補助金 と相殺 関税 の経済分析
一完全競争 モデルー
佐 竹 正 夫
1
.は じめに私 は 『貿易 と関税』 (日本関税協会)
1 9 9 0
年4
月号 に掲載 した論文 で, 補助 金 と相殺関税 に関す る 『関税 と貿易 に関す る一般協定』( GATT)
のル ール を批判 して,経済学者 の伝統的な見解 に もう一度立 ち戻 ることを勧 めた。 1) 周 知 のよ うに,GATT
は第1 6
条で輸 出補助金 を禁止 し,第6
条で相殺関税 の賦 課 を認 めている。 これに対 し伝統的な見解 は,単純 に次 のよ うに議論す る。す なわち,GATT
のル‑ルは生産者 の立場 を重視 し過 ぎてお り,‑国全体 の観 点 か らみ ると,補助金 (輸 出であれ生産であれ) はそれを交付す る国 に有害 な 効果 を持 ち,逆 に補助金付 き輸 出品を輸入す る国 にとっては利益 になるO補助 金 は,輸 出国 にとって は国内生産者 に利益 を与 え る以上 に一国全体 に負担 にな る。 それ に対 して輸入国 にとって は,輸 出国の補助金政策 による価格低下 は, 技術革新 による価格低下 となん ら変わ るところはな く,利益 を享受で きる。 そ れゆえ,補助金 をあえて規制す る必要 はな く, またそれに相殺関税 を課す こと は輸入国 にとっては必ず しも利益で はない。輸入国が大国であれば,相殺関税 といえども最適関税 にな りうるか ら,輸入国が相殺関税によって利益を得 るケー スがない とはいえない。 しか しそれは補助金の存在 とは関係 のない議論で, こ の最適関税論が相殺関税 を擁護 で きるとは考え られない。 したが って,補助金1 )佐竹 ( 1 9 9 0 )
〔1 〕
を規制 し,相殺関税を認 めている現在 のルールは,補助金 についてはその規制 をで きるだけ緩 め,相殺関税 は撤廃す る方が望 ま しい。 2)
このような議論 に対 して, もちろん多 くの批判があるが,経済学的に有力な 議論 と考 え られ るのは,次の二つであろう。 一つは上 の伝統的な見解 と同様 に 完全競争 モデルに立脚す るが,補助金 の世界的な資源配分 に与える効果 に注 目 して,補助金 はそれを歪 める点で好 ま しくな く,・(特 に輸出補助金 は) 奈止 さ れ るべ きであると主張す る。第二 は,現実の世界 は伝統的な見解が想定す るよ うな完全競争で はな く,不完全競争であるとい う立場を とり, それを前提 にす ると,伝統的な議論 と異 な り,補助金 はむ しろ交付国に有利 に,貿易相手国 に 不利 に働 く作用があると論 じる。 したが って輸 出補助金 は輸入国の立場か ら規 制 されるべ きだ という政策的立場が導かれる。 これは近年流行 している戦略的 貿易政策 の考え方 である。 3)
前者 の代表的な見解 は, コーネル大学 の国際法学部 の准教授であるパルセロ
( Bar c e l o, 1 97 7 )
lに見 られる.パルセロは,輸 出補助金 は一般 的 に禁止 され る ことを主張す るが,その論拠 として,輸入国の立場か らしば しばなされる,外 国政府の補助金政策が短期的で安定的でないために生産者の被 る切 り替えの費 用( c os tofpr oduc t i onc hange ove r s )が安価の輸入 によ る利益 を上 回 る, あ
るいは補助金が侵略的な性格 を有 しているといった主張を退 けて,補助金が世 界的な資源配分 の観点か ら望 ま しくないとい う点を挙 げる。パルセロは,補助 金のそのような効果 につ.いては,有名 な ミー ド( Jame sMe ad)
のTr a d ea n d
We l f a r e , Oxf or dUni ve r s i t yPr e s s,1 95 5iL. Ye age randD. Tue r c k , Tr a d e Po l i c ya n dTh ePr i c eS y s t e T n, 1 9 6 6
を参考文献 としてあげる。 私 は後者 につ2 ) このような見解 は,例えば Cor de n( 1 9 7 4 )pp. 2 4 4‑6 や,邦語 の文献で は,小宮 ・ 天野 ( 1 9 7 1 )p. 1 2 7 に見 られ る。ハ フバ ウア一 ・エル ブ ( Huf baue randEr b, 1 9 8 4 )
は, このよ うな見解 を ,I nj ur y‑ Onl ySc hool と名付 け,代表 的な論者 として リチャ ー ド・クーパ ー ( Coope r, 1 9 7 8 ) を挙 げている。 それに対 して,補助金 が資源配分 を悪化 させ ることを重視 して, それ を強 く規制 す る ことを主張 す るグル ー プを, Ant i di s t or t i onSc hool と呼んでいる。
3 )Kr ugman ( 1 9 8 6 ),He l pmanandKr ugman ( 1 9 8 9 ) が代表的な書物である。
補助金 と相殺関税の経済分析一完全競争モデルー 3
いて は参照 していないので, どのような手法で補助金が世界的な資源配分 に与 える影響 を分析 しているのか分か らないが, ミー ドの大著 は数値例 を使 い,言 葉 による説明である。 ミー ドの議論 のエ ッセ ンスは,コ‑デ ン( Max Cor de n
,1 971,1 97 4 )
によって簡単 な幾何図形で説 明 された。輸 出補助金 が (あ るいは国内の生産補助金で も), それが ない 自由貿易 の世 界 に比べ ると世界的な経済厚生を悪化 させ るとい うのは, マイナスの補助金で ある関税 の分析を思 い起 こせば明 らかであろ う。 しか し補助金が輸 出入国並 び に世界 の資源配分 と経済厚生 にどのように影響す るのかを,きちん と分析 した もの は, あま り見受 け られない。 また輸 出補助金 と国内の生産補助金 の及 ぼす 影響 の違 いにつ いて も明確 に示 されてはいない。 さ らに補助金 に対す る輸入国 の相殺関税 の効果 に関 して も, それが文字通 り補助金 を相殺す るものなのか ど
うか といった点 につ いての, フォーマルな分析 はなされていないように思われ る。 4)
本稿で私が試み るのは以上 の問題 に関 して,補助金 と相殺関税 の影響 を伝統 的な部分均衡分析を使 って検討す ることである。 5)以下で議論す るよ うに, 世 界的な経済厚生 に対す る影響 につ いてポイ ン トとなるのは,世界が何 カ国か ら 成 り立 っているかである。 輸出国 と輸入国 の
2
国であれば,答え は明かである が,輸 出国, あるいは輸入国が複数 で,例 えば輸 出国同志 が同時 に補助金 を交4 ) シカゴ大学の法学部の助教授である Al anSyke s( 1 9 8 9 ) の論文 は, 相殺 関税 の一 般的な賦課,及び実際の米国の相殺関税法 に基づ く賦課が米国の国益 にどの よ うな 影響 を与 えるか, .あるいはもっと直裁 に,米国の利益 になるか どうか とい うことを 詳細 に論 じた ものである。結論 は悲観的で相殺関税一般, あるいは米 国 の相殺 関税 法 は米国の利益 にはな らないと述べている。 したが って彼 は,相殺関税 の廃止 を強 く主張 している。 なお彼 はこの論文 の中で,相殺関税 に関す る経済学 と法学 の文献 が少ない ことを指摘 している 。p. 2 0 1 , 注 1 2.
5 ) コ‑デ ンの前掲書 ( 1 9 7 1 , 1 9 7 4 ) における部分均衡図を使 った分析 は,非常 に簡単で
ある 。Cor de n( 1 9 7 1 ) pp. 1 4 ‑ 1 6, Cor de n ( 1 9 7 4 )pp. 2 3 9 ‑ 4 0 参照。本稿では,通常 は
輸出国だけ, あるいは 2 国間の市場だけで検討 され る補助金の分析 を, 輸 出入国 と
2 国間の市場を重ね合わせることにより,詳細 に検討 している。 さらに相殺 関税 の
分析を陽表的に行 っている。 そ して 2 国だけでな く, 3 国モデルで祐助金戦争等 の
分析を行 っているところが,新 しい点である。
付 しあ う, いわゆ る補助金戦争 のよ うな場合 に,補助金 は世界厚生を,やはり, そ して ます ます悪化 させ るものなのだろうか。 またそのよ うな場合,一国 に対 す る相殺関税 は補助金 の効果 を相殺で きるのか。 このよ うに国の数が
2
国以上 の場合 に補助金や相殺関税が, どのような効果を持つのか という点については, まだ十分 に知 られていないように思 われ る。 しか し補助金に関する国際的なル‑ルを考 える上で は, この点 は重要である。
本稿 で は, は じめに
2
国 モデルを取 り上 げ,輸 出国の供給曲線が水平である 時に,輸 出補助金 と国内の生産補助金 の違 いを論 じる。 第二 に,輸 出国の供給 曲線が右上が りのケースで,輸 出補助金 と相殺関税 を取 り上 げる。次 に,輸 出 国が2
カ国の場合を考 え,一国だけの補助金政策 とそれに対す る輸入国の相殺 関税の影響 と他の輸 出国の対抗的な補助金政策の効果を分析 してみたい。 ここ でのモデルは二つあ り,一つ は輸 出国の一国 は輸入国 に対 して大国であ るケース, もう一つ は両輸 出国 とも輸入国 に対 して大国であるケースである。
2.2
国モデルここで は,輸入国がある財 について,一つの輸 出国だけか らしか輸入 してい ないケースを考 えてみ る。 これには第三国か らの輸入が輸送費 によって阻止 さ れて,地理的 に近接 している国か らしか輸入 されない場合が考え られ る。二つ のケ‑スを想定す る。一つ は,輸 出国の輸 出供給曲線が水平であ る場合。 もう 一つ は,右上 が りのケ‑.スである。言 い換 えると,前者 は,輸入国が輸 出国 に 対 して相対的 に小国であ って,輸入 され る量 の範囲では相手国の輸 出価格 に影 響 を与 えることが出来 ない場合であ る。 後者 は逆 に輸入国が輸 出国 の価格 に影 響 を与 え ることが出来 るほど大 きい国である場合である。
( 1)
輸出供給 曲線が水平の場合第
1
図の左側 の図 は輸出国を,右 は輸入国を表 している。 大文字 は輸出国の, 小文字 は輸入国の変数 を示 している。 したが って輸 出国の供給曲線 と需要曲線はそれぞれSとDで,輸入国のそれ らはSとdによ って表 され る. 一 方, 左 図
補助金 と相殺関税の経済分析一完全競争 モデルー 5
のm
は輸入国の輸入需要 (超過需要)線を表 し,それ と輸出国の需要曲線 を水 平 に加 えたm+D
が両国合計 の総需要 を示 してい る。m+D
曲線 と供給 曲線S
が交わ るC点が,輸出国が補助金 を供与す る前 の均衡 で, 均衡価格 はCpにな る.輸 出国 の生産量 はOQ
で, 国 内需要量 はOQD
, したが ってQD Q
が輸 出 さ れる。 それは輸入国のqs qd
に等 しいO は じめに生 産補助金 と輸 出補助金 が交 付 され る場合を検討 して,両者 の違いを明 らかに してみよう。次 に,それぞれ の場合 に輸入国の相殺関税の効果を分析す る。( a)
国内補助金輸 出国が生産 にp'p/ Cp'の率 の補助金, あ るいは一単位 に付 き
P‑P'
の 補助金を交付 す ると, 左図 の供給 曲線 は下方 へP‑P'だ け シフ トしてS'とな る。 新 しい均衡 はダ点 とな って, 価格 はOp'に下落 し, 全体 の需要量 は,0 Q'
まで増加 す る。 輸 出国の国 内需要 はOQD '
に増 え, 輸 出 (輸 入 ) はQD ' Q'
( q' s q' d )
まで増加 す る。 その代 わ り輸入国 の国内生産 は,qs qs '
だ け減 少 す る。補助金が各国並 びに両国を合わせた世界の経済厚生 に与え る影響を考察 して みよう。 輸 出国 の補助金交付後 の生産量 は
OQ'
だか ら, 補助金 の総額 はpE
Fp'の面積 に等 しい. 輸 出国 の消費者 は価格 の下落 か らpAHp 'の消 費 者 余 剰 の増加 を得 るか ら, それを補助金 か ら差 し引 いたAEFHが, 補助金交付 による輸出国 自身の損失である。 他方輸入 国 は価格 の下落 によ り
abce
の純利 益 を獲得す るが, これ は左図 のACFHに等 しい。 そ こで, 二国合 わせ た世界 の純効果 はCEFの損失 になる。つま り輸 出国 の生産補助金 の一部 は自国 と輸 入国の消費者 に移転 され るが,誰 にも移転 されないで残 る損失( d e a d we i g h t ‑ 1 os s )
が生 じるのである。( b)
輸 出補助金輸 出 に対 してp'p/ Op'の率, あ るいは単位 当 り
P‑P'
の補 助 金 が交 付 さ れ る場合 は, 輸 出国 の供 給 曲線bslpAHES'の よ うに変 わ る。 国 際 価 格 は0
〆に低下す るが,輸 出国 の国 内価格 は低下 しない。6)この点 が国内補助金 と の違 いで,輸出補助金 の場合,輸出国の消費者 は補助金 による価格低下の利益 を享受す ることがで きないのである。 しか しそのために輸 出国の損失 は輸 出補 助金 に相当す る分だけになる。
他方,輸入国の消費者 は輸入価格の下落か ら国内補助金 の場合 と同 じだけの 利益を得 ることが出来 る。補助金 の総額 は
BEFH
だか ら, これを輸 入国 の利 益abce‑ACFH
か ら差 し引 くと,ABH‑CEF
とな る。 これ は明 らか に負であるか ら,輸出補助金 も世界的な厚生 を悪化 させ る。 しか し損失 の大 き さは国内補助金 の場合 よりも小 さい。すなわち国内補助金 も輸出補助金 も世界 的な経済厚生を低下 させ る点では同 じだが,その程度 は輸出補助金 の方が少 な いといえる。 これは国内補助金が国内消費向けの生産 に対 して も交付 され, そこで歪みを生 じさせ るか らである。
(C) 相殺関税
次 に輸入国が課す相殺関税 の効果を検討 してみよう。 これ も補助金 と同様輸 入国に対す る効果 は同 じだが,輸出国 と世界 に対 しては,国内補助金 t.輸出補 助金の場合 とで は,異 なった影響を持っ ことが確かめ られ る。輸入国が補助率 と同 じpp'/Cp'の従価税 をその輸入 に対 してか けると, 輸入国 の国内価格 は補助金が交付 される前のOpに戻 るO輸入 は減少 し,輸入競争産業 の生産 は 拡大す る。
輸入国の消費者 は,外国の補助金政策 のおか げで享受 して いた
abce
の余 剰 を失 う。 しか し相殺関税 によってその中 のabfg
は関税収入 の形 で政府 が 取得す ることになるか ら,輸入国が相殺関税 によ って失 うの は, 三 角形αge
と
bc
Jである。 これは左図ではCFG‑AH
n=等 しい.輸出国では,輸出量 は
QD Q
に縮小す る。 しか し, 生産量 は国内補助金 と輸6 ) この場合,輸出国の価格が輸入国では安価 になるので,輸 出財が輸出国 に戻 る可能
性が出て来 る。 それゆえ, ここではその可能性を排除す るために何 らか の仮定 が必
要である。一つ は輸送費の存在 であ り,他 は関税である
。補助金 と相殺関税の経済分析一完全競争モデルー 7
出補助金の場合 とで異なる。国内補助金 の場合 には,輸 出国の国内価格 は輸入 国か ら相殺関税をかけ られて も変 わ らず,0〆
のままであ るか ら, 国内消費 向けの生産量 はOQ
D'
である. したが って, 輸 出を合 わせ た総生産量 はOQD ' +QD Q
たなる。 これに対 して,輸出補助金の場合 には, もともと国内消費 向 けの生産量 はOQDなので,総生産量 はOQ
である.相殺関税賦課後 の補助金 の総額 は, 国内補助金 の場合 はpBHp'+ACG Jにな り,輸出補助金ではACGJだけである。 国内補助金 の場合, 輸 出国 の 消費者が,pAHp'の消要者余剰 を得 るか ら, 輸 出国 は補助金 を供与 して い ない場合 に比べると,ABH+ACGIの損失 を被 るo それ に対 して輸 出補助 金 の場合,輸出国の損失 は補助金だけでそれはACGJである。 相殺 関税前 の 国内補助金 と輸出補助金 による輸 出国の損失 は, それぞれAEFH とBEFH だか ら,それ と相殺関税後 の損失 を比べてみると,相殺関税が輸出国の厚生 に 与 える影響が明 らかになる。そ こで相殺関税後 の損失か ら前の損失を引いてみ
よう。 それぞれ
(ABH
+
ACGD ‑AEFH ‑ACGI‑BEFH ‑ABHI‑ CEFG, ACGIIBEFH ‑ABHI‑CEFGとなる。 これは明 らかに負であるので,相殺関税 は補助金 による輸出国の損失 を減少 させ る働 きがある。 また減少の大 きさは補助金額 の減少分 に等 しい。つ ま り相殺関税 は輸 出量を減 らす ことにより輸出国 に補助金を節約 させ る効果を 持っのである。
それでは,世界全体で はどうであろうか。国内補助金 の場合,補助金 によっ て世界全体が失 う大 きさはCEFで あ る. 相殺 関税後 は, 輸入国がCFG‑A HIを失 って,輸出国 はABHI‑CEFGだ け改善 す る。 そ こで両者 を加 え
ると,ABH ‑ CEFとなる。 これは負であるが,
CEF
よ りは小 さい.すな わち,相殺関税 は補助金 に.よって生 じた世界的な損失を減 らす効果を持っ 。また輸出補助金 の場合 には,補助金交付 による世界的な厚生 の損失 の大 きさ はABH ‑ CEFである. 相殺関税 によって世界厚生 は,国内補助金 と同様 に ABH ICEFだけ改善す る.つ まりこれ は相殺関税が完全 に補助金 による歪
みを消滅 させ ることを意味す る。 したが って相殺関税後 は,輸 出国 と輸入国を 合わせ た世界的な厚生 は,補助金前 の 自由貿易 の状態 と同 じであ る。
最後 に一点注意 しなければな らないのは,以上 の結論が,輸 出国が輸入国か ら相殺関税をかけ られて も,補助金 を交付 し続 けることが前提 とな っているこ とであ る。 もしも相殺関税がかけ られ る時 に輸 出国が補助金を交付す るのを止 めれば,輸入国 も相殺関税 をかけないだろ うか ら,状況 は補助金 を交付す る前 と同 じにな る。 世界的 には資源の損失 はな くな るが, 輸入 国 は
abce
の利益 を失 う。 また輸出国 の生産者が相殺関税を賦課 される前に,輸出自主規制を行 っ て輸 出量 をQD Qに制限すれば,閑税収入 の形で輸入国 に移転 して いた補 助金
は, レン トとして輸 出国の生産者 の所得 になる。( 2)
輸出供給曲線が右上が りの場合 !輸入国が輸 出国 に対 して大国であ る場合 には,相殺関税 を賦課す ると最適関 税論 と同 じ状況が発生す る。すなわち交易条件が 自国 に有利 に変化 して,関税 による損失 を相殺 してあま りあるケースが生 じるのである。 この点 が輸入国が 小国である前項 との大 きな違 いで, ここで は輸 出補助金だけに限定 して,交易 条件 を動か しうるよ うな大国の場合 に,補助金 と相殺関税 が輸 出国,輸入国の 双方 にどのよ うな影響 を与 え るかを分析 してみよ う。
( a )
輸 出補助金第
2
図の右上 の図のE
は,輸 出国 の輸 出供給曲線で, それ と輸入需要 曲線m
が交わ る点で, 自由貿易の均衡が決 まる.国際価格 はOpになるが, これ はそ
れぞれの国の国内価格で もある。 そ こで貿易量 はOQ‑QD Qs‑qs qd
にな る。い ま輸 出国 が
p ' p "/Op'
の率 で輸 出補助金 を交付 す る と, 輸 出供 給 曲線 は E'に シフ トす る。 新 しい均衡 は2で,国際価格 はOp'
に下落, 貿 易量 はOQ'
に増加す る。 この価格 は輸入国で は国内価格 とな り, 輸入 は増加 して q
s ' qd'
となるが,輸 出国の国内価格 はOp"
まで上昇 し,輸 出量 はQD ' Qs '
にな る。この輸出補助金が各国の経済厚生 に与 え る影響 は,次 のよ うになる。 輸 出国
‑p .
ガ▲QD Q 占
Q' 数量0
第 1
図 2
国モデルー輸出供給曲線が水平の場合‑
戴昏紗t着港Bq常8筒琳ft苛
‑
削抄乾せ付TTPJTIくo
は国内価格の上昇 に伴 って,消費者余剰 が
p" AEp
だ け減少 す るが, 生産者 余剰 がp" BCp
だ け増加す るので, ネ ッ トでABCE
の利益が生 じる。 しか しABHI
の補助金がそれか ら差 し引かれ るため, 輸 出国全体 と して は, 三角 形AKI
とBHJ
,それに台形ECJK
を加 えた ものが損失 とな る。 これ は中 央の図のp1 2 p'
と1 3 2
を合計 した ものに等 しい.他方,輸入国 は輸入価格 の低 落 によ りabce
の利益を得 るが, これは中央の図ではp1 2 p'
に等 しい. それゆ え両国言わせた世界の厚生 は,p1 2 p
,一匂1 2 p , + 1 3 2 )
ニー1 3 2
となって,補助 金のない状態 に比べ ると悪化す る。( b )
相殺関税この補助金 に対 して輸入国が相殺関税 を課 し,輸 出国が補助金を交付 し続 け るもの と仮定 しよう。輸入国が補助率 に等 しい率で従価税をかけると,輸入需 要曲線 はm'にシフ トす るO新 しい均衡 は4であ る。 貿易量 は元 の水準 に戻 る が,国際価格 はさ らに下が り,
0〆
日になる。 これに対 して輸入国 の国内価格は関税分だけ上昇 して, は じめの水準 の
Op
にな るO この相殺関税 によって輸 入 国 は,abce
(‑p1 2p' )
を失 うが,abhi(‑p1 4p")
の 関 税 収 入 を獲 得 す るので,g fbi
(p'54〆")> age + bc f ( 1 2 5) な らば, 輸 入国の経済厚生がかえ って改善す る最適関税のケースが生 じる。
輸出国は, 輸 出量 が減少す るため に補助金 も
ECNR b1 4 〆=)
に減少す る. しか しこの中のECLM
は,相殺関税がかけ られ る前の損失の一部で あ る ので,M LNR ( ‑p' 5 4 〆= )
が新 たな損失 の増加 にな る. 他方, 相殺 関税が 賦課 される前 に損失であったAEMI
とBHLC
はな くなるので, これ らは利益 と考え られ る。 それは中央の図では,1 3 2 5
の面積 に等 しい。 したが って,輸出 国が相殺関税 によ って良 くな るか悪 くな るか は,p' 5 4 p'
日と1 3 2 5
の面 積 の大きさに依存す る。 これは何 ともいえない。
最後 に世界全体の厚生が輸入国による相殺関税 によって,改善す るか悪化す るかをみてみよう。 これは,輸入国 と輸出国の変化 の合計 を計算すればよい。
すなわち,
( p' 5 4p" ' ‑1 2 5 ) + ( 1 3 2 5‑p' 5 4p' ")‑1 3 2 > 0
とな り, こ祐助金 と相殺関税 の経済分析一完全競争 モデルー
輸出国
o q'sqs qd q'd
ll
第2
図
2国モデルー輸出供給 曲線が右上 りのケースー
の場合 には相殺 関税 は,世界的な厚生 を補助金 の もとでの状態か ら改善す るの である。すなわち,輸 出補助金 は世界全体 に
1 3 2
の損失 を もた らす が, 相殺 関 税 はそれを消滅す る働 きをす るのである。3.3
匡トモデルここで は二つの輸 出国が,輸入国市場 で輸 出競争 を行 っているケースを考え る。 は じめに輸入国 は一つの輸 出国 に対 しては大国であ るが, もう一国 に対 し て は小国であるよ うなケースを検討す る。次 に,輸入国が どち らの輸 出国 に対
して も,大国であ るよ うなケースを考察 してみ よう。
( 1 )
一国の輸出供給曲線 だけが右上が りのケース( a)
輸 出補助金 と相殺関税これは第
3
図 に示 され る。 輸入国の輸入需要曲線がmで表 され,第1
輸 出国 の輸 出供給 曲線 はE
l,第2
国のそれはE2
であ る。図 が示 して い るよ うに, 輸 入国 は第1
国 に対 しては大国,第2
国に対 して は小国である。 それゆえ, 自由 貿易 の もとでの国際価格 は第2
国 の限界費用,すなわちOp
にな る。 輸 入 国 はOQ
を輸入す るが, その うちOQl
は第1
国か ら,QI Q
は第2
国か らの輸入 で ある。 ここで第1
国が補助金 を交付 し, 第2
国 は交付 しな い と仮定 しよ う。pp' /Op
の率 の補助金 によって,第 1国の輸 出供給 曲線 はEl'にシフ トす る。第
1
国の輸出量 はOQl '
まで増加す るが,第1
国 は小国だか ら, 国際価格 は変 化せず,全体 の輸入量 も変 わ らない。 しか し輸 出国 の国 内価格 はOp'
に上昇 し,輸 出国 は三角形AβC
の損失 を被 ることになる。 そ して それ は世界 的 な損 失 に等 しい。第
1
国の シェアの増加 は,輸入国か第2
輸出国 の, あ るいはその両方 の シェ アの減少 を意味す る。 か りに輸入国の国内生産者 に被害が生 じて,輸入国が第1
国か らの輸入 に対 して相殺関税 をか けた らど うなるだろ う。 輸入国 は第1
国 に対 しては大国だか ら,補助率 に等 しい率 の従価税を課せば,第1
輸 出国の輸 出価 格 はC p"
まで下 落 し, 輸 出量 はOQl
に減少 す る。 輸 入 国 にお け る第1
補助金 と相殺関税の経済分析一完全競争 モデルー 1 3
国商 品 の価格 はOp"
に関税 を上 乗 せ したOp
に な るか ら,pCEp"
の面 積 は輸入国の関税収入で, それは第1
輸 出国の輸出補助金 に相当す る。 輸 出国の 損 失 は補 助 金pCEP"
で あ るが,ABC
の部 分 が 消 え るか ら,pCEp"‑
AβC
が輸 出国のネ ッ トの損失である。世界的な厚生 の変化 は,輸 出国の利益 と輸入国の利益 を加 えて
( ABC‑pCEp" ) +pCEp"‑ABC
とな るか ら,補助金 による歪みの
AβC
が消滅す る。 したが って相殺 関税 は世 界的な厚生 を改善す るのである。 相殺関税後 の資源配分 と世界的な経済厚生 の 状態 は,補助金が交付 され る前の状態 とまった く同一 である。 ただ し,第1
国 は補助金 を交付 し, それはそのまま関税収入 の形 で輸入国の所得 となっている。この点 が補助金前 と相殺関椀後 の違 いであ る。
( b )
補助金戦争これ と代替的なケースと して,第
2
国の輸 出 シェアが低下す るために,第2
国の政府が対抗的に自国の輸 出産業 に輸出補助金 を供与 す る場合 を検討 してみよ う。 これ は補助金戦争 の一 つ の ケー スで あ る。 第 2国 政 府 が
p" p/Op"
の率 の輸出補助金を交付すれば,輸 出供 給 曲線
E2
はE2 '
に シフ トす る。 この 場合第2
輸出国 は大国なので, 国際価 格 はOp"
に低下 す る。 輸入 はOQか ら OQ'にOQ'
だ け増 加 す る。 他 方第 1輸 出国 の輸 出 はOQl
に減少 す るか ら, 第2
輸 出国の輸出はQl ' Qか らQI Q'
へ第1
国 の減少分 と輸 入 国 の輸入増 加分 を合 わせて大幅 に増加す るのであ る。この補助金戦争 は誰 を利 し,誰 に損害を与 え,世界全体 にはどのよ うな影響 を与 え るだろ うか。第
2
輸 出国 は当然輸 出を増加 させ るが,輸出供給曲線 が水 平であるので,生産者余剰 の増加 はない。 単 に補 助金C HGE
を失 うだ けで あ る。第1
輸出国のネ ッ トの損失 は,相殺 関.税 の ケー ス と同 じよ うに, 補 助金pCEp"
か ら第2
国の補助金政策以前 の損失であ るABC
を差 し引 いた もので ある。 これが正であ るか負であるか ば分か らないので,第2
国の補助金政策が 第1
国 に不利 になるか どうか ははっきりしない。この戟争 の最大 の受益者 は,い うまで もな く国際価格 の低下 を享受す る輸入 国 で あ る。 輸入 国 の利 益 は
pFGp"
で あ るが, この 中 のpFI p"
は, 第1
国 の補 助金pCEp"
と, 第2
国 の補助金 の一部 で あ るCFIE
に相 当す る.そ こで世界的な厚生 の変化 は,輸入国の利益 か ら輸 出国の損失 を差 し引 けばよ いか ら,
pF G p"‑ C H G E一 b C Ep"‑AB C) ‑ABC‑FH G
となる。 これ は正か負か分か らない。第
1
国の補助金 に よ る歪 みのAβC
が消 え る代 わ りに,第2
国 の補助金 による歪 みのFHG
が損失 とな って新 た に現 れ るか らである。 すなわち,第2
国の対抗的 な補助金 は,第2
国 自身 による歪み を生 じさせ る一方で,第1
国 の補助金 による歪タ を消すので,世界厚生が必ずJp わr Lq
0
Ql
第
3 図 3 国モデル
ー一国の供給曲線だけが右上りのケースー
補助金 と相殺関税の経済分析一完全競争モデルー 1 5
悪化す るとは限 らないのである。 したが って複数 の国 による競争的な補助金政 策 は,世界的な厚生 の状態 を,補助金政策 をとる国の数が増加す るか らとい っ て,前 よ りも必ず悪化 させ るとは限 らないことが推測 される。第
2
輸出国の補助金政策 は,̲国際価格 を低下 させ るか ら輸入国の生産者 は明 らかに損害を被 る。 そ こで輸入国政府が,第2
国の補助金 に対抗 して第2
国か らの輸入品だけに相殺関税をかけるもの としよ う. 輸入国の国内価格 はOp
に 戻 り,輸入量がOQ
まで減少す る。 しか し第1
輸 出国 は輸 出をOQ'
1まで増加し,第
2
輸 出国の輸出が,Ql て Q
に減少す る。輸入国 は
pFGp"
を失 うが, その うちBFIJ
は閲税収入 と して獲 得 す る か ら,FGI
とpBJp"
がネ ットの損失である。第1
国 は,補助金p' ABp
を交 付す るか ら,AβC
が新たな損失で,相殺関税前 と比べ るとネ ットの損失 は,ABC
か ら以 前 の補 助 金pCEp"
を差 し引 いたA BC‑pCEp"
にな る。第2
国の新 しい補助金額 はBFIJ
であるか ら, 以前 の補助金 に比 べ るとCBJE
とFHGI
だけ少 ない. よって相殺関税 の世界全体への効果 は,‑
( FGI +pBJp" ) +
(pCEp"‑ABC) + ( CBJE+
FHGD ‑FHG‑ABC
とな り, この符号 も輸出入曲線の弾力性 と補助率 に依存す る。興味深 い点 は, この場合,相殺関税 は第
2
国の補助金 による損失 を相殺す るが,第1
国の輸出 増加 による歪 みを新 たに発生 させていることである。 すなわち,二つの国が補 助金政策を とっている場合 には,相殺関税 は補助金 による経済厚生の悪化を改 善す ることがで きないのである。( 2 )
輸出供給曲線が2
国 とも右上が りのケースこれは第4図に表 されている。簡単化 のために両国の輸出供給曲線 は同一で ・ あると仮定 しよう。 当初の均衡 は
El +E2
とT
nとの交わる 1で示 され, 価格 はOp
,貿易量 はOQ
である.各輸出国 の輸 出量 はOQl( Q2 ) ‑QI Q
にな る.第 1国が輸 出補助金政策を とると第 1国の輸出供給曲線 はシフ トして,Er'と な り,新 しい均衡 は
El ' + E2
とm
の交わる2にな り, 国際価格 はOp:に低下す る。輸入国の輸入 は
OQ'
に増加 し,第1
国の輸 出はOQ
l'
まで増加 す るが, 第 2国 の輸 出 はOQ2
'に減少す る。 それゆえ, 輸 入 国全 体 の増加分QQ'
は, 第1
国の輸出増加分QI Ql '
か ら,第2
国 の輸 出 の減少分Q2 Q2 '
を差 し引 いたものに等 しい。
他国 の反応 は三通 りある。 一つ は他国政府 は何 もせず, 1国政府だけが補助 金 を交付 し続 ける場合であ る。第二 は,輸入国 に輸入競争産業があ り,第 1国 の輸 出補助金政策 は当然その産業 に打撃 を与 え る。 そ こで輸入国政府が第
1
国 か らの輸入 に対 して,相殺関税 を課す場合である。第三 のケースは,輸入国 に は輸入競争産業 が存在せず, したが って輸入国政府 は相殺措置を とらない。 し か し,第1
国の輸 出補助金 は第2
国 の輸 出産業 に被害を与 えるか ら,第2
国の 政府が対抗的 に自国の産業 に補助金 を供与 す る場合である。( a)
輸 出補助金は じめに第一 のケース,すなわち第
1
国政府 は補助金を交付す るが,他国 は 何 もしない場合 を検討 してみよう。 国際価格 の低下 による輸入国 の利益 はp1 2 p'
であ る. 第1
国 は補助金 か ら自国 の生 産者 の利益 を差 し引 くと3 45+p6 5 p'
が損失 として残 る。第
2
国 は生産者 が価格下落 により損失 を被 り, それ は消費 者 の利益 を上回 り,純損失 はp6 5 p'
にな る. したが って世界 の厚生 の変化 は,p1 2p' ‑ ( 3 45+p6 5p' ) ‑p6 5p' ‑71 2 4‑37 6‑p6 5p'
になる。 ところで,
Ql ' Q' ‑OQ2 '( 42‑p' 5)
だか ら,71 2 4 < p6 5 p'
である。 したが って,第1
国だ けが補助金政策 を とってい る状況で は,世界的な厚生 は 必ず悪化す る。( b)
相殺関税次 に輸入国が第
1
国 に対 して相殺関税 を課す とどうなるか検討 してみよ う。国内の輸入競争産業 の生産 をも との水準 に戻すためには,国内価格 を
Op
まで 引 き上 げることが必要である。 このためには国内価格がOp
となるように,全 体 の輸入 に関税 をか ければよい。 しか し第2
国 に関税を課す ことはで きず,罪柿助金 と相殺関税の経済分析一完全競争 モデル‑ 1 7 1
国に対 してだけ関税を課す ことによ り,国内価格を少な くともOp
まで引 き 上 げなければな らない. これを行 うには関税 によ って第1
国 の輸 出量 をOQl
に抑えれ ばよい。 この関税率 はp" p/ Op"
で あ る. 二 国 を合 わせ た総輸 出 供給曲線 は,Op"
の価格 まではE l ' + E2
になるが, それ以上 の価格 で は第2
国の輸出にOQl
を加 えたE 〜 1 ' + E
2線 になる.輸入国の消費者 は,輸入品を
Op
の価格 で購入 で きるが, 第1
国 の製 品 はOp"
の価格で入 って きた ものにp" p
の関税を支払 って い る。 他方第2
国 の製 品 は,Op
の価格で輸入 され る.El ‑E
2El ' +E2 EL +E
2El ' + E 2
わrJp川か.
5 9 4l■ 顎I
璽完i /
β
/ / ′
a; QI OIL
(QL,)
第
4図 3国モデル
‑供給曲線がこ国 とも右上 りのケースー
輸入国 は輸入価格が上昇す ることで
p1 2p'
を失 う。 しか し第1
国製 品 に対 して関税 をか けているので,関税収入がp6 8p"
入 る。 そ こで ネ ッ トの効果 は,p' 9 8p"‑61 2 9
である. これは第1
国 と第2
国 の輸 出供給 曲線 が同一 ゼ あ るとい う仮定 のために負 になる。もしも第
1
国が主要 な輸入供給先であれば,関税収 入 が損失 を上回 るので,輸入国 は相殺関税 によって利益 を得 る可能性が生 じる。第
1
国 は,補助金p6 8p"
を失 うが,相殺関税 が か け られ る前 の損 失p6 5p' +3 4 5
と比べ ると,損失 の増 加 は,p' 9 8p"‑3 4 9 6
にな る. 第2
国 は価格 が上 が るので利益 を得 る。利益 の大 きさは,p6 5p'
で あ る. 以上 か ら相殺 関税 が 世界全体 の経済厚生 を どのよ うに変化 させ るかをみ ると次 のようになる。(p'
9 8p" ‑61 2 9 ) + ( 3 4 9 6‑ p' 9 8p " )+ p6 5p' ‑p6 5p' +3 7 6‑71 2 4 0Q2 ' ‑ Ql ' Q'
(p'5‑4 2 )
か ら,p6 5p' >7 1 2 4
だか ら, この式 は正 であ る。すなわち相殺関税 は,・補助金が交付 されている状態を改善す る働 きを持つ。
(C) 補助金戦争
最後 に図示 は しないが,補助金戦争 の効果 を簡単 に見てみよ う。 第
1
国の輸 出補助金 に対 して,第2
国政府 が対抗的に輸 出補助金 を交付すれば,二国合計 の輸 出供給曲線 は,右側 にシフ トして国際価格 はさ らに低下す る。 輸入量 は増 加 し,第1
国の輸 出量 は減少,第2
国のそれ は増加す る。 これが経済厚生 に与 え る影響 は,一国 の供給曲線 だけが右上 が りのケースと同 じである。輸入国が 利益 を得 て,第2
一輸 出国 は損失 を被 る。第1
国が改善す るか悪化す るか ははっきりしない 。世界的な厚生 に関 して も同 じであ る。
輸 出国 にとり, これまで補助金政策 を とっていなか った国が新 たに補助金 を 交付す ると,国際価格が低下す る。 これは全ての輸 出国 にとってマイナスの影 響 を与 え る。 ところが,他方で既存 の輸 出国の輸 出量 を減 らすので,補助金が 節約 され るプラスの効果が生 じるのである。
補助金 と相殺関税 の経済分析一完全競争 モデル‑ 1 9
4.
おわ リに最後 に以上 の分析か ら得 られた結論 を要約 し, これ らの結論が補助金 と相殺 関税 の国際ルールにどのよ うな意味 あいを持っかを考えてみ、よう。
第一 に,補助金政策 は輸出国 に不利 に,輸入国に有利 になるとい う伝統的な 見解 は, ここでの分析で も支持 されたであろうか。 この点 は,輸 出国 に関 して は, われわれのどのモデル もこの結論 を支持 した といって良 い。 ここで想定す るよ うな完全競争 モデルで,伝統的な部分均衡分析 の余剰概念を使 う限 り,捕 助金 はそれを交付す る国の経済厚生 を必ず悪化 させ る。
他方,補助金 が供与 された財 を輸入す る国 にとっては,補助金が輸入価格 の 低落を もた らす限 り,利益が生 じる。 しか し,補助金が輸入価格 の低下 を もた らさないとき‑ それ はわれわれのモデルで は,補助金を供与す る国が小 国で あって,国際価格 に影響 を与 えることが出来 ないケース (第
3
節 (1
)) で あ るが‑ その時輸入競争産業が競争 に破れて シェアを落 とす ときには,消費者 余剰がそれを相殺 しないか ら,輸入国 にとっては純損失が生 じる。第二 に,補助金 は世界的な経済厚生 にどのよ うな影響を与 えるか, とい う点 をまとめて検討 してみよう。 われわれのモデルで明 らかにされた点 は, まず第 一 に,一国だ けが補助金政策 を採用 しているときには,輸 出国の損失 は輸入国 の利益 を上回 って,世界的な経済厚生 は必ず悪化す る。 しか し補助金戦争 がお こり,他国 も補助金政策 を とる場合 には,一国だけが補助金政策 を採用 してい る状態 よ りも良 くな る可能性 が生 じる。対抗 的に補助金 を交付す る国 は輸 出を 伸 ば して損失 を増加す るが, は じめに補助金 を供与 した国 は輸 出が減少す るか
ら,補助金 を節約で きて損失 が減少す るか らである。
第三 に,国内補助金 と輸出補助金 とは, どち らが厚生 の損失 を少 な くす るだ ろ うか。 これ は第‑ のモデルで しか検討 していないが,輸 出補助金 の方が望 ま しいとい う結論 を得ている。 理 由は明かであ る。 国内補助金 の場合 には,国内 消費向 けの生産 にも補助金が供与 され るが,輸 出補助金 の場合 には国内向 けの 生産 には影響が及 ばない。 それゆえ,歪みを生 じさせ る範囲が輸 出補助金 の方
が小 さいか らである。
第四に,相殺関椀 は補助金 によって歪 め られた市場を回復 し,厚生を改善す るだろうか。 まず輸入国 には相殺関税 は通常 の関税 と同 じ働 きを持っ。つま り 小国であれば必ず経済厚生 は悪化す る。大国であれば交易条件が有利化す るこ とによって,厚生が改善するケースが生 じるが,二つの輸出国か ら輸入 し, そ の うちの一国だけに相殺関税を課す場合 には,閲税収入が少な くなるので,厚 生が改善す る可能性 は小 さ くなるであろう。
\̲ノ
相殺関税 は,輸出国に対 しては二つの相反す る効果を持つ。 一方で交易条件 が低下す るか ら不利益を被 る。 しか し他方で,輸出が減 るか ら補助金を節約で きるのである。 したが って,輸入国が小国で国際価格が変化 しないときには, 相殺関税 は輸出国の経済厚生を相殺関税が課せ られ る前 と比べ ると必ず改善す る。世界全体 に対 しては,相殺関税 は補助金 による歪みを解消す る役割を果 た している。 ただ し二 カ国が補助金 を交付 している時に, その一方だけに相殺関 税を課す場合 には,相殺関税が世界的な厚生を必ず改善す るとはいえない。一 国の輸出を減 らして も, もう一方 の国の輸出が増加す るか らで あ る。
(3
国 モ デル,補助金戦争 の項参照)以上,本稿の分析か ら得 られた結論 は,現行 の国際ルールにどのよ うな意味 いを持っだろうか。「はじめに」で述べたパルセロのような立場, す なわち, 輸出補助金 は世界的な資源配分 に有害であるか らそれは禁止 し,歪みを改善す
る相殺関税 の適用 は積極的に進めるべ きであるという立場 は, どのよ うに評価 され るだろ うか。本稿 の分析か ら明 らかにな った点 は,補助金政策 はそれが と られていない時 と比 べると,確実 に世界的な厚生 を低下 させ る。 またそれに対 す る相殺関税 は,歪 みを消 して もとの状態を回復す る。 しか し対抗的に補助金 政策が とられるときには,前の状態を改善す る可能性が生 じる。 補助金戦争が エスカ レー トす ることは,経済厚生 を必 らず悪化 させ るとは限 らない ことであ る。 この点 は,パルセロ ・タイプの議論 に対す る一つの留保点 となろう。 同 じ ことは相殺関税 について もいえる。
2
国が補助金政策を とっているときには, その うちの一国に対す る相殺措置 は,必ず しも所期の成果をあげないのである。補助金 と相殺関税の経済分析‑完全競争 モデルー 2 1
このよ うに2
国モデルで はな く, それ以上 の数 の国を想定す るときには,伝 統的な議論 には若干 の修正 を施 さなければな らない状況が生 じる。 本稿 では輸 出国を2
国 に して検討 を加 えたが,輸入国を2
国 にす るケース も興味深 い考察 の対象 となろ う。 これにつ いて は,後 日の課題 と したい。参 考 文 献
Bar c e l o,JohnJ. ,
III.( 1 9 7 7 ) "Subs i di e sandCount e r u ai l i ngDut i e s‑
Anal ys I Sand aPr o pos al
,"Law andPl i c y i n I nt e r nat i onalBus i ne s s ,9
,pp.7 7 9‑8 5 3.
Coope r,Ri c har d,N.( 1 9 7 8 )"U. S. Pol i c i e sandPr ac t i c e sonSubs i di e si nl nt e r ‑ nat i onalTrade ," I nI nt e r nat i onalTradeandI ndus t ri alPol i c i e s ,St e v e n
∫.War ne c k ( e d . ) ,Ne w Yor k:Hol me sMe i e rPubl i s he r s.
Cor de n
,Max
,W. ( 1 9 71) The The or y o f Prot e c t i on
,Oxf or d :Cl ar e ndon Pr e s s.
Cor de n
,Max
,W.( 1 9 7 4) Tr adePol i c y and Ec onomi c We l f ar e
,Oxf or d : C1 ar e donPr e s s.
He l pman,El hananandPaulR.Kr ugmar ! ( 1 9 8 9 )Tr adePol i c yandMar ke t St r uc t ur e ,Cambr i dge,Mas s ac hus e t t s:MI T Pr e s s.
Huf baue r,Gar yGl adeandJoannaShe l t on Er b ( 1 9 8 4)Subs i di e s i nI nt e r ‑ nat i onalTr ade,Cambr i de,Mas s ac hus e t t s:MI T Pr e s s.
Kr ugman,PaulR.( e d. ) ( 1 9 8 8 ) St r at e gi cTr adePol i c ) ′ and t heNew I nt e r ‑ nat i onalEconoT ni c s,Cambr i dge,Mas s ac hus e t t s:MI T Pr e s s.
Syke s,Al an 0.( 1 9 8 9) " Cou n t e r v ai l i ng I ) ut y Law :AnEc onomi cP e r s pe c ‑ 1 i u e
,"Col umbi aLaw Re v i e w,8 9,pp. 1 9 9 ‑ 2 6 3.
小宮隆太郎 ・天野明弘 ( 1 9 7 1 ) 『国際経済学』
東京,岩波書店。佐竹正夫