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産褥婦の自殺にかかる状況及び社会的背景に関する研究

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Academic year: 2021

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厚生労働科学研究費補助金 (政策科学総合研究事業(臨床研究等ICT基盤構築・

人工知能実装研究事業))総合研究報告書

産褥婦の自殺にかかる状況及び社会的背景に関する研究 

 

      研究分担者    大田  えりか(聖路加国際大学大学院国際看護学  教授) 

      研究協力者    森  桂      (東京大学大学院  医学系研究科  大学院生) 

 

   

A.研究目的 

  日本では、妊産婦死亡率は 3.4(出産 10 万 対、2017 年)と大変低く、医療技術の向上等に より年々減少傾向にあったが、多くの先進国と 同様、近年は微増、微減を繰り返している。一 方、公的統計で取り扱う妊産婦死亡のデータは、

WHO にて「妊産婦死亡とは、妊娠中又は妊娠終 了後満 42 日未満の女性の死亡で、妊娠の期間 及び部位には関係しないが、妊娠もしくはその 管理に関連した又はそれらによって悪化した すべての原因によるものをいう。ただし、不慮 又は偶発の原因によるものを除く。「後発妊産 婦死亡とは、妊娠終了後満 42 日以後 1 年未満 における直接又は間接的産科的原因による女 性の死亡をいう。」と定義されている。出産後、

うつ病の悪化等により自殺に至った死亡につ いて、わが国ではこれまで含まれておらず、こ れらの全国的な症例数は把握されていない。 

  うつ病等の気分障害が自殺の要因として重

要であることが明らかになっており、産褥婦の 自殺の状況について、人口動態統計のデータを 用いて把握するとともに、当該データを分析す ることにより、母子保健対策を検討するための 基礎資料とすることを目的とする。 

 

B.研究方法 

  本研究班において別途、統計法第33条に基 づき、人口動態調査出生票及び死亡票の調査票 情報の提供を厚生労働省に申請し、入手した人 口動態調査出生票、人口動態調査死亡票(女性

(12 歳〜60 歳))の提供を用いて分析した。出 生票(2013 年、2014 年、2015 年)、死亡票

(2014年、2015年)を用いて、調査票情報の データ構造や氏名の表記ゆれ等による技術的 な課題を検証するとともに、オンライン報告以 外で提出された調査票情報の提供も申請し、電 子的な情報にした上で、出生票(2014年、2015 年、2016年)、死亡票(2015年、2016年)に 研究要旨

妊産婦死亡のデータは、妊娠・出産に関連した原因によるものと定義されており、出産後、う つ病の悪化等により自殺に至った死亡は、わが国ではこれまで含まれておらず、これらの全国的 な症例数は把握されていない。人口動態統計出生票及び死亡票の連結により抽出された、2015

〜2016年における生児出産後1年未満の褥婦の自殺例92件を抽出し、背景や自殺方法などを 分析した。35 歳以上、初産、及び世帯の職業が無職の女性において、最も自殺率が高かった。

自殺の時期は、産後1年を通して自殺がみられた。人口動態調査出生票及び死亡票のリンケージ は、産褥婦の自殺死亡例の把握に有用な手段と考えられる一方で、死亡診断書に記載される事項 は限られているため、産褥婦の自殺死亡を予防するための対策に結びつけるためには情報が不 十分であり、各症例についてさらなる詳細な調査が必要と考えられる。

(2)

おいてリンケージを行った。 

死亡票と出生票について、女性(母)の生年 月日及び氏名を変数として用いて、死亡票と死 産票について、女性(母)の生年月日と年齢、

地域、女性(母)の氏名を変数として用いて、

完全一致のリンケージすることにより、また妊 娠関連用語を検索することにより、妊娠中及び 児の出生から1年未満に死亡した女性 357 件 を抽出した。さらに、自殺に関連する ICD コー ドと死因の記載情報を元に、自殺死亡例を特定 した 102 例のうち、妊娠中及び死産後を除いた 92 例について、社会的背景や自殺方法を分析 した。 

データの検討にあたっては、生年月日、死因 等を含む調査票情報を用いることから、これら の情報を扱うための倫理申請を行った聖路加 国際大学大学院において進めた。 

 

C.研究結果 

  出生票と死亡票のリンケージにより、2015

年〜2016年における生児出産後1年未満の褥

婦の自殺例92件を抽出することができた。こ の数は、公的統計で公表されている妊産婦死 亡・後発妊産婦死亡の数74人(2015年〜2016 年)と比べて多かった。

抽出した自殺死亡例について、全出生と比べ ると、35 歳以上、初産、世帯の職業が無職の 女性において、最も自殺率が高かった。(表1)

既婚者の割合が多かったが、離別は氏名が変更 されることによりリンケージできなかった事 例がある可能性がある。出産から自殺の期間に ついては、産後1年を通して自殺がみられた。

(図1)自殺方法については、一般女性の自殺 死亡者の割合に比べると、傾向の大きな違いは 見られなかった。(表2) 

 

D.考察 

人口動態調査死亡票と出生票をリンケージ することで、生児出産後1年未満の褥婦の自殺 例を把握することができた。この方法は、後発 妊産婦死亡を含め、近年その重要性が認識され 始めている産褥婦の自殺死亡例の把握に非常 に有用な手段と考えられる。 

一方で、本研究の限界として、離婚等により 氏名や住所を変更された場合、リンケージされ ず把握できない可能性がある。また、死亡診断 書に記載される事項は限られているため、精神 疾患等(産後うつなど)の既往の有無など詳細 な背景情報が得られない。 

我が国では、2017年度より、新たに産婦健康 診査事業が開始された。これは産後うつ等を早 期に把握し、必要な支援につなげるため、産婦 を対象として、産後2週間、産後1ヶ月などの時 期に、母体の身体的機能の回復状況や精神状態 等の把握を行うこととしている。 

また、死亡診断書の記入において、2017年度 より、妊娠又は出産後1年未満の産婦が死亡し た場合、産科的原因によるか否かにかかわらず、

妊娠又は分娩の事実を記入するように改まり、

り、自殺を含めた妊産婦死亡例の把握率上昇も 期待される。しかしながら、これらの情報がど の程度報告されてくるかは、医療現場における 死亡診断書の記入方法にかかる理解や普及に 依ることが大きいことも考えられる。 

今回の調査では、生児出産後 1 年未満の褥婦 の自殺例を抽出しているものであり、妊娠出産 やこれらに関連した精神疾患等と自殺の関連 については、統計データの元となる死亡診断書 に記載される情報が限られているため、ほとん どが不明である。産褥婦の自殺死亡を予防する ための対策に結びつけるには情報として不十 分であり、各症例についてさらなる詳細な調査 が必要と考えられる。 

 

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E.結論 

  生児出産後1年未満の褥婦の自殺死亡例に ついて、人口動態調査出生票及び死亡票のリン ケージにより抽出することができた。これらの 自殺死亡例の状況及び社会的背景について分 析したところ、いくつかの傾向がみられ、産褥 婦の自殺死亡例の把握に有用な手段と考えら れる。一方で、産褥婦の自殺死亡を予防するた めの対策に結びつけるには情報として不十分 であり、各症例についてさらなる詳細な調査が 必要と考えられる。 

 

【参考文献】 

1) 人口動態統計、厚生労働省 

2) World  Health  Organization.  ICD‑10: 

International statistical 

classification  of  diseases  and  related  health  problems;  tenth  revision, Vol. 2, Instruction Manual. 

   F.研究発表 

1.論文発表    なし 

2.学会発表    なし 

 

G.知的財産権の出願・登録状況      (予定を含む) 

1.特許取得  なし 

2.実用新案登録  なし 

3.その他  なし       

                                               

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