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ハルツ?改革とドイツ型財政連邦主義の行方

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(1)

ハルツ?改革とドイツ型財政連邦主義の行方

著者 武田 公子

雑誌名 金沢大学経済学部論集

巻 27

号 2

ページ 149‑173

発行年 2007‑03‑30

URL http://hdl.handle.net/2297/6264

(2)

ハルツⅣ改革 と ドイ ツ型財政連邦主義 の行方

武 田 公 子

は じめに

本稿の 目的は,公的扶助 と扶助か らの 自立 に対す る支援をめ ぐる事務事業 の執行主体 と費用負担をめ ぐる政府間行財政関係のあ り方を考察す ることに ある。筆者 はこれまで, ドイツ自治体財政の研究のなかで, この間題が自治 体 に とっての最大の財政課題の ひとつ とな ってきた ことに注 目してきた1。

ドイツの公的扶助制度である社会扶助 は,連邦法 によって 自治体 (郡及び郡 に属 さない都市を指す。以下同様) に義務付 けられた事務であ りなが ら,そ の費用負担は主 として自治体の一般財源 によって賄われて来,高失業を背景 とす る受給者の増加の下で自治体財政を著 しく圧迫 してきた という経緯があ る。2005年 に施行 されたいわゆるハルツ法 は,労働市場改革 の一環である と同時に,社会扶助をめ ぐる自治体 と連邦の間の役割分担 ・費用負担関係を 大 き く転換す るもの として登場 した2。本稿 はこの改革か ら約

1

年半を経た 段階での,改革の進行状況 とそ こで生 じてきている問題 とを検討す る。

その際 とりわけ,改革が施行 され る以前か ら問題 とな っていた次の点に着 日す る。第一 に,長期失業者に対す る生活保障給付の費用 は,連邦 と自治体 の間でどのように配分 されるべ きか, またこの費用負担関係 はどのように決 定 されるべきか,第二 に,新給付 (失業手当 Ⅱ)受給者の 自立 ・就労支援 に かかる業務 に関 して,連邦 ・自治体 の間で どのような分担 ・協力関係が構築 できるか,である。失業手当Ⅱは, 自治体 によって担われてきた 「社会保障 の最後の綱」 としての社会扶助 と,連邦雇用エー ジェンシーの実施す る失業 保険 ・雇用促進事業の枠組みで給付 されてきた失業扶助 とを統合す る形で創

‑ 149‑

(3)

設 された ものである。 それゆえに, この改革は州の頭を越え る形で,連邦 と 自治体の間での事務配分関係および費用負担関係を大幅に変更するものとなっ ている したが って, この改革 の行方 は,今後の ドイツの連邦制のあ り方や 分権化の行方 を占う意味 も持 っているのである。実際に, この間連邦制度改 革 も同時進行で進 め られてきてお り,069月には基本法の大幅な改正を含 む制度改革 が施行 されている。

結論的に言えば, この改革の行方 には未だ不透明な点が多 々残 されている。

前述の焦点の うち,特 に後者の点 につ いては,

0 8

年末 に最終的な結論 を出す もの として,実験条項 の下で今 なお試行 中であるためである また他の点に ついて も, 同法 をめ ぐってはすでに幾度 もの改正が繰 り返 されてきてお り, 最終的に確定 した段階 とはおよそ言 い難 い現状 にあるといえる。本稿 はさし あた り,施行か ら

1

年半 を経た段階 までの改革の進行状況 とその過程で生 じ ている問題点を捉え,改革 の今後の行方 を推測す ることを課題 とす る。

求職者基礎保障制度の運用上の諸 問題 1.相次 ぐ改正

求職者基礎保 障法 (社会法典第

2

編,以下sGBⅡと略す) は,

0 3

年12 に成立 し,

0 5

1

月 に施行 されたが,施行前に

3

度,施行後

1

年半 の間に

6

度 もの改正が行われている。改正の多 くは表現の修正や他法改正 に伴 う部分 的な改正であるが,大 きな改正 としては次 の三つが挙 げ られ る。

第一 は施行半年前 の

0 4

7

月の改正3であり, この主 内容 はSGBⅡの実施 主体 に関す るものであった。成立 当初の同法では,実施主体 は連邦雇用エー ジェンシー (Bundesagentur 鉛rAfbeit,以下BAと略す) の地域機関である 労働エー ジェンシー (Arbeitsagentur,以下AA と略す)が想定 されていた。

しか しこの改正 によって,SGBⅡの実施主体は次の三つのバ リエー ションを もっ こととな った。①AAが単独 で実施主体 となるモデル,②AAと自治体 が協 同 して設立す る協 同組織 (Arbeitsgemeinschaft,以下ARGEと略す) が 実施主体 となるモデル,③ 自治体が単独 で実施主体 となるモデル,である。

この改正 の趣 旨は, 自治体がsGBⅡの実施主体 として参画す る余地 を拡大

‑ 150‑

(4)

ハルツ改革 と ドイ ツ型財政連邦主義の行方 (武 田)

す ることにあ った。 自治体はこれまで社会扶助の実施を通 じて, その財政負 担を重荷 に感 じつつ も,地域雇用政策の担 い手 としての経験 を積み重ねてき たのであるが,

s GBⅡ

の実施主体が

AA

に限定 されて しま うと, 自治体 の政 策分野が大幅に縮小 されることになる。 これは特 に郡 に とって深刻な問題 と な っていた。 これまで社会扶助 は郡の業務 の半分以上を 占めるものであ った ためである。

S GBⅡ

の実施主体 を

A

A と して しまうと,郡 は旧社会扶助受給 者層の うち就労能力のない人 々,すなわち高齢者や障害者 に対す る基礎保障 (社会法典第

1 2

編,

s GB

Ⅶ) につ いては引き続 き実施主体 とな る ものの, そ の政策領域 は大幅に縮小 されて しまうことになる。従 って, 自治体,特 に郡

s GBⅡ

の実施主体 と して参入 してい くことは,郡 の存在意義 を維持す る 意味 ももったわけである。

第二 には,

0 5

1 2

月に行われた,連邦 と自治体の間の費用負担問題 に関わ る改正である4。施行時点での

S GBⅡ

では,連邦 と自治体 の負担関係 は次 の ように規定 されていた。 まず,連邦 は失業手 当Ⅱの基礎保障給付や受給者 を 労働市場 に統合す るためのプログラムの費用,およびこれ らにかか る行政 コ ス トを,前述の①〜③のいずれの実施主体かを問わず,全 て負担す ることと なっている これによって自治体 は従来の社会扶助給付のほとん どを軽減 さ れることにな ったわけだが,その代わ り,受給者 に対す る住宅費 (暖房費含 む)給付部分を負担す ることとな った。 これは従来連邦 と州が折半で負担 し ていた普遍的な住宅手当を,受給者 に対す るもののみ 自治体か ら給付す る仕 組み とした ものである。 しか しそれでは逆 に自治体の財政負担が過重 とな っ て しまうため,連邦 は住宅費給付の

2 9 . 1 %

を負担す ることとな った。 この連 邦負担比率 は, この改革を通 じて 自治体の財政負担を総額で

2 5

億ユーロ軽減 す る, ということを前提 とし,制度実施後半年 ごとに費用負担状況を検証 し つつ,負担率 を調整す ることとされていた (

4 6

条第6項 〜第

9

項)。 しか し,

s GBⅡ

実施後,予想以上の受給者 の増加や,連邦 と自治体の間の電算 シ ステムの相違か らくる数値把握上 の混乱 を背景 に, この負担比率の検証 は困 難化 してい った。連邦負担比率 を算 出す る際のデータ処理 の方法が,連邦 と 自治体の間で大 き く食い違 うとい う事態が生 じたのである。 こうした状況下 で, この法改正 は,

0 5

年および

0 6

年 の連邦負担比率を

2 9 . 1 %

に据え置 き, そ

‑ 151‑

(5)

れ以降の連邦負担率決定方式 は改めて規定 しなおす こととしたのである。

第三 には,

0 6

3月 に行われた改正5, および7月 に行われた改正6で,施 行後 に予想を上 回 って増加 した受給者数,特に住宅費給付の増加への対応策 として,不正受給の防止や給付条件 の厳格化,制裁の強化な どを含む もので あ った。次節 で述べ るように,

0 5

1月 のSGBⅡ施行以来,受給者 は増加 の一途をた ど り, また予想以上 に受給世帯Bedarfsgemeinschaft数が増加 した ことか ら,住宅費給付の額 も大 きな もの となった。3月の改正では,東西州 間に設 けられていた給付基準額の相違 を撤廃 し,西部州の基準 に統一す る一 方,それに伴 う給付額の増加を埋め合わせ るために,給付要件の厳格化,特

2 5

歳未満の対象者 に関す る申請上の制限や給付時の就労義務の強化が行わ れた。すなわち,若年者が単独世帯 として給付の申請 をす ることを制限 し, 原則 として

2 5

歳未満では親の世帯 に属す るものとして扱われることとなった。

また7月 に行われた改正では,統合措置 プログラムの拒否者 に対す る制裁措 置の強化や,不正受給を防止す るための調査員の配置などが盛 り込 まれた。

2.

受給者数の動向

この改革 はそ もそ も,失業 にかか る社会的コス トの削減,特 に財政負担上 のコス ト削減 に第一の 目的があ った。 しか し,結論的にいえば,大規模な制 度変革 に伴 う混乱や予測の不十分性な どか ら, この 目的は必ず しも達成 され ていない。 そ こで,実施前後の受給者 ・受給件数 と財政支出の変化について 検討 してみよう

まず , 受 給 者 数 ・受 給 世 帯 数 につ いて,BAの研 究 機 関 で あ るIAB (InstitutfurArbeitgmarkt‑undBerufsforschung)は,

2 0 0 4

年第一 四半期の数 値を もとに次 のように予測 していた7。すなわち,

1 0 1

万世帯

2 0 9

万人の社会 扶助受給者,

1 8 6

万世帯

3 8 9

万人の失業扶助受給者の うち,両給付の併給を差 いて,

2 8 6

万世帯

5 9 7

万人がsGBⅡの受給者 とな り, うち

3 2 1

万人が労働 市場への統合措置 の対象者 とな る, との予測である (残 りの

2 7 6

万人 は就労 能力のない世帯構成員)。新制度移行後の推移は表1に示 したが,受給者数 ・ 世帯数 は制度発足直後か ら社会扶助および失業扶助の合計を大幅に上回 り, その後 も増加 を続 けている。

‑152‑

(6)

ハル ツ改革 と ドイツ型財政連邦主義 の行方 (武 田) 1 SGBⅡ受給者数 ・受給世帯数の推移

受給世帯 受給者数 一世帯あた 給 付総 (千世帯) (千人) り給付 (e)

(百万e)

04年推計 2,86

1 5,976 05年1 3,329

6,119 848 2,824 05年6 3,

736 6,792 842 3,147 05年12 3,930 7,101 838 3,291 06年6

4,107 7,400 827 3,398 給付額は月額。<資料 >Bundesagentur蝕Arbeit,Statistikder

GrundsicherungAirjubeitsuchende nachdem SGB II(DatennacheinerW

artezeitvon3Monaten)各月 デー タよ り作成。

この受給者 の増加 の原因につ いて,政府 は連邦議会 での答弁 のなかで次 の 諸点を挙 げて いる8。 第一 に,求人 の伸 び悩 みであ る。景気 は回復基調 にあ る ものの, 労働市場 の動 きは未 だ鈍 く, 特 にSGBⅡの受給者 で あ る長期失 業者 にとっては就労先 の確保が未 だ困難 な状況である。第二 に,新制度施行 前の政府 の予測 は,社会扶助受給者 の うちの就労能力 のあ る者 と失業扶助受

給者 とをあわせ,両給付の重複分 を除 いた件数 を基礎 と して算 出 した ものであ っ た。 しか し蓋 を開けてみると,sGBⅡの申請者 には, いずれの給付 も受

ていなか った人 々が相 当数含 まれて いることが明 らか にな った。 これ には, sGBⅡでは資産算入が社会扶助 よ り緩 やか にな った ことや, これ まで あま り 活用 されて こなか った一時給付 の受給者 が増 えた ことな どの要 因が考 え られ

る。 しか しよ り本質的な理 由と して,社会扶助 の下で申請 を蒔蹄 させ る要 因 であ ったステ ィグマが,「失業手 当Ⅱ」とい う名称 の下では相対的 に薄 くな っ

た ことが挙 げ られて いる。答弁 にお いて引用 されてい る研 究 による と9,社 会扶助の受給要件 を満たす低所得世帯 の うち,

4 3 %

が社会扶助 を申請 してい なか った とされ るが, その理 由の多 くが社会扶助 をめ ぐるステ ィグマの存在

であ った との ことである。第三 に,純然 た る失業者 ではな く,就労 は してい ものの低収入であ り,所得を補完す る手段 として失業手 当を受給す るケー スが予想以上 に大 きか ったことが挙 げ られている。059月時

(7)

受給者 は約

9 0

万世帯,受給世帯の約

2 0 %

も占めることになる。第四に,制度 導入時の混乱が大 き く,受給者 の就労支援 に向けての十分なプログラムが提 供 されなか った ことが挙 げ られている。特に,

「1

ユーロジ ョブ」 と呼ばれ る統合措置の提供数が,初年度 は計画を大幅に下回 っていたことも,就労 と いう 「出口」 を狭 めて受給者 を滞留 させ る要因の一つであった と考え られて いる。

とはいえ,受給者の増加 に伴 って,政府側には次第 に不正受給への批判が 台頭 してきた。前述 のように,

0 6

7

月の改正で受給者の所得 ・資産状態に 対す るチ ェックを行 う検査員の配置が盛 り込まれたのは, こうした状況を背 景 とした ものである。また,受給者数の増加に比べて世帯数の増加が大きか っ た ことか ら,若年単身世帯 に対す る申請 の抑制を図 る意味で,25歳未満の失 業者が独立 した世帯 として住宅費給付を受 けることが原則的にはできないと い う仕組みに改めた。前出表 において

0 6

7

月 に受給世帯数が急減 している のはこうした制度改正の結果 と考 え られ る。

3.

財政負担の状況

上述のよ うな受給者数の増加 の結果,連邦 ・自治体双方 にわたる財政負担 もまた問題化 している。表

2

は制度改革前後の財政負担状況を示 した もので ある。 そ もそ もベーター ・ハル ツの名を冠 した委員会が これまで打 ち出 して きた4つの法律 は,労働市場改革 を通 じて失業の社会的 コス トを削減す るこ とに目的があ った。‑ルツ

改革 は特 に,長期失業者 に対す る重複性のある 二つの給付,失業扶助 と社会扶助 とを統合することを通 じて,連邦 ・自治体 を通 じた これ ら給付 にかか る財政負担を軽減す ることを 目的 としていた。そ こでまず, 旧制度すなわち失業扶助 と社会扶助が並存 していた04年での実績 と,制度統合後の05年の実績 とを比較 してみよう。04年の実績 における財政 支 出の総額 は386億 ユー ロであ るが, 旧制度が05年 に存続 した と仮定 した場 合の試算額 でいえば,435億 ユー ロとな っている。 これに比較すれば,05 度 の実績総額 は444億ユー ロであ り,結果的に言えば制度改革 による財政削 減効果 はなか った ことになる。 この試算 は,05年の実績 における受給者数 ・ 世帯数 に即 して旧制度の費用を算 出 した ものであるため, いわば純然たる制

‑154‑

(8)

‑ル ツ改革 と ドイ ツ型 財政 連 邦主 義 の行方 (武 田)

2 失業 にかか る財政 支 出 の変 化 (単位 :10億e) 旧法 (失業扶 助 .社会扶助) 新 法 (sGBⅠⅠ)

04年実績 05年試 算 05年実績

06年 予測 現金給付 (社 会保

険料 負担 含 む)

失業扶助 18.8 22.! 失 業手 当含 む)(付加 .一時給付 25.2 24.6 社会扶助(

就 労可能者) 7.8 8.4 住宅手 当 4.0

4.2 住宅 費給 付 12.1 12.4 合計 30.6 35.5 合計 37.3

37.0 統 合給 付

BA 4.

2 BA 3.6 6.5 自治体

1.3 自治体 0.3

合計 5.5 合計 3.6 6.

8 行政 費 用

連邦 1.2

連 邦 3.1 3.5

自治体 1.3

自治体 0.4 0.5

合計 2.5

3.5 4.0 総計 38.6 43.5 総 計 44.4 47.8

「05年試算」 は、 旧制度

が存続 した と仮 定 した場 合 の試 算。

<資料 >DeutscherBundestag,Ausschussd

mcksache16(ll)167. 度改変 による費用節減効果を

示 した ものであるが,政府が当初期待 した効果 はほとん どなか った といって

よい。

特 に新旧の制度の間で大き く異 な るのか金銭給付 にかかる支 出である。

はいえ,旧制度 における失業扶助 と社会扶助の給付合計 と,新制度 における 失業手当

の給付額 とを比較 してみれば,前者 は旧制度の試算では

31 3

億ユー

ロ,

0 5

年実績では

2 5 2

億ユーロと大幅 に減少 している。 そ もそ も失業手

の基準額は,ほとん ど社会扶助の水準 と同一であ り,失業扶助の受給者

にとっ ては給付水準の低下 を意味 していた。 その意味では,扶助給付額 の部分

で は かな りの支出削減 にな ったのである。他方,住宅 関係の給付 については

大幅 な支出増 となっている。そもそ も住宅手 当は普遍的な住宅保障制度の もと

で, よ り広範な層 に対 してなされる給付であ り,連邦 と州

(9)

は表2では社会扶助給付 のなか に含 まれているため,住宅手 当は主 として失 業扶助受給者 に対す るそれ と考 え られ る。SGBⅡの下 では,受給者 に対す る 住宅手 当は廃止 され, それ にかわ って住宅 ・暖房費が別途給付 され る仕組み とな った。従 って,住宅手 当 と住宅費給付 との間の相違 は,旧社会扶助受給 者層 に対す る住宅扶助分 が顕在化 した分 が大きい もの と考え られ る。

財政負担動 向を見 る上 で もうーっ注 目すべき点 は,連邦 と自治体の負担関 係 であ る。SGBⅡの第

4 6

条第

5

項 は, この改革を通 じて 自治体 の財政負担を 総額 で

2 5

億 ユー ロ軽減す ることを 目標 と して掲 げていた。 この点 に着 目して 前 出表2を見 ると, 旧制度 における自治体 の負担 は社会扶助給付 と統合給付 および行政費用 を合 わせて

1 0 4

億 ユー ロ,

0 5

年実績 での負担 は住宅費給付の うち連邦負担

2 9 . 1 %

を除 いた部分 と行政費用で

9 0

億 ユー ロであ り,

1 4

億ユー ロの軽減 にとどまっている。 自治体 の負担軽減如何の計算方法をめ ぐっては, 後述す るように連邦側 と自治体側 で異 な る主張がな されてお り,上記の数字 は簡略 な もので正確 で はな い。 しか し, いずれ にせ よsGBⅡに掲 げた軽減 目標 は達成 されていない状況 にある。

この ことは自治体側でのデー タ集計 で も明 らかにされている。表3は郡会 議が連邦統計局 との協力 を得て集計 したデータであ るが,オプション自治体 分 につ いてはデータ収集が不完全 であ ることか ら除外 している。 ここで見 る 限 り,

0 5

年 における自治体 の住宅費給付 に対す る連邦か らの財源移転 は

2 9 . 1

3 自治体の財政負担状況 (オプション自治体を除く、単位百万e) 05上半期 05下半期 06 州負担軽減の自治体への配分 200 32 半期

8 315 東部州に対する特別調整 400

437 426 連邦の住宅費負担 1,257

1,647 1,561

収入合計 1

,857 2,413 2,302 住宅費給付 4,704 5,61

3 5,859 統合措置

33 26 30

一時給付 63

112 102 支 出合計<資料 >DeutscherLandkreistag, 4,800 5,751 5,991

(10)

ハルツ改革 と ドイツ型財政連邦主義の行方 (武 田)

%には達 していないが, これにはデータ収集上の問題 もあると考え られ る。

現段階までの評価

ハルツ改革をめ ぐっては,06年半 ばに三つの評価報告書が出されている。

会計検査院,sGBⅡに関するオ ンプズ委員会, ドイツ銀行, それぞれの報告 書である。以下ではこれ らの報告書 における評価 を概観 し,指摘 され る問題 の焦点が どこにあるかを見ていきたい。

1

.連邦会計検査院の検査報告書

会計検査院は

5

1 9

日連邦議会 に対 し,求職者基礎保障制度 に関す る監査 報告書を提出 した10。会計検査院は独立 した機 関 と して連邦政府 の各業務 の 効率性や有効性を監査す る機関であ り,sGBⅡの実施 に関 して も主 として財 政運営上の適切性如何 という観点か ら評価 を下 している。 この報告ではSG BⅡの制度上の問題点や実施体制上 の不備 が厳 しく指摘 されたが, その際 に ARGEとオプシ ョンの両実施体制 を比較 しつつ,個別の点においていずれの

モデルでよ り問題が大 きいかを比較 しつつ論 じている点 も注 目され る0 まず第一 に,最大 の問題 とされたのは,統合措置の活用上 の不十分性であ る。統合措置 とは, いわゆる

「1

ユー ロジ ョブ」であ り,長期失業者 の就労 能力や適性を見極 める目的で, あるいは就労の習慣づけや訓練 の 目的で提供 され る短時間 ・暫定的な就労機会の ことである。05年 には,制度導入 に伴 う 混乱や受給者のプロファイ リングを行 う職員 の不足な どの状況下で,統合措 置が本格的に実施 されたのは年 の後半以降 とな ったため,半分近 くの予算が 使 い残 されたという経緯があった。会計検査院はこの間題が概 してオ プシ ョ

ン自治体に多 く見 られたと指摘 した。第二 に,受給者の就労能力,資産状態, 家族 における扶養関係等に関す る調査が不十分であるとも指摘 し, いわゆ る 不正受給が多 く存在す る可能性 を示唆 した。 この点 については,オプシ ョン 自治体 はARGEにおけるよりも, 資産調査 が迅速 に行 われて いるとの指摘 が されている。

第三 に,ARGEとオプションの間に,連邦か らの行政 コス ト保障のあ り方

‑157‑

(11)

に差 が あ る とい うこ とで あ る。 これ はSGBⅡにお け る両実施体制 の競争 と い う実験条項 の趣 旨に反 す る ものであ ると指摘 されて いる。

その他 に, 連邦政府 がARGEお よびオ プシ ョンの いず れの場合 に対 して ち,十分 な コ ン トロー リングを行 いえて いない とい う点, あるいは逆 に, オ プ シ ョン自治体 の一部 が,BAとの間の決済関係 を正 しく行 っていない, と い うこ と も指摘 され て い る。 要 は連 邦政府,BA,ARGE, オ プ シ ョン自治 体, とい う各 レベルの主体 の間 の協 同関係 が必ず‑Lも成功 していない とい う 評価 であ る。 これ に対す る会計検査 院の処方篭は,BAが よ り強 いコン トロー ルを持つべ き との結論 とな って い る。

2.

オ ンプ ズ委員会報 告

同 じ く6月 には, オ ンブズ委員会 の報告書が提 出 された11。 同委員会 はS GBⅡの制度 お よびその運 用 の適切性 を評価 し,必 要 な改正 や改善 を勧告す

る もの と して法施行前 に設立 された ものである。056月 に中間報告 を提 出 して いた12が, この時点 で は制度導入 時 の混乱 を背景 に,運用 の適正化 の必 要 が あ る技術 的問題 に重点 が置 かれて いた。最終報告 は,SGBⅡの今後 の法 改正 を も射程 に入 れ,実施主体 のあ り方 に も重点 を置 いて論 じた もの とな っ て い る。 また,先 に出た会計検査 院の報告書がマネ ジメ ン トや コス ト削減 と い った観点 か ら 「容赦 ない」批判 を展 開 したのに対 し, オ ンブズ委員会 はよ り内在 的な検討 のスタ ンスに立 つが, しか し両者 の報告書 には共通 した問題 点 の指摘 がな されて い る。

特 に頁 を割 いてい るの は,ARGEの組織運営上 の問題 であ る。 自治体,逮 邦労働社会省,BAの三者 間 の調整 に時 間を割か ざるを得 ない こと,権 限の 明確性 や柔軟性 に乏 しい ことが指摘 され, また この間 この間題 の解決策 と し て採 られて きた各主体 間の枠組 み協定 (後述) も有効 ではなか った と総括 し て い る。 この間題 に対す るオ ンブズ委員会 の処方隻 は,ARGEに独立 した組 織 と して の十分 な権 限 を付与 し, 連邦政 府・BA・自治体 か らの 自立性 を高 め るべ きで あ ること, またその際 に州 が これに対す る監督 の役割を果たす こ と, とな っている。

次 に問題 と して指摘す るの は,職員配置上の問題 であ る。予想 を上 回 る数

‑158‑

(12)

‑ルツ改革 と ドイツ型財政連邦主義の行方 (武 田)

の受給申請に対 して職員配置が追 いついていない状況,前述の電算 システム 上 の問題か らくる職員への負荷,求職者への斡旋 ・統合 に向けての業務手順 の未確立,職員の身分 ・労働条件上の法整備 の不備等が指摘 されている はいえ同報告 は, こうした問題 に もかかわ らず,職員の人的な尽力 によって 支援 に向けての努力がなされている点を賞賛 している。

また,制度施行以降の,連邦政府の予想を上 回 る受給者の増加 とそれに伴 う費用の上昇 については, 同報告 は前述の会計検査院報告 とは異 なる評価 を 下 している。すなわち,給付費用の増加のほとん どは,不正受給 によるもの ではな く,む しろ旧社会扶助制度の下で申請 を蒔曙 させていたステ ィグマが 減少 したことで, よ り多 くの申請要件者が顕在化 した もの と捉えているので ある それゆえ, コス トの増加を喧伝す る世論 に対 しては,む しろ社会 にお ける連帯意識の危機 を感 じる, という見方 を提示 している。

3.

ドイツ銀行の調査 レポー ト

ドイツ銀行調査部 は

2 0 0 6

8

9

日付で 「二人の コックが粥をだいな しに している」 と銘打 った調査報告 を発表 した13。 これは前二者 の公的な報告書 とは異なるが,経済界側の評価を代弁するもの として注 目される。 この レポー トでは特 に,労働市場活性化を掲 げて行われた‑ル ツ改革 に対す る失望 を露 わに し, また表題が示す ように,執行主体の二つのモデルの選択性 に苦言 を 呈 した ものとなっている。

この レポー トではまず,改革 に期待 された財政負担削減効果や労働市場活 性化効果等を実績 と比較 し,実施前の連邦政府 による予測の楽観性を指摘 し ている。

次 いで, この レポー トでは特 にARGEとオ プシ ョンの二つの実施体制 の 比較 に重点を置いて論 じている。会計検査院やオ ンブズ委員会の評価 は,覗 在の実施体制を当面 は存続 させ,改善を図 ってい くスタ ンスで論 じられてい るが, ドイツ銀行の レポー トはこうした選択 に批判的である。すなわち,二 つの実施体制の間で競争をさせ るのであれば,オプシ ョンモデルの選択をよ り開かれた ものにす るべきだ, との見解である オプションモデルはそ もそ ら,sGBⅡの実験条項 として導入す る際, このモデルを選択す る自治体数 を

‑159‑

(13)

連邦参議院の議席数 に準 じて州 ごとに割 り振 る仕組みに していたため,上 限

6 9

自治体 としている。 ドイツ銀行 はこれ に対 し,実施主体間の競争 を推進 す るため,実施体制の選択 を 自由化 し, また連邦か らの財源移転 に関 して も 成果向上や不正受給防止へのイ ンセ ンテ ィブを与え るような配分方法が必要 だ と している。 ただ し,現 時点では両者 の成果を比較す るためのデータに不 備 が多 く,sGBⅡの第

6 C

条 が想定す るよ うな,両体制 の比較 に基づ く最終 的な決定 は困難 だ と して い る。 とはいえ, 同 レポー トは現在のARGEの組 織 と しての将来性 には全 く悲観的であ り, 自治体がオ プションのように全て の業務 を 自ら実施す るか, あるいは業務 を全てBAに委ね るか, とい う選択 が新 たに設 け られ るべ きだ と主張 している。

4.

ハルツに対する評価 をめ ぐる論点

以上三つの報告書 はそれぞれに立場や役割の相違 があ り,報告か ら展望 さ れ る改革方 向はそれぞれ に異 な っている。特 に評価 が分かれ るのは次 の二点 であろう。

第一 に,受給者 の予想以上 の増加 とそれに伴 う給付増加 に関す る捉え方で ある。会計検査院および ドイツ銀行 はその原因の多 くが不正受給 にあると考 え,受給者 に対す る就労能力,資産状態,扶養関係等 に関す る調査 を徹底す るべ きと主張 している。 これ に対 してオ ンブズ委員会の見解では,受給者 の 増加 は旧社会扶助下 におけるステ ィグマの減少をむ しろ積極的に捉え,受給 者 に対す る斡旋 や対人 ケアを通 じた 自立促進を重視 してい くべきとしている。

第二 の対立点 は,SGBⅡ実施主体 のあ り方 についてである。 いずれの報告 ち,ARGEにおける自治体 とAAの協同が成功 していないこと,またオプショ ンにおいて も連邦政府やBAとの連携が十分に機能 していないことを指摘 し ている。 この間題 に対す る三つの報告書 の処方等 はまさに三様である。会計 検査 院 は両実施 モデル に対す る連邦政府 の, またARGEに対す るBAの コ

ン トロー リングがいずれ も機能不全 に陥 っていると し,集権的なコン トロー リングの構築 を求 めている。 オ ンブズ委員会はこれ に対 し,ARGEが独立 し た組織 として十分な権限を移譲 され るべ きであ り, また これに対 しては連邦 政府 よ り州政府 が監督権 を もつべ きだ と している。 ドイ ツ銀行 はARGEの

‑160‑

(14)

ハルツ改革 と ドイツ型財政連邦主義の行方 (武 田)

ような一種の混合行政が多々の問題を生んでいるとの理解 に立 ち,当面 はオ プ シ ョンとARGEの競争関係 をよ り活性化 させ るべ きであ るが,将来的 に は全て自治体 による実施か,全 て AA による実施かのいずれかの形を とるべ きだ と主張 している。

とはいえ,いずれの報告 において も, 旧社会扶助の稼働層への支援 と旧失 業扶助 との統合 とい う‑ルツⅣ改革の基本的枠組み 自体 は評価 されている。

両制度 における給付や就労支援施策の重複性 を除 き,「ひ とつの手か ら」支 援 を行 うとい うSGBⅡのあ り方 その ものは支持 されて い るわけであ る。 問 題は, この 「ひとつの手」のあ り方,すなわち給付や支援施策の実施主体が, 連邦 レベル,州 レベル, 自治体 レベルのいずれを中心 に行 うべきであるのか, また複数の主体が協 同 して行 うことは可能であるか, またいかに してか, と いう問題 にあると考 え られる。

さらにあわせて,三つの報告書 のなかでは十分 に言及 されていないが, こ の実施主体のあ り方 に関わって,費用負担のあ り方 もまた重要な争点 とな っ ている。すなわち,連邦政府 と自治体の間での,住宅費連邦負担率 をめ ぐる 対立である。上記三報告ではこの点への言及 は意識的に迂回されている観が ある。それは, この間題の解決 には正確 なデータ収集が必要であるに もかか らず,電算 システムの不備 によ り,各主体 の コス トデータが十分 に収集 され 得ていないという事情 にも規定 されている。 しか しそれ以上 に, この間題が 政府内部での負担配分の問題 として, あるいは連邦 と自治体の間で解決 され るべ き問題 として捉え られているのではないか とも推測 され るのである。 そ こで次章では,SGBⅡの実施主体 のあ り方 と費用負担関係の問題 に焦点化 し て検討 してみたい。

実施主体 と費用負担をめ ぐる論点

1. 自治体負担軽減 と住宅費給付連邦負担率 に関する動 向

前述のよ うに,施行時点でのSGBⅡ

4 6

条 は, この改革 を通 じて 自治体 の財政負担を25億ユーロ軽減す ることを うたい, そのために自治体が受給者 に給付す る住宅 ・暖房費給付の一定割合を連邦が負担す るもの とした。 その

‑161‑

(15)

際, この負担比率 を当初 は

2 9 . 1 %

とした上で,

0 5

3

月および

1 0

月 にこの負 担軽減が達成 されたか否かを検証 し,その結果を踏 まえて この負担比率を

0 5

1

月 に遡 って修正す ることと していた (

4 6

条第6項)。 また,

0 6

年 の連 邦負担比率 につ いては

0 5

1 0

月の検証を踏 まえて算 出 し,それ以降の負担比 率 については前年

1 0

月の検証 によって決定 してい くものとした (同第7項)0

この検証方法 については,同法の 「付則」が詳細 に規定 していた。すなわち, 改革 による自治体 の負担軽減要素 と負担増加要素 との差額が

2 5

億ユーロとな

るように連邦負担比率 を計算す ること, および各要素の構成項 目と算出に際 して基準 とす る統計等が明示 されていたのである。

しか し法が施行 され るなかで, この検証が極 めて困難であることが明 らか にな った。最大 の原因は,

BA

および各地域の

AA

が採用 していた電算 シス テム (A2LL)と, 自治体 の社会扶助 当局 の多 くが採用 して いた システム (Ⅹ‑sozial)が異 な り,両 ソフ トウェアの互換性がなか ったことである。ARGE の多 くは,

A

A の事務所 であ った ジョブセ ンターの電算 システムを使用 した が,約3割のARGEで はⅩ‑Sozialを採用 していた。 この場合 には給付デー タは直接 には

BA

に送 られず,手動でのデータ置換が必要である。それゆえ, ARGEではA2LLへの システム変更がすすめ られてきたが,その間の統計 は 推計で処理 されてきたのであ り,実施か ら

1

年半経過後 もなお

5%

ARGE ではシステム変更が完了 していない。 よ り重大なのは,オプションモデルを 選択 した

6 9

自治体 に関す るデータ収集 の問題である これ らの 自治体では従 来 どお りⅩ‑sozialを使用 しているため,

BA

ではこれ らの自治体での給付状 況 に関す るデータを正確 に把握できていないのである。 こうした状況下で,

「自治体の財政負担

2 5

億 ユー ロ」 を達成す るための検証 に関 して,連邦側 と 自治体側での計算結果 に敵齢が生 じることとな った。

しか し問題 はそれに とどま らなか った。SGBⅡ付則 に盛 り込 まれていた算 出方法 に関 して,連邦 と自治体 の間で解釈の相違が生 じたのである。算 出方 法 は, 自治体 にとっての負担減要素か ら負担増要素を控除 した額が

2 5

億ユー ロとなるように連邦住宅費負担率 を定 め るというものであるが, この うち負 担減要素の算 出について,連邦 と自治体 の見解 は次 のように異なっていた14。

第一 に,予測 を上回 って受給者が増加 したことによる費用をどのように捉

‑162‑

(16)

ハルツ改革 と ドイツ型財政連邦主義の行方 (武 田)

え るか とい う問題であ る。 この原 因の一つが旧社会扶助 の下 で申請 を腐跨 し ていた層が顕在化 したため と考 え られ るとい うことは先 に述べた とお りであ る。連邦政府はこの点を捉え,本来社会扶助を受給 しているはずであ った人 々 sGBⅡによる給付 を受 けるよ うにな ったので あ るか ら, この人 々が社会 扶助 を受給 していた場合 に要 したであろ う費用 を 自治体 の負担軽減分 に算入 す るべ きだ とし,それ に基づいた算 出を行 ったので あ る。

また第二 に,そ もそ も自治体 に とっての負担軽減額 を,

2 0 0 4

年 のデータを もとに一定額 に固定化す るか, あるいは旧制度 が存続 したであろ うと仮定 し て給付総額 が毎年一定割合で増加す るもの と捉え,軽減額 をそれにスライ ド させ るか, という問題 である。連邦政府 は旧制度 が存続 した場合,受給者 が 年 に

7%

増加 したであろ うと仮定 し, これを 自治体 の負担軽減額 に算入 して いる。 これ に対 して 自治体側 は負担軽減額 を

0 4

年 の実績 に基づ く一定額 と し て計算 している。 自治体側の主 張では,例 えば州 が 自治体 に対 して委任事務 を行 う場合, 当該業務 が もた らした費用増加 に関 して, あ る時点での固定額 か らの増加分を算 出す る方法が一般 的 に採用 されて い るとい うことが根拠 と されている。

こうした連邦政府 と自治体 との間の算 出方法 の相違 の結果, 自治体 に

2 5

ユー ロの負担軽減を実現 させ るために必要 な連邦政府 の住宅費負担比率 は, 連邦政府 の計算 によれば

1 6 %

, 自治体 の計算 によれば

4 2 %

, とい う大 きな懸 隔が生 じたのである

0 6

年 における連邦政府負担比率 の決定 をめ ぐって,

0 5

年末 には連邦政府 と 自治体代表団体の間で攻防が展開 された。最終 的 には前述

0 5

1 2

2 2

日付 の 法改正 で決着 したよ うに,

0 6

年 には連邦負担比率 を

2 9 . 1 %

に据え置 き,

0 7

以降の負担比率 につ いては改めて規定す るとい う安協 に至 ったのであるが, つ まるところこれは問題解決の先送 りに過 ぎなか った。 これ と同 じ議論が

0 6

年末 には再 び展開 され ることにな ることは必至 であ る。 さ らに,

0 5

年末 の決 着 がsGBⅡか ら負担比率算定手続 きに関す る規定 (

4 6

条第

6‑9

項, 付 則) を削除す るものであ ったことは, この間題 の解決方 向を一層不透 明な も の と して しまった。連邦 と自治体 の間で一旦合意 した負担率決定手続 きを白 紙 に して しまうことで,今後の議論 を‑か ら始 める必要が生 じたためである。

‑163‑

(17)

0 6

1 1

月 には,

0 7

年 の連邦負担 に関す る一応の決着 を見 対前年

4

億ユーロ の連邦負担の増額 で合意がなされたが,結局のところ

2 5

億ユーロの 自治体負

担軽減 は達成 されないことが明 らかにな った。 また恒久的な連邦負担率の算 定 に関す る決着 は08年 までに持 ち越 され るという結果 となっている150

2.

実施主体をめ ぐる状況

sGBⅡの実施主体 に関 しては,‑ル ツ改革 をめ ぐる前述の三つの評価報 告が三様の処方等 を書 いていた ことか らも察せ られ るが,未だ先の見えない 問題 とな っている。 ここでの さ しあた りの焦点 は,第一 にARGEにおける AA と自治体の協 同関係のあ り方 とイニ シャテ ィブの所在,第二 にARGE オプシ ョンかの選択 の問題 にあると考 え られる。 そ こで以下ではこの二点 に ついて検討 を加えてい く。

まず,ARGEの体制上の問題 について。ARGEにおけるAA と自治体の協 同をめ ぐっては,BAと自治体 の指揮命令系統の混在 とARGEとしての意思 決定 システムの弱 さが しば しば問題 とな っていた。法施行直後の混乱肴解決 す るため,連邦経済労働省,連邦労働エー ジェンシー, ドイツ都市会議, ド イツ市町村 同盟 はARGEにおける運営 についての協定を結んだ16。 なお, 自 治体代表団体 の うち, ドイツ郡会議 はそ もそ もARGEは基本法 で禁止 され ている混合行政 にあた るとして違憲訴訟 をおこしている経緯 もあ り,そもそ ARGEの設立 自体 に懐疑的な立場をとるため, この協定には参加 していない。

この枠組み協定 は,ARGEの執行体制 における権限関係の整理 と明確化を 図 るとともにARGEの実施者総会 にお ける自治体 イニ シャテ イブの可能性 を保障す ること, またBAによるコン トロー リングのあ り方を定めること, を 目的 と した.ARGEの実施者総会Tragerversarrm lun gとは, 自治体 とAA 双方 か らの代表者 によ って構成 され るARGEの最高意思決定機関である。

そ こでの両者 か らの代議員構成如何 によ ってARGEに対す る双方 の影響力 が異な って くるのであるが,例えばARGEの職員構成で見 ると

5 4 %

AA,

4 6 %

が 自治体 とい う比率 とな ってお り,代議員数 をこの比率で割 り振 るとす れば, 自治体 がARGEの意思決定 においてイニ シャテ イブを発揮す ること はできない。枠組み協定ではこの間題 を クリアす るために, 自治体が一定の

‑164‑

(18)

‑ルツ改革 と ドイツ型財政連邦主義の行方 (武 田)

基準 を満た した場合 には, 自治体側か ら過半数の代議員を送 ることができる もの とした。 この基準 とは,例えば失業者の労働市場への統合, ターゲ ッ ト グループの就職率,給付削減率,等の点でベ ンチマー クを定 め,それぞれの 最低条件を達成 した場合には自治体の過半数取得を認 めるというものである。

この枠組み協定の もとで,約

1 0 0

の 自治体がARGEの実施者総会での過半数 を握 り,イニ シャテ ィブを発揮 しているとされ る17。

しか し,実施者総会で 自治体 が過半数 を握 った と して も, それを通 じて BAに対 して影響力 を及ぼ しうるか否かはまた別の問題である。 とりわけ地 域構造問題 を抱え る失業率の高 い地域 においては, 自治体 がARGEを通 じ て地域雇用市場 に影響を及ぼす余地 は限 られている。 また,先 のオ ンブズ委 員会 の最終報告書 において も,枠組み協定が期待 したほどの効果を もた らし ていないとしている。要 はBAによる集権的 コン トロールが強 いあま り,実 施者総会での過半数 は自治体の政策的余地を拡大す ることにな らない, とい

うのが実態 と考え られ る。

他方,オプション自治体の状況 については,前述 のように, データ収集上 の問題があ り,ARGEとの比較 においてそのパ フォーマ ンスを比較す ること は不可能である。ただ し, ドイツ郡会議がオプション自治体 を中心 としたア ンケー ト調査を実施 してお り, その調査結果18を参照す ることができる。 こ の調査 は, ドイツ郡会議が都市 ・ヨー ロッパ研究所 (Intemationalelnstitut鉛r Staats‑undEuropawissenscha鮎n(ISE))に委託 した ものであ り,

0 6

2

月末 に 全郡 とオプション自治体 (6都市 を含む) に対 して実施 したア ンケー ト調査 の分析を行 った ものである 対象 自治体

3 3 0

の うち

2 3 5

団体,約

7

割の回答を 得ている。

ア ンケー トではまず, 自治体 が再 度選択機 会 を与 え られ る とすれ ば, ARGEとオプションのいずれを選択す るか という問いを行 っている。 回答 し たオプション自治体 は全て,今後 もオプションを続 けるとし,ARGE自治体

5 6 %

はARGEを選択す ると回答 した。ARGE自治体 の残 り

3 2 %

は,再選 択 の可能性 があればオプションを選択す ると し,

1 2 %

の 自治体 は分離形態 (AAと自治体が別 々に職務を実施す る) を選択す ると回答 した。 また,実 施主体の選択 に際 して,オプシ ョンを選んだ 自治体では, 自らの裁量の余地

‑165‑

(19)

が よ り大 き い もの と判 断 して決 断 を した との回答 が多 か ったの に対 し,

ARGE

自治体 では地域的失業率 の高 さに鑑 みて単独で この事務 を実施す る上 での困難 を予想 し,防御的な観点か ら決定 した傾向が見 られ るとしている。

実際,オプ シ ョン自治体 の

8 9 %

は自治体 の政策的余地 が拡大 した と考 えてお り,

1 1 %

は不変 と回答 した。

ARGE

で は

1 3 %

が拡大,

4 8 %

が不変,

3 9%

は縮 小 した と回答 した。 また,回答 した 自治体 の

9 1 %

は,前述の ドイツ銀行 の レ ポー トにおける提案 と同様 に,実施主体 の選択を 自由化 してい くべ きだ と回 答 している。

また,実施体制 の問題 として,受給者 の増加 に対 して職員配置が追 いっい ていない状況 は一般的に指摘 されていることであるが, この調査ではオプショ ンと

ARGE

の間で も状況 に相違 が あ るこ とが明 らか にされてい る。 すなわ ち,職員配置 につ いては,職員一人 当た りの担当件数 の上限を,給付担 当職 員 と斡旋担 当職員 のそれぞれにつ いて,各実施主体が定めることにな ってい るのであるが, この上 限 には次のよ うなば らつ きがあるとされ る まず,袷 付担当職員 の配置 につ いては,

ARGE

1 0 %

,オプシ ョンの

2%

で給付担当 職員が担 当す る受給世帯数 の上 限を

2 0 0

件以上の水準 に設定 してい る。他方 で, オ プ シ ョンの

1 9 %

,

ARGE

1 2 %

で は, この上 限を

1 2 0

件以下 に設定 し て い る。 斡旋担 当職員 の配置 につ いて は, オプ シ ョンの

3 5 %

および

ARGE

1 1 %

は職員一人 当た りの求職者数 の上 限を

1 3 0

以下 に,オ プシ ョンの

4 3 %

お よび

ARGE

2 7 %

1 3 1 ‑1 7 0

件 に設 定 して い る。 オ プ シ ョンの

2 2 %

,

ARGE

6 3 %

では職員配置基準 はさ らに劣悪な状況 にある。

こうした職員配置 に規定 されてか,受給者の労働市場への統合 における実 績 について も相違 が生 じている。SGBⅡの実施主体 は,受給者 との間で 「 合協定」 と呼ばれ る支援 プログラムに関す る合意 を とりつつ,労働市場への 統合を進 めることとな っているが,

0 5

年 の実績で見 ると,

ARGE

4 0%

,オ プシ ョンの

2 8 %

では統合協定を結ぶ ことができた受給者 は

4 0 %

以下で しかな い。オプションの

2 3 %

,

ARGE

1 8%

ではこの協定締結率は

4 0 ‑6 0 %

である。

オプシ ョンの約半数,

ARGE

4 3 %

で は

6 0 %

以上の受給者 と統合協定 を締結 で きてい る。 その結果,

「1

ユー ロジ ョブ」 と呼ばれ る統合措置 に関す る予 算 の消化率 に も相違 が生 じている。すなわち,オプシ ョンの

3 1 %

,

ARGE

一 166‑

(20)

‑ ル ツ改革 と ドイ ツ型 財政連邦主義 の行方 (武 田)

4 7 %

は統合予算 の消化率 は半分以下 で あ る。 消化率が

7 0%

を超 えたのは, オ プ シ ョン自治体 の

4 5 %

,

ARGE

で は

4%

に過 ぎない。

以上 のよ うに,郡会議 のア ンケー トで は, 自治体 にお け る裁量 の余地,職 員配置,受給者 の統合 な どの点 において, オ プ シ ョンモデルの優位性 が報告 され て い る。 郡会議 は

S GBⅡ

の成立 時点以来一貫 して

ARGE

にお ける混 合 行政 の問題性 を指摘 し,法実施 にお ける自治体 の主導性 の確保 を強 く求 めて きてお り,前述

0 4

7月の法改正 において もオプ シ ョンモデル を実験条項 と して盛 り込 む ことを強 く求め, それを勝 ち取 って きた とい う経緯 があ る。 そ れゆえ, オ プ シ ョンモデルの優位性 を強調 す るこの調査報告 には若干 のバ イ アスが働 いて い ることに留意 が必 要 で はあ る しか しなが ら, 前述 の

S GB

に関す る三つの評価報告 に も現 れて いた よ うに,

ARGE

にお け る協 同が必 ず しも良好 に機能 していない状 況 が,逆 にオ プ シ ョンへ の相対 的な評価 を高 めて いると捉 え ることもできよ う。

また, 図

1

BA

ARGE

お よびオ プ シ ョンを通 じて収集 し得 ているデー

図1 受給世帯数 の推移 (04年社 会扶助受給者世 帯数 を100と した指数) 600

550 500 450 400 350 300 250 200 150 100

一一〇一 西部郡壬 東部郡A

一一去「.一西部耶0A 東部郡0

‑‑トー・酉都市

H●日 東都市AA

‑‑A‑‑‑西部市o 05年1 3 5 7 9 11 06年1 3 5

<資料 >BundesagenturAirArbeit,StatistikderGrundsicherung鉛rArbeitsuchendena

(21)

夕である,受給世帯数の各月集計を もとに作成 した ものである。概 して東部 地域 においては社会扶助受給者 よ り失業扶助受給者の方が相対的に多か った とい う事情 を反映 し,改革前 に比べて受給世帯の数 はかな り増加 した状況が うかがえ る。 オ プシ ョンとARGEとの間の比較でいえば,東部州 の郡,西 部州の郡,西部州の市,の三分類 においていずれ もARGE(丸印マーカー) に比較 してオプシ ョン (三角マーカー) の方が受給者 の増加の度合 いが小 さ いとい うことがわか る。 ここか ら単純 にオプションモデルの優位性 を結論づ けることは適切 ではないが,前述 の郡会議 の分析の妥当性 を示唆す るもの と はいえる。

3.

基本法改正 の影響

前述 のよ うな,sGBⅡに関す る財政負担 と実施主体 をめ ぐる改革方向の不 透明 さに加えて,

0 6

9

月 に発効 した連邦制度改革 (基本法改正) は, ドイ ツにおける政府間財政関係 の行方を一層複雑化 させ ることとな った。

連邦制度改革 は, シュ レーダー政権下 の

0 3

4

月 に改革の必要性 と連邦政 府の見解 が示 され19,検討 のための連邦制度改革委員会が設置 されて以来, 政権交代 をはさんで

3

年間をかけて検討 が進め られてきた。 この委員会の課 題 は,第一 に欧州統合 の進展の中で連邦基本法をEU法 に対応 させ ること, 第二 に連邦の立法過程の迅速化を図 るために,連邦 と州の権限,事務配分, 財政責任 を明確 に区分 し,連邦の立法 における参議院の協 同権をそれに対応 させ ること,第三 に東部諸州の事情 を勘案 しつつ,連帯的連邦制の強化 と競 争的要素 によるその補完 を図 ること, といった点 に置かれていた20。 この う ち特 に第二 の点 は,連邦 ・州 ・市町村 の間の権限関係を整理す るという意味 において,‑ル ツⅣ改革 をめ ぐる政府間行財政関係の錯綜問題 に密接 に関わ る問題である。

ドイツの連邦制度 において,連邦参議 院の存在 は,各州代表 によって二院 制の一翼 を構成す ることによって連邦 と州 との対等な関係を保障す る意味を もってきた一方 で,時 々の連邦政府 にとっては,立法過程 において絶えず州 側‑の妥協 を強 い られ るという点で 目の上のコブとも捉え られてきた。今回 の基本法改正 は,立法 に際 して連邦参議院の同意を必要 とす る範囲を縮小す

‑ 168‑

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