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田 中 修 著 ﹃ 日 本 資 本 主 義 と 北 海 道 ﹄

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(1)

︹書 評 と 孝 介 ︺

田 中 修 著 ﹃ 日 本 資 本 主 義 と 北 海 道 ﹄

岩 信 竹

明 治 以 後 の 日 本 資 本 主 義 の 発 展 の 中 に ' 北 海 道 が 占 め た 位 置 が 大 き な (‑ ) も の で あ る こ と は ' 開 拓 使 の 諸 調 査 や ' そ れ ら を 分 析 し た 山 口 和 雄 氏 の (2 ) 研 究 等 に ょ り 明 ら か に さ れ て い る 。 従 っ て 北 海 道 の 歴 史 的 動 向 を 知 る こ

と は ' 日 本 資 本 主 義 の 歴 史 的 特 質 を 把 握 す る た め に も 不 可 欠 で あ り ' 特

に ' 北 海 道 と 密 接 な つ な が り を 持 つ 地 域 の 分 析 に 北 海 道 の 知 識 は 欠 か チ

こ と は で き な い 。 本 書 は ' 長 年 に わ た り 北 海 道 史 研 究 を 続 け て こ ら れ た

著 者 が ' こ れ ま で 発 表 さ れ た 論 文 の う ち か ら 選 ば れ た 諸 編 に ' 書 き 下 ろ

し の 序 章 を 加 え ' 一 書 と さ れ た も の で あ り ' 北 海 道 及 び 北 海 道 と 密 接 な

地 域 の 近 代 史 研 究 に 関 心 を 持 つ 者 に と っ て ' 必 読 文 献 と 言 っ て よ い 著 作

で あ る 。 本 書 の 構 成 は 次 の よ う に な っ て い る 。

研 究 史 と 課 題

第 一 章 い わ ゆ る 辺 境 概 念 を め ぐ る 諸 問 題

第 二 章 北 海 道 工 業 史 の 時 代 区 分

第 三 章 資 本 主 義 確 立 期 北 海 道 に お け る 労 働 形 態 ‑ 囚 人 労 働 を 中 心

と し て ‑ 第 四 章 明 治 初 期 北 海 道 に お け る 鉱 山 政 策 ‑ 幌 内 炭 山 の 官 営 を め ぐ

っ て ‑

第 五 章 幌 内 炭 鏡 鉄 道 の 官 営 と 「北 炭 」 の 成 立

第 六 章 場 所 請 負 制 度 の 解 体 と 三 井 物 産 ‑ 栖 原 家 の 場 合 を 中 心 と し

て ‑

あ と が き

本 書 の 諸 章 は ' 北 海 道 史 の 研 究 史 を 整 理 し ' 課 題 設 定 を 行 っ た 序 章 の

ほ か ' 第 一. 章 の 方 法 論 的 部 分 と ' 第 二 章 以 下 の 実 証 部 分 よ り 成 り ' 序 章 '

第 一 章 が 本 書 の 導 入 部 分 で あ る と 言 え る 。 以 下 ' 内 容 を 検 討 し て ゆ き た

本 書 は 序 章 に ょ れ ば ' 「北 海 道 を 日 本 資 本 主 義 の 植 民 地 = 辺 境 と し て

と ら え る 立 場 か ら 明 治 期 北 海 道 の 産 業 経 済 を 個 別 実 証 的 に 分 析 し ' こ れ

に ょ っ て 北 海 道 の 経 済 発 展 が 日 本 資 本 主 義 の 発 展 過 程 に お い て 持 っ た 意

味 と 役 割 を ' で き る 限 り 正 確 に 把 握 す る こ と に あ る 」 ( 頁 ) と い う

方 法 論 的 立 場 と 課 題 を 持 つ も の で あ る 。 こ の よ う な 立 論 の 基 礎 の 設 定 は '

研 究 史 の 理 解 に ょ っ て 裏 付 け ら れ て い る も の で あ る 。 著 者 に ょ れ は ' 戟

前 の 北 海 道 史 研 究 は ' 「北 海 道 の 特 殊 性 が い か な る 意 味 を 持 っ て い た の

か ' あ る い は 日 本 が 北 海 道 に と っ て い か な る 存 在 で あ り 北 海 道 に 何 を も

た ら し た の か t と い う 視 角 か ら の 検 討 は ほ と ん ど な か っ た と 言 っ て よ い 」

( 六 五 ) の で あ り ' ま た 戦 後 の 研 究 は ' 拓 殖 史 観 の 克 服 や 「 辺 境 」 概 念

(2)

の 適 用 ' 近 世 史 研 究 の 進 展 な ど の 成 果 を も た ら し た が ' 北 海 道 近 代 史 研

究 の 課 題 は な お 残 っ て い る の で あ り ' 「方 法 論 や 個 別 具 体 的 実 証 分 析 を '

一 段 と 深 め 豊 富 に す る こ と が 何 に も ま し て 必 要 」 ( 一 〇 頁 ) と さ れ る の

で あ る 。

方 法 論 と し て の 辺 境 論 及 び 植 民 地 論 を 論 じ た 第 一 章 に お い て は ' 辺 境

を め ぐ る 今 日 の 諸 見 解 や ' 古 典 の 中 で の 辺 境 や 植 民 地 に つ い て の 規 定 '

更 に 北 海 道 が 「自 由 な 植 民 地 」 と 見 な し う る か 等 が 三 節 に わ た っ て 検 討

さ れ ' 本 書 が 主 と し て 問 題 と す る 「自 由 な 植 民 地 」 に つ い て の 「 自 由 な

土 地 ‑ 自 由 な 移 民 1 自 由 主 義 段 階 」 ( 四 〇 頁 ) と し て 図 式 化 で き る メ ル

クマ

ー ル の 指 摘 や ' 他 の 段 階 の 植 民 地 と の 差 異 の 指 摘 が 行 わ れ ' 更 に '

植 民 政 策 の ' 資 本 主 義 の 発 展 段 階 に 対 応 し た 変 遷 も 指 摘 さ れ ' 「自 由 主

義 の 段 階 に お い て は ' 植 民 地 は 産 業 資 本 の た め の 原 料 市 場 ' 販 売 市 場 と

し て の 地 位 を 与 え ら れ 」 (四 一 頁 ) る こ と な ど が 指 摘 さ れ る 。 ま た ' こ

の よ う に 規 定 さ れ る 自 由 主 義 段 階 の 植 民 地 は ' 帝 国 主 義 の 展 開 に 伴 な い '

帝 国 主 義 段 階 の 植 民 地 に 移 行 し て ゆ ‑ と さ れ る 。 更 に ' こ の よ う な 規 準

に 照 ら し て 北 海 道 の 近 代 史 を 概 観 す れ ば ' 一 八 九 〇 年 頃 か ら 一 九 二 〇 年 頃

ま で の 約 三 〇 年 間 が ' 自 由 な 植 民 地 の 時 期 で あ っ た と さ れ る (五 三 頁 )0

日 本 資 本 主 義 の 発 展 段 階 と 北 海 道 の 位 置 の 対 応 関 係 の 分 析 は ' 第 二 章

で も 行 わ れ て い る 。 こ こ で は ' 日 本 資 本 主 義 の ' 資 本 の 原 始 的 蓄 積 期 '

産 業 資 本 確 立 期 ' 独 占 資 本 主 義 形 成 期 ' 独 占 資 本 主 義 確 立 期 ' 国 家 独 占

資 本 主 義 成 立 期 の 五 つ の 時 期 区 分 を 前 提 に し て ' そ れ に 対 応 す る 北 海 道

拓 殖 政 策 の 変 遷 と 北 海 道 工 業 の 展 開 の 概 要 が 述 べ ら れ た 後 ' 北 海 道 工 莱

史 の 時 期 区 分 が 行 わ れ て い る 。 そ の 時 期 区 分 は ' 官 営 期 ( 一 八 七 二 ‑ 八 五 年 ) ' 生 成 期 ( l 八 八 六 ‑ 1 九 〇 五 年 ) ' 発 展 期 ( l 九 〇 六

T 九 午 )

再 編 成 期 ( 一 九 二 〇 ‑ 三 〇 年 ) ' 準 戟 時 ' 戟 時 体 制 期 ( 一 九 三 一 ‑ 四 五

午 ) の 五 つ の 区 分 よ り 成 り ' 更 に 生 成 期 が ' 資 本 保 護 導 入 期 ( 一 八 八 六 ‑

九 五 年 ) ' 民 業 勃 興 期 ( 一 八 九 六 ‑ 一 九 〇 五 年 ) に ' ま た 発 展 期 が ' 独

占 資 本 進 出 期 ( 一 九 〇 六 ‑ 一 三 年 ) ' 大 戦 好 況 期 ( 一 九 一 四 ‑ 一 九 午 )

に 夫 々 二 分 さ れ て い る 。

第 三 章 以 降 の ' 北 海 道 近 代 史 上 の 特 定 の 制 度 や ' 個 別 経 営 の 実 証 分 析

を 行 っ た 部 分 に 於 い て は ' 著 者 自 ら が 検 証 し た 種 々 の 知 見 が 提 示 さ れ て

い る 。 そ れ ら は ' 詳 細 な 資 料 分 析 の 結 果 導 き 出 さ れ た も の で あ る 。 一 八

八 〇 〜 九 〇 年 代 の 囚 人 労 働 を 取 り 扱 っ て い る 第 三 章 は ' 「隷 奴 的 強 制 労

働 形 態 」 (九 五 頁 ) の 一 つ で あ っ た 囚 人 労 働 研 究 の 必 要 性 を 述 べ ' 課 題

の 設 定 を 行 っ た 第 一 節 ' 囚 人 労 働 投 入 を 行 わ せ る に 至 っ た 政 策 課 題 と 囚

人 労 働 投 入 の 意 義 を 述 べ た 第 二 節 ' 囚 人 労 働 の 実 態 を 解 明 し た 第 三 節 '

囚 人 労 働 使 役 の 一 八 九 〇 年 前 後 の 最 盛 期 以 後 の 衰 退 過 程 に つ い て 論 じ た

第 四 節 よ り 成 り ' 「確 立 し っ つ あ る 本 土 資 本 が 北 海 道 に 流 入 し て ‑ る 時

期 の ‑ ‑ 囚 人 労 働 は ' 日 本 資 本 主 義 が 北 海 道 を 経 済 的 植 民 地 と し て 把 握

し て い ‑ 上 で の 基 礎 的 労 働 形 態 」 ( 一 四 〇 ‑ 一 頁 ) で あ っ た こ と が 明 ら

か に さ れ て い る 。

幌 内 炭 山 の 官 行 に 至 る 過 程 を 取 り 扱 っ た 第 四 章 で は ' 1 八 七 〇 年 以 降

の 開 拓 事 業 展 開 の 中 で の 鉱 山 政 策 の 推 移 (第 一 節 ) や ' 幌 内 炭 山 開 発 に

つ い て の 政 策 動 向 ' 官 営 に 至 る 経 過 (第 二 節 ) が 述 べ ら れ ' 開 拓 使 に ょ

る 明 治 初 年 の 鉱 山 政 策 が ' 御 雇 外 国 人 ケ プ ロ ン の 帰 国 を 契 機 と し て 一 八

七 五 年 に 転 換 し ' 鉱 山 官 行 方 針 の 受 入 が 確 定 し た こ と な ど が 明 ら か に さ

59

(3)

れ て い る 。

一 方 ' 官 営 幌 内 炭 碗 鉄 道 の 草 創 か ら 払 下 に 至 る 経 過 を 取 り 扱 っ た 第 五

章 は ' 幌 内 炭 山 出 炭 及 び 手 宮 ‑ 幌 内 大 間 ( 五 六 ・ 七 マ イ ル ) の 鉄 道 の 建

設 の 経 過 や ' 一 八 八 三 年 の 両 者 の 統 合 に つ い て 述 べ た 第 一 節 ' 炭 碗 鉄 道

経 営 を 概 観 L t 初 期 の 石 炭 販 売 に つ い て 述 べ 、 ま た ' 営 業 収 支 の 年 次 別

分 析 や ' 収 入 ' 支 出 の 内 訳 の 分 析 ' 炭 頗 ' 鉄 道 の 夫 々 の 営 業 の 内 容 等 の

解 明 等 を 行 っ た 第 二 節 ' 一 八 八 六 年 の 北 海 道 庁 設 置 以 後 の 動 向 や 炭 硬 の

集 治 監 へ の 移 管 な ど の 改 革 ' 石 炭 販 売 の 民 間 委 託 ( 一 八 八 七 年 ) ' 北 有

社 へ の 鉄 道 貸 下 ( 一 八 八 八 年 ) 等 の 経 過 を 述 べ た 第 三 節 ' 新 会 社 設 立 へ

の 動 き や 払 下 出 願 ' 払 下 の 実 現 と 「北 炭 」 の 成 立 等 に つ い て 述 べ た 第 四

節 、 章 の ま と め を 行 っ た 第 五 節 よ り 成 る 。 第 五 節 で は 「 日 本 に お け る 原

始 的 蓄 積 過 程 の 北 海 道 に お け る 発 現 」 ( 二 七 一 頁 ) と も い う べ き ' 官 営

幌 内 炭 碗 鉄 道 の 創 業 か ら ' 払 下 、 そ し て 「 北 炭 」 の 成 立 に 至 る 過 程 の 特

徴 と し て ' そ れ ら を 貫 ぬ く 拓 殖 政 策 と し て の 性 格 と ' 払 下 が 公 示 ' 入 礼

の 形 を 採 ら な か っ た こ と の 二 点 が 指 摘 さ れ て い る 。

旧 場 所 請 負 人 の 経 営 の 推 移 と 三 井 物 産 の 漁 業 経 営 へ の 関 与 を 取 り 扱 っ

た 第 六 章 は ' 幕 末 に お け る 大 場 所 請 負 人 栖 原 家 の 江 戸 時 代 及 び 明 治 初 午

の 営 業 活 動 を 概 観 し た 第 一 節 ' 三 井 組 の 北 海 道 へ の 進 出 過 程 を 述 べ た 第

二 節 ' 漁 獲 物 委 託 販 売 契 約 の 段 階 ( 一 八 八 五 ‑ 九 〇 年 ) ' 物 産 に ょ る 栖

原 経 営 管 理 の 段 階 ( 一 八 九 一 ‑ 九 四 年 ) ' 物 産 に ょ る 栖 原 漁 場 直 接 経 営

の 段 階 ( 一 八 九 年 以 降 ) の 各 段 階 ご と に ' 三 井 物 産 と 栖 原 家 の 関 係 を 論

じ た 第 三 節 ' 旧 場 所 請 負 人 で 昆 布 採 取 業 を 営 む 小 林 家 と 三 井 物 産 の 関 係

に つ い て 論 じ た 第 四 節 ' 章 の ま と め の 部 分 で あ る 第 五 節 よ り 成 る 。 こ の 章 で は ' 「 場 所 請 負 制 度 廃 止 後 の 栖 原 家 の 巨 大 な 経 営 が ' 三 井 物 産 の 北

海 道 進 出 と と も に そ の 資 金 の 貸 付 ‑ 漁 獲 物 の 一 手 販 売 受 託 の 方 法 に ょ っ

て し だ い に 支 配 さ れ 衰 退 し て い く 」 (三 四 二 頁 ) こ と ' 仕 込 資 金 の 貸 与

を 通 ず る 三 井 物 産 の 経 営 支 配 は ' 他 の 旧 場 所 請 負 人 に つ い て も 言 え る こ

と ' 「 明 治 期 北 海 道 漁 業 の 展 開 過 程 」 (三 四 九 頁 ) は ' 「 旧 請 負 人 に ょ

る 大 経 営 の 漸 次 的 後 退 と 中 小 漁 民 の 進 出 ' そ し て 道 内 外 商 業 資 本 に ょ る

流 通 過 程 か ら の 支 配 の 進 行 の 過 程 と し て 把 握 で き る 」 (同 上 ) こ と な ど

が 指 摘 さ れ て い る 。

以 上 は 本 書 の 一 端 を 紹 介 し た も の に 過 ぎ な い 。 本 書 中 に は 原 資 料 を 醍

使 し た 評 細 な 論 述 が 展 開 さ れ て い る 。 こ こ で ' 若 干 の 論 点 を 提 示 し ' 評

者 と し て の 責 を 果 し た い 。 そ の 一 つ は 辺 境 の 概 念 に つ い て で あ る 。 第 一

章 で の 方 法 論 的 考 察 に お け る ' 植 民 政 策 の 変 遷 が 資 本 主 義 の 発 展 段 階 に

照 応 す る と さ れ る 著 者 の 主 張 は 説 得 力 を 持 つ 。 し か し ' 著 者 の 主 張 は そ

れ に 止 ま る も の で は な い 。 第 二 早 で の 著 者 と 永 井 秀 夫 氏 の 見 解 の 差 異 に

つ い て の ' 「た だ 著 者 の 場 合 に は ' い わ ゆ る 辺 境 の 存 立 の 時 期 を 、 資 本

主 義 の 一 定 の 発 展 段 階 に 求 め る と い う 基 本 的 考 え 方 が 特 色 と な っ て い た 」

( 二 八 頁 ) と い う 指 摘 や ' 第 二 章 で の 永 井 信 氏 の 所 説 批 判 の 文 章 中 の '

「 い わ ゆ る 辺 境 と し て の 性 格 を 失 い つ つ あ っ た 時 期 に ' 氏 の 言 う 「 辺 境

的 工 業 」 の 確 立 を 言 う の は ど う で あ ろ う か 」 ( 八 五 頁 ) と の 指 摘 に 見 ら

れ る よ う に ' 辺 境 は 資 本 主 義 の 一 定 の 発 展 段 階 に の み 出 現 す る と い う 主

(4)

張 が 一 貫 し て 行 わ れ て い る 。

著 者 は 辺 境 を ' 「植 民 の 可 能 性 を 秘 め て い る 地 域 ' つ ま り 「植 民 予 備

地 」 と し て 植 民 政 策 の 対 象 で あ る 地 域 で あ る 」 (三 九 貢 ) と 定 義 さ れ る

の で あ る が ' ま た ' 次 の よ う に 主 張 さ れ る 。 「極 端 な 言 い 方 を す れ ば '

辺 境 そ れ 自 体 は 古 代 か ら 現 在 に 至 る ま で 存 在 す る と 言 っ て も 誤 り で は な

い の で あ る 。 資 本 主 義 の 発 展 の な か で ' 二 つ の 標 識 に よ っ て 特 色 付 け ら

れ た 辺 境 ' 経 済 学 上 の 意 味 で の 植 民 地 と な っ た 辺 境 ' こ れ が わ れ わ れ の

問 題 と し て い る 辺 境 な の で あ る 。 ‑ ‑ い わ ゆ る 辺 境 が 資 本 主 義 の あ る 特

定 の 段 階 に 立 ち あ ら わ れ る と い う 認 識 を 前 提 と し た 上 で 論 ず る の で な け

れ ば ' 意 味 の あ る 議 論 と は 言 い 難 い と 主 張 し た い の で あ る 」 (三 〇 ‑ 一

蛋 ) 。 こ こ で 言 わ れ る 二 つ の 標 識 と は 「経 済 学 上 の 意 味 に お け る 植 民 地 」

に つ い て の ﹃ ロ シ ア に お け る 資 本 主 義 の 発 展 ﹄ で の レ ー ニ ン の 指 摘 で あ

り ' 自 由 な 土 地 の 存 在 と 農 業 生 産 物 の 大 量 の 生 産 に 専 門 化 す る こ と が で

き る こ と の 二 点 で あ る 。 著 者 は 上 記 の よ う に 主 張 さ れ る の で あ る が ' 植

民 地 及 び 植 民 政 策 に つ い て は 既 に 見 た 様 に ' 資 本 主 義 の 変 質 に 対 応 し た

変 質 を 認 め て お ら れ る 。 た し か に ' 著 者 が 問 題 と さ れ る 辺 境 が 資 本 主 義

の 特 定 の 段 階 に 出 現 す る も の で あ り ' 他 の 時 期 の 辺 境 は 取 り 上 げ な い と

言 わ れ る の で あ れ ば ' 首 肯 で き る 。 し か し ' 辺 境 に つ い て の 「意 味 の あ

る 議 論 」 (一 二 〇 頁 ) を 特 定 の 段 階 に つ い て に 限 定 す る 著 者 の 主 張 に は 疑

問 を 持 た ざ る を 得 な い 。 な お ' 辺 境 論 に 関 し て は ' 沖 縄 を 主 た る 素 材 と (3 ) し た 吉 村 朔 夫 氏 の 著 作 も

ある。

本 書 や 吉 村 氏 の 著 作 を 見 る と ' 同 じ ‑ 逮

境 を 論 じ な が ら ' 対 象 と す る 地 域 が 異 な る と 研 究 上 の 交 流 が 全 ‑ な い か

の 感 を 受 け る 。 こ れ は 著 者 の み を 批 判 す る こ と は で き な い も の の ' 問 題

(4)

点 で あ る こ と は 否 定 し 難 い と 思 わ

れる。

第 二 に 問 題 と し た い 点 は ' 方 法 論 的 部 分 と 実 証 的 部 分 の 関 係 に つ い て

で あ る 。 実 証 的 部 分 の う ち ' 第 二 章 の 北 海 道 工 業 の 時 期 区 分 に 関 す る 分

析 は ' 方 法 論 的 部 分 と 整 合 的 で あ る 。 し か し ' 第 三 章 以 下 に 関 し て は '

実 証 の 密 度 が 濃 ‑ ' 今 後 も 研 究 史 上 の 重 要 な 貢 献 と し て の 地 位 を 保 っ て

ゆ ‑ と 思 わ れ る 内 容 で あ る が ' そ れ だ け に ' 方 法 論 的 部 分 と は 独 立 し た

研 究 と し て 見 る こ と が で き る 感 を 持 っ た 。 実 証 を 経 て ' 再 び 方 法 の 意 義

を 確 認 す る 章 ま た は 節 が あ れ ば ' 方 法 論 に 対 す る 理 解 が 深 ま り ' 本 書 全

体 も 理 解 が 容 易 に な る と 感 じ た 。

第 三 の 論 点 は ' 序 章 で 提 起 さ れ た 北 海 道 近 代 史 研 究 の 問 題 に つ い て で

あ る 。 著 者 は 序 章 で ' 北 海 道 近 代 史 研 究 が 近 世 史 の 側 か ら 解 決 を 迫 ら れ

て い る 問 題 と し て ' 「近 世 か ら 近 代 へ の 移 行 に 関 す る 問 題 」

(

〇 頁 )

及 び 「 ア イ ヌ 民 族 の 歴 史 を ' 北 海 道 近 代 史 の な か に ど う 位 置 付 け る か と

い う 問 題 」 (同 上 ) の 二 点 を 指 摘 さ れ た . こ の う ち 第 1 の 問 題 に つ い て

は ' 第 六 章 等 で 分 析 が な さ れ て い る 。 し か し ' 第 二 の 問 題 に つ い て は '

問 題 の 指 摘 の み が 行 わ れ て い る よ う に 思 わ れ る 。 本 書 の 中 で ' 問 題 解 明

へ の 方 向 が 示 さ れ て い れ は と 惜 し ま れ る 。

以 上 の 論 点 の 提 示 や 本 書 の 紹 介 部 分 に 誤 解 が あ れ は ' 著 者 の 御 寛 恕 を

乞 い た い 。 ま た い ‑ つ か の 論 点 の 提 示 に ょ っ て い さ さ か も 本 書 の 価 値 が

損 わ れ る も の で も な い 。 本 書 が ' 多 く の 人 々 に 読 ま れ る こ と を 期 待 し っ

つ ' 稿 を 閉 じ た い 。

注 (‑ ) 開 拓 使 ﹃ 二 府 四 県 采 覧 報 文 ﹄ ' 同 ﹃東 北 諸 港 報 告 書 ﹄ ' 同 ﹃西

南 諸 港 報 告 書 ﹄ 等 。

61

(5)

(2 ) 山 口 和 雄 ﹃明 治 前 期 経 済 の 分 析 ﹄ ' 東 京 大 学 出 版 会 ' 一 九 五 六

年 。 (3 ) 吉 村 朔 夫 ﹃ 日 本 辺 境 論 叙 説 ﹄ ' 御 茶 の 水 書 房 ' 一 九 八 一 年 。 (4 ) こ の 点 に 関 L t 桑 原 真 人 氏 は ' 「 ‑ ‑ 近 代 の 沖 縄 を も 包 摂 す る

理 論 展 開 が 為 さ れ た な ら ば t よ り 説 得 力 の あ る 「 内 国 植 民 論 」 の

提 起 に な っ た と 思 わ れ る 」 (同 「 田 中 修 著 ﹃ 日 本 資 本 主 義 と 北 海

道 ﹄ 」 ﹃史 学 雑 誌 ﹄ 九 五 ‑ 一 〇 ' 九 九 頁 ' 一 九 八 六 年 所 収 ) と 述

べ て い る 。 (北 海 道 大 学 国 書 刊 行 会 ' 1 九 八 六 年 二 月 t A 5 ' 本 文 三 五 四 頁 '

三 五 〇 〇 円 ) (弘 前 大 学 人 文 学 部 教 授 )

参照

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