多変数の模擬実験
楊 国 林 * 高 橋 武 則 * *
S i m u l a t i v e E x p e r i m e n t o f M u l t i ‑ V a r i a b l e s
K o u l i n Y oh and T a k e n o r i T a k a h a s h i
要 旨 多変数を扱う実験の教育は,理論講義と演習のみでは不十分で,実際に実験を行うのがよい。しかしな がら実験設備の無い通常の講義用の教室(机と椅子だけの教室)の中で本物の実験を行うことは不可能で,このため に模擬実験が提案された
2) ‑24)。多変数を扱う実験では,たとえ模擬実験であっても実験の管理と精度の確保は重要で ある。加えて 9 0 分の講義時間の中で予定したすべての実験を終了させなければならないので,その運営には合理的な アプローチが必要となる。本研究は,模擬実験として紙ヘリコプター降下
4),12), 肌 肌 23),24)を取り上げ,短時間で効率 のよい多変数の実験を行うためのアプローチを提案し,その有効性を明らかにする。
1 . は じ め に
1 . 1 使命達成型の教育(使命が目的で手法は手段) 統計的推測を実践的に使いこなす力の養成 は,実際の実験とそれに基づく研究に適用する ことがベストである。しかしながら,事前教育 というものは,実際の実験に使えるように,事 前に教育するわけであるから,別の方法を考え なければならない。統計的推測のためにはデー タ解析が必要となり,その手順は統計的方法と 呼ばれており,以後,統計的方法のことを略し て手法と呼ぶ。
さて,手法の教育の重要な点は,手法をいか
* 本 学 助 教 授 生体情報工学
**本学非常勤講師 数理統計学
( 5 3 )
に実践的に使いこなせる力をつけるかにある。
そのために必要なエレメントには以下の 4 つの ものがある。
①手法(データ解析方法)それ自体の手順の 理解
②手法の背後にある理論の理解
③手法を用いてそれをどのように応用するか のアプローチ方法の理解
④手法を適用する演習による理解の確認 この種の教育では演習が重要であり,それも単 なる計算演習としてのデ}タ解析ではなく,あ くまでも使命遂行型取組のためのデ}タ解析と して実施することが必要である。すなわち,使 命遂行が目的で,手法はあくまでも手段でしか
ないのである。
使命遂行には二つのタイプがある。
( 1 ) 問題解決:存在している問題を解決する (悪い状態を取り除く)
[例]不良率を低減する。
( 2 ) 課題達成:理想に向かつて課題を達成する (さらに良い状態にする)。
[例]よい条件を開発する。
使命遂行のために行う解析の試行錯誤を経るこ とにより,手法の使い方のこつとともに意思決 定の中で果たす手法の役割,有効性,そして限 界を体験的に理解することが可能になる。この 種のタイプの教育のことを本研究では「使命遂 行型教育」と呼ぶ。この教育は重要であるが,
様々な専門の受講生達が一つの教室に集合して 講義を受ける集合教育の場合には実施が困難で ある。教室の中で行う集合教育においては,受 講者が自分の研究のデータをとることが不可能 であるからである。
与えられたデータのもとでは論理的推論はあ る程度の考察で打ち切らざるを得ず,かつ確認 実験を行うことができないという限界がある。
これに対して,模擬実験を用いた使命遂行型教 育の場合には,もし行おうとするならば最後ま で論理的推論を徹底して行うことができ,仮説 発想の後に仮説検証を行い効果を確認すること ができるので,解き終わったときの感動は極め
て大きい。そして,この体験を通して理解した ことは受講生の実力となり,必ずや本来の研究 の場で威力を発揮する。
そこで,注目されるのが模擬実験を用いた使 命遂行型教育である。統計的手法を用いた使命 遂行型の体験学習ができることを目指し,著者 は模擬実験のためのモデルとして「ゴルフ J
2) 3),ヘ「テーブル・ゴルフ J
3),円「コイン射撃」
4)
,
6),
7),
14),そして「紙グライダー飛行 J
6),
8),
9), 肌
11),
13),
15),
16),
17),
18), 四 ) ,
22)を考案し,これらを用 いた体系的な教育方法を提案している。さらに,
「紙ヘリコプター」というモデル自体は著者の 考案ではないが,これを大いに発展させた「紙 ヘリコプター降下 J
4),肌肌肌肌
24)を工夫し,
これを用いた体系的な教育方法を提案してい る。教育に適したデザインの開発と,体系的な 教育カリキュラムと短時間で効率の高いアプロ ーチを提案し,その有効性を確認している。な お,本研究が用いる紙ヘリコプターのデザイン は図 1 . 1 に示している。サイズを表す単位は
5 m m を 1 単位とし,図 1 . 1 ではこの単位でグ リッドを入れている。また,中央太線は標準型 (翼長 7 ,翼幅 4 ,足長 1 0 ,足幅 4 )のデザイ ンを意味している。
翼長[ ] 翼幅[ ] 足長[ ] 足幅[ ]
1 5 1 4 1 3 1 2 1 1 1 0 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0 1 1 1 2 1 3 1415
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図1. 1 実験で用いる紙ヘリコプター用紙( 1 単位は 5 m m )
( 54 )
1 . 2 教育カリキュラムの概要
本研究では,統計的推測の中で高度な内容に 位置づけられる多変数の実
a験を紙ヘリコプター を用いて教育するアプローチを明らかにする。
この教育アプローチは 以下に示す 1 0 種類の内 容から構成される。
[導入編]作業標準とライン生産の導入による 模擬実験の効率よい運営
①正常な飛行の実現:パレート図,特性要因図,
作業標準(群内の標準)
②正規性の実現:ヒストグラム,正規確率紙,
ライン生産
[改善編]ぱらつきの低減
③ぱらつきの低減:ヒストグラム,正規確率紙,
治工具の導入と工夫
④ぱらつきの分解:ヒストグラム,正規確率紙,
治工具の導入と工夫
[安定編]繰り返し実験の中での安定化
⑤管理図で工程管理:管理図,群聞の標準(清 掃,段取り,機器の組立・分解,機械の設 置・撤去など),異常報告書
[基礎編]統計的推測の基礎の学習
⑥母数既知の推定と検定: 1 つおよび 2 つの母 集団に関する推定と検定
⑦母数未知の推定と検定: 1 つおよび 2 つの母 集団に関する推定と検定
[応用編]統計的推測の応用の学習
③ 1 因子実験と単回帰分析: 1 元配置の分散分 析,単回帰分析
⑨ 2 因子実験と重回帰分析: 2 元配置の分散分 析,重回帰分析,等高線図
⑬多因子の直交実験と重回帰分析:直交実験,
重回帰分析
なお,①から⑦までは正規確率紙を大いに利 用することにより 必ずしもコンピュータは必 要としないが,もしコンピュータの使用が可能 であれば,使用することが望ましい。しかしな がら,受講生の能力と意欲の両方が高ければ,
コンピュータを使用しない方が,時間はかかる が教育効果は高まる。一方,③と⑨はコンピュ ータがないとかなり時間がかかり,⑬はコンピ
( 5 5 )
ュータを必要とする。
1 . 3 ワークシートの重要性
ワークシートとは,教えるべき内容のエッセ ンスを要領よく記入できるようにフォーマット したもので,それは教育に役立つのみで、なく,
それ自体がやがて学んだ手法を実践する際のガ イドやヒントになる。ただし,記入例がないと イメージがしにくいので 必ず記入例を用意す る。記入例は実例を用い,必ずトレースを可能 にしておくことが必要である。本研究が提案す る教育の中で使用するワークシートは多数ある が,紙数の都合により L8 の場合のワークシー
トの一部を第 5 で紹介する。
2 . 5 つのテーマ:
導入・改善・安定・基礎・応用
推測統計の教育における実技演習の主なテー マには,導入・改善・安定・基礎・応用の 5 つ がある。これらを,紙ヘリコプター降下実験を 例にとって具体的に説明すると,以下のように
なる。
2 . 1 導入:模擬実験の習熟
高度な実験は少ない実験回数(少ないデータ) で複雑な情報を体系的に入手しようとするた め,誤差の管理を必要とする。このためにはま ず実験自体に馴れ,その上で高いレベルの実験 管理をしなければならない。実験が管理されて いるならば,以下の 5 点がクリアされる。
①異常値がない。
②分布は単峰形になる。
③左右がほぼ対称になる。
④おおむね正規分布に従う。
⑤ぱらつきが十分に小さい。
このためにはライン生産を導入し,効率の良い 実験を運営することが必要である。なお,最後 の⑤は次のステージである改善の課題である。
2 . 2 改善:ぱらつきと偏りの低減
実験を行う場合,誤差が大きいと検定は検出
力が低くなり,推定は精度が悪くなるため,理
論的には正しくても実際的には意味がなくなっ
てしまう。したがって,ぱらつきを小さくする ことは重要である。また,実験における手際の 良さは実験時間を短縮し,異常値の発生を防ぐ ことができる。
この段階での偏りの低減は平行移動とする。
すなわち,狙い値と平均値のズレである偏り (正確には偏りの推定値)はとりあえず各デー タに対してその分だけ引くこと(平行移動,変 数変換)により偏りをとり,あくまでもばらつ きの問題に注目するのである。偏りの問題とい うものは本質的には母平均の問題であり,本研 究ではこの問題を回帰分析の段階で扱う。
2 . 3 安定:繰り返し実験における分布の安定 多変数の実験では,いろいろな変数を様々な 条件の組み合わせのもとで実験を行う。その際,
多種類の条件の組み合わせのもとでの多数回の 実験の背後の分布が安定していなければならな い。ここでは,管理図という形で分布の安定を はかる。
( 1 ) 母平均を常に同じにしようと考えて同じ条 件での実験を多数回実施する場合には,通常 の豆 ‑ R管理図を用いることができる。
( 2 ) 母平均をその都度変化させる場合には, R
管理図のみを用いればよい。
( 3 ) ( 2 ) の場合でも,狙い値からのズレの値を
z= 玄一狙い値として変換すれば z‑R 管理 図を用いることができ これは豆 ‑ R管理図
と同じものになる。
このために,ライン生産を導入するとともに 作業標準に基づいて作業し,ヒストグラムがお おむね左右対称の一山型になることを目指し,
外れ値や二山の原因追求と再発防止を行う。そ の後管理図を用いて工程を管理するというアプ ローチが維持される。
2 . 4 基礎:統計的推測の基礎としての推定 と検定
要因系の条件を変えたときに,特性が変化す るかどうか,変化した場合にはその新しい値は いくらかということをどのように推論するかが 必要になる。変化は 2 つの状態の間で考える。
( 1 ) ある状態から別の状態に変化する。
( 5 6 )
( 2 ) 二つのものを比較する。
統計的推測の基礎で扱う具体的な例は,現在の 状態を変更した場合に果たして効果があるの か,二つの候補があった場合に両者に違いがあ るのか,もし違いがあればどちらを選択したら よいのかといったものである。
2 . 5 応用:統計的推測の応用としての分散 分析と回帰分析
多数の変数の中でどの変数が効いているか,
効いている変数の中でどの水準の組み合わせが 望ましいのか。これを明らかにし,使命を達成 するのが統計的推測の応用段階における重要な 役;割である。
( 1 ) 一つの変数を取り上げそのもとで多水準を 用意する。
( 2 ) 二つの変数を取り上げそのもとで多水準 を用意する。
( 3 ) 多数の変数を取り上げそのもとで多水準を 用意する。
( 4 ) 多数の変数を取り上げそのもとで多水準を 用意する。
統計的推測の応用の具体例として紙ヘリコプ ター降下実験を取り上げて説明すると,顧客の 新しい要求を満たすために機体のデザインを変 更する(新機体のデザインを決定する)ことで ある。このために回帰分析・実験計画等を用い て,機体のデザインと停止位置の関係を把握し なければならない。本研究では多変数の実験を 目的としているので,直交実験と重回帰分析に 焦点を合わせる。しかしながら,直交実験や重 回帰分析そのものの議論は取り上げず,それら を模擬実験のもとで実施するアプローチについ て議論する。
3 . 精 度 の 確 保 と 異 常 値 の 予 防
高度な手法を適用する実験は異常値がなく,
ぱらつきが小さいことを必要とする。これを実 現するためには, しかるべきアプローチが必要 である。
紙ヘリコプタ一実験において,誤差の影響を
少なくする方法として 解放高度を高くする方 法がある。これは変動係数 c v = σ / μ の分母
を大きくして総体的に cv を小さくするもので
ある。しかしながら,通常の教室内で解放高度 を高くすることは不可能である。したがって,
特殊な建物や階段や体育館や食堂やホールを利 用すれば変動係数を小さくすることはできる。
一般的にはこれを実現することは困難であり,
可能な場合でも飛行計測にたいへんな手間暇と 時間がかかるのである。そこで,本研究は cv
の分子の σ を小さくするアプローチを考えてい る。このためのアプローチはそれ自体教育的効 果が高く,ぱらつき低減のプロセスで学習する 内容はとても重要である
D複雑な実験を行う場合誤差については十分 慎重な配慮が必要である。
( 1 ) 正規性
( 2 ) 異常値/外れ値
( 3 ) 精度(有効桁数/ぱらつきの大きさ) 多くの統計的方法は とりわけ入門的段階や 初歩的段階の方法は,正規分布を前提にしてい ることが少なくない。そして,異常値が存在す ると解析は深刻な悪影響を受けることになる。
もちろん,異常値に頑健な(異常値の影響が少 ない)方法もあるが,多くの手法は異常値の影 響をまともに受ける。また,頑健な方法が使え る場合でも,異常値の存在する実験は,実験そ れ自体が疑わしいことが少なくない。したがっ て,異常値の検出(発見)とその原因追求は重 要である。しかしながら,最初から異常値であ るということはあり得ず,まず疑わしいデータ があり,これを十分調べた後に理由のはっきり したものが異常値となるのである。このとき疑 わしいデータのことを外れ値という。外れ値は その名の通り,全体のデータがかたまっている 所からだいぶ離れたところに存在しているデー
タのことである。
ぱらつきの大きさは 実用性の点で大きく問 題になる。ぱらつきが大きいと推定精度が悪く
なり,検出力も悪くなる。したがって,手法の 適用自体は理論的に(数理統計的に)問題がな
( 5 7 )
くとも,実用的には使えないということがしば しば起きるのである。このばらつきを小さくす るためには,ぱらつきを要素に分解するという 統計的解析と低減するための創意と工夫と努力 が欠かせない。
3 . 1 ハードウエア(機器類)のレベル向上 機器類を必要以上に高度なものにする必要は ないが,工夫することにより異常値の発生を防 ぎぱらつきを小さくし,作業を楽にすることが できる。本節ではハードウエア(機器類)に関 するポイントを紹介する。
1 )解放具
紙ヘリコプターを手で解放(空中に放つこと) して飛行させると,極めて大きな飛行のばらつ きを生じ,誤差を大きくしてしまうとともにし ばしば作業ミスが異常の原因になる。解放時の 異常値発生を防止するための解放具(例えば2 0 ) 参照)を使用するとよい。
2 )計時用具
理想的にはセンサーを導入し,自動計測を用 いればよいわけであるが, しかし教育という点 では敢えてストップウオッチを用いて計時する のがよい。このとき,やがて高い精度が要求さ れるので,できれば1/ 1 0 0 0 秒計のストップウオ ッチを用いることが望ましい。初歩的段階のみ の教育ならばl/ 1 0 0 秒計のストップウオッチで 十分であるが,やがて 1 / 1 0 0 0 秒計のストップウ オッチが必要となることがある。なぜならば,
計測のばらつきの標準偏差は 5 / 1 0 0 秒前後を想 定しているが,計時レベルの高い受講生の場合 には 2 / 1 0 0 秒前後におさえることもあるからで ある。
3 )電子メトロノームの利用
解放時の各種の動作が総合的に整合させるた
めと,解放担当の判定員(詳細は後述)が各種
動作の整合性を確実に判定することができるた
めに,カウントダウンを機械の発するリズムに
行わせることは有効である。本研究では電子メ
トロノームを推奨する。これは時間が正確に分
かるので,これを用いて計時担当者のストップ
ウオッチの練習を行ったり,計時担当者として
本当に能力があるのか検査する際にも活用する ことできる。
3 . 2 ソフトウエア(運営方法)のレベル向上 人が実験をする限り,実験の運営方法は実験 結果に大きな影響を与える。仮に,ハードウエ アが十分でなくても,やり方の工夫次第によっ ては異常値の発生を防ぎぱらつきを小さくし,
作業を楽にする。本節ではソフトウエア(運営 方法)のレベル向上に関する重要なポイントを 紹介する。
1 )ライン生産(製作の役割)
個人個人が紙ヘリコプターを製作する方法に は以下の問題点がある。
( 1 ) 製作に時間がかかる。
( 2 ) 製作機体のばらつきが大きい。
( 3 ) 製作機体の出来映えが悪い。
これらの問題点を克服するために, 3 S (専門 化 ( S p e c i a l i z a t i o n ) ,標準化 ( S t a n d a r d i z a t i o n ) , 単 純 化 ( S i m p l i f i c a t i o n ) を目指してライン生産
を導入する。このことにより,上の 3 つの点は 大いに改善される。教室内にはベルトコンベア があるわけで、はないが カッターマットや下敷 きや紙皿などをトレーとして用い,各々の工程 で作業が済んだら半製品の紙ヘリコプターをト レーに載せて, トレーごと次の工程の担当者に 手渡しする。このことによりトレーをベルトコ ンベアの替わりにすることができる。この方式 は不必要に機体を触ることなく製作できるの で,短時間に良品を効率よく製作することがで きる。ライン生産の具体的な内容は 4.2 節で 詳述する。
2) 3機体 3飛行 3計測のメジアン
手間暇をいとわなければ,メジアンを体系的 に応用することにより,異常値に頑健で、かっぱ らつきの小さなデータ処理が可能になる。メジ アンは異常値に頑健な性質を有しているので,
製作作業,飛行作業,計測作業の何れに対して も頑健な方法として これら全てに繰り返しを とってメジアンを用いるという方法がある。す なわち,機体は同一条件で 3 機体製作し, 1 機 の飛行は 3 回行い,計時は 3 人が同時に計測す
( 5 8 )
るというものである。このことにより以下の効 果が期待できる。
( 1 ) 機体の製作レベルのばらつきを低減し,異 常機体の影響を防止する。
( 2 ) 飛行時に飛行作業や解放の不整合や,室内 の気流の影響によるぱらつきを低減し,異常 飛行の影響を防止する。
( 3 ) 計測のばらつきを低減し,異常計測の影響 を防止する。
この結果は文献
21)に示しており,メジアンは異 常値に対して頑健であるとともに,一種の平均 値でもあるためばらつきを小さくすることがで きる。そして,平均値は計算が必要で桁数が増 えるのに対して,メジアンは計算が不要で,デ ータの桁数も増えないので扱いがきわめて用意 である。しかしながら 時聞がかかるというデ イメリットがあるために,繰り返しを減らした いという要望がある。そのときは,何によるぱ らつきが大きいのか,何が異常値を発生し易い のかを解析し,その原因に手を打って十分な効 果があればその部分の繰り返しを止めればよ
し ' 0
機体製作に関しては 検査員と調整員をおい て機体のレベルを高める。ただしこれは品質を 工程で作り込んでいるわけではないため応急対 策である。できれば工程自体の改善を行い,品 質は工程で作り込んだ方がよい。しかし,教室 内で短い講義時間の中で実験を行わなければな らないので,ときには応急対策で検査で対応せ ざるをえない。なお 検査員や調整員を複数お いて各々の作業をパラレルに行うと,各々の検 査基準や調整方法が異なるために,分布が複数 存在して正規性が失われかっぱらつきが大きく なる。原則として検査員と調整員は一人とし,
検査員は検査せずに検査のみに専念し,調整員 は検査員の指示で調整するだけで自らの判断で 自主的に調整してはならない。このことは,調 整員は検査してはならないことを意味する。も し,検査員と調整員をともに複数おく場合には,
検査作業と調整作業をともに直列作業にする。
すなわち,検査業と調整作業を分業にし,工程
としては直列に設計する。この点は,ライン作 業で製作する場合とまったく同様である。
3 )判定員の採用とその役割
数値データだけがデータではない。人による 判定や言語データも重要で,これらを併用し活 用することを考える。
さて,実際の実験では,以下のような状況の もとではしばしば異常値が発生する。
( A ) 解放機のレベルが低い ( B ) 飛行作業が馴れていない ( c ) 機体の製作レベルが低い (同室内の気流がときどき乱れる ( E ) 計測者が馴れていない
このとき判定員を用意すると,以下の点でメリ ットが多い。
①異常値の検出力が高まる。
②異常値の原因を見つけ易い
もし,異常値を高い確率で検出することができ るならば,異常点が発生した場合にはそのとき に限りデータを取り直し,異常が発生しなけれ ば繰り返しをとらないというルールを採用すれ ば
③繰り返しを少なくできる
のである。また,気付いた点を言語情報として 備考欄に記録しておくと,外れ値が出現した場 合に,その原因追求に大いに役立つ。
3 人の判定員を用意し,各々が解放時,飛行 時および着床時の状況を監視する。「解放時の 判定 J , r 飛行時の判定 J , r 着床時の判定 J の 3 つのすべての判定が問題なしとしたとき,その データは採用される。この方式を採用するもと では, 1 機体 1 飛行でもよいデータが収集でき る。ただし,計時については 3 人計測のメジア ンとする。
S Q C (統計的品質管理)を実践的に確実に 教えるために,紙ヘリコプターを用いた模擬生 産に基づく教育は有効である。この教育を成功 させるためにはその過程で実施される各種の実 験の精度の確保が重要である。すなわち,異常 値の発生をおさえるか影響を少なくするととも に,ぱらつきを小さくすることが不可欠である。
( 5 9 )
これまでこの問題に対しては,複数機体( 3 機体),複数飛行( 3 飛行),複数計測( 3 人計 測)で,すべての繰り返しに対してメジアンを 採用する方法で解決してきた机制。しかしなが ら,この方法にはかなり時間を必要とするとい うデイメリットが存在している。そこで本研究 は,異常値の影響をおさえかっぱらつきを小さ くすることを実現しながらも,実験時間を短縮 することができる以下のアプローチを提案す る 。
( 1 ) 機体製作に関しては[機体検査員]をおき,
確実な機体検査のもとで良質な機体が確保で きる仕組みにする。このことにより,使用機 体は 1 機体とすることができ,この方法は異 常値の発生する可能性のある原因を事前に検 出し,異常値を未然防止することによりばら つきを小さくすることができる。
機体検査で不合格となった機体は,調整担 当者が調整して再度検査を受ける。もし,致 命的な問題があって調整が不可能な場合には 改めて新しい機体を製作する。機体検査員は 検査のみを担当し自ら調整してはならない。
( 2 ) 解放に関しては確実でかつ安定した飛び出 しのための[解放機の改善]と作業を整合さ せるための[電子メトロノームの採用]と全 体の作業の整合をチェックする[解放判定員]
をおく。このことにより 確実な解放作業と 計時における複数のストップウオッチのスタ ートと解放作業の整合により異常値を検出し ばらつきを小さ〈する。
( 3 ) 飛行に関しては[飛行判定員]をおき,飛 行に問題がない限り飛行の繰り返しは行わな いことにする。飛行判定を行うことにより,
異常値となる可能性の高い異常飛行を直ちに 検出することにより,ぱらつきを小さくする
ことができる。
( 4 ) 計測に関しては,センサーを導入しないも とでは複数計測を採用することが望ましい。
しかし,複数のストップウオッチによる計 測とはいえ,作業は同時計測なのでこのこと
により時聞がとくにかかるわけではない。ば
ら つ き の 低 減 に 関 し て は , す で に 解 説 し た [解放判定員] (解放時の整合:解放とスター ト ) と 新 た に [ 着 床 判 定 員 ] (着床時の整 合:着床とストップ)をおくことにより,異 常値の発生を検出しばらつきを小さくするこ
とができる。
( 5 ) 着床に関しては[円形の着陸場]を用意し,
製作・解放・飛行・着床が総合的に問題がな いかどうかを判定することができる。円形の 着陸場を外れた場合には,これらのいずれか で 問 題 を 起 こ し て い る と 考 え る こ と が で き る 。
4 )判定員の教育・訓練と判定のための標準化 と確認
判定員を用意しても,その教育・訓練と判定 のための標準化がなされなければ混乱を招く危 険がある。 VTR を用意することが望ましいが,
標準書でも十分である。書きものとしてのポイ ントは,次の項で解説する。そして,本番前に は実験管理が全体として問題がないかどうかの テストを行って確認するとよい。このテストは n 回の飛行テストを行い,正規確率紙を用いて 吟味し,外れ値がなくおおむね正規分布で,ぱ らつきが必要なレベルの精度をクリアしている ことを確認する。
4 . チームプレイでの機体製作と飛行計測
この種の実験を手早く実施し,十分な精度を 確保するために,チームプレイでの飛行計測が 有 効 で あ る 。 最 低 で も 計 測 誤 差 の 標 準 偏 差 は
5 / 1 0 0 秒前後であることが望ましい。これを実 現するためにはチームプレイでの機体製作と飛 行計測が必要で,そのための具体的な役割を以 下に示す。
4 . 1 ライン生産による機体製作
本節では,多数のよい機体を短時間で効率よ く製作するための具体的な生産ラインを紹介す る。とくにカッティングと検査・調整について はさらに詳しくポイントを解説する。
[ライン生産の手順]
( 6 0 )
①[条件・番号記入] :機体に条件,機体番号 を記入する。
②[縁塗り] :機体条件にしたがって切るべき ラインにマーカーで色を塗る。
③[確認] :マーカーで塗ったラインと機体条 件が合っているかをチェックする。
④ , ⑤ , ⑥ , * * * * カ ッ テ イ ン ク や * * * *
⑦ , ③ ( 図 4 . 1 と [A] を参照)
⑨[折り筋付け] ハ : " ' J ‑ ナイフやカッターの背等を用い て折り線をなぞり,折り筋をつける。
⑬[翼折り] :翼を折る。
⑪[整形] :翼を開いて,アングル 9 0 を用いて翼の 角度を 9 0 度に整形する。
⑫[検査] :機体の検査を行う。紙ヘリを逆 T 字 に置いて,翼と足が 9 0 度になっているか,し わ,たわみ,よじれなどがないかを検査する。
⑬[調整] :検査の結果に基づいて機体を調整 する。
⑭[保管] :合格機体を保管場所へ運び保管す る。保管の際は機体を逆 T 字に置く。
注意1.アングル 9 0 とはアルミ製の L 字 型 建 材 で,通常アングルと呼ばれている。
注意 2 . カッターで切る際は 機体用紙には触れ ずにマットを回転させて,切る線が常に横
になるように置き直してから切る。
注意 3 . ⑨の折り筋は強くつけすぎない。強する と脱臼する。(翼の根元の強度がなくなる。) 注意 4 . ⑫検査と⑬調整は別々の担当者が行うよ
うに編成する。 1 人で両方の作業を行うと チェックが甘くなる。
[A] カッテイングについて
機体のタイプによって次のように分ける。
[標準機体】の場合
④機体の上下である翼上線と足下線の 2 本を切 る。人数が多ければ→④司 1 :翼上線/
④ ‑ 2 :足下線
⑤機体の横線である[翼+コックヒ。ツト]部分の横 線(右側,左側)の 2 本を切る。
人数が多ければ→⑤四 1 :翼+コックヒ。ット横線右/
⑤ ー2 :同左
⑥コックヒ。ツトの下線(コックヒ。ツト下線右側, 左側) の
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[翼幅広機体]の場合 [翼幅狭機体]の場合
[標準機体]の場合
機体のタイプとカッティングの箇所
(コックピット下線右側,左側)の 2 本を切る。
人数が多ければ→⑥四 3 :コックヒ。ツト下線右/
⑥‑ 4 :同左
⑦足横線(右側,左側)の 2 本を切る。
人数が多ければ→⑦ー 1 :足横線右/
⑦‑ 2 :同左
③翼の中央線を切る。
【翼幅広機体】の場合
④機体の上下である翼上線,足下線の 2 本を切 る。人数が多ければ→④‑ 1:翼上線/
④ ‑ 2 :足下線
⑤機体の横線のうち,翼の横線(右側,左側) の 2 本を切る。
人数が多ければ→⑤ー 1 :翼横線右/
⑤ ‑ 2 :同左
機体の横線のうち,コックヒ。ットの横線(右側,
左側)の 2 本を切る。
人数が多ければ→⑤ . 3 : コックヒ。ツト横線右/
⑤ ‑ 4 :同左
⑥翼の下線(翼下線右側,左側)の 2 本を切る。
人数が多ければ→⑥‑ 1:翼下線右/
⑥ 圃 2 :同左
コックヒ。ットの下線(コックヒ。ツト下線右側, 左側) の
( 6 1 ) 図4 . 1
2 本を切る。
人数が多ければ→⑥‑ 1:コックヒ。ツト下線右/
⑥‑ 2 :同左
⑦足横線(右側,左側)の 2 本を切る。
人数が多ければ→⑦‑ 1 :足横線右/
⑦‑ 2 :同左
③翼の中央線を切る。
【翼幅狭機体】の場合
④ 機 体 の 上 下 で あ る 翼 上 線 足 下 線 の 2 本を切 る。人数が多ければ→④‑ 1:翼上線/
④ 幽 2 :足下線
⑤機体の横線のうち,コックヒ。ツトの横線(右側,
左側)の 2 本を切る。
人数が多ければ→⑤同 1 :コックヒ。ット横線右/
⑤ 岨 2 :同左
機体の横線のうち,翼の横線(右側,左側) の 2 本を切る。
人数が多ければ→⑤‑ 3 :翼横線右/
⑤ ‑ 4 :同左
⑥コックヒ。ツトの上線(コックヒ。ツト上線右側, 左側) 2 本を切る。
人数が多ければ→⑥‑ 1 :コックヒ。ツト上線右/
⑥‑ 2 :同左コックヒ。ツトの下線
の
2 本を切る。
人数が多ければ→⑥ー 3 :コックヒ。ツト下線右/
⑥ ‑ 4 :同左
⑦足横線(右側,左側)の 2 本を切る。
人数が多ければ→⑦ ‑ 1 :足横線右/
⑦ ‑ 2 :同左
③翼の中央線を切る。
[B] 検査と調整について
[検査] :良い機体は合格とし,手直し可能な機 体は調整者に指示して直させる。
*検査すべき機体を逆 T の字でマットの上にお く 。
*カッターマットを回しながら機体の検査を行う。
*必要ならばアングル 9 0 を当ててチェックする。
*検査のポイント:
‑事前に限度見本を良くみて良品のイメージを 固める。
‑検査の段階ではできるだけ機体に触れない。
マットの上に載せて検査する。
‑翼がマットに対して密着(水平, 180 度)し ていること。
‑足が垂直に立っていること。
‑翼や足の部分に歪みやたわみがないこと。
‑切り口が直線になっていて,ささくれていな いこと。
‑簡単に調整できないようなひと守いものは廃棄 する。
‑調整が必要な機体については調整すべき指示 を出して調整員に調整させる。
‑調整済みの機体は調整後すぐに検査する。別 の機体の検査より優先する。
・合格機体は格納用の場所(カッターマットを 利用)に置く。
注意:アングル 90 は検査のための道具であり,
これを用いて調整してはならない。
[調整]:検査者の指示に従って機体を調整する。
自主的に調整してはならない。
#用いる道具:カッターマット, アングル 9 0 が 2 個
*調整は検査ではねられた機体のみに対して,
検査員の指示に忠実に従って行う。
*調整が済んだらすぐに検査員に戻して再検査
( 6 2 )
を受け,問題があれば再調整する
04 . 2 飛行計測の役割
本節では,短時間で手際良く飛行計測するた めの具体的なアプロ}チを紹介する。なお、飛 行計測の段階で問題が生じて,原因を明らかに するために再飛行することがあるため、回収担 当者は十分慎重に機体の条件を変えないように 回収する。
① [ ス ト ッ プ 。 ・ ウ オ ッ チ A]② [ ス ト ッ プ 。 ・ ウ オ ッ チ B] ③ [ ス ト ツ 7
0・ ウ オ ッ チ C ] :滞空時間を計時する。
#用いる道具:ストップウオッチ
*時間の表示は1/ 100 の単位の場合,表示され た時間を 1 0 0 倍し 1 0 0 をヲ│いた値に変換する。
例 : 1 . 2 3 → 2 3 , 1 . 46 → 4 6 , 0 . 9 7 →ー 3
*事前に慎重に練習する。
*機体の発進でストップ。ウオッチを押すのではなく,カ ウントゲウンの声あるいは電子メトロノームの音で押す。
*カウントゲウンの際にタイミングをはかり,準備動 作をいれて押す。
*着床時はクリップ
ρの着床音で、ストップ。ウオッチを止 める。このために耳をすまし,目は着床のタ イミングをはかつて準備する他の人々は静か にしている。
*着床の場合はカウントゲウンの場合とは異なり, 目 視によるタイミングのはかりかたは各自が行
つ 。
④[クリップ付け] :機体の足の部分にクリッ プを付ける。
#用いる道具:箱に入ったクリップ
*クリップ箱から必要な数 + α のクリップを取 り出す。
*目視判断でよいが,同じようなクリップを選 別して必要な数を用意する。極めて厳密な実 験の場合には,一つのクリップのみですべて の実験を実施する。
*飛行の順番が事前に決定されているので,そ の順番に機体を並べて置く。
*時間を短縮するために,次に飛行する機体に はクリップを付けて準備をしておく。
*クリップ。をつけた機体はクリップ。の位置を指先でつ
まみ,逆 T の字にして持っている。
*クリップ
ρのついた機体は決して机の上にはお かない。
*セッテイングの人に渡す場合は逆 T の字の状 態で自分もクリップの位置をにぎり,相手に
もクリップの位置を持たせるように渡す。
⑤[セッティング] :機体を解放機の先端部分 にセットする。
#用いる道具:なし
*クリップ付けから機体を受け取る際は必ずク リップの位置を掴んで持つ。
*飛行前にもらってセッティングまでに時間が ある場合は,逆 T の字で持っている。
*セッテイングの際は T の字にして解放機の先 端にセットする。
*少し手前にセットして指先で軽く押すと確実 に先端にセットできる。
*セットの際に機体を変形しないように十分気 をつける。このために,多少時間がかかって も確実なセッテイングの方に重きを置く。万 が一,機体を変形した場合には練習機検査員
に渡し,調整と調整後の検査を依頼する。
⑥[飛行] :カウントダウンに合わせ て機体を解放する。
#用いる道具:ストッパー
*カウントゲウン用の人がいる場合にはカウントゲウンに合 わせて機体を解放する。
*もし,カウントゲウン用の人がいない場合には自ら カウントゲウンして機体を解放する。
*カウントゲウンは 1 3 , 2 , 1 川 j とする。機械(電子メ トロノーム)がある場合には, その機械のメカニスやム に合わせる。
*解放の際はストツノ T ーを速やかに上げて機体 を空中に解放する。
*タイミングが遅いと機体は解放機の上を滑っ て落ちるため,飛行及ぴ計測に大きな問題を 生じる。
*ストッパーは,飛行計測時以外は解放機の上 においておいてはいけない。原則としてキ凡の 上に置く。うっかり解放機の上に置いておく と落下して,人にぶつかったり,解放機のそ ばにある機体を破損する危険が高い。
( 6 3 )
⑦[回収] :着床した機体を回収し,
クリップを外して保管(格納)する。
【練習時】クリップを外し,機体は[練習機検 査の担当]へ,クリップは[クリップ付けの 担当]へ渡す
o#用いる道具:なし
*着床した機体をすぐに床からつまみ上げる。
*その際,必ずクリップの位置を指でつまんで 持つ。
*その後クリップを外して,指定された場所に 機体とクリップをペアにして置く。
*機体は必ず逆 T の字にして置く。
③[記録] :記録用紙にデータ(滞空 時間および判定結果)を記入する。
※最初に観測状況の結果([解] [飛] [着])を 記録し,次に 3 人の計測者の滞空時間( [ A ]
[ B ] [ C ] ) を記録する。できるだけ復唱 (直後に書いた結果を読み上げて確認)する。
#用いる道具:記録用紙と筆記用具
*練習テストと本番データは別々の該当する場 所に記録する。
*飛行状態の判定は 0 ,ム, x で記入する。と きには O の判定を無印としてもよい。
*タイムを記録すると同時に余裕の範囲でメ γ ア ン に 印をつけ,メ γ7 ンの欄に値を記入する。
*可能であれば復唱して記録の記入ミスを防止 する。
⑨[解放時判定] :解放時の判定を行う。 0 ;
ム , x をはっきり言う。
#用いる道具:なし
* [カウントダウンの声あるいは電子メトロノ ームの音]と[ストップウオッチの開始音]
と[紙ヘリコプターの発進]が整合している か ?
⑬[飛行時判定] :飛行時の判定を行う。 0 , ム , x をはっきり言う。
#用いる道具:なし
*発進後速やかに回転を開始しているか?回転 は滑らかか?足が揺れていないか?垂直に 降下しているか?
⑪[着床時判定] :着床時の判定を行う。 0 ,
ム , x をはっきり言う。
#用いる道具:なし
*着陸領域(円内)に着陸しているか? [着床 音]と[ストップウオッチの停止音]が整合
しているか?
⑫[板書] :実験結果の必要なものを 全員に知らせために板書する。
※[記録の担当者]はすべてを記録するが,
[板書の担当者]は必要最小限のものだけを 黒板の上に書く。
#用いる道具:なし
*教員の指示に従って必要な事項を板書する。
⑬[機体検査] :練習機や本番機の機体に問 題(不注意な取扱いによる変形,着床時の衝 撃によるダメ}ジなど)がないかどうかの検 査を行う。もし問題があった場合には, [ 機 体調整の担当者]に指示して直させる。製作 時の機体検査を出荷検査と考えるならば,飛 行前の機体検査は受け入れ検査にあたるもの である。
#用いる道具:カッターマット,アングル90 が 2 個 , スタ ッフが用意した見本機体(限度見本)
*練習機は毎回必ず検査して,問題があれば [機体調整の担当者]に指示して直す。
*本番機は依頼があった場合にのみ検査して直 すが,原則として検査調整はしない。
※本番機では機体が変形していること自体が重 要な情報(製作ミス,取扱いミス)である。
*検査すべき機体を逆 Tの字でマットの上に置 く 。
*カッターマットを回しながら機体の検査を行う。
*必要ならばアングル9 0 を当ててチェックする。
*検査のポイント:機体制作における検査ポイ ントと同じである。
⑬[機体調整] :練習機の機体に問題があっ た場合に, [機体検査の担当者]の指示に基 づいてこれを調整する。自主的に調整しては
ならない。
#用いる道具:カッターマット,アングル9 0 が 2 個 。
*練習機検査者から調整を依頼されたものにつ
( 6 4 )
いて指示にしたがって直す。
*調整のポイントは練習機検査員の指示にのみ 従っておこなう。
*調整がすんだらすぐに検査員にもどす。
4 . 3 予備練習と評価
実験の条件が複雑な場合には,必ず実験条件 のうちの最大機体と最小機体が入るように予備 練習を計画する。次の優先順位は実験条件の端 点(これらには必ず最大機体と最小機体の条件 が含まれている)で その次は周辺の条件(こ れらには条件付き最大機体と条件付き最小機体 の条件が含まれている)である。
原則として,本番の前に練習は必要である。
製作の練習と飛行計測の練習の両方が必要であ る。製作の練習で作成した機体を飛行練習に用 いる。ある程度練習した後で,評価に入る。評 価では,以下の点をチェックする。
( 1 )外れ値/異常値が発生しないか ( 2 ) データは概ね左右対称の一山形か ( 3 ) ぱらつきは十分に小さいか
5 . L8 直交実験と L16 直交実験の導入
多数の変数を扱うために,直交実験を導入す る。その際,最初は 2 水準系の実験がよく, L 8 直交実験(以後 L8 と略す)で練習した上で L 1 6 直交実験(以後 L 1 6 と略す)にトライするの がよい。 3 水準系については次章で取り上げる。
直交実験は少ない実験回数で,複雑な情報を入 手しようとしているので,製作と飛行の順番の ランダマイゼーションは重要で、ある。
5 . 1 L8直交実験
L8 は誤差の自由度が十分にとれないので,
あくまでも直交実験の導入という形で行うのが よい。すなわち,次に行う L 1 6 の練習とし,こ の後で必ず L1 6 に取り組むべきである。 L8 を 実際の場で用いる場合には,予備実験あるいは 大網を張る実験ないしはより良い条件を連続的 に捜す逐次実験として用いるのがよい。
L8 はサイズが小さいが,直交実験の本質は
すべて有しているので,手計算を行って理論を
理解するのに向いている。これで、手計算を行っ て,基本的な構造と理論を理解したら,これ以 後の処理はコンピュータを用いた方がよい。た だし,その場合でも割付に関しては人聞が行う 必要があることはいうまでもない。 L8 は極端
に実験の回数が少ないため,実験のやり方は異 常値に対して頑健でかっぱらつきが小さいこと が重要となる。それ故に 3 機体 3 飛行 3 計測が 望ましい。このとき,機体数は 8 x 3 =24 機と
なるが,以後の実験も 16機 ~30機程度製作する のでその練習にもなる。ただし, 1 機体 3 飛行 3 計測で行う場合には厳しい機体検査を実施す る必要があり, 1 機体 l 飛行 3 計測で行う場合 には厳しい機体検査に加えて解放判定,飛行判 定,着床判定をきちんと行う必要がある。
なお, L8 の実施例を図 5 . 1 から図 5 . 4 に,紹介する。
1 )線点図と実験結果は図 5 . 1 に示す通りで ある。
2 )分散分析表は表 5 . 1 に示す通りである。
5 . 2 L 16 直交実験
L16 は誤差の自由度がある程度確保できるの で,実践で利用させることを目的とするならば,
L16 を体験させることが必要である。 L16 の場 合にはとりあげる変数の数も,交互作用がある 程度あっても 6 個前後は確実に扱えるので実践 的であるからである。そして,機体数が 1 6 機で あるため,制作にそれほど多くの時間を必要 とはしないので実施が容易である。
( 1 ) 実験条件(機体の条件を組み合わせ)を間 表 5 . 1 L 8 の分散分析表
要因 平方和 度 由 自 分 散
列 因子
記 号 因子名 S V
1 A 翼 長 9 6 6 0 . 5 0 9 6 6 0 . 5 0 2 B 翼 幅 0 . 5 0 0 . 5 0 7 D 足 幅 9 6 8 . 0 0 9 6 8 . 0 0 3 AXB 5 4 4 . 5 0 5 4 4 . 5 0 誤 差 1 2 4 . 0 0 3 4 1 . 33
メ 口
』計 1 1 2 9 7 . 5 0 7
因子 i の寄与率 :p i = (Si‑ ~ i • V e ) /T , ρiO のとき ρi
d= 1 ‑ ~i 3 )最適水準にに関する推定(点推定と区間推定)は以下の通りである。
( 1 ) 点推定
〈 μ(ABD))={μ+a+b+ab+d}
= {μ+a+b+ab}+{μ+ d} ‑ { μ 〉
= {μ(A B) } + {μ(D) }一〈 μ 〉
交互作用で AXB があるので A と B の組み合わせで選ぶと A2B1 , D は 単独で選ぶと D1 であるので, A2B1D1 が最適条件
〈 μ(A2B1D1) } = {μ(A2B 1 ) } + {μ(D1) } ‑ { μ 〉
= 1 0 5 . 0 + 7 2 . 7 5 ‑6 1 . 7 5
= 1 1 6 . 0 0 ( 2 ) 区間推定
*有効反複数 n e =8/ (~A+ 併 B+ 併 AXB+ 併 D+1) =8/5
*推定幅: : 1 : t (~e , 0 . 0 2 5 ) J Ve/n e
= : 1 : t ( 3 , 0 . 0 2 5 ) J Ve/n e
=土 3 . 1 8 2 , J 4 1 . 33X5/8= : l : 1 6 . 1 7 2
*推定区間: 1 1 6 . 0 0 0 : 1 : 1 6 . 1 72= 1 3 2 . 1 7 2 , 9 9 . 8 2 8 9 9 . 8 2 8 孟 μ(A2B1D1) 孟 1 3 2 . 1 7 2
( 6 5 )
F 値 寄 与 率
F p (%) 2 3 3 . 7 2 * * 8 5 . 0
0 . 0 1 0 . 0
23 . 4 2* 8 . 2
1 3 . 1 7* 4 . 5
2 . 3
一 1 0 0 . 0
実験で取り上げる因子・水準と各号機の製作条件 ( ) 班 ( 固 定 す る 因 子 と そ の 水 準 [ 解 放 高 度 = 1 7 0 c m ] 、[クリップ =ゼム小], [
)回目 ]
, [ 因 子 A [翼長] B [翼幅] c [足長] D [ 足 │ 幅 ] E [
水 準 1 7 4 8 4
水 準 2 1 5 7 1 0 8 ※ 3 回の飛行のメジアン
を 採 欄用する場合は順序
亨
JI① ② ④ ⑦ ↓の は記入しない.
I~ ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦
‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 、 ‑ ‑ ‑ ‑ 司 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 、 司 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 、 ¥ 、 ¥ 、 順 序 実験データ 備 考
1 111111111 711 411 8 1 1 4 2 5 2 111222211 7 1 1 412 1 0 1 2 8 1 3 3 122112211 7 1 2 711 8 1 2 8 2 4 4 122221111 712 712 1 0 1 1 4 4 6 5 212121212 1 5 1 1 411 812 8 9 5 6 212212112 1 5 1 1 412 1 0 1 1 4 1 1 5 7 221122112 1 5 1 2 711 811 4 1 0 5 8 221211212 1 5 1 2 712 1 0 1 2 8 7 1
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× 4 A 週
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