奈良教育大学学術リポジトリNEAR
中・高校生肢体不自由児の性格傾性
著者 柳川 光章, 岩永 康正
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 21
ページ 71‑79
発行年 1985‑03‑23
その他のタイトル Personality tendencies of the physically handicapped in high‑school
URL http://hdl.handle.net/10105/6573
中・高校生肢体不自由児の性格傾性*
柳川光章柵 岩永康正*榊
(障害児学教室) (結崎小学校)
障害児はその障害ゆえに、性格に歪みや偏りがあるだろうとするr通念」がある。しかし一般 的に言って、盲学校・ろラ学校、肢体不自由児や病虚弱児のための養護学校などにおける児童生 徒の性格傾向には、必ずしも否定的な性格的側面が強く示されているとはいえない。彼らの日常 に触れることによって、多くの場合その通念の誤ワを知らされるのである。それは第一に、障害 児のために計画されている学校教育の方向のもとで、等質的に障害をもった子どもの集団が構成 されているという環境では、r欠陥」は必ずしも平均からのズレとして相互に意識されないし、
また周囲からr欠陥」視されないということを挙げることができる。しかしながらこの平穏は、
就職といった現実社会との接触、保護的な枠組みを離れて独立への進路を選択しようとする段階 で崩され、厳しいr障害者の現実」の体験を強いられる。そのことは年長の生徒たちにとりても 予側し難いことではなく、慶ぱれるべき卒業式がr暗い卒業式」となる各種障害児学校の実情が そこにある。本稿は、このような背景が肢体不自由児の、特に年長生徒の性格傾性にどのように 現れるかを、不安傾向の増加の観点から検討し、その背景についての考察を試みようとするもの
である。
問 題
肢体不自由児は性格的な好ましくない特性をもつ、という前提のもとで展開された幾つかの理 論はともかくと・して、実証的にこれの有無を検討した多くの試みがある。
高瀬安貞(6}の環境性格検査を用いた調査では、環境関係と社会性において劣等性が障害児に見 られ、劣等感と異常傾向においても有意の差を認めた、としている。r綜合医療センター」の 15〕r精神健康度検査」 の結果は、ほとんどの項目において全疾病群の平均値が41〜52%であ
るのに対し、脳性マヒ児の平均は26,6%てあり、項目別では不適応感26.O%、情緒的不安定 34.2%、神経質徴候37.8%などの低さが示されている。このような調査結果がある一方で、
14〕田川元康・中塚善次郎 は肢体不自由児を対象に行ったY−G性格検査の結果で、中間反応(?)
が多いことでパーソナリティの未熟性を指摘はしているものの、Y−G検査12領域のラち一般 的活動性の低さのみが障害児に有意に認められた一としている。この低さは、障害の性質上当然の
‡ Perso■laユify tendencies of l=he physica11y handicapped in high−school
} Mitsuaki Y舳agawa (Departme趾 of Defec6ology,Nara University of Educ州。n,Nara)
榊事 Yas皿masa Iwanaga (Y㎜:aki 剛emen6ary Schooi,Nara)
㈹ことといえよう。三沢義一 の田中向性検査による肢体不自由児の調査でも、内気・内向性・情 緒的不安定などの傾向は認められていない。また、Cmickshank,W.M・ら{2〕の情緒的欲求自 己診断テストの結果は、恐怖・罪悪感からの自由の欲求などの特徴は見られなかったことを示し
ている。
以上を概括すれば、平板な調査によって肢体不自由児の一般的な性格特性を特定することは困 難なように思われる。その理由の最大なるものは冒頭に述べた如く、彼らが現在、相互にその障 害を黒としない環境、黒としても肯定的にそれが受容される環境におかれているという事実であ ろう。そのような環境に適応することで障害児は「障害児の性格」の形成を余儀なくされる必然 性はない。柳川光章(8〕によれば、他の文化体系との接触によって生ずる葛藤がわれわれにとって 14)の問題なのである。同様の観点から田川ら はr養護学校という文化の中では、そのことによっ てその人を低く評価する人はいないだろうから」という。
このように考えるとき、避け難い他の文化体系との接触、すなわち卒業後の進路の前にある厳 しい障碍の予想、そこに生ずる葛藤は彼らの性格傾性という形で具現される筈である。本報告は、
最も重要な視点をそこにおいて考察をすすめようとするものである。
方 法 1 調査対象
奈良県下の肢体不自由児養護学校一校を選び、質問紙に回答可能な者のすべてを中学部各学 年から抽出した計12名と、同様にして抽出した高等部からの計9名。対象群として奈良県下 から選んだ公立中学校、高等学校各一校の無作為に抽出した各学年4名ずつの中学校12名・
高校12名。
2 調査材料
A 田所式GAT(不安傾向診断検査) および B 調査者作成の質問紙r不安の対象について」
GATは、学習、対人、孤独、自罰、過敏、身体、恐怖、衝動の8分野80項目によって不 安の強さとその領域を知ろうとするものである。肢体不自由児とにって不適当な質問(野球・
ドッジボールなど)は彼らの生活に適合したもの(ゴロゴロ野球など)に変えて実施した。
「不安の対象について」の質問紙は、現在不安に思うこと・将来不安に感ずることの二種と し、それぞれ友人、健康、家庭・家族、進学、就職、社会・人生.その他の7分野に分け、各 分野に4〜6個の下位項目を設けた。被験者には先ず7分野から最も不安に思うことを1とし て選ばせ、次に不安に思うことを2として選ばせた。
例 1□ 友たちについて(現在不安に思うこと、のばあい)
A 特にしたレい友だちがいない
B 自分のことをわかってくれる人がいない C よくけんかをする
Dなかまにはいれない E その他(
2口自分の健康について
1口 友たちについて(将来不安に思うこと、のばあい)
A 今の友だちと長くつきあっていけるかわからない B 自分のことをわかってくれる人は、あらわれない C いつまでも友だちをつくれない
D 新しい状況にはいると友だちができにくい。
E その他(
2□ 自分の健康・体力について
7分野の番号1〜7の右の枠には不安の第一、第二の順を記入させる。その分野の下位項日 から選んだ具体的な不安については、更に詳しく別舳こ記述させたが、本報告では下位項目選 択以下のことはとワ扱うことを省略する。
3 調査期間
1982年10月〜11月の間
結 果
1 回収率
肢体不自由児群・健常児群とも教師を通じて配布・回収したが、前者においてはGATで 1O O%質問紙で95%、健常児群のばあいは共に1O O%の回収率であった。
2 G A T
下位項目の尺度偏差値8以上を高不安項目とし、一般不安偏差値については65以上を高い 不安(個人指導を必要とする程度)とみなした0
A 両群の総不安傾向を比較すると(表1)、明らかに肢体不自由児群の不安傾向が高い。
表1肢体不自由児と健常児の総不安傾向についての比較
G A T 肢体不自由児 健 常 児
N
20 24
x
50.95 42,75
S D
9.73 8.41
d f
42 2.929
有意水準 P<.O1
B 下位尺度における両群の不安傾向(表2)では、対人・孤独・過敏・恐怖において肢体不 自由児の高いことが明らかであワ、衝動の分野にもその傾向が認められる(1O%レベル)。
表2 下位尺度における肢体不自由児と健常児の不安傾向の比較
下位尺度 N ヌ
SD
dft
有意水準肢体不自由児 20 4.40 1.82
学習不安傾向 42 O.445 nS
健常 児 24 4.17 1.58
肢体不自由児 20 5.45 1.85
対人的不安傾向 42 2.782 P<.05
健常児 24 3.97 1.72
肢体不自由児 20 5150 1.85
孤独傾向 42 5,205 P<.01
健常児 24 3.38 0.58
肢体不自由児 20 4105 1,90
自罰傾向 42 1,059 nS
健常児 24 4.58 1.35
肢体不自由児 20 5.35 1.93
過敏傾向 42 2.283 P<.05
健常児 24 4.00 1.91
肢体不自由児 20
4,55 三.70
身体的徴候 42 1.248 nS
健常児 24 3.83 1.97
肢体不自由児 20 5.75 1.89
恐怖傾向 42 3.629 P<.O1
健常児 24 4.04 1.12
肢体不自由児 20 5.10 1.97
衝動傾向 42 1.716 nS△
健常児 24 4.17 1.55
n S△は傾向あり
C 肢体不自由児の中学・高枝間の総不安傾向には差が見られなかったが、表3に見るように、
下位尺度の過敏・身体の二点で年長の者に不安傾向がより強いことが推測できる。
D 中学生面群の総不安傾向の比較(表4)では有意差は示されないが、下位尺度の対人と孤 独に有意な差で肢体不自由児群の不安の高いことが示されている(表5)。
妻3 下位尺度における肢体不自由児の中学生と高校生の不安傾向の比較
N x SD df
t
有意水準中学生
12 5.83 1.59対人的不安傾向 18 1.073
高校生
8 4.88 2.17 nS中学生
12 3158 2.11 18 1.311自罰傾向
局校生
8 4.75 1,39 nS過敏傾向
中学生 高校生
128 4.836,I3 1.951.73 18 1.452 nS△中学生
12 4.08 1.78 18 1.486 nS△身体的徴候
高校生
8 5.25 1.39表4 中学生の肢体不自由児と健常児の総不安傾向の比較
GAT
総不安傾向
肢体不自由児 健 常 児
N
12 12
ヌ
50.67 45,92
SD
9.26 9.64
d f
22 1.179
有意水準
n S
表5 下位尺度における中学生の肢体不自由児と健常児の不安傾向の比較
N
ア
SD dft
有意水準対人的不安傾向
肢体不自由児
?常 児
12 P2
5,83 S.08
1,59 Q.07
22 2.229 Pく.05
肢体不自由児 12 5.83 1.75
孤独傾向 健 常 児 12 3.58 O.67 22 3.985 P<.01
亙 高校生での両群の比較では総不安傾向において有意に肢体不自由児群が高く(表6)、同 じく下位尺度の孤独・過敏・身体・恐怖において有意に高い(妻7L
表6 高校生の肢体不自由児と健常児の総不安傾向の比較
GAT
総不安傾向
肢体不自由児
健 常 児
N
12
ヌ
51.38 39.58
SD
11.03 5.76
d f
I8
t
2.961
有意水準
P<.O1
表7 下位尺度における高校生の肢体不自由児と健常児の不安傾向の比較
N x
SD df t 有意水準肢体不自由児 8 5.OO 2.00
2.925
孤独傾向 18 P<.O1
健 常 児 I2 3.17 0.38 肢体不自由児 8 6.13 1.73
過敏傾向 18 4.367
健 常 児 12 2,92 1.38 pく.O1
肢体不自由児 8 5.25 1.39
身体的徴候 18 2.627
健 常 児 12 3.50 1.38 P<.O1
肢体不自由児 8 6.13 1.96
恐怖傾向 18 3.420
健 常 児 O,83 P<.O1
I2 3.83
3 質問紙「不安の対象」
現在の不安の両群の比較において(表8)、肢体不自由児群に有意に高い分野は健康であり 健常児群においては勉強である。他に肢体不自由児群に高い数値が得られたものとして家庭・
家族と社会・人生の二分野がある(共に有意差なし)。ところが将来の不安(表9)では健廉 は消え、新たに就職についての不安は最高のパーセンテージを示し、健常児の最高・進学と対 照的である。
表8 アンケートにおける肢体不自由児と健常児のr不安の対象」の比較 (現在)
% df X2 有意水準
肢体不自由児 1O.OO
友達のこと
1
O.073 nS健 常 児 8.33
肢体不自由児 17.50
健康のこと
1
4.225健 常 児 4.17 P<.05
肢体不自由児 7.50
勉強のこと
1
8.601健 常 児 33.33 P<.O1
肢体不自由児 7.50
家庭・家族のこと
1
1.475健 常 児 nS△
2.08 肢体不自由児 25.00
卒業後のこと
1
健 常 児 0.728 nS
33.33 肢体不自由児 27,50
社会・人生のこと
1
1.513健 常 児 nS
16.67 肢体不自由児 5.OO
そ の 他
1
0.564 nS健 常 児 .2.08 (nS△は傾向あワ)
表9 アンケートにおける肢体不自由児と健常児のr不安の対象」の比較 (将来)
% df X2 有意水準
友達のこと 肢体不自由児 I5.00
1
1.819 nS△
健 常 児 6.25
健康のこと 肢体不自由児 7.50
健 常 児 6.25
1
O.054n S
肢体不自由児 12.50 家庭・家族のこと
i学のこと
健 常 児
?フ不自由児
4,17 V.50
11 2.069
W.601
nS△
oく.O1 健 常 児 33.33
就職のこと 肢体不自由児 37.50
1
1.603
健 常 児 25.OO
n S
社会・人生のこと 肢体不自由児 15,OO
1
0.217
健 常 児 18.75 nS
そ の 他 肢体不自由児 5.00
1
O.064健 常 児 6.25
n S
考 察 1 調査結果による考察
A 肢体不自由児中学部と高等部の間でG ATの総不安傾向には差が見られなかったが、下位 領域では幾つかの分野において年長群に高い傾向を推測させる結果となっている。このよう な傾向をもたらす要因として、青年期が不安を増大させていくという一般的な事実のほかに、
障害児がもつ特殊な不安傾向が年長者のばあい更に高められていくという、社会的要因の存 在を想定せざるを得ない。
B 一般的に肢体不自由児に不安傾向が高い事実は、妻6によっても要づけられるのであるが、
両群の比較を更に中学、高校の段階に分けて試るとき、中学生両群間では総不安傾向におい ・て肢体不自由がより高いと推測されたものが、高校では明らかな差(有意差)を示してくる。
有意差のある下位尺度の項目も、高校段階において増大する(表5,7)。養護学校におい て中学部は高等部に比較して卒業後の進路についての不安は濃くない。次の高等部の3年間 が現実問題との直面を遠ざけている。後のない高等部生徒との違いはそこにあると思われる。
C 健常児にとっての現在の不安の第一のものは勉強のことについてであワ、肢体不自由児の 現在の不安が健康に関してであることと並んで有意の差を示す(表8几同表の中で健常児 は卒業後の項目についても勉強と同率の高い不安を示すが、その不安は表9で明瞭のように 進学のことであり、ここでも肢体不自由児と明らかな相違をみせる。肢体不自由児の現在の 不安で高率なのは卒業後のことであるが、それは将来の不安は何かと問われて、就職のこと (37.5%、第一位)となる。ここに健常児と明確に一線を画ず高年齢肢体不自由児の現実 がある。
D G ATにおいて下位尺度偏差値8以上、総不安傾向で65以上は個別的な指導を必要とす る段階とされているが、本報告の個々の資料を検討すると健常児の13%がそれに該当する のに対して、肢体不自由児においては50%であった。この点からも肢体不自由児の不安一 ひいては障害児一般がかかえる不安の解消を如何にしてはかるかの、極めて深刻な問題が提 起されてくる。
2 問題の所在
A 肢体不自由児が在学中にこのような不安傾向を示している現状にもとづいて、学校という 環境において配慮されるべき幾つかの事柄がある。本調査によって肢体不自由児の特徴が対 人的不安・孤独傾向・過敏傾向・身体的徴候・恐怖傾向に示され易いことが明らかになった。
これらの幾つかは彼らの社会的環境が更に拡大され、社会的経験を重ねることによって解消 されていく筈である。保護的環境とその周囲との落差を埋めるためのさまざまな試みが工夫 されてよいのではないか。
障害の軽減・克服の不断の努力とあわせて、達しい意志力精神力が彼らの内に蓄えられる ことが望まれる。障害者のための如何なる施策や人びとの協力があろうとも、障害者自身の 自立の強い行動力なしには社会的な適応は望み難い。機会をとらえて意志力を鍛える努力を 強いることは、時に苛酷に見えても彼らの生涯を支えるものとして躊踏してはならないと考
える。
日常的なカウンセリング活動や教師の心理的接触による不安の解消・自信の増強が必要な ことはいうまでもない。環境が狭小で対人接触に乏しく、従って社会的技術が劣るであろう と推測される肢体不自由児が、適応的でない行動をとることは十分にあワうることであるゆ えに、指導は具体的場面に即して具体的に行われるべきであろう。
その他学校が配慮すべき幾つかが考えられるが、その多くは養護学校において多少とも実 残されていることであワ、そのような努力にもかかわらず、肢体不自由児の不安、格別にも 将来への不安は解消が困難であるにちがいなへ
B 家庭が子どもの社会化に重要な役割ワを果たすことは一般的に認められているところであ (1)
る。しかしながら障害児の親はしばしばBabb舳,P.H.がいうhostHe fee1i㎎を示し、
子どもが抱く不安や欲求不満に脅かされて下欄さ・困惑・苦悩・混迷の錯綜した感情に支配 される。肢体不自由児の心身を鍛練するという治療的役割りを担うべき親が、実は指導され るべき対象となることは稀ではない。そこに家庭における問題があることは否めないが、不 (9〕
安感を解消し難いという点では親は子どもと同じ立場にあるといえる。柳川 はMAS(顕 在性不安検査)によって、精神薄弱者が施設入所することで親の不安傾向が著しく減少する ことを報じている。これは精薄者の進路が安定することによって親が得る安堵感の大きさを 示すものであって、肢体不自由児の親が抱く不安感も、進路の不安定さが決定的な要因にな っていると考えてさしつかえないだろう。
C 学校や家庭が肢体不自由児の社会的適応に留意し、将来の社会的自立に備えて達しい人格 形成の育成に努力を傾けることの重要さは論を侯牟ないところである。しかしながら、彼ら の抱く将来への不安は、学校や家庭の配慮や努力を超えた、構造的な障害者疎外の社会的現 実に由来する、とわれわれは考えるのである。
国連は1981年にはじまる国際障害者年を控えて、1980年国際障害者年行動計画(7)を 採択した。その中の次の部分は格別にもわれわれが関心を払うべき見解であろうと思う。
r国際障害老年は、個人の特質である身体的精神的不全(m脾、ment)と、それによって 引き起こされる機能的な障害・能力の不全(dis・biiiけ )と、そして能力不全の社会的な 結果である不利(handicaps)の間には区別がある、という事実について認識を促進すべ きである」「障害という問題をある個人とその環境との関係としてとらえることがはるかに 建設的な方法であることは最近ますます明確になりつつある。過去の経験は、多くの場合、
社会環境が一人の人間の同常生活に与える身体・精神の不全の影響を示している。社会は、
今なお身体的・精神的能力を完全に備えた人びとのみの要求を満たすことを概して行ってい る」一般的に言って、身体的精神的不全(損傷、i岬・im㎝ )とそれにもとづく能力不全 (diSabH ity)を備えた者が障害者である、という理解はしても、それゆえに社会的不利 益を担わされている人が障害者(ha・di・app・d per・㎝・)であるという認識には、わが国 では到達していない。従って障害者の社会的進出を、具体的にいえば障害者の就労の問題を r環境との関係として」捉える程には成熟していないと思われるのである。
障害者が社会的にr完全な参加」を実現し、健常者とのr平等」を享受する道をひらく
(国際障害者年の中心課題)方法の一つに就労問題の改善があることはいうまでもない。障 害者の法定雇用率の達成の一例をとりあげて見ても、自治体においてようやくその水準に到 達しているものの、一般企業の総体では蓬かに及ばない。しかも軽度の障害者をもって雇用 率の充足にあてている、という現実を超え得ないわが国の状況のもとで、障害児は厳しい進 路の壁に直面する。
障害者の就労問題については、解決をまつ多くの事柄があるが、本稿においてはその詳細 を述べることを省略する。が、本報告で扱った肢体不自由児の将来に対する不安、それに伴 うさまざまな性格傾性は、要するに彼ら本来の個有の特性というべきものではない。障害者 の社会的進出を阻む構造的状況がそれを生み出している、と緒論づけざるを得ないのであワ、
この点が広く解決されていく過程で彼らの精神的健康は回復され、不安の性格傾性も解消さ れていく性質のものであろうと考えるのである。
引 用 文 献
1 Babbi甘,P.H. 1964Appraisal of par㎝6a1州i亡凹des (文献6よワ引用).
2 C−uickshank,W.M. 1963 Psycho1ogical consideration wi血 crippled chHdren. in Cruickshank (ed) Psycbology of oxceptiona1 ・child祀n and youth, Prentice−Halユ.
3 三沢義一 1970 身体の障害、桂広介他監 児童心理学講座10、金子書房。
4 田川元康・中塚善次郎 1978 肢体不自由児あ性格特性一矢田部・ギルフォード(YG)
性格検査結果の分析一、特殊教育学研究、16,2,14−25・
5 渋沢 久 ・1981 からだの不自由な子の進路、明治図書・
6 高瀬安貞 1982 身障者の心の世界一リハビリテーションのために一、有斐閣.
7 U皿i6ed Natio口s1980 P1an of acti㎝ for The In6ema6iona1Year of Disab1ed Persons,General ass embly,ResoI1』Hon A/RE S/34/158,Adapted Jan.30,1980.
8 柳川光章 1973 へき地青少年の精神衛生状態一文化接触仮説への検討一、奈良教育大学 教育研究所紀要、 9,33−40.
9 〃 1973 施設環境条件の社会的適応に及ぼす効果一心境荘苑のばあい〔2〕一、
奈良教育大学紀要、22,1,171−178・