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3  大気中の多環芳香族炭化水素の発生源

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Academic year: 2021

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科 学 技 術 動 向 2006 年 7 月号

6 Science & Technology Trends July 2006 7

  環境分野  TOPICS Environmental Science

 2006 年 6 月、東京薬科大学、Z海洋研究開発機構、Z国立環境研究所の共同研究グループは、東京 郊外の大気中に浮遊する粒子状物質に含まれる多環芳香族炭化水素 (PAH)の 2 〜 4 割が、動植物を 由来とするバイオマスの燃焼によることを明らかにしたと発表した。PAH は化石燃料やバイオマスの燃 焼の過程で大気中に放出され、ヒトの発がん性等に関係する物質として懸念されている。今回の研究では、

PAH に含まれる放射性炭素同位体 (炭素 14)の存在比率を測定することにより、PAH の発生起源が 化石燃料かバイオマスかを調べた。その結果、バイオマスを起源とする PAH が予想を遥かに上回る比率 で存在していた。このことは、現在把握できていない、PAH 発生に寄与するバイオマスの存在を示唆し ている。今後、PAH の軽減に向けて、多くの地域における観測と発生源毎の定量的な把握が望まれる。

トピックス3

 大気中の多環芳香族炭化水素の発生源

 2006 年6月、東京薬科大学、C海洋研究開発 機構、C国立環境研究所の共同研究グループは、

東京郊外の大気中の浮遊粒子状物質に含まれる多 環 芳 香 族 炭 化 水 素(PAH:Polycyclic Aromatic  Hydrocarbon)の2〜4割が、動植物を由来とする バイオマスの燃焼によることを明らかにした。

 PAH は、ベンゼン環が2個以上結合した構造を もつ化合物の総称であり、石油や石炭といった化 石燃料や動植物を由来とするバイオマスが不完全 燃焼を起こしたときに生成され、大気中に放出さ れる。生成される PAH は、2〜6環のものが主で あり、特に4環以上の高分子 PAH は、人体に対し て、発がん性、変異原性、内分泌撹乱などの影響 を及ぼす可能性が指摘されており、大気中の PAH は大気汚染問題の一つになっている。その軽減に 向けては、これまでは化石燃料を利用したエンジ ン等から排出される粒子状物質の削減を目標とす る技術開発が積極的に進められている。

 今回の研究では、PAH に含まれる放射性炭素同 位体(炭素 14)注 1)の存在比率を測定することに より、PAH の発生起源が、化石燃料かバイオマス かを調べた。測定では、東京都八王子市において、

6〜 15 万 m3(大気採取回数は4回)の大気を吸 引し、粒径 10μm 以下(PM10)と粒径 1.1μm 以 下(PM1.1)の粒子状物質を採取した。その後、採 取された試料から PAH を抽出し、加速器質量分析 計を用いて炭素 14 の存在比率を求めた。

 今回の測定結果から、バイオマス起源の炭素(現 代炭素注2))が 21 〜 46%の割合を占めることが 明らかになった。この割合は、エネルギー需給割 合の統計値から推定される バイオマス/化石燃 料 の比(2%未満)に比べて著しく高い結果とな っていた。このことは、現在は把握できていない、

PAH 発生に大きな影響を与えているバイオマスが

存在することを示唆している。今後、PAH の軽減 に向けて、より多くの地域における観測を実施し、

野焼きやゴミ焼却、汚泥焼却等、発生源毎の定量 的な把握が必要である。また、大規模な森林・草 原火災などに伴う海外からの PAH の越境移動に関 する研究も望まれる。

注1 放射性炭素同位体(炭素 14):炭素 14 は、宇宙線の 作用により定常的に生成される天然放射性核種であり、地 球表層の炭素循環に組み込まれて生体に採取される。しか し、生物が死ぬと炭素 14 は取り込まれなくなり、生前に取 り込まれていた炭素 14 は放射改変によって、減少し続ける

(半減期 5,730 年)。つまり、大昔の生物の遺骸である化石燃 料には実質的に炭素 14 は含まれておらず、バイオマス燃料 には一定割合で炭素 14 が含まれている。よって、分析試料 中の炭素 14 含有量を測定することにより、化石燃料とバイ オマス燃料の由来の比率を求めることが可能となる。

注2 現代炭素:現在の地球表層を循環する炭素のことを 現代炭素と言う。バイオマスに含まれる炭素は現代炭素に 属する。

浮遊粒子状物質中の PAH の炭素 14 の測定結果

C国立環境研究所ホームページ

http://www.nies.go.jp/whatsnew/2006/20060606/zu1-5.pdf より

参照

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