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The Goal of the Takasaki International Relations Society’s “Volunteer Training Course of Japanese Language Learning Support for

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高崎市国際交流協会「子ども日本語学習支援 ボランティア養成講座」の目指すもの

—外国につながる子どもを対象とした 日本語学習支援に何が必要か—

ヤン・ジョンヨン

The Goal of the Takasaki International Relations Society’s “Volunteer Training Course of Japanese Language Learning Support for

Children”

What is needed in Japanese Learning Support for Children with Roots in Foreign Countries

Jung-yun Yang

要 旨

 群馬県高崎市国際交流協会では、日本語が十分に理解できない外国につながりのある児童生徒 が学校生活や地域社会に適応し自身の特性を十分に生かせるように支援する日本語学習支援ボラ ンティアを養成している。この養成講座は2011年度から隔年で2013年度、2015年度、2017年度、

2019年度の計5回行われている。市区町村が子どもに特化した日本語学習支援ボランティアの 養成と派遣を行っている例は全国的に見ても先進的な取り組みと言える。本稿は、この群馬県高 崎市国際交流協会が主催する「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」の目的とその内容、

及び、これまでの講座内容の変更点とその経緯や理由について論じ、外国につながる子どもを対 象とした日本語学習支援に何が必要かを考えるものである。

 キーワード:外国につながる子ども、日本語学習支援、日本語ボランティア養成

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Abstract

 The Takasaki International Relations Society provides the training course for volunteer instructors providing Japanese language learning support to children with roots in foreign countries who can’t understand Japanese language so that those children can adapt to school life and local community and take full advantage of their characters. This training course has been hold five times so far since the fiscal 2011 on a biennial basis. It may be said the training and dispatch by a municipality of Japanese language support volunteers exclusively for children are the advanced efforts at the nationwide level. This paper discusses the purpose and contents of the “Volunteer Training Course of Japanese Language Learning Support for Children” hosted by the Takasaki International Relations Society in Gunma Prefecture, the changes in the course and the how and why of the changes to consider what is needed in Japanese language learning support for children with roots in foreign counties.

Key words: Children with roots in foreign countries, support for Japanese language learning、

     training of Japanese language volunteers

.はじめに

 日本語指導が必要な子どもたちへの日本語指導や日本語学習支援は、小中学校内では日本語指 導担当者による「取り出し指導」や「入り込み指導」などが行われており、2014年からは「特 別の教育課程」もスタートし、少しずつではあるが制度上の整備が進んでいる。しかし、残念な がら、これらの指導が行われていない学校も多く、また、指導がなされていてもなかなか子ども の日本語能力が向上しない場合も少なくない。そのような子どもや保護者たちは、学校外に日本 語を学ぶ場を求めて地域の国際交流協会やNPOなどに相談にくるケースもある。

 群馬県高崎市国際交流協会はこのような現状を受け、「日本語が十分に理解できない外国につ ながりのある児童生徒に、子ども日本語学習支援ボランティアを派遣し、子どもたちが学校生活 や地域社会に早期に適応しさらにその特性を十分に生かせるように支援すること」を目的とした

「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」を2011年に文化庁の委嘱事業によって開始した。

本講座は隔年開催で、2011年度以降、2013年度、2015年度、2017年度、2019年度といまま で5回行われているが、より良い支援の在り方を模索すべく毎回内容を見直し変更を重ねている。

 本稿は「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」の目的とその内容、および、なぜ変更 が必要となったのかの経緯や理由について論じ、外国につながる子どもを対象とした日本語学習

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支援に何が必要かを考えるものである。

Ⅰ(1)外国につながる子どもがおかれている状況

 この節では、以下の議論に先立ち、日本在留の外国人及び外国につながる子どもの推移を確認 し、どれくらいの子どもが日本語学習支援の対象となるか見ておきたい。

 また、本稿では「外国につながる子ども」という言葉を使用するが、その理由は日本語学習支 援の対象となる子どもたちの中には日本籍の子どもや国際結婚、親の再婚による呼び寄せの子ど もなど、国籍でルーツを規定できない子どもも多く含まれているためである(志村・深澤(2019 p.46)。また、文部科学省の「外国人児童生徒」、群馬県高崎市国際交流協会の「日本語が母語で ない子ども」など、当該機関ごとの用語はそのまま使用している。

 以下の表1は過去5年間の在留外国人の推移である。リーマンショックや東日本大震災で減少 に転じたことはあるものの2013年以降は毎年数万人単位で増加し続けている。

表1 在留外国人の増加(2014年度から2018年度)

2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 在留外国人の数 2,121,831人

(55,386人増) 2,232,189人

(110,358人増) 2,382,822人

(150,633人増) 2,561,848人

(179,026人増) 2,731,093人

(169,245人増)

 在留外国人の増加に伴い、外国につながる子どもの数も同様に増えている。以下の表2は、文 部科学省が隔年で実施している「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査の結果 についてi(平成30年度)」において、公立学校に在籍している外国人児童生徒及び日本語指導が 必要な児童生徒の推移である(各調査年度の5月1日現在)。「日本語指導が必要な児童生徒」の 数は2018年度時点で40,485人にのぼり過去最多となった。同資料の群馬県の状況を見ると、県 内の日本語指導が必要な児童生徒は2018年5月1日現在1,261人である。

表2 外国につながる子どもの増加(2014年度から2018年度)

2014年度 2016年度 2018年度 公立学校に在籍している

外国人児童生徒数 73,289人

(1,744人増) 80,119人

(6,830人増) 93,133人

(13,014人増)

日本語指導が必要な外国

人児童生徒数 29,198人

(2,185人増) 34,335人

(5,137人増) 40,485

(6,150人増)

 一方で、何らかの理由で学校に通うことができていない子どもや日本語学習支援を受けること ができない子どもも相当数存在する。文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安 全課の「外国人の子供の就学状況等調査結果(速報)(2019年9月27日)ii」によると、2019年 5月1日現在、全国の学齢相当の外国人の子どもの数は124,049人で、義務教育諸課程や外国人 学校在籍者を除いた「不就学」「出国・転居」「就学状況を確認できず」のいわゆる不就学状態と

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される子どもは12,815人(全体の11.3%)であることが明らかになった。同資料の群馬県の状況 を見ると、学齢相当の外国人の子どもは3,518人で、そのうち319人が不就学状態である。

 また、日本の公立学校(小中高と特別支援学校)に通い、学校から「日本語教育が必要」と判 断されたにもかかわらず、指導を受けることができていない外国人児童生徒たちが全国で 10,400人に上っている(外国人児童生徒 無支援状態 1万人超(毎日新聞2019年5月4日「に ほんにいきる」iii))。

 このように、まだまだ学校内外において日本語学習支援の場にたどり着いていない子どもも多 く、各自治体及び関連機関の対策が急がれる。本稿の対象となる群馬県高崎市のデータを見ると、

2018年現在、群馬県内の在留外国人数は56,597人、高崎市は5,433人と、県内外国人の1割弱 が暮らしているiv。しかし、高崎市内の外国につながる子どもの数は筆者が調べた限りでは資料 を見つけることができなかった。市の教育委員会の過去3年半の会議録v(2016年から2019年 9月まで)の中にも外国につながる子どもについての言及はなく、現状把握がどの程度進んでい るのか、どの学校や地域(区町)で日本語学習支援が行われているのか、モデルとなる支援体制 はあるのかなど早急な情報開示が待たれる。

(2)外国につながる子どもを取り巻く環境

 この節では、一般に外国につながる子どもが学校に入学した場合、どのような支援体制に置か れるのか確認したい。以下の図1は文部科学省総合教育政策局男女共同参画強制社会学習・安全 課の『外国人児童生徒受入れの手引き【改訂版】』の中の「外国人児童生徒を取り巻く環境」が 図示されたものである。左に「外国人児童生徒」がおり、「管理職」「日本語指導担当教員・日本 語指導協力者」「在籍学級担任」「都道府県市町村教育委員会」などの関係が双方向の矢印で示さ れている。

図1 外国人児童生徒を取り巻く環境(『外国人児童生徒受入れの手引き【改訂版】』p.2)

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 学校の中にいる「管理職」「日本語指導担当教員・日本語指導協力者」「在籍学級担任」が外国 につながる子どもを迎え入れる場合、日本や日本の学校生活に不慣れだったり、日本語が十分で はなかったりする子どもに何をすべきか(何ができるか)について、文部科学省のCLARINETvi(ク ラリネット)では海外子女教育及び帰国・外国人児童生徒等教育に関する施策の説明や取組状況 など様々な資料を提供している。

<クラリネットに掲載されている主なもの>

①『外国人児童生徒受入れの手引き【改訂版】』

 外国人児童生徒教育に関わるそれぞれの立場の方が、どのような取組を行うことが求められている かなどを解説している。特に「第3章 日本語指導担当教員の役割」では、日本語指導の基本的な考え 方やプログラム、指導計画の作成についても紹介している。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/1304668.htm

②帰国・外国人児童生徒教育のための情報検索サイト「かすたねっと」

 帰国児童生徒や外国人児童生徒の受入実績が豊富な教育委員会等が作成した、多言語の学校文書や 教材を検索し活用することができる。 http://www.casta-net.jp/

③JSLカリキュラム

 日本語を学ぶことと教科内容を学ぶことを、一つのカリキュラムとして構成する考え方により開発 されたもの。

 小学校編 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/001/008.htm  中学校編 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/001/011.htm

④DLA 〜外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント(日本語能力測定方法)

 児童生徒の日本語の能力を把握し、その後の指導方針を検討する際の参考とするためのもの。

 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/1345413.htm

⑤外国人児童生徒教育研修マニュアル(地域の実情に応じた研修会企画の参考資料)

 各教育委員会等が地域の実情に応じた研修会を企画する際に、参考とするためのもの。

 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/1345412.htm

⑥特別の教育課程

 児童生徒が学校生活を送る上や教科等の授業を理解する上で必要な日本語の指導を、在籍学級の教 育課程の一部の時間に替えて、在籍学級以外の教室で行う教育の形態。学校教育の一環として、在籍 学級の教育課程と異なる特別の指導及び学習評価が行うことで、一人一人の実態に応じたきめ細かな 指導をするためのもの。

 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/1341903.htm

 『外国人児童生徒受入れの手引き【改訂版】』には外国人児童生徒の多様性への対応から、学校 管理職・日本語指導担当教員・在籍学級の担任・都道府県市町村教育委員会の役割がそれぞれ明 示されている。また、クラリネットには子どもの受け入れ方や指導内容(プログラム)、教育課 程の設計、教材、評価ツールなど様々な資料がある。さらに、日本語指導担当教員になった場合 は各教育委員会主催の外国人児童生徒等に対する日本語指導者養成研修も受けることができる

(教育委員会のよって実施の有無は異なる)。このように、学校内の体制づくりについては、少し ずつ整備されつつあるように見える。

 一方で、図の右上の、学校外にある「地域住民等・団体(国際交流協会、NPO、ボランティア

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など)」については、図示はされているもののその役割や関係性についての具体的な言及はあま りされていない。学校や教育委員会と地域住民等・団体が双方向矢印ではつながっているが、学 校内にいる「外国人児童生徒」と地域住民等・団体との矢印はつながっていないため、具体的に どのような協力関係にあるのか不明であるvii。実際に高崎市国際交流協会のこれまでの子ども日 本語学習支援ボランティア養成講座の修了者からは自身がどのような役割や立場でこの構成図に 加わっていくかなかなかイメージできないという声も聞く。

 地域や学校にもよるが、教育委員会や学校からの特別な依頼でもない限り、日本語ボランティ アを申し出て学内に入ることは不可能で、もし依頼があったとしてもその多くは子どもの母語(あ るいは使用言語)が使える人だけであることが多い。そもそも学内に日本語学習支援体制がないと ころに通っている子どもや学内での学びの時間が十分ではなく、さらなる支援が必要な子ども、地 域の中でも学びたい(学ばせたい)子どもなどもおり、保護者は学外のしかるべき機関(市町の国 際交流協会など)へ相談するケースも多い。本稿で取り上げている群馬県高崎市国際交流協会も そのケースで、日頃の保護者からの相談から地域における日本語学習支援体制を模索している。

 子育てを学内だけで完結せず地域や社会とのつながりの中で、地域住民が見守ってみんなで育 てていくといった言葉をよく耳にするように、学内だけではなく、学外の人の関わりも必要であ ろう。本稿で取り上げる地域のボランティア主体の、外国につながる子どもへの日本語学習支援 ボランティア養成講座はまさにその一例で、ボランティアとしてどのような知識や技能を学び、

子どもたちを支えていくのかを真剣に考えている有意義な取り組みであると言えよう。

.文部科学省『外国人児童生徒受入の手引き【改訂版】』における

「日本語指導のプログラム」について

 子ども日本語学習支援ボランティア養成講座のシラバス・デザインを行う上で考えておかなけ ればならないのは、学習支援の対象となる「日本語」とはどのようなものであるかである。この 章では、外国につながる子どもに対する日本語学習支援のための日本語の内容ついて確認する。

 外国につながる子どもを対象に行っている指導内容について『外国人児童生徒受入れの手引き

【改訂版】』では、「日本語指導」の内容は様々であり、少なくとも「来日直後」、「日常会話がで きるまで」、「在籍学級の授業に参加できるまで」などの段階を設けて、学習内容を決定すること が必要だとしている。

 一言で「日本語指導」と言っても、その内容は様々で、少なくとも「来日直後」、「日常会話ができ るまで」、「在籍学級の授業に参加できるまで」などの段階を設けて、学習内容を決定することが必要 です。児童生徒の滞在期間や日本語習得状況、生活への適応状況などを考慮し、個別の指導計画を作 成する等、学習内容を選択しましょう。

(『外国人児童生徒受入れの手引き【改訂版】』p.27)

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 以下では、同書で示されている取り出し指導における基本的な指導内容・指導方法である「日 本語指導のプログラム」を概観する。

Ⅱ(1)「日本語指導プログラム」とは

 挨拶の言葉や具体的な場面で使う日本語表現を学習する「①サバイバル日本語」プログラム、

文字や文型など日本語の基礎的な知識や技能を学ぶための「②日本語基礎」プログラム、「聞く」

「話す」「読む」「書く」の言葉の4つの技能のうちどれか一つに焦点を絞った「③技能別日本語」

プログラム、日本語を学ぶことと教科内容を学ぶことを一つのカリキュラムとして構成する「④ 日本語と教科の統合学習」プログラム、教科内容を復習的に学習したりする「⑤教科の補習」プ ログラムがある(以下に各プログラムで重きを置いているものをゴシック体で示した)。

①「サバイバル日本語」プログラム

 来日直後の児童生徒は、言語はもちろん文化・習慣の違いから生活のあらゆる場面で、困難に 直面する。日本の学校生活や社会生活について必要な知識、そこで日本語を使って行動する力を 付けることが目的のプログラムである。挨拶の言葉や具体的な場面で使う日本語表現を学習する ことが主な活動になる。

②「日本語基礎」プログラム

 文字や文型など、日本語の基礎的な知識や技能を学ぶためのプログラムである。日々の生活で 浴びせられている日本語について、整理し、規則を学び、自分でも使えるようにするための学習 をする。日本語の知識・技能の獲得を目的の中心としつつ、学校への適応や教科学習に参加する ための基礎的な力として日本語の力を位置付けて計画しよう。基本的に、(A)発音の指導、(B)

文字・表記の指導、(C)語彙の指導、(D)文型の指導の4つがある。

③「技能別日本語」プログラム

 「聞く」「話す」「読む」「書く」の言葉の4つの技能のうち、どれか一つに焦点を絞った学習で ある。小学校高学年以上、特に中学生には、有効なプログラムだと言える。また、読解・作文の 学習で、目的に応じて読み書きの力を計画的に高めることは教科学習にとっても有益だと考えら れる。

④「日本語と教科の統合学習」プログラム

 学校では、外国人児童生徒は学習参加のための日本語の力が十分に高まる前から、在籍学級に おいては教科の授業を受けることになる。そこで、日本語を学ぶことと教科内容を学ぶことを、

一つのカリキュラムとして構成するという「日本語と教科の統合学習」が考えられる。児童生徒 にとって必要な教科等の内容と日本語の表現とを組み合わせて授業で学ばせる。文部科学省はそ のためのカリキュラムとして、「JSLカリキュラム」を開発している。

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⑤「教科の補習」プログラム

 在籍学級で学習している教科内容を取り出し指導で復習的に学習したり、入り込み指導として、

担当教員や日本語指導協力者・支援者の補助を受けたりしながら取り組む学習である。児童生徒 の母語がしっかりしていて、支援者や教員が児童生徒の母語ができる場合は、母語で補助しなが ら進めることが有効である。

Ⅱ(2)「コース設計 プログラムの組み合わせ例」

 文部科学省は、この5つのプログラムをどのようなタイミングでどれくらいの時間(頻度や期 間)をかけ行うかは子どもの現状によるが、計画立ったコース設計をした上で取り組むことを推 奨し、5つのプログラムの組み合わせ例として図2を示している。

図2 コース設計 プログラムの組み合わせの例(『外国人児童生徒受入れの手引き【改訂版】』p.34)

 手引きでは、日本語指導担当教員は子どもをよく観察し、必要となる支援を見極め、DLA等も 活用しながら学習支援していくことが必要であるとしている。従って、図2では支援開始から2 年後までしか示していないが、必要に応じて期間を延ばすことも必要であるとしている。

 では、実際の学校現場での指導はどうなっているのであろうか。文部科学省の「日本語指導が 必要な児童生徒の受入状況等に関する調査の結果について(平成30年度)」によると、日本語指 導が必要な児童生徒が在籍している学校が行っている指導内容について以下のような結果が出て いる。

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表3 日本語指導が必要な児童生徒を対象に行っている指導内容について(平成30年度)

1 .サバイバル日本語(挨拶や体調を伝える言葉、教科名や身の回りの物の名前などを使っ

て言えるようにする) 5,050校

2 .日本語基礎(文字・表記・語彙・文法、学校への適応や教科学習に参加するための

基礎的な力をつける) 7,172校

3.日本語と教科の統合学習(JSLカリキュラム) 3,040校

4.教科の補習(在籍学級での学習内容を先行して学習したり、復習したりする) 6,081校

5.その他 2,324校

 この調査によれば、「日本語基礎」を指導している学校が最も多く、以下、「教科の補習」、「サ バイバル日本語」、「日本語と教科の統合学習」の順となっている。指導内容のうち、なぜ「日本 語基礎」が最も多いのか、「その他」ではどんな支援が行われているのか、なぜ「技能別日本語」

プログラムが入っていないのかなど疑問が残る。このうち最後の「技能別日本語」が指導内容に 入っていない点については第Ⅳ章(2)節で取り上げる。

.高崎市国際交流協会「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」の 概要と目的

 本章では高崎市国際交流協会の「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」の概要及び講 座の目的を踏まえた内容について述べる。

Ⅲ(1)「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」と「子ども日本語学習支援ボランティ

ア派遣事業」の概要

①「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」の概要

 高崎市国際交流協会「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」は、2011年度に文化庁 の委託事業で開始し、その後は隔年で2013年度、2015年度、2017年度、2019年度に計4回、

市の自主財源で実施している。

 養成講座は定員20名で、4日間(毎週土曜日)実施され、午前10時から16時(昼休憩1時間、

最終日のみ15時までで、残り1時間は日本語学習支援ボランティア派遣事業の説明会)までの 全19時間の講座となる。受講資格は特にないが、高崎市内で子どもに日本語を支援するには、

必ずこの養成講座を受講しなければならない。2019年度の受講者は計20名(会社員、主婦、日 本語教師、大学生など)で、女性が13名、男性が7名で、10代から70代と幅広い年齢層である がそのうち60代が最も多かった。

 高崎市の子ども日本語学習支援ボランティアになるには、①高崎市国際交流協会の会員である こと、②本事業の目的を理解し賛同する者、③協会が開催する日本語学習支援ボランティア養成

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講座を受講した者または同等の知識を有する者で、④満15歳以上で未成年については保護者の 同意を得ている者、⑤政治、宗教及び営利活動を目的としない者であることが条件とされる。特 に、①にあげられているように、本講座を受講しても協会の会員にならなければ日本語ボランティ アとしての活動はできないviii

②「子ども日本語学習支援ボランティア派遣事業」の概要

 「子ども日本語学習支援ボランティア派遣事業」は2013年度から行われている。事業の目的は、

「日本語が十分に理解できない外国につながりのある児童生徒に、子ども日本語学習支援ボラン ティアを派遣し、子どもたちが学校生活や地域社会に早期に適応しさらにその特性を十分に生か せるように支援すること」であると定めている。

 派遣の仕組みについて簡単にまとめると、まずボランティア派遣を希望する者が国際交流協会 に申請をし、協会は申請の内容を審査し、当該ボランティアの調整を行い派遣の可否を決定する。

ボランティア派遣料は無料で、ボランティア活動も原則として無報酬である。協会に派遣を申請 するのは基本的には子どもの保護者であるが、学校や教育委員会からの依頼も少なからずある。

審査の内容は日本語のレベルや家庭環境、出身国・地域での就学状況、将来の日本定住志向など で、これらを対面でヒアリングし、支援の必要性を協会が判断する。依頼者には、協会から派遣 される支援者は専門的な教育者ではなく、あくまでボランティアであること、保護者等のサポー トも必要であることなどを伝え、子ども本人にも学習意欲の有無を確認する。子どもの自宅に派 遣されるのではなく、市内の通える場所(公民館等)での支援となるため、送り迎えは保護者が 責任を持って行うこととなる。

 ボランティア活動開始時期については、子ども日本語学習支援ボランティアの養成講座を受講 してすぐに派遣されるわけではなく、依頼がある都度、養成講座受講済みのボランティアに通知 し、時間や場所の制約の中から当該の子どもを担当できる人を募る形で行われる。マッチングの 最終段階では、国際交流協会の事務局とボランティアと保護者の3者で話し合い、支援が始まる。

(2)「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」の目的

 この節では、高崎市国際交流協会の「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」の目的を 確認し、それに合ったシラバス作成及び講座の内容にどのように反映させたかについて見ていく。

まず養成講座の受講者募集要項の本事業の目的の文言を一つずつ確認していく。なお、この「目 的」は、養成講座の初回に、協会、担当講師(筆者)、受講者で共有するものである。

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<高崎市国際交流協会「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」の「目的」>

①今、地域には日本語が母語でない子どもが増えています。

② 日本で働くことになった親についてきた子、家庭内の会話が日本語でない環境で育った子など理由 は様々です。

③ そして、a.生活や友達とのコミュニケーションにも困っている子から、普段の生活は大丈夫でも b.教科学習についていく日本語力がない子など、日本語レベルも様々です。

そんな子どもたちが、日本社会で明るい未来を描き、たくましく生きていけるように、子どもの日 本語学習を支援するボランティアを養成します。

①「日本語が母語でない子ども」とは?

 第Ⅰ章(1)節で公立学校に在籍している外国人児童生徒数及び日本語指導が必要な外国人児 童生徒の数で見たように、地域に日本語非母語話者の子どもが増えていることを知らせるための 文言である。全国にいる日本語指導が必要な子どもの母語別は、ポルトガル語、中国語、フィリ ピノ語、スペイン語話者(これら4言語で全体の8割以上)で、ブラジル、中国、フィリピン、

ペルーにつながる子どもが多い。群馬県高崎市内在住の子どもの国籍別及び母語別のデータはな いが、県内の外国人の国籍別のデータを見ると、ブラジル、ベトナム、フィリピン、中国、ペルー の上位5カ国で外国人住民の7割を占めていることからその子どもたちのおおよその母語状況を 窺い知ることはできる。

②「(日本語が母語でない子どもが増えている)理由は様々」とは?

 両親とも外国人である家庭の子どもだけではなく、日本国籍や重国籍(国際結婚家庭等)など家 庭環境の多様化している。子どもの状況においては例えば以下のようなケースが考えられる。

 ケース1:父親[日本人] /母親[フィリピン人] 家庭の言語:日本語(母親は日本語が苦手)

  本人(子ども)は、7歳までフィリピンで暮らし、母親の再婚に伴い8歳で来日  ケース2:父親[日系ブラジル人] /母親[日系ブラジル人] 家庭の言語:ポルトガル語   本人は日本生まれ。幼稚園から小学校1年までブラジル人学校。公立小学校の2学年に編入  ケース3:父親[中国人] /母親[中国人] 家庭の言語:中国語(父親は日本への留学経験あり)

  本人は中国生まれ。エンジニアの父親の転勤に伴い8歳で来日。公立小学校2学年に編入  都市圏を中心に多国籍化し、地域の集中化と拡散化(外国人集住都市のみならず全国に散在)が 見られる。日本語指導が必要な子どもたちは、国籍はもとより、母語、母文化、宗教、生活習慣 など、多様な背景を伴っていることは言うまでもない。

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③ 「a.生活や友達とのコミュニケーションにも困っている子、b.普段の生活は大丈夫でも教科学 習についていく日本語力がない子」とは?

 「a.日本語で日常会話が十分にできない(=BICS)」「b.日常会話ができても、学年相当の学習言 語能力(=CALP)が不足し、学習活動へ参加できない」といった生活言語能力と学習言語能力 の違いを踏まえた支援が必要であることを意味している。以下、それぞれを簡単に説明する。

【生活言語能力(BICS:Basic Interpersonal Communicative Skills)】

 生活場面のやりとりで必要とされる言語能力で、子供の場合、友達との関わりの中で比較的短 期間で身につけられると言われている。BICSは言語を話す上で、何らかの文脈的な支え(非言語 コミュニケーション、実物、聞き手からのフィードバックなど)がある場合に働くとされる。

【学習言語能力(CALP:Cognitive Academic Language Proficiency)】

 学校教育などの学習場面で必要とされる認知的言語能力で、学力をうまく伸ばすために必要な 統合・分析・類推・評価・解釈などの認知処理を支える言語能力とされる。学校教育が子供の第 二言語で行われる場合、BICSの表面的な流暢さは身につけても、教科学習で必要な認知的言語能 力が発達しないために学力が付かないことがあると考えられている。

④ 「子どもたちが、日本社会で明るい未来を描き、たくましく生きていけるように子どもの日本 語学習を支援するボランティア」とは?

 様々な背景を持つ子どもへの実際の支援は、その一人一人の背景により異なるが、“これだけ をやっておけば大丈夫”というものはない。子どもの日本語学習を支援するボランティアとして どんなことができるだろうかを意識してもらうための文言である。

 高崎市国際交流協会「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」のシラバス・デザインに あたっては、これらの「目的」が達成できるよう、国際交流協会の担当者と十分議論を行った。

次章では、具体的な養成講座の内容について見ていく。

.「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」の「講座内容(シラバス)」

 ここでは上記の「目的」を踏まえた養成講座の講義内容について述べる。表4は2015年度、

2017年度、2019年度の高崎市国際交流協会「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」の 各8回分のシラバスである。なお、2017年度と2019年度の下線部は前年度からの変更箇所であ る。

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表4 2015年度、2017年度、2019年度の

「子ども日本語学習支援ボランティア養成講座」シラバス

2015年度 2017年度 2019年度

1日目

1.日本語を母語としない子どもへの 日本語学習支援について

1.1.日本語を母語としない子どもたち の背景や学習環境

1.2.文科省「特別の教育課程」による 日本語指導の概要

1.日本語を母語としない子どもへの 日本語学習支援について

1.1.日本語を母語としない子どもたち の背景や学習環境

1.2.文科省「特別の教育課程」による 日本語指導の概要

1.日本語を母語としない子どもへの 日本語学習支援について

1.1.日本語を母語としない子どもたち の背景や学習環境

1.2.子どもたちの多様性への対応→ g

2.子どもに対する日本語学習支援の 知識と技術(1)

2.1.日本語学習の目標・ニーズ・動機、

及び、日本語学習と教科学習の関係 2.2. 日本語の「発音/文字/語彙/

文法/単文/複文/段落」レベルに ついて

2.子どもに対する日本語学習支援の 知識と技術(1)

2.1.日本語学習の目標・ニーズ・動機、

及び、日本語学習と教科学習の関係 2.2.文科省「外国人児童生徒のための JSL対話型アセスメントDLA」につい て→ a

2.子どもに対する日本語学習支援の 知識と技術(1)

2.1.日本語学習の目標・ニーズ・動機、

及び、日本語学習と教科学習の関係 2.2.子どもに関わる人のそれぞれの役 割→ h

2日目

3.子どもに対する日本語学習支援の 知識と技術(2)

3.1.学校生活での“サバイバル日本語”

と“日本語基礎”の違いは?

3.2.日本語の「発音/文字/語彙」に ついて

3.子どもに対する日本語学習支援の 知識と技術(2)

3.1.「サバイバル日本語」と「日本語 基礎」について

3.2.日本語の「発音/文字/語彙/文 型」について→ b

3.子どもに対する日本語学習支援の 知識と技術(2)

3.1.「サバイバル日本語」と「日本語 基礎」について

3.2.日本語の「発音/文字/語彙/文 型」について

4.子どもに対する日本語学習支援の 知識と技術(3)

4.1.日本語の「文法/単文/複文/段 落」について

4.2.日本語学習支援にできること/で きないこと(実践に向けた課題提示)

4.子どもに対する日本語学習支援の 知識と技術(3)

4.1.日本語の構造について→ c 4.2.日本語学習支援の実践に向けて

4.子どもに対する日本語学習支援の 知識と技術(3)

4.1.日本語の構造について

4.2.地域の日本語教室の支援と役割→

i

3日目

5.子どもに対する日本語学習支援の 実践(1)

5.1.技能別の支援「発音」

5.2.技能別の支援「文字」

5.子どもに対する日本語学習支援の 実践(1)

5.1.技能別ixの支援「発音」

5.2.技能別の支援「文字」

5.子どもに対する日本語学習支援の 実践(1)

5.1.技能別の支援「発音」

5.2.技能別の支援「文字」

6.子どもに対する日本語学習支援の 実践(2)

6.1.技能別の支援「語彙」

6.2.技能別の支援「発音/文字/語彙 の関わり」

6.子どもに対する日本語学習支援の 実践(2)

6.1.技能別の支援「語彙」

6.2.技能別の支援「文法」→ d

6.子どもに対する日本語学習支援の 実践(2)

6.1.技能別の支援「語彙」

6.2.技能別の支援「文法」

4日目

7.子どもに対する日本語学習支援の 実践(3)

7.1.技能別の支援「語彙と文法」

7.2.技能別の支援「単文から複文へ」

7.子どもに対する日本語学習支援の 実践(3)

7.1.技能別の支援「話す・聞く」

7.2.技能別の支援「読む・書く」→ e

7.子どもに対する日本語学習支援の 実践(3)

7.1.技能別の支援「話す・聞く」

7.2.技能別の支援「読む・書く」→ j 8.子どもに対する日本語学習支援の

実践(4)

8.1.技能別の支援「文から段落へ」

8.2.振り返りとまとめ

8.子どもに対する日本語学習支援の 実践(4)

8.1.授業プランの作り方→ f 8.2.振り返りとまとめ

8.子どもに対する日本語学習支援の 実践(4)

8.1.各日本語プログラムを踏まえた授 業プラン作り→ k

8.2.振り返りとまとめ

2015年度 2017年度 2019年度

(14)

 本シラバス作成までの経緯を簡単に述べると、本講座は2015年度まで当時本学教員がコース・

デザイン、シラバス作成、講座担当講師等を行っていた。筆者は2015年度の講座の3日目(表 4 2015年度の5〜6)を担当したが、この年度はあくまで講師として前任者が用意した内容 で講座を担当したに過ぎない。前任者の異動に伴い、国際交流協会から2017年度の講座の依頼 を受け、筆者がすべて担当するようになった。2017年度は前回のシラバス及び教材を引き継い たものを元に講座内容を少し変え、2019年度も前回の受講者の反応などを踏まえて変更してい る(変更箇所は下線で示している)。以下ではこのシラバスの内容や変更箇所、変更理由につい て述べる。

Ⅳ(1) 2015年度と2017年度のシラバス

①2015年度のシラバスについて

 講座1日目では、日本語指導が必要な子どもたちの多様な属性や環境や前年度(2014年度)

から始まった文部科学省の「特別の教育課程」に触れ、さらに、日本語学習と教科学習の違いに ついても取り上げている。2日目からは子どもたちに対する日本語学習支援を行う際の知識や技 術として、文部科学省の5つのプログラムの特に「サバイバル日本語」と「日本語の基礎」、そ こから日本語の構造(短文、複文)について触れている。3日目からは実践にあたる際の内容と して「発音、文字、語彙」について、最終日の4日目はいままで単独で見てきた語彙や文法から 文を長くしていき段落までの流れを取り上げている。限られた時間の中でまんべんなく日本語そ のものの知識(構造)に触れており大変厚みのある内容である一方で、どちらかというと日本語 の構造に注目したものになっている。

②2017年度のシラバスについて(2015年度からの変更点)

 基本構成は2015年度のものを踏襲しているが、この年度から文部科学省の「5つのプログラム」

の特に「サバイバル日本語」「日本語基礎」「技能別日本語」に関わる項目が加わっている。以下、

6点の変更箇所を、表4の下線部a 〜 fの順で述べる。

a. (2.2)外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA

 2014年に文部科学省によって「特別の教育課程」と日本語の4技能を評価するDLAが示された。

従って、2015年度の講座からはこのDLAについて触れることにした。いままで子どもたちの日 本語能力を測る具体的な手法がなかった中で、言語の4技能に注目し、支援の段階を把握するた めに開発されたツールを知ることで、子どもの様子からどんな支援が必要か考えられると思い取 り上げた。

b. (3.2)日本語の「発音/文字/語彙/文型」について

 前回は「発音/文字/語彙」のみだったが、「日本語基礎」にあたるものなのでここで「文型」

についても取り上げている。ここで軽く触れておくことで、後半の文法(6.2)を取り上げる際

(15)

に戸惑わないように配慮した。

c. 4.1.日本語の構造について

 前回は日本語の構造を「単文/複文/段落」順に見ていき、初級と中上級の目標や複文で必要 な文法形式などについて扱われ、上のレベルに上がるにはどのような支援が必要かなどについて 触れていた。2017年度はそこまで詳細には扱わず、日本語の文を作るためのルールがあること を示し、「存在文」や「動詞文」を例に文の型(パターン)を見つけることを意識させた。語彙 を知っているからといっていきなり文が作れないことやそれなりのパターンの練習が必要である ことに重きを置いた。

d. (6.2)技能別の支援「文法」

 すべての文法を取り上げることはできないので、ここでは市販の子供用の日本語教材の主要例 文を使い、どのような文型や文法が含まれているのか観察した。受講者は言語教育について知識 を有しているわけないため、なるべく専門用語を避け、しかし普段何気なく使っている言葉に型 があり、子どもに接する際にも言葉遣いに留意するよう(あまり長く複雑な文にならないよう)

伝えた。

e. (7.1、7.2)技能別の支援「話す・聞く」「読む・書く」

 前回までは4技能についての言及はなかったためこの年度は音声ベースの「話す・聞く」、文 字ベースの「読む・書く」について取り上げた。DLAも4技能それぞれの能力を見るものになっ ていたため、ここでは書かせたり読ませたりするためにはどのような注意が必要かについて伝え た。

f. (8.1)授業プランの作り方

 いままで学んだ内容を踏まえ、どのような学習支援活動ができるか考えてもらいたかったため、

数人のグループに分かれて指導案を作成してもらった。模造紙に書き込み、発表して、講評する 形式で行った。

(2) 2019年度のシラバス(2017年度からの変更点)

 前2回の基本構成を踏襲した上で、「子どもたちの多様性への対応」「子どもに関わる人のそれ ぞれの役割」「地域の日本語教室の支援と役割」といった態度や心構えに関する内容を加え、また、

「技能別支援」と「授業プラン作り」の充実が主な変更点である。以下、5点の変更箇所を、表 4の下線部g 〜 kの順で述べる。

g. (1.2)子どもたちの多様性への対応

 前回は「特別の教育課程」について取り上げたが、受講者からは学校教員でもない一般人が知 る内容としては重すぎる(難しい)という意見や高崎市内で「特別の教育課程」を実施している 学校が不明であったため今回は省くことにした(地域・学校によってはそのような取り組みをし

(16)

ていることだけは伝えた)。その代わり、十分に子どもたちの多様性を理解してもらうため様々 な子どものケースを取り上げ、ボランティアとして子どもと関わる際に、何がどこまでできるか、

踏み込めるところとそうではないところを考えてもらった。

h. (2.2)子どもに関わる人のそれぞれの役割

 今回の講座では学校や社会が外国につながる子どもたちのためにできることを意識してもらう ことにこれまで以上に主眼を置いた。これまでの講座では、限られた時間の中で扱われている内 容も多く、やや専門的なものも多くなり、その内容の厚さに気圧される人も出ていた。今回はボ ランティアとしてできることを少し気軽かつ身近に考えてもらうために、講座の随所に「あなた にできることは?」という意味で子どもに関わる人それぞれの役割について取り上げている(上 記のgも同じ意図である)。

i. (4.2)地域の日本語教室の支援と役割

 繰り返しになるが、今回の講座ではそれぞれの人が子どもたちのためにできることを意識して もらうことに主眼を置いている。毎回講座の内容が進むにつれて「とてもじゃないけどできそう にない」といった気持ちをなるべく取り除くため、地域社会ベースの日本語学習支援の意義を認 識するための話し合いを随所に入れている。

j. (7.1、7.2)技能別の支援「話す・聞く」「読む・書く」

 前回のシラバスのタイトルと同様ではあるが、今回は少し内容を減らし、「日本語基礎」から「技 能別」への移行の大切さのみに留めた。というのも、日本語教育に触れたことのない人がいきな り技能別の支援内容を考えることはあまりにもハードルが高かった。「読む・書く」と言っても 文章ではなく文字(仮名、漢字)に偏りがちで、「聞く・話す」と言っても実際に何を聞かせるか、

何を話させるか想像することは難しかった。これについては第Ⅱ章(1)節の後半で触れた文部 科学省の日本語指導が必要な児童生徒の調査に、各学校で行われている指導内容に「技能別日本 語」が存在しなかったことと関係すると考えられる。

 「サバイバル日本語」は日本語そのものの指導というより学校生活の適応指導に近く、わりと 簡単に教えるべき内容を思いつくことができる。「日本語基礎」は「サバイバル日本語」で扱っ たものなどに加え、発音や文字、語彙、文型といったものを可視化させ、言語知識として身につ けさせることになる。子どもは音声ベースが得意な子(話す、聞く)、文字ベースが得意な子(読 む、書く)などいままでの学習歴や置かれた環境によって得意とするものが異なり、それぞれの 不得意とする領域の技能を見極め、向上させていく必要がある。

 しかし、まとまった内容を聞く力や話す力(ディスカッションやディベートも含む)などは一 夜で身につくものではなく、当該の子どものレベルに合わせた指導計画が必要であり、かなり考 え込まれたプランで、かつ有効な教材を必要とする。要するに、日常会話ができるから教科内容 について議論ができるようになるとか、高学年なら低学年の教科書を読んだり書いたりすること で技能が身につくといった簡単なものではない。

(17)

 『外国人児童生徒の受入れの手引き【改訂版】』においても「技能別日本語」プログラムは1ペー ジ程度の分量で取り上げられており(同書p.31)、学校の教員が参考にするにもあまりにも内容 が薄い。文部科学省の日本語指導が必要な児童生徒調査の回答方法がわからないため想像の域を 超えないが、各学校で「日本語基礎」が最もよく指導され(2018年度では、7,172校)、次に「教 科の補習」(6,081校)、「サバイバル日本語」(5,050校)、「日本語と教科の統合学習」(3,040校)

の順で減っていくことは「技能別日本語」そのものが非常に指導しにくい(難しい)か、あるい は、「日本語基礎」や「教科の補習」に取り込まれているかのいずれかであろう。もし前者とす るなら(おそらく間違いないと思うが)「話す・聞く・読む・書く」の技能別の指導をしたくても、

何で(教材)・どうやって(教授法)が明確でないからこその現象であると推察する。もしどこ かの段階で「技能別日本語」の指導が行われているとしたらなぜ回答しなかったのか、あるいは、

どのように教えているのかについての疑問を払拭できるデータがほしいがいまのところ見つから ない。

 以上のような理由で、日本語学習支援ボランティアが技能別の日本語指導のために、教材等を 探したりリライトしたり作成したりすることは難しいと考える。前回の講座でのボランティアの 反応もあまりよくなく、文字や語彙を教えることは何をすればいいのか具体的に想像がつくが、

4技能をまんべんなく指導することへの負担が大きいことがわかったため、今回の研修ではあく まで「日本語基礎」からいきなり教科科目に移行するのではなく、子どもの状況によっては「技 能別日本語」も必要であることのみを伝えた。ボランティアが担うべき内容でないなら誰が担う べきかについてはまた別稿で考えたい。

k. (8.1)各日本語プログラムを踏まえた授業プラン作り

 いままで学んだ内容を踏まえ、どのような学習支援活動ができるか考えてもらいたかったため、

数人のグループに分かれて指導案を作成してもらった。

<授業プラン作りの様子>

(18)

 前回と異なるのは、思考の流れが整理するため、A 3用紙にスライド形式で作成したこと、支 援対象となる子どもの例を想像できる範囲で考えてもらったこと、5つのプログラムの何に注目 したものかを意識してもらったことの3点である。各グループで話し合いながら作成、全体向け の発表、全体での講評の形式で行った。

.おわりに:日本語学習支援ボランティア養成から見えてきた課題

 本稿では、第Ⅰ章で外国につながる子どもたちの現状を把握し、第Ⅱ章で文部科学省の提案す る「日本語プログラム」について触れ、第Ⅲ章で高崎市国際交流協会の子ども日本語学習支援ボ ランティア養成講座の仕組みについて見てきた。第Ⅳ章では具体的に講座の内容を紹介し、外国 につながる子どもに日本語学習支援をするためにボランティアとして知っておくべきことは何か について詳細に取り上げた。民間団体ではない、行政側の市の国際交流協会として、子どもたち の未来のためにここまで考え抜き、予算や時間を割いての取り組みは大いに評価すべきと言えよ う。筆者の調べた限りでは、外国人(成人)のための日本語学習支援は全国的に多くの市区町村 で行われているが、子どもに特化した日本語学習支援ボランティアの養成はまだあまり行われて いないx。高崎市国際交流協会と養成講座受講者の思いに応えられるよう、また、外国につなが る子どもたちのために、講座担当者としてより良い内容を提供できるよう努めていきたい。

 本稿では紙幅の都合により、本養成講座と他の市区町村での取り組みとの比較や本講座の成果 の検証は扱うことができなかった。本講座の成果の検証としては、受講者からの講座終了後のア ンケートの分析、2017年度以前の講座修了者で、現在活動しているボランティアへのヒアリン グなどを中心に、今後考えていきたい。また、支援されている子どもたちの様子とその変化や学 校の中での支援の在り方やボランティアと学校の協働の可能性などに関しても考えていく必要が ある。これらについては今後の課題としたい。

(やん じょんよん・群馬県立女子大学地域日本語教育センター専任講師/

高崎経済大学非常勤講師)

【参考資料】

志村恵・深澤のぞみ(2019)『多文化共生社会を促進する場としての外国につながる子どもたち への学習支援』金沢大学国際機構紀要 p.45-59

文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課(2019)『外国人児童生徒受入れ の手引き【改訂版】』明石書店

文部科学省『日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成30年度)の結果に ついて』

(19)

文部科学省初等中等教育局国際教育課(2014)『外国人児童生徒教育研修マニュアル』

日本語教育学会(2018)『平成29年度文部科学省委託 外国人児童生徒等教育を担う教員の養成・

研修モデルプログラム開発事業―報告書−』

ⅰ 「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成30年度)」の結果について」http://www.mext.go.jp/b_

menu/houdou/31/09/__icsFiles/afieldfile/2019/09/27/1421569_002.pdf (2019年11月2日アクセス)

ⅱ 外 国 人 の 子 供 の 就 学 状 況 等 調 査 結 果( 速 報 )http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/09/__icsFiles/afieldfi le/2019/09/27/1421568_001.pdf (2019年11月21日アクセス)

ⅲ 毎 日 新 聞「 外 国 籍 児 童・ 生 徒 1 万 人 超 が 日 本 語「 無 支 援 」」https://mainichi.jp/articles/20190504/

k00/00m/040/098000c (2019年10月14日アクセス)

ⅳ 群馬県 外国人住民の数 https://www.pref.gunma.jp/04/c15g_00133.html (2019年11月2日アクセス)

ⅴ 群馬県高崎市教育委員会会議実績 https://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2013121200400/(2019年11月22日アク セス)

ⅵ 文部科学省クラリネット http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/main 7_a2.htm (2019年11月1日アクセス)

ⅶ ただし、ボランティアの研修については、『外国人児童生徒受入の手引き【改訂版】』のp.52 〜 54に「人材確保と育成に ついて」の中で触れられているが、このモデルプログラムは学校教員のものであるため実態にそぐわないと言えよう。

ⅷ 協会が実施している日本語ボランティア養成講座(大人、子どもともに)に、養成講座受講後にボランティア活動につな がらないケースが少なからずある。ボランティア不足やメンバー入れ替えのため予算と時間をかけて養成講座を開いても、

中々活動に結びつかないことは協会の抱える悩みの一つである。講座後に支援につながらない要因についてはで別の論考 で議論したい。

ⅸ 文部科学省では「話す・聞く・読む・書く」を言語技能をとしてあげているが(最も一般的な使い方)、本シラバスで「発 音、文字、語彙・文法」なども「技能別」という言い方をしている。理由は、言語知識の下位区分もマイクロスキルとし て捉えているためである。支援の内容として「話す〜書く」に至る前の、より細かくそれぞれのスキルに着目してもらい たいため「発音〜文型」も技能と呼んでいる。

ⅹ 子どもを対象とした日本語学習支援ボランティアの養成を行っているところには以下のような団体がある。

 (公財)新宿未来創造財団 https://www.regasu-shinjuku.or.jp/?p=139602、(公財)佐賀県国際交流協会 https://www.

spira.or.jp/lang-study./、(公財)横浜市国際交流協会 https://www.yokeweb.com/single-post/20180618、(NPO)教育支 援 ク グ ル ー プ Ed.ベ ン チ ャ ー http://edventure.jp/wp-content/uploads/2016/03/ea1357e57d4976a89988a0d0abc9c 4a8.pdf (2019年11月18日アクセス)

参照

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