国有企業 の経営 自主権拡大 と課題
川 井 伸 一一
<目 次構成>
1課 題
2経 営 自主権拡大化の試み 3経 営 自主権拡大の現状 4経 営 自主権 と制約要 因
1課 題
1978年 以 前 の い わ ゆ る 「社 会 主 義 計 画 経 済 」 下 の 中 国 国 有 企 業 は 政 府 行 政 当 局 に よ って経 営 全般 が統 制 され た 文 字 ど お り の国 営 企 業 で あ った。
す な わ ち,国 有 企 業 の生 産 計 画,原 材 料 資 材,製 品 販 売,労 働 力 ・賃 金, 利 潤 分 配 ・資金 運 用 な どの決 定 権 と指 導 監 督 権 が 政 府 行 政 当局 の手 に掌 握
され て い た(い わ ゆ る「五 統 」)。この行 政 官 僚 機 構 に よ る集 権 的 経 営 管 理 は,市 場 を排 除 した指 令制 計 画経 済体 制 を 前 提 と して い たが,そ の経 済 的 不 効 率 は い よ い よ顕 著 な もの とな り,西 側 の 資 本 主 義 市 場 経 済 と の経 済 効 率 ギ ャ ップ もま す ま す拡 大 した。 こ う した歴 史 的 現 実 へ の認識 を踏 まえて, 中国 は78年 末 か ら 「社 会 主 義 」 体 制 内 の経 済 改 革 を 開 始 した 。 そ の 当 面 の経 済 改 革 の方 向 は一 つ は市 場 メカ ニ ズ ムの導 入,も う一 つ は行 政 権 限 の 地 方 ・企 業 へ の分 権 化 に 置 か れ た。
この経 営 管 理 権 限 の地 方 分 権 化 の動 きの も とで,国 有 企 業 の経 営 自主 権 を次 第 に拡 大 す る措 置 が と られ て きた。 本 稿 で は,1980年 代 か ら現 在 ま で の 企 業 経 営 自主 権 の拡 大 状 況 と そ の問 題 状 況 に つ い て政 策 面 と実 態 面 か
ら整理 、 検 討 す る こ とを課 題 と した い。
2経 営 自 主 権 拡 大 化 の 試 み
政 府 の政 策 展 開 か らみ れ ば,経 済 改 革 の 開 始 以 来,今 日 まで の 企 業 経 営 自 主 権 拡 大 化 の 試 み は 四 っ の 時 期 に 分 け られ る。 す な わ ち,第 一 期 は 1978年10月 か らの企 業 基 金 制 の試 行 に始 ま り,そ の後 利 潤 留 保 制,上 納 利 潤 請 負 制 な ど の形 で 試 行 され た。 この時 期 の企 業 の 自主 権 拡 大 は主 と し て 資金(利 潤)留 保 の拡 大 とい う形 で実 施 され た。
第 二 期 は1984年5月 の 「国 営 工 業 企 業 の 自主 権 を い っそ う拡 大 す る こ とに関 す る暫 定 規 定 」(以 下,84年 規 定)の 発 布 か らで,こ の 時 期 は都 市 の経 済 体 制 改 革 の本 格 化 に対 応 しっ っ,所 得 税 制 に基 づ く税 後 利 潤 留 保 権 だ け で な くて10項 目 に わ た る経 営 自主 権 が 初 めて 規 定 さ れ,そ の 権 限 の 拡 大 が 図 られ た。
第 三 期 は1988年4月 に 「全 人 民 所 有 制 工 業 企 業 法 」(以 下,企 業 法)が 成 立 して か らで,企 業 法 は 「全 人 民 所 有 制 企 業 は 自主 経 営,損 益 自己負担, 独 立 採 算 に よ る社 会 主義 商 品生 産 と経 営 の単 位 」 で あ り,「 所 有 権 と経 営 権 の 分 離 の 原 則 に照 ら して 企 業 に経 営 管 理 権 を与 え る」 ことを明 らか に し, 企 業 の 経営 管 理 権 と して13項 目の 企 業 の権 限 を法 律 と して 初 め て 規 定 し た。
第 四 期 は1992年7月 に 「全 人 民 所 有 制 工 業 企 業 経 営 メ カ ニ ズ ム転 換 条 例 」(以 後,92年 条 例)が 公 布 され て か ら現 在 まで で あ る。92年 条例 は, 企 業 法 に基 づ き,そ の 実 施 を徹 底 す る趣 旨 か ら制 定 さ れ,「 企 業 を 市 場 の 要 請 に即 応 させ,企 業 を 法 に基 づ い て 自主 経 営,損 益 自 己負担,自 己発展, 自 己規 制 を す る商 品 生 産 ・経 営 単 位」 「独 立 した 企 業 法 人 」 に す る こ と を
「経 営 メ カニ ズ ム転 換 の 目標 」 と して規 定 した。 この 下 で,14項 目 の 経 営 自主 権 を実 行,保 障 す る こ とが 規 定 され た。
以 上 の四 っ の時 期 区 分 の なか で,こ こで は まず,都 市 の経 済 体 制 改 革 が
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国有企 業の経 営 自主権拡 大 と課題
決 定 され 企 業 の経 営 自主 権 の拡 大 政 策 が 本 格 化 した 第 二 期 以 降(1984年 以 降)の 政 策 規 定 の 変 化 につ い て比 較 検 討 す る。
1)政 策 規 定 にお け る企 業 自主 権 拡 大 化
こ こで は,前 述 した84年 規 定,88年 企 業 法,92年 条 例 の企 業 自主 権 に っ い て の規 定 を そ れ ぞ れ整 理 し,比 較 検 討 して み た い。
(1)84年 の規 定 の場 合1)
84年 規 定 に お け る企 業 自主 権 は,以 下 の10項 目 で あ る。 す な わ ち,① 生 産 経 営 計 画,② 製 品 販 売,③ 製 品 価 格,④ 物 資(原 材 料 の こ と)購 入,
⑤ 資 金 運 用,⑥ 資 産 処 分,⑦ 企 業 内機 構 設 置,⑧ 人 事 労 働 管 理,⑨ 賃 金 ・ ボ ー ナ ス分 配,⑩ 企 業 連 合 経 営 で あ る。 こ う した一 連 の経 営 上 の権 限 が国 有 企 業 に与 え られ た こ と 自体,従 来 の計 画 統 制 と の比 較 に お い て画 期 的 な こ とで あ った。
しか し,上 記 の 企 業 の 各 自主 権 は決 して 全 面 的 で は な く,そ れ ぞ れ か な り限 定 され た もの で あ っ た。 す なわ ち,① 生 産 計 画 で は,国 家 計 画 と商 品 供 給 契 約 の 達 成 を 前 提 と した製 品 の 増 産 権 と国 家 計 画 執 行 中 の需 給 変 化 に よ る計 画 調 整 の 提 案 権 の 二 っ だ けで あ る。 ② 製 品 販 売 面 で は,国 家 計 画 を 越 え て 超 過 生 産 した 製 品 分(国 家 統 一 配 分 物 資 を含 む),企 業 に 分 配 さ れ た 製 品,試 作 新 製 品,国 家 の 購 買 販 売 部 門 が 買 い付 け な い製 品,在 庫 滞 貨 製 品 にっ いて 企 業 の 自主 販 売 権 が 与 え られ た 。 ③ 製 品 価 格 面 で は,工 業 生 産 財 は企 業 が 自主 販 売 す る もの と国 家 計 画 超 過 生 産 部 分 は 上 下20%の 枠 内 で 企 業 が 価 格 設 定 権 を も ち,ま た は売 買 当 事 者 双 方 が 規 定 の範 囲 内 で 協 議 して 決 定 で き る(協 議 価 格)。 た だ し,生 活 消 費 財 と 農 業 生 産 財 の 価 格 は計 画 価 格(国 の 決 め た 変 動 価 格 を 含 む)で,企 業 の 価 格 設 定 権 は な い。
④ 物 資 購 入 面 で は国 家 統 一 分 配 物 資 の 注 文 購 入 に あ た り,注 文 企 業 は供 給 企 業 を 選 択 す る権 限,お よ び 供 給 企 業 と契 約 を 結 び,直 接 仕 入 れ,決 裁 す る権 限 を もっ。 ⑤ 資 金運 用 面 で は,留 保 資 金 を 各 種 基 金 と して 独 自 に使 用 す る権 限(た だ し,各 種 基 金 の配 分 比 率 は 主 管 部 門 の 規 定 に よ る),減 価
償 却基 金 の70%を 企 業 に留 保 す る権 利(1985年 か ら),一 時 不 要 な 生 産 発 展基 金 を 企業 外 の事 業 に投 資 す る権 利,技 術 改 造 プ ロ ジ ェ ク トの決 定 権 が そ れ ぞ れ与 え られ た。
⑥ 資 産 処 分 面 で は余 剰 の 遊 休 固 定 資 産 を賃 貸 し,ま た は有 償 譲 渡 す る権 限 を もっ(た だ し,高 度 ・精 密 ・先 端 的 設 備 の 場 合 は主 管 部 門 の承 認 が 必 要),⑦ 企 業 内 の機 構 設 置 で は,主 管部 門 の定 め る定 員 の 範 囲 内 で 機 構 設 置 と人 員 配 置 を独 自 に決 定 す る権 限 を もっ(た だ し,関 係 部 門 は業 務 活 動 の必 要 に基 づ い て企 業 に要 求 を 出 せ る)。 ⑧ 人 事 労 働 管 理 面 で は 技 術 ・管 理 者 の招 脾 と か れ らの報 酬 を決 定 す る権 利,労 働 者 の 中 か ら幹 部 を選 抜 登 用 す る権 利,労 働 者 を公 募 ・試 験 選 抜 す る権 利,工 場 長 が 中間 管 理 職 を任 命 し,従 業 員 の賞 罰(昇 級 ・報 償 や免 職 処 分 な ど)を 行 う権 利 が与 え られ た。 ⑨ 賃 金 ・ボ ー ナ ス分 配 面 で は,国 の統一 した賃金 基準 ・賃 金地 区類 別 ・ 手 当制 度 の実 施 を前 提 に,賃 金 形 態 を独 自 に選 択 し,ボ ー ナ ス基 金 を独 自
に分 配 す る権 利 を もつ。 ⑩ 連 合 経 営 で は,企 業 は そ の所 有 制 形 態,行 政 と の従 属 関係,財 政 体 制 を変 え な い で,部 門 ・地 域 を越 え た連 合 経 営 に参 画 し,ま た は これ を組 織 す る権 利,ま た相 手 を選 択 して生 産 協 業 ・製 品下 請 け を行 う権 利 を与 え られ た。
(2)88年 の企 業 法 の場 合2)
1988年 の国 有 工 業 企 業 法 が規 定 した13項 目の企 業 の権 利(自 主 権)は, 以 下 の とお りで あ る。 す な わ ち,① 国家 計 画指 導 の も とで の製品 を生 産 し,
サ ー ビ スを提 供 す る権 利,② 不必 要 な計 画供 給 物 資 また は製 品 販 売 に つ い て の指 令 的計 画 の調 整 を要 求 す る権 利,指 令 的計 画 外 の生 産 任 務 を 引 き受 け るか ま た は拒 否 す る権 利,③ 製 品 の 自主 販 売 権,指 令 的計 画外 の超 過 生 産製 品 お よ び 計 画 内 の 分与 され た 生産 製 品 を 自主 販 売 す る権 利,④ 物 資 の 仕 入 れ 先 を 選 択 し,購 入 す る権 利,⑤ 製 品 ・サ ー ビ スの 価格 設 定 権,⑥ 外 国 企 業 と交 渉 し契 約 を 締 結 す る権 利 と分 配 され た 外 貨 収 入 を取 得 し使 用 す る権 利,⑦ 留 保 資 金 を 処 分,使 用 す る権 利,⑧ 国 か ら経 営 管 理 を 委 任 され
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国有企業 の経営 自主権拡大 と課題
た固 定 資産 を賃 貸 ま た は 有 償 譲 渡 す る権 利,⑨ 国 家 の定 め る賃 金 総 額 の枠 内 で賃 金 形 態 とボ ー ナ ス 分 配 方 法 を決 定 す る権 利,⑩ 従 業 員 を採 用,解 雇 す る権 利,⑪ 国 の定 め る定 員 の 枠 内 で企 業 の機 構 設 置 と人 員 編 成 を決 定 す る権 利,⑫ 法規 に定 め の な い 人 力 ・物 力 ・財 力 の割 当 て を拒 否 す る権 利,
⑬ 他 企業 と共 同経 営 し,他 企 業 ・事 業 単位 に投 資 し,他 企 業 の株 式 を取 得 す る権 利 お よ び 債権 を 発 行 す る権 利,で あ る。
1988年 の 企 業 法 で 新 た に 規 定 され た 自主 権 と して は,上 記 ② の 指 令 的 計 画 外 の生 産 任 務 を 引 き受 け るか また は拒 否 す る権 利,⑥ の外 国 企 業 と交 渉 し契 約 を締 結 す る権 利(貿 易権)と 分 与 さ れ た外 貨 収 入 を取 得 し使 用 す る権 利,⑫ 法 規 に定 め の な い人 力 ・物 力 ・財 力 の割 当て を拒 否 す る権 利 が あ る。 ま た⑬ の他 企 業 の株 式 取 得,債 権 発 行 の権 利 も新 た な規 定 で あ る。
いず れ も,企 業 改 革 の進 展 に対 応 した企 業 の経 営 自主 権 の拡 大 強 化 を示 す もの で あ る。
た だ し,企 業 法 の規 定 は きわ め て概 括 的 一 般 的 な もの で あ り,細 か な具 体 的 規 定 は して い な い。 関 連 す る具 体 的 な規 定 は現 在 の,ま た は将 来 制 定 され る個 別 の条 例 に委 ね られ て い る。 例 え ば,上 記 の13項 目 の 規 定 の な か に も,⑥,⑦,⑧,⑩,⑬ の 各項 目に はい ず れ も 「国務 院 の 規 定 に 基 づ き」
と の付 帯 条 件 が っ け られ て お り,ま た③ の 製 品 の 自主 販売 権 と⑤ の 製 品 価 格 設 定 権 に は国 務 院 の別 段 の規 定 が あ る場 合 は除 くとの 制 約 条 件 が っ け ら れ て い る。 従 っ て,上 記 の企 業 自主 権 の具 体 的 内 容 は,国 務 院 が 制 定 す る 関 連 条 例 の具 体 的 規 定 いか ん に よ って 多 少 と も制 約 され る こ と にな る。
(3)92年 の 条例 の 場 合3)
1992年7月 に国 有 企 業 経 営 メ カ ニ ズ ム転 換 条 例 が 制 定 され た 背 景 に は, 88年 の企 業 法 に よ って企 業 に与 え られ て い る 自主 経 営 権 が 種 々 の 原 因 に よ り実 現 され て い な い こ と,す なわ ち 「企 業 の 自主 経 営,独 立 採 算 が 徹 底 で きず,大 多 数 の 企 業 の 経 営 メ カ ニ ズ ムが 社 会 主 義 的 市場 経 済 に適 応 で き て い な い」 状 況 が あ っ た4)。92年 条 例 は この 問 題 状 況 を 克服 す るた め に 改
あ て14項 目 の企 業 自主 権 を 規 定 した。14項 目 の 自主 権 と は,① 生 産 ・経 営 の意 志 決 定 権,② 製 品 ・サ ー ビスの 価 格 決 定 権,③ 製 品 の 販 売 権,④ 物 資 購 入 権,⑤ 輸 出 入 権,⑥ 投 資 意志 決 定 権,⑦ 留 保 資 金 の 処 分 権,⑧ 資 産 処 分 権,⑨ 他 企 業 との提 携,吸 収 ・合併 権,⑩ 労 働 雇 用 権,⑪ 管理 者 ・技 術 者 の 人 事管 理 権,⑫ 賃 金 ・ボ ー ナ ス分 配権,⑬ 内部機 構設 置権,⑭ 人力 ・ 物 力 ・財 力 の割 当 て拒 否 権,で あ る。
以 上 の企 業 自主 権 の項 目 は88年 の企 業 法 と同 じで あ るが,企 業 法 の 規 定 す る従 業 員 の 人事 権 が92年 の条 例 で は,労 働 者 の 人 事 権 と管 理 者 ・技 術 者 の人 事 権 に分 割 さ れ て い る。
こ の 条 例 は企 業 法 の 実 施 条 例 と して の 性 格 を 与 え られ て い る 関 係 か ら4),当 然 の こ とだが 各 自主 権 の規 定 は企 業 法 に比 べ て詳 細 な もの と な っ て い る。92年 条 例 が 明 示 的 に規 定 す る各 自主 権 の具 体 的項 目数 を84年 の 暫 定 規 定 に お け る そ れ と比 較 す る と表1の とお りで あ る。
表1.各 自主 権 の なか で 明 示 され た具 体 的 項 目数
① 生産 ・経営の意志決定権
② 価格決定権
③ 製品の販売権
④ 物資購入権
⑤ 輸出入権
⑥ 投資意志決 定権
⑦ 留保資金の処分 権
⑧ 資産処 分権
⑨ 提携,吸 収 ・合併 権
⑩ 労 働雇 用権
⑪ 人事管 理権
⑫ 賃金 ・奨励金分配 権
⑬ 内部機構設 置権
⑭ 割 当て拒否権
84年 規 定
2 2 4 2 1 4 1 2 3 3 4 1
92年 条 例 8 3 10
3 9 7 4 2 2 8 6 5 2 3
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国有企業 の経営 自主権 拡大 と課題
以 上 の よ うに,政 府 の規 定 か ら見 る か ぎ り,企 業 自主 権 の範 囲 と内 容 は 従 前 よ り も拡 大,充 実 した と い え よ う。
2)企 業 自主 権 規 定 に お け る政 府 の統 制
しか しな が ら,92年 条 例 を よ く読 む と,企 業 自主 権 に よ って は い ろ い ろ な条 件 が付 い て い る。 そ の条 件 と は,指 令 的計 画 の 統制 項 目 は別 と して, 政 府 当 局 の許 認可,政 府 当局 へ の届 出義 務,国 の 別 の 規 定 に従 うこ と,除 外 規 定(「 別 に定 め る規 定 が あ る場 合 は除 く」 との条 文 が あ る こ とを 指 す) な どが あ げ られ る。 っ ま り,企 業 自主 権 が 規 定 され て も,い ろ い ろ政 府 の 統 制 を う け る項 目が少 な くな い。92年 条 例 に 即 して 見 て み る と 表2の と お りで あ る。
表2.企 業 自主権 に対 す る政府統 制項 目数
許認可 届 出義務 国の規定 による 除外規定
① 生産経営 の意志決定権
② 価格決定権
③ 製 品の販売権
④ 物 資購 入権
⑤ 輸 出入権
⑥ 投 資意志決 定権
⑦ 留保 資金 の処分権
⑧ 資産処分権
⑨ 提 携,吸 収 ・合併権
⑩ 労 働雇用権
⑪ 人事管理権
⑫ 賃金 ・奨励 金分配権
⑬ 内部機構設置権
⑭ 割当て拒否権
4 に り 1 1
2
り61
1
1
3 り 自
1
4 1 1 1 1 1 1
1
1 1
表2に よれ ば,企 業 自主 権 に対 す る政 府 の統 制 規 定 が比 較 的 多 い の は, 輸 出 入 権 と投 資 意 志 決 定 権 で あ り,次 に労 働 雇 用 権 な ど の人 事 権 で あ る。
従 って,政 府 当 局 側 が この 統 制 規 定 を根 拠 に企 業 自主 権 の運 用 に対 して制
限 を 課 す こ とは 十分 可 能 で あ る。 そ の意 味 で は,条 例 で規 定 さ れ る企 業 自 主 権 と政府 の 管理 統 制 権 限 と の関 係 は,運 用 に お い て は か な り微 妙 な と こ ろが あ る とい え る。 実 際,後 にみ る よ う に企 業 の 自主 権 運 用 に対 して政 府 当局 が さ ま ざ ま な制 限 を 課 し,自 主 権 が十 分 執行 され な い状 況 が 少 なか ら ず あ る。
3経 営 自 主 権 拡 大 の 現 状
1984年 の 企 業 自 主 権 拡 大 の 暫 定 規 定 が 公 布 さ れ て 以 降,企 業 自 主 権 の 実 情 に か ん す る 多 く の 企 業 調 査 が 実 施 さ れ て き た 。 そ の な か で,企 業 自 主 権(あ る い は 計 画 統 制 度)に 関 して 注 目 さ れ る 主 な 国 有 企 業 調 査 と して は 以 下 の よ う な も の が あ る 。
調 査 年 調 査 対 象 調 査 機 関 調 査 報 告 の 掲 載 誌
Al987年 上 海 市322社 上 海 社 会 科 学 院 経 済 研 『経 済 研 究 』1988年4期 Bl989年40都 市855社 全 国 総 工 会 ・市 総 工 会r経 済 管 理 』1990年10期 C1990年4省769社 社 会 科 学 院 工 業 経 済 研 『中国 工 業 経 済 研 究 』
1992年11期 D1990年 四 川 省10社 四川 省 第 一 調 査 組 『経 済 研 究 』1991年8期
E1991年 湖 北 省50社 湖 北 省 計 画 委 員 会 『 改 革 』1992年4期 F1991年 全 国1637社 国 家 体 制 改 革 委 『中 国 工 業経 済 研 究 』
1992年8期 G1991年 漸 江 省285社 漸 江 省情 報 セ ン ター 「中 国 工 業経 済研 究』
1992年5期 Hl992年 全 国11地 区13社 国務 院経 済貿 易 弁 公室 『中 国 通 信』1993年2月
25日 11993年 山 東 省1663社 国務 院連 合調 査組 『人 民 日報』1993年5月
31日 J1993年15省 ・区 ・市 国務 院 連 合 調 査 組 『人 民 日報 』1993年6月
22日,7月24日
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8国有 企業 の経営 自主権拡大 と課題
Aの 調 査 は84年 の暫 定 規 定 の実 施 状 態 を,B〜Gの 調 査 は88年 の 企 業 法 の 実 施 状 態 を,そ してH〜Jの 調 査 は92年 の経 営 メ カ ニ ズ ム転 換 条 例 の 実 施 状 態 を,そ れ ぞれ 示 して い る と考 え られ る。 以 下,主 と して これ ら の 企 業 調 査 報 告 に依 りっ つ,企 業 自主 権 拡 大 の実 態 的動 向 を い くっ か の 面 か ら見 て み た い。
1)企 業 自主 権 の拡 大 状 況 (1)生 産 管 理 権
1980年 代 以 来,企 業 の 生 産 活 動 に対 す る 政 府 の 計 画 統 制 は 縮 小 緩 和 して きた。 全 国 範 囲 にお いて 国 有 工 業 企 業 の生 産 に対 す る計 画統 制 の変 化 は表3の とお りで あ る。
表3.工 業生産総額 に占め る計画統 制比 率の変化
(単 位:%)
・ ・, ...
1989 1992 1993年(6月)
指令性計画部分 の比率 指導性計画部分の比率 市場調節部分の比率
80 16 43 41
17 40 43
12 34 54
6.5 25 67.5
(出 典:1984,1988年 は馬 洪 「中 国 経 済 体 制 改 革 的 現 状 及 展 望 」 「 求 是』
1991年 第10期,30頁,1989年 は何 建 章 「摘 好 国 有 大 中 型 企 業 的 幾 個 問 題」
r光 明 日報』1991年11月5日,1992,1993年 は 『中 国 通 信 』1993年8月11日)
表 に 明 らか な よ うに 工 業 生 産 総 額 に 占 め る指 令 性 計 画 部 分 の比 率 は大 き く減 少 し,そ の反 対 に 政 府 の 計 画 統 制 外 の 市 場 調 節 部 分 の比 率 が増 大 して い る。 こ う した マ ク ロ面 で の 政 府 の 計 画 統 制 の 縮 小 は個 々 の国 有 企 業 の生 産 自主 権 の幅 を拡 大 す る条 件 を 与 え た 。上記 の調 査C(江 蘇 ・四川 ・吉 林 ・ 山 西 省 の計769の 国 有 工 業 企 業)の 統 計 に よ れ ば,1980年 以 来 の 生 産 管 理 方 面 にお け る企 業 自主 権 の獲 得 状 況 は 表4の とお りで あ る。
表4.企 業 の 生 産 自主権 の拡 大 (単 位:%)
・'1
1981 1982 1983 1984
1985
・:・
1987
...
1989 1990
生産額計画 生産量計画 品種計画 技術計画 生産進度計画
6.8
7.8 10.4 14.4 25.1 34.8 39.1 53.4 64.4 67.4 69.3
7.3 8.2 11.4 1:
26.0 36.7 42.3 56.3 68.1 71.3 73.5
7.9 9.1 12.0 15.6 28.2 39.1 45.1 59.0 71.9 75.0 77.6
10.3 11.3 14.0
18.3 30.6 41.9 46.8 .1・
72.2 75.6 77.6
11.2 12.1 15.0 19.1 31.9 43.7 49.5 63.2 76.2 79.7 1
備 考:パ ー セ ン トは 自主 権 獲 得 企 業 の 全 体 企 業 に 占 め る比 率 を示 す (出典:郭 晋 剛,杜 海 燕 論 文r中 国 工 業 経 済 研 究 』1992年11期,4頁)
表 に よれ ば,第 一 に1980年 以 来,企 業 の 生 産 計 画 権 は 一 貫 して 拡 大 した。 第 二 に,生 産管 理 自主 権 の普 及 は時 期 的 に 緩 急 が み られ る。1980‑
83年 の 時 期 は 自主 権 の拡 大 が比 較 的緩 慢 で あ る が,1984‑88年 は比 較 的 急 速 に拡 大 して い る。 しか し1989‑90年 は ま た緩 慢 に な って い る。 この 変 化 は経 済 政 策 にお け るサ イ クル を反 映 して い る。1980‑82年,1988‑90年 は 経 済 調 整 政 策 が実 施 され,経 済 改革 の速 度 が抑 制 され た時 期 で あ った 。 第 三 に,生 産 管理 自主 権 の な か で は表 の右 側 の項 目 ほ ど 自主 権 の 普 及 度 が 常 に よ り高 い こ とで あ る(す な わ ち,生 産 額 く 生 産 量 く 品 種 く 技 術 く 生 産 進 度)。 逆 に い え ば,表 の左 側 の 項 目 ほ ど比 較 的 に政 府 の 計 画 統 制 を う け る 傾 向 が あ る と いえ る。 も っ と も,項 目 間 の差 異 は小 さ い。
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国有企業 の経営 自主権拡大 と課 題
(2)製 品 の 購 入 ・販 売 の 自主 権
原 材 料 の 購 入 と製 品 の販 売 の 自主 権 と して こ こ で は市 場 を通 した購 入 ・ 販売 比 率 の 動 向 を見 て み た い。 調 査C(769国 有 工 業 企業)に よ れ ば,原 材 料 の 購 入 と製 品 の販 売 に お け る市 場 化 率 は表5の と お りで あ る。
表5.原 材 料購 入 ・製品販売 の市場化比 率(単 位:%)
原材料購入 製品販売
・:1 30.9 34.3
1981 30.9 39.3
1982 32.7 40.6
1983 33.8 41.0
1984 36.4 44.1
1985 42.4 52.4
1986 45.7 55.3
1987 50.6 56.5
・..
55.9 58.3
1989 57.8 59.5
(出 典:表4と 同 論 文,5頁)
表 に よ れ ば,第 一 に製 品 の購 入 ・販 売 の 市場 化 率,つ ま り企 業 の 購 入 ・ 販 売 の 自主 権 の拡 大 は時 期 に よ り緩 急 が あ る こ とが わ か る。1980年 一83年 は緩 慢 な拡 大 で あ るが,1984‑88年 は比 較 的急 速 に拡 大 して い る。 しか し, 1989年 は ま た緩 慢 に な って い る。 これ は,前 述 の よ う に経 済 改 革 政 策 の 変 動 の反 映 で あ ろ う。 た だ し,1991年 のG調 査(285企 業)で は原 材 料 を 市 場 を通 して購 入 で き る企 業 は全 体 の63.0%の レベ ル に達 して い る5)。 第 二 に,総 じて原 材 料 の購 入 よ り も製 品 の販 売 の ほ うが 市場 化 率 が 高 い こ と で あ る。 これ は他 の 調 査 に よ って も確 認 で き る。 た とえ ば,1991年11月 に 実 施 され た 調 査F(1637国 有 企 業)に よ れ ば,原 材 料 販 売 企 業 を 自主
的 に選 択 で き る企 業,っ ま り原 材 料 購 入 の 自主 権 を もっ 企 業 は全 体 の73.6
%で あ っ たが,製 品販 売 の 自主 権 を持 っ 企 業 は77.1%で あ った6)。これ は, 一 般 に,工 業原 材 料 は工 業 消 費 財 に比 べ そ の購 入 販 売 に対 す る政 府 の統 制 が よ り きつ い か らで あ る(価 格 にっ いて も同 様 一後 述)。
(3)製 品価 格 決 定 の 自主 権
製 品価 格 に対 す る国 家 統 制 は1980年 代 以 来 の改 革 の な か で 着 実 に 減 少 して きた。 例 え ば,生 産 財 販 売 総 額,消 費 財 小 売 り総 額,農 産 物 買 い付 け 総 額 の そ れ ぞ れ に 占 め る政 府 固 定 価 格 の比 重 は表6の よ うに減少 して きた。
表6.政 府 固 定 価 格 の 比 重 の 推 移 (単 位:%) 1978 1986
...1991 1992
生産 財販売農産 物買い付 け 消費財小売 り
100 92 97
64 37 45
60 25 30
36 22 21
30 15 10 (出 典:1978,1986年 は 田源 「価 格 改 革 与 産 権 制 度 転 換 」 『経 済
研 究』1988年 第2期,12頁,1988年 は馬 洪,前 掲 論 文 『求 是 』 1991年 第10期,30頁,1991年 は 『中国 通 信 』1992年9月2日,
1頁 。1992年 『中 国通 信 』1993年3月22日)
この よ う各 種 製 品 に対 す る国家 統 制 価 格 の比 重 の低 下 は,固 定 価 格 以 外 の 「変 動 価 格」(政 府 が 決 め た一 定 の 範 囲 で,ま た 上 限 あ る い は 下 限 を 定 めて 変 動 を 認 め る価格 で,政 府 指 導 価 格 と もい う)お よ び 「市 場 価 格 」 の 比 重 が 大 幅 に増 大 した こ とを 意 味 す る。 例 え ば1992年 で は,消 費 財 小 売 り額 の90%以 上,生 産 財販 売 額 の82%,農 産 物 買 い付 け額 の85%が 政 府 の統 制 価 格(固 定 価格 と指導 価 格)か ら 自由 に な って い る と い わ れ る7)。
と くに,1992年9月 に政 府 は大 幅 な 「価 格 自由化 」 措 置 を実 施 し,593品 目 の生 産 財 と交 通 輸 送 価 格 を 政府 統 制価 格 か ら はず した こ とに よ り価 格 の
「自由化 」 は急 速 に進 ん だ。 自 由化 され た593品 目 の うち,571品 目 は 市
一42
12
国有企業の経営 自主権拡大 と課題
場 の需 給 に基 づ く企 業 の 自主 的 な決 定 に ま か され た。 この結 果,政 府統 制 価 格 の 品 目 は生産 財 で は1991年 の737種 か ら89種(う ち固 定 価 格34種, 指 導 価 格55種)に 減 少 した。 ま た 工 業 消費 財 も800余 種 を 自 由 化 して 政 府統 制 価 格 の 品 目 は30余 種 だ け とな った8)。
この よ う に,製 品 価格 の 自由 化 はか な り進 行 して い るが,そ れ に相 応 し て 企 業 レベ ル の価 格 決 定 の 自主 権 が 充 分 拡 大 したわ けで は必 ず し もな い。
例 え ば,1987年 のA調 査(上 海 の322企 業)で は,価 格 決 定 権 を 全 面 的 に有 す る企 業 は全 体 の11%,部 分 的 に 有 す る企 業 が58%,全 くな い企 業 が29%で あ った9)。 ま た1988年 に調 査 した天 津 市 の152の 国 有 企 業(中 小 企 業)で は,製 品 の 工場 出 荷価 格 の決 定 方 式 は,上 級 政 府 の 決 定 が49
%,政 府 規 定 の 上 下 の 価格 範 囲 内 で の 自己 決 定 が26%,市 場 価 格 に よ る 自己 決 定 が25%で あ った!°)。さ らに1991年11月 に 実 施 さ れ たF調 査 で は,国 有 企 業1637(大 型561,中 型671,小 型405)の う ち製 品 の 価 格 決 定 権 を もっ 企 業 は全体 の22.3%に す ぎ なか っ た11)。同 年 実 施 され たG調 査 (285企 業)で は 製 品 の 価 格 決 定 権 を もっ 企 業 は 全 体 の55.6%で あ っ た12)。
(4)企 業 人事 権
a労 働 者 の雇 用 ・配 置権
1986年 の労 働 契約 制 度 の全 国 的実 施 に よ り,新 規 雇 用 の 労 働 者 に対 し て は 旧来 の 国家 計 画配 分 に よ る常 用 労 働 者(固 定 工)と して で はな くて 期 限 付 きの契 約 労 働 者(契 約 工)と して採 用 す る道 が 開 か れ た。 契 約 労 働 者 の採 用 人 数 枠 は依 然 と して政 府 の計 画統 制 下 に あ るが,企 業 は契約 労 働 者 を募 集 し,自 己採 用 す る こ とが で き るよ うに な った。 従 って,企 業 は労 働 者 採 用 方 法 に お け る 自己裁 量 の余 地 が生 まれ た の で あ る。 国有 企 業 にお け る契 約 労 働 者 の比 率 は表7に み られ るよ うに,増 大 して い る もの の,そ の 普 及 率 は い ま だか な り低 い。
しか も,1991年 ま で の数 年 間 で国 家 は全 国 で計3000万 余 人 の 就 職 の ア
表7.国 有 企業 に お け る 契約 労 働 者 の比 率 (単 位:%)
全国統計C調 査(769企 業)
1981
1'1982 1.43
1983 0.6 2.90
1984 2.0 4.63
1985 3.7 6.56
1986 5.6 9.28
1987 7.6 11.61
...
10.1 14.04
1989 11.8 15.17
1990 13.3 1991 14.9
(出典:全 国 統 計 は 『中 国 統 計 年 鑑1992』,117頁 C調 査 は郭 晋 剛,杜 梅 燕,前 掲 論 文,5頁)
レン ジを 行 った が,そ の90%以 上 の もの は 大 中 型 企 業 に 配 属 さ せ,年 に 10余 万人 の転 業軍 人 もす べ て大 中型 企 業 に受 け入 れ さ せ た と い う13)。っ ま り,国 有 大 中型 企 業 は政 府 の労 働 配 分 計 画 に従 って労 働 者 を吸 収 せ ざ る を得 な い状 況 が あ る。
労 働 者 ・職 員 の採 用 自主 権 を もっ企 業 はF調 査(1637企 業)で は23.2
%に 留 ま って お り!4),B調 査(855企 業)で は極 め て 少 な い こ とが 報 告 さ れ て い る。 労 働 者 職 員 の企 業 内配 置権 を 持 っ 企 業 はB調 査 で は63%で あ り,採 用 の場 合 に比 べ て はか な り大 きな 自主 権 を持 って い る。 しか し,労 働 者 の解 雇 権 の 保有 状 況 はか な り少 な いt5)。1987年 のA調 査(322企 業) に よれ ば,労 働 者 の解 雇 権 を 全 面 的 に 保 有 して い る 企 業 は全 体 の12.3%
II
14
国有企業 の経営 自主権拡 大 と課 題
にす ぎ な っ た'6)。しか も,権 限 を保 有 して い た と して も,企 業 が実 際 に そ れ を行 使 した も の は極 め て少 数 で例 外 的 で あ る17)。
b企 業 責 任 者 の選 任 権
企 業 責 任 者,す な わ ち企 業 長(工 場 長)の 選 任 方 法 は1986年 の 「国 有 工 業 企 業 工 場 長 工 作 条 例 」 に よ り三 つ の方 法 が規 定 され て いた。す な わち,
① 企 業 の主 管 部門 な い し幹 部 管 理 部 門 に よ る委任 ・任 命,② 企 業 従 業 員 代 表 大 会 の招 請 ・指 名(た だ し後 で企 業 主 管 部 門 な い し幹 部 間 の 部 門 が 批 准 す るか 任 命 す る),③ 企 業 主 管 部 門 に よ る招 請 ・指 名 で あ る18)。1990年 の 769企 業 に対 す る調 査 に よ れ ば,企 業 長(総 経 理)の 選 任 方 法 は,全 体 の 75%が 上 級 主 管 部 門 の任 命 に よ る もの,14%が 競 争 入 札 方 式 に よ る もの,
4%が 企 業 従 業 員 代 表 大 会 の選 挙,の こ り7%が そ の他 の方 法 に よ る もの で あ っ1..19/..)。ま た何 平 に よれ ば,全 国 の国 有 企 業 の現 任 の経 理 の78.5%は 上 級 政 府 ・党 機 関 か らの 任 命 で あ る と い わ れ る。2°)また国 有 工 業 企 業 の 多
くは1987年 以 来,経 営 責 任 制 を 実 施 して い るが,経 営 請 負 制 企 業 の 経 営 者 の 三 分 の 二 は政 府 行 政 が 決 定 指 定 した もので あ る と い う2%い ず れ に せ よ,現 状 の 企 業 責 任 者 は圧 倒 的 に政 府 当 局 に よ り決 定 さ れ て お り,そ の結 果,か れ らの 政 府 当 局 へ の 従 属 性 と依 存 心 理 は不 可 避 で あ る。F調 査(16 37企 業)に よれ ば 企 業 長 の 招 聰 の 自主 決 定 権 を もっ 企 業 は全 体 の わ ず か 1.1%に す ぎな い22)。要 す る に企 業 責 任 者 の 選 出 に つ い て 企 業 の 決 定 権 は 基 本 的 に な い と い って よ い。
次 に,企 業 の 管 理 職 員 の 指 名 権 は 企 業 長 に 与 え られ て お り,B調 査(855企 業)に よれ ば,職 員 の人 事 配 置 権 を もっ企 業 は63%に 達 して い
る23)。しか しな が ら,企 業 長 の 指 名 権 は政 府 主 管 当 局 の 批 准 を 得 な け れ ば な らず,も し主 管 当局 が 同 意 承 認 しな けれ ば 企 業 長 の 任 命 権 も実 際 に は実 施 す る こ とが で きな い。
(5)財 務 自主 権
1980年 代 以 来 の 「放 権 譲 利 」 政 策 に よ り,国 有 企 業 の 留 保 利 潤 比 率
(名 目)は 次 第 に 上昇 した。 そ の動 向 は表8に 示 す と お りで あ る。
表8.国 有 工 業 企 業 の留 保 利 潤 率(名 目)の 推 移(単 位:%) C調 査(769企 業)
全国範 囲全体 黒字企業
・:1 11.919.0
1981 15.722.3
1982 18.224.8
1983 2.732.6
1984 25.837.9
1985 29.038.6
1986 33.4 33.238.5
1987 33.7 33.637.6
...
36.2 38.7*37.1
1989 41.5 42.9*37.0
1990 57.7 一
1991 一 一
備 考:*を 付 した数 字 は全 体 企 業 と黒 字 企 業 とが 逆 に な って い る可 能 性 が あ るが,そ の ま ま記 した。
(出典:全 国 統 計 は 『中 国 工 業 経 済 統 計 年 鑑1992』,129,142頁 よ り算 出,C調 査 は郭 晋 剛,杜 梅 燕,前 掲 論 文,5頁)
この比 重 が 増 大 した留 保 利 潤 は一 般 に は生 産 発 展 基 金,新 製 品開 発基 金, 予 備 基 金,福 利 厚 生 基 金,奨 励 基 金 な ど に使 用 す る こ とが 規 定 され て い る が,こ の留 保 資 金 使 用 権 を有 す る企 業 は,1989年 のB調 査(855企 業)に よ れ ば,全 体 の76%で あ ったu)。 か な り多 くの 企 業 が こ の権 限 を も って い る状 況 が うか が え る。 た だ し,内 部 の資 金 分 配 にっ いて は財 政 主 管 部 門 に よ り企業 の配 分 の標 準 と比 率 が規 定 され て お り,そ れ に制 約 さ れ る25)。
46 16
国有企業 の経営 自主権拡大 と課題
次 に,賃 金 ・ボ ー ナ ス の 自主 分 配 権 はB調 査(855企 業)に よ れ ば,政 府 に よ り批 准 され た賃 金 総 額 内 にお け る賃 金 の 自主 分 配 権 を有 す る企 業 は 63%で あ っ た26)。他 方,F調 査(1637企 業)に よ れ ば,賃 金 総 額 と従 業 員 定 数 は政 府 が 統 制 して い るが,そ の 枠 内 で の企 業 内 部 の賃 金 分 配 の決 定 権 を有 す る企 業 は43%で あ った。 他 方,ボ ー ナ ス 分 配 方 式 の 決 定 権 を 持 っ 企 業 は平 均 で93%と 極 め て多 いzn。 広 東 ・福 建 ・漸 江 省 の75企 業,23 00人 に対 す る調 査 に よ れ ば(1991年),内 部 の 賃 金 分 配 方 法 にっ い て の 自 主 権 を持 っ 国 有 企 業 は33%を 占 め た と い う28)。
各 国 有 企 業 の賃 金 総 額 は国 家 計 画 に組 み込 まれ,政 府 財 政 当局 の統 制 を 受 け る が,1987年 の経 営 請 負 制 の 開 始 に と も な い 賃 金 総 額 と企 業 の 経 済 効 果 を直 接 リ ンク させ る方 式 が 実 施 され る よ うに な った。 具 体 的 に は, 企 業 の 経 済 効 果 が1%変 動 す る こ と に賃 金 総 額 を0.3‑0.7%の 幅 で 変 動
させ る こ と と され た。 これ は経 済 効 果 の 上 昇 に 応 じて 当 該 企 業 の 賃 金 の 枠 を 一 定 割 合 で 拡 大 す る こ と を認 め た もの で あ る 。 こ の 規 定 自 体 企 業 単 位 に と って 一 定 の 利 益 と な る もの で あ るが,実 際 の 推 移 を み る と,賃 金 総 額 は この 規 定 の 比 率 を 越 え て 増 大 して い る29)。こ れ は,企 業 の 賃 金 総 額 に 関 す る裁 量 権 が 実 際 に はあ る程度 拡 大 強 化 して い る こ と を意 味 して い
る。
(6)対 外 貿 易権
企業 の対 外貿 易 権 が認 め られ るよ うに な った の は比 較 的 最 近 の こ とで あ る。1993年5月 時点 で対 外貿 易権 を与 え られ た 企 業 はわ ず か に1360余 企 業 で あ り,ま た ご く一 部 の 大 中 型 企 業 や 企 業集 団 に限 られ て い る3°)。貿 易 権 限 を付 与 す る資格 条件 が極 め て厳 し い こ とに よ る。 ま た貿 易 権 を もっ 場 合 で も,外 貨 の 全額 留 保 は認 め られ て お らず,留 保 外 貨 の30%を 政 府 に 上 納 しな け れ ば な らな い31)。
(7)割 当 て拒 否権
地 方 政 府 や 各社 会 団体 か らの非 正 規 の 資金 ・資材 ・労 働 力 の割 当 は,中 央政 府 の た び だ び の禁 止 指 示 に も関 わ らず増 大 して い る。B調 査 によれ ば, 855企 業 の う ちで 割 当 て が な い企 業 は184企 業 で,671企 業(78.5%)は な ん らか の割 当 を受 け た。855企 業 の な か で 割 当 拒 否 権 を 実 施 で き て い な い企 業 は506企 業(60%)も あ っ た と い う謝。 ま た,割 当 に対 す る企 業 指 導 者 の 対応 に っ い て は,遼 寧 省 の484の 大 中 型 工 業 企 業 の 指 導 者 に対 す る 調 査 が 興 味深 い。 そ れ に よ る と,非 正 規 の割 当 て に対 して① 「敢 然 と 自信 を も って拒 否 した」 者 は4.2%,② 「拒 否 し た が,恐 れ を感 じた 」 者 が 14.9%,③ 「敢 え て拒 否 しなか っ た し,そ う しよ うと も思 わ なか っ た」 者 4.4%,④ 「や む を え ず 従 った 」 「自分 の意 志 に反 して いや い や なが ら応 じ
た」 者 が76.5%で あ った33)。要 す る に,割 当拒 否 権 は基 本 的 に実 施 さ れ て い な い と いえ る。
2)企 業 規 模 別 か らみ た 自主 権 の 状 況
国 有 企 業 を 規 模 別 にみ た 場 合,国 有 大 中 型 工 業 企 業 は1991年 で 全 国 の 工 業 企 業 総 数 の わ ず か2.5%で しか な いが,工 業 総 生 産額 の45.6%,上 納 す る利 潤 ・税 金 総 額 の60%を 担 って い る基 幹 的 な産 業 部 門 で あ る訓)。そ れ だ け に国 有 大 中 型 企 業 は小 型 企 業 に比 べ て 国 家 の統 制 が きっ く,国 家 へ の負 担(税 ・上 納 利 潤 な ど)も 重 く,企 業 自主 権 も制 約 され る傾 向が 強 い。
と くに国 有 大 企 業 は生 産 財,エ ネ ル ギ ー生 産,交 通 通 信 な どの 資 本 集 約 的 な基 幹 産 業 が そ の中 心 を 占 めて お り,従 って 政 府 の 計 画 統 制 は従 来 か ら比 較 的 厳 格 で あ っ た。
C調 査(769企 業)に 基 づ く統 計 分 析 に よ れ ば,企 業 の規 模 と 企 業 自主 権 の普 及 度 と は明 らか に反 比 例 の関 係 が あ る。 す な わ ち,そ の統 計 分 析 で は 自主 権 の変 数 と して原 材 料 の市 場 購 入,製 品 の市 場 販 売,契 約 労 働 者 比 率,留 保 利 潤 率 の4っ を選 び,大 企 業,中 企 業,小 企 業 の そ れ ぞ れ との相 関 係数 を検 証 して い る。 検 証 結 果 は,い ず れ の 自主 権 に お い て も負 の相 関
一48一
18
国有企業の経営 自主権拡大 と課題
関 係 が あ る こ とが 示 さ れ た35)。つ ま り,企 業 規 模 が 大 き くな る ほ ど 自主 権 は小 さ くな り,逆 に企 業 規 模 が小 さ くな る ほ ど 自主 権 が 大 き くな る の で あ る。
3)業 種 別 か らみ た企 業 自主 権 の状 況
企 業 自主 権 の実 施 状 況 は企 業 規 模 だ けで は な くて,業 種 に よ って も異 な るで あ ろ う。 政 府 の計 画 統 制 品 が 占あ る比 重 の 高 い業 種 部 門 で は企 業 の 自 主 権 は相 対 的 に小 さい で あ ろ う。F調 査(1637企 業)に よ れ ば,い くっ か の業 種 部 門 に お け る自主 権 の普 及 率 は表9の とお りで あ った。
表9.業 種別 の 企 業 自主 権 の 普及 率(1991年) (単位:%)
畿 投資財製造業 消費財製造業 原材料製造業 工業エネルギー 全体平均
生 産 計 画
3535.724.310.1
1:投 資 計 画
20.420.314.45.3 16.2
製 品 価 格
31.128.821.15.2 22.3
原 材 料 購 入
81.378.572.649.6 73.6
製 品 販 売
8683.469.143.5 77.1
賃 金 分 配
4634.8 43
ボ ー ナ ス 分 配 ・ ・:: 93.2
備考:パ ー セ ン トは当 該 自主 権 を有 す る企 業 の 占 め る比 率 を指 す (出 典:「 中 国 工 業 経 済 研 究 』1992年8期,13頁)
これ に よ れ ば,企 業 自主 権 の 普 及 度 は エ ネ ル ギ ー工 業 で最 も少 な く,以 下,原 材 料 製 造 業,消 費 財 製 造 業,投 資 財 製 造 業 の順 に大 き くな って い る。
この順 序 は表 記 の す べ て の 自主 権 にお いて 同 じで あ る。
ま た前 記C調 査(769企 業)は,自 主 権 の項 目 と して 原 材 料 市 場 購 入, 製 品 市 場 販 売,契 約 労 働 者 比 率,留 保 利 潤比 率 を と り,そ れ ぞれ の 自主 権 項 目 と各 業 種 との 相 関 関 係 を分 析 して い る。 表10が そ の 検 討 結 果 で あ る。
表10.各 種 自主 権 と業 種 との 相 関 関 係(回 帰 係 数)
原材 料 市 場 製 品 市 場 契 約 労 働 留 保
購 入 比 率 販 売 比 率
者 比 率利 潤 率
常 数
0.5458 0.4847 0.0859 0.4047
食 品 飲 食 業
一〇 .0257 一 〇.0772 一 〇.0035 0.0184
紡 織 業
一〇 .1748 一 〇.2044 0.0452 一〇 .oaiz
化 学 工 業
一〇.077s 一 〇 .0322 一 〇 .0035 0.0166
建 材 工 業 0.0121 一 〇 .0331 o.007i 0.0120
機 械 工 業 一〇.1085 0.0997 0.0176 0.0782
交通運輸 工業 一〇 .0500 0.0033 一 〇 .0065 0.0641
電 子通 信工業 一〇 .0265 0.1301 一 〇 .0110 0.0054
一〇 .0500 0.0033 一 〇 .0065 0.0641
電 子通 信工業 一〇 .0265 0.1301 一 〇 .0110 0.0054
採 掘 業
一〇 .2907 一〇
.3789 0.0272 一〇 .0203
(出 典:郭 晋 剛,杜 梅 燕,前 掲 論文,5頁)
表 に よ れ ば,原 材 料 購 入 で は,建 材 業 が 自主権 と の 相 関 っ ま り市 場 化 が最 も高 く,採 掘 業 や紡 織 業 が最 も低 い。 製 品 販 売 で は,機 械 ・電 子 通 信 工 業 が最 も市 場 化 が進 み,逆 に採 掘 業 や 紡 織 業 は最 も低 い。 契 約 労 働 者 比 率 で は紡 織 業 と採 掘 業 が比 較 的 高 く,機 械 工 業 で は低 い。 留 保 利 潤 率 で は 機 械 工業 が最 も高 く,紡 織 業 ・採 掘 業 はか な り低 い。 従 って,第 一 に,製
品購 入販 売 お よ び留 保 利 潤 の方 面 で は中 間 素 材 製 品 ・加 工 組 立 製 品 部 門 の 自主 権 が比 較 的大 き く,逆 に エ ネ ル ギ ー製 品 ・紡 織 な ど の消 費 財 部 門 の 自 主 権 が比 較 的少 な い とい え る。 しか し第 二 に,契 約 労 働 者 の採 用 の面 で は 全体 的 に相 関 度 は か な り小 さ いが,比 較 的 に いえ ば 紡 織 業 ・採 掘 業 で大 き く,機 械 工 業 で低 い。 この点 は,第 一 の点 と対 照 的 で あ る。
4)92年 条 例 の経 営 自主 権 の実 施 状 況
以 上,企 業 の 自主 権 の付 与 状 況 を い ろ い ろ な面 か ら検 討 して きた。 最 後 に こ こで は,92年7月 の 「経 営 メ カ ニ ズ ム転 換 条 例 」 に規 定 され た 企 業 自主 権 の実 施 状 況 を 見 て お きた い。1993年 に 入 って 各 地 方 政 府 当 局 お よ
一50一
20
国有企業 の経営 自主権拡大 と課題
び 中央 の 国務 院 の 関 係機 関 はそ れ ぞ れ 転 換 条 例 の 実 施 状 況 を把 握 す るた め に多 くの調 査 を 行 って い る。 こ こで は それ らの 調 査 に もとつ く当局 側 の経 営 自主 権 の実 施 状 況 評 価 を み て み た い。 す で に公 表 さ れ て い る主 な実 施 状 況 報 告 に は次 の よ うな もの が あ る。
①11地 区13企 業 の調 査
②11地 区16企 業 の調 査
③ 上 海18試 行 企 業 の調 査
④ 山 東 省1663企 業 の調 査
⑤16省 ・市 の調 査
⑥ 全 国15省 ・区 ・市 の調 査
(『中 国 通 信 』1993年2月25日) (『人 民 日 報 』1993年5月12日) (『人 民 日 報 』1993年5月21日) (『人 民 日報 』1993年5月31日) (『人 民 日報 』1993年6月22日) (『人 民 日 報 』1993年6月23日,7月24日)
以 上 の 各 調 査 に基 づ く企 業 自主 権 の実 施 程 度 に っ い て の政 府 当 局 の 評 価 を整 理 す る と表11の とお りで あ る。表11.当 局 に よ る企 業 自主 権 の 実 施 程 度 評 価
⑬ 内 部 機 構 設 置 権
⑭ 割 当 て 拒 否 権
B C Q U U
Q U
U
備 考Aは 「基 本 的 に 実 施 され て い る」
Bは 「一 部実 施 され て い る」
Cは 「ほ とん どま た は基 本 的 に実 施 され て い な い」 を 指 す 調 査② で は具体 的 に はA評 価 しか 分 か らな い が,BとCの 評 価 はそ れ ぞ れ6項 目 と3項 目で あ る。
上 述 の 評 価 で は各 調 査 で の 評 価 基 準 が 全 く同 じな の か ど う か,そ して
「基 本 的 に」 とか 「一 部 」 とか の表 現 の具 体 的 内 容 が 曖 昧 で あ る な ど の 疑 問 点 は残 る。 評 価 の 前 提 とな る 自主 権 の 実 施 率 は,単 純 に 自主 権 実 施 企 業 の サ ンプ ル数 全 体 に 占 め る比 率 で 計 測 して い る もの なの か,あ る い は各 企 業 で の実 施 程 度 を ラ ンク付 け しそ れ を 集 計 し平 均 値 を と っ た もの な のか 判 然 と しな い。
しか し,そ れ は それ と して 上 記 の 当 局 の 評 価 全 体 を み る と一 部 の相 違 が あ る ものの,明 らか に共 通 した傾 向 も見 て とれ る。 す なわ ち,① ② ③ ④ お よ び⑦ の 自主 権 はす べ てA評 価,⑤ 輸 出 入 権 と⑭ 割 当 拒 否 権 は いず れ もC 評 価,資 産 処 分 権 はす べ てB評 価 で そ れ ぞ れ 共通 して い る。 ⑥ 投 資 意 志 決 定 権 と⑩ 労 働 雇 用 権 は評 価 が 分 か れ て い るがC評 価 が比 較 的 多 い。 そ の他 の 自主 権 も評 価 が 分 か れ て い るが,強 いて いえ ばB評 価(⑨ ⑪)な い しA 評 価(⑬)が 比 較 的 多 い。
14の 企 業 自主 権 の う ち,8っ の 権 限 が 「基 本 的 に実 施 さ れ 」,4つ の 権 限 が 「部 分 的 に実 施 され」,2っ の権 限 が 「ほ とん ど実 施 さ れ て い な い」
との 最近 の政 府 当 局 の 評価(上 記 ⑥)に っ い て は,や や過 大 評 価 で は な い か との 印 象 もあ るが36),こ こで は立 ち入 らな い。 いず れ にせ よ,企 業 自主 権 の 保 有 ・実 施 状 況 は従 前 よ り は前進 して い る こ と,同 時 に 自立 的 な経 営 主 体 と して の 企 業 の 水 準 か らは まだ か な りの ギ ャ ップが あ り,か な り不 十 分 な状 況 に あ る こ と は明 か で あ ろ う。
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国有企業 の経営 自主権拡大 と課題
4経 営 自 主 権 と 制 約 要 因
企 業 の経 営 自主 権 が 拡 大 され っ っ あ る と は いえ,ま だ か な り不 十 分 で 徹 底 され な い の は な ぜ な の か 。 企 業 の 自主 権 拡 大 の 制 約 要 因 と して は,① 政 府 機 関 の統 制 干 渉,② 企 業 環 境 と くに市 場 シ ス テ ム の未 確 立 ・未 整 備,③ 企 業 側 の経 営 不 良 と受 動 的 姿 勢 が 考 え られ る。 こ こ で は紙 面 の制 約 もあ り,
① の制 約 要 因 を中 心 と しっ っ,② と③ を もあ わせ て検 討 して み た い。
1)政 府 の 統 制
1980年 代 後 半 以 降,行 政 と企 業 と の分 離,所 有 と 経 営 の 分 離,企 業 経 営 自主 権 の 確 立 を 目指 す 改 革 方 針 が 追 求 され なが ら も,と く に1988年 の 企 業 法 が 企 業 の 自主 権 を規 定 しなが ら も実 際 に は あ ま り実 施 さ れ な か った 直接 的 な 原 因 は政 府 当 局 の 統 制 干 渉 が 継 続 して い る こ と に あ る。 この政 府 の統 制 干 渉 の背 景 にっ いて は三 つ の レベ ルか らみ る こ とが で き る。 す な わ ち第 一 に,市 場 経 済 化 に応 じて 政 府 行 政 職 能 が 転 換 され ず,旧 来 の行 政 的 管 理 ス タイ ル が依 然 と して継 続 して い る こ とで あ る 。 第 二 に1888年 か ら の イ ン フ レ抑 制 と経 済 引 き締 め 調 整 の過 程 にお いて 政 府 に よ る マ ク ロ経 済 統 制 強 化 と社 会 安 定 化 の政 策 が選 択 され た こ と,第 三 に は政 府 官 僚 組 織 側 の既 得 利 益,既 得 権 限 の維 持 で あ る。
まず,旧 来 の行 政 的統 制 管 理 が継 続 し,い わ ゆ る行政 と国 有 企 業 とが 未 分 化 で あ る こ とに つ い て は,政 府 の職 能 に お い て行 政 管 理 と資 産 管 理 とが 未 分 化 の ま ま一 体 とな って い る こ と(い わ ゆ る 「政 資 不 分 」)こ とが 根 源 で あ る との考 え が近 年 中国 側 よ り提 起 され て い る訂)。つ ま り,政 府 の 企 業 主 管 当局 は企 業 に対 す る行 政 管 理 者 で あ るだ け で な く,同 時 に企 業 資 産 の 所 有 者 で あ る こ とが企 業 の所 有 権 と経 営 権 との分 離 を 不 可 能 に し,企 業 に 対 す る行 政 当局 の統 制 干 渉 を不 可 避 な もの と して い る との 考 え で あ る。 こ う した条 件 の も とで は,政 府 当局 が行 政 上,企 業 側 に い か に 自主 経 営 権 を 与 え た と して も,現 実 に は なか な か企 業 の 自主 権 は確 立 され な い。 な ぜ な ら,政 府 当局 は同 時 に企 業 資 産 の所 有 権 者 で あ り,従 って そ の 資格 にお い
て 企 業 に対 して行 政 的 に 監督 統 制 す る こ とが で き るか らで あ る。 例 え ば, 企業 の 資産 を拡 大 発 展 させ る こ とを 目的 と した設 備 投 資 の決 定 に お い て, また企 業 の資 産 処 分 の決 定 に お い て,企 業 資 産 の所 有 者 で あ る政 府 当局 の 批 准,決 定 は不 可 避 で あ っ た。
従 って,企 業 の資 産 所 有 権 の所 在 と範 囲 を明 確 に し(い わ ゆ る 「財 産 権 改 革 」)た うえ で,そ の 資 産管 理 職 能 と行 政 管 理権 職 能 と を 組 織 的 に も, 職 能 的 に もは っ き り区 別 して こそ,は じめ て政 府 行 政 と企 業 経 営 との分 離 を実 現 で き る とす るの で あ る。 この考 え方 は企 業 改 革 の新 た な方 針 とな っ て い る。 現 在,基 本 的 な改 革 方 向 は株 式 制 に よ る財 産 権 の 明確 化 と政 府 の 資産 管 理 職 能 の分 離 独 立 化 を め ざ して い るが,そ の た め の テ ス ト試 行 は ま だ始 ま った ば か りで あ る。 従 って,当 面 に お い て政 府 当局 の企 業 に た い す る行 政 的統 制 干 渉 を是 正 す る基 礎 的 条 件 は未 確 立 で あ り,こ の 問題 は まだ 解 決 困難 で あ ろ う。
次 に,1988年 秋 の経 済 引 き締 め ・調 整 政 策 の 導 入 は 加 熱 す る経 済 需 要 と激 しい イ ン フ レを抑 制 す るた め に は不 可 欠 で あ った が,企 業 の経 営 自主 権 拡 大 に と って は制 約 要 因 と もな った。1988年 秋 か ら1991年 秋 ま で の 経 済 引 き締 め過 程 で生 じた こ とは,第 一 に政 府 が そ れ まで 企 業 に与 え て い た 自主権 の一 部 を 回収 した こ とで あ り,第 二 に政 府 の企 業 に 対 す る統 制 の 仕 方 が少 し変 化 し,新 た な統 制 形 態 が増 加 した こ とで あ る。
第 一点 の企 業 自主権 の 回収 に つ い て いえ ば,政 府 は イ ン フ レを抑 制 す る た め に 財政 ・金 融 の マ ク ロ統 制 を 強化 した が,こ の な か で 例 え ば,① 企 業 の投 資 規模 の審 査 認 可権 限 が 上級 政 府 に 回収 され た こ と,② 企 業 の 技 術 改 造 も各 関係 当局 の審 査批 准 が 改 め て要 求 され る状 況 に戻 った こ と,③ 価 格 の 審 査 権 限 が一 部 回収 され,企 業 の 価 格 設 定 範 囲 も よ り制 限 され た こ と,
④ 対 外 貿 易 権 の 制 限 な ど,が み られ た38)。
ま た経 済 引 き締 あ に と も な う企 業 経 営 の悪 化 の なか で,社 会 安 定 化 の政 策 的 考 慮 か ら企 業 の労 働 者 人 事 権 と賃 金 分 配 権 が制 限 さ れ た。 労 働 者 の人
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事 権 で は例 え ば,① 労 働 組 織 編 成 の 合 理 化 と過 剰 人 員 の再 配 置 を め ざす 改 革(「 優 化 労 働 組 合 」)が 多 くの 企 業 で 相 次 いで 停 止 され,② 就 職 待 ち人 数 を減 らす た め に政 府 労 働 部 門 はす で に人 員 過 剰 で 困 って い る企 業 に対 して 新 規 労 働 者 を受 け入 れ させ た。 こ の点 は大 企 業 に な れ ば な る ほ ど,よ り多 くの労 働者 の採 用 を 要 求 され た と い う39)。ま た賃 金 調 整 に お い て 賃 金 に 占 め る 「変動 賃 金 」 の部 分 が 固 定 化 さ れ,元 来 変 動 賃 金 を受 け て い な い労 働 者 もそ れ を 支給 され る こ と に な り,結 果 と して賃 金 の分 配 が平 均 化 さ れ た
と い う⑥。
第 二 の政 府 の統 制 ・干 渉 方 法 の 変 化 にっ い て は,例 え ば,① 旧来 の指 令 性 計 画 は減 少 した もの の,い ろ い ろ な名 目 の行 政 に よ る検 査 と比 較 評 定 が 増 大 した こ と,② 企 業主 管 部 門 の 干 渉 は相 対 的 に減 少 したが,い ろ い ろ な 社 会 団 体 単 位 か らの干 渉(割 当 て)が 増 加 した こ と,③ 利 益 が 増 え て い る 企 業 に た い す る無 償 の貢 献 を要 求 す る部 門 が 増 え た こ と,逆 に企 業 が 経 営 困 難 に あ る時 に援 助 して くれ る部 門 が減 少 した こ と,④ 企 業 内 に政 府 部 門 に対 応 す る機 構(「 対 口機 構 」)を 設 置 す るよ う指 令 す る干 渉 が 増 加 した こ
と,な どが 指 摘 され て い る41)。
こ う して経 済 引 き締 め政 策 の結 果,実 際 上 企 業 自主 権 は縮 小 した。 杜 梅 燕 に よれ ば,「 全 体 的 に言 って,こ の 二 三 年,企 業 自主 権 が 保 障 さ れ な い 問 題 は確 か に発 展 し,市 場 不 景 気,需 要 の軟 化 の状 況 の も とで この種 の波 動 は企 業 が 市 場 の衝 撃 に抗 す る能 力 を弱 め,矛 盾 は さ らに先 鋭 深 刻 に な っ た。 特 に国 有 大 中 型 企 業 が そ うで あ る」 とい テ2)。あ る調 資 料 査 に よ る と 88年 の企 業 法 が 規 定 した13条 の 自主 権 の なか で真 に実 施 され た の は 「二 っ の 条 項 と半 分 の 条 項 」 にす ぎ なか った。 す な わ ち,一 っ の条 項 とは製 品 の 自主 計 画 権 で あ り,残 りの 一 条 項 半 と は製 品 の販 売 権,留 保 資 金 の処 分 権,賃 金 ボ ー ナ ス分 配 形 式 決 定 権,機 構 設 置 権 の そ れ ぞ れ の条 項 の三 分 の 一 が 企 業 に与 え られ た こ とを 指 して い る昭)。 ま た経 済 引 き締 め政 策 の結果 企 業 法 の 規 定 した権 利 の 中 で 実 際 に 残 って い るの は一 つ 半 にす ぎな い,と