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行政裁判

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◎論説

中 国 の 行 政 訴 訟 と 行 政 裁 判 応 松 年

・・⁝

中国の行政訴訟法は︑一九八九年四月四日に公布され︑

一九九〇年一〇月一〇日より施行された︒

行政訴訟制度は︑中国の一九八二年の憲法で確立した原

則にその設立が求められていた︒﹁中華人民共和国憲法﹂第

四一条は︑次のように規定している︒中華人民共和国公民

は︑﹁いかなる国家機関と国家勤務人員の法に違反し職責を

尽くさない行為に対してであれ︑国家機関に対し申立を提

出し︑告発あるいは摘発する権利を有する﹂︒﹁国家機関と

国家勤務人員が公民の権利を侵犯して損失を被った人は︑

法律の規定に従って賠償を受ける権利を有する﹂︒ 憲法のこの原則を実現するために︑一九八二年に施行さ

れた﹁中華人民共和国民事訴訟法(試行)﹂は︑その第三条

第二項で︑次のように規定している︒﹁人民法院が審理する

と法律で規定する行政事件は︑本法の規定を適用する﹂︒こ

れは︑以下のことを述べたものである︒第一に︑今後︑公

民は︑法により法院に行政事件の訴訟を提起する権利があ

る︒第二に︑法院は︑﹁民事訴訟法(試行)﹂の手続規定に

基づいて︑行政事件を受理し︑審理する︒第三に︑公民が

提起する行政訴訟事件には︑単行法の規定がなければなら

ない︒さもなければ︑法院は受理しない︒﹁民事訴訟法(試

行)﹂のこの規定は︑わが国が整備された行政訴訟制度を設

ける上で喜ばしい第一歩となった︒行政訴訟を提起できる

と規定した法律や法規は︑一九八二年から一九八九年の行

中国 の行政 訴訟 と行政裁判

87

(2)

政訴訟法公布までの間だけでも︑一三〇余にのぼる︒その

うち最も重要なものは︑一九八七年一月一日発効の﹁中華

人民共和国治安管理処罰条例﹂である︒治安管理処罰事件

は︑件数の多さや波及範囲の広さ︑そのうえ被告が公安機

関ということもあって︑大きな反響を呼び︑行政訴訟法の

誕生を直接促す推進力となった︒治安処罰行政訴訟の実践

もまた︑行政訴訟法の制定に理論と実践の拠所を提供した

のである︒これが︑中国で行政訴訟法が制定された法的な

条件である︒

中国の行政訴訟制度は︑八〇年代の改革開放︑市場経済

の建設︑民主と法制の急速な発展の情勢下でできあがった

ものである︒

中国が計画経済から市場経済へと転換したことが︑行政

訴訟制度誕生の最も根本的条件である︒計画経済の下では︑

公民︑法人とその他の組織はすべて︑企・事業単位を含め

て︑実際には独立した法律主体資格がなく︑いかなる場合

にも行政主体の行政命令に従わねばならなかった︒行政主

体に権利を侵害されたと法院に告発することもできなかっ

たし︑そのような行政訴訟制度も必要ではなかった︒市場

経済の下で︑独立︑自治の市場主体が生まれると︑公民︑

法人とその他の組織は︑自己の権利と法律主体資格を持つ

ようになり︑政治体制の改革や民主と法治の発展にともな

い︑新しい権利意識が芽生えた︒公民︑法人あるいはその 他の組織は︑自己よりも強大な行政主体を目の前にして︑

自己の合法的権益が行政主体に侵害された場合に︑ひとつ

の強力な法律制度による自らの合法的権益の保護を必要と

した︒行政訴訟法は︑このような時運に応じて生まれた︒

行政訴訟制度は︑訴訟制度であるのみならず︑いうなれば

人権を守る民主制度なのである︒行政訴訟法の公布︑施行

は︑中国が民主と法治に向かっていることを示す基本的な

指標のひとつなのである︒

中国の行政訴訟は︑一種の一方的な訴訟制度である︒行

政機関の具体的行政行為により自己の合法的権益が侵害さ

れたと考える公民︑法人あるいはその他の組織は︑常に原

告であり︑具体的行政行為をなした行政機関は︑被告でし

かない︒行政機関は︑行政訴訟の原告になることができず︑

訴訟を起こす権利もなけれぼ︑反訴の権利もない︒原・被

告の立場が変わることは決してない︒

行政訴訟法第五条は︑次のように規定している︒人民法

院は︑行政機関の﹁具体的行政行為が合法か否かに対して

審査を行なう﹂︒これはつまり︑第一に︑行政訴訟法によっ

て︑人民法院は︑行政機関の具体的行政行為が合法か否か

に対して﹁審査﹂を行なう権利を取得した︒すなわち︑法

(3)

院には︑具体的行政行為が合法か否かに対して︑(訴えの)

受理︑審理と判決を行なう権限がある︒この範囲内で︑具

体的行政行為が合法か否かに対する最終裁判権は法院に帰

する︒中国は︑三権分立を実行していないので︑司法権の

行政権に対する審査権は︑憲法ならびに法律による授権を

来源とする︒

第二に︑中国の実情に基づき︑行政訴訟において︑人民

法院は︑行政機関の具体的行政行為が合法か否かに対する

審査権を持つが︑抽象的行政行為に対して審査を行なう権

限はない︒抽象的行政行為に対する告発を受理する権限は

なく︑当然︑審理と裁判を行なう権限はさらにない︒抽象

的行政行為に対する審査権は︑憲法と法律の規定により︑

抽象的行政行為を行なった行政機関の上級行政機関と︑同

級の人民代表大会およびその常務委員会に属している︒一

九九九年に採択された行政不服審査法(﹁行政復議法﹂)は︑

前に述べた規定の範囲をも越えて︑公民︑法人あるいはそ

の他の組織が規約以下(中国ではこれをその他の規範性文

件と称する)の抽象的行政行為に不服の場合︑再議を申請

できる︑と規定している︒

次のことは指摘しておかねばならない︒法院が具体的行

政行為に対して審査を行なう場合︑必然的に︑具体的行政

行為を行なう基礎となった抽象的行政行為が合法か否かと

いう問題に触れなければならず︑もし抽象的行政行為が違 法であれば︑それに基づいてなされた具体的行政行為も当

然︑違法であるため︑必ず取り消さなければならない︒具

体的行政行為の取消はまた︑依拠とされた抽象的行政行為

が︑もはや実践において︑施行と適用のすべがないことを

意味するが︑法院には当該の抽象的行政行為が無効である

ことを明文化する権限はないのである︒

第三に︑法院が具体的行政行為に対して審査する内容は︑

当該の行為が合法か否か︑である︒それゆえ︑行政訴訟法

は︑まず︑具体的行政行為が合法か違法かの基準を確立し

なければならなかった︒行政訴訟法第五四条の規定によれ

ば︑合法的な具体的行政行為は︑必ず︑証拠が確実であり︑

法律や法規の適用が正しく︑法定の手続を踏んだものでな

ければならない︒この三つの条件を同時に満たしてはじめ

て︑その具体的行政行為が合法であり︑法院は判決を維持

できる︒違法な具体的行政行為とは︑主要な証拠の不足︑

法律や法規の適用の誤り︑法定の手続違反︑職権の逸脱︑

職権の濫用︑法定の職責の履行の引き延ばし・不履行︑で

ある︒このうちひとつでも違反行為があれば︑その具体的

行政行為は取り消すことができる︒具体的行政行為が合法

か違法かの基準を明確に提示したことは︑中国では初めて

のことである︒これにより︑行政機関︑法院︑さらに公民︑

法人あるいはその他の組織が︑具体的行政行為が合法か否

かを判断する際の︑ひとつの統一した基準をもったことは︑

8g一 中国の行政 訴訟 と行政裁判

(4)

法による行政を促進するうえで重要な意義を有している︒

次に︑人民法院が具体的行政行為の合法性を審査するこ

とは︑行政訴訟では一般的な要求であるが︑具体的行政行

為の合理性を審査することは︑例外に属する︒この例外が︑

行政訴訟法第五四条に規定されており︑行政処罰が著しく

公正を欠いていれば︑変更できる︑とされた︒﹁変更﹂と

は︑行政機関の行政処罰行為が性質の面では正しいが︑自

由裁量で行政処罰権を行使する際に著しく公正を欠いてい

ること︑すなわち︑行政機関が行政処罰の範囲内で自由裁

量権を行使する際に不合理であることを確認するものであ

る︒甚だしい不合理とは︑著しく公正を欠くことであり︑

法院は変更の判決をすることができる︒このことからわか

るように︑中国の行政訴訟法の規定によれば︑行政機関の

自由裁量権の行使に対する法院の審査権は︑行政処罰の範

囲に限られている︒行政機関の︑その他の領域における自

由裁量行為は審査されない︒注目すべきことは︑法院が行

政の自由裁量権を審査する範囲は大きくないが︑この審査

権にはある特徴がある︑ということである︒それは︑変更

できるということであるが︑つまり︑法院は︑行政機関の

行政処罰行為が著しく公正を欠いていると見なした場合︑

具体的情況に基づいて直接︑変更を求め︑自ら公正な処罰

決定をすることができるのである︒

ある意味で︑行政訴訟法第五条の合法性審査に関する規 定は︑つまるところ︑行政機関の行為が人民法院の審査を

受けねばならない範囲を画定したものである︒しかし同時

に︑行政訴訟法の第二章は︑特に行政訴訟の事件の受理範

囲についても規定している︒この章の規定は︑肯定の部分

と否定の部分に分けることができる︒肯定とは︑すなわち︑

受理できる範囲のことであり︑まず列挙法を取っており︑

以下のものがある︒行政処罰︑行政強制措置︑経営自主権︑

許可証と免許︑人身権と財産権の保護の請求︑救済金︑義

務の履行の違法な要求︑およびその他の人身権︑財産権を

侵害する行政事件︑である︒これら八項以外に︑﹁法律や法

規に行政訴訟を提起できると規定されているその他の行政

事件﹂をも受理しなければならない︒否定とは︑つまり︑

受理しない行政事件のことで︑四項を列挙する︒すなわち︑

国家行為︑抽象的行政行為︑行政機関の職員に対する賞罰

任免︑法律に行政機関が最終的に裁決すると規定されてい

る行為︑である︒

行政訴訟法に規定された事件の受理範囲をどのように解

釈するかは︑正に中国行政法学界の熱い論争のテーマとなっ

ている︒ひとつの意見は︑次のようなものである︒行政訴

訟法第二章における事件の受理範囲を肯定した部分の規定

に基づき︑人民法院の事件の受理範囲は︑行政機関の具体

的行政行為が公民︑法人あるいはその他の組織の人身権︑

財産権を侵害する行政事件に限られる︒他の事件は受理し

(5)

ない︒もうひとつの意見は︑次のようなものである︒行政

訴訟法第二条︑第五条の規定に基づき︑人民法院の事件の

受理範囲は︑行政機関の具体的行政行為であり︑それには︑

人身権︑財産権を侵害する行政事件もあれば︑その他の権

利︑例えば教育を受ける権利等の権利︑を侵害する行政事

件も含まれている︒その理由は︑行政訴訟法第二章第一一

条に規定する肯定部分は︑公民が理解しやすいように例を

挙げたにすぎず︑行政訴訟法第二章第一二条は︑明確に四

つの情況を受理しないものと規定しているが︑肯定と否定

の間にある権利については︑法律は受理できないとは決し

て規定していないので︑受理範囲に入れるべきである︑と

いうものである︒これに基づけば︑中国の行政訴訟の事件

の受理範囲は相当広いことになる︒私は後者の観点を支持

中国の行政訴訟法の証拠問題に関する規定は︑中国の行

政訴訟制度でも特徴ある一章である︒行政訴訟法第三二条

は︑次のように規定している︒﹁被告は︑なされた具体的行

政行為に対して立証責任があり︑当該の具体的行政行為を

なした証拠と依拠した規範的文献を提供しなけれぼならな

い﹂︒立証責任とは︑立証責任を負う当事者が自己の主張を 提出する際に︑証拠を提供して自己の主張を証明しなけれ

ばならず︑さもなければ敗訴という法的に不利な結果を負

うことを指す︒立証責任制度は︑勝訴・敗訴につながる責

任制度である︒中国の行政訴訟では︑被告行政機関が訴え

られている具体的行政行為に対する立証責任を負っており︑

それには︑当該の具体的行政行為をなした証拠と依拠した

規範的文献が含まれる︒被告行政機関は︑訴訟で自己のな

した具体的行政行為が合法か否かに対して証拠を提供しな

けれぼならない︒もし主要な証拠が不足するか︑あるいは

法律や法規の適用が間違っていれぼ︑敗訴という不利な結

果を負うことがある︒この規定が行政訴訟の特殊性に符合

するものであることには︑疑いの余地がない︒なぜなら︑

行政訴訟で︑人民法院が審査するものは具体的行政行為の

合法性であるため︑行政機関は︑自己がなした具体的行政

行為が合法か否かについて証拠を提供するのが当然だから

である︒これは︑行政機関が具体的行政行為をなす際に︑﹁事実を依拠とし︑法律を規準とする﹂という原則に厳格に

従うよう促すに際して重要な意義を持っている︒のみなら

ず︑この立証責任制度は︑公民︑法人あるいはその他の組

織の合法的権益を保護し︑迅速に決着するのにも有利なの

である︒

行政訴訟法の証拠問題に対するもうひとつの重要な規定

は︑﹁訴訟の過程で︑被告は自ら原告と証人から証拠を収集

中国の行政訴訟 と行政 裁判

91

(6)

してはならない﹂(第三三条)︒この制限的規定の目的は︑

行政機関に︑具体的行政行為をなす際には︑﹁先に証拠を取

り︑後に裁決する﹂という基本的手続規則に厳格に従うべ

きで︑裁決をしてしまって︑そのうえ公民︑法人あるいは

その他の組織が行政訴訟を提起してから証拠を収集しよう

としてはならないよう︑求めることにある︒それは︑同時

に︑行政機関が職権を行使することに対して厳しい要求を

出したものであり︑行政機関は充分な証拠を掌握してはじ

めて︑具体的行政行為をなすことができ︑決していい加減

であったり粗雑に事を行なってはならないのである︒

中国の行政訴訟制度には手続の面でも多くの特徴がある︒

第一に︑管轄に関するものがある︒一般の行政事件では︑

第一審は︑基層人民法院が管轄する︒中級人民法院の管轄

に属すものには次のものがある︒発明特許権の確認事件︑

税関の処理事件︑国務院の各部門あるいは省︑自治区︑直

轄市人民政府がなした具体的行政行為に対して訴訟が提起

された事件︑本管轄区内の重大で複雑な事件︒高級人民法

院は︑本管轄区内の重大で複雑な一審行政事件を管轄する︒

最高人民法院は︑全国規模の重大で複雑な一審行政事件を

管轄する︒行政裁判では︑二審終審制を実行する︒ 第二は︑再議に関するものである︒行政機関と公民︑法

人あるいはその他の組織との行政争議を解決するには二つ

の方法がある︒ひとつは︑行政機関の上級機関あるいは法

律や法規に規定された組織に行政再議を申請するものであ

り︑もうひとつは︑人民法院に行政訴訟を提起するもので

ある︒中国はすでに行政訴訟制度を設けているが︑再議と

訴訟の関係では︑各国と中国の法律とで異なる規定があり︑

それはおおまかに下記の数種である︒先に再議を申請しな

ければならず︑再議の決定に不服であれば︑そこではじめ

て行政訴訟が提起できる︒再議を申請するか︑直接訴訟を

起こすかは︑当事者が選択する︒再議を申請すれば︑行政

訴訟は提起できない︒あるいは︑再議せずに︑直接︑法院

に起訴する︒わが国の行政訴訟法の規定は︑当事者の自由

選択を原則としている︒法律や法規に特に規定したものが

あれば︑その規定に従う︒

第三は︑起訴と立件に関するものである︒公民︑法人あ

るいはその他の組織で具体的行政行為によりその合法的権

益が侵害されたと考えるものは︑人民法院に行政訴訟を提

起できる︒﹁考える﹂ことは︑一種の主観的な認定で︑確か

に侵害したか否かは︑人民法院の審理に待たねばならない︒

当然︑公民︑法人あるいはその他の組織が訴訟を提起すれ

ば︑明確な被告が存在しなければならないし︑具体的訴訟

請求と事実の依拠がなければならず︑人民法院の事件の受

(7)

理範囲と︑訴えを受理する人民法院の管轄に属するもので

なければならない︒人民法院は︑起訴状を受け取った後︑

審査を経て︑七日以内に立件するか︑あるいは受理しない

と裁定しなければならない︒原告が裁定に対して不服であ

れば︑上訴できる︒

第四は︑審理における何項かの規定である︒

一︑被告の答弁︒被告行政機関は︑起訴状を受け取った

後︑十日以内に人民法院に具体的行政行為をなしたことに

関する資料を提出し︑かつ答弁状を提出しなければならな

い︒被告が答弁状を提出しない場合︑それは答弁の権利を

放棄したことになり︑人民法院の審理には全く影響しない︒

人民法院は︑答弁状を受け取った日から五日以内に︑答弁

状の副本を原告に発送しなければならない︒

二︑公開審理︑合議と忌避(﹁回避﹂)︒人民法院による行

政事件の審理は︑すべて公開で行なう︒ただし︑国家機密︑

個人のプライバシーおよび法律が特に規定するものは除く︒

人民法院による行政事件の審理は︑すべて合議制法廷を

組織して行なう︒合議制法廷は︑三人以上の奇数でなけれ

ばならない︒

当事者は︑裁判官が本件と利害関係あるいは何らかの関

係があり︑公正な裁判に影響するであろうと見なせば︑裁

判官の忌避を申請する権利を有する︒

三︑二種の提訴の取り下げ︒人民法院の二度の合法的召 喚を経て︑原告が正当な理由なくして出廷を拒む場合︑提

訴の取り下げを申請したと見なす︒人民法院が行政事件に

対して判決︑裁定を宣告する以前に︑原告が提訴の取り下

げを申請するか︑あるいは被告がその具体的行政行為を改

め︑原告が同意しさらに提訴の取り下げを申請した場合︑ムむ許可するか否かは︑人民法院が裁定する︒

被告が正当な理由なくして出廷を拒んだ場合︑欠席で判

決する︒

四︑訴訟の妨害︒原告・被告を含めて︑訴訟参与人ある

いはその他の者が訴訟行為を妨害すれば︑人民法院は︑情

状の軽重に基づき︑訓戒︑始末書提出の命令︑あるいは千

元以下の科料︑一五日以下の拘留に処し︑犯罪を構成するムユ場合︑法により刑事責任を追及できる︒

第五は︑法律の適用に関するものである︒人民法院によ

る行政事件の審理は︑法律や法規を依拠とし︑規約を参照

する︒地方条例は︑本行政区域内で発生した行政事件に適

用する︒規約を参照するとは︑すなわち︑法律︑行政法規

の規定に符合する規約については︑法院はそれを参照して

審理しなければならず︑法律︑行政法規の原則︑精神に適

合しないか完全には適合しない規約については︑法院は柔

軟に処理する余地を有する︑ということである︒

第六は︑判決に関するものである︒行政訴訟法は︑一審

判決に対して次のように四種の判決形式を規定している︒

中国の行政訴訟 と行政 裁判

93

(8)

一︑維持判決︒具体的行政行為の主要な証拠が確実であ

り︑法律︑法規の適用が正確で︑法定手続に適合している

ときは︑維持の判決をする︒

二︑取消し判決︒具体的行政行為の主要な証拠が不足し︑

法律︑法規の適用が誤まっており︑法定手続に違反し︑職

権を超え︑職権を濫用したときは︑判決を破棄︑一部破棄

し︑かつ被告に重ねて新たに具体的行政行為を行なうよう

判決することができる︒

三︑履行判決︒被告が法定の職責を履行せずあるいは履

行を引延ばしたときは︑一定の期間内にそれを履行するよ

う判決する︒

四︑変更判決︒行政処罰がきわめて明らかに公正を失し

ているときは︑変更の判決ができる︒

人民法院は︑立件の日から三か月以内に一審判決をしな

ければならない︒当事者が一審判決に不服であれば︑送達

の日から一五日以内に一級上の人民法院に上訴を提起する

権利がある︒当事者が人民法院の一審裁定に不服であれば︑

裁定書送達の日から一〇日以内に一級上の人民法院に上訴

する権利がある︒

人民法院は︑上訴事件を審理する場合︑上訴状を受け取っ

た日から二か月以内に終審判決をしなければならない︒

第七は︑執行に関するものである︒行政機関が︑判決︑

裁定の履行を拒絶する場合︑法院は以下の措置を取ること ができる︒

一︑返還すべき罰金あるいは支払うべき賠償金は︑銀行

に当該の行政機関の口座から振替えるよう通知する︒

二︑規定の期限内に法院の判決を履行しない場合︑期限

満了の日から︑当該の行政機関に対し一日につき五〇から

一〇〇元の罰金に処する︒

三︑当該の行政機関の一級上の行政機関あるいは監察︑

人事機関に司法進言を提出する︒

四︑判決︑裁定の履行を拒み︑情状甚だしく犯罪を構成

するものは︑法により主管者と直接責任者の刑事責任を追

行政賠償は︑行政訴訟の必然的結果であり︑賠償責任が

なければ︑行政訴訟は空論である︒中国には︑当時︑まだ

国家賠償制度がなかったため︑行政訴訟法で行政賠償につ

いて必要な規定をして︑公民︑法人あるいはその他の組織

の合法的権益が具体的行政行為の侵害により損害を被った

際に︑早期に賠償を獲得できるようにしてきた︒しかし︑

行政訴訟法は︑結局のところ手続法であり︑実体内容の面

で規定が多すぎることは適当ではない︒そのため︑行政訴

訟法の賠償に関する規定は︑大体において賠償が実行され

(9)

るようにすることが限度であって︑全三条で次のように四

つの問題を解決している︒

一︑行政賠償の構成要件︒行政訴訟法第六七条は︑次の

ように規定している︒公民︑法人あるいはその他の組織が

賠償を請求できる権利を持つ要件は︑公民︑法人あるいは

その他の組織の合法的権益が損害を被り︑当該の損害が行

政機関あるいは行政機関職員のなした具体的行政行為の侵

害により被ったものである︑というものである︒行政訴訟

法には明確に帰責原則は提示されていないが︑条文の規定

に︑この帰責原則が違法なものであることを見いだすこと

ができる︒

二︑行政賠償訴訟の手続︒行政賠償訴訟の手続は︑基本

的に行政訴訟手続と同一である︒行政訴訟法第六七条の規

定によれば︑相違が二点ある︒

第一は︑単独で賠償請求が提起されれば︑まず行政機関

が解決しなければならない︒行政機関の処理に不服であれ

ば︑さらに人民法院に起訴する︒この規定によれぼ︑行政

賠償請求には二種の異なる手続がある︒ひとつは︑単独提

起であり︑それは行政先行原則に従うもので︑すなわちま

ず行政機関が解決し︑不服の場合はじめて賠償訴訟を提起

できる︒もうひとつは︑一括提起であり︑その手続は行政

訴訟と同じである︒

第二は︑賠償訴訟には調停を適用できる︒これは第五〇 条と対応するものである︒行政訴訟法第五〇条は︑人民法

院による行政事件の審理には調停を適用しない︑と規定し

ている︒これはひとつの普遍的規定であるが︑賠償訴訟は

例外で︑賠償訴訟には調停が適用できる︒

三︑国の責任と追徴賠償︒行政訴訟法第六八条には︑行

政賠償は国が責任を負うという原則が確立されている︒行

政機関あるいは行政機関の職員が具体的行政行為をなし︑

公民︑法人あるいはその他の組織の合法的権益を侵害し負

わせた損害は︑行政機関が責任を持って賠償する︒第六九

条の︑賠償費用については各級の財政からそれぞれ支払う

という規定と関連させれば︑結局のところ︑国が責任を負

うのである︒

国が賠償責任を負い︑行政機関が賠償義務を履行した後︑

行政機関は︑故意あるいは重大な過失のある職員に︑一部

あるいは全部の賠償費用を引き受けるよう命令する︒換言

すれば︑行政機関の職員に対して追徴賠償する過程では︑

過失原則を適用するが︑それは普通の過失ではなく︑故意

あるいは重大な過失の場合である︒つまり︑重過失追徴賠

償原則なのである︒

四︑賠償費用︒賠償費用は各級の財政からそれぞれ支払

う︒行政訴訟法はまたさらに︑各級人民政府は責任がある

行政機関に一部あるいは全部の賠償費用を支払うよう命令

中国の行政 訴訟 と行政裁判

95

(10)

中華人民共和国国家賠償法は︑一九九四年五月一二日に

公布された後︑一九九五年一月一日から施行された︒国家

賠償法は︑行政賠償の範囲︑条件︑手続や方法︑費用等に

関してより具体的︑全面的な規定をしている︒

行政訴訟法が公布されてすでに一〇年が経過した︒中国

の行政訴訟がたどった道は紆余曲折のある困難なもので

あったが︑全般的に見れば︑やはり﹁意気揚々と前進して

いる﹂と考えることができる︒このことは︑下表のような

数字から説明することができる︒

このデータが示すように︑この一〇年間で︑すでに五六

万人近い人々が行政訴訟という武器を使って自己の人身権

と財産権を守ってきた︒その結果︑より多くの人々が︑行

政訴訟法が人権を守る法律であることを知った︒この一〇

年来︑法院が受理した行政事件の件数は︑年を追って増加

している︒一九九八年と一九九九年の行政訴訟事件は︑一

〇年間における行政訴訟事件総数のおよそ三五%を占めて

おり︑この増加傾向は依然として続いている︒現在︑行政

事件は︑すでに︑土地︑公安︑都市建設等の行政が管理す

る各領域に及んでおり︑行政訴訟の影響は引き続き拡大し

ている︒行政訴訟における公民の勝訴率は四〇%に近い︒

全 国 で各 年度 に受 理 され た 一 審行 政事 件 の情 況

年度

一 審 受 理 事件 (件)

前 年 比増 (%)

1989 9,934

1990 13,006 30.92

1991 25,667 97.35

1992 27,125 5.68

1993 27,911 2.90

1994 34,567 23.84

1995 51,370

,・

1996 79,527 54.81

1997 90,557 13.87

..・

':!11

約8

1999 98,759 0.38

出 所:「中 国 青 年 報 」1999年4月16日 。  

中国が行政訴訟制度を設けたことに対する評価は︑中国

がおかれている環境を抜きにしてはできない︒数千年に及

ぶ官貴民賎の専制の伝統がある国において︑国家権力は極

めて強大であり︑﹁官が民を管理する﹂ことはあっても﹁民

が官を告訴する﹂ことはないのが一般的な社会通念であっ

た︒民が官を告訴するという言い方はあまり適切ではない

が︑一面では行政訴訟の本質を反映している︒この転換は

歴史的なものである︑といえる︒そのため︑この法律の誕

生は︑中国の民主と法制の建設の真の始まりを示している︑

という人もある︒行政訴訟法が中国社会に与えた影響は︑

おおまかに以下の数点に帰納することができる︒

一︑社会矛盾を解決し︑社会の安定を守る︒

現実の社会において︑行政機関の管理活動は範囲が広く︑

(11)

公民との接触が頻繁であるので︑紛糾や矛盾が種々生じる

ことは避けられない︒もし︑取り合わない︑さらにはブタ

をするようなことをすれば︑矛盾を激化させ︑社会の安定

に影響するであろう︒最良の方法は︑矛盾を解決する法律

制度を設けることであるが︑行政訴訟制度はとりもなおさ

ず︑その方法︑制度なのである︒訴訟を通して︑管理され

る弱い立場にある公民︑法人あるいはその他の組織は︑行

政機関と対等に法廷で争うことができる︒行政機関が間違っ

ていれば︑誤りを正す︒公民に道理がなければ︑訴訟を通

してはっきりさせる︒こうすることで︑大量の行政矛盾が

訴訟を通して解決され︑正義を広め社会の安定を守るのに

役立つのである︒

二︑人権を保障し︑公民の権利意識を高める︒

行政訴訟は︑人権を保障する制度である︒行政訴訟は︑

違法な具体的行政行為に対する取消や︑公正を欠く行政処

罰行為に対する変更︑および︑行政機関に職責の履行を命

令したり︑賠償を命令することを通して︑有力に公民の合

法的権益を保護し︑人権を保障してきた︒行政訴訟法は︑

中国の最も力強い人権保障法のひとつである︒また︑行政

訴訟の絶え間ない実践は︑行政訴訟の知識を普及し︑公民

の権利意識を高めたが︑これは︑中国の市場経済の発展や

民主的な法制の建設に対し積極的な働きをするであろう︒

中国は︑人口と比較して︑当面の行政事件の件数はまだそ れほど多くない︒しかしながら一九九〇年の一万三〇〇六

件から︑一九九九年の一〇万件近くまでと︑増加の様相を

呈しており︑このことは︑すでにますます多くの人々が行

政訴訟法を使って自己の自由と権利を守ることを理解する

ようになったことを示している︒

三︑行政機関の責任感を強め︑法律執行のレベルを高めた︒

行政訴訟は︑司法の行政に対する制約である︒一方では︑

行政訴訟制度の存在自身が︑行政機関にとっては一種の外

圧であり︑制約を加える働きをしている︒行政機関が︑も

し︑法律に従って行政をしなければ︑公民︑法人あるいは

その他の組織から法院に訴えられ︑敗訴のリスクや相応の

責任を負うことがある︒他方︑行政訴訟をすることは︑具

体的行政行為の合法性に対する審査および違法行為に対す

る取消を通して︑行政活動に制約を加えることである︒実

際のところ︑行政訴訟法の公布︑施行以来︑行政機関の法

治意識や責任感は次第に高まっており︑行政の法律執行責

任制は普遍的に推進され︑行政の法律執行のレベルは︑あ

る程度︑高まった︒

四︑行政法律制度の健全な建設を促進した︒

行政訴訟の呼びかけと推進により︑行政法律制度は︑ま

すます人々に重視されている︒一九八九年以来︑中国では﹁国家賠償法﹂︑﹁行政処罰法﹂︑﹁行政不服審査法﹂(﹁行政復

議法﹂)︑﹁立法法﹂等の多くの重要な法律や法規の制定︑公

中国 の行政 訴訟 と行政裁判

97

(12)

布が相継ぎ︑さらに行政再議制度︑国家公務員制度︑国家

賠償制度および行政処罰制度等の設立︑整備が行なわれた︒

例えば﹁行政許可法﹂︑﹁行政強制執行法﹂および﹁行政手

続法﹂等のような︑多くの重要な法律が︑立法あるいは検

討中である︒もとより︑行政法律制度の発展を推進する要

素は多いが︑なかでも行政訴訟が最も重要で影響の大きい

要素のひとつであることには疑いがない︒行政訴訟は︑行

政行為の合法性に対する審査であり︑整備された法規範が

審理の依拠とならねばならない︒また︑行政訴訟を通して︑

行政管理における問題が明るみに出たことにより︑相応の

法律制度を設けて解決することが求められている︒

五︑法による統治政策の形成を推進した︒

法による国の統治という基本的政策は︑一九九六年三月

に第八期全国人民代表大会第四回会議で正式に確立され︑

さらに一九九九年三月に憲法に盛り込まれた︒法により国

を治めること︑法治が人治に取って代わること︑社会主義

法治国家を建設することは︑わが国が近代化するためには

避けて通ることのできない道である︒いわゆる法による国

の統治ということは︑国家の統治を︑民主︑理性の基礎の

上に建設し︑法律の最高権威を確立することである︒国の

経済︑文化等の活動はすべて法によって進め︑いかなる個

人的意志の干渉や阻害も受けないものでなければならない︒

国家は︑公民が広範な自由と権利を持ち︑個人が全面的に 発展できるよう保障するものである︒

法による統治政策の提出は︑行政訴訟の貢献を抜きにし

てはできない︒行政訴訟法が一九八九年に公布され︑その

実施後︑法による行政という概念は︑次第に人々の受け入

れるところとなり︑かつますます深く人々の心に入り︑し

かも正に︑法による行政という概念に影響されてはじめて︑

法による国家統治という思想がはっきりした形で出てきた

のである︒

六︑行政法学の発展を促進した︒

行政訴訟法が公布︑施行されて以来︑行政法学は︑急速

な発展期に入り︑行政訴訟の理論と実践が学者たちからの

幅広い関心を惹起したばかりでなく︑行政訴訟に関連した

主体理論︑行政行為理論︑行政手続理論と行政再議理論等

も同様に︑いっそう研究され発展した︒そして︑それぞれ

の行政法律制度に対する検討もまた︑行政法基礎理論の研

究を推し進めており︑九〇年代の行政法基礎理論に関する

大討論は︑とりもなおさずその格好の例証である︒行政訴

訟はある意味では行政法治の保障であり︑行政法治の核心

でもあるため︑行政訴訟の実践は︑当然︑行政法学の発展

(13)

新しい制度がひとつできると︑あれこれと問題が生じる

ものである︒行政訴訟制度が中国で設けられてから日が浅

いため︑さらには中国の法治リソースが欠乏しているため︑

一〇年の実践を経て︑中国の行政訴訟制度には︑さらに整

備の必要な種々の問題のあることがすでに露呈している︒

これらの問題のうち︑法院自身に属するものは︑法院自体

の改革を通して解決することができる︒例えば︑裁判官の

素質やレベルの向上︑裁判官の職業保障の強化︑外来の腐

敗勢力の来襲を防御するメカニズムの改善︑さらには︑院

長︑裁判委員会︑合議制法廷と裁判官との関係を含めて︑

法院内部の関係をすっきりさせ︑裁判方法と証拠制度を改

革し︑判決形式を整備して︑管理体制を適宜改革する︑等

などである︒

いくつかの問題は法院自身で解決できるものではなく︑

これには︑現行の行政裁判体制に対する改革︑各種の権力

と地方保護主義の行政裁判に対する干渉をいかにして減ら

し︑さらには杜絶するか︑行政訴訟の事件の受理範囲の拡

大︑行政訴訟と民事訴訟︑刑事訴訟との関係の改善︑など

が含まれる︒これらは︑行政訴訟法の改正︑さらには︑司

法体制全体の整備を通して解決する必要がある︒ 目下のところ︑行政訴訟法の改正の条件がなお整ってい

ないが︑今から経験とデータの蓄積に着手し︑今後適当な

時期に改正案を提出すべきである︒

まとめれぼ︑中国にはすでに一〇年の行政訴訟の経験が

あり︑行政訴訟制度を改革を通してさらに整備しなければ

ならないことに対しても︑人々の間では︑すでに共通の認

識が形成されている︒それをきちんと総括し︑絶えず改善︑

整備しさえすれば︑中国の行政訴訟制度は必ずや︑中国の

行政法治を推し進める中で︑いっそう大きい役割を果たす

であろう︒

注  

︿1>胡康生主編﹃行政訴訟法釈義﹄北京師範学院出版社︑

一九八九年︑一頁︒

︿2>羅豪才︑応松年主編﹃行政訴訟法学﹄中国政法大学出

版社︑一九九〇年︑三三頁︑参照︒

また︑応松年﹃中国走向行政法治探索﹄中国方正出版

社︑一九九八年︑二三九頁︑参照︒

︿3>﹃最高人民法院関於執行︿中華人民共和国行政訴訟法﹀

若干問題的解釈﹄一︑受案範囲︑二〇〇〇年三月八日︑参照︒

︿4>応松年主編﹃行政訴訟法学﹄中国政法大学出版社︑一

九九四年︑一五三頁︑参照︒

︿5>同右︑一五六頁︒

gg‑一 中国 の 行 政 訴 訟 と行 政 裁判

(14)

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究19..18ミ ヱ 聖≡15と41312三 三1098(乙 ノ6v

﹁中

﹁行

﹃行政法学研

主要参考文献

胡康生主編﹃行政訴訟法釈義﹄北京師範学院出版社︑一九八

九年

江必新﹃行政訴訟問題研究﹄中国人民公安大学出版社︑一九

八九年

羅豪才︑応松年主編﹃行政訴訟法学﹄中国政法大学出版社︑

一九九〇年

馬原主編﹃中国行政訴訟法学教程﹄人民法院出版社︑一九九

二年 応松年主編﹃行政訴訟法学﹄中国政法大学出版社︑

応松年﹃中国走向行政法治探索﹄中国方正出版社︑﹃行政法学研究﹄一九九九年第四期

(邦訳 一九九四年死九八年㎜

黄當時)

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