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中内哲 北九州市立大学助教授

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Academic year: 2021

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一事実 ⑪被告Y会社の本社総務部課長職にあった 原告Xは、平成三年一二月一日の関西支社開設 の際に同支社へ配置された三名のうちの一人で ある。当初、関西支社はさまざまな業務を行な っていたものの、それらが徐々に完了し、また は同支社の所管を外れたため、平成八年九月に は二業務を残すのみとなった。そこで、Y会社 は、それらのうち、自らが同支社所在市に有す る不動産の管理業務を訴外A会社に委託すると ともに、Xをこれに従事する者として同年一○ 月一日付でA会社に三年を期限として出向させ た(以下、本件出向)。 ②翌(平成九)年九月四日にY会社代表取 締役・訴外Oが急逝したことにより、唯一の代 表取締役となった訴外Kは、関西支社所管の残 る一業務が同年一○月に完了したことを受けて、 同支社の廃止とともにXに対する本件出向の解 除を企図する。それは、①同支社は、右委託・ 出向を実質的に決定したOのそれ以後の活動拠 点であったに留まり、②A会社に対する業務委 繊鐡研熟繍憲嶽鴬一穂裁判鰯(系唇鑛掛昌翰窺誉四九頁)鰔繍 支社廃止にともなう出向労働者に対する解雇と その有効性判断枠 組 み  

中内哲 北九州市立大学助教授

託手数料の支払いとXへの賃金支払いとがY会 社にとって二重の負担であったことを理由とし た。なお、Y会社には、③平成四年度以降、経 常利益を連続して計上し、その損益が大幅に改 善されているものの、同社所有の不動産の減価 償却のため、冗費の支出を極力控えなければな らないという事情も存した。さらにKは、④Y 会社のすべての業務は、いずれも配置された人 員によって対応できている反面、⑤Xには過去 に職務遂行上のトラブルおよび非違行為歴がそ れぞれ二度あることから、本件出向を解除した 場合にはXをY会社内で再配置することはでき ず解一展するほかないと考えるに至る。 ③平成一○年二月二日、Xは、本件出向の 解除、それにともなう本社総務部付の辞令を交 付されたうえ、同年三月末での解雇の意向を伝 えられた。その後、XY両者は解雇に関して二 度話し合ったが、Y会社はX宛に、三月末で解 雇すること、および、それが支社廃止による事 業縮小を理由とし、就業規則一八条一項五号「や むを得ない事業上の都合によるとき」にもとづ くことを明記した詞月二七日付解雇予告通知書

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⑪本件解雇の根拠となったY会社「就業規 則一八条一項五号にいう「やむを得ない事業上 の都合によるとき」とは、……企業の経営規模 の縮小等によって余剰人員が生じた……ような 場合……[である]ことは明らかであ」る。そ の際、同号にもとづく解雇権の行使が濫用にあ たらないためには、「第一に、解雇が「事業上 の都合による」こと、すなわち、解雇という手 段によって余剰人員を削減する必要性が存在し なければならず、第二に、解雇という手段に出 ることが「やむを得ない」こと、すなわち、目 的と手段ないし結果との間に均衡を失していな いことが必要であると解される」。 ②「関西支社の廃止及びXの出向の解除並 びにそれによって生じた余剰人員一名を解雇と いう方法によって削減することに、企業経営上 の観点からおよそ必要性も合理性も認められな いのであれば、……また、Xを配転することが できない……とすれば、本件解雇には客観的に 合理的な理由が……ないから、その余の点につ いて判断するまでもなく、本件解雇は解雇権の 濫用として無効となる」。 右事実②①にもとづくと、Oの死去後もなお を送付し、実際三月一一一一日をもってXを解雇し た(以下、本件解雇)。これに対して、当該解雇 の無効を主張するXが地位確認等請求訴訟を提 起したのが本件である。 一一判Ⅱ旨請求棄却

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判例研究/尼簡築港四件・東京地蔵判決

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「関西支社を維持・存続させることは、企業経 営上の観点からは、合理性を肯定しがた」い。 また、本件出向も、不動産管理業務をA会社に 委託した「平成八年一C月の時点で事実上関西 支社において余剰人員となっていたXの解雇を 回避する目的で取られた措置であるというべき であり、Y会社の……[事実②②録)に示された] 経営状況からすれば、……企業経営上……合理 性を肯定し難いというべきである」。「そうする と、Y会社が平成一○年二月の時点において関 西支社を閉鎖してXの出向を解いたことには、 企業経営上の観点から合理性を肯定することが できる」。鳶らに、事実②④「に照らせば、関西 支社の廃止及びXの出向解除によって一名分鰯 余剰人員が発生したというべきであるが、…… [これ]蜜解雇という方法によって削減するこ とは、……[事実卿③④]からすれば、将来に 備えて経営体力の弱体化を避けるという観点か ら執られた措置であると解されるところ、企業 が;・…将来経営危機腱陥る危険を避けるため [事前]に……経営体質の改善、強化を図るこ とは、企業経営上……[認められる]から、本 件に鑓いても、……[そ]の必要性を肯定す患 ことができる」。なお、「Xを他に配転すること ができない事情については、[事実脚⑤等で示 きれた]XのこれまでのY会社における経歴と 適性等に照らせば、……関西支社以外に配置す る部署がないという状況にあったものと考えら れ」る。 「以上によれば、Kが……[なしたXを解雇 せざるをえないとの]判断……は、客観的に合 理的であると認められ」、したがって、「Y会社 が……本件解雇に及んだことは、客観的に合理 的であるということができる」。 脚「そもそも将来の経営危機に陥る危険を 避けるため[事前]に:…・経営体質の改善、強 化を図っておくことは、当該企業が生き延びる ことを目的としているのであるから、解雇に代 わる次善の策を容易に想定し得るものでない限 り……[本件解雇は]目的と・・…牢手段の間の 均衡を失しているとはいえないと解苔れる」。 本件出向の決定は、右②で判示したように「企 業経営上の観点からは合理性を肯定し難いこと からす熱ぱ、……解雇に代わる次善の策に当た るということはでき」ず、「したがって、Y会 社が……[本件出向]の期間……[満了]前に ……解雇に及んだことをもって、本件解雇がそ の目的と……手段の間の均衡を失するものであ るということはできない」。 脚「以上によれば、本件解雇が解雇権の濫 用として無効であるということはできない。」 三評釈

、使用者側に生じたもっぱら経営上の事情 にもとづく解雇は「整理解雇」と呼ばれるCこ れは例えば、不採算部門・事業場が閉鎖される 局面において、その時点で当該部門。事業場で 就労している労働者の全部または一部が剰員と され、その企業から放逐各れ患という形で現出 する。 本件は、不採算事業場節廃止にともなう解雇 という意味ではたしかに整理解雇の様相を呈す るが、被解雇者Xが関西支社廃止時にそこで就 労しておらず出向状態にあった点で整理解一展の 典型例とはいえない。そのためか、本判決は、 これまでに下級審判例が積み上げてきた、①人 員削減の必要性、②解雇回避努力、③被解雇者 選定の合理性・客観性、④解雇手続の妥当性と

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いう四基準にもとづき評価する当該解雇に対す る判断枠組み(いわゆる整理解雇法理)とは異 なるそれに従って結論艇至っているかに見える。 そこで、本研究は、本判決の構造とその意義・ 内容を明らかにしつつ、これと従来の整理解雇 法理との異同という観点から若干の検討を行な 箔7。 ②ア・判旨川本判】臼は、本件解雇の分析 視角を明らかにする。すなわち、本件解雇の根 拠となったY会社就業規則の適用条項の具体的 な文言に照らして、「解雇による余剰人員削減 の必要性」および「目的と(解雇という)手段・ 結果との均衡」の二基準を導き出し、これらを 用いて本件解雇の権利濫用性を判定するという ものである。ここで確認すべきは、右基準の法 的性格であるが、本判決はこれをいずれも「要

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件」として設定したと解きれる。 ィ。判旨脚本判旨は、まずa「関西支社廃 止の合理性」とb「本件出向解除の合理性」を

SiifHO法印旬服

判例研究〆尼蝿粟廼申件.東京地Hf判決

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肯定するo但し、前者は同支社の不活発性(事 実御①)にもとづいて[同支社存続の合理性」 を、後者はコストの二重負担(同②②『ひいて はY会社における冗費抑制の要請(同②②)を 根拠に「本件出向の存続の合理性」を否定した その反射的結論として導出されている。次に、 右の結果、判断をせまられたC「剰員一名の「解 雇」による削減の必要性」が、企業の存続ある いは生き残り〈判旨斡の表現も参照)を実質的 根拠として認められる。最後に、d「Xの配転 可能性」が現在の適正な人員配置とXの非違行 為歴等(事実卿⑳⑤)を決定的理由に否定され、 結論は本件解雇の客観的・合理的理由鰯存在を 確認する。 こうしたaからd鰯基準およびそこで着目さ れた事実に鑑みれば、第一に、本判旨は、判旨 、で設定された第一の要件たる「解雇による余 剰人員の必要性」を右事実に即して四つの基準 に具体化。細分化し、それらを三段階に分けて 本件へあてはめたととらえ息ことができよう。 これに従えば、結論で言及された「本件解雇の 客観的。合理的理由の存在」は、当該第一要件

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鋤充足を意味すると思われる。第一一に、本判】曰 のかかる判断は、従来⑮整理解雇法理との関係 では、右、で述べた四基準のうち①②③で検証 される内容に実質的に含まれるといえるC ウ。判旨側本判旨は、そめ文一一一一口からして、 判旨⑩で設定された後者の要件「目的と手段・ 結果との均衡」を本件へあてはめたものと指摘 できる。とはいえ、ここにいう「目的」が何を 意味するかは、本判決全体を傭脈しても判然と しない。そこで、判旨⑩と同様の手法を用いて 解雇鰯有効性を判断したナショナル・ウエスト ミンスター銀行(第二次仮処分)事件・東京地 裁決定(平一一・|・二九労判七八二号一一一五頁) を参考にすれ蝉、それは「解雇によって達成し ようとする経営上の目的」と説明きれる。これ には、a現に倒産の危殆臆瀕しており、これか ら脱するため、b将来経営危機に陥る危険を避 けようと予め企業体質の改善・強化を図るため、 c将来においても経営危機に陥ることが予測さ れず単に余剰人員を整理して採算性を向上きせ るため、以上の三類型があり、それぞれにおい て要件たる「均衡」の内容が異なる。つまり、 右のa↓b↓cの順に、解雇の必要性が低く見 積もられる反面、人員削減を行なう際に解雇以 外の手段を採るべき可能性がより高く求められ 鳥、いいかえれば、a↓b↓cの順に解雇とい う人員削減措置の許容限度が厳格になる旨、右 決定は解したのである。その判示のとくに右b タイプに関する部分を抽出すれば、「企業が生 き残ることを目的としているのであるから、… …[解雇]に代わる次善の策審容易に想定しう るものでない限り、均衡を失するとはいえ愈竺 とされる(同誌四三頁)。 したがって、本判旨は、右決定が設定したか かる命題を、本件がbタイプにあたるとの判断 鰯もとに(判旨②の表現も参照)、そぬまま援用 したと解きれ、その結論では、本件解雇に関す る第二の「均衡」要件の充足が消極的に確認さ れている。これは、右にいう「次善策」の検討 対象となった本件出向がその該当性を否定され たことにより、そめ主たる根拠は、判旨榊が「本 件出向解除の合理性」を認める前提として「当 該出向措置そのものの不合理性」を説示したこ とに求められて唾る(上記イも参照)。 どのように、第二要件たる「均衡」に対する 判断の関心がY会社外における雇用保障措置た る本件出向に向けられ、かつ、その是非が当該 要件充足如何に決定的な影響を与えている点に 徴すれば、本判旨は、従来の整理解雇法理との 関係においては、右如でみた四基準のうち②で 検証されるべき内容に相当するものといえよ

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誼?。 エ・判旨榊ここでは、本件解雇が解雇権鋤 濫用にあたらない旨、結論づけられる。これは もちろん、右で確認してきたように、判旨、で 設定された二要件が判旨脚脚における検討を経 て、いずれも充足誉れたとの判断によるのであ ろうo ③本判決は、従来の整理解雇法理とは異な る判断枠組みを提示しているかに見えたも録の、 以上の検証にもとづく限り、その内実は、むし ろ当該法理に包摂されていると解されるのであ る。ここから、本判決は本件解雇を実質的砿は 整理解一雇ととらえて判断したものと評価でき、 これに対する異議はない。しかし、評者は、以

N○.151,2002.110 判侭厩究〆尼田i襲謹寵件・回まうIIhHHz$11塾

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下に述べるところにより本判決を支持すること ができない。 まず、本判決の核たる判旨②における判断に は、少なくとも次の二つの問題点が認められる。 第一に、本件は、関西支社閉鎖によっては空間 的にも担当業務の面でも直接に雇用を脅かされ たわけではない出向労働者たるXが、当該期間 満了前にわざわざそれを解除されてまで解一展に 至らしめられた点をその特徴として指摘できる。 これに着目すれば、当該判旨のb「本件出向解 除の合理性」の判断がきわめて重要と思われる。 同判旨は、その合理性を認めるにあたって「冗 費」を決定的根拠としたが(事実②②二①および 認‐辨繍鶏辨繊鵬矧錘雨切艫鋤 はmc「剰員一名の『解雇」による削減の必要 性」に続いてd「Xの配転可能性」を審査する。 しかし、cが認められたからといって必然的に dの判断に移行できるわけではない。なぜなら、 Cからdに進むためには解一展対象者としてXの

違行為歴等を挙げるのみで(事実②⑤および右 と一般に理解されてきたが、近時「要素」と解す ②ィ参照)、他の従業員に関する当該履歴の認定 る裁判例や学説も生まれている。かかる議論状況 およびXのそれとの比較検討をまったく行なっ については、さしあたり和田藍「整理解雇法理の ていない。 見直しは必要か」季労一九六号(二○○|年)一 かかる点を不問に付したまま判断を下した本 二頁、とくに一一一一、’七頁を参照。 判決には、使用者の経営判断あるいは主観が多 (2)議論の先取りになるが、判旨②が、前者の基準

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分に受容されている可能性がある。そもそも解 が満たされた場合、「その余の点について判断す みを選抜することになった ければならないからである。 へ同判旨は、Xの非(1)当該 「基準」が明確でな『」船いつ直」 雇法理の趣旨・目的は使用者による恐意的な解 雇権の行使に対する規制にあり、それゆえ、解 雇の是非を判断するに際しては、使用者の主観 的要素を極力排除し、客観的事情に裏打ちされ ることが従来強く求められてきたことは周知の 通りである。これに照らせば、上述した本判決 の姿勢は、これまでの整理解雇法理に比して、

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右の要睾明を大いに緩和しかねないものとして受 け入れ難い。 また、右②における検証は、判旨仙で設定さ れた二要件間の関係・役割分担が暖昧あるいは

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不明瞭であることも示しており、本判決の理論 的一貫性には疑念を抱かざるをえないのである。 ㈹本研究は、紙幅の関係上、本判決のメイ ンストリームに焦点を絞って検討するに留まっ たが、当該判断には、右でふれた点以外にも考 察を要する判示・論点がなお含まれている。そ れらについても言及する本判決の評釈として橋 本陽子・ジュリスト’二○八号(二○○一年) 二七二頁がある。

四基準の法的性格については、従来「要件」 るまでもなく、本件解雇は……無効」と言及して いるからである。 (3)かかる判示の原型は、すでに整理解雇判例のリ ーディングケースとされる東洋酸素事件控訴審判 決(東京高判昭五四・’○・二九労民集一一一○巻五 号一○○二頁)に見て取ることができる。 (4)ちなみに、この事件は、本件を担当した鈴木正 紀裁判官が単独で判断している。 (5)土田道夫「解雇権濫用法理の法的正当性」労研 四九一号(二○○一年)四頁も同旨と思われる。 とくに七、’四頁を参照。 (6)本判決の各所に散りばめられた。企業経営上』 の観点」との表現が、そのことを推測させる。 (7)その一端として、本判決では、従来の整理解雇 法理の第四基準たる解雇手続の妥当性につき、| 言もなされていない点を指摘できる。 (8)ナショナル・ウエストミンスター(第二次仮処 分)事件決定から本判決に至るまでに、本判決と 同様の二要件を設定して判断した労働大学事件・ 東京地裁決定(平一一一・五・二六労旬一四八一二号 六○頁)がある。同決定は、第二要件たる「均衡」 に関する説示の後に「解雇回避努力」を独立した 検討項目として掲げられており、両者の関係が明 確に位置づけられていない(同誌六九頁参照)。な お、右決定も、本件を担当した鈴木正紀裁判官が

単独で判断していることを付記する。

労、法⑪旬報

判例研究/尼崎築港取件・東京地翻判決

参照

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