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韓国語の過去連体形について ―

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(1)

研究ノート

韓国語の過去連体形について

― 던 と - 았 / 었던 の違いを中心に―

永 原   歩

1.

 はじめに

日本語において大部分の連体形は終止形と同じ形態をとるが、韓国語では語 幹に連体形語尾が接続し、基本形とは全く異なる形態をとる。動詞の連体形は 時制によっても異なる。さらに過去の連体形は以下のように

3

つの形態を持つ。

1

) 내가 마신 우유는 맛없었다

.

私が飲んだ牛乳はまずかった。

2

) 내가 마시던 우유는 맛없었다

.

私が飲んでいた牛乳はまずかった。

3

) 내가 마셨던 우유는 맛없었다

.

私が飲んだ(飲んでいた)牛乳はまずかった。

日本語に置き換えるとするとすべて「私が飲んだ(飲んでいた)牛乳はま ずかった」となる。この過去連体形は日常会話でも頻繁に登場するが、その 違いについて日本で出版されているテキストなどではそれほど明確な説明が なされていない場合が多く、中級以上の学習者でも使い分けるのが難しいよ うだ。特に例(

2

)(

3

)にみられるようないわゆる過去回想連体形「

-

teon

」は、語幹にそのまま接続する場合と、「

-

았던

assteon/-

었던

eossteon

1

1本稿では特に区別する必要がない場合、過去形に「-」がついた形態を「- 던」で代表させる。

(2)

のように過去形に接続する場合がある。上記の例(

2

)では、「私が(頻繁に

/

途中まで)飲んでいた牛乳は…」という意味になり、(

3

)では「私が(過 去に)飲み終えた牛乳は…」という意味と「私が(過去に継続的に)飲んで いた(今は飲んでいない)牛乳は…」という意味になる。このように訳文に 意味の違いを表しにくいことからもわかるように、これらの例は非母語話者 である学習者にとって用法上の区別が非常に難しい2。それにもかかわらず、

この過去回想連体形は、韓国で出版されている文法書でも、日本で出版され ているテキストにおいても、用法の説明が十分とは言えない。本稿では特に この過去回想形を中心に先行研究やテキストでの説明を検証し、用法の観 察、分析を行うことを目的とする。

2.

 先行研究と問題点

まず、既存の文法解説書や教科書での「

-

」についての記述を見てみた い。

韓国で出版されている文法書では、남기심

Nam Gisim

2001: 356

)で

-

」は「先語末語尾「더

teo

」と同様に過去のある時点を基準としその時の 出来事を表す」3とされている。さらに「過去のある時点の進行中、あるいは行 為が完結した状態、または過去のある時点での状態が中断していることを表 す」と述べられており、語幹の時制については以下のように説明されている。

4

) 

-

었던に接続する場合は「その時点ですでに行為や状態が完結している ことを表すことができる」(남기심

2001: 356

5

) 

-

に接続する場合は「その時点の状態や進行中だったことを表す」(남 기심

2001: 357

2남주연Nam Juyeong2012: 28でも「韓国語の連体形語尾は韓国語教育の初級 段階から教育されるにも関わらず、上級段階に至るまで持続的に誤用が頻繁に起 こる文法項目である」と述べられている。

3韓国語で書かれた引用文や用例の日本語訳は特に断りがない限り、著者が訳した ものである。

(3)

韓国・国立国語院(

2012: 397

)では、以下の(

6

)のように説明および例 を挙げているが、語幹の時制については特に言及していない4

6

) 

名詞を修飾して、過去の出来事や行為、状態をもう一度思い出した り、その出来事や行為、状態が完了しないで中断された、未完の意を 表したりする。

a.

 당신이 떠나던 날 밤새 눈이 내렸습니다

.

あなたが去った日、夜通し雪が降っていました。

b.

 이제부터는 하고 싶던 일을 할 것이다

.

今からやりたかったことをやるつもりだ。

c.

 착하던 아이가 왜 이리 부모 속을 썩이지

?

優しかった子が何故こんなに親の頭を悩ませるのか。

d.

 아이들이 뛰놀았던 공터에 상가가 들어섰어

.

子どもたちが遊び回っていた広場に店が立ち並んだよ。

白峰子(

2004

)では、以下の(

7

)(

8

)のように説明されているが、この 説明では両者の違いはあまりはっきりしない。

7

) 

-

過去の動作の進行や動作の日常性(習慣的行為)について話者が見た り感じたり経験したことを回想して言うことを表す。(白峰子

2004:

249

4国立国語院(2012: 397)では、過去回想の連体形と過去連体形の違いについて は「動詞の語幹の後ろに付く--は、過去の事実を現在話しているという点 では共通点がある。しかし-が過去に完了していない行為、すなわち未完の意 を表すのに対して-は今現在の状態に照らして過去に完了した行為を述べる場 合に用いられる。」として、以下の用例を挙げている。

a. 어제  마시던  우유가  어디에  갔지?

  昨日飲んだ飲みかけた牛乳はどこに行った?

b. 어제  마신  우유가  무엇이었지?

  昨日飲んだ飲み終わった牛乳はなんだったっけ?

(4)

8

) 

-

었던

過去の時間に完了した動作を話者が見るか、経験し、それを回想して 報告することを表す。(白峰子

2004: 250

両者の違いについては、「

-

(았

,

)던の完了形時相語尾

-

(았

/

) は主語の動作完了を表し、

-

던は話者の過去の経験を表すものと考えれば理 解しやすい」としているが、これももう少し細分化して考える必要があるだ ろう。

이익섭

I Ikseop

・채완

Che

Wan

1999: 288

)は「

-

」について過去時制 の「

-

/

」と比較して、「終わることなく中断された状態を表す」として いる。また、瞬間動詞と共起しないため、「

-

 있다(~ている)」と結合で きない動詞にも「

-

」が結合できない傾向が見られるが、これも同じ理由 で説明できる」(

288

)としている。しかし「

-

었던」については「ʼ

-

ʼに比 べて何らかの他の意味を持っているのかどうかはそれほどはっきりしない」

としたうえで、「「

-

었던」が「

-

」よりもさらに過去のことを表しているよ うだ」と説明するに留まっている。

生越(

2000

/

2011

:

111

では、「動詞の過去回想形は、主として現在は行っ ていない過去の(継続した)行為に対して使われる」と説明した上で「話し 言葉では、回想連体形~던の代わりに過去形に던の付いた形~았던

/

었던

/

였던がよく使われる」5と説明しており、これは남주연(

2012

)の口語コーパ スの分析からも明らかになっている事実だが、話し言葉か否か、という基準 だけでは使い分ける上では不十分だと思われる。

また、

-

-

었던が付く用言の種類について分析・言及している文法書、

テキスト、論文が少ない中、野間・金珍娥(

2004

)では過去連体形語尾の

-

eun

」について「…した…」の意の「過去完成連体形」であるとし、

-

5さらに形容詞に付く「-」についても生越(2000/2011: 119)では「動詞の場合 と同様、話し言葉では、過去連体形~던の代わりに過去形に던の付いた形~았 던/었던/였던がよく使われる」としている。

(5)

については、存在詞、形容詞、指定詞に付く

-

았던

/

었던を動詞の「

-

」と 同様に「過去完成連体形」としている。

さらに남주연(

2012

)は、動詞に限らず、形容詞、指定詞につく

-

-

던の違いについて、口語コーパスから用例を抽出、分析している。その中 で、

-

については「形容詞と動詞の両方において、[持続]の意味を付与す るという点で根本的に同じだ」としたうえで、

-

었던が形容詞に結合する場 合は、「過去回想の意味を明瞭にしようとするときに使用する傾向が強い」

としている。さらに形容詞や있다、없다に

-

던が後続する場合は、過去の状 態の[持続]を強調しており、

-

었던が後続する場合は、過去の特定の時点 に焦点をおいて[経験]の有無を強調していることを明らかにした。

先行研究から、

-

-

었던の意味について以下のように整理することがで きる。

9

) 

-

①その時点の状態や進行中だったことを表す。(남기심)

②過去の動作の進行や動作の日常性(習慣的行為)について話者が見 たり感じたり経験したことを回想して言うことを表す。(白)

③[持続]の意味を表す。(남주연)

10

) 

-

었던

①その時点ですでに行為や状態が完結していることを表すことができ る。(남기심)

②過去の時間に完了した動作を話者が見るか、経験し、それを回想し て報告することを表す。(白)

③「

-

었던」が「

-

」よりもさらに過去のことを表している。(이익 섭・채완)

④形容詞につく場合は過去回想の意味を明瞭にしようとする傾向。

(남주연)

⑤[経験]の有無を強調。(남주연)

(6)

本稿では先行研究で明らかにされている

-

-

었던の違いを確認した上 で、第

3

節以降で実際の用例を用いて、

2

つの形態の用法を観察し、整理し ていく。本稿で用いる用例は、新聞、インターネットニュース、小説、エッ セイから抽出したものである。

3.

 動詞に接続する

-

-

었던

本節では、先行研究で示された-던と-었던の違いが、動詞に接続する用 例でどのように現れているかを検証したい。

3.1

 動詞語幹に

-

が接続する場合

まず語幹にそのまま

-

が接続する場合を見てみたい。以下の例(

11

)~

13

)のように、日本語で「~ていた」と訳すことができるのが特徴である。

11

) 

 사람은 

'

언젠가 우리들의 식당을 차리자

'

 약속했다

.

힘든 줄 모르고 일하던 시절이었다

.

(朝

110616

6

二人は「いつか私たちの食堂を出そう」と約束した。辛さも感じるこ となく働いていた時代だった。

12

) 

네가 쓰던 타이프라이터를 내가 잠시 빌려 쓰고 있는데 중고라 그 런지 소리가 커

.

(공

19

7

あなたが使っていたタイプライターを私がちょっと借りて使っている んだけど、中古だからなのか音が大きいの。

13

) 

놀기 위해 운동장을 지키던 홍원이는 항상 또래 아이들이 필요했 다

.

(엄마

85

遊ぶために運動場を守っていたホンウォンはいつも同世代(の子ど も)が必要だった。

6新聞記事については掲載日を「西暦の下2けた+月+日」の6ケタの数字で示

7す。小説、エッセイについてはページ数を数字で示す。

(7)

つまり上記の例(

11

)~(

13

)は、先行研究でも「進行中」や[持続]の意 味があるとして指摘されていたように、その動作が一定期間続いていたこ と、繰り返されたことを表している。

이익섭・채완(

1999

)では、このような

-

던について動作の進行を表す

-

 있다(~(し)ている」と共起する動詞との関連性を指摘していたが、

その指摘の通り、以上の

3

つの例は、それぞれ以下のように

-

 있다文とし ても成立可能である。

14

) 

 사람은 힘든 줄 모르고 일하고 있었다

.

二人は辛さも感じることなく働いていた。

15

) 

네가 타이프라이터 쓰고 있었다

.

あなたがタイプライターを使っていた。

16

) 

홍원이는 운동장을 지키고 있었다

.

ホンウォンは運動場を守っていた。

さらに以下の例は、動作の継続という点では上記の例とよく似ているが、

習慣的に繰り返される動作を表すものである。

17

) 

나 는 어 쩔 수 없 이 큰 아 이 가 된 아 이 입 장 을 헤 아 리 고 의 젓 하 게 혼자 하던 밥 먹기

,

 대소변 가리기

,

 옷 입기를 친찬했다

.

(엄 마

51

私は意志と関係なくお姉ちゃんになった子どもの立場をくみ取って、

しっかりと自分でやっていた食事、トイレ、着替えを褒めた。

18

) 

떡만 파는 줄 알았는데 방앗간에서 엿기름도 팔아요

.

밥에 넣어 먹 던 보리에 싹을 낸 거래요

.

(엄마

75

餅を売るだけかと思っていたけれど、精米所で麦芽も売っているんで すね。ご飯に入れて食べていた麦を発芽させたものなんだって。

(8)

また以下の例は、例(

11

)~(

13

)と同じように日本語では「~ていた」と 訳せるが、直前まで動作が継続しており、中断されたことを示す例である。

19

) 

당시 경찰 간부시험에 응시해 합격 소식을 기다리던 김씨는 

'

나라 를 위 한 특 수 한 일 을 하 게 될 것

'

이 라 는 통 지 를 받 았 다

.

(朝

110430

当時、警察幹部試験を受験し、合格の知らせを待っていたキム氏は

「国のため特殊な仕事をすることになる」という通知を受けた。

20

) 

나 는 아 빠 와 통 화 하 던 휴 대 폰 을 손 에 쥔 채 창 밖 을 내 다 보 았 다

.

(공

24

私は父と通話していた携帯電話を手に握ったまま窓の外を見ていた。

例(

19

)(

20

)は共に、それぞれ「통지를 받았다」「창밖을 내다보았다」 という後続文の時点では

-

던で示された動作(기다리다・통화하다)が中断

(あるいは終了)した直後である。このような例を見ると、

-

自体に「中 断」の意味があるわけではないが、

-

던は直前まで継続的に行われていた動 作をも表すことができると言える。

以下の例(

21

)は、文面から主語が複数なのか、動作が繰り返されたの かはわかりにくいが、おそらく習慣的・継続的に行われていた行為であると 考えられる。

21

) 

고등학교 때 수학여행을 간 홍원이는 울주 반구대 암각화를 만지 며 그것을 조각하던 수천 년 전 청동기시대 사람과 시간을 달라 도 같은 공간에 있다는 사실에 전율을 느꼈다고 했다

.

高校の時修学旅行に行ったホンウォンは蔚州・盤亀台の岩の壁画を触 り、それを彫刻した数千年前の青銅器時代の人と、時間は違っても同 じ空間にいるという事実に戦慄を感じたと言った。

(9)

以上の例から

-

は、先行研究で示された通り、「進行中の動作」「習慣的 行為」を表すと言えるが、さらに直前まで継続的に行われていたことも表す ことがわかる。

-

は「過去回想の連体形語尾」といわれるが、

-

が示す

「過去」の幅はかなりの広範囲に及んでいる。

3.2

 動詞語幹に

-

었던が接続する場合

次に過去形の語幹と接続する「

-

었던」の例を見てみたい。先行研究では、

「行為や状態の完結」「経験があること」「

-

던よりも過去のこと」を表すとさ れているが、実際にはそれよりももう少し細かく分類することができそう だ。

以下は過去に断続的に繰り返されていたが現在は行われていないことを表 す例である。

22

) 

아이는 어린  시절 원 없이 해  보았던 그 비 놀이의 기억을 지 울 수 없을 것이다

.

(엄마

73

子どもは幼いころ思い切りやってみたあの雨遊びの思い出を消すこと ができないだろう。

23

) 

초등학교

1

학년 때 밖에서 뛰어놀다가 집에 돌아오면 술 항아리에 서 막 퍼먹었던 기억이 납니다

.

(朝

100909

小学校

1

年生の時、外で遊び回って家に帰ってくると、酒の甕から 勝手にすくって飲んだのを思い出します。

上記の例(

22

)(

23

)は、それぞれ「幼いころ雨が降るたびにやってみた 雨遊び」「家に帰って来るとすくって飲んでいた記憶」という内容で、これ らは連続的・継続的ではないものの、不定期に何度か行われた経験を示して いる。そして、その行為は、その後現在に至るまでのある時点からは行われ ていない。

さらに以下の例(

24

)(

25

)では、状態の継続、繰り返しなどを表している。

(10)

24

) 

오랫동안 못했던 서예를 다시 배우고

,

 미술사를 공부하고 유화 도 그려보고 싶습니다

.

(朝

100909

長い間できなかった書道ももう一度習い、美術史を勉強し、油絵も描 いてみたりしたいです。

25

) 

"

아직도 안 믿겨져요

.

 엽서를 써 보내고 매일 녹음했던 그 

'

'

 오프닝 멘트를 제가 한다는 게

."

(朝

110613

「未だに信じられません。ハガキを書いて送り、毎日録音していたあ の『星の夜(ラジオ番組名)』オープニングのコメントを私が言うな んて」

例(

24

)は、「오랫동안(長い間)」という副詞が共起しており、過去にあ る状態が継続していたことを表している。例(

25

)では「매일(毎日)」と いう副詞が共起しており、過去に行為が繰り返されていたことを示してい る。先行研究では

-

었던について、

-

던とは異なり、継続や進行というような 意味が特に示されてはいなかったが、実際にはこのような例が存在する。

以下の例(

26

)(

27

)は、発話時よりも前に見聞きした一過性の動作につ いて述べているものである。

26

) 

부 산 에 서 출 발 했 던 윤 씨 는 먼 저 일 본

·

대 만

·

홍 콩 을 거 쳐 동 남 아 해역을 지났다

.

(朝

110608

釜山から出発したユン氏はまず日本、台湾、香港を経て東南アジア海 域を過ぎた。

27

) 

갑자기 엄마가 뉴질랜드로 나를 찾아왔던 생각이 났다

.

(공

43

) 急にお母さんがニュージーランドに私を尋ねてきた時を思い出した。

これらの例は、一時的に行われ、終了する行為であり、発話時にはすでに 完了している。このような動作の場合は

-

었던と結び付く傾向があるようだ。

動詞語幹に

-

었던が接続する場合は、過去に不定期に行われた経験、状態

(11)

の継続、行為の繰り返し、一過性の動作などを表し、いずれも過去のある時 点で完了したことを表している。

4.

 形容詞・指定詞に接続する

-

-

었던

3

節では、

-

-

었던が動詞と接続する場合の用法を見てきたが、ここ では形容詞や指定詞に接続する場合を見てみたい。形容詞・指定詞は一般的 な過去連体形、

-

/

が接続せず、過去を表す場合は必ず

-

-

었던を用い なければならないという点で、動詞の連体形とは異なる8

4.1

 形容詞の場合

以下の例は、形容詞に

-

が接続する例である。

28

) 

정말 몇 년 후 조용하던 그 댁에 아기가 왔다

.

(엄마

29

) 本当に数年後、静かだったそのお宅に赤ちゃんがやってきた。

29

) 

세상 사랑은 혼자 다 받은 듯 사랑스럽던 태경이가 동생이 태어나 자 계속 열병을 앓았다

.

(엄마

51

世の中の愛を一人占めするかのように愛らしかったテギョンが弟が生 まれるやずっと熱病に冒された。

それぞれ「조용하다(静かだ)」「사랑스럽다(愛らしい)」という形容詞 に

-

が接続することで、その当時このような状態が続いていたことを示し ている。例(

29

)では「몇 년 후(数年後)」、例(

30

)では「동생이 태어 나자(弟が生まれるや)」という句と共起しているが、その後も同じ状態が 続いたかどうかについては、この文では特に含意されていない。

次に

-

었던の例を見てみたい。

8先行研究でも触れたが、野間・金珍娥(2004)では、存在詞、形容詞、指定詞 に付く「-았던/었던」を動詞の「-」と同様に「過去完成連体形」としている。

(12)

30

) 

공부의 유난히 관심이 많았던 열두 살 아순타 씨는 부모님을 설득 한 끝에 이태석 신부가 세운 학교에 입학할 수 있었습니다

.

(연

141009

勉強に人並み外れて関心が多かった(強かった)

12

歳のアスンタさ んは両親を説得した末、イ・テソク神父が建てた学校に入学すること ができました。

31

) 

설계 의뢰에 심드렁했던 건축가를 도면 앞으로 이끈 마력(魔力)

은 자연

,

 그 한 가지였다

.

(朝

110429

設計の依頼に気乗りしなかった建築家を図面の前に導いた魔力は自 然、それ

1

つだった。

これらの例で

-

던が示しているのは、例(

30

)では、「

12

歳」の時の状況を表 しており、例(

31

)もまた「図面の前」に来る前の状況を表している。このように 形容詞語幹に

-

었던が接続する例は、過去の一時的な状態を表しており、動詞 の過去連体形

-

/

と同様に単純な過去を示す用法だと考えることができる9

4.2

 指定詞

남주연(

2012: 52

)で、「口語コーパスでは指定詞이다は

-

었던とは結びつ

くが

-

とはあまり結び付かない」、との指摘がなされているが10、書き言葉の 用例では、以下のように指定詞の現在形語幹に

-

던が付いた例が見られた。

32

) 

그 가 다 시 부 산 과 인 연 을 맺 은 것 은 

59

세 이 던

1996

.

(朝

100909

彼が再び釜山と縁を結んだのは

59

歳だった

1996

年。

9 形容詞に接続する--었던について、ネイティブスピーカーへの調査でも- 던がつく場合は単純な過去、-がつく場合は過去に一定期間続いていた状況を 表すという回答が得られた。

10남주연(2012: 52)では、指定詞に-が接続する例が多くない理由として、「過 去に経験した事実を断定したり指定するʻ이다ʼやʻ아니다ʼがʻ 持続性 ʼを表す 上で多くの制約が生じることを表している」としている。

(13)

33

) 

우선 방송 

20

주년이던

1989

 시작했다가 

1998

년을 끝으로 열리 지 않고 있는 

'

 콘서트

'.

(朝

110613

まず放送

20

周年だった

1989

年に始まり、

1998

年を最後に開催され ていない「ジャム・コンサート」。

これらの例はいずれも「

59

(歳)」「

20

주년(周年)」のように時間を表 す名詞が、「〇〇年」を表す名詞を修飾している。つまり

-

と接続する指定 詞の名詞と後続する被修飾句は同等の内容を表している。さらにこれらの例 は

-

었던を用いてもほぼ同じ内容を表すことができる。

次の例は時間ではない名詞句が

-

던と結びついているものである。

34

) 

온  우주이던  엄마  곁을  웬  아이가  와서  차지하고  누워  엄마의  온 갖  보살핌을  다  받으니  엄마가  얼마나  야속하고  동생이  얼마나  미 울까 .(엄마

51

全宇宙だった母親の横に何だか知らない子供が来て陣取って寝てい て、母の手厚い世話をずっと受けているのだから、母がどれほど恨め しく、弟がどれほど憎いだろうか。

この例は弟が生まれた時の姉の心境を説明したものだが、「온 우주(全宇 宙)」は「엄마(母)」を例えたものであり、やはりこの例

2

つの名詞句が同 等の内容を示しており、

-

었던との入れ替えが可能だと思われる。

しかし、一方で指定詞が最初から

-

었던と結びついている例では、そのよ うな関係が成立しにくいと思われる。

35

) 

그러니까 한 때 같은 몸이었던 두 사람만이 느낄 수 있는 어떤 끈 이 팔 년의 세월 그거 별거 아니야 하는 듯 우리를 뛰어넘고 있었 다

.

(공

44

だから一時一つの体だった

2

人だけが感じることができる、何らか

(14)

の絆が、

8

年の歳月をそんなのたいしたことないよ、と言うかのよう に私たちを飛び越えていた。

36

) 

그는 평북 영변이 고향이었던 김소월의 시와 평안도 소리와의 친 연성(親然性)을 예로 들었다 .(朝

110627

彼は平北・寧辺が故郷だった金素月の詩と平安道の民謡との類似性を 例に挙げた。

この

2

つの例のうち、例(

35

)は親子の関係であり、母親のお腹の中で過 ごしていたという意味で「한 몸이었던(一つの体だった)」という現在から見 た過去の一時の事実を示している。さらに例(

36

)は過去の状況であるが現在 も変わらない事実を示す例である。つまり、指定詞に

-

었던が接続する場合、

過去に事実が発生した時点に着目していると言える。そしてこれらの

-

었던の 例は

-

と交替すると不自然に感じられることから、形容詞の場合と同様に動 詞の過去連体形

-

/

은に相当する単純な過去を示しているものと考えられる。

5.

 おわりに

以上、先行研究を参考にしながら、

-

-

었던の意味について用例を用い て観察した。その結果、

-

던も

-

었던も、接続する品詞が動詞かその他の用言 かによって、用法の違いがみられた。表

1

は、本稿の観察によって見られ た

-

던と

-

었던の品詞別の用法の違いを表で示したものである。

本稿では、先行研究や既存のテキストの解説と、実際に

-

-

었던が用い られた用例を照らし合わせるという方法で観察・分析を試みたが、今回は大 まかな全体像を観察するに留まり、連体形に用いられる動詞や形容詞の細か い分類や被修飾名詞の内容などについては十分に観察できなかった11。今後 の課題として、

-

と被修飾名詞の種類や関係についてもさらに分析を進め たい。

11過去連体形と共起する被修飾名詞の頻度を調べた研究としては金民(2014)が ある。

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参考文献

◆日本語

生越直樹(2000/2011)『ことばの架け橋 改訂版』白帝社 韓国・国立国語院(2012)『標準韓国語文法辞典』アルク

金民(2014)「現代朝鮮語の動詞の連体形と被修飾名詞に関する研究―ʼhanʼ(…した)

連体形と高い頻度で現れる名詞―」『朝鮮学報』第231輯,朝鮮学会 野間秀樹・金珍娥(2004)『Viva! 中級韓国語』朝日出版社.

◆韓国語

남기심(2001)『현대국어 통사론(現代国語統辞論)』太學社,ソウル.

남주연(2012)『ʻ-ʼ과 ʻ-었던ʼ의 의미 차이(ʻ-teonʼとʻ-eossteonʼの意味の違い)』

「한국어 의미학(韓国語意味学)」38한국어의미학회(韓国語意味学会),ソウ ル.

이이섭・채완(1999)『국어문법론강의(国語文法論講義)』學研社,ソウル.

【用例出典】*括弧内は本文中での略称

(朝)「朝鮮日報データベース」http://srchdb1.chosun.com/pdf/i_service/

(연)「聯合ニュース」http://www.yonhapnews.co.kr/

(공)공지영『즐거운  나의  집』푸른숲,2007

(엄마)서형숙『엄마학교』큰솔,2006

キーワード

連体形、過去連体形、過去回想、時制 表1 --었던の用法

- -었던

動詞 進行中の動作 習慣的行為

直前まで継続的に行われていた行為

過去に不定期に行われた経験 状態の継続・行為の繰り返し 一過性の動作

(いずれも過去のある時点で完了)

形容詞 過去の継続的な状態 過去の一時的な状態(動詞の過去 連体形に相当)

指定詞 指定詞の名詞と後続する被修飾句 の名詞が同等の内容を表す傾向

(-었던との入れ替えが可能)

過去に発生した事実(動詞の過去 連体形に相当)

参照

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