第
3高調波電圧誘導法を用いた
YBCO-coated
線材の
E{J特性の評価
原口 輝久
平成 16年 2月 24 日
電子情報工学科
目次
第1章 序 章 1
1.1 は じ め に : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 1
1.2 試 料 の 作 製 方 法 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 2
1.2.1 中 間 層 の2軸 配 向 法 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 4
1.2.2 超 伝 導 層 の 作 製 法 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 5
1.3 Y系 超 伝 導 線 材 の 現 状 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 6
1.4 E{J 特 性 の 評 価 法 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 6
1.5 第 三 高 調 波 電 圧 誘 導 法 の 原 理 : : : : : : : : : : : : : : : : : : 7
1.6 表 皮 効 果 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 13
1.7 本 研 究 の 目 的 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 16
第2章 測 定 17
2.1 試 料 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 17
2.2 測 定 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 17
2.2.1 四 端 子 法 に よ る 測 定 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 17
2.2.2 SQUIDを 用 い た 磁 化 緩 和 法 に よ る 測 定 : : : : : : : : 19
2.2.3 第 三 高 調 波 電 圧 誘 導 法 に よ る 測 定 : : : : : : : : : : : 20
第3章 結 果 及 び 検 討 22
3.1 V
3 {I
0 特 性 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 22
3.2 E{J 特 性 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 25
3.3 J
c
{B 特 性 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 30
3.4 n値 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 33
第4章 結 論 と 今 後 の 課 題 35
4.1 結 論 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 35
4.2 今 後 の 課 題 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 35
参 考 文 献 38
図目次
1.1 IBAD-PLD法 に よ るYBCO coated線 材 の 構 造 : : : : : : : : 3
1.2 第 三 高 調 波 電 圧 誘 導 法 の モ デ ル : : : : : : : : : : : : : : : : 9
1.3 遮 蔽 電 流 の 様 子 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 10
1.4 I
0
<I
c0 (I
0
= 0:5I
c0
) の 磁 束 と 電 圧 : : : : : : : : : : : : : : : 10
1.5 I
0
>I
c0 (I
0
= 1:5I
c0
) の 磁 束 と 電 圧 : : : : : : : : : : : : : : : 10
1.6 FEMシュ ミ レー ショ ン に よ るV3{I0 特 性 (Wada et al.,2002) : 11
1.7 超 伝 導 薄 膜 内 の 磁 束 分 布 と 遮 蔽 電 流 の 分 布 : : : : : : : : : : 12
1.8 表 皮 効 果 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 15
2.1 四 端 子 法 に 用 い た 試 料 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 18
2.2 y 軸 方 向 か ら み た 第 三 高 調 波 電 圧 誘 導 法 の 測 定 モ デ ル : : 21
3.1 V
3 {I
0 特 性 の 磁 界 依 存 性(70.0K、75Hz) : : : : : : : : : : : : 23
3.2 V
3 {I
0 特 性 の 周 波 数 依 存 性(70.0K、3T) : : : : : : : : : : : : 24
3.3 E{J 特 性(70.0K) : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 27
3.4 E{J 特 性(77.3K) : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 28
3.5 図 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 29
3.6 J
c
{B 特 性(70.0K) : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 31
3.7 J
c
{B 特 性(77.3K) : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 32
3.8 n値(77.3K) : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 34
第
1章 序章
1.1 は じ めに
1911年 オ ラ ン ダ の カ メ リ ン・ オ ネ ス(Kamerlingh Onnes)が 極 低 温 で の 水 銀 の 超 伝 導 を 発 見 以 来、 様々 な 超 伝 導 体 が 発 見 さ れ て き た。 当 初 は 金 属 や 合 金 の 超 伝 導 体 が 開 発 さ れ、 超 伝 導 の 発 現 機 構 に 関 す る 研 究 が 進 め ら れ てきた。1957年に超伝導発現機構を説明するBCS理論が登場し、超伝導体 が 超 伝 導 状 態 か ら 常 伝 導 状 態 へ と 移 行 す る 温 度、 す な わ ち 臨 界 温 度 は30K を 越 え な い で あ ろ う と 考 え ら れ て い た。 と こ ろ が、1986年、 酸 化 物 系 物 質
(La-Ba-Cu-O)で30K級超伝導の可能性がベドノルツ(JohannesG.Bednorz) と ミュー ラー(Karl Alex Muller)に よっ て 示 さ れ た。
そ の 後、 液 体 窒 素 の 沸 点(77 K)を 大 き く 越 え た 臨 界 温 度 を 持 つY-Ba-
Cu-OやBi-Sr-Ca-Cu-Oなどの酸化物超伝導体が発見され、高温超伝導に大
き な 期 待 が 寄 せ ら れ る こ と と なっ た。 特 に、 高 温 超 伝 導 体 の 臨 界 温 度 が 液 体 窒 素 の 沸 点 よ り も 高 い こ と か ら、 冷 却 コ ス ト の 低 減 が 見 込 ま れ る。 し か し な が ら、 数 年 を 経 た 今 日、 高 温 超 伝 導 体 の 応 用 の 難 し さ が 理 解 さ れ、 単 な る 臨 界 温 度 の 高 い 超 伝 導 体 の 探 査 や そ れ ら の 構 造 解 析 だ け で な く、 超 伝 導 機 器 と し て の 応 用 の た め の 特 性 改 善 が 求 め ら れ て い る。
現 在応用が 期待されて いる高温 超伝導体 線材の代表 的なもの として挙げ られるのが、先程も述べたY系超伝導線材と、 Bi系超伝導線材である。Bi 系 超 伝 導 線 材 は、 圧 延 な ど の 機 械 的 な 応 力 で 容 易 に 加 工 す る こ と が 可 能 で あるた め、すでにkm オーダーの線材も作ら れている。一方、Y系超伝導線 材 は 特 殊 な 方 法 で 作 製 す る 必 要 が あ る。 ま た 長 尺 化 も 容 易 で は な い 上、 作 製コ ス ト面 で の課 題 もあ る が、Bi系超 伝 導体 に 比 べて 高 温高 磁 界下 に お け る 臨 界 電 流 特 性 に 優 れ て い る た め、 次 世 代 線 材 と し て 大 き な 期 待 を 寄 せ ら れ て い る。
超 伝導体が実用化される際には、臨界温度Tc や作製コストなど、様々な 条 件 を ク リ ア す る 必 要 が あ る。 そ の 中 で も、 電 気 抵 抗 な し に 流 せ る 最 大 直 流 電 流 密 度 で あ る 臨 界 電 流 密 度Jcは、 実 際 の 使 用 に 際 し ど こ ま で 電 流 を 流 す こ と が で き る の か を 判 断 す る 指 標 と な る た め、 非 常 に 重 要 で あ る と 言 え る。 臨 界 電 流 密 度 は、 発 生 す る 電 界 が 基 準 に 達 し た と き の 電 流 密 度 の 値 と す る。 こ れ ら の 超 伝 導 体 は 様々 な 分 野 で の 応 用 が 考 え ら れ る。 例 え ば 電 力 貯蔵シス テム(SMES、フライホイールなど)や、電力輸送ケーブル、リ ニア モーターカー、高感度磁気センサー(SQUID)、医療分野(MRI)、NMR(核磁 気共鳴分 析装置)などで ある。し かし、各 応用ご とに超 伝導体 が置か れる電 磁 気 的 環 境 が 異 な る た め、 超 伝 導 体 に 発 生 す る 電 界 も そ れ ぞ れ 異 な る。 例 え ば、NMRで は 極 め て 高 い(0.01ppm/h程 度)磁 界 の 安 定 度 が 要 求 さ れ る た め、 発 生 す る 電 界 は 極 め て 小 さ い 値 と な る。 一 方 電 力 輸 送 用 ケー ブ ル で は 交 流 の 使 用 と な る た め、 発 生 す る 電 界 もNMRに 比 べ て 高 い 値 と な る。
こ の よ う に、 各 応 用 に よっ て 発 生 す る 電 界 の 大 き さ も 異 な る た め、 各々 の 応用 に 即 し た 臨 界 電流 特 性 が 必 要 で あ り、 幅広 い 領 域 で のE{J 特 性 を 測 定 す る こ と は 非 常 に 有 意 義 で あ る と 言 え る。 そ れ に 伴 い、E{J 特 性 を 容 易 に 評 価 す る 手 法 も ま た 必 要 と さ れ て い る。
1.2 試 料 の作 製 方 法
前 述 し た よ う に、Bi系 超 伝 導 体 は 容 易 に 線 材 化 を 行 な う こ と が で き る が、Y系超伝導体は結晶構造が3次元的であるため、高度な配向制御技術が 必 要 で、 現 時 点 で は 実 用 レ ベ ル(kmオー ダー)の 線 材 化 に は 至っ て お ら ず、
さ ら な る 開 発 期 間 と 開 発 投 資 が 必 要 で あ る。
今回の研究で使用した試料は、IBAD-PLD法という方法で作製されたY 系薄 膜 線材 で あり、 そ の 構造 は 図1.11) のよ う に なって い る。IBAD-PLD 法 では、まずIBAD法により無配向結晶基板の上に中間層を2軸配向させ、そ の上 にPLD法に よ り 超伝 導 層 を形 成 し、 保護 膜 を 張る と い う過 程 を 踏む。
Y系超 伝導 線材 の作 製方 法はIBAD-PLD法以 外に も多 数の 方法 が提 案さ れ て お り、 こ こ で は そ の 代 表 的 な 作 製 方 法 を、 特 に 重 要 で あ る 中 間 層 の2軸 配 向 法 と 超 伝 導 層 の 配 向 法 に 分 け て そ れ ぞ れ 説 明 す る。
図1.1 IBAD-PLD法 に よ るYBCOcoated線 材 の 構 造
1.2.1 中 間 層の2軸 配 向 法
IBAD法(Ion Beam Assisted Deposition)
IBAD法 と は、無 配 向 の耐 熱 金属 テー プ上 に お いて イ オン ビー ム照 射 を 用いることにより高度に全軸配向した中間層を成長させる方法である。
こ のIBAD法 は 基 材 金 属 の 結 晶 性 に 影 響 さ れ る こ と な く 極 め て 緻 密 で 平 滑 な 成 長 表 面 が 得 ら れ る。 他 の 方 法 に 比 べ、Jc を 制 限 す る 要 因 が 少 な く、 比 較 的 安 定 に 高 特 性 が 得 ら れ る。1991年 のIBAD法 開 発 当 初 に お い て は、 製 造 速 度 が 遅 い 上 に 設 備 メ ン テ ナ ン ス に 手 間 が か かっ た こ と か ら 長 尺 線 材 化 は 疑 問 視 さ れ る こ と が 多 かっ た が、 現 在 は 技 術 の 進 歩 に よ り 従 来 比 10倍 以 上 の 製 造 速 度 が 得 ら れ、1.0[m/h] の 製 造 速 度 で
60m 長、0.5[m/h]で30m長 の 中 間 層 が 製 造 さ れ る よ う に なっ た。
SOE 法(Surface Oxidation Epitaxy)
SOE 法 と は、Niテー プ を 参 加 熱 処 理 し て、 テー プ 表 面 に 2 軸 配 向 し た
NiO層 を 形 成 し、 こ れ をYBCO成 膜 用 の 基 板 と し て 用 い る も の で、 次 世 代 線 材 の 長 尺 化 お よ び 低 コ ス ト 化 の 有 力 な 方 法 と し て 開 発 が 進 め ら れ て お り、 配 向 中 間 層 が 形 成 さ れ た 金 属 テー プ 基 板 を 低 コ ス ト で 高 速 に 作 製 す る 手 法 と し て 大 い に 期 待 さ れ て い る。 Niテー プ の 2 軸 配 向 は 圧 延 と 熱 処 理 で 行 な う こ と が で き る。 ま た、SOE法 は 中 間 層 の 形 成 ま で を 非 真 空 プ ロ セ ス で 行 な え る と い う 点 に 優 位 性 が あ る。
RABiTS法(Rolling Assisted Biaxially Textured Substrate)
RABiTS法 は、 圧 延 と 熱 処 理 に よ り 冶 金 的 に 二 軸 配 向 し た 純Niテー プ を 製 作 し、 そ の 上 に 中 間 層 とYBCO膜 を 成 膜 す る 手 法 で あ る。IBAD 法 と 比 較 し て 個々 の プ ロ セ ス が 簡 単 な た めIBAD法 よ り 低 コ ス ト で 済 む に も か か わ ら ず、 短 尺 の 試 料 で はIBAD法 に 匹 敵 す るJc 特 性 が 得 ら れている。しかし、長尺の試料での特性はIBAD法より劣り、基板その も の を 面 内 配 向 さ せ る 必 要 が あ る た め 使 用 で き る 基 板 の 種 類 が 限 ら れ る な ど の 問 題 も あ る。
ISD 法(Inclined Substrate Deposition)
ISD法 は、 中 間 層 を 成 膜 す る 際 に 基 板 を 傾 け る だ け で 面 内 配 向 が 実 現 できるため、長尺化が容易で、その作製速度も速いという特徴をもつ。
し か し、 そ の 製 法 に 由 来 し た 基 板 法 線 に 対 す る 結 晶 配 向 方 向 の ず れ、
や や 大 き い 面 内 配 向 性 な ど の 問 題 も あ る。
1.2.2 超 伝 導層 の 作 製 法
TFA-MOD法(TriFluoroAcetate-Metal Organic Deposition)
TFA-MOD法 は、Y,Ba,Cuの ト リ フ ル オ ロ 酢 酸 塩 原 料 液 を 基 板 上 に 塗 布 し て、 水蒸 気 雰 囲 気 中、700-800 ℃ 程度 で 熱 処 理 し て、超 伝 導 膜 を 得 る手法である。この方法はこれまで、膜を厚くすることが困難であった が、 数 回 の 膜 塗 布 を 繰 り 返 す こ と に よ り、 膜 を 厚 く し、150[A]以 上 と い う 大 き な 電 流 値 を 得 る こ と に 成 功 し て い る。 非 真 空 中 で の 作 製 で あ る こ と か ら、PLD法 な ど に 比 べ て 1/100以 下 に も な る 可 能 性 が あ り、
低 コ ス ト 化 の 実 現 を 期 待 さ れ て い る。
LPE法(Liquid Phase Epitaxy)
LPE法は、溶液または融液から基板上に結晶を成長させる手法である。
その特徴として、液相成長による高い結晶性を持つ、大面積化に有利、
気 相 成 長 に 対 し100{1000倍 の 高 速 成 長 が 可 能、 な ど が 挙 げ ら れ る。 高 いJc値 を 保っ た ま ま 超 伝 導 膜 の 膜 厚 を 増 加 す る こ と が 可 能 で あ り、 そ の性膜速度もPLD法の10倍以上と大きい。さらに真空装置を必要とし な い の で コ ス ト 面 で も 有 利 で あ る と 言 え る。
CVD 法(Chemical Vaper Deposition)
CVD法 は、 薄 膜 材 料 の ハ ロ ゲ ン 化 物、 硫 化 物、 水 素 化 合 物 な ど を 高 温 中 で 熱 分 解、 還 元、 重 合 あ る い は 気 相 化 学 反 応 な ど を さ せ た の ち、 金 属 分 子 を 基 板 上 に 沈 着 さ せ て 膜 を 形 成 さ せ る 方 法 で あ る。 特 に そ の 材 料 に 有 機 金 属 を 用 い る 方 法 を 有 機 金 属 科 学 気 相 蒸 着 法(Metal Organic
CVD,MOCVD)と呼ぶ。特徴としては、高真空を必要としない、大面積
な 基 板 や 複 雑 な 形 状 の 基 板 に も 成 膜 可 能、 量 産 性 に 優 れ て い る、 な ど が 挙 げ ら れ る。
PLD法(Pulse Laser Deposition)
PLD法 はPVD(物 理 気 相 蒸 着) 法 の 一 種 で あ り、 真 空 チャ ン バー 内 の 焼 結 体 ター ゲッ ト に パ ル ス レー ザー を 断 続 的 に 照 射 し、 ター ゲッ ト を ア ブ レーションすることにより放出されるフラグメント(イオン、クラスタ、
分 子、 原 子) を ター ゲッ ト と 対 向 し て 配 置 さ れ た 基 板 上 に 薄 膜 を 堆 積 さ
せ る 方 法 で あ る。 単 純 な 工 程 で もっ と も 安 定 し て 高 特 性 が 得 ら れ る 方 法 で あ る。
1.3 Y系 超 伝 導 線材 の 現 状
こ れま でに も述 べたよ うに、Y系 超伝導 体は 線材 化が 困難な ため、 実用 長の線材(kmオーダー) にはまだ至っていない。数年前から日欧米でY系線 材開発の国家プロジェクトが立ち上げられているが、そこではある程度の長 さ(10m〜50m)に お け る 通 電 特 性 の 確 認 を 第 一 の 目 標 と し て お り、 こ れ は 今後実用長線材を作製するために必要とされる技術開発に際し、その見込み を判断する指標と位置づけられる。株式会社フジクラは、国際超伝導シンポ ジ ウ ム(ISS2002)で 世 界 最 長 の 46m長 全 長 に お い て 臨 界 電 流 値74A(77K、
0T)を 液 体 窒 素 温 度 で 達 成 し た と 発 表 し た。 ま た、 全 長 に お い て77K、0T の 条 件 下 でn値 は30を 越 え、Y-123系 の 強 い ピ ン ニ ン グ 特 性 を 保っ た ま ま 長 尺 化 が 可 能 で あ る こ と を 示 し た。 フ ジ ク ラ で は、IBAD-PLD 法 に よっ て
Y系 線 材 を 作 製 し て い る が、 今 回50m級 線 材 の 全 長 に 渡っ て 均 一 な 高 特 性 を 維 持 し て 成 膜 す る こ と に 成 功 し た こ と で、 現 在 のY系 線 材 製 作 プ ロ セ ス が 実 質 的 に 長 尺 線 材 に 対 応 で き る こ と を 実 証 し た と 言 え、 実 用Y系 線 材 プ ロ セ ス の 開 発 に 向 け て 確 か な 見 込 み を 得 る こ と が で き た と 考 え ら れ る。2)
1.4 E{J 特性 の 評 価 法
今 回、E-J 特 性 を 評価 法 する 際 に 四端 子 法、 磁化 緩 和 法、第 三 高調 波 電 圧 誘 導 法 と い う 三 通 り の 方 法 を 用 い た。 こ れ ら の 方 法 の 詳 細 は2章 で 述 べ る が、 こ こ で は 各 評 価 法 の 特 徴 を 簡 単 に 述 べ る。
四 端 子 法
四 端 子 法 は 測 定 が 最 も 容 易 で 短 時 間 に 行 な え る た め、 世 界 で 最 も ス タ ンダード な測定法で あると言え る。一方、試料 にダメージを 与えてしま う 可 能 性 が あ る と い う 短 所 も あ る。 具 体 的 に 挙 げ る と、 サ ン プ ル を 加 工する際のダメージや、サンプルに直接電流を流す際に生じる熱やロー レ ン ツ 力 の 影 響 な ど で あ る。
磁 化 緩 和 法
SQUIDを 用 い た 磁 化 緩 和 法 は、 超 低 電 界 領 域 に お け る E-J 特 性 を 測 定
す る こ と が 出 来 る。 し か し 測 定 が 容 易 で は な い 上、 か な り の 時 間 を 要 するため、実際にはあまり使われていない測定法である。また、測定す る 際 に は サ ン プ ル を ス ト ロー の よ う な 小 さ な 筒 上 の 物 に 入 れ る 必 要 が あ る た め、 測 定 可 能 な サ ン プ ル の サ イ ズ に は 大 き な 制 限 が あ る と 言 え る。
第 三 高 調 波 電 圧 誘 導 法
第 三 高 調 波 電 圧 誘 導 法 は、 測 定 が 比 較 的 容 易 で あ る 上、 そ の 名 の 通 り 誘導法であるため、非破壊・非接触での測定が可能であり、大面積なサ ン プ ル や 長 尺 の サ ン プ ル で も 測 定 可 能 で あ る。 ま た コ イ ル に 流 す 交 流 電 流 の 周 波 数 を 変 え る こ と で、 測 定 さ れ る 電 界 領 域 を 選 択 可 能 で あ る 点 も こ の 測 定 法 の メ リッ ト で あ る。
1.5 第 三 高調 波 電 圧 誘導 法 の 原 理
こ こ で、 本 研 究 の テー マ で あ る 第 三 高 調 波 電 圧 誘 導 法 の 原 理 を 述 べ る。
第 三 高 調 波 電 圧 誘 導 法 はClaassen3) ら に よっ て 提 案 さ れ た も の で、 図
1.2の よ う に、 試 料 の 直 上 に コ イ ル を 置 い て 測 定 を 行 な う。 コ イ ル に 交 流 電 流 を 流 し 交 流 磁 界 を 発 生 さ せ る と、 超 伝 導 体 に は そ の 交 流 磁 界 が 入 ら な い よ う に、 コ イ ル に 流 れ る 電 流 と は 逆 方 向 の 遮 蔽 電 流 が 流 れ る。 こ れ に よ り、 交 流 電 流 に よ る 磁 束 と 遮 蔽 電 流 に よ る 磁 束 が コ イ ル を 貫 く。 コ イ ル に 通 電 す る 交 流 電 流I0 が あ る 閾 値Ic0 よ り 小 さ い 間 は 遮 蔽 電 流 の 大 き さ は 交 流 電 流 と 同 じ 大 き さ で あ り、 言 い 換 え れ ば、 こ の 遮 蔽 電 流 は コ イ ル に 流 れ る 電 流 の 鏡 像 電 流 と み な す こ と が で き る。 こ の 間 は 交 流 磁 界 に 比 例 し た 遮 蔽 電 流 が 流 れ る た め、 コ イ ル に 誘 導 さ れ る 電 圧 は ほ ぼ 線 形 な 応 答 を 示 す。
(図1.4参 照)。 し か しI0 がIc0以 上 に な る と、 第 三 高 調 波 電 圧 が 急 激 に 発 生 する。超伝導体に印加される交流磁界が増加するのに伴って、遮蔽電流も増 加 す る が、 こ の 遮 蔽 電 流 が 限 界 に 達 す る と、 図1.3(b)の よ う に そ れ 以 上 磁 界を遮蔽できなくなる。これにより今まで線形だった応答に異常が生じ、非 線 形 応 答 と な り、 第 三 高 調 波 電 圧 が 検 出 さ れ る よ う に な る(図1.5参 照4))。 図1.5(a)は一見、図1.4(a)と同じ図のように見えるが、図1.4(a)の波形が滑 ら か で あ る の に 対 し、 よ く 見 る と 図1.5(a)の 波 形 は わ ず か に 乱 れ て い る。
こ の わ ず か な 乱 れ が、 図1.5(b)の よ う に コ イ ル の 両 端 に 発 生 す る 電 圧 の 大 き な 乱 れ の 原 因 と な る。
第 三 高調 波電 圧誘 導 法で は、コ イル に 流す 交流 電流 があ る 閾値 に達 する と第 三 高 調 波が 急 激 に 発生 す る た め、 挙動 が 判 別 しや す い。 図1.6は 和 田 ら によ る シュ ミレー ショ ン に よる 結 果5) であ る が、 交 流電 流I0 が 閾 値Ic0 を 超 え た 途 端 に 急 激 に 第 三 高 調 波 電 圧 が 発 生 す る こ と が こ の 図 か ら も わ か る。
なお、このシュミレーションにおける試料のサイズは幅10mm、超伝導膜厚
0.6mで、 コ イ ル は 内 径 2mm、 外 径 5mm、 巻 数400 と し て い る。
こ れ ま で 交 流 電 流I0 が 閾 値Ic0 を 越 え る と 第 三 高 調 波 電 圧 が 発 生 す る と 述べたが、実際はI0 < Ic0 においてもわずかに第三高調波は発生している。
こ れ はI0 < Ic0 に お い て も 磁 束 の 侵 入 に 対 す る 超 伝 導 薄 膜 内 の 遮 蔽 電 流 の 分布が交流の 位相に対して 変化する(図1.7参照) た めである。これ により第 三高調 波電 圧が発 生す るが、 そのオー ダーは1007V程度で あり、I0
>I
c0 の と き の オー ダー が1004V程 度 で あ る こ と を 考 え る と、 大 き な 開 き が あ る と 言 え る。 よっ て 本 研 究 内 に お い て はI0 > Ic0 の と き に 発 生 す る 電 圧 を 第 三 高 調 波 電 圧 と 表 記 す る。
d
Superconducting Tape
V I0 cosωt
図1.2 第 三 高 調 波 電 圧 誘 導 法 の モ デ ル
図1.3 遮 蔽 電 流 の 様 子
(a)コ イ ル に 鎖 交 す る 磁 束8(t) (b)コ イ ル に 印 加 さ れ る 電 圧 V(t)
図 1.4 I0
<I
c0 (I
0
=0:5I
c0
)の 磁 束 と 電 圧
(a)コ イ ル に 鎖 交 す る 磁 束8(t) (b)コ イ ル に 印 加 さ れ る 電 圧 V(t)
図 1.5 I0 >Ic0 (I0 =1:5Ic0)の 磁 束 と 電 圧
0 100 200 0
0.5 1
drive current I0 [mΑ]
3rd harmonic voltage V 3 [mV]
1e10 8e9 6e9 2e9 1e9 8e8
Jc=8e7 [A/m2]
図 1.6 FEMシュ ミ レー ショ ン に よ るV3{I0 特 性 (Wada et al.,2002)
0 d
d 0
H0
Jc
-Jc
図1.7 超 伝 導 薄 膜 内 の 磁 束 分 布 と 遮 蔽 電 流 の 分 布
1.6 表 皮 効果
1.2節 で 述 べ た よ う に、 今 回 の 研 究 で 用 い た、IBAD-PLD法 に よ り 作 製
されたYBCO coated線材 は超伝 導薄膜の 上に銀の 保護膜 を形成し ている。
そ の た め、 こ の 銀 の 保 護 膜 に よ る 表 皮 効 果 の 影 響 を 受 け る 可 能 性 が あ る。
表 皮 効 果 と は、 導 体 に 高 周 波 の 電 流 を 流 し た り 磁 界 を 加 え た り し た と き、 遮 蔽 効 果 に よ り こ れ ら の 電 流 や 電 磁 界 が 導 体 の 表 面 付 近 に 局 限 さ れ て 内 部 に 入 ら な い 現 象 で あ る。
図1.8の よ う に 厚 さdの 平 板 導 体(0≦x≦d)を 考 え、x < 0の 側 で 導 体 に 平 行 にz 軸 方 向 に 角 周 波 数!、 振 幅H0 の 交 流 磁 界 を 加 え た と す る。 こ の と き 導 体 内 部 の 電 界
0!
E お よ び 磁 束 密 度
0!
B は そ れ ぞ れ
0!
E = (0;E;0);
0!
B = (0;0;B) (1.1)
の 成 分 し か な く、 こ れ ら の 量 はx軸 方 向 に し か 変 化 し な い。 す な わ ち
@
@x 6=0;
@
@y
=
@
@z
=0 (1.2)
で あ る。 角 周 波 数! が 十 分 小 さ く、 変 位 電 流 が 無 視 で き れ ば、 こ れ ら が 従 うMaxwellの 方 程 式 は
rot 0!
E =0
@ 0!
B
@t
; 1
rot
0!
B = 0!
E (1.3)
で 与 え ら れ る。 こ こ で、 は そ れ ぞ れ 導 体 の 透 磁 率 及 び 電 気 伝 導 度 で あ る。(1.1)式,(1.2)式 の 条 件 の 下 で は (1.3)式 は
@ 2
B
@x 2
=
@B
@t
;
@ 2
E
@x 2
=
@E
@t
(1.4)
と な り、 こ れ を 解 い て
B =
0 H
0 exp
0 r
!
2
(1+i)x+i!t
(1.5)
E = r
!
2
0 H
0 exp
0 r
!
2
(1+i)x+i(!t+
4 )
(1.6)
を 得 る (0 は 真 空 の 透 磁 率)。 こ の よ う にB、E の 振 幅 は 表 面 か ら の 距 離x と と も に 指 数 関 数 的 に 減 少 す る。B、E の 振 幅 が1=eに な る 深 さ
= r
2
!
(1.7)
を表 皮深 さ(skin depth)と いう。 し たがっ て反 対側 の表 面x = dに おけ る磁 束 密 度 の 振 幅 は
0 H
0 e
0d=
(1.8)
で 与 え ら れ る。
こ の よう に、導 体の 片 側か らの み交 流 磁界 をか ける と反 対 側表 面で は磁 界 が 弱 まっ て し ま う。 こ の 表 皮 効 果 の 影 響 に よ り、 超 伝 導 体 に 到 達 す る 交 流 磁 界 が 弱 まっ て し ま う の で は な い か と 考 え ら れ る。 試 料 の 厚 さ に 比 べ て 表 皮 深 さ が 十 分 に 大 き け れ ば そ の 影 響 は 小 さ く、 表 皮 深 さ が 小 さ け れ ば 表 皮 効 果 の 影 響 が 無 視 で き な く な る。
Conductor
x = 0 x = d
H0 B µ0
y z
x
E
図1.8 表 皮 効 果
1.7 本 研 究の 目 的
1.1節でも述べたように、幅広い電界領域において臨界電流特性(E{J 特 性)を 測定 す るこ と は、今 後 の 研究 に とって 非 常に 有 意 義で あ ると 言 える。
E{J 特 性 を 測 定 す る 代 表 的 な 方 法 と し て 挙 げ ら れ る の が、 四 端 子 法、 磁 化 緩 和 法、 そ し て 今 回 の 研 究 テー マ で あ る、 第 三 高 調 波 電 圧 誘 導 法 な ど で あ る。これまで四端子法によって測定可能な高電界領域と、磁化緩和法により 測 定 可 能 な 超 低 電 界 領 域 に お け るE{J 特 性 の デー タ は 既 に 測 定 済 み で あっ た。 そ こ で 本 研 究 で は、 第 三 高 調 波 電 圧 誘 導 法 を 用 い てE{J 特 性 の 測 定 を 行 い、 長 尺 のcoated線 材 の 測 定 法 と し て の 有 効 性 を 調 べ る と と も に、 四 端 子 法、 磁 化 緩 和 法 に よ る 結 果 と の 比 較 を 行 なっ た。
第
2章 測定
2.1 試 料
今回の研究で用いた試料は、株式会社フジクラがIBAD-PLD法により製 作 し たYBCO coated線 材 で あ る。 試 料 の サ イ ズ は 幅10mm、 長 さ10mm、
YBCOの 膜 厚1.0mと なっ て い る。
2.2 測 定
2.2.1 四 端 子法 に よ る 測定
四 端子法 は、試料 のE-J 特性を 測定す る手法 の一つ で、試料 の両端 から 直 接 電 流 を 通 電 し、 試 料 中 央 部 の 端 子 間 の 電 圧 を 測 定 す る こ と でE-J 特 性 を 評 価 す る 手 法 で あ る。 実 験 装 置 が 比 較 的 簡 単 で、 測 定 時 間 も 比 較 的 短 く て す む な ど の 特 徴 を も つ。 試 料 は 図2.1の よ う に ブ リッ ジ 状 に ケ ミ カ ル エッ チングして作成されたものを使用し、ブリッジのサイズはブリッジの狭まっ た部分で1 mmと100 mとなっている。試料は図2.1のように四ヶ所が銀蒸 着 さ れ て い て、 そ の 部 分 に リー ド 線 を つ け て 測 定 を 行っ た。 外 側 の 二 箇 所 か ら 電 流 を 通 電 し、 内 側 の 端 子 間 に 生 じ る 電 圧 を 測 定 す る こ と か らE-J 特 性 が 求 ま る。 リー ド 線 と 試 料 の 間 に は 比 較 的 大 き な 接 触 抵 抗 が あ り 通 電 に よっ て 熱 が 発 生 す る が、 こ の 発 熱 に よ る 影 響 を 出 来 る だ け 抑 え る た め に、
電 流 は1秒 間 の パ ル ス 通 電 と し て い る。
図2.1 四 端 子 法 に 用 い た 試 料