• 検索結果がありません。

環境行政上の契約 ――研究序説

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "環境行政上の契約 ――研究序説"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

環境行政上の契約

――研究序説

前 田 定 孝

はじめに

伝統的に行政法学は,法律に基づく権力的 な権限行使に対する法的統制に相当の関心を 払ってきた。そのため,行政法理論も,おの ずと行政行為論およびその外延部における行 政活動の処分性をめぐる議論に中心を置いて きたといってよい。

しかしながら世紀転換の前後から,いわゆ るグローバリゼーションを背景に,非権力的 な手法に関心が向けられはじめた。その主要 形態として,行政契約論と行政指導論が位置 づけられるように思われる。そのことは,環 境行政の分野においてとりわけ顕著といえ る。そこでは,国民・住民の要望に応えるた めに,いちおうは手持ちの法令を基本としつ つも,新たな創意工夫や新たな対応が要請さ れ,それが条例となり,さらに非権力的な要 綱や協定という手法も生み出されてきた(1) かかる発想のもとで,これらの工夫は,いわ ゆる環境保全の手法として整理されるこ ともある(2)

それではこれらの非権力的な行政活動を実 施する権限を,行政はなにゆえに有すること ができるのであろうか。

本稿は,とりわけ環境行政法の分野におい て,公法私法の枠組みの今日的特徴をとらえ,

とりわけ契約法理の再検討と再構成を通じ て,かかる枠組みを超えた目配りのもとで,

創造と再生が可能な社会と国家の形成のた めの法理論を構築することを目指している。

そのなかで,本稿に課せられた課題は,そ の端緒的な作業として,環境行政における一 連の契約的な手法を整理し,そのなかで論点 の整理・抽出を行うことにある。したがって それぞれの個別の本格的な検討は,今後の課 題である。あらかじめお断りしておきたい。

[1]環境法における研究成果と本稿 における検討の視点

さて,契約関係を含む行政と私人との関係 にふれた 2000 年以降発表された環境分野の 研究業績を公法研究誌および法律時報 誌の学会回顧をもとに分類した場合,それら の論点は,おおまかに以下のように整理され るように思われる。

行政行為権限の私化

行政行為代替型行政契約

住民と企業との協定

疑似市場創出型

調達型行政契約

産業的手法

自主的とりくみ

(2)

住民参加論

その他

これらにつき,権力的な手法そのもののを 私的組織の実施にゆだねるものがである とすれば,⑵およびは,元来権力的な手 法を通じてなされてきた事柄を,当事者双方 の対等関係における合意による協定を通じて 実施するものである点に特徴を有する。本稿 では,さしあたりこれを行政行為代替型行政 契約として位置づける。これに対し,およ は,その当事者が誰であれ,市場におけ る取引を通じて実現されるという特徴を有す る。このように行政が市場取引に関与するこ とがあるとすれば,かかる行政活動に対する 法的統制の論点は,その取引の公正性,公平 性などを確保することに置かれてきた(3)。こ れらに対しておよびは,行政が特定の 産業振興または業界内部におけるとりくみを 誘導する手法である。さらには,行政上 の意思決定に私人である住民が関与するあり 方の検討である。

本稿は,⑵からまで,すなわち行政行 為を代替する契約,行政活動の資源を調達す るに際しての契約,および行政が民間におけ る契約活動を刺激するとりくみという3分類 に即して検討する。なお,以下では検討の視 点を,行政が一方当事者となる契約関係と,

行政が私人間契約に何らかのかたちで関与す る類型とに二分したうえで,整理したい。

[2]行政が一方当事者となる契約関

行政が一方の当事者となる契約関係とし て,国または自治体と企業(業界団体を含む)

とが締結する環境協定と,行政がその活動に 使用する物品等を購入する際に締結する売買 契約とがある。前者は,いわば規制等の行政 行為に代替する契約であり,直接的な規制的 効果をともなうのに対し,後者は,市場取引 に働きかけるという意味で間接的効果をとも なうものである。

環境協定

行政法総論の体系において,かかる環境協 定につき,従来公害防止協定または環境保全 協定の法的性格について検討されてきた。現 在ではそれに加えて,ドイツ・オランダにお ける環境協定についての紹介・検討がなされ ているのが特徴である。以下分説する。

①行政法理論における公害防止協定・環境 保全協定

日本の行政法学において,公害防止協定ま たは環境保全協定につき,その行政行為との 関係,法的性格,および法治主義との関係な どが問題とされてきたように思われる。

a.行政行為による規制の不備と契約的手法 かかる公害防止協定・環境保全協定と行政 行為との関係につき,北村喜宣は,法令の不 備や条例制定権の限界に関する当時の議論を 前提にしつつも,立地について住民の理解を 得ながら住民の健康・生活環境保全も確保す るという,自治体ならではの柔軟かつ実践的 な措置(4) であるとする。しかしながら,か かる公害防止協定が締結されはじめた当初に おいては,地方公共団体が法令の規制を上 回る上乗せ規制を行政事務条例によって定め ることは,法令の規制に違反し許されないと

(3)

解される傾向にあった(5)。すなわち,加害企 業と被害を受ける住民との利害対立を解決す るために行政が介入する場合に,それが企業 という私人が有する,国家に先立つ権利に対 する規制である以上,いかに加害企業といえ ども,どうしても企業の営業の自由に配慮し た,必要かつ最少限度または必要かつ合理的 な規制にとどまらざるをえないという限界が る。そこでは,かかる規制の限界との関係に おいて,地域住民の利益保護に際してのより 有効な手立てとして,かかる公害防止協定・

環境保全協定を位置づけようとする原田尚彦 の見解が有力説として受容されてきた。

そこでの主要論点は,権力的措置との関係 で協定内容における不利益措置をいかに解す るのかに置かれてきたように思われる。上記 北村は,環境保全協定書の記載内容につき(6) 違反等に対する制裁公害発生時におけ る操業停止または損害賠償公害発生時に おける無過失損害賠償,および立入調査関 係について分析する。

b.法的性質論

したがってそこでは,かかる協定の法的な 有効性が問題となる。そこでは,第一の論点 として,その法的性質につき,紳士協定説 と契約説とが対立してきた。この点,野 澤正充は,今や裁判例も学説も,後者(契 約説)に収れんされつつあるとする(7)。か かる学説は,原田尚彦が公害防止協定は抽 象的な公益のために市民の自由とりわけ精神 や身体の自由を制約する警察作用ではなく,

市民の環境上の利益を守りその生存を保障 するために,事業者に経済的利益について任 意か譲歩を求める環境整備ないし生存助成の

ための作用の一環であるから,協定に法的効 果を認め事業者の自由を制約しても,法治国 における公序良俗に反するとはいいがたく,

事業者のこうした特権的環境利用行為につ いて協定で特別の制約を課しても,それは一 般市民の自由の制約とはおのずから異なる ため,公害規制法は保安警察立法のように,

公権力発動の最大限度を画する規範ではな く,むしろ環境保全のために,公権力が行わ なければならぬところの最小限の取締基準を 定めるものと解される(8) としたのを皮切り に受け入れられてきた(9)

この点,現段階では,協定の条文ごとに 法的性質を判断すべきとし,法的拘束力を 発生させる前提として,合意の任意性,

協定の目的の合理性,手段の合理性,求められる行為の具体性,履行可能性,強行法規への適合性をあげる北村の見解が 有力のように思われる(10)

第二の論点として,かかる協定が,行政契 約か私法契約かという論点がある。北村は,

公共目的の実現手法であることのほか,一 方当事者としての行政が,私法契約のように,

自由に締結を決めることができない場合があ ることから全体として行政契約と整理す るのが適切(11) とする。しかしながら,私法 契約と異なった行政契約というものを抽出す るに際して,協定の対象となった権利が,い わゆる国家に先立つ権利なのか,それと も国家成立後に形成された権利なのか,

かりにかかる権利が私人の誰かに本来的に帰 属するのであれば,誰に帰属するものなのか,

かかる自治体の協定締結が私人に実質的な義 務を賦課するにもかかわらず,議会の関与は 要しないのかどうかなどの論点がある。

(4)

とりわけ,かかる協定締結の内容において,

協定値として明記された排出基準が法定値よ り厳格な場合に,かかる協定値違反に際して 協定上の違約金を請求されたとしたら,かか る違約金条項がいかなる効力をともなうのか が問題となる。

たとえば四日市市は今年度,市内 46 企業 との間で新たな公害防止協定の締結を進めて いる。そこでは大気汚染防止法の規制値を上 回る基準を附属文書で協定値として明記 し,協定値超過時には直ちに応急の措置を 講ずるとともに,遅滞なく市にその状況 を報告しなければならないとし,必要ある と認めるときは,市は企業側に対し,公害の 拡大又は再発の防止のため,必要な措置を講 ずべきことを指示できるものとするとされ,

さらに市は企業側に対して,必要に応じて 協定書に係る報告を求め,又は立ち入り調査 をすることができるとし,オプションとし て,協定値違反その他の場合に 10 万円の違 約金を請求することができるとしている(12) このような場合,協定締結手続において,

民法 95 条および 96 条でいう錯誤,詐欺また は強迫があるとされた場合の契約上の効力が 問題となる(13)。そこでは,行政契約という 場合の契約法理とは民法上の法理といかなる 点で異なっているのか,たとえば,かかる協 定の取り決めを私法上執行できるかどうかも 問題となろう(14)

さらにそこでは,かかる自治体を一方当事 者とする協定において,住民がその権利を主 張しうるのかどうか(すなわち当該協定が三者のためにする契約(民法 537 条)である とすることができるのかどうか,かりにでき るとした場合に,その第三者である住民の意

思が正統性を主張しうるにはいかなる条件が 求められるのか)の論点があろう(15)。この点 につき,礒野弥生は,公害防止協定が地域 ルールとして機能するためには,地域構成員 たる住民が内容を了知していることが前提と なるとし,この前提を具体化するために,

地域ルールは,情報開示,公表,提供が必 須の内容であるとする点は,行政契約と解 することにつき一理あるとする(16)

最後に第三の論点として,拘束力における 法律との関係が問題とされてきた。とりわ け,法律に明記されていない使用期限の有効 性が争われた事例として,福間町産業廃棄物 処分場公害防止協定事件があげられる。この 事件につき,控訴審である福岡高判 2007 年 3月 22 日判自 304 号 35 頁は,県知事の専権 を根拠に,本件処分場の関係住民としては,

県知事に本件処分場をめぐる許可の取消し を求めるべきであるとして控訴を認容・請 求棄却したのに対し,上告審である最2小判 2009 年7月 10 日判時 2058 号 53 頁は,使用 期限の設定につき,同法には,処分業者にそ のような義務を課す条文は存せず,かえって,

処分業者による事業の全部又は一部の廃止,

処理施設の廃止については,知事に対する届 出で足りる旨規定されているのであるから

……,処分業者が,公害防止協定において,

協定の相手方に対し,その事業や処理施設を 将来廃止する旨を約束することは,処分業者 自身の自由な判断で行えるとした。この判 例は,協定の効力が実定法の限界内にあるの かどうかで判断したものであるように思われ る。

この点,四日市市の公害防止協定は,事業 者が市町長との協定締結に努力することを求

(5)

めた三重県環境基本条例5条5項を根拠とし ている。しかしながらこの規定はあくまでも 事業者に努力を促すものであって,市町村の 協定締結権の範囲を示すものでもない。さら に,県条例で市町村の契約締結権を左右しう るものでもない。

②ドイツ・オランダの環境協定に関する研

さて,上記の公害防止協定論および環境保 全協定論に加えて,昨今注目すべきものは,

欧米諸国における環境協定についての紹介・

検討である。この点につき,とりわけ民事法 の分野における松村弓彦,および行政法にお ける島村健の研究が注目される。

この点島村は,政府と産業界との協定に着 目する。

それらは,政府側の当事者たる大臣と当該 協定の内容に関係する産業団体との間の協定 であり,そこには,論点をシングルイシュー に限定した協定,ターゲットグループアプ ローチの枠組みで締結される協定,エネル ギー利用の効率化に関する協定,包装廃棄物 に関する協定,廃棄物処分に要する費用の分 担に関する協定などの類型があること(17) どについて紹介・分析する。

さらに松村弓彦は民事法研究者サイドか ら,環境目標の達成に関する産業界と公的 機関との間の協定があること,そこでは,

経済界(またはその一部)との拘束力ある,

またはこれを有しない約束で,一定の環境目 標達成を目的として実施し,または環境負荷 を伴う活動を中止もしくは減少させる措置 があり,それは,国とその他の行動主体(特 に,経済界)との間の合意形成を本質とす

ること,そこで合意の成否と質は,国の側の 情報の質と量,交渉力,交渉過程における政 策圧力の強度等に左右されること,当事者 は,国(地方公共団体が参加する例もある)

と経済界団体が通例だが,これに個別企業が 当事者参加する形式は履行を確保する上で有 効であり,内容面では規制補完型・規制代 替型,公害防止協定型・経済団体協定型,片 務型・双務型,法的拘束力型・一般的拘束力 型・非拘束力型等,形式面では法定協定型・

法定外協定型,宣言型・協定型等の類型化が 試みられ,それらを機能面から類型化する と,規範・目標・計画策定型,規範・目標・

計画策定支援型に類型化でき,さらに今後 の課題として,経済界保有の専門的知識・経 験を共有する努力が不可欠であること,信頼 関係の醸成が基盤となること,協定遵守の確 実性を高める必要があること,成立・履行段 階の透明性が低下する危険があること,およ び Free-rider 対策を要すること(18) などをあ げる。

いずれにしても,比較法次元において,諸 外国の環境協定についての研究動向が新たに 日本に紹介されたものとして評価できるので あり,かかる民事法研究者の問題提起も受け て,今後の研究の深化が求められるものと思 われる。

調達型行政契約

これらに対し,行政契約を用いた環境対策 として,行政がその活動において使用する物 品を調達するに際して市場を刺激する手法が 存在する。その例として,ここでは,国等に よる環境物品等の調達等に関する法律(2000 年法律第 100 号)および国等における温室効

(6)

果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進 に関する法律(2007 年法律第 56 号)を紹介 する。いずれも,国または自治体という,そ れ自体として巨大な経済主体が行う取引に法 的義務を課すことによって環境配慮型の製品 の生産・流通を刺激する点に特徴があると考 えられる。とはいうものの,これらの法律に 関する法学的な検討はほとんど存在しないよ うであるため,旧来の調達に関する論点を敷 衍しつつ論じざるをえない点は,あらかじめ お断りしておく。

このうち前者である国等による環境物品 等の調達の推進等に関する法律の目的は,

1条において,国,独立行政法人等,地方公 共団体及び地方独立行政法人による環境物品 等の調達の推進,環境物品等に関する情報の 提供その他の環境物品等への需要の転換を促 環境への負荷の少ない持続的発展が可 能な社会の構築,および現在及び将来の国 民の健康で文化的な生活の確保に寄与するこ とがあげられ,その対象となる環境物品に つき2条1号で,再生資源その他の環境へ の負荷の低減に資する原材料又は部品であ り,その性格として2号で,環境への負荷の 低減に資する原材料又は部品を利用している こと / 使用に伴い排出される温室効果ガス等 による環境への負荷が少ないこと / 使用後に その全部又は一部の再使用又は再生利用がし やすいことにより廃棄物の発生を抑制する ことができることその他の事由により,環境 への負荷の低減に資する製品とし,かかる境への負荷の低減に資する製品を用いて提供 される等環境への負荷の低減に資する役務

(同3号)を行う国および独立行政法人等の 責務として3条は,環境物品等への需要の

転換を促進するため,予算の適正な使用に留 意しつつ,環境物品等を選択するよう努めな ければならないとして,同2項で国に対し,

教育活動,広報活動等を通じて,環境物品 等への需要の転換を促進する意義に関する事 業者及び国民の理解を深めること,および 国,地方公共団体,事業者及び国民が相互 に連携して環境物品等への需要の転換を図る 活動を促進するため必要な措置を講ずるこ とを求め,同4条で地方公共団体および地方 独立行政法人に対し,環境物品等への需要 の転換を図るための措置を講ずるよう努め ることを要請する。

そしてかかる環境物品等の調達の基本方針 として同6条は 3 ∼ 5 項において環境大臣の 権限・責務を規定し,そこでは,3項で環 境大臣は,あらかじめ各省各庁の長等と協議 して基本方針の案を作成し,閣議の決定を求 めなければならないこと,4項で環境大 臣が当該物品等の製造,輸入,販売等の事業 を所管する大臣と共同して作成する案に基づ いて,これを行うこと,5項で閣議の決 定があったときは,遅滞なく,基本方針を公 表することが,それぞれ規定されている。

これに対して各省庁の長および独立行政法人 の長等は,7条で環境物品等の調達方針の作 成が要請され,さらにこれに対して環境大臣 は,9条で各省各庁の長等に対し,環境物 品等の調達の推進を図るため特に必要がある と認められる措置をとるべきことを要請する ことができると規定する。

これに対して後者の国等における温室効 果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進 に関する法律の目的は,国等における温室 効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推

(7)

進に関し,国等の責務を明らかにするととも に,基本方針の策定その他必要な事項を定め ものであり,国等が排出する温室効果ガ ス等の削減を図りもって環境への負荷の 少ない持続的発展が可能な社会の構築に資す ることを目的とするとされる。そして3条 および4条で,国・独立行政法人および地方 公共団体等の責務として,その温室効果ガ ス等の排出の削減を図るためエネルギー の合理的かつ適切な使用等に努めるととも に,その際に,経済性に留意しつつ価格以外 の多様な要素をも考慮して国及び当該独 立行政法人等における温室効果ガス等の排出 の削減に配慮した契約の推進に努力とされ る。この法律が国等による環境物品等の調 達の推進等に関する法律と異なっているの は,経済性に留意しつつ価格以外の多様な 要素をも考慮することが義務づけられてい る点である。

そのうえで基本方針については,上記経済 性に留意するとする規定を受けて,12 条で 中小企業者が不当に不利にならないように する等公正な競争の確保に留意しつつ,13 条で他の国等の契約に関する施策との調和 を確保しつつ同2項でエネルギー基本計 画に基づく施策その他の国等の温室効果ガス 等の排出の削減等に関係のある施策との調和 を確保する。この点において,顕著な特徴 がある。

これらの制度上の法的論点として,宇賀克 也は,従来の入札制度論などで論じられた論 点を敷衍したかたちで,国や地方公共団体 にとって最も有利な条件で契約を締結すると いう会計法上の原則が,政策目的により修正 されることがある(19) とする。ここでは,修

正が正当化される政策目的にかかる環境配慮 がいかなる範囲で該当するかが問題となる。

この点,財務会計法規の裁判規範性につき 最2小判 2006 年1月 18 日民集 62 巻1号1 頁は,判断に裁量権の範囲の著しい逸脱又 は濫用があり,本件委託契約を無効としなけ れば地方自治法2条 14 項,地方財政法4条 1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情 が認められるという場合には,本件委託契約 は私法上無効になるとしつつ,最少費用最 大効果の原則の規範性を指摘した。この点か らみると,最少限度の費用であることを超え た高価な物品を,環境配慮型であるというこ とを理由に調達の対象物品とすることの合理 性が問題となろう。またこのこととは逆に,

かかる環境配慮型物品を供給しない事業者を 指名競争入札から排除することができるかど うかにつき,最1小判 2006 年 10 月 26 日判 例自治 294 号 21 頁が,考慮すべき事項を十 分考慮することなく,一つの考慮要素にとど まる村外業者であることのみを重視している 点において,極めて不合理であり,社会通念 上著しく妥当性を欠くものといわざるを得 ず,そのような措置に裁量権の逸脱又は濫用 があったとまではいえないと判断することは できないとした観点から,かかる環境配慮 性が考慮すべき事項たりうるのかどうか が問題となると思われる。

この点につき碓井光明は,環境に対する 配慮が国家的目標であることを承認するなら ば,そこから一歩進めて,事業者に対し物品 や役務の納入に際して低公害車の使用などの 環境配慮を求めることや,さらに,環境配慮 を行っている事業者から調達するグリーン 入札も可能と解すべき(20) とし,その根拠

(8)

として,環境基本法8条で事業者の責務 として事業にともなって生ずるばい煙,汚水,

廃棄物等の処理その他の公害の防止,自然環 境を保全するのに必要な措置を講ずることと され(1項),物の製造,加工または販売その 他の事業活動にあたり,事業活動にかかる製 品その他の物が廃棄物となった場合に適正な 処理が図られること(2項)が事業者の責務 として定められ,さらに,事業活動にかかる 製品その他の物が使用されまたは廃棄される ことによる環境負荷の低減に資するように努 めるとともに,事業活動において再生資源そ の他の環境負荷の低減に資する原材料,役務 等を利用するように努めなければならないと 定められている(3項)ことからこのよう な事業者の責務ないし努力義務の規定が存在 することに鑑みると,公共契約の場面におい ても環境への負荷の低減をもたらすような施 策(グリーン入札や低公害車使用義務づけ)

を講ずることができると解すべきである(21) とする。

[3]私人間契約に対する行政の関与 さて,契約を用いた環境法制度という場合,

行政自身が当事者となるかわりに,私的主体 相互間の契約の媒介者または調整者として立 ち現れる場合がある。この例として,本稿で は,第一に,住民または住民団体と企業との 間の協定に行政が関与する類型と,第二に,

行政が私人間の契約関係の形成に関与する類 型を紹介する。この場合,前者とは,住民と 企業との間の協定に対して行政が関与(認可 等)するしくみであり,後者とは,行政が元 来存在しない市場を創出することによって特

定の効果を期する,いわば疑似市場創出型の しくみである。その代表例として,排出枠取 引制度について紹介する。

住民と企業との協定に対する行政の関

この代表例は,法律上の根拠を有する協定 と,法律上の根拠を有しない協定とに大別さ れる。前者につき建築基準法に基づく建築協 定および景観法に基づく景観協定がその代表 例であるのに対し,後者は,住民団体と私企 業との間の公害防止協定に対して行政が認 可,立会いその他の形式で関与する場合であ る。ここでは便宜上後者から先に紹介する。

①住民団体と私企業との間の協定に対する 行政の関与

この類型につき,最1小判 1967 年 12 月 12 日判時 511 号 37 頁は,ダム工事実施認可権 限を有する知事立会いの下に締結された協定 書における漁業および流木の補償に関する記 載につき,具体性を欠くものであって,単に 被上告会社のとるべき基本方針を指したもの に過ぎないために何等契約上の責を負わ ないとした原審仙台高判 1971 年4月 28 日 判例時報 646 号に対し,右協定書および契 約書は多年の紛争をすべて解決するため被上 告会社の行うべきことを特に書面に認めてこ れを明らかにしたものであると考えられ,

従って右漁業および流木の補償に関する記載 は,特別の事情の存しない限り,当事者に対 して何等法的拘束力がないものとは解されな いとして,原審に差戻した。

これに対し最近の例として,山口地岩国支 判 2001 年3月8日判タ 1123 号 182 頁は,騒

(9)

音除去施設の建設および苦情があった場合の 操業停止につき,魚と鶏糞を混ぜ合わせた特 殊肥料の製造を行う肥料会社と周辺の養鶏業 者との団地被害防止協定および,立ち入りそ の他の調査,操業短縮および一時停止を含む 市と企業との協定について,前者で肥料会社 の損害賠償責任を認めつつも,後者では,の権利義務関係の発生原因たる契約は,その 公共的性格から,公法上の契約といえるが,

法令上の根拠がない以上,被告市は,被告会 社に義務不履行があったとしても,行政上の 強制執行や行政罰によって履行を強制するこ とはできず,公法上の当事者訴訟を提起して 義務履行を命じる給付判決を得,民事執行法 上の執行によって履行を強制するほかない とした。

この点,企業と地域住民との協定について は法律上の利益を認めつつも,行政の関与の あり方とその効力につき,法令上の根拠の有 無などが問題となったと思われる。

②法律上の根拠を有する協定に対する行政 の関与

それでは,法律上の根拠がある協定につい てはどうであろうか。ここでは,建築協定(建 築基準法 69 条以下)および景観協定(景観法 81 条以下)について検討する。

建築協定の認可申請手続につき,建築基準 法 69 条3項は,建築協定を締結しようとす る土地の所有者等の申請者は,締結した建 築協定につき,同 73 条により,特定行政庁の 認可処分を受けるものとする。そしてこの協 定が同 74 条の2より公告された場合,同 75 条により,その公告のあつた日以後において 当該建築協定区域内の土地の所有者等となつ

た者に対しても,その効力があるものとされ。

かかる建築協定につき大橋洋一は,建築 協定について言えば,民事の協定と異なる取 扱いは,契約締結手続における市民参加の点 と,契約が締結された後における公表などの 透明性確保の2点に認められること,手段 規定自体の意義,その機能の再編,新たな街 並みコントロールの行政手法が模索される時 代にあっては,現場における1つの実験施策 として協定を捉えることが極めて重要な意義 を持つ(22) とする。

これに対し景観法 81 条1項により締結さ れた景観協定は,同4項により景観行政団体

(同7条1項)の長の認可を受けなければな らないとされ,かかる認可の効力は,同 86 条 により当該景観協定区域内の土地所有者等と なった者に対する効力を認められる。

この場合,86 条でいう認可が,土地所有者 以外の者に対していかなる法律上の利益を発 生させるのかが問題となろう。この点,亘理 格は,互換的利害関係につき,ボランティア で当該景観の維持形成に献身してきたような 付近の住民の場合は,果たして互換的利害関 係に含まれるのか,あるいは含まれないとし たならば,互換的利害関係ということで限定 することが妥当なのかどうかという問題が 存在する(23) とし,これに対し磯部力は,街地内の私有地のように,都市計画・建築基 準ルールに適合的でありさえすれば土地利用 の自由をフルに享受できる世界は,基本的に 主観的法益・司法的に構成されてきたという 歴史的実績を無視できない以上,そのことを 前提に利害関係者相互の利害を調整するしく みとして主観法的な構成をとらざるを得な のであって,単なる一般的法益に解消さ

(10)

れるべきではないとしても,特定の住民個人 や住民集団に専属的に帰属されるべきもので もないのであって,本質的には公法的規制に よってのみ具体化し保全されるべき客観法的 な法益とする(24)

この点,上記のように景観法 86 条の認可 が景観協定区域内の土地所有者の開発行為を 制限する効果しかともなわないのであるとす れば,そこで都市,農山漁村等における良 好な景観の形成によって利益を享受する規 制受益者たる周辺住民が,どのような範囲で いかなる権利を主張できるのかが,あらため て問題となるのではないかと思われる。

従来認可制度とは,法効果を補完するもの として観念されてきた。この場合,公表を含 む義務履行確保の手段が,なにゆえに契約当 事者を超えて行政に担保されるのか,その場 合に契約当事者以外の私人はいかなる地位に 立つのかなど,論点は多いと思われる。

疑似市場創出型

さて,私人間の契約に対して行政が関与す る例として,ここでは,疑似市場を私人間契 約を通じて創出する制度としての,いわゆる 排出枠取引制度を紹介する。

①排出枠取引――私人間契約関係の創出 1992 年の気候変動枠組み条約に基づく京 都議定書(1997 年)において示された,先進 国による国際排出枠取引,共同実施,自主的 対策についてのクリーン開発メカニズムとい ういわゆる京都メカニズムと,同議定書の採 択(2002 年)を受けた国内対策としての法的 拘束力ある数値目標達成の国内的しくみとし て,1998 年に地球温暖化対策推進法が制定さ

れた。そのなかで3条4項は,温室効果ガス 排出の量の削減ならびに吸収作用の保全およ び強化のための措置を講ずるとともに,温室 効果ガスの排出の抑制等のための地方公共団 体の施策を支援し,および事業者,国民また はこれらの者の組織する民間の団体が温室効 果ガスの排出の抑制等に関して行う活動の促 進を図るため,技術的な助言その他の措置を 講ずるように努めることを国の責務とした。

この規定は,排出枠取引制度を具体化した ものである。その際排出量を国が排出者に割 当てるまたは取引する際に,行政はいかなる 関与を行うのかが,ここでの検討課題である。

a.排出枠取引市場を創出するしくみとその 権限の所在

前記3条4項が規定する国による必要な 措置を講じるべく,地球温暖化防止法は 2006 年に改正された。同改正法は,京都メカ ニズムを用いて取得された炭素クレジットの 取引に際して,同 29 条は,環境大臣及び経 済産業大臣は,京都議定書第七条4に基づく 割当量の計算方法に関する国際的な決定に従 い,割当量口座簿を作成し,算定割当量の取 得,保有及び移転を行うための口座を開設す るものとするとし,内国法人は 32 条で境大臣及び経済産業大臣による管理口座の開 設を受けなければならないとした。この開 設は開設処分と観念された。

割当量口座簿は,国の管理口座(31 条1項 1号)と国内に本店又は主たる事務所を有す る法人の管理口座(同項2号)とがあり,こ のうち後者の場合は,同3項で,口座名義人 の名称,代表者の氏名,本店等の所在地その 他環境省令・経済産業省令で定める事項,保

(11)

有する算定割当量の種別ごとの数量および識 別番号,算定割当量の全部または一部が信託 財産であるときは,その旨,およびその他政 令で定める事項を記載するものとされる。こ こでいう算定割当量の種別こそが,取引 される炭素クレジットの種別である。

かかる炭素クレジットは,同2条6項各号 において,5種類に種別化されている(25)

かかる管理口座開設の後,実際に排出枠の 取引を経て,34 条に基づく振替手続がな される。これは,算定割当量の取得および移 転につき,環境大臣および経済産業大臣に対 して届出がされ,そこでは,割当量口座簿に おいて,当該算定割当量についての減少又は 増加の記録をするものとされる。そこでは 同2項に基づき振替申請がされる。

振替申請があった場合に,行政庁は,同4 項に基づき,申請人の管理口座の前項第一 号の算定割当量についての減少の記録をす るものとされ,そこでは,振替先口座の前項 第一号の算定割当量についての増加の記録 がなされる。

また,他の締約国の法人との間でなされる 場合は,34 条5項以下の規定がある。

b.公法学上の諸論点

それでは,かかる排出枠取引制度の構築に 際して,いかなる法的論点が伏在しているの であろうか。

国内排出量取引制度の法的課題に関する検 討会国内排出量取引制度の法的課題につい て(中間報告)(2009 年4月)(26) によれば,

法的論点として①憲法第 22 条第1項の営業 の自由との関係,②憲法第 14 条の平等原則 との関係,③制度変更や価格上限の発動等日

本政府の関与により排出枠の価値が低下した 場合の損失補償の問題,および④排出枠を割 り当てるという行為および温室効果ガスの排 出規制のあり方についての法律上の整理につ いて,論点を提示している。このうち行政法 上の論点につき,④の排出枠を割り当てると いう行為および温室効果ガスの排出規制のあ り方について,排出枠の割当とは,対象企 業に対する行政処分か,行政契約か,行政 処分とした場合,行政不服審査及び抗告訴訟 といった紛争処理制度を活用すべきか,など の論点を提示する。いずれも,今後詳細な検 討が求められる論点である。

産業的手法

さて,前述の疑似市場創出型の制度づくり とは相対的に別のものとして,行政が特定分 野の産業における取引を,直接的に刺激する 類型がある。たとえば,昨今アメリカでは,

オバマ政権のもとで,いわゆるグリーン・

ニューディールと称して,American Reco- very and Reinvestment Act of 2009(アメリ カ再生再投資法)に基づく環境配慮型再開発 におけるアメリカ製品(鋼鉄,スチールおよ びその他製品)の使用を通じた景気刺激策を とっているようである。この場合,行政法学 的な視点からの検討が必要ではないかと思わ れる

しかしながら本稿は,問題の所在を示すに とどめ,詳細な検討は他日を期すこととする。

私企業間のとりくみに対する行政の関

さらにここでは,いわゆる自主的とりくみ について行政法学の枠組みにいかにして取り

(12)

入れていくのかという論点について言及した い。これらの自主的とりくみとは,純然たる 民間の産業部門内部におけるとりくみに限定 することもできず,そこでは何らかのかたち で行政が関与することが多いこの点,民事法 のサイドから浅野直人が,OECD の基準を用 いつつ(27)公的自主計画……行政主体の行 政指導等に基づいて事業者が任意に参加し,

行政主体が定めたガイドラインに沿って行動 するもの,⒝事業者(または事業者団体)と 行政主体との協議により,一定の行動をとる べきことを協定するもの(日本でいう公害防 止協定),および行政主体の関与なしに事 業者(または事業者団体)が,任意に一定の 行動をとることを定め,社会に対してこれを 一方的に表明すること(例として化学産業界 におけるレスポンシブル・ケア)に分類する のに対し,原田大樹は,業界団体による自主 規制について,インターネットの自主規制そ の他の団体自律モデル,団体による基準定立 または法執行を実施する団体参画モデル,ア メリカにおける Project XL などの自己認証 型や環境監査などの第三者認証型を含む監査 認証モデル,職業免許制などの組織法的誘導 型および排出枠取引など作用法的誘導型を含 む誘導モデルという基本4類型についてそれ ぞれ分析したうえで,純粋な自主規制は ほとんど存在しておらず,大半は何らかの形 で国家・政府との関係を持っているとす (28)。そうであるとすれば,それは実質的に 行政権力の作用が及ぶ部分であるがゆえに,

行政法学がその授権・統制法理を模索せざる をえない分野である。どのような方法におい て研究するかを含め,今後の検討課題である。

おわりに

以上,環境行政において〈契約〉という手 法とそのあり方について,分類・分析を試み た。しかしながらいずれもその詳細な検討 は,開始に向けて動き出したところである。

行政法学においては,従来行政が担ってき た権力的な関与のあり方と非権力的な手段の あり方との関係が,あらためて問われている ように思われる。行政法学は,民事法の研究 者から,そもそもなにゆえに公害防止協定 を締結する権限が自治体にあるのかそこ で締結された契約内容たる権利義務関係と は,国家に先立つ権利なのか,それとも国家 の後に形成された権利義務なのかという疑 問が提示された場合に,どのように答えるの であろうか(29)

そもそも国家または地方公共団体が,人民 の憲法制定によって創出されたものであり,

そこで国民相互の利害対立の調整または国家 の目的の実現という公共の福祉を実現するた めの行政制度づくりが,〈生来かつ不可譲の 人権〉の制限として,国民自身の代表者の国 会を通じて制定した(国民自身が間接的に自 己決定した)法律によってしか実現されえな いとしたら,そこで創出された行政活動の根 拠をなす法律に基づいて行われる権力的な権 利義務関係の形成とは,前記の国家以前の人 民の権利といかなる関係にあるのであろう か。国や地方自治体が,憲法制定によって出 現したのであるとすれば,国や地方自治体に は,かかる国家以前の権利・義務なるも のは,あらかじめ措定されえないはずである。

このように考えていくと,行政活動の一環と して行われる契約締結とは,いかなる法的性

(13)

質を有するのであるかが問題となろう。

本稿は,かかる論点を検討するに先立って,

そのさまざまな法現象を整理したにすぎな い。個別の検討は,今後の作業に委ねられる。

*本稿は,科学研究費共同研究(研究課題創造と再 生が可能な社会と国家の形成)による研究成果の一 部である。

北村喜宣自治体環境行政法 第5版(ぎょ うせい,2009 年),1-2 頁参照。

阿部泰隆・淡路剛久編環境法 [第3版](有 斐閣,2004 年)参照。

この点につき,塩野宏行政法Ⅰ[第五版]

(有斐閣,2009 年)は,準備行政における契約 給付行政における契約規制行政における契 約行政主体と民間事業者間契約行政主体間 の契約に分類し(189 頁以下),芝池義一行政 法総論講義 第四版増補版は,行政サービス 提供に関わる契約行政の手段調達のための契 約財産管理のための契約規制行政の手段と しての契約その他の契約に分類し(240 頁以 下),市橋克哉他編アクチュアル行政法(法律 文化社,2010 年)は,調達型行政契約給付型 行政契約規制型行政契約に分類する(133 頁 以下)。かかる分類に際しては,その契約当事者 とその目的・効果とがあたかも縦の糸と横の糸 のように関連している。ここではその目的また は効果に着目して,3つ目の分類にしたがう。

北村前掲註1,57 頁。

原田尚彦環境法(弘文堂,1981 年),166 頁。

北村前掲註1,64-65 頁。

野澤正充公害防止協定の私法的効力大塚 直・北村喜宣編淡路剛久教授・阿部泰隆教授還 暦祈念 環境法学の挑戦(日本評論社,2002 年)

130 頁。

原田前掲註5,170-73 頁。

阿部泰隆行政法解釈学Ⅰ(有斐閣,2008 年),

432 頁は,内容が抽象的だと拘束力はないが,

具体的であれば法的拘束力があると言うべき とする。

北村前掲註1,67 頁。

同前,68 頁。

⑿ 読売2010 年5月 24 日他。

四日市市の公害防止協定について直接ヒヤリ ングを実施したところ,担当課からは,協定締結 段階において相手方企業との間で相当慎重に交 渉を行ったこと,そのため,かかる錯誤,詐欺ま たは強迫などは存在しないとされた。

磯部力・小早川光郎・芝池義一行政法の新構 想Ⅱ(有斐閣,2008 年)行政契約〔石井昇〕,

99 頁。ここで石井は,義務不履行の場合におい て,一般の民事上の履行強制の仕組みを予定し,

裁判所による給付判決を必要とするかぎり,行 政契約の締結について,法律の根拠を要すると 考える必要はなく,合意は拘束するの原則に より,行政契約で合意された内容にしたがって,

行政とその相手方である私人に対する拘束力を 認めることができるとする。

原田前掲註5,175-76 頁は,公害防止協定は,

地方公共団体が住民からの信託にもとづいて住 民の環境権を擁護するために締結するものであ ると解するならば,受託者である地方公共団体 が義務に忠実でない場合には,これに代位して,

信託者である住民が,企業に対し協定上の義務 の履行を求めることも検討に値する事柄であ るとする。

礒野弥生地域ルールの確立のための覚え書 兼子仁先生古稀記念論文集刊行委員会編分 権時代と自治体法学(勁草書房,2007 年),338 頁。

島村健交渉する国家(一)自治研究 77 巻 11 号,109-15 頁。

松村弓彦他著ロースクール環境法[第2版]

(成文堂,2010 年),103-06 頁。

宇賀克也行政法概説Ⅰ第3版(有斐閣,

2009 年),358 頁。

碓井光明公共契約法精義(信山社,2005 年),

350 頁。

同前,351 頁。

(14)

大橋洋一都市空間制御の法理論(有斐閣,

2008 年),133-34 頁。

亘理格都市景観保護の課題――行政訴訟を 含めて――環境法政策学会編まちづくりの課 題 その評価と展望(商事法務,2007 年),16 頁。

磯部力景観とまちづくり法制・条例の課題 環境法政策学会編まちづくりの課題 その評 価と展望(商事法務,2007 年)42 頁。

! 詳細については,南川秀樹・熊倉基之地球温 暖化対策推進法(四)――制定の経緯及び現状に ついて――自治研究 86 巻6号(2010 年6月),

69-70 頁参照。

" 国内排出量取引制度の法的課題に関する検討 会国内排出量取引制度の法的課題について

(2009 年4月7日)

http://www.env.go.jp/earth/ondanka/det/

other_actions/ir_ 090407.pdf(2010 年 11 月7日 最終アクセス)

# 浅野直人環境管理の非規制的手法淡路剛久

教授・阿部泰隆教授還暦記念環境法学の挑戦

(日本評論社,2002 年),148 頁。

$ 原田大樹自主規制の公法学的研究(有斐閣,

2007 年),227 頁。

% これらの点につき中山充公害防止協定と契 約責任北川善太郎先生還暦記念 契約責任の 現代的諸相(上巻)(東京布井出版,1996 年),

359 頁は,公害防止協定は地方公共団体または 住民団体と企業との間で結ばれるものであるが,

その目的は住民の権利を保護することであるた め,企業を相手方とする当事者は実質的には住 民であり,地方公共団体または住民団体はその 多数の住民の意思をまとめて行為する主体とし て,協定を締結し協定の条項の履行を企業に請 求するとする。公害防止協定を第三者のため にする契約として理解するもののように思わ れるが,特定地域に居住する住民と地方自治体 との関係をふまえて,より詳細な議論が求めら れる。

参照

関連したドキュメント

2 当行は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、第1四半期連結会計期間(自2022年4月1日

記)辻朗「不貞慰謝料請求事件をめぐる裁判例の軌跡」判夕一○四一号二九頁(二○○○年)において、この判決の評価として、「いまだ破棄差

について最高裁として初めての判断を示した。事案の特殊性から射程範囲は狭い、と考えられる。三「運行」に関する学説・判例

 「訂正発明の上記課題及び解決手段とその効果に照らすと、訂正発明の本

 その後、徐々に「均等範囲 (range of equivalents) 」という表現をクレーム解釈の 基準として使用する判例が現れるようになり

 米国では、審査経過が内在的証拠としてクレーム解釈の原則的参酌資料と される。このようにして利用される資料がその後均等論の検討段階で再度利 5  Festo Corp v.

なお、政令第121条第1項第3号、同項第6号及び第3項の規定による避難上有効なバルコ ニー等の「避難上有効な」の判断基準は、 「建築物の防火避難規定の解説 2016/

距離の確保 入場時の消毒 マスク着用 定期的換気 記載台の消毒. 投票日 10 月