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感染者への心理社会的支援 に関す る 研究 :

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Bull.Fac.Educ.HirosakiUniv.94:117‑124(Oct2005)

東北地方 における

HIV

感染者への心理社会的支援 に関す る 研究 :

HIV

カウンセ リングにおける情報提供 に着 目して

PsychosocialsupportsforHIV‑infectedpatientsinTohoku Region:FocusedonprovisionofinformationinHIVCounseling

田 上 恭 子*・佐 藤 功榊・伊 藤 俊 広州・

菅 原 美 花柳・鈴 木 智 子…

KyokoTAGAMI',IsaoSATOH,ToshihiroITO'',MikaSUGAWARA'',&TomokoSUZUKIH'

論文要 旨】

本研究 は,東北地方 におけるHIV感染者‑の心理社会的支援 の現状 を明 らか にす ることを日的 とし,HIV

カウ ンセ リングにお ける情報提供 に着 日して,東北地方の医療機 関においてHIV感染症者及 びその周 囲の 人々を対象 に行 われた心理社会 的支援 について検討 を行 った。分析 の対象 としたのは,19994月か ら2003

年3月末 までに臨床心理士である専 門カウンセ ラーによって面接が行われた65名であった。情報提供の有無 とクライエ ン トの属性 との関連 に関す る分析 の結果,感染経路等,告知か らの期 間,結婚の有無が有意 な連 関があることが示 された。 また提供 された情報の内容 をまとめた結果,経過や症状,感染経路等の医学的知 識 を中心 としたHIV感染症 に関す る情報 を求めるケースが多 いことが示 された。以上か ら,周囲のサポー ト の大切 さ,予防 ・啓発活動及 び性教育の重要性が示唆 された。

キーワー ド:HIV感染症,HIVカウ ンセ リング,情報提侯

1.問題 と目的

(1)わが国におけるHIV感染症 の現状

近年,わが国のHIV感染者の数 は急激 に増加 し ている 厚生労働省エイズ動 向委員会の報告1)に よる と,2004年 はHIV感染者数780件,AIDS患者 385件 と, ともに過去最高 となってお り,初 め 1,000件 を超 える報告 数 となってい る (1 ) 。

また,HIV感染者 は異性 間性 的接触 による ものが

25.6%,同性 間性 的接触が60.0%を占めてお り,性 的接触 による もの を中心 としてHIV感染 は拡大 し つつある と報告 されている さらに,男性の同性 間性 的接触 によるHIV感染者の うちの4割が1020

代 の若年層であることが報告 されてお り,若年層 HIV感染 に対 して積極 的な予 防施策が必要であ る と委員長 は述べ ている

最近では一時期 よ りもマス コミ等で取 り上げ ら

*弘前大学教育学部学校教育講座 (心理学分野)

DepartmentofSchoolEducation(Psychology)

れることも少 な くなった ようであ り,世 間の関心 も低 くなっているように感 じられるが,HIV感染 症 は若年層 を中心 に性的接触 によって確実 に増加

していることが うかがわれる

(2)HIV感染者への心理社会的支援の必要性

エ イズ カウ ンセ リングHIVカウ ンセ リング」

と称 されるように,HIV感染症 には専 門的なカウ ンセ リングが必要である と考 え られている なぜ

HIV感染者‑の専 門的なカウ ンセ リングが必要 な のであろうか。 この理 由について森 田2)は,①新 しい病気,(彰社会 的偏見 ・差別が強い と思 われて いる,③致死性 のある進行性の慢性疾患,④感染 症 (うつ し,うつ される),(彰性 に深 く関わる病気,

⑥本人告知が原則,⑦行動変容や 日常生活の制限 が求め られる,⑧治療費や服薬継続の困難 さ,⑨ 外見 の変化へ の不安, とい う9つの点 を挙 げてい

FacultyofEducation,HirosakiUniversity

**独立行政法人国立病院機構仙台医療セ ンター

NationalHospitalOrganizationSendaiMedicalCenter

***財団法人エイズ予 防財団

JapaneseFoundationAIDSPrevention

(2)

118 子 ・佐 功 ・伊 広 ・菅 花 ・鈴

す なわち,HIV感染症 はまだ未解明の ことも 多 く,治療法 も日々変 わる その ような不確かな 状況の中で,見通 しが持 てない とい う不安, また 周囲に感染が知 られた ら偏見や差別 を受けるので はないか とい う不安 を抱 えなが ら,感染者 は生 き ていかねばな らない。 また性感染症 のひ とつであ り,疾患 について気軽 に話せ る場 は限 られる場合 が多 く,他者か らのサポー トが得 られに くい と考 えられる さらに治療費は極めて高いため,経済 的な問題 も生 じて くる。HIVに感染す ることで, この ようなさまざまな問題 を抱 えることが考 え ら れ,心理社会的な支援が求め られているといえよ

また,1990年代後半 になると,医療 における数々 の劇的な変化及 びHIV薬害訴訟の和解成立 によっ て,エイズ患者の死亡率 は低下 し,多 くの感染者 が月1回程度の通 院 をす るだけで ご く普通 の生活 がで きる ようになった3)。見 玉他4)HIV薬害訴 訟の和解前後で話題が どの ように変化 したか, カ ウンセ リングの分析 を行 い,和解後 には「人間関 係 ・心 理 的 な悩 み」が増加 した こ とを示 し, また

HIV感染症が慢性疾患 になるにつれて,恋愛や結 鰭,出産の相談が増 え始めた とも述べ ている の ことについて見玉他 は,抗HIV薬が次々 と導入 され,数年あるいは十年先 まで生 きられるか もし れない と思 うようになった結果,いったんはあ き らめた学業や仕事,恋愛,結婚,子育てな どの人 生上の課題や 目標 を, もう一度 自分の こととして 考 え直す ようになった と考察 している

さらに,効果的な抗HIV薬が用い られるように な り死亡率や長期入院が減 った反面,副作用や薬 剤耐性 な ど,問題点 も指摘 されて きてお り, どう 対応すべ きか,新 たな課題 となっていることも指 摘 されている3)

この ように,医療 の劇 的な進歩やHIV薬害訴訟

一一HIV感染者 .‑ AⅡ)S患者

700o(人)

/∫

富 まS!まま 旨芸 SlS さ IJ、くJ・ ▼、 くJ一.J、 く IJ‑ ‑ I、くくJ‑、‑‑\くJ‑ 一\くJ‑‑\くJ1‑、くJN⊂)()) (〜 〜)()

図1 HIV 及びAIDS患者推移

(厚生労 ズ動向委員 16ズ発 生動向年報」 き作成)

の和解成立 に伴 うさまざまな変化 によって,感染 者の抱 える問題 は大 きく変化 し, よ り一層多様化 して きていると考 え られる 生涯,病 と共 によ り よ く生 きてい くために,心理社会 的支援の重要性 はます ます増 している といえよう

(3)HIVカウンセ リングとは

HIVカウ ンセ リング とは,「本症 (HIV感染症) に関連 した問題 を抱 える人々に対 して さまざまな 職種や立場の人々によって個人,集団,家族,地 域 システムな ど多種多様 な形で行われる心理社会 的援助 の総称」(p.190)であ る5)。 また,HIVカウ ンセ リングの方法 について松本6・7)は,「心理教育

ガイダンス心理 カウンセ リング心理療法」の

3つ に分類 し,それぞれの対象やかかわ りの違 い 等 を明確 に述べ ている それ らを表1に示す。 こ れ らか ら,HIV医療 においては臨床心理士 をは じ め とす る心理職や ソーシャルワーカーの他 にも, さまざまな職種や立場 によってHIVカウンセ リン グは行 われてい るが,その場合 の多 くは,「心理 教育 ・ガイダンス」による方法 として位置づ け られ

る ものではないか と考 え られる

(4)東北地方 にお けるHIV医療体制及びカウンセ リ ング体制の現状

東北地方 にお けるHIV感染症 の現状 は, 図2 示 した ように,わが国の全体 的な傾向 と同様 に, 増加傾 向にある とい える1)。 ただ し,感染者 ・患 者数は全 国の中で も少 な く, また他の地方 と比 し て増加 も媛やかであ り,平成14年度の東北地方 に おけるHIV医療体制の構築 に関す る研究8)か らは,

HIV感染症 に関す る関心度の低 さや,診療 レベル 向上維持, カウンセ リング体制の構築,社会資源 知識の習得,HIV感染患者 の歯科治療,HIV感染

一一HIV感染者 .‑ AIDS患者

05050つJ2lノ11

() /

宝器忘芸豊富岩S!まま宗苦旨苦言茎岩等Sさ

、〇、〇、ひ、〇、〇、〇、〇、⊂)⊂)))〇 .I̲I̲.̲I̲.,̲̲̲I̲,.‑‑1‑I‑I‑,.‑N〜〜〜〜

図2 北海道 ・東北ブロックにおけるHIV感染者及び AIDS患者の年次推移

(厚生労働省エイズ動向委員会 「平成16年エイズ発 生動向年報」に基づき作成)

(3)

1 HIVカウンセ リング (松本,2000,2001に基 づ き作成)

心理教育 ・ガイダンス 心理 カウンセ リング 心理療法

対象

◇全ての人 特 に健常者や比較的間 ◇全ての人 特 に健常者や比較的問

題の軽 い人 選の軽い人

◇性格上の問題等の心理 的課題 を 持 っている人

◇ よ り深い 自己洞察 をめ ざす人 など

扱われる 間遺

◇現実的で.実生活での他者や社会 とのかかわ り方 に関す る 日常 的 な問題

(依頼者の性格 や病理 に関す る も のではない)

◇現実的で,実生活での他者や社会 とのかかわ り方 に関す る 日常 的 な問題

(依頼者の性格や病理 に関す る も のではない)

◇心理教育 ・ガイダンスが行 われ て も解消 されない感情への対応

◇心理面 に配慮 した上で,具体的な 手段 によるサポー ト

◇病気 の性 質や治療法 ・対処方法 な ど,疾患 を抱 えて生活 してい く かかわ り万 上で必要 な正 しい知識や情報 の

捷供お よび選択肢の提示

◇誤った情報や思い込みの修正

◇性格や病理 といった内的で個人 的な問題 (その元 にあ る もの を 洞察 してい く)

◇現実的問題の背景 にある情緒面 に対す る支持 的 ・共感 的な働 き かけ

◇受容的かつ共感的な態度で,クラ イエ ン トの心境や苦悩 を 自由に 話 して もらい.その不安や苦痛 を 理解 し,共有 してい く

◇ 無意識的葛藤やパ ー ソナ リテ ィ の問題 には深 く立 ち入 らない

実際の場面

◇ 告知や病状 の変化 による危機状 ◇ 告知や病状 の変化 による心理 的

危機

◇生活上の具体的問題が生 じた時 ◇ 生活上 の問題,HIV感染が契機 と なって生 じた人 間関係上の問題 (病 名告知 の問題,性行 動 に関す る問題,医療ス タッフとの関係)

◇HIV感染 以前 か ら抱 えていた心 理 的問題 (元 々の親子 関係 ・夫 婦 関係の葛嵐 sexualityに対す る 葛 藤,ライ フサ イ クル上 の課 題, パー ソナ リテ ィに関す る悩み)

◇生や死 に関す る問題 (死 に対す る葛藤や受容,生の肯定 ・自己の 否定,人生の振 り返 り,宗教 的な も のへの関心が生 じた時)

◇技法によって違いがある

◇共感、逆転移の洞察、直面化 ・ 明確化 ・解釈 といった介入 な ど を通 して、 間主観 的 なかかわ り の中で クライエ ン トの 自己理解 をめ ざす

◇長期的で継続的な関係性

◇HIV感染 以前 か ら抱 えていた心 理的問題

◇ 生や死 に関す る問題 (よ り深 い 意味 での疾 患 の受容‑運命 の受 容)が生 じた時

カウンセラー ◇能動的 の態度

目標

◇非指示 的,受容的,共感的 ◇技法 によって違いがある

◇ 現 実 的 な問題 に対 す る 自己選 択 ・自己決定へ の援助

◇ 具体 的 ・現実 的にクライエ ン ト に介入す ることで,元の心理平衡 状態 を取 り戻す

注意点

◇ クライエ ン トを情緒 的に支 える ◇ 人格の構造的変化 ことで,元の心理平衡状態 を取 り

戻す

◇相手の疑 問 ・不安 ・心配 に対 し ◇専 門的訓練が必要 て対応 (多す ぎない情報量)

◇平易 な表現 (専 門用語 は用いな い)

◇必要に応 じた継続性

◇心理教育 ・ガイダ ンス を した後 の反応への配慮

◇役割分担 (連携)

◇専 門的訓練が必要

(4)

120 田 上 恭 子 ・佐 功 ・伊 広 ・菅 原 美 花 ・鈴 智 子

予 防活動 な どの立 ち遅れが指摘 されている

中で もカウ ンセ リング体 制 の確立 ・整備 に関す る立 ち遅れは非常 に大 き く, わが国では臨床心理 士 によるHIVカウ ンセ リングは地方 自治体 に よる 派遣の形 を とることが多い9)に もかかわ らず,東 北地方ではこの派遣 カウ ンセ ラー制度 はほ とん ど 実施 されていない10)。 また,患者会やNPO団体 も 少 ないな ど,東北地方 にお けるHIV感染者へ の心 理社会 的支援 は他地方 に比 して乏 しい もの と考 え

られ る

したが って,東北地方 にお けるHIV感染者へ の 心 理社 会 的支援 の現状 を明 らか に し,感染者 の ニーズ を捉 えるこ とが, よ りよい感染者支援及び HIV感染症対策 に向けて まず必要で はないか と考

え られる

(5)本研 究の 目的

以上 よ り,本研 究では東北地方 におけるHIV 染者へ の心理社会的支援 の現状 を明 らか にす るこ とを 目的 とす る 具体 的 には,HIVカウ ンセ リン グの 「心理教 育 ・ガイ ダ ンス,中で も特 に情報 の提供 に焦点 を当て, カウ ンセ リング場面 におい てクライエ ン トよ り求め られる情報及 びカウ ンセ ラーに よ り提供 され る情報 について検討 を行 い, 感染者等 クライエ ン トのニーズの把握 を試み る

これ らよ り,東北地方 にお けるHIV感染症 に関す るよ りよい支援 に向けて,今後の課題 を提示 した

2.方法

A病 院 は,HIV診療 に関 して東北 地方 の中心 的 存在 の病 院である。HIV感染症 は感染症専 門外 来 において,週2日の原則 完全予約制で診療 されて いる ここではチーム医療 の形が とられてお り, 医師,看護師 をは じめ,薬剤 師,カウンセ ラー ( 床心理士),医療 ソー シャルワー カー,情報担 当官, 検査科 医師及 び検査技 師,栄養士等か らチームが 構成 されている カウンセ ラーはエ イズ専 門カウ

ンセ ラー として1名,常勤勤務 している

カウ ンセ リングの実施 につ いて は,1999年4 よ り臨床心理士 である専 門 カウ ンセ ラーがHIV 染者及 びその家族やパー トナー等 を対象 に,HIV

カウ ンセ リング を行 って きた。2003年3月末 まで に,65名 の クライエ ン トに対 し計370回の面接 を 行 った。 カウ ンセ リングは初診時 に医師 または看 護師に よる勧 めに よって導入 される場合 と, クラ

イエ ン ト自身の希望か ら導入 され る場合 とが多 い が, カウンセ リングを特 に希望 しない者 に対 して も,通院を継続 している患者 に対 しては毎年少 な くとも1回は心理面接 を行 っていた

以上,4年間に面接 を実施 した65ケース,計370 回の面接 の記録 に基づ き,面接場面 において クラ イエ ン トに よって求 め られ た情 報 及 び カウ ンセ ラーによって提供 された情報 について,整理 ・分 類及 び分析 を行 った。

3.結果 と考察

(1)クライエ ン トの属性

初 回面接時の クライエ ン トの属性 は次の通 りで あった。

性別 男性52名,女性13名。

年代 10代1名,2017名,30代24名,40代10名, 50代7名,60代4名,その他 ・不明2名。

職 業 の有無 有職38名,無職20名,学生5名, その他 ・不 明2名。 なお,有職 にはパ ー トや アルバ イ トが含 まれ る

同居音数 単身10名,2人暮 らし15名,3人以上 34名,不明6名。

結婚 既婚34名,未婚29名,不 明2名。

感 染 経 路等 感染 者52名 の感染 経路 につ い て は,血液製剤23名,異性 間性 的接触13名, 同性 間 性 的接触16名であった。未感染者 については,感 染者 の家族 及 びパ ー トナー等が7名,感染不安 を 抱 えている者6名であった。

感染の告知 か らの期間 性 的接触 による感染者 の,告知 されてか ら初 回面接 までの期 間は,告知 後約1週 間以内14名,告知後1年以内5名,告知後1 年以上10名であった。血液製剤 に よる感染者23 につ い て は, 大 多 数 が告 知後10か ら15年 程 度 で あった。

感染者の免疫の程度 免疫 の程度 を表す とされ て い る指標 の ひ とつ がCD4陽性 リ ンパ球 数 で あ 11・12)。 感染 者52名 の,初 回面 接 時 の1mm3あ た りのCD4陽性 リンパ球数500以上が16名,200以上 500未満が13名,200未満が14名,不 明が9名であっ

た。

感染者 のHIV感染症進行 の程度 HIV感染症 の 進行の程度 として,血 中ウイルス量(HIV‑RNA量) が挙 げ られ る11112)。初 回面接 時 のHIV‑RNA量 が 検 出限界以下だった者16名,102‑104copies/ml 21名,105copies/ml以上が4名,不 明11名であった。

服薬の有無 服薬有 り30名,無 し14名。 また初

(5)

2 情報提供の有無 と感染経路等のクロス集計表

血液製剤 異憲 同憲 誓 芙 警 ● ( ) 情報提供有 り

情報提供無 し

21322

8 4 3

5 12 4

13 16 7

6 23

0 42

6

3 情報提供の有無 と感染者における告知からの期間のクロス集計秦 1週 間以 内 1年以 内 1年以上 10か ら15

情報提供有 り 8 1

情報提供無 し 6 4

14 5

3 2 14 7 21 38 10 23

回面接 時が有 りか ら無 しの移行期 にあ った者 が8 名であった。

(2)面接 にお ける情報提供 の有無 とクライエ ン トの 属性 に関する分析

面接 の中で何 らかの情報 の提供 を行 った者 は, 65ケースの中で23名,行 っていない者42名 であっ た。 また,直接 クライエ ン トか ら情報提供 を求め られたのが26ケース, クライエ ン トの不安 に対 し て カ ウ ンセ ラーの方 か ら情 報 を提 供 したのが23 ケース,相 談 の 中で生 じた情 報提供 が8ケースで あった (重複 ケース有 り)。

情報提供 の有無 と(1)の クライエ ン トの属性 との 連関について分析 を行 った ところ,感染経路等, 告知 か らの期 間,結婚 の3つ において有 意 な連 関 が 認 め ら れ た (x 2(4)‑22.94,p<.001;x 2(3)

‑10.56,p<.05;x 2(1)‑4.79,p<.05) そ れぞ れ の クロス集計表 を表2,表3,表4に示す。

情報提供 の有無 と感染経路等 については,血液 製剤 による感染者,同性 間性 的接触 による感染者, では情報提供 を行 った者 は少 なか ったが,異性 間 性 的接触 に よる感染者 と感染不安者 においては情 報提供 を行 った者が多 い こ とが示 された 血液製 剤 に よる感染者 は, セル フヘ ル プ ・グルー プの活 動が盛 んであ り,感染者 間のネ ッ トワー クがつ く られている と考 え られ る 身体や疾患 に関す る関 心 も高 く,そのネ ッ トワー クや グルー プの中で積 極 的 に新 しい知見 を取 り入れ ようとい う動 きもみ られ,情報源 は豊富 にある と考 え られ る また同 性 間性 的接触 による感染者 について も,東北地方 では活動 はそれほ ど盛んではないか もしれ ない も のの, 関東 圏や関西 圏では積極 的な活動 団体が存 在 してお り, またイ ンターネ ッ トや メール等 での

表4 情報提供の有無 と結婚の有無のクロス集計表

既婚 未婚

情報提供有 り 16 6 22 情報提供無 し 18 23 41

34 29

※結婚 について不明の2名 を除いた。

や りと りを利用す る機会 を もつ者 も多 い ことが, 面接 の中で語 られて もい る。こういった ことか ら, 同性 間性 的接触 に よる感染者 において も,情報源 が比較 的豊富 にあるのではないか と考 え られ る

一方,異性 間性 的接触 に よる感染者 に関 しては, 東北地方 においては患者会 もおそ らく無 く,感染 者 同士 のつ なが りは極 めて薄い。未感染者である 感染不安 を抱 える者 については,他 に疾患 につい て話 を した り情報 を得 た りす る機会が ほ とん どな いため に,医療機 関を受診 し,情報 を求めてい る のではないか と考 え られ る 以上 よ り, カウンセ リング場面 において情報提供が行 われ るのは,第 一 に 日常生活 においてHIV感染症 に関す るネ ッ ト ワー クをあ ま り持 ってお らず,疾患 について情報 を得 る機会が極 めて少 ない者 に多 いのではないか とい えよう

告知 か らの期 間に関 して は,告知後1週 間以 内 において情報提供が行 われてい ることが多い こと が示 された。す なわち,告知後の心理 的な動揺や 混乱 に対す る危機介入 的な援助 において,情報提 供 とい う方法での援助 の果たす役割 は大 きいので はないか と考 え られる

結婚 に関 しては,未婚者 ではあ ま り情報提供が 行 われていないのに対 し,既婚者 に対 しては約半 数で情報提供が行 われていた ことが明 らか となっ た。 この理 由に関 しては,今 回の分析 か らは明 ら

(6)

122 田 上 子 ・佐 功 ・伊 広 ・菅 花 ・鈴

かにす ることがで きなかったが, どの ような情報 を提供 したか とい う内容 に も焦点 を当てて,今後 検討 してい く必要 もあるのではないか と考 え られ

(3)情報提供の内容

HIVカウ ンセ リング場面 において提供 された情 報 の内容 を表5に ま とめた。結果,HIV感染症 の 経過や症状 な どに関す る医学的知識の提供が最 も 多い ことが示 された。次いで.感染経路や予防な どに関す る情報の提供が多 く,HIV感染症 に関す る知識が多 く提供 されていることが示 された。

A病院はチームによる対応であ り,医師や看護 師,薬剤師 といった さまざまな専 門家 によって対 応が なされている 医師の診察場面や薬剤 師によ る服薬指導,看護師による教育や援助の中で,そ れぞれ専 門的な知識や情報が提供 されている と考 えられる に もかかわ らず, カウンセ リング場面 において も医学的知識 を中心 としたHIV感染症 に 関す る知識が提供 されている とい うことか ら,ひ とつ には,いかに感染者やその周囲の人 々がそ う いった知識 に関心 を持 っているか, また必要 とし ているかが うかがわれる またHIVに関す る知識 をそれ までにあま り有 していなかった者が多いの ではないか とい う可能性 も考 え られる。さらには, 仮 に学校教育 やそれ以外 の何 か しらの場 におい て,知識 としては学んでいた として も,それが 自

5 情報提供の内容

内容 ス数

HIV感染症 について 9

HIV感染経路 ・感染予防について 6 HIV感染者の生活 について 6

経済的問題 について 5

HIV治療方法 について 4 患者会 ・NPO団体 について 4 社会保障 ・福祉制度の利用 について 4

医療体制 について 3

心理学的な知識 3

HIV感染症 関連以外 の医学的知識 3

疫学情報 2

書籍紹介 2

地域 の社会資源 について 2

HIV抗体検査 について 1

その他 3

重複ース有 り。

身の問題 となった ときに,活用す ることが難 しい のではないのか と考 え られる。これ らの ことか ら, 感染 してか らではな く,それ以前 に正 しい知識 を 持つ ことがで き,かつそれを自身の問題 に関連づ け,活用で きるような教育的機会が よ り一層必要 であると考 え られる。

4.まとめ と今後の課題

本研究は,東北地方におけるHIV感染者への心 理社会的支援の現状 を明 らかにす ることを 目的 と し,HIVカウンセ リング場面 において行われた情 報提供の検討 を行 った。その結果 として,大 きく 次の3点が明 らか となった。

第一 には,感染経路等 によって情報提供の実施 に違いがみ られることである これには,感染者 間の ネ ッ トワー クやセルフヘ ルプ・グループ とい うような周囲のサポー ト状況が関連 している可能 性が考 えられた。

第二 には,情報提供 は告知直後 において よ り行 われていることである。告知直後の動揺や混乱が 生 じた感染者やその周囲の人々に対す る危機介入 的な援助 においては,正 しい知識や適切 な情報, 選択肢 を提示す ることが必要 な場合が多いのでは ないか と考 え られた。

第三 には,提供 される情報 としてはHIV感染症 の経過や症状 といった疾患の説明や,感染経路や 予防法 といったHIVに関す る知識が多い とい うこ とである この ことか らHIVに関す る実用的な知 識が不足 している者が多 いのではないか とい うこ

とが示唆 された。

以上か ら,今後の課題 としては第一 にHIV感染 者やその周囲の人々をつな ぐネッ トワークの構築 に向けての支援が挙 げ られる 他の地方において は,患者会やパー トナーの会,家族の会 な ど,セ ルフヘ ルプ・グループの活動が盛 んな ところ もあ るが,今後東北地方 において も,特 に性的接触 に よる感染者やその家族 ・パ ー トナー等が活動 で き るようなグループを立ち上げてい くことが望 まれ また感染者 をとりま くサポー ト状況の実態 に ついて明 らか に してい くことも必要であろう

第二 には,未感染者へ の予 防 ・啓発活動 をよ り 活発 に してい くことが挙 げ られる。感染が未だ増 加 し続 けている現在,HIV感染 は他人事 とい う意 識ではな く, 自身に も感染 しうる身近 な もの とし て考 え られ るような予防 ・啓発活動 に力 を入 れて い くことが必要であると考 えられる

(7)

最後 に,学校教育 における性教育やエイズ予 防 教育の工夫が挙 げ られる。若年層の感染者の増加 が指摘 されている現在,早期か ら性やエイズにつ いての教育 を行 うことが必要であることが さまざ まな場で指摘 されている。東北地方 において も, NPO団体 とのチーム・テ ィーチ ングや, さまざま な工夫 を行 った性教育 ・エ イズ教育が実践 されて いる学校 もある13・14)。単なる知識 としてではな く, 自身の問題 として捉 えることがで きるような形で の実践 的な教育が今後必要であろ う。

以上,HIVカウ ンセ リングにおける情報捷供 の 検討か ら,東北地方 における今後の課題 について 提案 を行 った。今後の研 究 においては,情報提供 の効果の測定や よ り効果的な情報提供方法 につい て明 らかに してい くことが必要である と考 え られ る。 また よ りよい心理社会的支援 を行 ってい くた めには,HIVカウンセ リングにおける情報提供の 側面だけではな く,心理 カウンセ リングや心理療 法 について も検討 を重ねてい くことが必要である だろ う

5.引用文献

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12月31日),2005425日.

2)森 田晃子 :エ イズ カウ ンセ リング〜患者 ・ 染者 を取 り巻 く心理 ・社会 的状況〜,財 団法 人エ イズ予防財 団 「エイズ カウンセ リング研 修会教材 (平成13年),pp.139‑142,2001.

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4)見 玉 憲 一 ・一 円禎 紀 ・喜 花 伸 子 ・森 川早 苗 :

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5)見玉憲一 :HIV/AIDSカウ ンセ リング,氏原 寛 ・成 田善弘編「臨床心理学3 コ ミュニテ ィ 心理学 とコンサ ルテー シ ョン・リエ ゾ ン一 地 域臨床 ・教育 ・研修,pp.190‑196,培風館, 2000.

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カウ ンセ リングー その10年の歩み と今後の課 〜HAART時代 のケース ・アプローチ〜」,

日本エイズ学会誌,2,144‑149,2000.

7)松本智子 :HIVカウ ンセ リングの実際,財 団 法人エイズ予 防財 団 「エイズカウンセ リング 研修会教材 (平成13年),pp.69‑75,2001. 8)佐藤功 ・伊藤俊広 ・和 田裕一 ・佐藤和洋 ・鈴木博 義 ・浅黄司 ・鈴木智子 ・菅原美花 ・田上恭子 ・ 辺和子 :東北地方 におけるHIV医療体制の構 築 に関す る研究,厚生労働科学研究費補助金 エイズ対策研 究事業 HIV感染症 の医療体制 に 関 す る研 究 」 平 成14年 度 研 究 報 告 書, 29‑37,2003.

9)見玉憲一:HIVカウ ンセ リング,山本和郎 (宿)

「臨床 心 理 学 的地 域 援 助 の展 開‑ コ ミュニ テ ィ 心 理 学 の 実 践 と今 日 的 課 題‑」,

pp.20‑35,培風館,2001.

10)佐藤愛子 :東北6県 のエ イズ対 策一 精神 的支 援 ・派遣 カウ ンセ ラー制度 につ いて一 行政担 当者‑の調査,佐藤功 ・鈴木智子 (宿)「平成 16年度東北AIDS/HIV心理 ・福祉研 修会報告 ,pp.2123,独 立行 政法 人 国立病 院機構 仙台医療 セ ンター,2005.

ll)今村 顕史 :HIV感染症 の臨床一 診療 ・治療 の 現状,野島一彦 ・失永 由里子 (編)HIVと心 理臨床一最前線か らの報告 :心理臨床の実践 と課題,そ してあ らたな展 開‑ 向けて‑‑」,

pp.219‑232,ナカニ シャ出版,2002.

12)HIV感染症 治療研 究会 :HIV感染症「治療 の 手引 き(8)200412月.

13)谷藤真理子 :「エイズ‑予防 と教育」学校教育 の立場か ら,エイズ/HIV感染症STDの予防 教育 ・医療 ・行政等の連携 に向けて〜東北エイ /HIV感 染 症 教 育 研 修 会 〜 報 告 書, pp.15‑29,2002.

14)東北エイズ診療支援 ネ ッ ト :第二 回東北エイ /HIV感染症教育研修会 「医療 と教育の連 携」報告書,2003.

(2005.7.29受理)

表 1 HI V カウンセ リング ( 松本 ,2000,2001 に基 づ き作成) 心理教育 ・ガイダンス 心理 カウンセ リング 心理療法 対象 ◇全ての人 特 に健常者や比較的間 ◇全ての人 特 に健常者や比較的問題の軽 い人選の軽い人 ◇性格上の問題等の心理 的課題 を持 っている人 ◇ よ り深い 自己洞察 をめ ざす人 など 扱われる 間遺 ◇現実的で
表 2 情報提供の有無 と感染経路等のクロス集計表 血液製剤 異憲 的 同憲 的 誓 芙 警 ● ( 蕊 ) 計 情報提供有 り 情報提供無 し 計 21322 8 4 3512413167 6 2 30426 表 3 情報提供の有無 と感染者における告知からの期間のクロス集計秦 1 週 間以 内 1 年以 内 1 年以上 1 0か ら1 5 年 計 情報提供有 り 8 1 情報提供無 し 6 4 計 1 4 5 3 2 1 4721381023 回面接 時が有 りか ら無 しの移行期 にあ った者 が 8

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