち 昭和44年塵において数量で78%・金額で73%とその総水揚の8割近くを占め地区内最大の 漁業である。
つぎに漁協に水揚された漁獲物(鮮魚)は漁協が全面的に販売を受託し各市場に向け出 荷している。漁協はこの販売事業を行なうために自営運搬船1隻(20T),さらに組合員 所有の4隻の運搬船をチャーターしている。 これら5隻の運搬船による出荷販売先は第3 第2表・有川漁協 年度別 漁業種類別 水揚高 (単位 トン・千円)
有 川 共 営 定 置
個人定置
そ の
団網網 他
十二ニロ
昭 41
数到金額
昭 42
数剣金額
昭 43
数劃金額
昭44
,
1,132i 89,767
(89)1 (84)
lIQI 11,Q95 (1 O)
(9)1
29, 5,826 (2)i (6)
数回金額
1,237
(80)
257
(17)
52 (3)
::鰯矧紫ll
(185 i (lsJ)1 M C18)1 as)
1
7・H89,i ,S8,i, 8・2991 ,25,
1,271
(100)
1・Q調111i811騰i 41i899騰
126,062 〈73)
33,359 〈19)
12,982 (8)
172,403 (100)
( )内は構成比 (年度は4月〜3月)
有川漁協水揚高明細書より作成
第3表 有川漁協取扱漁獲物の年度別出荷二二数量・金額 (単位 トン・二二)
昭 41
隊剴金額
魚〃〃〃〃 市
佐福長唐熊 世岡崎津本 保漁の 連他
県そ
929
(73)
91 (7)
4(一)
11 (1)
16 (1)
50 (4)
170
(14)
1,271
(100)
昭 42
数回金額
79,461 (75)
9,288 (9)
185 (一一)
1,097 (1)
1,8641 (2)
2,567 (2)
12,226
(11)P
106,688 (IOO)1 ,
1,153
(75)
170
(11)
12 (1)
53 (3)
4i( 一一一 )
7(一一)
147
(10)
95,694 (74)
12,656 (10)
669 (1)
4,473 (4)
408 (一)
468 (一)
14,674 (11)
昭 43
数回金 額
5 2 9
(52)
203
(11)
昭 44
数剴金額
計 1,546
(100)
229
(13)
33i
(2)
123
(7)
?7.61
(15)f
72ig?I i4W99,i
L
18P鐵
i・?13
12・
墲P
21
855
(70)
(gs)
,si
,gg
,,g
lsg
,lggii
105,819 (61)
14,618 (9)
695 (一)
5,872 (3)
729
(1)
24,392 (14)
20,278 (12)
12モ瀦14とlll}と謝171i181
( )内は構成比
有川漁協販売先明細書より作成
表のように有川漁協からは最短距離にある佐世保魚市場が中心となっている。第3表中県 漁連となっているのは高級魚のタイ・スズキ等を佐世保市場で長崎県漁業 協同組合連合会
(以下県漁連と略称する)に委託し, トラックまたは貨車で京阪神に出荷しているもので 近年増加傾向にある。
つぎに福岡・唐津魚市場等へ出荷するときは,佐世保市場に水揚し市内満寿屋三一Kの トラックをチャーターしている。有川より佐世保・長崎までの運搬船運賃は後述する契約 書に明記されている比率によっている。また佐世保より福岡・唐津魚市へ出荷するときの
トラック運賃は,現在5T積で1万5千円である。なお漁協手数料は鮮魚は3%である。
以上がいわゆる漁協共販と呼ばれる流通形態である。 このほかとくに生産者への代金決 済を急ぐ1本釣漁業水揚分(昭和44年度で取扱数量31トン) については漁協で買い取りを 行なっている。 買い取りの場合は佐世保魚市場手数料および運賃として25%が差し引かれ
る。
有川漁協では地元魚市場を開設しているが現在仲買人は存在しておらず, したがって市 場取引業務は行なわれていない。なお地元小売人が14名(小売店4軒・ブリ売り人10人)
おり,これら地元消費分(第3表におけるttその他 の量がこれに該当する)は漁協が直 接販売の形で売り渡している。この価格は前日の佐世保魚市場価格の2割5分引値建で渡
し,また市場価格不明の場合は相対取引で決めている。
以上が有川漁協における漁獲物の流通形態であるが,現在有川では鮮魚(止め魚)の出 荷のみで活魚出荷は行なわれていない。 また鮮魚類を扱う仲買資本は存在していないが,
磯物のアワビ,サザエは地元のK氏と漁協との間で特約形式(昭和45年度アワビはK当り 男貝1,450円・女貝1,015円)で取引されている。
(2)魚 目 漁 協
魚目漁協地区内には大型定置3統と小型定置8統を経営している魚目漁業共同経営団
(以下魚目共営団と略称する)が地区内漁業経営の中心となっている。魚目共営団の漁獲 量は第4表にみるように漁協総水揚高のうち数量・金額とも累年約80%程度の位置を占め ている。その他の漁業としては1本釣が50隻・個人経営小型定置が8統あり,その他延縄
・タコツボ・刺網漁業等が若干行なわれている。魚目共営団の定置網漁業以外の漁獲物は 他地区より販売を依頼される1本釣漁業漁獲物(いわゆる搬入物)を含めて数量・金額に
して約20%程度がある。
第4表 魚目漁協 年度別 漁業種類別 水揚高 (単位 トン・千円)
昭 41
数劉金額
昭 42
止長金額
昭 43
数到金額
昭 44
魚 目 共 営 団 定 置 網
そ の 回
数蜀金額
837
(76)
271
(24)
91,907 (83)
19,234
(i7)
1謝1331講
223i 20,141
(15)j (13)
1,361
(87)
344
(20)
121,3121
(7D 7)1
35,557 (23)
十二ニロ 1,108
(100)
111,141 (100)
1,5061 153,443
(100)1 (100)
1,705
(100)
156,869 (100)
7921 135,165
(80)i (78)
200i 39,005
(20)P (22)
992
(100)
174,170 (100)
( )内は構成比 (年度は4月〜3月 魚目漁協水揚高表より作成
安岡:定置網漁業地帯における流通形態 51 第5表 魚目漁協取扱漁獲物の年度別出荷先別数量・金額 (単位 トン・千円)
昭 41 数
回 世 保 魚 市 福 岡
寺 津
l1
11
地 元 消 二
十壬一ロ
剴金額
1,008
(91)
0︶OQゾー︵.
103,379 (93)
7,762 (7)
昭 42 昭 43
数量1金額数量1金額
1,386
(92)
0︶りθ0◎−⊥︵
143,4741 (94)li
9,969i (6)
1,6001 149,432
(94): (95)
5︶0ρ0コ⊥︵
7,437 (5)
昭 44
数剴金額
1,1081 111,1411
1,506
doo)1 (ioo)1 (ioo) 153,443 (100)
860
(87)
23
(2)
25
(3)
84
(8)
153,990 (88)
4,218 (3)
3,528 (2)
12,434 (7)
1調15囎(、謝171i619
( )内は構成比 魚目漁協水揚高表より作成
販売は漁協経由の委託出荷であり,出荷先は第5表のとおりである。昭和43年度までは 最近距離の佐世保魚市出荷(航行時間片道約4時間)が地元売りを除いた全量を占めてい た。昭和44年度にはじめて佐世保を中継として福岡・唐津魚市場へ出荷されるものが2〜
3%程度ではあるが現われてきている。 この佐世保を中継とした共販は有川漁協と同様に 佐世保満寿屋の冷蔵トラックをチャーターして送っている。
漁協ではこの販売事業を行なうために自営運搬船(20T型)2隻と集荷兼用運搬船(13 T型)1隻,およびチャーター船1隻計5隻により運搬を行なっている。運搬経費として は佐世保魚市場価格より魚市場手数料・諸経費を差引いた金額から魚目共営団は11%,そ の他は10%(1箱100円まででそれ以上は徴収しない)をとっている。 なお魚箱代は出荷 者の共営団や個人の負担とし,氷代・油皿は漁協運搬経費に含まれている。氷は魚目漁協 に冷蔵庫がないため佐世保で購入したものを帰り荷として運んでいる。 またチャーター船 の傭船料は昭和45年度で.月33万円とし定置盛漁期中の契約である。
つぎに魚目漁協でも地元魚市場を開設しているが仲買人は存在しておらず有川漁協と同 様市場取引業務は行なわれていない。地元小売人が9名(小売店5軒・プリ売り人4人)
と加工専業者1名・同兼業者3名および一般消費者に対し,漁 協直販として前日の佐世保 魚市場価格の2割引きで売り渡している。第5表中地元消費がこれに該当する。
加工品は漁協自営の松イカのスルメ加工とワカメ等の海藻類の漁家による加工 (自家加 工)が若干あり,これらは漁協が集荷し県漁連に出荷している。なお魚目漁協運搬の中心 が定置漁獲物であるため,鮮魚(止め魚)の出荷がほとんどで正月時のみ若干量の活魚輸 送が行なわれた。
以上が魚目漁協における共販ルートに乗っている漁獲物の流通形態である。 なお共販以 外に1本釣漁業を対象とした地元買付業者は2名である。 これらの業者は1本釣盛漁期で ある12月・1月を中心とし,とくに夜間水揚されたものを買付けている。 また業者は運搬 船を持ち佐世保へ出荷している。 買付数量は不明であるが,漁協聞取によると地区内1本 釣漁業水揚の5割程度が買付けられているといわれ, その他地区外1本二丁業者の水揚も 買付けている。また地区内に現在中型1本釣漁船(5T型)1隻があるが, これは漁場が
佐世保魚市場に近い時には活魚として直接出荷している。 その他に磯物のアワビが北魚目 地区の買付業者に買付けられているが実状は不明であった。
(3)岩瀬浦第1漁協
岩瀬浦第1漁協地区はいままで述べてきた有川および魚目漁協地区とは漁業形態を異に しているため過去の経過と現在の生産構造を若干記すことにする。
この地区は後述する奈良尾漁協地区と同様昭和20年代末より30年代前半にかけたイワ シ揚繰網漁業全盛期には13統をようする代表的地区の1つであった。その後揚繰網漁業が 衰退し,奈良尾漁協が大型東海まき網漁業に転換していくのとは逆に岩瀬浦では揚繰網漁 業は衰退をつづけていった。当時揚繰網乗組員であった組合員20名が昭和35年に親和銀行 より500万円の融資を受け,1−J2T型の1本釣漁船25隻を建造し転換をはかった。 また 当時の岩瀬浦漁協も昭和36年に揚繰網借入金問題で自主解散し,翌37年に新しく岩瀬逼塞 1漁協として再出発した。このように揚繰網漁業から転換した1本釣漁業は現在45隻(平 均2T)をようして周年操業を行なう地区内の中心漁業になった。一方定置網漁業は地区 内に大型定置2統,ます網2統があるが, うち隣接浜串漁 協地区との境界にある大型定置 網が漁獲が多く,他の定置網(漁獲数量・金額不明)は漁獲高が少ないといわれている。
前記の大型定置網は昭和42年度までは大洋漁業との共同経営であったのが,翌43年度から は浜串漁協と共同の漁協自営になった。 この自営定置網は第6表のように昭和41年度の水 揚金額にたいして43年度には9%にまで低落する大幅な漁獲減となった。 このため昭和43 年度末には360万円の赤字をだし,44年度に337万円の黒字となったが現在23万円の赤字 が残されている。現状は漁獲量の減少を魚価の高騰で支えている状態で, もはや他の地区 のように地区内漁業の中核とはなりえず将来が危まれている。
また岩瀬落第1漁協では組合所有の製氷冷蔵庫の活用を計り,昭和43年に構造改善事業 補助金330万円で共同加工乾燥室を建造,スルメ加工を行なっていたがイカの漁獲減で中 止した。現在はアジ・フグの加工を行ない軌道に乗ろうとしている。
以上のように岩瀬浦第1漁協地区は揚繰網漁業から1本釣漁業へという漁業生産関係の変 化,漁協自営事業である定置網漁業の衰退と自営加工業の発足という新たな発展への過渡 的姿をみせている。
ところでこのように生産構造が転化過程にある地区内において流通形態もまたこれに対 応して変化してきている。再建発足後の岩瀬浦第1漁協は昭和38年に魚市場を開設し,39 年までは7人の地元仲買人による入札制で魚市場取引業務を行なっていた。昭和40年度に 取引業務を停止して漁協が運搬船をチャーターし各市場に向け出荷する販売事業を開始し 共販体制を確立した。他方地元仲買人は各自運搬船を持つ運搬船業も兼ねているため,魚 市場取引停止後は仲買業から運搬事業者へと転換し漁協と契約運搬(運搬保証金として10 万円納入)を行なっている。運搬船業者は漁協共販物の取扱よりも,現在は若松島の養殖 業者と契約し餌料や漁獲物運搬の比重が高くなっている。
ところで自営定置網漁業は浜山漁協と共同経営を行ない水揚・出荷等の業務は浜串漁協 が行なっているため資料を入手できなかったことをあらかじめ断っておく。なお自営定置 出荷形態は後述する委託販売と同様で,佐世保魚市場を中心に出荷されている。
さて漁協荷捌所に水揚された漁獲物は販売を漁協に委託する。漁協が取扱った数量は第 7表にみるように員外取扱高(奈良尾・神の浦の1本釣漁業者の搬入)が急激に増加して いるのが特徴的 この原因は共販体制が確立し価格が上昇したためといわれる。
安岡:定置網漁業地帯における流通形態 53 第6表 岩瀬二二1漁協自営定置年度別水揚金額 (単位千円)
昭 41 昭 42 昭 43 昭 44
ぶ り・雑 魚 41,674 (100) i 13,741 (33) 3,769 (9) 8,711 (21)
( )内は累年比 (年度は4月〜3月)
岩瀬浦第1漁協業務報告書より作成
第7表 岩瀬浦第1漁協販売事業 年度別 取扱金額 (単位 千円)
昭 41 昭 42 昭 43 昭 44
組合員取扱高 組合員外 〃
計
19,200 (98)
359 (2)
19,559 (100)
12,754 (81)
2,913 (19)
15,667 (100)
18,945 (72)
7,538 (28)
16,272 (56)
12,760 (44)
26,483 (100) 29,032 (100)
( )内は構成比
岩瀬浦山1漁協業務報告書より作成
これら委託物を前述した運搬業者の運搬船(17〜18丁型)に賃積し各市場に出荷する。
主要出荷先は佐世保魚市である。運搬船業者が7名と多数のため運搬船はクジ引きで決定 し輪番制で行なっている。運賃は1航海(岩瀬四一佐世保間)300箱までを22,500円とし,
それを越えた場合1箱につき75円割増している。さらに箱・氷・箱立人夫賃として1箱に つき120円を別途支払っている。つまり運搬業者は出荷を完全に請負い,産地での箱立か
ら出荷先までの経費として300箱単位で58,500円を受けとる。
出荷は活魚と止め魚両方の形態で行なわれている (出荷量は不明)。 活魚は京阪神向け が多く,佐世保まで運搬船の凶漢に入れ佐世保港内で止め,運搬船上で箱立し県漁連に委 託している。県漁連は冷蔵車で福岡板付空港まで運び夜間のムーンライト便を利用して大 阪市場の朝ゼリにかけている。 この際の県漁連運賃はトラック・飛行一代を含めK当り 170円(昭和45年度)である。また止め魚の京阪神出荷も若干行なっており三三連に委託
しているが,この場合は大阪までトラックで運びK当り運賃は130円である。
つぎに地元売は第8表のように少量で,地区内プリ売り人3名に佐世保市場価格の2割 引で直販している。
漁協自営加工をみると加工品はアジサクラボシ・フグミリンボシで周年操業を行なって いる。原料のフグは地元1本釣漁業の漁獲物を使用し, アジは奈留島のまき網漁獲物を現 地運搬業者に委託して買い取っている。ただ原料アジは近隣地区でも集荷が困難となって
きたため,長崎・佐世保市場および千葉の冷凍品を県漁連に委託し買い寄せている。 これ らの原料の保管は地元冷蔵庫を使用している。漁協業務報告書によると加工取扱高は43年 度260万円,44年度800万円と大幅な増加傾向にある。なお第18表中漁協加工とあるのが 漁協に加工原料用として販売されたものである。この加工品の主な出荷先は五島・佐世保 で,問屋または直接小売業者に売渡している。
以上が共販ルートによる流通形態であるが,この外の漁民の直接出荷は少なく1本釣漁 場が五島西目漁場に移るときに最寄漁協に水揚するものと,個人経営定置網水揚のうち約
第8表 岩瀬浦第1漁協取扱漁獲物の年度別 出荷先別 数量・金額 (単位 トン・千円)
佐長地漁 世保魚市
崎 〃 元 消 費
協加工用
計
昭41 数量金 額
175
(99)
1(1)
176
(100)
19,716
(99)
176 (1)
19,892
(100)
昭42 昭43
数量金町数個金額
gol N
ll{瀦
i74i
(76)
29
(12)
14
(6)
13
(6)
25,840 (98)
643 (2)
昭44
数』・金額
145
(100)
82
(62)
5(4)
46
(34)
26,296 (91)
2,736 (9)
15,626
(100) 2301 26,483
(100)i (100)
1331 29,032
(ioo)1 (loo>
L ( )内は構i成比
岩瀬一別1漁協魚市場魚種別取扱高表より作成
2割程度佐世保へ直接出荷している。現状ではこれらの数量は未詳だが地区内水揚に対し て大きな比重は占めていない。
(4)奈良尾漁協
奈良尾漁協地区内における漁業生産は第9表および第10表の通りで,昭和44年度は定置 網漁業漁獲物が地区内水揚高のうち数量で80%・金額で97%を占めている。定置網漁業以
第9表 奈良尾漁協自営定置 年度別 水揚高 (単位 トン・千円)
ぶ雑 り魚
十二ニロ
昭41
数等金額
昭42 昭43
数量1金額廠剰金額
81 1
(83)
36
(17)
51,172 (80)
12,537 (20)
48
(43)
65
(57)
1割(,ll
114,49Y . 49 (67)
(50)
9,366 (31)
20,210 (69)
昭44
数量1金額
217
(100) 63,709i 113i 29,411
(100)i (100)1 (100) 73
(100)
221 10,743
(42)1 (37)
311 17,658
(58)i (63)
2?i器li(1。1掘謝
( )内は構成比 (年度は7月〜6月)
奈良尾漁協業務報告書より作成
第10表 奈良尾漁協販売事業 年度別 取扱高
1昭41昭42昭43i昭44
数量(ト洌
金額(千円)
9 6 1,972
24 758
3 1
753
13 766 奈良尾漁協業務報告書より作成
安岡:定置網漁業地帯における流通形態 55
外では1本釣漁船30隻,および磯建網5統と部落経営の地曳網2統がある。定置以外の漁 獲物はほとんど他地区へ水揚し,組合販売取扱高としては昭和44年度で13トン・77万円弱 と地区内において水揚金額ではわずか3%弱をしめるにすぎない。 よって奈良尾漁協地区 は定置網漁業を中心としているといえよう。
漁協は自営事業として大型定置1統(ブリ定置)を経営しているが,第9表にみるよう にブリの漁獲が大幅に減少し,また総漁獲量も累年低下しており,昭和41年度を100%と すれば44年度は24%に激減している。しかし魚価は逆に上昇しているため金額比率は45%o を維持している。
また漁協は共販事業として漁協自営運搬船(40T型)で全量を長崎魚市場へ出荷してい る。この出荷期間は定置網漁期の11月から6,月までで,定置漁獲物以外に他種漁業漁獲物 も混載している (手数料2男)。 定置網漁期以外は運搬船による共販出荷は行なっていな いので運搬船遊休対策として45年度は月間30〜40万円で他の漁協にチャーターした。長崎 市場水揚以後は県漁連委託の直販で中央市場出荷を行ない,活魚の場合は大村から空輸し 大阪市場に出荷している(昭和44年度約500kg)。
さきにふれたように奈良尾漁.協では現在定置網漁業期間のみの受託販売であるため,期 間外には1本釣漁業者等は他地区(主に岩瀬浦第1漁協)へ水揚している。
3. 自営運搬船と傭船の運営
漁獲i物輸送形態は有川・魚目漁協両地区では自営船+傭船,岩瀬浦第1漁.協は全面傭船,
奈良尾漁協では自営船によっている。 このうち奈良尾は取扱数量が少ないため1隻の運営 であるが,他漁協では複数の運搬船を運航させ出荷をスムーズに行なっている。
昭和44年度業務報告書により自営運搬事業収支をみると有川漁協47万円,魚目漁協は12 万円の黒字を計上している。奈良尾漁協は582万円の赤字となり,自営定置の利益では補 填できず,事業外収益(大型まき網干課金1統50万円・昭和45年度で計1,000万円)によ
り補填し自営運搬事業を維持している。
自営船経営上の問題としては,乗組員労賃および諸経費高騰もさることながら,定置網 漁期外の夏期遊休の問題が独立採算的にみれば自営運搬事業の成否を決定する。 第11表は 魚目漁協自営船1隻の昭和44年度運航状況であるが,夏期における定置外漁獲物の受託販
第11表 魚目漁協 昭和44年度 自営運搬船(H丸) 月別運行状況 (単位 kg)
月 4 5 6 7 8 9
出 荷 数 量 航 海 数
1航海当積載量
17,960堰@21,483i
4] 6i,ggol
3,581ruli 一一vl
iO i
glE,ll,,r i,
21 1
3,302 420
1,252!39,。8ii
21 gi
ミ
626P4・34
月 11
6i,6201
iOi 6,162
12 1 2 3 きロ十
出 荷 数 量 航 海 数
1航海当積載量
55,413 10 5,541
s4,ssol 27,0771 ls,g40i l l
gi 61 s
6,0941 4,5131 3,788 1 i
11,6661it
2,333P
306,236
69
4,436
丁目漁協沿岸漁業構造改善対策事業施設使用状況報告書より作成
売運搬を1航海当り積載量が減少しながらも行なっている。 この運搬船の夏期遊休問題に ついては他地区でも同様で,定置漁獲物運搬収益によって夏場のその他漁業漁獲物の運搬 を可能にしているといえる。 したがって大幅に定置水揚の減少(=運賃収入の減少)をみ る場合は,到底夏期の少量輸送(主として1本釣水i揚)は行ないえない。 このため奈良尾 漁協では夏期は組合員水揚の共販事業を中止し,むしろ定置水揚減少による運搬船事業損 失を補うため他の漁協へ運搬船を傭船させていることはさきにふれたとおりである。
つぎに傭船方式による輸送についてみると,有川漁協と運搬業者(組合員)との間に下 記の契約が交されている。
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004
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記
有川町有川漁業協同組合の出荷指図を遵守し出荷先、積込魚類、出荷数量、出荷日の指定に対し て異議の申し立てをなさないものとする。
積込より出荷先陸揚完了まで責任は運搬船にて負うはもちろんいささかも組合に迷惑を及ぼさざ るものとする。
損害発生の確認及び代価弁済の査定は組合においてこれが決定をなす。
本契約の保証金として一金拾五万円也を組合へ現金又は組合定期貯金証書を担保として差入する ものとする。 、
組合以外の運搬に従事せんとするときは組合の承諾を受けかつ組合の出荷に支障をきたしてはな らない。
運搬船機械故障その他やむをえざる事故のため出航不可能又は出航順番を変更せんとするときは 組合にその理由を申し出て指図を受けるものとする。
鮮魚出荷代金の受領は組合の代理委任に依る場合を除く外一切これが受領をしてはならない。
運搬船の乗組員は4名以上とし4名以下となりたるときは積込を停止する。
出荷先において運賃より立てかえ支払いを受けんとする場合は運賃の範囲内とし事前に組合の承 認を受くるものとする。ただし出荷陸地より他に搬送したため仕切代金不明の場合は陸揚地計算 額の7割以内を運賃概算額の範囲とする。
前項の場合を除く外組合より運賃の前受、仮受又は一一般委託物品代の立てかえ相殺をしてはなら
ない。
漁船保険に加入し保険金の受領は組合を受け取り人とし債務の補償及び債務弁済に充当する。
運賃は出荷仕切金(陸揚手数量差引)に依り下記の割合による計算額とし魚箱、氷、油その他諸 経費は運搬船負担とする。
イ、弐拾万円未満の場合…・・………・………0.3 ロ、弐拾万円より参拾万円未満の場合…………0.25 ハ、参拾万円より五拾万円未満の場合…………0.21
二、五拾万円を越した金額に対して………0.1加算する。
積荷37.50トン以下をもって出荷し仕切金が弐拾万円未満の場合は油代として一金参千七百円也 を第12条の運賃に加算する。
長崎、佐世保以外の出荷地に運搬したる場合は油代として伊万里参千円、唐津五千円、福岡七千 五百円也を第12条及び第13条運賃に加算する。
契約期間は昭和45年8月 日より昭和46年冬漁期終了までとする。
傭船方式においては (1)労務費および諸経費の高騰は運賃利益内で業者負担とさせる。
(2)夏期水揚減少のときは契約解除とする。 このようにして自営船経営上の問題点を解消し える。ただ取扱数量が少ない場合には販売価格に対し運賃負担が増大し傭船が困難となる。
安岡:定置網漁業地帯における流通形態 57 以上漁協自営・傭船による運搬船運営方式において比較的生産力水準の高い自営定置を
もつ有川・魚目では自営船を所有し盛漁期に補完的に傭船する合理的形態がとりいれられ,
水揚量が減少した奈良尾は現状では自営船の運航を行なってはいるが,.今後水揚減少が続 けば輸送方法について検討の必要があろう。
4.地元仲買資本と漁協共販
調査地区内では地元仲買資本は定置漁業はもちろんその他漁業においてもほとんど結び つきをもっていない。すなわち漁協自営および共営団経営による定置網漁獲物の輸送を中 心とし,傭船・運搬船を含めて漁協が各市場に直接出荷販売する流通形態(漁協直販)に おいては地元仲買資本は完全に排除されている。
しかしながら魚目漁協にみられるとおり,共営団経営定置以外の漁業ではなお地元買付 業者との間に取引が行なわれている。他方岩瀬浦の場合漁業の中心は自営定置よりむしろ 1本釣にありながらも漁協直販へ進展させ,仲買資本は運搬業資本へと転化している。 こ れをみれば生産力水準の高い自営定置の場合は自営運搬船経営にとってきわめて有利な条 件ではあるが, さりとて自営もしくはそれに類する定置経営一般がその条件たりうるとは いえず,1本釣を含めて要は生産力水準の問題に帰するのである。すなわち地元漁業生産 力を基礎とした漁協が地元仲買資本を従属させうるかどうかにかかっており,自営・傭船 のいかんはコスト上の問題にすぎない。
地元仲買資本と漁協および漁業者との関係は今後さらに研究を続ける必要があり本報告 では以上にとどめておく。
5.結 論
以上上五島地区定置網漁業地帯における漁獲i物流通の実態を報告した。 ここで結論とし て要点をまとめ,現状における問題点と対策を考察する。
漁協共販活動は価格形成を底流とした,地元および中央の商業資本との対抗関係として 漁協魚市場開設にはじまる。すなわち価格の適正化を市場取引改善にもとめた,しかし商 業資本は仲買人としてセリ・入札に参加し, とくに離島の少数仲買人の場合は集団的相対 取引に近くほとんど仲買資本の一方的な価格操作(買いたたき現象)を不可避とする状態 であった。この買手市場を売手市場化するためには漁協直販の形態をとらざるをえず,自 営運搬船による漁獲物輸送がこれである。 この漁協直販の存立条件は一般的にはつぎの2 点である。(1)運搬コストの引下げ,すなわち商業資本による運搬利益搾取の排除。(2)出 荷の迅速性および価格調整の役割。そして①の条件を成立せしめるため調査地区におい ては定置網漁業が存在し,その漁獲量の安定と自営定置による漁協集荷の安定性がある。
この2点により自営運搬船所有条件が成立する。 また最近の不漁は自営船運搬コストの上 昇という現象をみせているが傭船併用でこれを解消している。有川・魚目漁協地区はこの 例といえよう。つぎに岩瀬浦のように運搬船基地的性格をもつ地区は,契約傭船の迅速性 を利用した漁協直販が可能である (前掲契約書第5条参照)。 以上述べたように漁 協共販 は積極的な市場価格引上げ,すなわち市場選択(佐世保・長崎)という点にその意義があ るといえる。
最後に調査地区内の中心漁業である定置網水揚をみると,自然条件の変化(海況の変化)
また人為的条件による資源量の低下のため漁獲量の減少に危機感をいだかせる。現状では 漁獲減に対応した魚価の高騰により金額的には安定している。 しかし今後漁獲量の上昇が
望みえないとすれば販売努力による価格上昇にはさらに比重がかかる。 このため各漁協は 多角的仕向市場の形成。とくに京阪神向け出荷量の増加をもって対応している。 だがもは や単協の枠内での集荷販売の条件や能力ではその限界は明らかである。そこで今後の対策 としては, まず第1段階として近接漁協(例えば有川湾内各漁 協)の共同集荷販売を促進 する。 さらに第2段階は上五島全域の共販一元化のための販売事業連合組織を作り,社会 資本の投入を計り,活魚運搬に重点を置いた共同運搬船を運航させて中央市場べの直販を 行なう。このような広域集荷による大量安定出荷体制への方向性を提起する。
附 言 本報告は昭和45年度科学研究補助金による研究の1部として発表する。
なお調査時は昭和45年10月下旬より11月中旬である。
参 考文 献
青塚繁志:−五島漁業の再生産構造と流通問題五島地域総合開発振興計画一現況編 205 (1963)
長崎県企画室