ドイツにおける現代原価計算の展開と認識状況
マルセル ・シュヴァイツ ァー稿 松 本 康一郎 訳
本稿 は,
1992年
8月
28日に, 本学 「 国際交流委員会」後援の下で本学 にて催 さ れた講演会の原稿の翻訳である。講演者である
M.Schweitzer博士 は,ドイツ
Ttibingen大学経済学部 における経営工業論講座担当教授で, いわゆ る動的 貸借対照表論
(dynamischeBilanzlehre)の嘱矢である
E.Schmalenbach博士の孫弟子の一人であ り, ドイツ現代原価計算の系譜を論 じるに相応 しい論 者である
1)。訳者 としては, この間,本講演原稿の掲載を関係各方面 に依頼 し て きたのであるが,なかなかその機会 に恵まれず今 日に至 った次第である。な
1)Schweitzer
博士の略歴 と主要著書は,以下の通 りである。
Schweitzer
博士略歴 :
・1932
年
10月1
8日 ルーマニアにて生まれ る。
・Hannover
工科大学
,Berlin自由大学にて学ぶ。
・1959
年
E.Kosiol教授
(Berlin自由大学)の下で助手を務める
。・1963
年 博士論文
(Dr.ref.pol )提出 ・受理。
・1968
年
5月1
5日 教授資格論文
(Habilitation)提出 ・受理
(Berlin自由大学経 済社会学部) 0
・1969
年
Ttibingen大学
(Eberhard‑KarlsUniversitat)経済学部教授,現在 に至 る。工業経営論 ・企業研究講座担当。
主要著書 :
・ProblemederAblauforganisationinUnternehmungen (Berlin1964).
・StrukturundFunktionderBilanz (Berlin1972).
興津裕康監訳
(1992)『 貸借対照表の構造 と機能』 ,森山書
店 。・Einftihrungindielndustriebetriebslehre(Berlin1973).
・Produktions‑ und Kostentheorie der Untem ehmung (Reinbek be主 Hamburg1974).
・SystemederXostenrechnung,4.Aufl. (Landsberg1986).
溝口一雄監訳,阪口要訳
(1978)『 原価計算 システム』
(1975年版の翻訳) ,同文舘
。・Break‑even‑Analysen (Stuttgart1986).
〔305〕
お,訳者 は, ドイツ財務会計論 を専攻す る者であ り,本講演原稿の訳者 として は適任でない
かもしれない。それゆえ,翻訳 に際 しては,原価計算専攻の方 々 とくに広 島大学の阪口要教授 よ り,貴重な多数の コメ ン トを賜わ りま した。 こ こに,記 して感謝 申 し上 げます。 もちろん,あ りうべ き過誤 は,すべて訳者の 責任である
2)。A.
原価 ・給付計算の基本問題
I.概念的基礎
原価計算 は,機能的観点だけでな く用具的 ・制度的観点 において も,概念的 に特徴づ けることがで きる。機能的局面では,原価計算 とい う用語の下で次の よ うな業務が理解 され る
。すなわち,経営 目標 に関わ って費消 され る財の評価 に関す る情報の作成に役立っ業務 として理解 され る。用具的な意味で は,原価 計算 は,固有の構造的構成 ( 計算構造)を有 し,特定の意思決定やその他 の適 用 に関わ る量的情報を,定め られた規則 ( 演鐸/変換規則) に従 って導 き出す といった課題を有す る情報生産者 ( 情報伝達用具)である。 これ とは逆 に,刺 度 的局面での原価計算 は,上述のような情報作成課題 を有す る企業の組織上の 単位 ( 場所,部門,領域) と して把握 されねばな らない。
学問および実務 における現在の展開状態 において ̀ ̀ 原価計算" とい う表現が 用 い られ るとき,それは " 給付計算' 'を含むのが普通である。そ うした原価計 算の下で は,経営 目標 に関わ って生成 され る財の評価 に関す る情報の追加的作 成が行われ ると理解 されねばな らない。 この場合 には, " 原価 ・給付計算' 'と 呼ぶ方が相応 しいであろ う
。さ らに, これまで行われて きたよ うに, この計算
2)Schweitzer
博士は,本学での講演に先立って
,1992年
8月20‑22 日に京都で催さ れた 「 第
6回会計史世界会議」において
,「ドイツ語圏における原価計算のパイオニ アとしてのオイゲン・シュマーレンバッ‑」と題する講演を行っている。このときの 講演原稿については , 『 会計』第 1 43 巻第 4 号および第 5 号に,興津裕康教授による翻 訳が掲載されている。 したがって,本稿の講演内容は,この京都での講演の続篇ない し歴史的延長と捉えることができる。なお,本学での講演は,そのほとんどが英語に て行われたが,訳者が
Schweitzer博士より受け取った講演原稿は, ドイツ語によ
るものであった。
ドイ ツにお け る現代原価 計算 の展 開 と認識 状 況 307
の業務管理的側面 に焦点を当て るな らば,それは,短期 ( 業務管理的)損益計 算 と呼ばれねばな らない。けれ ども,最近の展開が示すように,原価 ・給付計 算の戦術的 ・戦略的側面 もます ます展開されている。
原価 ・給付計算か らは, さまざまな意思決定のための情報を作成す ることが 期待 され る。異なる意思決定には異なる原価 ・給付情報が必要であ り,そ うし た原価 ・給付情報 は,ただ一つの計算 システムを通 じて作成す るのは不可能な のが普通である。したが って, 有用なすべての原価 ・給付情報を獲得す るには, 異なる計算概念が展開 されねばな らない。それゆえ, ̀ ̀ 原価 ・給付計算' 'とい
う表現 は,当該意思決定に固有の原価 ・給付構成要素を もって行われ る個々の 諸計算の集合に対す る総称である
。各意思決定 ごとの これ ら計算諸概念を, ど のようにすれば,完結 した一つの原価 ・給付情報 システムへ と統合で きるのか は組織的な問題 であ り,そ うした組織的問題 は
,EDPが基礎 に置かれ るとき, 管理 システムを も含めて,データバ ンクやモデルバ ンクおよび方法論バ ンクの 整備を通 じて解決 される (
Scheer1990,158頁) 。
これまでに展開 されて きた数多 くの原価 ・給付計算 において,計算概念 ( 計 算 システム)思考の合理的な定義 は容易でない。 この概念定義の とくに困難な 点 は,い くつかの計算 は,他の計算の再展開であった り修正ない し加工である といった ことにある。 したが って,計算概念ない し計算 システムと呼ばれ るに は, 経済的財 に関す る量的情報を獲得す るための" 独 自の' ' または " 自主 的な"
あるいは " 基本的に新たな' 'ァブローチであるという印象が伝え られねばな ら ない。原価 ・給付計算 は,以下の構成要素を有 していなければな らないとい う
一概念装置 一認識規則
配分規則
演揮規則
一基準値 ( 基準値階層) 一原価関数
一計算 ( 請)目標
ことか ら出発す るな らば,次の ことが確定 しうる。すなわち, これ ら構成諸要 素の うちの一つが固有の特徴を有 しておれば, どんな ものであれその特徴が, 一つの原価 ・給付計算概念 ( 計算 システム)を決定す るのである。
Ⅱ. 計算概念 と意思決定 との対応
個 々の原価 ・給付概念 についての構造的メル クマールは,当該意思決定が有 す る問題設定か ら規定 され る。 とくに,そ うした意思決定の ( 意思決定モデル における)すべての変数 は,原価 ・給付計算 ( 計算モデル)における基準値 に 対応 しなければな らない。意思決定 と計算 との こうした対応原則 は,製品数量 に依存 した原価 ・給付の可変性を求めるだけでな く,一般には,その時々の意 思決定のすべての変数 に依存 した原価 ・給付の可変性を求めている。
意思決定 と計算 との対応原則 という意味において原価 ・給付の算定を可能 に すべ く,原価 ・給付計算概念が構築 され るな らば, この ときの原価 ・給付概念 は,意思決定に固有の もの として分類 されねばな らず,その ときに算定 され る 原価 ・給付は,意思決定関連的 と呼ばれ る。それゆえ,原価 ・給付の計算概念
ない し計算 システムの分類 に関 して以下で説明 され るすべてのメル クマール は,基本的には, システム構成要素についてのメルクマールであ り,それ らシ ステム構成要素の特性 は,その時々に行われ る ( 各) 意思決定の特殊性 に対応
した ものでなければな らない。 このよ うに して形成 され るべ き計算概念 は,構 造的には,ただ一つのまたは複数の意思決定変数を通 じて,状況によっては, 階層的な形態で決定づ け られる。後者の場合 には,原価 ・給付の帰属計算 とい う観点 の下 で,諸 基 準 値 につ いて一 つ の階層 が作 り上 げ られ ね ば な らず
(Riebel1990;36
頁以降),その階層 もまた,意思決定 に固有の ものでなけれ ばな らない。当該意思決定の特殊性の種類 と範囲は,有用な原価 ・給付情報を 必要 とす る当該意思決定過程の種類 と構造に依存 している。
B.
伝統的原価 暮給付計算諸概念の分類
Ⅰ.伝統的原価 ・給付計算を分類するためのメルクマール
ドイ ツにお け る現代原価計算 の展 開 と認識状況
309企業において行われ る意思決定の特性 は,比較的多数 のメル クマールを通 じ て特徴づ け られ るので, この ことは,意思決定 と計算 との対応原則 に従 えば, 原価 ・給付計算の諸概念 に も当て はまる。原価 ・給付計算の特性 は,何 よ りも 先ず原価局面に関連す る,以下のメル クマールを関わ らせ ることで特徴づ け ら れ る :
一原価負担者 に対す る帰属計算の範囲 一基準値の数,ない し,基準値形成の種類 一原価の時間的関連
一計算 目標
一原価作用因の変動 に対す る適応能力
‑損益数値の帰属計算の範囲 一職能領域 との関連
一理論的基礎 一部門化の程度 一時間的弾力性 一反復性
一適時性の程度
Ⅱ. 伝統的原価 ・給付計算諸概念の分類
前節で挙 げ られたメル クマールに従 って,原価 ・給付計算諸概念 につ いて, 単一段階 または多段階の分類を形成す ることがで きる。ただ一つのメル クマー ルに従 った分類 は単一段階であ り, これ とは逆 に,複数のメル クマールに従え ば多段階である。周知の原価 ・給付計算諸概念 は,多段階的に特徴づ け られ る べ きである。
原価負担者 に対す る原価 の帰属計算範囲
原価負担者 とは,原価を帰属 させ ることので きるすべての要素であ る
。大抵
の場合,販売財や再投入財が原価負担者 と見なされ る。 ̀ ̀ 負担者' 'とい う用語
には,次のよ うな考えが結びついている。すなわち,当該財 は,その時々の原 価を負担額 として " 収容' 'しなければな らず,また, ( 販売財の場合) これ ら の原価 は,市場価格で補償 されねばな らないのである。 しか し,原価負担者 と しては,計算 目的に応 じて, さ らにその他 の要素が取 り上 げ られ る
(Kosiol 1979,283頁以降)
。例えば,原価の帰属計算 は,個別製品 について行 うだ け でな く, 製品の種類, 製品グループ,サー ビス給付,異 なる組織領域,従業員, 期間,設備,工具,作業方法,企業全体,注文,得意先 グループ,販売部門な
どについて行 うことができる。
選択 された原価負担者に対 しては, さまざまに区画 された原価 ( 原価カテゴ リー)をさまざまな範囲で帰属計算 させ ることがで きる。
1計算期間 ( 例えば 月)の原価全体か ら出発 して, この原価全体を,特定の手法 に従 って例えば販 売財 ごとに原価負担者 として全額帰属計算を行 うな らば, これに相応 しい計算 概念 は全部原価計算である。他方, この原価負担者 に対 して,原価全体の一部 ない し特定の原価 カテゴリーだけを帰属計算 させ るな らば,それは部分原価計 算 と呼ばれ る。部分原価計算 は,純粋な原価計算 として設計す ることもで きる
し,部分原価だけでな く売上収益 ( 給付) も原価負担者に帰属 させ るのであれ ば,損益計算 として作成す ることもで きる。 この部分原価において,変動費が 取 り上 げ られ るな らば,それ は,変動費 に基づ く部分原価計算 と呼ばれ る。他 方,相対的な直接原価 ( すなわち,基準値 に関わる直接原価) として部分原価 が区画 されるな らば,そ こでは,相対的直接原価 に基づ く部分原価計算が意図 される。 この相対的直接原価 に基づ く部分原価計算の うち比較的新 しい形態 と して,弾力的製品組立 システム
(Horvath/Kleiner/Mayer1987)のため の意思決定指向的原価計算がある。 この原価計算 は,法律,契約,作業工程, 組立対象および組立場所 といった基準値が考慮 され るとき,プログラムや生産 過程に関す る意思決定 にとって有用な原価情報の算定 に役立
っ 。このような負担者別損益計算の最 もよ く知 られた形態は,補償貢献額計算で
ある。そこでは,純売上高 と充分に定義 された製品 1単位当た り部分原価 との
差額 として,製品単位補償貢献額が,原価負担者 に関わ らせて算定 される。
ドイ ツにお け る現代原価計算 の展 開 と認識状況
311この補償貢献額計算 は,多面にわたって修正が行われて きた。固定費計算の 区分をどのように行 うかによって,変動費 に基づ く補償貢献額計算 は,単一段 階の もの と多段階の もの とに分 け られる。補償貢献額計算の一つの特徴 は,プ ロフィッ ト・セ ンターのための対象関連的な損益計算が行われることである。
プロフィッ ト・セ ンターは,企業における一つの職能領域であ り,それの職能 は,利用 目的に従 って区画 ( 部門化) され,また,そこでの責任 は損益を指向 しているか ら,個別の製品ない し製品グループごとの損益責任が,当該計算制 度の中心に置かれねばな らない。 ここで行われ るべ き対象関連的損益計算 は, 以下のような複数の課題を満たす ものでなければな らない :
‑プロフィッ ト・セ ンターの計画設定の支援
‑プロフィッ ト・セ ンターの管理活動 の支援
‑すべてのプロフィッ ト・セ ンターおよび管理者の能力評価 一企業の支配的全体 目標の達成確保
以上 のよ うに定め られた課題を満たす対象関連的損益計算の構築 に向けての 合理的な一つの試 みが,多段階的補償貢献額計算であ る
(K6hler1988)。補 償貢献額計算の こうした改訂 は,作用 しうる損益構成要素 について意思決定依 存的な修正を加えることによって行われ,それによって,プロブィッ斗 ・セ ン
ター ( 責任セ ンター)についての総額損益計算へ と拡張 される。
原価の時間的関連
当該原価の時間的関連が原価区分上のメルクマールであるとき,実際原価計 算 と計画原価計算 とに区別す ることがで きる。ある特定の月を区画基準 として 選択 し,それに帰属す る期間原価を当月の経過後 に算定 したとすれば, ごの原 価計算 は,事後計算 としての性格を有す る。 この原価計算を実際原価計算 と呼 ぶ。なぜな ら, この原価計算 は,現実に " 実現 した"原価,いわゆる実際原価 を測定す るか らである。
当月の期首以前 ( または期首時点)において,当月についての期首時点以後
の原価を計画す るとき, この原価計算 は事前計算 としての性格を有す る。 この
原価計算 は計画原価計算 と呼ばれる。 とい うの も, この原価計算 は,その後の 原価を前 もって計算的に把握す る ( 規準化ない し予測を行 う) ものだか らであ る。原価負担者を区画基準 として選択す るとき,それに応 じて,事後給付単位 計算 と事前給付単位計算 とに区別 され る。
追求される計算 目標
とくに計画原価計算の場合 には,追求 され る計算 目標に従 ってさ らに詳細な 形態分類を行 うことがで きる。将来を指向す る原価計算の計算 目標 としては,
" 予測"な らびに " 管理 と統制"が定め られ る。それゆえ,予測原価計算 ( 予 算原価計算) が, 標準原価計算 ( 規準原価計算) と区別 され る
(Kosiol1956,49頁以降)。
予測原価計算 は,将来に実際に生 じる原価を予想す る ( 事前 に計算す る)の を目的 とす る。 したが って,ある特定の製造決定が下 され, この意思決定がそ れ以後 どのよ うな原価作用を引 き起 こすのかについて明瞭性を得よ うとす るの であれば,そ うした作用についての予測, この場合 には原価予測が行われねば な らない。 この予想を行 うには,予測原価計算の核心部分 となる,充分 に証明 された原価関数が必要である。予測原価計算 は,経営上の意思決定の諸結果を 予想す る能力を有す るので, とくに,計画設定情報の獲得や計画設定 システム への統合のための情報伝達用具 として適 している。
標準原価計算 には, " 企業過程の経済性を管理 し統制す る' 'とい う計算 目標 が当て られ る。規範値 と実際値 とを対照 させ ることによって,各領域や過程が 効率的に統制 される。それゆえ,規範原価 と実際原価 は,原価場所 に関わる経 済性統制 にとくに適 している。標準原価計算 は, このような標準 と実際の比較 計算であ り,そ こでは,規範原価 は,最適操業 または正常操業 に基づいた規準 としての性格を有 している。 この計算では,開発や適応措置のための原価情報 を,詳細な差異分析の助 けによって導 き出す ことが可能であ り,そ うした原価 情報 は,最終的には,区画 された計算領域 における経済性 に関す る有効な管理
を も可能 にす る。
ドイツにお け る現代原価計算 の展 開 と認識状況
313原価作用国の変動に対する適応能力
計画原価計算の場合 に も,原価作用因のその時々の変動 に対す る原価の適応 能力が,一つの大 きな役割を演 じる。 この適応能力の程度 に応 じて,固定的計 画原価計算 と弾力的計画原価計算 とに区別 される。慣行的に,固定的計画原価 計算の下では,操業の全 く特定の一面 にとってのみ有用な原価を計画す るよう な計算概念が理解 され る。 これ とは逆 に,弾力的計画原価計算では, ( 各)磨 価作用因の,極端な場合 には好 きなだけ多 くの,複数の特性 にとって有用な原 価が計画 され る。 けれ ども,弾力性のこうした解釈 は,意思決定 と計算 との対 応原則の意味において非常 に狭い解釈である。弾力性の試みを,現われ るすべ ての原価作用因にまで拡大す ることが必要である。
先述の四つの区分 メル クマールによ って,重要 ない くつかの原価計算概念 ( 計算 システム)杏,以下のように体系的に整理す ることができる ( 図 1を参 照)0
損益数値の帰属計算範囲
補償貢献額計算を取 り上 げた際に,すでに次の ことが示 された。すなわち, すべての原価 ・給付計算において,さまざまな範囲の損益数値を各基準値 に割 り当てることがで きる。最初に,そ うした基準値 として期間,製品および場所 を想定す るな らば, これ ら基準値 に対 しては,い ったん原価だけを割 り当てる ことがで きる。その ときの計算 は,純粋な原価計算である
。他方,同一の基準 値 に対 して,鏡 に写 し出すように,給付 (とくに売上高)だけを割 り当てるこ
とがで きる。その ときの計算 は, 純粋な収益計算である。この基準値 に対 して,
原価だけでな く収益を も割 り当てれば,期間,製品および場所 ごとの損益計算
が展 開され る。この意味では, 例えば, 全部原価 に基づ く短期経営成果計算 は,
当該期間についての純額 ・損益計算であ り,他方,補償貢献額計算における純
額 ・成果計算 は,当該期間についての総額 ・損益計算である。
職能領域 との関連
計算技術上の問題設定や分析を,企業過程の区画 された各職能 ( 例えば,購 買,輸送,在庫,製造,管理 または販売)に関わ らせ るとき,当該計算 は,購 買原価計算,輸送原価計算,在庫原価計算,製造原価計算,管理原価計算 また は販売原価計算 として展 開 させ ることがで きる。要求があれば,個 々の職能を 結合 させ ることもで きる。 例 えば, 輸送 と在庫 を,ロジステ ィクス とい った " 横 断職能"へ と結合 させ る。 この包括的職能 には, ロジスティクス原価計算を設
けることがで きる
(Weber,∫.1987)。
原価分類のその他のメルクマール
原価計算ない し個 々の部分計算 は,生産 ・原価理論上の確立が どの程度であ るのかによって,その確立が理論上貧弱な もの と充分 な もの とに区別す ること がで きる
。原価費 目か ら原価場所 に至 るまで,原価配賦基準 は,その確立が理 論上貧弱 なのが普通である。原価付加計算の基礎 に置かれ る,配賦率の助 けに よって原価負担者 に割 り当て られ るさまざまな種類の間接費 と配賦基準 との関 係 は,その理論上 の確立が さ らに貧弱である。 これ とは逆 に,部分原価計算 は 理論的に確立 されてい る
。とい うの も, この原価計算 は,少 な くとも製品部分 において は,
Leontiefの変換 ・生産関数 に依拠 してい るか らである
。現在 の 展 開状態では,経営計画原価 ・収益計算
(LaBmann1981,427頁以 降)な ら
びに
Pichlerモデル に基づ く原価計算概念
(Pichler1961)も,生産 ・原価 理論的に確立 されている。
さ らに,原価計算概念 は,部門化の程度 によ って,統合化 された概念 と部門
化 された諸概念 とに細分す ることがで きる
。と くに限界計画原価計算 を,時間
的弾力性 とい うメル クマールに従 って,静的限界計画原価計算 と動的限界計画
原価計算 とに分類す ることがで きる。動的限界計画原価計算 とは,次の ことに
よ って特徴づ け られ る。すなわち, この原価計算 は,価格や賃率の変動 に対 し
て短期的に適合 させ ることがで き,生産執行計画にとって有用 な原価 をよ り正
確 に算定す ることがで き,そ して,原価 の分解能力や作用可能性ない し期間性
ドイツにおける現代原価計算の展開と認識状況
315といった問題設定を,明確 に把握す ることがで きる(
Kilger1988,109貢以降)
(Seicht1963,693‑づ94貢)。原価計算を,反復性 に従 って特徴づ けるとすれ ば,継続的に遂行 され る計算 と一度 きりしか遂行 されない計算 とに区分 されれ ねばな らない。把握 され計算 され るデータの適時性の程度 に従えば,オ ンライ
ン原価計算 とオフライ ン原価計算 とに区別す ることがで きる。
C.新たな原価 ・給付計算諸概念の特徴
Ⅰ.新たな原価 ・給付計算概念が展開される原因
導 き出され る原価情報 は,異なる意思決定問題を有す る意思決定者たちの情 報需要 との密接な関連を有 していなければな らないとい う認識が,最近数年の うちに,はっきりと広 まっている。意思決定範囲を特徴づけるのは,高 まる競 争の激 しさや急速な技術的進歩だけではない。市場がますます グローバル化 さ れてお り,市場構造が変化 し,高度 に展開された管理 システムを伴 う新 しい加 工 システムが,労働 内容を,製造領域か ら,それの前に位置す るサー ビス領域
‑ と拡大 させ,顧客の異種製品ニーズが高 まり,そ して,付加価値の高い製品 や複合的な問題解決の需要が絶えず高まっている
。これ らの要求 に企業が与え る答えは,次のよ うな内容である :
一企業成長
一部門化および分権化 一弾力化
一職能の統合化
一継続的な
EDPの普及 一自動化
一情報 フローのス ピー ドア ップ
一市場参入者たちとの新たな協同形態 一研究 ・開発の要求
一技術革新移転のス ピー ドア ップ
さらに,以上の経済技術的展開を,企業 における意思決定に同 じように影響
を及ぼす社会的 ・生態的な要求の高 まりが取 り巻いている
。これ らの展開に基 づいて,意思決定者の情報需要 は,より多様で複雑 な もの となって きている。
そ こで生 じる複合的問題 に対 して,原価 ・給付計算の伝統的概念が無関心でい ることはで きない。む しろ,再展開 された原価 ・給付計算概念あるいは新たな 原価 ・給付計算概念を通 じて対応が図 られねばな らない,明確な必要条件を定 式化す ることができる。
Ⅱ.
新 たな原価 ・給付計算概念を特徴づけるメルクマール
経済的現象 について先に述べた傾向か ら,新たな原価 ・給付計算概念にとっ ての若干の メル クマールを摘 出す ることがで きる。 こうした新 たな概念形成 は,部分的にすでに始 まってはいるが,他の部分については,さ らに充分 に満 たされねばな らない必要条件を,以下のメル クマールが表わ している。個別的 には,新たな原価 ・給付計算概念にとって,以下のようなメルクマールを定め ることがで きる :
‑基準値の区別 一計画階層 との関連
‑EDP普及の高ま り
Ⅲ. 新たな原価 ・給付計算諸概念 についての体系的記述
最近の原価 ・給付計算諸概念について も,以下において,先述のメルクマー ルを用いて,単一段階的または多段階的に特徴づけることにす る。ただ し,吹 の ことが認め られねばな らない。すなわち,最近の諸概念の大抵 は,いまだ開 発段階にあ り,企業実務における実証の程度がいまだ低い。部分的には, これ ら諸概念にとっての最初の試み しか認識で きないか もしれないが,それ ら諸概 念の構造 と機能を概略的に述べ ることにす る
。基準値の区別
自動化や弾力化の増大が,財の最適配分 に関す る意思決定に対 して,新たな
ドイ ツにお け る現代原価計算 の展 開 と認識 状況
317必要条件を提示 している。 とりわけ,本来の製造の前段階に行われ るサー ビス 給付の占める割合が,明 らかに増大 している。 この ことについての原価計算上 の結果 は,間接費 ブロックの増大 と直接費の減少 とな って現われている。原価 計算は,意思決定の変更 にとって有用な原価情報を作成す ることによって, こ
うした実態を満たさねばな らない。個別的には, この ことは,意思決定問題の 変更についての明確な特徴づけを意味 し,新たな意思決定変数の発見や,相応 しい原価計算基準値の定式化を意味す る。 このように特徴づ け られ る展開は, 一つの新たな意思決定問題だけでな く複数の意思決定問題を投 げかけるとい う ことか ら出発 されねばな らないがゆえに,次のような疑問が生 まれ る
。意思決 定者において原価情報 に対 して生 じる需要を適切 に満た しうるには, どれ くら
いの数の原価計算概念が展開されねばな らないのか という疑問である。すでに 周知の原価計算概念の うちの一つない し複数を,合理的に再展開す ることがで きるのか どうか,あるいは,新 たな展開が根本的に必要なのか どうか という疑 問にも答え られねばな らない。 これまでに示 された答えは,全部原価計算およ び部分原価計算 はいずれ も,個 々の意思決定に応 じて再展開す ることので きる 基本概念を表わ しているとい う
。そ うした再展 開の一つが,活動基準原価計算
(Cooper/Kaplan1988a ; Cooper/Kaplan 1988b)である。 ドイツ語圏の文献で は ̀ ̀ 過程原価計算' '
(Hor寸ath/Mayer1989;Franz1990;Mannel1990)とい う名称 の下 で,
この概念が取 り上 げ られてきた。 ここで は,生産過程構造が設備集約的な場合
の ( 通常 は計画原価計算 としての)全部原価計算の概念が きっかけであ り,そ
れが,以下の問題設定 について,個 々の意思決定に関わって再展開され る。そ
の問題設定 とは, 原価作用因 (コス ト・ドライバ ー)をどのよ うな過程 ( 活動)
について定めることがで き,それ ら原価作用因に対 して,い くらの割合の間接
費を因果的に割 り当てることがで きるのか とい うものである。 こうした決定 に
成功 し,ある原価作用因に全部割 り当て ることので きる間接費が,すべての過
程や場所 ごとに通算 され るのであれば,その ときには,ある原価作用因につい
ての間接費が計算 され,また最終的に,ある原価作用因 と製品 1単位 との関係
を定式化す ることに成功すれば, この計算概念を通 じて,製品に対す る間接費 の因果的帰属計算が可能 となる
(Horやath/Mayer1989,Rau/Riid1991)O 結果的に, この過程原価計算は,直接費を製品に直接帰属 させ, ▲間接費を原 価作用因を介 して間接的に ( 閲数的に)帰属 させる全部原価計算へ と導 く。 こ の原価計算における目新 し
い点 は,間接費が原価作用困 ごとに分類 され, した が って, これ ら原価作用因の変更を通 じて原価政策 ( 原価管理)を有効 に行い うる可能性,な らびに,区別 された基準値 ごとに分類 され ることである。原価 作用因 といった視点の下で原価意識を高めることによって,間接費管理の改良
に向けて一つの貢献が もた らされる
。もう一つの再展開は,過程指向的な原価計算である
(Knoop1986)。この 計算概念が きっかけとして選んだのは限界計画原価計算であ り, この限界計画 原価計算を,弾力的製造 システムであるときに, 以下の問題設定 について, 個 々 の意思決定に関わ って再展開す るのである。その問題設定 とは,弾力的製造 シ ステムにとって,原価経済的な局面の下での製造管理問題を,いかにすれば最 適 に解決で きるのか とい うものである。 この原価計算概念 の重要 な構成部分 は, シ ミュレーシ ョンモデル とオ ンライ ンによるデータ把握 システムである
。シ ミュレーシ ョンモデルを用いることによって,原料や部品の工程挿入戦略や
作業工程等の優先順位規則 といった管理パ ラメーターを考慮 した うえでの実現
可能な作業工程計画が作成 される。 ̀ ̀ 弾力的製造 システム' 'といった原価場所
が,個 々の システム構成諸要素において各作業場所 として分解 され,それ ら作
業場所 について,個 々の原価作用因 ( および原価基準値) として,過程管理の
各パ ラメーターに依存 した " 製作品の加工時間' 'が算定 され る。 この加工時間
は,( 使用 に依存 した減価償却費や維持補修費や加工費等 々とい った)間接費
項 目についての最 も重要な作用因 として定義 され,それによって,いずれの作
業場所 について も,加工時間 1単位当た りの原価率を定めることがで き, した
が って,いずれの作業工程計画 も,比例計算 された製造間接費を もって評価す
ることがで きる。比例計算 された間接費部分の帰属 は,原価場所の利用時間だ
けでな く,過程管理の各パ ラメーターに対 して も行 うことがで きる。弾力的製
ドイツにおける現代原価計算の展 開 と認識状況
319造 システムにつ いて生 まれ るデータは,オ ンライ ンで把握 され処理 され るの で,計画 された製造プログラムについての経常的な事前計算を シ ミュレーシ ョ
ンモデル と結びっ けて可能にす るような シ ミュ レーシ ョン計算を構築す ること がで きる。 さらに,弾力的製造 システムにおける設備の技術的な配列変更につ いて も, 製造間接費 に及ぼす影響を シ ミュレー トす ることがで きる。その結果, 過程指向的な原価計算の概念を通 じて,技術的な設備計画を支援す ることがで
きる。製品が工程内を通過す る際に生 じる障害 についての排除戦略を定式化す るのにも,同様の ことが妥当す る
。結果 として,次の ことが述べ られ る
。すな わち,過程指向的な原価計算 は,製造間接費に対す る原価場所 ごとに区別 され た各基準値を包含す ることによって,限界原価計算を再展開 したのである。
この計算概念における目新 しい点 は,弾力的製造 システムを各構成要素 ( 作 業場所)へ と細分類 し,( 過程管理のパラメーターに依存 した)原価作用因 とし て,加工時間を作業場所 に関わ らせた確定を行 い,製造間接費を作業場所 に関 わ らせた比例計算を行い,管理問題点にシ ミュレーシ ョンモデルを導入 し,オ ンライ ンによるデータ把握 システムを設 け,進行計画や製造プログラムや技術 的設備計画および障害除去戦 略につ いて原価的な評価を行 っていることであ る。 したが って,過程指向的な原価計算 は,生産管理 とい う職務領域 における 意思決定 にとって重要な情報を提供す ることがで きる。 この原価計算 は,原則 として,弾力的生産 システムにおける製造過程の原価経済的な管理 ( 原価政策) を可能 にす る。 このように して, この原価計算概念 も,間接費管理の改良に向
けて一つの貢献を提供す る。
計画階層 との関連
計画論で は,戦略的計画設定, 戦術的計画設定および業務管理的計画設定 と いった計画階層に区別 される。同 じような三分化を,原価計算 について も行 う ことがで きる。その結果,戦略的原価 ・給付計算,戦術的原価 ・給付計算そ し て業務管理的原価 ・給付計算に区分 され る。
戦略的意思決定 にとって有用な原価 ・給付情報, とくに成果予測を作成す る
計算概念が, 戦略的原価 ・給付計算 と見なされねばな らない。この原価計算 は, 戦略的原価管理 に拡張 された形で
(Horや
ath1990,178貢以降) ,次の ことを 行 うものでなければな らない。
‑すべての価値創造活動 における企業の付加価値連鎖全体を支援す る。
‑代替 的戦 略 ( 例 えば,原価指導性 や差別化) ごとに異 な る分析 を可 能 にす る
。‑ " 構造的選択意思決定' '( 例えば企業規模や品目) と ̀ ̀ 経営手法' '( 例え ば能力の利用や経営参加) とにグループ化で きる作用因 (コス ト・ドラ イ バ ー) と くに 間 接 費 の 作 用 因 を よ り充 分 に考 慮 す る
(Riley1987;Shank1989,56
頁以降) 0
‑大雑把な考え として当初策定 された製品販売可能価格についての判定を 可能 にす る。当初予測 された販売価格 は,製品の原価計画 にとっての出 発要素である。 販売価格 マイナス計画利益 は, 原価の上限値 ( 許容原価) とな り,実際に期待 され る原価 ( な りゆき原価) との調整ののち,実際 局面での製品の開発 や設計 のための実現 され るべ き予定原価 (目標原 価)へ と導 く。 こうした計算の試みは, "目標原価計算" ( 原価企画) と 呼ばれ る (
Sakurai1990,39貢以降)。
戦術 的原価計算 は,設計 開発 のための予測的原価 ・給付情報 ( 設計開発 に 伴 って行われ る原価計算 として)や,投資計画および戦術的予算作成のための 予測的原価 ・給付情報を作成す るものでなければな らない。一般 に,戦術的計 画局面のための こうした計算類型 は,具体的な決定行動 ( 新製品,生産方法, 投資,組織等 々)についての成果予測を取 り扱 うものでなければな らない。
最近では,業務管理的原価計算 と戦術的計画設定 との原則的関係が考察 され
ている
(Ktipper1985,26頁以降) 。 こうした考察 は,投資理論を指向 した原
価計算 において行われている。 ここでは,原価計算の業務管理的 ( 短期的)な
計画問題 と,投資計算の戦術的 ( 長期的)な計画問題 との相互関係が きっかけ
ドイ ツにお け る現代 原価計算 の展 開 と認識状況
321である。 とくに,長期間にわたって拘束 される投入財 ( 例えば,設備資産や従 業員)についての業務管理的計算においては,帰属計算問題が現われる。 この 問題 は,概念的には, これ ら両者の計算を結合 させ ることによって,よ りよ く 克服す ることがで きる。投資理論を指向 した原価計算の基本的思考 は,以下の 通 りである :
( 1 ) 投資計算 と原価計算の両方が,意思決定の支援に役立
っ 。( 2) 原価計算の業務管理的意思決定 は,投資計算の戟術的意思決定のなか に含め られねばな らない。
( 3) 原価計算 は,業務管理的意思決定が戦術的設定 目標の達成‑ と導 くこ とを確保す るものでなければな らない用具である
。(4)
いずれの計算 も,拘束力を もつ計算尺度 として収支 ( 収入 ・支出)を もって行われ るべ きであ り,それによって,すべての投入財のさまざま な結合を,構造的に等 しく把握すべ きである。
(5)
原価 と給付 は,明確な規則 に従 って収支か ら導 き出され,戦術的な成 果 目標の内容 と範囲別 に整理 されるべ きである。
この試みを通 じて,意思決定指向的原価計算が,よりよ く確立 され る。 この ように投資理論を指 向す る原価計算 は,周知のすべての原価計算諸概念につい て,それ らの戦術的 目標指向性に関す る明確 な判断基礎を提供す る。
業務管理的原価計算 は,企業内および企業間におけるすべての短期的振替過
程を計画 し管理す るのに有用な原価 ・給付情報を作成す るものでなければな ら
ない。個別的には, この振替過程 には,調達過程,輸送過程,貯蔵過程,製造
過程 または販売過程があ りうる。 これ らの過程のために戦術的に計画 され る資
源は,実際に最適投入 されねばな らない。業務管理的原価 ・給付計算 は, この
最適化意思決定にとって有用な原価 ・給付情報を算定 しなければな らない。そ
の際には,製品数量 の減少や製品種類の増加 および弾力性の上昇が もた らす影
響について,特別の考慮が払われねばな らない。 これまで,短期的な全部原価
計算および部分原価計算 は,可能な原価差異分析を伴 った操業度 に焦点を当て て きたが,業務管理的局面の下では, ( 新たな品質,製造 プログラム,機械の 配置, ロッ トサイズ等 々についての) とくに短期的な変更決定のための情報が 提供 されねばな らない。作成 された原価 ・給付情報が意思決定 に有用でかつ現 実的であるがゆえに,上述の変更決定を最適 にかっ迅速 に下す ことに成功すれ ば,経済的な資源投入が継続的に保証 される。最終的にこの ことは,ある可能 な競争優位が実際にも利用 されていることを意味す る。 こうした高品質の情報 獲得を達成するための前提 は,原価 ・給付データの活用可能性を弾力的にする
ことである。そ うした弾力化 は,大 きな活用用途の確保や,適応能力のあるシ ステム構造 を通 じて達成す ることがで きる
(Lackes1990,329頁 よ り次頁 に かけて)
。この意味では,伝統的な短期原価計算が再展開されねばな らない。
その際には,次の ことを証明す ることがで きる。すなわち,将来の業務管理的 原価計算が適応機能や管理機能を果たすには,その原価計算 は,原価 ・給付指 標の弾力的なシステムを伴 った ものでなければな らないのである
。EDP 普及の高 ま り
原価計算 は,大量のデータを把握 し処理す るがゆえに,データ集約的な情報 システムである。こうした情報 システムを実現 させ るために, 最近で は,リレー シ ョナルなデータバ ンクが展開されてきている。今 日では,原価計算 も, こう した用具を もって実現 させ ることがで きる
。これによって,
一構造的に しっか りとした計算 システムの構築
‑対話式のデータバ ンク検索言語の利用 一弾力的に活用で きる端末間対話
が可能である
(Lackes1990,331貢) 。それゆえ, リレーシ ョナルなデータバ
ンクによる情報蓄積 は,給付能力を有 した原価情報 システムであるための複数
の必要条件 に応 じるものである。的確で現実的で意思決定 に有用な多数の原価
情報を直接 に利用 しうる可能性 とともに, システム利用者 としての意思決定者
において原価計算がますます受け入れ られ,そ して,意思決定過程が比較的高
ドイツにお け る現代 原価計算 の展 開 と認識状況
323い効率性を有す ることが期待 されねばな らない。 リレーシ ョナルなデータバ ン クに基づ くことで,企業の包括的な情報 システムや計画 システムのなかへの原 価計算の統合化が促進 され,意思決定に有用な応用計算ない し最適化計算の適 用が容易 となる。
D.
原価計算論 の未解決の問題
原価 ・給付計算について,すでに展開されて きた概念,および,なお展開さ れるべ き概念が数多 くあ り,な らびに,改良 され る計算諸概念に対 して定式化 可能な必要条件が多数 あるときには, この領域 に関す る学問上の問題設定を整 理す ることが相応 しいように思われ る。
Ⅰ.意思決定に対する原価計算の関わ りの強化
お そ くと も, 原 価 計 算 や 内部 的 管 理 に関 す る
Schmalenbachの著 作
(Schmalenbach1963および
1948)以後 は,次の ことか ら出発 されねばな らない。すなわち,経営上の原価計算は,最適な財配分 という意味での経済的 意思決定を支援す るための情報の生産者 として理解 されねばな らない。それゆ え,意思決定過程について包括的な研究を行い,な らびに, これ ら意思決定な い し区画 され る意思決定タイプおよびその他の適用のための情報 に対する需要 を算定す ることが,原価計算諸概念を形成す るためのすべての考察の出発点に 置かれねばな らない。その際,今 日の理解 において原価情報 として分類 される 情報が取 り上 げ られ る限 り,それ ら原価情報の質は,意思決定過程か ら生 じる 必要条件を通 じて,明確 に定義 されねばな らない。このステ ップを経たのちに, そ うした情報生産者の構造 と機能を明 らかにす る最初の手がか りが生 まれ る。
原価計算の構造 ( 計算構造,デザイ ン)は,次の ことに依存 している。すなわ
ち,当該原価計算がいかなる意思決定やその他のいかなる適用に役立っべ きな
のか,情報諸要素をいかなる原初形態において把握 しうるのか,それ ら情報諸
要素がいかなる属性を有 してお り, どのよ うな関係モデルにはめ込む ことがで
きるのか, どのような利用 レベルが求め られているのか, どの程度の弾力性が
必要 なのか, どのよ うなハ ー ドシステムや ソフ トシステムを用意 し利用す るこ とがで きるのか,企業の情報 ・計画 システムへの原価計算のいかなる統合が求 め られ るのか,そ して,原価計算 に とってのその後 の構築段階についていかな る段階が意図 され用意 され るのか といった ことに依存 しているのである。
Ⅱ. 原価計算 の理論および政策の定式化
原価計算諸概念の実践的な形成および適用にとっては,いかなる適用条件や 情報需要の ときにどのような計算概念が " 合理的"ない し " 最適' 'であ るのか を知 ることが重要である。それ と同 じくらい重要なのは,次の疑問に答え るこ とである。すなわち,当該経営体 (したが って意思決定者)の経営内部かつ/
または経営外部の制約条件が,ある特定の方 向において変動 した り,そ うした 変動が,あ る特定の幅において見積 られ るときに,原価計算概念が どのよ うに 拡大 され,修正 され,あ るいは全 く新 たに構築 しな けれねばな らないのか と いった疑問である。 ここで提示 された疑問は,計算政策上 ない し計算形成上の ものである。そ うした疑 問につ いての学問上 の答え は, 単純 な形成原則 ( 原理)
‑ と導 くこともあれば,納得のい く形成勧告へ と導 いた り,利点および欠点 に ついての多元的な言 明へ と導 いた り,あるいは,原価計算概念の最適な再組織 化戦略を予め定めてお くことへ と導 きうる。
上述の疑問に対す る計算政策上の答えを与え うるには,計算理論上の言明体 系が前 もって定式化 されねばな らない
(Schweitzer1981,134頁以降) 。 それ は, 原価計算 システム全体 に とって,代替的な計算構造 ない し再組織化 の道 ( 戟 略)を把握す るのを可能 に し, これ ら代替案 に対 して,期待 され る効果を決定 論的または推測統計学的に割 り当て る言明体系である。 こうした課題を満 た し
うるの は,経験的に充分 に基礎づけ られ立証 された原価計算理論だけである。
さ らに形成 問題 に も答 え うる命題体 系 は,原価計算政策 で あ る。 ( ∫.
Weber (1990,203頁以降) は,同様の文脈 において, この原価計算政策 を,原価計 算 に対す る統制 アプローチ と呼んでいる。)
原価 ・給付計算概念が どのよ うな形態で構築 されよ うとも,それ ら計算概念
ドイ ツにお け る現代原価計算 の展 開 と認識 状況
325は,最適資源配分 に関す る意思決定を支援す るのに有用な情報の獲得 に,つね に役立っ ものである。 これ ら計算概念が最終的にどのような構造を有す るべ き なのか, どれだけの計算概念がそ もそ も利用 されるのか,また,それ ら計算概 念が どのよ うにネ ッ トワーク化 されるべ きなのか,そ して, これ ら計算概念が 時の経過 につれてどのように変更 されねばな らないのかに答え るのは,席価計 算政策である。
(1993
年
12月
20日 脱稿)
図 1 :原価 ・給付計算の伝統的諸概念 の体系
時 間 的 関 連
実際原価計算Istkostenrechnungen
計画原価計算 Piankostenrechnungen
全部原価計算
Vollkosten‑
rechnungen
全部原価に基づく実際原価計算 IstkostenrechnungenaurVollkostenbasis
全部原価に基づく計画原価計算
PiankostenrechnungenaufVollkostenbasis 標準原価計算
Standard‑
kostenrechnungen
予測原価計算
Prognose‑
kostenrechnungen
部分原価に基づく実際原価計算 IstkostenrechnungenaufTeilkostenbasis
部分原価計算
Teilkosten‑
rechnungen
部分原価に基づく計画原価計算 PlankostenrechnungenaufTeilkostenbasis
変動的部分原価に基づ く実際原価計算
istkostenrecbnungen aufderBasisYon variablenTeilkosten
相対的直接原価に基づ く実際原価計算
Istkostenreclmungen aufderBasisYon relativenEinzel‑
kosten
変動的部分原価に基づ く計画原価計算 Plankostenrechnungen aufderBasisYon variablenTeilkosten
相対的直接原価に基づ く計画原価計算
Plankostenrechnlln genaufderBasisYon relativenEinze1‑
kosten