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情報技術 に対 す る欧

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(1)

蓑解 説 嘉

<Re vi e W>I nf or mat i ol l t e c hnol ogy e r gonomi c s i n Eur ope ,byNaot akeHI RASAWA.

情報技術 に対 す る欧 州の人間 中心 ア プ ローチ*

1 .

は じめに

ここ数年の情報技術 の発展 に伴 い, コンピュータだ けでな く, ほ とん どすべての機器 にはマイクロコンピ ュータが導入 され,多 くの機能が充実 してい る。 とこ ろが機能 の充実 に反 して, それ らの多 くは利用 されな い とい う問題 が指摘 されているように,製品 は必ず し

も使 いやすい もの となってはいない.

この理 由 として考 えられ ることは, これ までの技術 の発展が,機能可能性 を拡大す る方向に集中 していっ た ことを指摘で きる.機能性 の追求 を先駆 けた結果, ユーザー とのインター フェースはよ り複雑 になってい った ことになる. さらに,使 いやすい製品 を開発す る のが困難 な背景 には,製品の開発か ら利用 に関わ る複 雑 な人間関係が影響 してい ると考 え られ る.製品 を介 して関わ っている人間 は少 な くとも,開発者, その管 理者, そ して購買者 と利用者である。 それぞれが製品 に関わ る際 の 目的が必ず しも一致 しない ことがあるた めに,結果 として, それぞれの意思疎通が うまくいか ない ことが生 じることが多い.単純 にデザイナー とユ ーザーだ けの関係 ではない.

この ような状況のなかで

,I SO1 3 4 0 7(

イ ンタラクテ ィブ シス テムのた めの人 間 中心 設計 手順)が規格 化

( I S

化) され ようとしている.これ は,製品属性 に関す る規格 とい うよ りも開発体制 の変革 な ど, これ までの 規格 にない提案が含 まれている. この規格 の背景 にあ るのが,情報技術 に対 す る人間工学

( I TE :I nf or ma‑

t i onTec hl ュ Ol ogyEr gonomi c s )

である.I

TE

は,図

1

の ようなフレーム ワークを基 に,次の ように定義 され てい る

( Shacke1 2 6 ) ,1 9 85) .

1 9 9 8

1 0

2 1

日受付

**小樽商科大学

Ot a r uUn i v e r s i t yo fCo mme r c i al .

平沢尚毅* *

情報技術 を組 み入れた システム注)が,安 全 かつ 有効 に受 け入れ られ, さらに満足 を与 えるように す るために, システム利用 に直接影響 を与 える,

"人","作業","機器"ぉ よび この作業が行われ る

"社会 システム を含 む諸環境"についてのすべて関 係 に関す る研究, あるいはそ こに人間工学の知識

を応用 した もの

そ して,この

I TEの研究領域 は,図 2

の ように,HSI

( HumanSys t e m I nt er ac t i on)

,

HCI( HumanCom‑

put e rI nt e r ac t i on)

,情報学 におけるユーザー ビリテ ィ (以下 ユーザ ビリテ ィ) に構成 され る.

HSI

は,ユーザー と相互 に作用す る社会 システムや 組織 との協調 を拡大す るための方法,媒体,機構 に関 す る ものを取 り扱 う.物理的な ヒューマ ンイ ンター フ ェースを設計す る前 には,必ず,機能的 な設計が必要 であるが,HSIは,人間 と機器利用 プロセスおよびそ の機能 との相互関係 を設計す るとい う立場 をとる.

HSI

が ユーザーの社会 システムや組 織 を対 象 に し

TOOL

ENVI RONMENT

1 I TE

の基本フレームワーク

( Sha c l

(

e 1 2 6 ) ,1 9 8 5 ) Fi g.1 Thef ourpr i nc i palc ompone nt si l 一I TE.

柿) ここで使われる "システム"とは,製品一般の意味であ る.

解説 ・情報技術 に対 す る欧州の人間亡F'心 アプローチ

49

(2)

2 I TE

の関連研究領域

( Shac ke

127

) ,1 9 9

1)

Fi g. 2 Tl l edi s c l pl i l l e Sa s s o c i at e dWi t l lI TE.

ていたのに対 して

,HCI

は,主に個人の作業 における イ ンター フェース全般 を対 象 としている. そ して,ユ ーザ ビリテ ィはユーザーによって,容易かつ効果的に 満足 に利用で きるイ ンター フェースその もの を扱 う.

以上 の研究領域 か らわか るように

,I TE

は個 々のイ ンター フェースの問題 か ら組織 の問題 まで,基本的な 形式化 されたモデルか ら応用事例 まで, そ して,ユー ザ ビリテ ィ評価 フェーズか ら戦略的な開発 のライフサ イクル まで とい うように広 い範 囲 を扱 うものである.

本報告 は,欧州 にお けるこの

I TE

の歴史 をレビュー し, その背景 とな っている考 え方 を考察 す る ものであ る. さらに, その視点か ら, 日本 の現状 を比較 した う えで, その差異 を明確 にし,今後 とるべ き方向性 を考 察す る.調査 した資料 はすべて を網羅 す ることはで き ないが, そ こか ら欧州の特徴 の洞察 を試みた.

2 .

ヨー ロッパ における

I TE

の歴史

2 ‑ 1 . 沿 革 ( 表 1)

産業界 での コンピュータ技術 の可能性 は

1 95 0

年代 か ら認識 され るようになった といわれ る. そ して

,5 0

年代後半 には,人間工学やユーザ ビ リテ ィの問題が注 目され始 めてい る.記録 されてい る最初 の

I TE

論文 は

1 95 9

年 とされてい る.その後,米国で も注 目され るよ うになったが,すべては軍事ベースの ものであった.

やがて

,1 9 69

年 にケ ンブ リッジ大学 で人 間‑機械 系 システムの国際会議が開催 され, その機関誌 も発行 さ れている.翌年,英国

Loughbor ough

大学 に

,I TE

50 人間工学

Vol .3 5 ,No 1( ' 9 9 )

特 化 した 研 究 所 が 設 立 され る. これ が

,HUSAT ( Humal l Fact or s Re s ear cl l and Col l S ul t ancy at Loughbor oughUni ver s i t y)

研究所である.

Loughbor

ough

大学 には同 じ年 に,消費者の視点 か ら製品 を研究 す る研 究 所

I CE

も設 立 され て い る.

1 9 76

年 に は,

NATO

の先端研 究所 に

,HCI

に関す る部 門が設立 さ れ, その第

1

回 ワー クシ ョップが開催 されている.

その後

,1 9 80

年 に入 り,マイクロコンピュー タの急 激 な発展 によ り

I TE

には大 きな進展がみ られ,その結 果 は

,1

つの会議録

( Gr and j eanandVi gi l i ani

1

2 ) ,1 9 80 )

3

つの本

( Caki r ,Har t and St e war t 2 ) ,1 9 801 , Damodar an,Si mps on and Wi l s on4 ) ,1 980:Smi t h andGr ee n

28

) ,1 98 0)

にまとめ られてい る.そ して,国 際 情報処理学会

( I FI P)

が,第

1

I N甘ERACT( I nt er ‑ nat i onalConf er el l C eOnHumanComput erl nt er ac‑

t i on)

をロン ドンで開催 している.この会議 は

, 1‑ 3

回 までは欧州内で開催 された. その後,欧州各 国 にお いて

,HCI

に特化 した研究会 や学会が発足 して い る.

1 9 82

年 は,特 に

HCI

に関心が集 ま り,関連論文数 も 急激 に増 えている年である. また, この年 には,英国

Al veyComm i t t ee

か ら

HCI

研究 に

1

千万 ポ ン ドの 研究費が あて られてい る. そ して,翌年,欧州 にお け

I TE

研究 を促進す る

ESPRI T( Eur opeal lSt r at e gi c Pr ogr aml l l ef orRe s ear c hl l l f or l l l at i onTe chl l Ol ogy)

プロジェク トが スター トす る. このプロジェク トの資 金 は

,Eur opeal lCommi s s i on

を通 じて毎 回増加 し,

ESPRI T

II

,RACE,DRI VE,DELTA

な どのプ ロジ ェク トに引 き継がれていった. また,米国で もこの年 には

Mei s t er 19) ( 1 9 82)

が,今後,人間工学が情報 シス テムに対 して どの ようなアプローチ をす るか を提案 し ている.

1 9 84

年 には,米 国で主流 となっていた技術指 向の情 報 システム開発 に対 して

,Manc l l e S t er

大学 の ビジネ ススクールで 『情報 システム研究一疑わ しき科学

?』

とい う先鋭的 なタイ トルの

I FI P

コロキ ュームが開催 されてい る. ここで は,従来 の自然科学 のアプ ローチ による人間不在 の研究方法論 を批判 し,情報 システム が種々の制約 を開放 し,人間の可能性 を拓 いてい くに は どうすべ きかな どの議論 が行われた.主催者 の

1

で あ る

Mumf or d

も そ の た め の 方 法 論 で あ る

ETHI CS 21 22)

を提案 している.

1 98 5

年 には

,Shacke1 2 6

)

( 1 9 85)

が欧州 にお ける

I TE

関連の研究所 についての調査 を

I NSI S ( I nt er ‑ i ns t i t u‑

t i onali nt e gr at edSer vi c e sl nf or mat i onSys t em)

ロジェク トの一環 として行 った結果 を報告 してい る。

ここで,初 めて

I TE

の定義 と研究領域 についての提案 が され た .

(3)

1

情報技術に対する人間工学の歴史

( Sha c ke

127

) ,1 9 9

1)

Ta b.1 Gr o wt ho fa t t e n t i o nt oI TE.

1 9 5 9 Fi r s tr e c o r d e dpa pe ri nt h el i t e r a t ur e( Sha c ke 1 ,1 9 5 9 )a sr e po r t e db yGa i n e s( 1 9 8 4 ) 1 9 6 0 Se mi na lpa p e rbyLi c kl i d e r( 1 9 6 0 )o n' Ma n‑ Co mpu t e rSy mbi o s i s '

1 9 6 9 Fi r s tma j o rc o nf e r e n c e

(

̀ Ⅰ nt e r na t i o na lSy mpo s i u m o nMa n‑ Ma c hi l t eSy s t e ms ' ) I n t e r na t i o nalJ o u r na lo fMa n‑ Ma c hi n eSt u di e ss t a r t e d

1 9 7 0 Fo u n da t i o l ー0 1 ‑HUSATRe s e a r c hCe n t r e ,Lo u gh bo r o u ghUl l i Ve r s i t y

1 9 7 0 ‑7 3 Fo u rs e m in a lbo o ksp u bl i s h e d( Sa c kma n,1 9 7 0;We i nb e r g,1 9 7 1:Wi no gl ‑ a d,1 9 7 2:Ma r t i n,1 9 7 3 ) 1 9 7 6 NATOAd Va n c e dSt ud yⅠ n s t i t u t è Ma n‑ Co mp ut e rⅠ l l t e r a C t i o n'

1 9 8 0 Co n f e r e n c ea n dbo oko n' Er go no m ic sAs p e c to fVi s ualDi s pl a yTe r m inal s '( Gr a n d j e a na n dVi gi l i a n

i,

1 9 8 0 )

Thr e eo t he rbo oks( Ca ki r ,Ha r ta ndSt e Wa r t;Da mo da r a n,Si mp s o 1 1a ndWi l s o 1 1:Smi t ha 1 1 dGr e e Ⅰ ー ( e d s . ) )

1 9 8 2 J o ur na lBe ha Vi o ura 1 1 dⅠ 1 1 f o r ma t i o l lTe c hno l o gys t a r t e d

1 9 8 2 ‑8 4 Se V e nma j o rc o l l f e r e nc e sh e l di l ーUSA,UKa n dEur o p ewi t ha t t e l t da n c e sr a 1 1 gi n gf r o m 1 8 0t oo V e r 1 0 0 0Wi t ha na v e r 9 geo rn e a r l y5 0 0

1 9 8 3 Eu r o p e a nESPRI Ta ndBr i t i s hAl ve yp r o gr a mme sbe gi n 1 9 8 5 J o u r na lHuma n‑ Co mput e rⅠ nt e r a c t i o ns t a r t e d

ESPRⅠ THUFⅠ Tpr o j e c tNo.3 8 5be gi n sl s tDe c e mbe r

Fr o m 1 9 8 5t h ec o nf e r e n c eo nCHⅠa ndHCⅠr e s p e c t i ヽ ′ e l y,be c omea nl ー u a l 1 9 8 6 Thr e eHCⅠCe n t r e sl a u n c he di nt heUKund e rt h eAl V e yi ni t i a t i Ve 1 9 8 7 Se c o n dⅠ FⅠ PⅠ NTERACTⅠ n t e r na t i o nalCo nf e r e n c eo 1 1HCⅠ 1 9 8 8 Ma j o rHa n d bo oko nHCⅠp u bl i s h e d( M.He l a l l d e re d. ) 1 9 8 9 Ⅰ FⅠ Pe s t a bl i s h e sTe c h l ー i c alCo mmi t t e eo nHC

( Ⅰ FⅠ PTC1 3 )

この ような流れのなか,人間工学 は従来 のハー ドウ ェアイ ンター フェースの設計以外 に, ソフ トウェアイ ンター フェースの問題 に も関心が集 中す るようになっ て きた. これによって,人間の認知行動 を研究す る方 向へ と道 がつ けられた. これ を,認知人間工学 とよん でお り,現在で は重要 な研究領域 となっている. さら に, ソフ トウェアのイ ンター フェース もコンピュータ と個人 の もの以外 に, システムや組織 な どのマ クロな イ ンター フェースに も関心が もたれ は じめてい る.

最 近 は

,I NUSE ( i nf or mat i on Engi neer i ng Us abi l i t ySuppor tCe nt r e s )

プロジェク トの ように, 欧州内 において

,I TE

関係 の研究所 の協力関係 が成立

し,各 国企業 の

Us abi l i t y

を支援 す るセ ンターが設置 されてい る.

2 ‑ 2。

主なプロジェク トとその成果

ここで は,欧州 にお ける

I TE

の主だったプロジェク

トを紹介す る.当然 の ことなが ら,すべてのプロジェ ク トは網羅で きないが特徴的 と思われ る ものをあげる.

I NSI S ( I nt e r ‑ i ns t i t ut i onali nt e gr at e dSe r vi c e s i nf or mat i onSys t e m)

このプロジェク トでは,前述 の ように,初 めて

I TE

が定義 され る とともに,欧州 にお ける

I TE

関連の研究 所が レビュー されてい る. そ して, それぞれの著名 な 研究者へのア ンケー トと面接 に基づいて, その時点の

I TE

の問題点,将来 に期待 され ることが整理 されてい

る.

また,研究領域 を定義 した うえで,先駆 けてい る米 国,欧州,そ して 日本の

I TE

研究の比較が行われてい る. この時点では, 日本 は配慮 され る研究 はほ とん ど ない とされている.そ して,今後 の

I TE

の発展のため には,国 を超 えた研究者 の協調 と, その うえで戦略 的 な研究 プ ロジェク ト

( SPRI TE:a St r a t e gi c Pr o‑

gr ammef orRe s e al ・ C l li l lI TE)

の必要性が訴 え られ

解説 ・情報技術 に対 す る欧州の人間中心 アプローチ

51

(4)

ている. これが後 に続 く,多 くの欧州 プロジェク トの 発火点 となった とも考 えられ る.

Human Fac t or sGui de l i ne sf ort hede s i gn of Comput e rBas e dSys t e m

このプロジェク トは,英国国防省 と英国通産省 によ って支援 された もので

1 9 8 8

年 に終 了 している.その成 果 は,タイ トル と同 じ名称 のハ ン ドブ ック14)として頒 布 されている. このなか には,個々のユーザーインタ ー フェースの設計で はな く,包括的なシステムのライ フサイクル においてユーザー中心 に開発す る方法論が 示 されてい る.既存 の システム開発 プロセスの枠組 み の中に一貫 して人間工学が関与 してい くように体系立 て られている.

この ような方法論 が明確 になれば,人間工学 の専門 家 は開発 に主導的 な関わ り方 をす ることが可能であ り,

また,欠かせ ぬ要員 となることが期待 で きる.

HUFI T ( HumanFac t or si nI nf or mat i onTe c h・

nol ogy)

1 9 8 5

年 に始 まった

HUFI

T プロジェク トは,ソフ ト ウェア開発 の,特 にユーザーインター フェースの品質 を向上 させ るた め に行 われた

ESPRI

T プロジ ェク ト

1

つであ る

( Gal e re ta

l10)

,1 9 9 2 ) .

プロジェク ト は,欧州の主要 な電機 メーカー と大学な どの研究機 関 との共 同によって運営 された.

HUFI

T は,主 に事務 システムの開発 を対 象 として いるが, これ を支援す る人間工学的手法 を開発す るこ とが 目的で あった. それ まで に も,情報技術 における 人間工学 の問題 は指摘 され, さまざまな提案 はなされ て きたが,実際の システム開発 に適用 され るにはいた っていなか った. そのため,現存 す るシステム開発 に 適合 させ,定着で きるような手技法 を開発 目標 として いる。 この ように,手技法 を開発環境 に適合 させ,定 着 させ ることを制度化

( I ns t i t ut i onal i s e)

とよんでい る. これ らの手技法 は,開発全体 を支援す ることを目 標 としてい るために,開発初期段階である仕様作成 を 支援す ることに重心が置かれていた.開発 された手技 法の全体像 を図

3

に示す.

HUFI T

の成果 は,前述 の よ うに実際の開発で利用 され ることを目標 としている。

そのため,成果 の手技法のユーザーは,エ ンジニアや デザイナーな どであ り,最終的に これ らの開発担当者 のユーザ ビリテ ィをあげるように整備 されている.

さらに, この時点で,先端技術 であった音声入出力, マルチメディア とマルチモーダルな どのインター フェ ースについて も人間工学的な検討が行われている.

ORl ) l T ( Or ga ni s at i o na lRe qui r e me nt sDe f i ni ‑ i o nf orI nf or ma t i onTe c hno l ogy)

I )

lTプロジェク トは

,ESPRI T

IIプロジェク ト 間こし学 V('1.35,No 1('99)

Er g o n o m i c s

Co mp u

ter

Hu ma nF

actol・

チ‑タベ

‑ ス

3 HUFI

T IO)の手技法の体系

Fi g. 3 Tl l et o ol sa n dme t l l O d si I IHUFI Tp r o j e c

t

として

,1 9 8 9

年 よ り

5

年間継続 され,システム開発 を 行 う組織の要求分析 と, その要求仕様 をまとめ る方法 論 を構築す ることを目的 としていた. それ までの シス テム開発 は,技術 的な側面 の開発 に主眼が置かれて開 発 されてお り,実際 に設置後 に改 めて, プライバ シー, セキュ リテ ィ,職務 の再設計 な どの社会 システムの側 面が検討 され ることが多かった.時 として, ここでの ギ ャップによ りシステムが機能 しない ことや, あ るい は仕様変更 を余儀 な くされ ることも少 な くなか った。

そのため, システム開発 の初期段階 に組織的な要求 を 仕様化で きることの効用 は大 きい. このプロジ ェク ト は, そのための方法論 の開発 を目標 とした.

FACE ( Fami l i ar i t yAc hi e ve dThr oughCommon Us e rl nt e r f ac eEl e me nt s )

FACE

プロジェク トは

,ESPRI T

IIプロジェク トと して

,1 9 9 2

年 よ り

3

年間継続 された.情報技術 の発展 によって複雑 になった家庭用電機製品のユーザ ビリテ ィの向上 を目的 とし

,Phi l i psCol l S ul l l e rEl e c t r oni c s

が中心 となってそのほかの電機 メーカーや大学研究機 関で共同 して行 われた.

使 いづ らい家電機器のイ ンター フェースの問題 は,

(5)

メーカー ご とに,場合 によってはその企業内です ら統 一 されないイ ンターフェースにある. このプロジェク

トで は,基本的な家電 のイ ンターフェースの考 え方 と, 標準 とすべ き基本要素のセ ットが提案 された. この提 案 の1つ として,"OK"ボタンがある。 これ は, コン

ピュータアプ リケーシ ョンにおける設定のための確認 プロセスの ような もので,従来の家電機器 のイ ンター フェースにはなか った ものである.

プロジェク ト結果 は,ガイ ドライ ンとして まとめ ら れた9).このガイ ドライ ンは,家電機器 のイ ンター フェ ースの設計原則 と,基本的な共通 イ ンター フェースの 設計 ガイ ドライ ンか ら構成 されてお り,設計 に も直接 引用で きる形式 となってい る.

I SSUE ( i nt e gr at e dBr oadbandCommuni c at i ons Sys t e msandSe r vi c e sUs abi l i t yEngi l l e e r i ng) 1 9 9 2

年 に 終 了 し た

I SSUE

プ ロ ジ ェ ク ト は,

ESPRI T

プ ロ ジ ェ ク トの 後 に 行 わ れ た

RACE

( Re s e ar c handt e c hnol o gyde ve l opme nti nadvanc e d coml l l uni cat i ol l St e c hnol ogi e si nEur ope )

プロジェ

ク トとして行 われた ものである.電気通信事業 におけ るユーザーの要求 を, そのサー ビスに適合 させ ること によってサー ビスの有効性 を高めてい くことを目的 と してい る.具体 的 には, ビデオ を利用 した通信技術 と マルチメデ ィナ を利用 した検索技術 への応用 を検討 し た.

この結果,電気通信サー ビスのユーザ ビリテ ィを評 価 す るための シ ミュレー シ ョン方法 と実験 システム, 実際のユーザー によるそのサー ビスへの要求分析, そ して,有効 なサー ビスを開発す るためのガイ ドライン をまとめてい る. そ して, これ らの結果 は, ビデオテ ープ,文書, ソフ トウェア として配布 さjlた.

LUSI( Li kabl eandUs abl eSer vi c el nt e r f ac e s ) LUSI

プ ロジェク トは

,I SSUE

に続 く

RACE

IIプ ロジェク トの

1

つであ り

,1 9 9 6

年 に終了 した.最終的 な目的 は,電気通信事業のサー ビスを一般 ユーザーに 受 け入れ るようにす ることにあった. そのために, こ のプロジェク トで は,現行 のサー ビス開発 におけるユ ーザー要求 とのギ ャップを明確 に し, そのためにデザ イナーに どの ような支援 をすれば良 いか を研究 した.

一般的 には, この場合 のデザイナーやエ ンジニアは, 人 間工学の専門家ではない. これ を配慮 して, まとめ られたのが

,HumanFac t or sGui de l i ne sf orTe l e coml mul l i cat i ol lSe i ・ Vi c ef orNol l ‑ Exe r tUs e r s

である. こ れ は

2

分冊 のガイ ドライ ンであるとともに,マルチメ デ ィア化 を試 み

,CDROM

として頒布 されている.

MUSi C ( Me as ur i ngUs abi l i t yi nCont e xt ) MUSi C

プロジェク トは

,ESPRI T

Hプロジェク ト

として

1 9 9 0

年か ら

4

年間継続 された.これ は,ユーザ ビリテ ィを測定 し,仕様 を明確 にす る手技法 を開発す ることを目的 とした.成果 として,ユーザー作業量, ユーザー満足,認知負担 を測定す る手技法 を開発 して いる.

MUSi C

の結果 は

,MAPI( Musi c‑ As s i s t e dPr oc‑

e s sI mpr OVe l T l e nt ,1 9 9 5 ‑1 9 9 ‑ 6 )

として,具体的な応 用研究が実施 された.

また

,I NUSE( I nf or ma t i onEngi ne e r i l l gUs abi l i t y Suppor tCe nt r e s ,1 9 9 6 ‑1 9 9 7 )

プロジェク ト8)によっ て,ユーザ ビリテ ィを支援 す る機 関の設置 とそのネ ッ トワー クが設立 された. ここでは,ユーザ ビリテ ィを 支援す る基本情報 の供給 とコンサルタ ン トを行 う.覗 時点

( 1 9 9 9

年)では,英国の

Nat i onalPhys i c alLabO‑

r at or y

を中心 として

1 0 0

を超 える.

さ らに

,RESPECT ( Re qt l i r e me nt s El l gi l l e e r i l l g andSpe c i f i c at i o

1 ,1 9 9 6 ‑1 9 9 7 )

が実施 された. これ は,ユーザー要求 を仕様化す る手続 きを明確 にする こ とを目的 とし,結果 は

I NUSE

のネ ッ トワー クを通 じ て伝播 されてい る.

これ らのプロジェク ト以外 に,身障者,高齢者のた めのプロジェク トとして

,I NCLUDE ( I l l C l t l S i ol l 0f Di s a bl e dal l dEl de r l yPe opl ei nTe l e mat i c s ) ,USER

( Us e rr e qui r e me nt sEl abol at i on i I IRe ha bi l i t at i ol l al l dAs s i s t i veTe c hnol ogy)

な どがあ る. また, これ

らの情報 および電気通信関係 のユーザ ビ リテ ィに関連 す るプロジェク ト以外 に,運輸関係,生産 システムな ど多 くの分野 において,ユーザ ビ リテ ィを検討す るプ ロジェク トが組織 されている.

3 .

欧州 における

I TE

の特徴

I TE

の発展 は欧州 に限定 された ことで はな く,特 に 米国で はユーザ ビ リテ ィ研究 は盛 んで あ り,多 くの応 用 によ り優 れたユーザ ビリテ ィを もつ ソフ トウェアが 開発 されているのは周知 の ことである.我 が国で も最 近の研究報告 をみれば,関心が高 ま りつつあ るのが理 解で きる. この ような状況のなかで,欧州が とって き た特徴 ある対応 について整理す る.

3 ‑

1.開発 体 制 へ の影 響

(1)利用品質

( Qual i t yi nUs e)

の考 え方

一般 的 には,情報技術 のユーザ ビリテ ィは人 と製品 属性 との関係 における利用 しやす さの可能性 を取 り扱 う. しか し図

4

か らわか るように,人間 とコンピュー タだ けの関係 だ けでな く, その背景 とな る社会 システ ムや組織 な どの影響 を除外 して この利 用 しやす さを結

解説 ・情報技術 に対 す る欧州の人間中心 アブ[‑ チ

53

(6)

4

利用品質の考え方

( Be va n

l

) ,1 9 9 6 ) Fi g. 4 Qual i t yi nt l S e .

論づ けることは不可能 である. したが って,製品属性 にのみ基づいた使 いやす さとい うのは存在 しないため, 無条件 に "使 いやすいキーボー ド"とか,"ユーザー フ

レン ドリーな ソフ トウェア" とい うのはあ りえない.

ここで重要 となるの は,"利用状況

( Us eofCont e xt ) "

とい う考 え方である.ユーザーが システムを通 じて作 業 を行 う場合 に, それぞれの社会的,組織的な背景 は 個々のユーザー ご とに異 なるのであるか ら,ユーザー ご との特定 な利用文脈 が大切 になって くる. この考 え に基 づ いたユー ザ ビ リテ ィは次 の よ うに定 義 され る

( Shacke

127

) ,1 9 91 ) .

特定 の作業環境 における作業 シナ リオに基づいて, 特定 の作業 を遂行 す るために,特定 の トレーニ ン グ とユーザーサポー トを与 え られた,特定 のユー ザ‑が容易 にかつ効果的 に利用で きる とい う機能

この特定 の利用状況の もとで作 られ る製品の品質 は, 従来の物理的な製 品の仕様 ではな く,"利用品質

( Qual ‑ i t yi nUs e ) "

と よ ば れ る も の で あ る

( Be van

l),

1 9 9 6 )

.この場合 に品質 を決定す る尺度 は,ユーザーの 満足,パ フォーマ ンスが与 える効果 とその効率 によっ て表わ され る.

54

人間工学

Vo13 5 ,No .1( ' 9 9 )

(2)開発組織 およびプ ロセスの再編

で は,利用品質 に基づいて, よ り良い製品 を開発す るにはどの ような方法があるか. その

1

つ として,礼 会技術的

( Soc i o‑ t e c hl l i c a

l)アプローチが適切 で ある とされてい る. このアプローチ は

,Eme r y& Tr i s t 7 ) ( 1 9 6 9 )

らによって提案 された もので ある.彼 らは鉱 山 において新 システムを構築す る際 に,技術 システムの みを導入 した場合 と,適切 な組織や職務 (job)な どの 社会 システムの再設計 と技術 システムの導入 を同時 に 行 った場合 を比較 した. この結果,同時 に設計 す るほ うが有効 なシステム を構築で きた と報告 してい る. こ のアプローチに従 えば,利用晶質 を高める技術 を導入 す るだけでな く,開発組織やプロセスを同時 に再編成C してい くことが必要 になる. また,開発 プロセス全体 に対 して人間中心のパースペ クテ ィブをもち,開発初 期か ら計画的にユーザ ビリテ ィを高めることを目標 と

し, これ まで以上 に,製品開発 において人間工学 を一 貫 して貢献 させ ることがで きる.人間工学専門家 な ど ユーザー行動 に詳 しい者が開発の舵取 りを担 うことに もな り,人間工学が開発 に果たす役割 と責任が拡大す る。

このように戦略的 に開発体制 を編成す る考 え方 は,

8 0

年代初期か ら提案 されてお り

,MUSi C

プロジ ェク トとそれ に続 くプロジェク トもこれ に基づいてい る.

2

MUSi C

プロジェク トで提案 されている開発 プ ロセス案 を示 した.

以上の考 え方 は,図

5

の ように トータルな品質 を保 証 す るための基本 的な枠組 みによって成 り立 ってい る.

すなわち,製品の利用晶質,人間中心の開発体制, そ して人間工学専門家 の能力が整備 され ることに よ り, 人 間中心の製品の品質が保証 され ることになる とい う 理論である.

3 ‑ 2 . 産官学共同による I TEプロジェク ト

各 プロジェク トの結果 は,ガイ ドラインとして まと め られてお り, プロジェク ト数 に比例 してガイ ドライ ンがあるといって もよい. このガイ ドライ ンは,製 品 指向の もの と開発 プロセス指向の もの とに大別 で き, 製品開発 には欠かせ ないツールであ り,特 に新規製品 開発の立 ち上 げ, プロジェク ト別の設計ガイ ドライ ン 作成,新人教育 な どには有効 であるといわれてい る.

この ようなガイ ドライ ン情報のほかに,各国 には, 身体寸法値 な どの基本情報が整備 されてお り, その う ちのい くつか は,データベース化 されている

( Me gaw1 8 ) , 1 9 9 0 ) .

また

,Bi r mi l l gham

大学 には

Er gono mi c sAl l al ys i s

l nf or mat i onCe nt r e

が あ り,人間工学関連 の書誌情報

(7)

2

利用者中心のデザインプロセス

( Be va n

l

) ,1 9 9 6 ) Tab. 2 Hu ma nc e nt r e dde s i gnpr oc e s s .

PREPARI NGFORUSER‑ CENTREDDESI GN

・Us a bi l i t ypr o c e s sma t ur i t ya s s e s s me nt

IBus i ne s san dor gani s at i onalne e dsandu s a bi l i t yo b j e c t i ve s

。Us e r ‑ c e nt r e dde s i gnpl an

・Che c kl i s tofHCIi s s ue s

USER‑ CENTREDDESI GN ACTI VI TI ESDURI NGFEASI BI LI TY

・J o bde s i gl l

・Cont e xtofu s es t t l dy

・Pape r ‑ ba s e dpr o t ot ypi ngl l l e t hods

・Sc e nar i o‑ ba s e de l i c i t at i o nofr e qui r e me nt s

。Us a bi l i t yo b j e c t i ve sde f i ni t i ol l / r e f i n e me l l t

。Us e ri l l t e r a C t i ons pe c i f i c a t i ol l

・Par al l eld e 1 7 e l opme l l t

・Co1 0P e r at i vec l e s i gn

EVALUATI ON OFREALI STI CPROTOTYPESDURI NGDEVELOPMENT

・De s c r i bede t ai l e dc o nt e xto fus ea ndc ont e xtOfe val ua t i oI ュ

・Re f i l l eande l a bor at ede t ai l e dus a bi l i t yt at ‑ ge t s

・Col l f or ma nc et os t yl egui de s

・I mpl e me nt a t i onofe r gono mi cpr i l l C i pl e sands t andar ds

・Expe r te val uat i onus i n ghe ur i s t i c sa ndwal l く ‑ t hr o ug h

・Anal ys et l S e l ・i l l t e r aC t i onwi t hp r ot ot ype s

・Me a s uI ‑ ewhe t he rus a bi l i t yt ar ge t shav ebe e na c hi e v e d I MPLEMENTATI ON

・Sur ve yofat t i t ude s

・I nt e r vi e ws

。Obs e r va t i ol ュ

製 品 の利 用 品質

/

人 間 中心 の 開発プ ロセス

図 5 I TEにおける晶質のとらえ方

Fi g. 5 Re l a t i ons hi pbe t we e l lt l l ef ac t o r sc ol l t r i but i l l g t ot ot alqual i t y.

30 0

以上 の雑誌か ら編集 し

,Er gonomi c sAbs t r ac t

誌 として発刊 している.現在,CDROM版 も販売 され てい る.

ユーザ ビ リテ ィに限定すれば, さ らに広範囲な関連 分 野 の情 報 を収 集,整 理 す る必 要 が あ る.『

COM‑

PUTER HUMAN FACTORS I NFORMATI ON

SERVI CE DATABASE

射ま

,HCI

に特化 した書誌情 報 を広範 な雑誌 な どか ら収集 した もので

HUSAT研

究所 によって編集 されている

( Pl l i l l i ps

2

5 ) ,1 9 9

1).

ほか に特徴的な こととして,『

Us abi l i t yEval uat i on i n l l l dus t r y

( Jor dan

1

6 ) ,1 99 6)

とい う著書 の よ うに,

Phi l i ps

社 の ような企業支援 によるユーザ ビ リテ ィ評 価手法 の情報交流が行われていることがあげ られ る.

以上の ようなガイ ドライ ンやデー タベースの整備 は,

Eur opean Commi s s i on

支援 によるこ とが多 く, その 実施 にあた っては,産官学の協力体制 によって行 われ る場合が多 い.例 えば,HUFI

T

プロジェク トで は,

Bu

l

,I CL,01 i vet

t

i ,Phi l i ps ,Si e mens

の 企 業 と

HUSAT

研究所 や,Fr

aunhof e rSoci et yな どの大学研

究機 関が,Shackel

,BuHi nge r

といった国際的な研 究 者 の協力 を得 なが ら,共同研究 によって行 われた.最 近の

I NUSEプロジェク トでは,欧州 内 に製 品の ユー

ザ ビリテ ィを高 めるためのセ ンターが設置 されてお り, 欧州 内で適用可能 な情報 の伝播 とともに,開発 の支援 を行 ってい る.

また,ガイ ドラインの主た るユーザーが デザイナー

解説 ・情報技術 に対す る欧州の人間中心 アプローチ

55

(8)

であるこ とを考 える と, ここに もまたユーザ ビ リティ の問題 が発生 す る.これ は

," met a‑ us abi l i t ypr obl e m"

といわれ るテーマであ り,古 くか ら, その利用頻度の 悪 さが指摘 されていた (例 えば

,Me i s t el ・al l dFa l ・ r 2 0 ) , 1 967)

.したがって,ガイ ドライ ンも通常の製品や シス テムの構築 と同 じように利用者指向のデザイ ンが望 ま れ, そのため,ガイ ドライ ン編集方法 に もさまざまな 工夫が な されてい る.

FACE

の例 (

6

) を示 す と,

ここで は繰 り返 しデザイ ンが とられてお り,ガイ ドラ イ ン自体 のデザインも利用者指向の手続 きが とられて いる.

次 にガイ ドライ ンに必要な ことは, どこで, どのよ うな情報が入手可能 なのか を, ガイ ドラインを利用す る可能性 のある人 に伝 えることである.良いガイ ドラ イ ンが存在 して も,実際 に有効 に活用 して もらわなけ れ ば意味がないため有効 な伝播方法が求め られ る.関 係機関 に伝達 をす る以外 に,現在 はイ ンターネ ッ トで

We b

サ イ トを作成 し,広 く伝 播 す る試 み を行 ってい る. この方法 によれ ば,最終結果 を広報す るだ けでは な く,何度か

β

版 を提示 し,フィー ドバ ックを受 けな が ら改善 してい くことも可能 である.実際 に

,MUSi C

とそれ に続 くプロジェク トの関連情報や,最終結果が ホームページに掲載 されている. さらに出版物以外 に, ガイ ドライ ンをマルチ メデ ィア化 して

,CDROM

化す る試 み もある.

以上 の ように, プロジェク ト成果であるガイ ドライ ンを透 させ るために, イ ンターネ ッ トやマルチメデ ィアの応用が検討 されてい る.

3‑ 3.

現 実 領 域 を探 究 す る研 究 方 法

社会技術的アプローチによった提案であるな らば, その研究領域 は現実領域であることが前提 となる.覗 実領域 でなけれ ば,提案 した方法論や理論 は検証で き ない.研究成果である方法論 を企業 な どの現実領域 に 定着 させ,制度化 す るためには,提案 された方法論 は 個々の企業 の条件 に応 じて実証 しなが ら,精錬 されて

いかなければな らない.

この場合,研究者 には

2

つの側面が求 め られ る.

1

つ は,方法論 の有効性 を検証 してい くこと (研究の側 面) と, もう

1

つ は方法論 を利用 しやすい形式 に して い くこと (応用の側面)である. この ような条件 の と きに とられ る研究方法がアクシ ョンリサーチ

( Ac t i ol l Res ear ch)

といわれ る ものである. アクション リサー チ は,伝統的な実証科学の研究方法である実験研究, フィール ド実験,サーベイ, ケーススタデ ィに対 して, 近年のアプローチ として注 目されているものである.

情報 システム学 における研究方法 を参考 にすれば,近

56

人間工学

VoL3 5 ,No .1( ' 9 9 )

.

, 1 ‑ 〉

Rul e s a g l ̀ e e d De f i n i t i o l l S

Do c u me l l t

f

o r U トDe s i g l l e r S

て こ E 了 コ l S l i l :t o r s

6 繰 り返 しによるガイ ドライン編集9)

Fi g. 6 I t e r a t i vea ppr oac l lO fr t l l ede f i l l i t i on.

年の研究方法 は

Gal l i e r s

ll)

( 1 992)

によって,表

3

の よ うに整理 されてい る. この ように,現実領域 を対 象 と す る場合の研究方法 は従来 の方法 と比較す る と多様 に なっている. これ は,同 じような研究領域 を もつ人 間 工学 に もいえることである.特 にアクシ ョン リサーチ の実例 として,最 も知 られ てい るの は

,Checkl al l d 3)

( 1 981 )

らの英国の研究 グループによって提案 された ソ フ トシステム方法論 である.

Checkl al l d

は,実証 主義 的研究 とアクシ ョン リサーチ との違 いを図

7

の ように 研究サイクルの違 いか ら説明 している.一般的 に実証 主義的研究サイクル は,仮説 を設定 し,統制 された研 究領域で検証 され, それ を客観的な立場 か ら観 察 し, その結果 を分析 し,仮説の存続 を決定す る.一 方, ア クシ ョン リサーチで は研究者が構築 して きた方法論 や 理論 について新たな知識 を得 るために,研究 テーマ を 設定 し,理論 を実践 に結 びつけるために知識 を適 用 し て,現実領域での問題解決 に具体 的 に関与 す る. この 現実領域 でのアクシ ョンの 目的に研究 テーマが設定 さ れ なけれ ばコンサルテー シ ョンとなる.

アクシ ョン リサーチの人間工学の フィール ド実例 と して は,情 報 シス テ ム 開 発 の

SSADM ( St r uc t t l r ed Sys t el T IAnal ys i sal l dDes i gnMet hodol ogy)

法 に人 間工学 を戦略的 に投与 した

Damodar an 5) ( 1 991)の研

究がある. この研究で は当初,開発 システムの ダイア ログ設計 のみを依頼 されたのに対 し,人間工学 がいか に有効 なシステム開発 に寄与す るか をマネー ジ ャー に 教育す ることによって,仕様作成か らシステム設置 ま での全体 にわた り,開発 を支援 す ることを委託 され, 情報 システムに対 す る戦略的な人間工学の貢献 の仕方

を体系化す ることに成功 している.

ユーザ ビリテ ィ研究が従来の ような手技法か ら,戟 略的な

HSI

研究 まで拡張 されてい くには,ア クシ ョン

(9)

3

情報 システム研究方法の適正 (中嶋2

3 )( 1 99 8))

Tab.3 Choos i ngi nf or mat i ons ys t e msr e s ear c happr oac hes .

伝統的な経験的アプローチ (観察的) 新 しいアプローチ様式 (解釈附)

理論証明 実験研究 フィールド ケースス夕 サーベイ予測と未来 シミュレーション 主観的/ 記述的/ アクション 実験

デ イ

研究 /役割ゲーム 論争的研究 解釈的研究 リサーチ

× ×

○ ○

組織 .集団 × △ (小集団)

〇 〇 〇

×

○ ○

○ ○

〇 〇 〇

× ×

方 法 論

×

〇 〇 〇

×

○ 〇

理論の構築 × × ×

○ ○

○ ○

理論の検証

〇 〇 〇 〇

× ×

理論の拡張 × × ×

出典

Gal l i e

lS,

R.D.( 1 9 9 2 )ChOOS i l l gi l l f ol ・ 1 1 1 at i ol ュS yS t e l l l Sl ・ e S e al C l lapp1 ‑ OaC he s ,1 1 1 f ol ̀ 1 1 1 at i ol lSyS t e l l l S r e s e ar c h二I s s u

e

s .Me t ho( l sandPr ac t i c alGL l i de l i l l e S ,I l 一Gal l i e r s

,

R.D,Oxf oI ‑ d:Bl ac kWe l l .

1

‑ ‑ ‑ ‑ ‑ >

繰 り返 し

証主義的研:

:

.

iirJ.

存続か .取り壊 し

アクションリサーチ

7

実証主義的研究 とアクションリサーチ との違い (神沼17

) ,1 993)

Fi g.7 Thedi f f er ・ el l Cebe t weel lpos i t i v is m appr oachandact i onr e s ear , c h.

リサーチの ような,現実領域 を対象 とす る研究方法 が 普及 して いか ない限 り,実験研 究 と応用事例 とに分離 された まま,研究 と応用 の相互 に作用 した発展 は難 し い と考 え られ る.

4 .

国内の人間工学が開発体制へ与えた影響

これ まで欧州 にお け る

I TE

の特徴 を議論 して きた が, 国内で は関心が向 け られていない領域 もあ り,単 純 に国内の現状 とヨー ロ ッパ とを比較 す るこ とは困難 で あ る.しか し,欧州 にお ける

I TE

の最 も大 きな特徴 として,製造 業 の開発体制 に対 して強 い影響 を与 えて

きた ことを指摘 で きる. したが って, ここで は この側 面 か ら日本 の人間工学 の現状 を検討 す る。

4 ‑

1.特集「人間工学 はなぜ役 に立たないのか

」より

人 間工学会誌

2 5

6

号 お よび

2 6

1

号 において, 特集 「人 間工学 はなぜ役 に立 た ないのか」が組 まれた.

これ まで人間工学が製 品開発や労働環境 の改善 に貢献 した こ とを確認 す る とともに,現状 の問題点 を踏 まえ た うえで,今後,人間工学 に期待 され る ことについて, 乗物 ,情報機器,衣食住 の生活環境 , そ して高齢化社 会 とい う領域 か らの報 告が あった.大久保

2 L l ) ( 1990)

これ らを総括 し,時代 のニーズに よって変化 す る開発

解説 ・情報按補 に対 す る欧州の人間中心 アプローチ

57

(10)

現場 の要請 に応 えるデータの再構築,企業の開発 プロ セス とよ り共 同で きるシステム作 りな ど, よ り密接 に 開発 に貢献 で きる体制が求め られているとした. さら に,人間工学専門家 の育成 が指摘 され, こういった人 間工学全般‑の要求 をマネージメン ト側 に

PR

す る必 要性 のあ ることを示 した. また, この時点で先端 の情 報科学 な どへの貢献 が求 め られていることを指摘 して いる.

大久保 が指摘す るように, この ような問題 は従来か ら認識 されていた ものであ り,現在 も解決 されてい る とはいいがたい.

4 ‑ 2 . 1 9 91

年 の面接調査

人間工学が製造業 における開発 プロセスのなかで, どの ように貢献 しているか を詳細 に調べ るために面接 調査 を実施 した (平沢13)

,1 9 9 2 )

.面接 を行 った企業 は

7

社であ り,開発製品 は,オフィス機器

4

社,オ フィ ス家具

1

社, 自動車

1

社,物流 システム

1

社 である.

結果 は,企業間,開発 フェーズ ごとにバ ラツキはあ る ものの,人間工学 が開発 プロセス自体 に大 き く貢献 している とはいえない ことがわか った. プロセスを要 求分析,設計,評価,設置 とい うフェーズ ごとにみた 場合,評価 フェーズで利用 され る場合が比較的多い.

要求分析 で は,ユーザーニーズの把握,競合分析 な ど 重要 な検討が行 われ るが, ヒューマ ンファクターの問 題 とい う認識が ない まま,経験則 に基づいていた.設 置,納入 に関 してはユーザー まかせであ り,人間工学 的配慮 はほ とん どなか った.

人間 と環境 という製品の基調 となるコンセプ トは ど の企業 も同 じであったが, こういった人間工学 の開発 プロセスへの関与 は大 きな違 いが あった. その背景 と しては, ヒューマ ンファクターが市場要求 として明確 にあるか とい うことが企業外 の要因 として強 く働 き, そ して,開発 プ ロセスの戦略 として人間中心の一貫性 が明確化 されているか どうか とい うことが企業 内の要 因 と考 え られた. これ は開発 マネージメ ン トの問題 で ある. この一貫性 に基づいて,人間工学関連組織,要 負,手技法の整備が行われ ると考 えられ る.多 くの場 令,人間工学 の貢献 は開発 の主流 にな く,設計者 の個 人的な資質 によって,経験則 によった場合が大勢 とみ られた. また,設計 ガイ ドラインな どの情報の企業 内 蓄積が少ない ことも明 らかになった.

4 ‑ 3 . 1 9 9 7

年 度 関東 支部 会 に お け る特 集

1 9 9 7

年度関東支部会 において,情報機器製造業

5

よる企業内人間工学活動の紹介があった。 この

5

製 品

のユーザ ビリテ ィへの関心が高 く, この数年

人間二1.等 Vo1.3r).No.日'99)

で大 き く開発体制 を変革 してきた ことを報告 している.

大 きな変化 としては, ほ とん どの企業が ヒューマ ンフ ァクター を専門 とす る組織 を設置 していることを指摘 で きる.組織 の位置づ けはデザイ ン部門か,品質保証 部門かに分かれている.主た る業務 としては,画面 な どの ヒューマ ンインター フェースの設計支援,ユーザ ビ リティに関す る調査研究 な どである.利用 され る手 法 としては,従来の人間工学的手法のほかにユーザ ビ

リテ ィ工学の応用が試 み られていた. しか しなが ら, どの企業の人間工学活動 も,開発の主流 として機能 し ているのではな く,開発 を支援す る とい う立場 にある.

4 ‑ 4 . 1 9 9 8

年 度 人 間工 学会 大会

1 9 9 8

年 に慶 応大学 で開催 された 日本人 間工 学 会第i

3 9

回大会では

,

人間中心 の考 え方 に もとづ くユーザ

ビリテ ィ管理」と題 されて

,I SO 1 3 4 0 7 ( Human‑ c e n‑

t r e dDe s i gnPr oc e s sI nt e r ac t i veSys t e m De s i gn)

に関す るシンポジウムが もたれたが,参加者 の数 か ら みれば必ず しも関心が高 い とはいえなか った. また, ア‑ ゴデザイ ン部会か らユニバーサルデザイ ンの シン ポジウムが開催 された ものの, ヒューマ ンイ ンター フ ェースデザイ ンに関す る一般講演 は全体 の

5%

未満 で あ り,情報 システムデザイ ンに関す るものはなか った.

現在 の学会 の傾 向 としては

,I TE

に関す るテーマ は関 心が低 い と思われ る.

過去

1 0

年間の傾 向 を振 り返 る と,製造業 において, 特 に情報機器関連 で は,ユーザ ビリテ ィへの関心 が高

ま り,人間工学やユーザ ビリテ ィ工学 な どの開発 への 導入が図 られて0 ることが理解で きる. また, デザイ ナー個人の資質 に依存 したユーザーへの対応 も組織立 って行われ るようにな り,支援体制が模索 されつつ あ る とみなせ る.

一方, 日本人間工学会 に限 ってみれば,開発 プ ロセ スに言及 してい る研究 はほ とん どない. デザイ ンよ り も評価 に関連 す る研究が多いように見受 け られ る. さ らに国内には,欧州 に対抗す るだけの

I TE

プロジェク

トは実施 されて こなか った といえる.

5 .

開発体制 に対するアブE]‑チの差

前章の国内の製造業 にお ける人間工学の位置づ けに ついての欧州 との差 は,開発体制 に対 す る人間中心 ア プローチのスケール を設定す ると明確 になる. ここで

,Eas on

6)

( 1 9 8 8 )

I NUSE

Mat ur i t yMode l

15)

( 1 9 9 8 )

の提案 を基 に した基本的な

4

段階 を図

8

の よう に設定 した. この図 を基 に両者の差 を考察す る.

(11)

8

開発プロセスに対する人間中心アプローチの対 応 レベル

Fi g. 8 Human‑ Ce n t r e dne s ss c al ei nt hede s i gnp1 ‑ o c

e S S .

まず,最 も基本的な段階 は作業単位 での対応である.

これは,個 々の作業 ご とに利用者指 向 を考慮す る段階 である.例 えば, 自分 の作成 したデザイ ン図について, ガイ ドライ ンデータを利用 して検証す ることや,必要 に応 じて文献 を調査す る場合である. これ らは組織 に 制約 され ることな く,個人裁量で とることがで きる手 段であ る.個人ベースであ るために,個人の資質 に依 存 し,常 に製品の利用品質が保証 され る とは限 らない.

1 0

年 ほ ど前 は,ほ とん どの製造業が この段階にあった といえる.

次の段階 は,仕様作成,設計,評価,設置 な どの開 発 フェーズ ご とで対応す る ものである. ここでは,開 発 プロジェク トの合意 の もとで利用者指向 を実現す る ための職務が明確 にされ る.例 えば,仕様作成 フェー ズで利用者要求分析 を行 うことや,評価 フェーズでユ ーザ ビ リテ ィテス トを実施 す ることが これ にあたる.

これ ら

2

つの段階では,利用者指 向 を支援す るため のさまざまな手技法の開発が促進 されて きている.最 近 は,従来 の人間工学的手法のほか に,ユーザ ビリテ ィ工学,認知工学か ら開発 された ものが導入 され るよ うになって きている. この ような手技法 によって利用 者指向の精度 が高 まってい く段階 とも考 えることがで きる.現段 階では,多 くの国内の製造業が指向す る人 間中心 のアプローチはこの段階 まで とみ られ る. この

特徴 をまとめると,従来の開発 プロセスや開発組織 自 体 は変 えず,開発側面 か らの支援体制 を整備 しなが ら, 利用者指向の手技法 を活用 している形態 を とってい る

とい うことがで きる.全体的 には, 1段階が大勢 を占 めてい るとも思われ るが, この数年の間 に個人依存か ら職務が明確 にな りつつあ り,全体 として

2

段 階 を指 向 している と思われ る.

一方,欧州のアプローチが指向 してい るの は,次 の

3

段階以降である. ここでは,マネー ジメン トの意志 決定 に基づいた社会技術 的な対応が とられ る. それ ま での段 階が技術的 な対応であったのに対 して,組織 と 開発 プロセス とい う開発体制への変更 を求 め るもので ある.人間中心アプローチ を推進す る開発 を組織化 し, 適切 な要員 を配置す ることや,利用品質 を恒常的に保 証す るために一貫 して人間中心 に開発 を進 め られ るよ うなプロセスを再編成す ることが求め られ る. ここで の適切 な要員 には,人間工学 の専門家 を含 め関連領 域 の学際チームが望 ましい といわれ る.

そ して, この ような組織や開発 プロセスが整備 され, 企業 の体制 として制度化 されてい く段階が最後 の段 階 であ る. ここでは,経営側が経営戦略 として人間中心 に開発 を進 める リーダー シップを とってい る状況 を示 す.

I SO 1 3 4 0 7

も最終的 にはこの段階 を想定 してい る

と考 え られ る.

以上 の ように,国内の現状 と欧州が指 向 してい る も の との差 は,技術 的対応 に とどめるか組織再編 まで も 含 むかの差であ り,あるいは人間中心 アプローチ を開 発の主流 とす るのか,支援体制 に とどめ るのか とい う 違 いで ある とみることがで きる.

6 .

まとめ

欧州 における情報技術発展 に対す る人間工学 の歴史 を振 り返 りなが ら, そのアプローチの特徴 を考察 して きた. その

1

つ として品質 に対 す る視座 を,製品属性 か ら製品の "利用状況''へ と変換 させ,"利用品質"と い う考 え方 を定着 させて きていることを指摘 した. そ して, この "利用品質" を向上す るた めには,製品属 性 のユーザ ビ リテ ィを高 めるだ けでな く, それ を開発 す る組織やプロセスを再編成す ることを提案 している.

これ は,技術指向か ら社会技術指向へ アプローチ を発 展 させていることを意味 してい る. この考 え方 は,品 質管理規格

I SO 9 0 0 0

に もみ られ,企画 か ら廃棄 まで の製品開発の ライフサイクル全体 の改善 を進 めてい く ものであった.次 に この ような変革 は,企業単独 の問 題 としてで はな く,欧州 内での緊密 な産官学のネ ッ ト

ワー ク体制 を整備す るなかで進 め られて きてい ること

解説 ・情報技術 に対 す る欧州の人間中心 アプローチ

59

図 2 I TE の関連研究領域 ( Shac ke 1 2 7 ) ,1 9 9 1 ) Fi g. 2 Tl l edi s c l pl i l l e Sa s s o c i at e dWi t l lI TE.
表 1 情報技術に対する人間工学の歴史 ( Sha c ke 1 2 7 ) ,1 9 9 1)
図 4 利用品質の考え方 ( Be va n l ) ,1 9 9 6 ) Fi g. 4 Qual i t yi nt l S e . 論づ けることは不可能 である. したが って,製品属性 にのみ基づいた使 いやす さとい うのは存在 しないため, 無条件 に &#34; 使 いやすいキーボー ド&#34;とか,&#34;ユーザー フ レン ドリーな ソフ トウェア&#34; とい うのはあ りえない
表 2 利用者中心のデザインプロセス ( Be va n l ) ,1 9 9 6 ) Tab. 2 Hu ma nc e nt r e dde s i gnpr oc e s s .
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参照

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